IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JSR株式会社の特許一覧

特許7400679感放射線性組成物、表示装置用絶縁膜、表示装置、表示装置用絶縁膜の形成方法、及び重合体
<>
  • 特許-感放射線性組成物、表示装置用絶縁膜、表示装置、表示装置用絶縁膜の形成方法、及び重合体 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】感放射線性組成物、表示装置用絶縁膜、表示装置、表示装置用絶縁膜の形成方法、及び重合体
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/075 20060101AFI20231212BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20231212BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20231212BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20231212BHJP
   C08G 18/83 20060101ALI20231212BHJP
   C08G 73/02 20060101ALI20231212BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20231212BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20231212BHJP
   G06F 3/044 20060101ALN20231212BHJP
【FI】
G03F7/075 521
H05B33/14 A
H05B33/22 Z
H05B33/10
C08G18/83 010
C08G73/02
G06F3/041 410
G06F3/041 495
G09F9/30 348A
G09F9/30 380
G06F3/044 120
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020162661
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022055206
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(72)【発明者】
【氏名】秋池 利之
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 友久
(72)【発明者】
【氏名】鬼丸 奈美
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-209229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/075
H10K 50/10
H05B 33/22
H10K 59/10
H05B 33/10
C08G 18/83
C08G 73/02
G06F 3/041
G09F 9/30
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で示される構造部位を有する重合体、または下記式(2)で示される構造部位を有する重合体から選ばれる少なくともいずれか一方の重合体、
(B)感放射線性化合物
を含む感放射線性組成物。
【化1】


(式(1)中、R、Rは炭素数1から12の炭化水素基、Rはカルボキシル基、(メタ)アクリロイル基、酸無水物構造のいずれかを有する1価の有機基、Rは炭素数1から12のアルカンジイル基、フェニル基、または脂環式炭化水素を有する2価の有機基を示す。nは2から100の整数、a、bはそれぞれ、1から12の整数を示す。
式(2)中、R、Rは炭素数1から12の炭化水素基、Rはカルボキシル基、(メタ)アクリロイル基、酸無水物構造のいずれかを有する1価の有機基、Rは炭素数1から12のアルカンジイル基、フェニル基、または脂環式炭化水素を有する2価の有機基を示す。mは2から100の整数、c、dはそれぞれ、1から12の整数を示す。)
【請求項2】
前記式(1)で示される構造部位を有する重合体、または前記式(2)で示される構造部位を有する重合体において、Rが下記式(1a)から(1c)で示される基から選ばれる基であり、Rが下記式(2a)から(2b)で示される基である請求項1記載の感放射線性組成物。
【化2】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数2から12の2価の環を巻いていてもよい炭化水素基もしくは炭素数6から10の芳香環を示す。*は結合位を示す。)
【請求項3】
前記感放射線化合物が光酸発生剤、光ラジカル重合開始剤の少なくともいずれか一方である請求項1または請求項2に記載の感放射線性組成物。
【請求項4】
さらに、(C)(メタ)アクリル化合物、エポキシ化合物の少なくともいずれか一方を含む請求項1から請求項3に記載の感放射線性組成物。
【請求項5】
60℃以上120℃以下の温度範囲の加熱により硬化可能な請求項1から請求項4に記載の感放射線性組成物。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の感放射線性組成物から形成される表示装置用絶縁膜。
【請求項7】
請求項6の表示装置用絶縁膜を有する表示装置。
【請求項8】
有機エレクトロルミネッセンス装置である請求項7の表示装置。
【請求項9】
タッチパネル付き有機エレクトロルミネッセンス装置である請求項8の表示装置。
【請求項10】
基板上に直接又は間接に塗膜を形成する工程、
上記塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、
上記塗膜を現像する工程、及び
上記塗膜を加熱する工程
をこの順に備え、上記塗膜を請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の感放射線性組成物により形成する表示装置用絶縁膜の形成方法。
【請求項11】
上記基板が有機エレクトロルミネッセンス素子を含む請求項10に記載の表示装置用絶縁膜の形成方法。
【請求項12】
上記加熱を60℃以上120℃以下の温度範囲で行う請求項10又は請求項11に記載の表示装置用絶縁膜の形成方法。
【請求項13】
下記式(3)で示される構造部位を有する重合体。
【化3】

(式(3)中、Xは炭素数1から12のアルカンジイル基を示す。nは2から100の整数を示す。)
【請求項14】
下記式(4)で示される構造部位を有する重合体。
【化4】

(式(4)中、Xは炭素数1から12のアルカンジイル基を示す。mは2から100の整数を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性組成物、表示装置用絶縁膜、表示装置、表示装置用絶縁膜の形成方法、及び重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年開発が進められている発光素子の一つとして、陽極層、有機発光層及び陰極層を含む積層構造を有する有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子が知られている。有機EL素子を有する表示装置として、装置前面にタッチパネルが設けられたタッチパネル付き有機EL装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
タッチパネル付き有機EL装置は、例えば、タッチパネルを、粘着層又は接着層を介して、有機EL素子が形成された基板に貼り合わせて製造されている。タッチパネルは、通常、タッチパネル用支持基板上に、センサ電極等のタッチパネル部材を設けることにより製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-161806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、タッチパネルを、粘着層又は接着層を介して、有機EL素子が形成された基板に貼り合わせる場合、タッチパネル付き有機EL装置全体の厚さが大きくなる。厚さの大きい装置の場合、屈曲させたときに破損又は機能低下が生じやすくなる。また、各種表示装置においては、薄型化自体が望まれている。そこで、有機EL素子が形成された基板上に、直接、リソグラフィ、エッチング等の手法によりタッチパネルを設けることで、タッチパネル付き有機EL装置等の表示装置全体の厚さを小さくすることができると考えられる。
しかし、多官能(メタ)アクリレート等を硬化性成分として含む材料を用いた従来の手法では、タッチパネルを形成するための絶縁膜の硬化には100℃超、好ましくは120℃超の温度での加熱が必要である。有機EL素子が形成された基板上に絶縁層を形成する場合、100℃超、特に120℃超の加熱に伴って有機発光層の劣化を招くという不都合がある。
一方、絶縁膜を従来の材料を用いて120℃以下、特に100℃以下の加熱で形成した場合には、得られた絶縁膜が、配線形成のためのエッチング薬液や酸素アッシングに耐えられず、タッチパネル構造を作製することが困難となる傾向がある。タッチパネル付き有機EL装置用の絶縁膜に限らず、その他の表示装置用絶縁膜等各種用途において、比較的低温の加熱によっても十分なエッチング薬液耐性及び酸素アッシング耐性を有する硬化膜を得ることができる感放射線性組成物の開発が望まれている。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、本発明の感放射線性組成物は、十分なリソグラフィ性能を有し、比較的低温の加熱によっても、十分な硬度を有するとともに、ひび割れ等のクラックが容易に生じない硬化膜を形成することができ、加熱処理後に反りが生じにくい硬化膜を形成することができる。当該感放射線性組成物から形成された硬化膜を表示装置に用いた時にアウトガスの発生が少なく、アウトガス起因の不具合を低減することができることを課題とする。
上記感放射線性組成物を用いて得られる表示装置用絶縁膜及び表示装置、上記感放射線性組成物を用いた表示装置用絶縁膜の形成方法、並びに上記感放射線性組成物の成分として好適な重合体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、(A)下記式(1)で示される構造部位を有する重合体、または下記式(2)で示される構造部位を有する重合体から選ばれる少なくともいずれか一方の重合体、(B)感放射線性化合物を含む感放射線性組成物である。
【化1】


(式(1)中、R、Rは炭素数1から12の炭化水素基、Rはカルボキシル基、(メタ)アクリロイル基、酸無水物構造のいずれかを有する1価の有機基、Rは炭素数1から12のアルカンジイル基、フェニル基、または脂環式炭化水素を有する2価の有機基を示す。nは2から100の整数、a、bはそれぞれ、1から12の整数を示す。
式(2)中、R、Rは炭素数1から12の炭化水素基、Rはカルボキシル基、(メタ)アクリロイル基、酸無水物構造のいずれかを有する1価の有機基、Rは炭素数1から12のアルカンジイル基、フェニル基、または脂環式炭化水素を有する2価の有機基を示す。mは2から100の整数、c、dはそれぞれ、1から12の整数を示す。)
【0008】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、当該感放射線性組成物から形成されている表示装置用絶縁膜である。
【0009】
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、当該表示装置用絶縁膜を有する表示装置である。
【0010】
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、基板上に直接又は間接に塗膜を形成する工程、上記塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、上記塗膜を現像する工程、及び上記塗膜を加熱する工程をこの順に備え、上記塗膜を当該感放射線性組成物により形成する表示装置用絶縁膜の形成方法である。
【0011】
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、下記式(3)で示される構造部位を有する重合体である。
【化2】

(式(3)中、Xは炭素数1から12のアルカンジイル基を示す。nは2から100の整数を示す。)
【0012】
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、下記式(4)で示される構造部位を有する重合体である。
【化3】

(式(4)中、Xは炭素数1から12のアルカンジイル基を示す。mは2から100の整数を示す。)
【発明の効果】
【0013】
本発明の感放射線性組成物は、十分なリソグラフィ性能を有し、比較的低温の加熱によっても、十分な硬度を有するとともに、ひび割れ等のクラックが容易に生じない硬化膜を形成することができ、加熱処理後に反りが生じにくい硬化膜を形成することができる。当該感放射線性組成物から形成された硬化膜を表示装置に用いた時にアウトガスの発生が少なく、アウトガス起因の不具合を低減することができる。
上記感放射線性組成物を用いて得られる表示装置用絶縁膜及び表示装置、上記感放射線性組成物を用いた表示装置用絶縁膜の形成方法、並びに上記感放射線性組成物の成分として好適な重合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るタッチパネル付き有機EL装置を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<感放射線性組成物>
本発明の一実施形態に係る感放射線性組成物は、(A)重合体、(B)感放射線性化合物を含む。当該感放射線性組成物は、(C)(メタ)アクリル化合物、エポキシ化合物の少なくともいずれか一方を含むことができる。各成分等について詳説する。
【0016】
当該感放射線性組成物における(A)重合体は、、下記式(1)で示される構造部位を有する重合体、または下記式(2)で示される構造部位を有する重合体から選ばれる少なくともいずれか一方の重合体である。
【化4】

【0017】
式(1)中、R、Rは炭素数1から12の炭化水素基、Rはカルボキシル基、(メタ)アクリロイル基、酸無水物構造のいずれかを有する1価の有機基、Rは炭素数1から12のアルカンジイル基、フェニル基、または脂環式炭化水素を有する2価の有機基を示す。nは2から100の整数、a、bはそれぞれ、1から12の整数を示す。
式(2)中、R、Rは炭素数1から12の炭化水素基、Rはカルボキシル基、(メタ)アクリロイル基、酸無水物構造のいずれかを有する1価の有機基、Rは炭素数1から12のアルカンジイル基、フェニル基、または脂環式炭化水素を有する2価の有機基を示す。mは2から100の整数、c、dはそれぞれ、1から12の整数を示す。
【0018】
式(1)で示される構造部位を有する重合体の合成例を示す。
下記式(5)で示さるように、両末端アミノ変性のシリコーンオイルと両末端にイソシアネート基を有する化合物と重縮合によって合成される。アミノ基とイソシアネートの反応により、ウレア結合を有する。
次いで、式(5)で得られた化合物に酸無水物構造を有する酸クロリドをアミンに存在下反応させると酸無水物構造を有する基が導入された化合物が得られる(式(6))。
さらに、式(6)で得られた化合物に、酸の存在下で加水分解することでカルボキシル基を発現させることができる(式(7))。
【化5】
【0019】
両末端アミノ変性のシリコーンオイルとしては、ポリシロキサンの両末端にアミノ基を導入した化合物が用いることができ、市販品を使用することができる。このような入手可能な両末端アミノ変性のシリコーンオイルとしては、PAM-E,KF-8010,X-22-161A,X-22161B,KF-8012,KF-8008,X-22-1660B-3,X-22-9409(信越化学社製)を使用することができる。
【0020】
両末端にイソシアネート基を有する化合物としては、4,4‘-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4'-トルイジンジイソシアネート、4,4 '-ジフェニルエーテルジイソシアネート等などの芳香族ジイソシアネート、1,3-又は1,4-キシリレンジイソシアネート、もしくはその混合物などの芳香脂肪族ジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2 -ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2 ,6-ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1 ,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル- 3 ,5 ,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4 '- メチレンビス( シクロヘキシルイソシアネート) 、メチル- 2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-ビス( イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート等を用いることができる。これらのうち特に、ヘキサメチレンジイソシアネートが反応性、入手のしやすさから好適に用いられる。
【0021】
酸無水物構造を有する酸クロリドとしては、無水トリメリット酸、水添無水トリメリット酸の酸クロリド等が挙げられる。
酸無水物構造を有する酸クロリドを反応させるときは必要に応じて塩基を加えることもできる。塩基としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、イミダゾール、ジアザビシクロウンデセン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を挙げることができ、トリエチルアミンが好ましい。
【0022】
式(1)で示される構造部位を有する重合体の重量平均分子量が1,000~500,000の範囲であることが好ましい。
【0023】
式(2)で示される構造部位を有する重合体の合成例を示す。
下記式(8)で示さるように、両末端アミノ変性のシリコーンオイルと両末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物とマイケル付加反応によって合成される。
次いで、式(8)で得られた化合物に酸無水物を反応させることでカルボキシル基を導入することができる(式(9))。
【化6】

マイケル付加反応に用いられる塩基としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、イミダゾール、ジアザビシクロウンデセン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を挙げることができ、トリエチルアミンが好ましい。
【0024】
両末端アミノ変性のシリコーンオイルとしては、ポリシロキサンの両末端にアミノ基を導入した化合物が用いることができ、市販品を使用することができる。このような入手可能な両末端アミノ変性のシリコーンオイルとしては、PAM-E,KF-8010,X-22-161A,X-22161B,KF-8012,KF-8008,X-22-1660B-3,X-22-9409(信越化学社製)を使用することができる。
【0025】
(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデンジメタノールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンジアクリレート等が挙げられる。
また酸無水物としては、無水コハク酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、水添無水トリメリット酸等が挙げられる。なかでも反応性の面から無水コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水フタル酸、水添無水トリメリット酸が好適である。
【0026】
式(2)で示される構造部位を有する重合体の重量平均分子量が1,000~500,000の範囲であることが好ましい。
【0027】
式(1)で示される構造部位を有する重合体、または式(2)で示される構造部位を有する重合体は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
【0028】
(B)感放射線性化合物
本発明の実施形態の感放射線性組成物含有される(B)感放射線性化合物としては、放射線に感応してラジカルを発生し重合を開始できる化合物(すなわち、(B-1)光ラジカル重合開始剤)、または、放射線に感応して酸を発生する化合物(すなわち、(B-2)光酸発生剤)を挙げることができる。本実施形態の感放射線性組成物は、(B)感放射線性化合物を含有することにより、感放射線性を有することができ、例えば、感放射線性化合物の種類によって、ポジ型の感放射線性またはネガ型の感放射線性を有することができる。
【0029】
本実施形態の感放射線性組成物の(B-1)光ラジカル重合開始剤としては、O-アシルオキシム化合物、アセトフェノン化合物、ビイミダゾール化合物等が挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0030】
O-アシルオキシム化合物としては、例えば、1,2-オクタンジオン1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、1-(9-エチル-6-ベンゾイル-9.H.-カルバゾール-3-イル)-オクタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-エタン-1-オンオキシム-O-ベンゾエート、1-〔9-n-ブチル-6-(2-エチルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-エタン-1-オンオキシム-O-ベンゾエート、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロフラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロピラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチル-5-テトラヒドロフラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-{2-メチル-4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0031】
これらのうち、1,2-オクタンジオン1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)またはエタノン-1-〔9-エチル-6-{2-メチル-4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)が好ましい。
【0032】
アセトフェノン化合物としては、例えば、α-アミノケトン化合物、α-ヒドロキシケトン化合物が挙げられる。
【0033】
α-アミノケトン化合物としては、例えば、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン等が挙げられる。
【0034】
α-ヒドロキシケトン化合物としては、例えば、1-フェニル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-i-プロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。
【0035】
アセトフェノン化合物としては、α-アミノケトン化合物が好ましく、特に、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オンが好ましい。
【0036】
ビイミダゾール化合物としては、例えば、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾールまたは2,2’-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾールが好ましく、そのうち、2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾールがより好ましい。
【0037】
(B-1)光ラジカル重合開始剤は、上述したように、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。(B-1)光ラジカル重合開始剤の含有割合は、[A]成分100質量部に対して、1質量部~40質量部が好ましく、5質量部~30質量部がより好ましい。(B-1)光ラジカル重合開始剤の使用割合を1質量部~40質量部とすることで、感放射線性組成物は、低露光量であっても、高い耐溶媒性、高い硬度および高い密着性を有する硬化膜を形成することができる。その結果、そうした特性に優れた本発明の実施形態の絶縁膜を提供することができる。光ラジカル重合開始剤を使用する場合、ネガ型の感放射線性組成物とすることができる。
【0038】
次に、本実施形態の感放射線性組成物の(B-2)光酸発生剤としては、例えば、オキシムスルホネート化合物、オニウム塩、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物、キノンジアジド化合物等が挙げられる。尚、これらの(B-2)光酸発生剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0039】
オキシムスルホネート化合物の具体的な例としては、(5-プロピルスルフォニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン)-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、(5-オクチルスルフォニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン)-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、(カンファースルフォニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン)-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、(5-p-トルエンスルフォニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン)-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、2-(オクチルスルホニルオキシイミノ)-2-(4-メトキシフェニル)アセトニトリル等を挙げることができ、これらは市販品として入手することができる。
【0040】
上述したオニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、スルホニウム塩、ベンゾチアゾニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩、ベンジルスルホニウム塩等が挙げられる。
【0041】
そして、オニウム塩としては、テトラヒドロチオフェニウム塩、ベンジルスルホニウム塩が好ましく、4,7-ジ-n-ブトキシ-1-ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、ベンジル-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウ
ムヘキサフルオロホスフェートがより好ましく、4,7-ジ-n-ブトキシ-1-ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネートがさらに好ましい。
【0042】
スルホンイミド化合物としては、例えば、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(カンファスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(4-フルオロフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(カンファスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(2-フルオロフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(カンファスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、4-メチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド等が挙げられる。
【0043】
スルホン酸エステル化合物の好ましい例としては、ハロアルキルスルホン酸エステルを挙げることができ、より好ましい例として、N-ヒドロキシナフタルイミド-トリフルオロメタンスルホン酸エステルを挙げることができる。
【0044】
キノンジアジド化合物としては、例えば、フェノール性化合物またはアルコール性化合物(以下、「母核」ともいう)と、1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドまたは1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸アミドとの縮合物を用いることができる。
【0045】
上記の母核としては、例えば、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ペンタヒドロキシベンゾフェノン、ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、(ポリヒドロキシフェニル)アルカンの他、上記母核以外のその他の母核等が挙げられる。
【0046】
上記の母核の具体例としては、例えば、
トリヒドロキシベンゾフェノンとして、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6-トリヒドロキシベンゾフェノン等;
テトラヒドロキシベンゾフェノンとして、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,3’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’-テトラヒドロキシ-4’-メチルベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシ-3’-メトキシベンゾフェノン等;
ペンタヒドロキシベンゾフェノンとして、2,3,4,2’,6’-ペンタヒドロキシベンゾフェノン等;
ヘキサヒドロキシベンゾフェノンとして、2,4,6,3’,4’,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、3,4,5,3’,4’,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン等;
(ポリヒドロキシフェニル)アルカンとして、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(p-ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(p-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリス(p-ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3-トリス(2,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルプロパン、4,4’-〔1-〔4-〔1-〔4-ヒドロキシフェニル〕-1-メチルエチル〕フェニル〕エチリデン〕ビスフェノール、ビス(2,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインデン-5,6,7,5’,6’,7’-ヘキサノール、2,2,4-トリメチル-7,2’,4’-トリヒドロキシフラバン等;
を挙げることができる。
【0047】
上記のその他の母核としては、例えば、2-メチル-2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4-(4-ヒドロキシフェニル)-7-ヒドロキシクロマン、1-[1-(3-{1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル}-4,6-ジヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]-3-(1-(3-{1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル}-4,6-ジヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル)ベンゼン、4,6-ビス{1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル}-1,3-ジヒドロキシベンゼン等が挙げられる。
【0048】
これらの中で、母核としては、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、1,1,1-トリス(p-ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’-〔1-〔4-〔1-〔4-ヒドロキシフェニル〕-1-メチルエチル〕フェニル〕エチリデン〕ビスフェノールが好ましい。
【0049】
また、上述した1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとしては、1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリドが好ましく、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸クロリド、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロリドがより好ましく、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロリドがさらに好ましい。
【0050】
上述した1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸アミドとしては、2,3,4-トリアミノベンゾフェノン-1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸アミドが好ましい。
【0051】
上述したフェノール性化合物またはアルコール性化合物(母核)と、1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとの縮合反応においては、フェノール性化合物またはアルコール性化合物中のOH基数に対して、好ましくは30モル%以上85モル%以下、より好ましくは50モル%以上70モル%以下に相当する1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドを用いることができる。尚、上記縮合反応は、公知の方法によって実施することができる。
【0052】
以上の(B-2)光酸発生剤としては、オキシムスルホネート化合物、オニウム塩、スルホンイミド化合物、キノンジアジド化合物が好ましく、オキシムスルホネート化合物、キノンジアジド化合物がより好ましい。
【0053】
(B-2)光酸発生剤を上述した化合物とすることで、それを含有する本実施形態の感放射線性組成物は、感度および溶解性を向上させることができる。光酸発生剤の中でも、特にキノンジアジド化合物を用いた時にポジ型の感放射線性組成物とすることができる。
【0054】
(B-2)光酸発生剤の含有量としては、(A)成分100質量部に対して、0.1質量部~50質量部が好ましく、1質量部~30質量部がより好ましい。(B-2)光酸発生剤の含有量を上記範囲とすることで、本実施形態の感放射線性組成物の感度を最適化し、表面硬度が高い硬化膜を形成でき、そうした特性に優れた本発明の実施形態の絶縁膜を提供することができる。
【0055】
(C)(メタ)アクリル化合物、エポキシ化合物について
本発明の感放射線性組成物は、(C)(メタ)アクリル化合物、エポキシ化合物の少なくともいずれか一方を含むことができる。
(メタ)アクリル化合物としては、2官能(メタ)アクリル酸エステルや、3官能以上の(メタ)アクリル酸エステル等の多官能(メタ)アクリル酸エステルを使用することができる。
2官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート等が挙げられる。
【0056】
3官能以上の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリ(2-アクリロイルオキシエチル)フォスフェート、トリ(2-メタクリロイルオキシエチル)フォスフェート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレートの他、直鎖アルキレン基及び脂環式構造を有し、かつ2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、分子内に1個以上のヒドロキシ基とを有し、かつ3個、4個又は5個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物とを反応させて得られる多官能ウレタンアクリレート系化合物等が挙げられる。
【0057】
当該感放射線性組成物おける多官能アクリレートの含有量としては特に限定されないが、[A]成分100質量部に対する下限としては、20質量部が好ましく、30質量部がより好ましい。一方、この上限としては、150質量部が好ましく、100質量部がより好ましい。当該感放射線性組成物おける多官能アクリレートの含有量を上記範囲とすることにより、得られる硬化膜の諸特性をより効果的に高めることなどができる。
【0058】
エポキシ化合物には、オキセタニル基を有する化合物も含む。
高分子量のエポキシ樹脂や低分子量のエポキシ化合物もいずれも用いることができる。例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、そのアルキレンオキシド変性物、およびこれらの水素化物;3,3',5,5'-テトラメチル-4,4'-ビフェノール型エポキシ樹脂および4,4'-ビフェノール型エポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;3,4,3’,4’-ジエポキシビシクロヘキサン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート等の脂環式エポキシ樹脂;トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(α-メチルグリシジル)イソシアヌレートに代表される1,3,5-トリアジン核誘導体エポキシ樹脂等のトリアジン誘導体エポキシ樹脂;ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、トリスフェニロールメタン型エポキシ樹脂、テトラキスフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂が挙げられる。
【0059】
低分子量のエポキシ化合物としては、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル-3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の化合物が挙げられる。
【0060】
オキセタニル基を有する化合物としては、1分子当り2個以上のオキセタニル基を有する化合物が挙げられる。具体的には、3-エチル-3-{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン、3,7-ビス(3-オキセタニル)-5-オキサ-ノナン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、ビス[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル、ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,3-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)プロパン、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ヘキサン、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシメチル)ベンゼン、1,3-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシメチル)ベンゼン、1,2-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシメチル)ベンゼン、4,4’-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシメチル)ビフェニル、2,2’-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシメチル)ビフェニル、3-〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕プロピルトリアルコキシシランの加水分解縮合物、3-エチルオキセタン-3-イルメタノールとシランテトラオール重縮合物の縮合反応生成物等が挙げられる。
【0061】
本発明の感放射線性組成物に用いる有機溶媒は特に限定されるものではなく、例えばアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒等が挙げられる。有機溶媒は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
アルコール系溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、t-ブチルアルコール、1-ヘキサノール、1-オクタノール、1-ノナノール、1-ドデカノール、1-メトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコール等のアルキルアルコール;
ベンジルアルコール等の芳香族アルコールなどが挙げられる。
エーテル系溶媒としては、例えば
ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、 エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル;
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル;
ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のジエチレングリコールモノアルキルエーテル;
ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテル;
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のジプロピレングリコールモノアルキルエーテルなどが挙げられる。
エステル系溶媒としては、例えば
酢酸エチル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等のカルボン酸エステル;
プロピレングリコールジアセテート等の多価アルコールカルボキシレート系溶媒;
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒などが挙げられる。
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン等が挙げられる。
これらの中でも、エーテル系溶媒及びエステル系溶媒が好ましく、エステル系溶媒がより好ましく、多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒がさらに好ましい。また、エーテル系溶媒及びエステル系溶媒の中では、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及び3-メトキシプロピオン酸メチルが好ましい。
【0062】
当該感放射線性組成物における有機溶媒の含有量は特に限定されないが、固形分濃度が以下の範囲内となるように調製されることが好ましい。当該感放射線性組成物における固形分濃度の下限としては、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、20質量%がさらに好ましい。一方、この固形分濃度の上限としては、60質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、40質量%がさらに好ましい。
【0063】
(その他の成分)
当該感放射線性組成物は、上述した(A)重合体、(B)感放射線性化合物、(C)(メタ)アクリル化合物、エポキシ化合物、有機溶媒以外の他の成分をさらに含有することができる。 このような他の成分としては、硬化剤、硬化促進剤、密着助剤、酸化防止剤、界面活性剤等を挙げることができる。但し、当該感放射線性組成物に占める(A)重合体、(B)感放射線性化合物、(C)(メタ)アクリル化合物、エポキシ化合物、有機溶媒以外の他の成分の含有割合としては、10質量%以下が好ましいことがあり、1質量%以下がより好ましいこともある。
【0064】
(硬化温度)
当該感放射線性組成物は、上述のように、比較的低温の加熱によっても十分なエッチング薬液耐性及び酸素アッシング耐性を有する硬化膜を得ることができる。当該感放射線性組成物は、例えば60℃以上120℃以下の温度範囲の加熱により硬化可能な組成物であることが好ましく、60℃以上100℃以下の温度範囲の加熱により硬化可能な組成物であることがより好ましい。
【0065】
(感放射線性組成物の調製方法)
当該感放射線性組成物は、各成分を所定の割合で混合し、(C)有機溶媒に溶解させることにより調製できる。調製した組成物は、例えば孔径0.2μm程度のフィルタ等でろ過することが好ましい。
【0066】
<表示装置用絶縁膜>
本発明の一実施形態に係る表示装置用絶縁膜は、当該感放射線性組成物から形成されている硬化膜である。当該表示装置用絶縁膜は、パターニングされた膜であってよい。当該表示装置用絶縁膜は、比較的低温の加熱によっても十分なエッチング薬液耐性及び酸素アッシング耐性を有する硬化膜を得ることができる感放射線性組成物から形成されているため、歩留まりが高く、耐久性等にも優れる。
【0067】
当該表示装置用絶縁膜は、層間絶縁膜として好適であり、その他、平坦化膜、スペーサー、保護膜等に用いられてもよい。当該表示装置用絶縁膜は、液晶表示素子を備える表示装置(液晶表示装置)、有機EL素子を備える表示装置(有機EL装置)、電子ペーパー等の表示装置に用いることができる。また、後述するように、当該表示装置用絶縁膜は、タッチパネル付き有機EL装置等、タッチパネル付き表示装置におけるタッチパネルの層間絶縁膜として好適である。
【0068】
当該表示装置用絶縁膜は、比較的厚い場合も、クラックの発生が生じ難い。従って、当該表示装置用絶縁膜は、厚膜化が可能である。当該表示装置用絶縁膜の平均厚さの下限としては、例えば0.1μmであってよいが、0.5μmが好ましく、1μmがより好ましく、2μmがさらに好ましいこともある。一方、この平均厚さの上限としては、例えば10μmであり、6μmであってもよく、4μmであってもよい。
【0069】
<表示装置>
本発明の一実施形態に係る表示装置は、当該表示装置用絶縁膜を有する。当該表示装置としては、液晶表示装置、有機EL装置、電子ペーパー等が挙げられる。これらの中でも、本発明の一実施形態に係る表示装置は、有機EL装置であることが好ましい。
【0070】
有機EL装置は、有機EL素子を備える。有機EL素子は、通常、陽極層、有機発光層及び陰極層を含む積層構造を有する。当該有機EL装置は、有機EL素子を有する基板に積層されたタッチパネルを有することが好ましい。このタッチパネルにおける少なくとも一部の絶縁膜に、本発明の一実施形態に係る表示装置用絶縁膜が用いられていることが好ましい。特に、有機EL素子を有する基板に、粘着層や接着層を介することなく積層されるタッチパネルの絶縁膜に、本発明の一実施形態に係る表示装置用絶縁膜が用いられていることが好ましい。このようにすることで、有機EL素子が形成された基板に、タッチパネルを直接積層することができるため、タッチパネル付き有機EL装置の薄型化を可能とする。また、当該感放射線性組成物は、比較的低温の加熱によっても十分なエッチング薬液耐性及び酸素アッシング耐性を有する硬化膜を得ることができるため、製造工程での有機EL素子の劣化を抑制することができ、歩留まりを高めることなどができる。また、このように、当該感放射線性組成物を用いて比較的低温の加熱で絶縁膜を形成することで製造工程での有機EL素子の劣化を抑制することができるため、タッチパネル付き有機EL装置以外の、有機EL素子を備える各種有機EL装置における絶縁膜の形成に、当該感放射線性組成物は特に好適に用いることができる。
【0071】
図1にタッチパネル付き有機EL装置の一形態を示す。図1のタッチパネル付き有機EL装置10は、有機EL表示基板20とタッチパネル30とを備える。有機EL表示基板20は、支持基板21、陽極層22、有機発光層23、陰極層24、接着層25及び封止基板26がこの順で積層された構造を有する。なお、少なくとも陽極層22、有機発光層23及び陰極層24が有機EL素子を構成する。有機発光層23としては、例えば、陽極層22側から、正孔注入層、正孔輸送層、有機EL発光層、電子輸送層及び電子注入層がこの順で積層した構造のものを採用することができる。
【0072】
タッチパネル30は、第1センサ電極31、層間絶縁膜33及び第2センサ電極32がこの順で積層された、静電容量方式のものである。タッチパネル30は、第1センサ電極31、第1センサ電極31に向かい合って配置される第2センサ電極32、層間絶縁膜33、及び最表面に配置される透明基板34を有する。本実施形態において、第1センサ電極31は、有機EL表示基板20の封止基板26上に直接形成されている。層間絶縁膜33は、第1センサ電極31と第2センサ電極32とを絶縁する透明な絶縁膜であり、当該感放射線性組成物から形成されている。なお、タッチパネルは、このような静電容量方式のものに限定されるものではない。
【0073】
<表示装置用絶縁膜の形成方法>
本発明の一実施形態に係る表示装置用絶縁膜の形成方法は、基板上に直接又は間接に塗膜を形成する工程(以下、「塗膜形成工程」ともいう。)、上記塗膜の少なくとも一部に放射線を照射(露光)する工程(以下、「放射線照射工程」ともいう。)、上記塗膜を現像する工程(以下、「現像工程」ともいう。)、及び上記塗膜を加熱する工程(以下、「加熱工程」ともいう。)をこの順に備え、上記塗膜を本発明の一実施形態に係る感放射線性組成物により形成する。当該形成方法は、任意工程として、放射線照射工程と現像工程との間に、上記塗膜を加熱する工程(以下、「PEB工程」ともいう。)を備えていてもよい。
【0074】
当該形成方法によれば、上述した当該感放射線性組成物を用いているため、良好な形状にパターニング可能であり、比較的低温の加熱によっても十分なエッチング薬液耐性及び酸素アッシング耐性を有する絶縁膜を得ることができる。また、塗膜を形成する基板が有機EL素子を含むものであっても、加熱工程を比較的低温で行うことで、有機EL素子の劣化を抑制することが可能となる。以下、各工程について説明する。
【0075】
(塗膜形成工程)
本工程では、基板上に直接又は他の層を介して当該感放射線性組成物を塗布した後、好ましくは塗布面を加熱(プレベーク)することにより有機溶媒等を除去して、塗膜を形成する。上記基板の材質としては、例えばガラス、石英、シリコン、樹脂等が挙げられる。上記樹脂の具体例としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンの開環重合体及びその水素添加物等が挙げられる。
【0076】
上記基板は、有機EL素子等を含むものであってよい。また、上記基板は、塗布面に電極、配線等が設けられているものであってよい。このような基板としては、上述した図1中の有機EL表示基板20において、第1センサ電極31が形成されたものを例示することができる。
【0077】
当該感放射線性組成物の塗布方法としては特に限定されず、例えばスプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法等の適宜の方法を採用することができる。これらの塗布方法の中でも、特にスピンコート法及びスリットダイ塗布法が好ましい。プレベークの条件は、各成分の種類、配合割合等によっても異なるが、例えば60℃以上120℃以下、より好ましくは100℃以下の温度で1分以上10分以下の加熱時間とすればよい。
【0078】
(放射線照射工程)
本工程では、塗膜形成工程で形成された塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する。通常、塗膜の一部に放射線を照射する際には、所定のパターンを有するフォトマスクを介して照射する。上記放射線としては、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を使用できる。これらの放射線の中でも、波長が190nm以上450nm以下の範囲にある放射線が好ましく、365nmの紫外線を含む放射線がより好ましい。
【0079】
本工程における露光量の下限としては、放射線の波長365nmにおける強度を照度計(OAI Optical Associates Inc.社の「OAI model356」)により測定した値として、10mJ/cmが好ましく、50mJ/cmがより好ましい。また、上記露光量の上限としては、上記照度計により測定した値として、2,000mJ/cmが好ましく、1,000mJ/cmがより好ましい。
【0080】
(PEB工程)
PEB工程を設ける場合、PEB条件としては、各成分の種類、配合割合等によっても異なるが、例えば60℃以上120℃以下、より好ましくは100℃以下の温度で1分以上10分以下の加熱時間とすればよい。
【0081】
(現像工程)
本工程では、放射線照射後の塗膜を現像液で現像することにより所定のパターンを形成する。上記現像液としてはアルカリ現像液が好ましい。アルカリ現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ性水溶液などが挙げられる。また、アルカリ現像液には、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加してもよい。
【0082】
現像方法としては、例えば液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法、スプレー法等の適宜の方法を採用することができる。現像時間は、感放射線性用組成物の組成によって異なるが、例えば10秒以上180秒以下である。このような現像処理に続いて、例えば流水洗浄を30秒以上90秒以下の処理時間で行った後、例えば圧縮空気や圧縮窒素で風乾させることによって、所望のパターンを形成することができる。
【0083】
(加熱工程)
本工程では、現像してパターニングされた塗膜を、ホットプレート、オーブン等の加熱装置を用いて加熱(ポストベーク)することにより、所望のパターンを有する表示装置用絶縁膜を得る。なお、現像工程と加熱工程との間に、塗膜に対して紫外線等放射線の照射を施してもよい。このときの露光量としては、例えば100mJ/cm以上2,000mJ/cm以下とすることができる。加熱温度の下限としては、60℃が好ましく、80℃であってもよい。加熱温度を上記下限以上とすることで、十分に硬化された絶縁膜を得ることができる。一方、上記加熱温度の上限としては、120℃が好ましく、100℃がより好ましい。上記加熱温度を上記下限以上とすることにより、例えば基板に備わる有機EL素子の劣化を抑制しつつ、十分に硬化された絶縁膜を得ることができる。また、加熱温度を上記上限以下とすることにより、急激な膜収縮等の過度の応力発生を抑制できるため、クラックの発生を抑制できる。このように、加熱工程においては、加熱を60℃以上120℃以下の温度範囲で行うことが好ましい。加熱時間は、加熱機器の種類により異なるが、例えばホットプレート上で加熱する場合には5分以上30分以下、オーブン中で加熱する場合には10分以上90分以下とすればよい。なお、加熱は、空気中で行っても、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。また、2回以上の加熱工程を行うステップベーク法を用いることも可能である。
【0084】
(その他の工程)
当該表示装置用絶縁膜を有するタッチパネル等を製造する場合、表示装置用絶縁膜を形成した後、更なる電極、配線等(例えば、図1のタッチパネル30における第2センサ電極32)を形成するためなどの他の工程が行われる。このような工程としては、電極形成工程、配線形成工程、エッチング工程、アッシング工程等が挙げられる。電極や配線の形成には、印刷や蒸着等の公知の方法を採用することができる。エッチングは、例えばアミン系溶液等の公知のエッチング薬液を用いて行うことができる。アッシングは、酸素アッシング等の公知のアッシング方法により行うことができる。なお、タッチパネル等を製造する際、絶縁膜の形成や、電極、配線等の形成などは、それぞれ複数回行われてもよい。
【0085】
<重合体>
下記式(3)で示される構造部位を有する重合体である。
【化7】

式(3)中、Xは炭素数1から12のアルカンジイル基を示す。nは2から100の整数を示す。炭素数1から12のアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキサメチレン基が特に好ましい。
また、下記式(4)で示される構造部位を有する重合体である。
【化8】

式(4)中、Xは炭素数1から12のアルカンジイル基を示す。mは2から100の整数を示す。炭素数1から12のアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキサメチレン基が特に好ましい。
上記重合体は、本発明の感放射線性組成物に好適に用いられる。
【0086】
当該重合体は、表示装置用絶縁膜を形成するための感放射線性組成物の成分として好適に用いることができる。当該重合体は、上述した本発明の一実施形態に係る感放射線性組成物における(A)重合体の好適な一形態である。
【実施例
【0087】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0088】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
以下に示す重合体の合成例において、得られた重合体の重量平均分子量(Mw)は、下記条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりを測定した。
装置:昭和電工社の「GPC-101」
カラム:昭和電工社の「GPC-KF-801」、「GPC-KF-802」、「GPC-KF-803」及び「GPC-KF-804」を連結したもの
移動相:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0089】
以下に(A)重合体の合成例を示す。(A)重合体は以下の合成例に限定されるものではない。合成例で使用した化合物の製品名を以下に示す。
PAM-E:信越シリコーン製シリコーンジアミン、官能基当量=130g/mol
KF8010:信越シリコーン製シリコーンジアミン、官能基当量=430g/mol
A-BPEF:新中村化学製2官能フルオレンアクリレート
A-BPE-2:新中村化学製2官能ビスフェノールAアクリレート
【0090】
(合成例1)
滴下ロート、温度計および窒素導入管を備えた100mL三口フラスコに両末端アミノ変性のシリコーンオイルとしてKF8010(信越シリコーン製シリコーンジアミン、官能基当量=430g/mol)を8.77g(10.2mmol)、テトラヒドロフランを35.1g仕込み水冷した。次に、滴下ロートに両末端にイソシアネート基を有する化合物としてヘキサメチレンジイソシアネートを1.68g(10.0mmol)、1-メチル-2-ピロリドン6.72gを仕込み、内温が40℃以下になるようにゆっくり滴下し、そのまま室温で8時間攪拌した。
次に滴下ロートに無水トリメリット酸クロリド4.21g(20.0mmol)、1-メチル-2-ピロリドン16.8gを仕込み。氷冷しながら内温が30℃以下になるようにゆっくり滴下し、そのまま室温で8時間攪拌を行った。反応終了後、500mLの水に注いで再沈殿させて上澄みの除去を2回繰り返した。続いて沈殿を1-メチル-2-ピロリドン140gに溶かし、固形分濃度20%になるまで濃縮した。得られた重合体(A-1)とした。GPCで測定した(A-1)の重量平均分子量は8,000であった。
【化9】
【0091】
(合成例2)
温度計および窒素導入管を備えた100mL三口フラスコにPAM-E(信越シリコーン製シリコーンジアミン、官能基当量=130g/mol)を2.6g(10.mmol)、1-メチル-2-ピロリドンを5.2g仕込み水冷した。次に、滴下ロートに9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンジアクリレート(A-BPEF、新中村化学製2官能フルオレンアクリレート)を5.47g(10.0mmol)、1-メチル-2-ピロリドン10.9gを仕込み、内温が40℃以下になるようにゆっくり滴下し、そのまま室温で3時間攪拌した。次に、こはく酸無水物2.0g(20.0mmol)、1-メチル-2-ピロリドン4.0gを仕込み、内温が30℃以下になるようにゆっくり滴下し、100℃で4時間攪拌を行った。反応終了後、1-メチル-2-ピロリドンを加えて固形分濃度20%になるように調整した。得られた重合体(A-2)とした。GPCで測定した(A-2)の重量平均分子量は3,900であった。
【化10】
【0092】
(合成例3~7)
表1の組成の通り、合成例1と同様の手法で合成を行った。結果を表1に示す。
重合体(A-1)および(A-4)のH-NMRの測定結果を示す。H-NMR(400MHz)は、溶媒にDMSO-dを用い、JEOL社製装置を用いて測定した。
(A-1):7.6~8.2ppm付近に芳香環、0.2~3.8ppm付近にアルキレン、0ppm付近にSi-CH由来のプロトンのピークを確認した。
(A-4):6.7~7.9ppm付近に芳香環、1.2~4.5ppm付近にアルキレン、0ppm付近にSi-CH由来のプロトンのピークを確認した。
【表1】

表中「-」は、使用しなかったことを示す。
【0093】
(比較合成例1)
3つ口フラスコに重合溶剤としてγ-ブチロラクトン(γ-BL)390gを加えた後、ジアミン化合物として2,2’-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン120gを重合溶剤中に加えた。ジアミン化合物を重合溶剤に溶解させた後、酸二無水物として4,4’-オキシジフタル酸二無水物71gを加えた。その後、60℃で1時間反応させた後、末端封止剤としての無水マレイン酸19gを加えた。60℃で更に1時間反応させた後、昇温して180℃で4時間反応させることで、重合体(A-8)を含む固形分濃度が35質量%のγ-BL溶液を約600g得た。得られた重合体(A-8)のMwは8000であった。
【0094】
(比較合成例2)
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)5.2質量部及びジエチレングリコールメチルエチルエーテル160質量部を仕込んだ。引き続き、メタクリル酸10質量部、グリシジルメタクリレート15質量部、シクロヘキシルマレイミド15質量部、4-イソプロペニルフェノール10質量部、メチルメタクリレート25質量部、及びα-メチルスチレンダイマー0.5質量部を仕込んで窒素置換した後、ゆるやかに撹拌を始めた。溶液の温度を70℃に上昇させ、この温度を5時間保持することによって重合体(A-9)を含むアクリル系重合体溶液を得た。重合体(A-9)のMwは11,000であった。
【0095】
(比較合成例3)
反応容器にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)125質量部を仕込み80℃まで昇温した。この反応容器にメタクリル酸12質量部、ベンジルメタクリレート45質量部、N-フェニルマレイミド20質量部、スチレン5質量部、2-ヒドロキシメタクリレート18質量部と、重合開始剤として2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)5質量部及びPGMEAを25質量部混合して得られる溶液を各々2時間かけて反応溶液に滴下した。滴下後80℃で2時間加熱し、100℃で1時間加熱した。重合体(A-10)を含むアクリル系重合体溶液を得た。重合体(A-10)のMwは12,000であった。
【0096】
以下の手順で組成物の調整及び評価を行った。結果を表2に示す。
(感放射線性組成物の調整)
表2に示す組成で(A)~(G)の成分を配合、調整した。使用化合物は以下の通り。
(B)感放射線性化合物
B-1:4,4‘-[1-[4-[1[(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(1.0モル)と1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロリド(3.0モル)との縮合物
B-2:1,1,1-トリ(p-ヒドロキシフェニル)エタン(1.0モル)と1,2―ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロリド(3.0モル)との縮合物
B-3:光ラジカル重合開始剤 NCI-930(ADEKA社製)
(C)(メタ)アクリレート化合物、エポキシ化合物
C-1:ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル
C-2:トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、商品名「デナコールEX-321L」(ナガセケムテックス(株)社製)
C-3:ジペンタエリスリトールアクリレート、商品名「A-DPH」(新中村化学工業(株)製)
C-4:ペンタエリスリトールテトラアクリレート、商品名「A-TMMT」(新中村化学工業(株)製)
C-5:トリメチロールプロパントリアクリレート、商品名「アロニックスM-309」(東亞合成(株)製)
【0097】
(アウトガスの評価)
硬化膜のアウトガスはP&T GC-MSにて測定した。Siウェハ上に各組成物をスピンコートしプレベーク100℃2分間行った。アライナー(SussMicrotec社製、型式「MA-100」)を用い、高圧水銀灯からの紫外線(波長365nm)の露光量300mJ/cmになるように塗膜の全面に照射した。その後、実施例10,11、比較例3に関しては2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて25℃、60秒間液盛り法にて現像を行い超純水で60秒間流水洗浄を行い乾燥させた。
次いで、250℃で30分間加熱した。その後、一定の面積に切り出した基板片をガラスチューブ内に封入し、250℃15分加熱し、発生ガスをGC-MS装置により分析した。発生したガスの総量を計測し、以下の基準で評価を行った。
◎:発生したガスが硬化膜重量に対し200ppm未満
〇:発生したガスが硬化膜重量に対し200ppm以上1000ppm未満
×:発生したガスが硬化膜重量に対し1000ppm以上
◎:発生したガスが硬化膜重量に対し200ppm未満
〇:発生したガスが硬化膜重量に対し200ppm以上1000ppm未満
×:発生したガスが硬化膜重量に対し1000ppm以上
【0098】
(クラック耐性の評価)
厚み125μmのカプトンフィルム上にスピンコートした後プレベーク100℃2分にて膜を形成した。アライナー(SussMicrotec社製、型式「MA-100」)を用い、高圧水銀灯からの紫外線を波長365nmにおける露光量300mJ/cmになるように塗膜の全面に照射した。その後実施例10,11、比較例3に関しては2.38%質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて25℃、60秒間液盛り法にて現像を行い超純水で60秒間流水洗浄を行い乾燥させた。
続いて、前記フィルムを空気下、窒素下にて、250℃30分ポストベークを行い膜厚2.5μmの硬化膜を作製した。本硬化膜付フィルムを曲率半径350μmになるよう心材に固定し、折り曲げ後の膜の状態をSEMにて観察した。
◎:心材無でもクラック 無
〇:曲率半径350μmの心材でクラック 無
×:曲率半径350μmの心材でクラック あり
【0099】
(解像度の評価)
シリコン基板上に、調製した各感放射線性樹脂組成物をスピンコートにて塗布した後、
100℃にて2分間ホットプレート上でプレベークすることにより膜厚2.5μmの塗膜を形成した。
得られた塗膜に対し露光機(アライナー SussMicrotec社製、型式「MA-100」)を用いて、365nm波長で露光量300mJ/cmにより、1辺が2μmの正方形パターンが6μm間隔で配置されているマスクを介して、露光を行った。その後、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて25℃、60秒間液盛り法にて現像を行った。
次いで超純水で60秒間流水洗浄を行い乾燥させてシリコン基板上にパターンを形成した。こうして得られた一辺が2μmの正方形パターンを走査電子顕微鏡((株)日立製作所製S-4200)を用いて1500倍の倍率で断面形状を観察した。以下に示す評価基準で解像度の評価を行った。
〇:パターン開口部が残差なく形成されている
×:パターン開口部に残差がある
【0100】
(反りの評価)
離型材付き基板上に各組成物を塗布し、その後ホットプレートを用いて100℃2分間加熱し、厚さ10μmの均一な塗膜を作製した。次いで、アライナー(SussMicrotec社製、型式「MA-100」)を用い、高圧水銀灯からの紫外線を波長365nmにおける露光量300mJ/cmになるように塗膜の全面に照射した。その後実施例10,11,比較例3に関しては2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて25℃、60秒間液盛り法にて現像を行い超純水で60秒間流水洗浄を行い乾燥させた。
次いでオーブンを用いて250℃で30分間加熱した。
加熱処理した後の塗膜を5cm角に切り出し、端部の膜の剥がれの高さを測定した。
以下の評価基準で評価した。
〇:端部の膜の剥がれの高さが10mm以下である場合
×:端部の膜の剥がれの高さが10mm以上である場合
【0101】
【表2】
【0102】
表2に示されるように、実施例1~11は、アウトガスの発生が少なく、クラック耐性も良好であり、解像度も優れる。さらに、反りの評価においても良好な結果が示された。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の感放射線性は、表示装置の絶縁膜等の形成材料として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0104】
10 タッチパネル付き有機EL装置
20 有機EL表示基板
21 支持基板
22 陽極層
23 有機発光層
24 陰極層
25 接着層
26 封止基板
30 タッチパネル
31 第1センサ電極
32 第2センサ電極
33 層間絶縁膜
34 透明基板
図1