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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】エンジンの排気循環装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/15 20160101AFI20231212BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20231212BHJP
   F02B 77/11 20060101ALI20231212BHJP
   F02M 26/23 20160101ALI20231212BHJP
   F02M 26/41 20160101ALI20231212BHJP
【FI】
F02M26/15
F01N3/24 S
F02B77/11 D
F02M26/23
F02M26/41 311
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020180182
(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公開番号】P2022071297
(43)【公開日】2022-05-16
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 智宣
(72)【発明者】
【氏名】小島 裕司
(72)【発明者】
【氏名】藤田 典昭
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健
(72)【発明者】
【氏名】苅谷 喬
(72)【発明者】
【氏名】冨永 敬幸
(72)【発明者】
【氏名】松本 直也
(72)【発明者】
【氏名】松村 優作
(72)【発明者】
【氏名】江田 紘基
(72)【発明者】
【氏名】西原 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】大村 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】井村 嵐
(72)【発明者】
【氏名】田中 房利
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】梅崎 慎大郎
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-140711(JP,A)
【文献】特開平6-101462(JP,A)
【文献】特開2006-257905(JP,A)
【文献】特開2020-12396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/13
F01N 3/10
F02B 77/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多気筒エンジンの排気循環装置であって、
上記エンジンのシリンダヘッドに接続され、上記エンジンの各気筒から排出される排気ガスを集合させる排気マニホールドと、
上記排気マニホールドにおける排気ガス流れの下流側の端部に接続され、上記排気ガスを浄化する触媒と、
上記触媒よりも排気ガス流れの下流側に設けられ、上記排気ガスの一部を、上記エンジンの吸気側に再循環させるEGRガスとして取り出すEGRガス取出口と、
上記シリンダヘッドを貫通した上記EGRガスを通すためのヘッド内EGR通路と、
上記EGRガス取出口から延び、上記EGRガスを上記ヘッド内EGR通路に導くEGRパイプとを備え、
上記触媒は、上記排気ガスが当該触媒内部を上記エンジンの気筒列方向の一方から他方に向かって流れるように配置され、
上記EGRガス取出口は、上記エンジンの気筒列方向の中央よりも上記他方の側に位置し、
上記ヘッド内EGR通路の入口は、上記エンジンの気筒列方向の中央よりも上記一方の側に位置し、
上記EGRガス取出口から延びる上記EGRパイプが上記ヘッド内EGR通路の入口に直接接続されていることを特徴とするエンジンの排気循環装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記EGRガス取出口は上記気筒列方向の上記他方に向かって開口していて、
上記EGRパイプは、上記EGRガス取出口から上記他方に向かって流れる上記EGRガスが上記ヘッド内EGR通路の入口が存する上記気筒列方向の一方に向かうように該EGRガスの流れ方向を変える湾曲部を有することを特徴とするエンジンの排気循環装置。
【請求項3】
請求項2において、
上記EGRパイプは、上記湾曲部の通路断面積が、上記湾曲部に続いて上記ヘッド内EGR通路の入口まで延びる下流部分の通路断面積よりも大きくなっていることを特徴とするエンジンの排気循環装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
上記排気マニホールド及び上記触媒を覆うヒートインシュレータを備え、
上記EGRパイプが上記ヒートインシュレータの内部に配置されていることを特徴とするエンジンの排気循環装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
上記エンジンは直列4気筒の4サイクルエンジンであり、
上記排気マニホールドは、上記エンジンの気筒列方向における中央側2つの各気筒に通ずる独立排気管が集合した第1集合管と、上記エンジンの気筒列方向における両端側2つの各気筒に通ずる独立排気管が集合した第2集合管と、上記第1集合管と上記第2集合管が集合した第3集合管とを備える4-2-1型であり、
上記エンジンは、上記中央側2つの気筒の排気時期が重ならないように、且つ上記両端側2つの気筒の排気時期が重ならないように、上記4気筒の排気順序が定められており、
上記第3集合管に上記触媒が接続されていることを特徴とするエンジンの排気循環装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一において、
さらに、上記EGRガスを冷却するEGRクーラを備え、
上記EGRクーラは、上記エンジンにおける上記排気マニホールドが配置された排気側とは反対の吸気側に配置され、上記ヘッド内EGR通路を通過したEGRガスが導入されることを特徴とするエンジンの排気循環装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンの排気循環装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用エンジンにおいては、排気ガス中のNOx(窒素酸化物)の低減や熱効率の向上を目的として、排気ガスの一部を燃焼室に再度吸入させる排気再循環(EGR)が行なわれている。例えば、特許文献1には、排気ガス浄化用触媒の下流側の排気管から排気ガスの一部をEGRガスとして取り出すことが記載されている。この特許文献1では、上記触媒の傍らにEGRガスを冷却するEGRクーラが配置されている。そうして、上記触媒下流側の排気管とEGRクーラが長さの短い上流側EGRパイプによって接続されている。EGRクーラは、シリンダヘッドの内部を通るヘッド内EGR通路に下流側EGRパイプによって接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-124692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、排気管のEGRガス取出口からEGRパイプに流入する排気ガスが高温になると、EGRパイプ自体の温度も高くなってくる。このEGRパイプの温度は、そのパイプからの放熱があるため、上記排気管のEGRガス取出口から離れるに従って低くなる。しかし、上記特許文献1の上流側EGRパイプのように、パイプ長さが短いケースでは、排気管のEGRガス取出口からEGRクーラに対する接続部に至る間での放熱量は少ない。そのため、EGRパイプの熱膨張量が大きくなるとともに、EGRパイプ先端の接続部でもその温度はそれ相応に高くなる。
【0005】
EGRパイプ先端の接続部はEGRクーラによって熱変形が拘束されているから、その接続部に温度変化に応じて熱応力が発生するところ、熱膨張量が大きくなると、それに応じて熱応力も大きくなる。従って、EGR及びその停止による熱サイクルが加わると、弾塑性変形の繰返しによるEGRパイプの熱疲労も大きくなり、外力が加わったときに接続部が破損し易くなる。特に、EGRパイプを重量物であるEGRクーラに接続しているケースでは、EGRクーラの振動(エンジンの振動に伴って生ずる)が加わるから、EGRパイプの接続部が破損し易い。
【0006】
そこで、本発明は、EGRパイプが排気ガスから受ける熱害に対策する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、触媒下流側のEGRガス取出口から延びるEGRパイプをヘッド内EGR通路にEGRクーラを介さずに直接接続するようにした。
【0008】
ここに開示する多気筒エンジンの排気循環装置は、
上記エンジンのシリンダヘッドに接続され、上記エンジンの各気筒から排出される排気ガスを集合させる排気マニホールドと、
上記排気マニホールドにおける排気ガス流れの下流側の端部に接続され、上記排気ガスを浄化する触媒と、
上記触媒よりも排気ガス流れの下流側に設けられ、上記排気ガスの一部を、上記エンジンの吸気側に再循環させるEGRガスとして取り出すEGRガス取出口と、
上記シリンダヘッドを貫通した上記EGRガスを通すためのヘッド内EGR通路と、
上記EGRガス取出口から延び、上記EGRガスを上記ヘッド内EGR通路に導くEGRパイプとを備え、
上記触媒は、上記排気ガスが当該触媒内部を上記エンジンの気筒列方向の一方から他方に向かって流れるように配置され、
上記EGRガス取出口は、上記エンジンの気筒列方向の中央よりも上記他方の側に位置し、
上記ヘッド内EGR通路の入口は、上記エンジンの気筒列方向の中央よりも上記一方の側に位置し、
上記EGRガス取出口から延びる上記EGRパイプが上記ヘッド内EGR通路の入口に直接接続されていることを特徴とする。
【0009】
これによれば、触媒、EGRガス取出口、ヘッド内EGR通路の入口及びEGRパイプの上記レイアウトにより、EGRパイプをEGRクーラに接続する場合に比べて、EGRガス取出口からヘッド内EGR通路の入口に延びるEGRパイプの長さを長くすることが可能になる。従って、EGRパイプは、EGRガス取出口から高温の排気ガスが導入されても、ヘッド内EGR通路の入口に至る途中でのEGRパイプからの放熱量が大きくなるから、パイプ長が短い場合に比べて、パイプ全長の伸び量が小さくなり、ヘッド内EGR通路の入口付近の温度が大きく上昇することも避けられる。
【0010】
そのため、EGRパイプのヘッド内EGR通路に対する接続部に大きな熱応力を生ずることがなく、当該接続部の熱疲労が抑えられる。さらに、その接続部にEGRクーラから振動が直接加わることもない。よって、EGRパイプが上記接続部において早期に破損してしまうことがなくなり、その耐久性が高くなる。
【0011】
一実施形態では、上記EGRガス取出口は上記気筒列方向の上記他方に向かって開口していて、
上記EGRパイプは、上記EGRガス取出口から上記他方に向かって流れる上記EGRガスが上記ヘッド内EGR通路の入口が存する上記気筒列方向の上記一方に向かうように該EGRガスの流れ方向を変える湾曲部を有する。
【0012】
これによれば、EGRパイプは湾曲部を有することによって長さが長くなり、それだけ放熱面積が大きくなる。従って、EGRパイプにおけるヘッド内EGR通路の入口付近の温度上昇の抑制に有利になる。
【0013】
一実施形態では、上記EGRパイプは、上記湾曲部の通路断面積が、上記湾曲部に続いて上記ヘッド内EGR通路の入口まで延びる下流部分の通路断面積よりも大きくなっている。
【0014】
従って、EGRパイプの湾曲部において、EGRガスの流速が遅くなることによって放熱しやすくなるため、ヘッド内EGR通路の入口付近の温度上昇の抑制に有利になる。
【0015】
一実施形態では、上記排気マニホールド及び上記触媒を覆うヒートインシュレータを備え、
上記EGRパイプが上記ヒートインシュレータの内部に配置されている。
【0016】
これによれば、エンジンの運転を停止したときにEGRパイプに滞留するEGRガスが低温の外気で急激に冷却されることがヒートインシュレータによって防止される。従って、EGRパイプが長く、滞留するEGRガスが多い場合でも、EGRガスに含まれていた水分が凝縮することが抑制される。
【0017】
この実施形態は、EGRパイプの温度をEGRパイプのレイアウトとヒートインシュレータによってコントロールするものであり、エンジン運転時のEGRパイプのヘッド内EGR通路に対する接続部の破損を防止しつつ、エンジン停止時の凝縮水の発生を防止することができる。
【0018】
一実施形態では、上記エンジンは直列4気筒の4サイクルエンジンであり、
上記排気マニホールドは、上記エンジンの気筒列方向における中央側2つの各気筒に通ずる独立排気管が集合した第1集合管と、上記エンジンの気筒列方向における両端側2つの各気筒に通ずる独立排気管が集合した第2集合管と、上記第1集合管と上記第2集合管が集合した第3集合管とを備える4-2-1型であり、
上記エンジンは、上記中央側2つの気筒の排気時期が重ならないように、且つ上記両端側2つの気筒の排気時期が重ならないように、上記4気筒の排気順序が定められており、
上記第3集合管に上記触媒が接続されている。
【0019】
4-2-1型排気マニホールドでは、第1集合管及び第2集合管各々の集合部(独立排気管の合流部)において排気圧力波の反転を生じ、第3集合管の集合部でも排気圧力波の反転を生ずるが、第1集合管及び第2集合管各々が接続された2つの気筒は排気時期が重ならないから、排気干渉は起こらない。第3集合管の集合部での排気圧力波の反転は排気干渉を招くことがあるが、気筒からの排気ガスの排出に及ぼす影響は小さい。このように、4-2-1型の採用によって、排気干渉が抑えられて各気筒から排気ガスが排出されやすくなるため、EGRの安定化ないし効率化に有利になる。
【0020】
一実施形態では、上記EGRガスを冷却するEGRクーラを備え、
上記EGRクーラは、上記エンジンにおける上記排気マニホールドが配置された排気側とは反対の吸気側に配置され、上記ヘッド内EGR通路を通過したEGRガスが導入される。
【0021】
従って、EGRクーラとEGRパイプの間にシリンダヘッドが介在することにより、EGRクーラの振動はEGRパイプへは伝わりにくくなり、EGRパイプの破損防止に有利になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、EGRパイプにEGRガス取出口から高温の排気ガスが導入されても、EGRパイプからの放熱によって、EGRパイプのヘッド内EGR通路に対する接続部に大きな熱応力を生ずることがなくなって、該接続部の熱疲労が抑えられ、しかもその接続部にEGRクーラから振動が直接加わることもないから、EGRパイプが上記接続部において早期に破損してしまうことがなくなり、その耐久性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】エンジンをその斜め後方上側から見た斜視図。
図2】ヒートインシュレータを取り外したエンジンをその真後ろ上側から見た斜視図。
図3】エンジンをシリンダヘッドの部位で水平に切断して上方から見た断面図。
図4】触媒から延びるEGRパイプを示す斜視図。
図5】EGRパイプの湾曲部を構成する半割り管の斜視図。
図6】エンジンを図3のVI-VI線位置で切断して示す断面図。
図7】ヒートインシュレータを装着した図2と同様の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
<エンジンの基本構成>
図1に示すエンジン1は、車両を駆動する多気筒エンジンであり、本例では直列4気筒の4サイクルエンジンである。同エンジン1において、2はシリンダブロック、3はシリンダブロック2の上面に結合されたシリンダヘッド、4はシリンダブロック2の下面に結合されたオイルパン、9はシリンダヘッド3の上に固定されたシリンダヘッドカバーである。エンジン1は、車両の前部に搭載され、気筒列方向を車幅方向に配向した所謂横置きエンジンである。図1の矢符Fは車両前方を示し、矢符Rは車両後方を示す。この点は他の図も同様である。
【0026】
エンジン1の車両前側に吸気マニホールドが配置され、エンジン1の車両後側に排気マニホールド5が配置されている。吸気マニホールドからシリンダヘッド3の車両前側の側面に開口した各気筒の吸気ポートに吸気が導入される。各気筒の燃焼室で発生する排気ガスは、シリンダヘッド3の車両後側の側面に開口した各気筒の排気ポートから排気マニホールド5に排出される。このように、当該エンジン1は、車両前側が吸気側となり、車両後側が排気側となった前方吸気後方排気のエンジンである。
【0027】
以下の排気循環装置の説明において、「上流端」は、説明に係る物の排気ガス流れ又はEGRガス流れにおける上流側の端部を意味し、「下流端」は、説明に係る物の排気ガス流れ又はEGRガス流れにおける下流側の端部を意味する。
【0028】
<排気マニホールド>
排気マニホールド5は、第1集合管6、第2集合管7及び第3集合管8を備えている。第1集合管6は、エンジン1の気筒列方向における中央側2つの各気筒に通ずる独立排気管12,13を集合させた管である。第2集合管7は、エンジン1の気筒列方向における両端側2つの各気筒に通ずる独立排気管11,14を集合させた管である。第3集合管8は、第1集合管6と第2集合管7を集合させた管である。すなわち、排気マニホールド5は4-2-1型のマニホールドである。
【0029】
エンジン1は、上記中央側2つの気筒の排気時期が重ならないように、且つ上記両端側2つの気筒の排気時期が重ならないように、上記4気筒の排気順序が定められている。具体的には、車両左端側の気筒を第1気筒としてそこから車両右側に向かって並ぶ各気筒を第2気筒、第3気筒及び第4気筒と名付けると、排気は、第1気筒、第3気筒、第4気筒、第2気筒と順に進む。各気筒の排気ポートから、第1集合管6と第2集合管7との第3集合管8に対する集合位置までの距離を長くとることによって排気干渉が抑えられている。
【0030】
図2にも示すように、独立排気管11~14はシリンダヘッド3の車両後側の側面から車両後方に延びている。上記両端側2つの各気筒に通ずる独立排気管11,14は、上記中央側2つの各気筒に通ずる独立排気管12,13よりも長い。両端側の独立排気管11,14は、中央側の独立排気管12,13が集合してなる第1集合管6の下側において集合して第2集合管7に続いている。第1集合管6と第2集合管7は、前者が後者の上側に位置して車両後方に延び、続いて斜めに下降しながら車両幅方向(気筒列方向)の一方に向かって且つシリンダブロック2の方へ引き返すように曲がり、集合して第3集合管8に接続されている。第3集合管8は、シリンダブロック2の方へ向かって延びている。
【0031】
<触媒>
第3集合管8の下流端、すなわち、排気マニホールド5の下流端に、エンジン1の排気ガスを浄化する触媒15が接続されている。触媒15は、ハニカム担体に触媒成分を担持させたハニカム触媒を円筒状ケースに収容してなる。触媒15は、第1集合管6及び第2集合管7の下をシリンダブロック2の車両後側の側面に沿って気筒列方向の他方に向かって延びている。換言すれば、触媒15は、排気ガスが当該触媒内部をエンジン1の気筒列方向の一方から他方に向かって流れるように、触媒中心軸が気筒列方向に若しくは気筒列方向に近似する方向に配置されている。
【0032】
触媒15の円筒状ケースの上流端に上記第3集合管8が接続され、当該ケースの下流端が車両後方に延びる排気ガス流出管16に接続されている。排気ガス流出管16はフレキシブルチューブ17を介して車両後方に延びる排気管18に接続されている。
【0033】
<EGRパイプ>
触媒15の上記ケースに接続された排気ガス流出管16の上流端に、触媒15を通過した排気ガスの一部をエンジン1の吸気側に再循環させるEGRガスとして取り出すEGRガス取出口21が設けられている。EGRガス取出口21は、エンジン1の気筒列方向の中央よりも該気筒列方向の上記他方(排気ガスが触媒15から流出する方向)の側に位置し、且つ当該他方に向かって開口している。
【0034】
図3に示すように、シリンダヘッド3には、EGRガスを通過させるための該シリンダヘッド3を貫通するヘッド内EGR通路22が形成されている。ヘッド内EGR通路22は、EGRガスをエンジン1の排気側から吸気側に送る通路であり、その入口23は、シリンダヘッド3における気筒列方向の一方(第1気筒側)の端部において、シリンダヘッド3の排気側の側面に開口している。
【0035】
そうして、EGRガスをEGRガス取出口21からヘッド内EGR通路22に導く第1EGRパイプ24が、EGRガス取出口21から気筒列方向の上記一方に向かって延び、ヘッド内EGR通路22の入口23に直接接続されている。すなわち、EGRガス取出口21からヘッド内EGR通路22の入口23に延びる第1EGRパイプ24には、EGRクーラは設けられていない。後に説明するが、図1等に示すように、EGRクーラ25はエンジン1の排気側ではなく、エンジン1の吸気側に配置されている。
【0036】
先に説明したように、EGRガス取出口21は気筒列方向の他方に向かって開口している。そのため、図4に示すように、第1EGRパイプ24は、EGRガス取出口21から上記他方に向かって流出するEGRガスがヘッド内EGR通路22の入口23が存する気筒列方向の一方に向かうように、該EGRガスの流れ方向を変えるU字状の湾曲部24aを備えている。
【0037】
具体的に説明すると、第1EGRパイプ24は、一端がEGRガス取出口21に接続された上流側の湾曲部24aと、該湾曲部24aの他端に続いてヘッド内EGR通路22の入口23まで延びる下流部分24bを備えてなる。下流部分24bは、シリンダヘッド3と触媒5の間の排気マニホールド5の下側を通って気筒列方向の一方に向かって延び、エンジン1の気筒列方向の一方の端部に対応する位置で車両前方に向かうように曲がり、先端がヘッド内EGR通路22の入口23に接続されている。
【0038】
湾曲部24aは一対の半割り管を管状になるように合わせて形成されている。図5に湾曲部24aの一方の半割り管24a1を示すように、湾曲部24aにおける湾曲した部分の内径D1は下流部分24bに対する接続部の内径D2よりも大きい。すなわち、第1EGRパイプ24は、湾曲部24aにおける湾曲した部分の通路断面積が下流部分24bの通路断面積よりも大きい。
【0039】
<ヘッド内EGR通路から吸気マニホールドまでのEGR経路>
図3に示すように、ヘッド内EGR通路22は、シリンダヘッド3の排気側の側面に開口した入口23からシリンダヘッド3の気筒列方向の一方の端部をエンジン1の吸気側に向かって延びている。そのヘッド内EGR通路22は、シリンダヘッド3の吸気側の側面に達する手前で気筒列方向の一方に曲がって、シリンダヘッド3における気筒列方向の一方の端面に出口26が開口している。
【0040】
シリンダヘッド3の上記一方の端面には、燃料ポンプ27をシリンダヘッド3に支持するポンプ取付板28が固定されている。ポンプ取付板28には、ヘッド内EGR通路22の出口26からEGRガスが流入するEGR通路29が形成されている。
【0041】
図6に示すように、EGR通路29は上方に延びていて、このEGR通路29に第2EGRパイプ31の上流端が接続されている。図2に示すように、第2EGRパイプ31は、エンジン1の吸気側に延び、この吸気側において長手方向が気筒列方向(ないしは気筒列方向に近似する方向)に延びたEGRクーラ25の入口に下流端が接続されている。EGRクーラ25は、気筒列方向の一方の端がEGRガスの入口になり、他方の端が出口になっている。第2EGRパイプ31はプロテクタ32によって覆われている。
【0042】
EGRクーラ25の出口には第3EGRパイプ33の上流端が接続されている。第3EGRパイプ33の下流端は、吸気マニホールドのサージタンクに対するEGRガス流量を調節するEGRバルブ34に接続されている。
【0043】
<ヒートインシュレータ>
図7に示すように、エンジン1の排気側には、排気マニホールド5及び触媒15を覆うヒートインシュレータ(排気インシュレータ)35が設けられている。ヒートインシュレータ35は、排気マニホールド5及び触媒15を上側から覆う上側インシュレータと下側から覆う下側インシュレータとを上下に合わせてなる。第1EGRパイプ24はヒートインシュレータ35の内部に配置されている。また、図1乃至図3に示すように、エンジン1の気筒列方向の他方の端部にウォータポンプ36が設けられている。このウォータポンプ36から燃料ポンプ27にエンジン冷却水を送る冷却水パイプ37もヒートインシュレータ35の内部を通っている。第1EGRパイプ24と冷却水パイプ37はヒートインシュレータ35の内部において相近接して交差している。
【0044】
<排気循環装置の利点等>
上記エンジン1では、その排気側において、触媒15を排気ガスが気筒列方向の一方から他方に向かって流れるように配置することにより、エンジン1の気筒列方向の中央よりも上記他方の側にEGRガス取出口21を配置している。一方、ヘッド内EGR通路22の入口23は、シリンダヘッド3における気筒列方向の一方の端部に配置している。そうして、EGRガス取出口21から延設した第1EGRパイプ24を、途中にEGRクーラ25を介在させることなく、ヘッド内EGR通路22の入口23に直接接続している。
【0045】
従って、第1EGRパイプ24は、これをEGRクーラ25に接続する場合に比べて、EGRガス取出口21から延びるパイプ長さが長くなり、さらに、湾曲部24aを備えて長くなっている。そのため、第1EGRパイプ24にEGRガス取出口21から高温の排気ガスが導入されても、ヘッド内EGR通路22の入口23に至る途中の放熱量が大きくなる。しかも、上記実施形態では、通路断面積が大きい湾曲部24aにおいてEGRガスの流速が遅くなるため、第1EGRパイプ24から熱が放散されやすい。
【0046】
これにより、第1EGRパイプ24は、排気ガスの熱による伸びが抑えられ、ヘッド内EGR通路22の入口23付近の温度が大きく上昇することも避けられる。そのため、第1EGRパイプ24のヘッド内EGR通路22に対する接続部に大きな熱応力を生ずることがなくなり、該接続部の熱疲労が抑えられる。しかも、第1EGRパイプ24とEGRクーラ25の間にシリンダヘッド3が介在するから、EGRクーラ25の振動が第1EGRパイプ24の上記接続部に直接加わることもない。よって、第1EGRパイプ24が上記接続部において早期に破損してしまうことがなくなり、その耐久性が高くなる。
【0047】
上記実施形態によれば、排気マニホールド5及び触媒15をヒートインシュレータ25で覆ったことにより、エンジン1の冷間始動において触媒15の温度を速やかに上昇させて活性化させることに、また、寒冷地での触媒温度(触媒活性)の低下防止に有利になる。そうして、第1EGRパイプ24をヒートインシュレータ35の内部に配置したことにより、エンジン1の運転を停止したときに第1EGRパイプ24に滞留するEGRガスが低温の外気で急激に冷却されることが防止される。従って、第1EGRパイプ24が長く、滞留するEGRガスが多い場合でも、EGRガスに含まれていた水分が凝縮することが抑制される。
【0048】
また、上記実施形態では、4-2-1型排気マニホールド5を採用したことにより、排気干渉が抑えられて各気筒から排気ガスが排出されやすくなるため、排気再循環の安定化ないし効率化に有利になる。
【0049】
なお、上記実施形態では、4-2-1型排気マニホールド5を採用したが、排気マニホールドは4-1型であってもよい。
【0050】
また、エンジン1は、4気筒に限らず、6気筒エンジンであってもよく、また、気筒列方向を車両前後方向に配向させた縦置きエンジンであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 エンジン
2 シリンダブロック
3 シリンダヘッド
5 排気マニホールド
6 第1集合管
7 第2集合管
8 第3集合管
9 シリンダヘッドカバー
11~14 独立排気管
15 触媒
16 排気ガス流出管
21 EGRガス取出口
22 ヘッド内EGR通路
23 ヘッド内EGR通路の入口
24 第1EGRパイプ
24a 湾曲部
24b 下流部分
25 EGRクーラ
35 ヒートインシュレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7