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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】車両用乗員保護システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/08 20120101AFI20231212BHJP
   G06T 7/20 20170101ALI20231212BHJP
   G06V 20/59 20220101ALI20231212BHJP
   G08B 21/00 20060101ALI20231212BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B60W40/08
G06T7/20 300A
G06V20/59
G08B21/00 U
B60T7/12 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020189005
(22)【出願日】2020-11-12
(65)【公開番号】P2022077919
(43)【公開日】2022-05-24
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田岡 巧
(72)【発明者】
【氏名】永綱 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】酒井 智和
(72)【発明者】
【氏名】石川 天童
(72)【発明者】
【氏名】野倉 邦裕
(72)【発明者】
【氏名】橋本 龍司
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-200548(JP,A)
【文献】特開2017-129973(JP,A)
【文献】特開2017-224066(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016000273(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0009175(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/00 - 21/13
B60R 21/34 - 21/38
B60R 9/00 - 11/06
H04N 7/18
G08G 1/00 - 99/00
G08B 19/00 - 21/24
G06T 7/00 - 7/90
G06V 10/00 - 20/90
G06V 30/418
G06V 40/16
G06V 40/20
G08B 23/00 - 31/00
B60W 40/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗合型の交通機関である車両に搭乗している乗員と、車両室内と、を撮像して画像情報を経時的に取得する撮像部と、
前記車両の走行時および停車時において、前記画像情報に基づき前記乗員の動作を時系列に沿って解析し、前記乗員の動作のうち場所の移動につながる前記乗員の移動予備動作が単独でまたは累積して所定の危険水準に達したと判断した場合にドライバーまたは乗員に警告を発することと、車両の運転制御を行うことと、を含む処理である予防処理を行う制御部と、を具備し、
前記移動予備動作は、前記場所の移動の開始前に、前記乗員が場所を移動するための直前動作を含み、
前記直前動作は、前記乗員の下肢部の動きと、胴体部の動きと、の少なくとも一方を伴う動作である、車両用乗員保護システム。
【請求項2】
前記画像情報は、さらに、前記乗員の手荷物の情報、または前記車両室内に具備されている車両用内装品の情報を含む、請求項1に記載の車両用乗員保護システム。
【請求項3】
前記画像情報は、前記乗員の視線の移動情報を含む、請求項1または請求項2に記載の車両用乗員保護システム。
【請求項4】
前記画像情報は、前記乗員の下半身の動作情報を含む、請求項1~請求項3の何れか一項に記載の車両用乗員保護システム。
【請求項5】
前記移動予備動作は、前記乗員の場所を移動する意思が顕れた、乗員の意思動作を含む、請求項1~請求項4の何れか一項に記載の車両用乗員保護システム。
【請求項6】
前記移動予備動作は、前記場所の移動の開始前に、前記乗員が場所を移動するための準備動作を含み、
前記準備動作は、前記乗員の手指の動きと、腕の動きと、の少なくとも一方を伴う動作である、請求項1~請求項5の何れか一項に記載の車両用乗員保護システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用乗員保護システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭乗している乗員を転倒等から保護するための車両用乗員保護システムとして、従来から種々のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、着席又は起立した状態の乗客を輸送する車両に搭載される車内監視装置であって、前記乗客の乗車状態を把握する乗車状態把握手段と、前記車両の走行状態を把握する走行状態把握手段と、前記乗車状態及び前記走行状態に基づいて前記乗客の安全に関する報知を行う報知手段と、を備えるものが紹介されている。
特許文献1には、当該車内監視装置によれば、乗車状態把握手段によって乗客の乗車状態を把握し、走行状態把握手段によって車両の走行状態を把握し、把握した乗車状態と走行状態に基づいて報知手段が乗客の安全に関する報知を行うことで、乗客の転倒を防止することができるとの記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-62414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1には、乗員に危険が生じた際に上記の車内監視装置が予防処理を行う旨が記載されている。例えば、特許文献1は、乗員が車両室内を移動中である場合や、乗員が着座しておらず吊革又は手すりに掴まっていない場合等に危険度が高いと判断し、車両の走行状態に応じてドライバーに警告を発する旨を紹介している。
【0006】
しかし、移動中であれば乗員の危険度は既に高いといい得るために、このようなタイミングで警告を発しても、ドライバーが当該警告に対応できない場合も予想され、当該警告は遅きに失するといわざるを得ない。
よって、乗員保護の信頼性を高めるために、乗員に危険があることを早期に検出し適宜適切なタイミングで予防処理を行い得る技術が望まれている。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、乗員に危険があることを早期に検出し適宜適切なタイミングで予防処理を行い得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の車両用乗員保護システムは、
車両に搭乗している乗員と、車両室内と、を撮像して画像情報を経時的に取得する撮像部と、
前記車両の運行時において、前記画像情報に基づき前記乗員の動作を時系列に沿って解析し、前記乗員の動作のうち場所の移動につながる前記乗員の移動予備動作が単独でまたは累積して所定の危険水準に達したと判断した場合に予防処理を行う制御部と、を具備する、車両用乗員保護システムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両用乗員保護システムは、乗員に危険があることを早期に検出し適宜適切なタイミングで予防処理を行い得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例の車両用乗員保護システムを模式的に説明する説明図である。
図2】実施例の車両用乗員保護システムが検出する乗員の移動予備動作を模式的に説明する説明図である。
図3】実施例の車両用乗員保護システムの動作を説明する説明図である。
図4】実施例の車両用乗員保護システムの動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の車両用乗員保護システムは、撮像部及び制御部を具備する。
このうち撮像部は、車両に搭乗している乗員と、車両室内と、を撮像して画像情報を経時的に取得する。
制御部は、車両の運行時において、上記の画像情報に基づき乗員の動作を時系列に沿って解析し、当該乗員の動作のうち場所の移動につながる当該乗員の移動予備動作が単独でまたは累積して所定の危険水準に達したと判断した場合に、予防処理を行う。
なお、ここでいう車両の運行時とは、車両の走行時および停車時の両方を含む概念である。
【0012】
車両室内における乗員の動作のうち、特に、場所の移動は、転倒につながる虞の大きなものであり、既述した特許文献1においても、乗員が場所を移動している場合に危険と判断している。
【0013】
本発明の車両用乗員保護システムでは、当該乗員が場所を移動したことに基づいて予防処理を行うのではなく、その前段階、すなわち、場所の移動につながる乗員の移動予備動作に応じて予防処理を行う。当該予防処理は、ドライバーや乗員に警告を発することや車両の運転制御を行うことを含む。
本発明の車両用乗員保護システムによると、乗員が実際に場所を移動する前から、当該乗員が場所を移動することを予測し、当該乗員に危険が及ぶ可能性が生じたことを検出できる。よって、本発明の車両用乗員保護システムによると、適宜適切なタイミングで警告等の予防処理を行うことができ、乗員の保護を図ることが可能である。
【0014】
また、本発明の車両用乗員保護システムにおける制御部は、移動予備動作が単独でまたは累積して所定の危険水準に達したと判断した場合に、予防処理を行う。換言すると、本発明の車両用乗員保護システムにおける制御部は、単に移動予備動作があったか否かを検出するだけではなく、当該移動予備動作の軽重の判断をも行う。
【0015】
例えば、危険水準に満たない軽度のまたは単発的な移動予備動作のみしか検出されない場合には予防処理を控えても良い。或いは、この場合には予防処理に満たない軽度の処理(先発処理という)のみを行っても良い。例えば予防処理として赤色灯の点灯による警告を行う場合、当該先発処理としては黄色灯の点灯による注意喚起を行えば良い。
なお、当該先発処理は、後述する意思動作とは独立して行っても良いし、関連づけて行っても良いが、先発処理は後述する意思動作と関連づけて行うのが好ましい。例えば、意思動作を検出した場合に先発処理を行うのが好ましい。
【0016】
乗合型の交通機関等の乗員の人数が多い車両において、移動予備動作に軽重をつけず全ての移動予備動作に対して予防処理を行うと、例えば、車両の走行中ずっと警告が続く等の不具合が生じる虞がある。これにより、ドライバーの注意がそがれたり、ドライバーに過度の緊張を強いたりする虞がある。
これに対して、本発明の車両用乗員保護システムによると、移動予備動作が所定の水準、すなわち危険水準に達したと判断した場合に予防処理を行うために、当該予防処理を適宜適切なタイミングで行うことができ、適宜適切に乗員の保護を図ることができる。
【0017】
なお、乗員が移動開始した場合には、危険度はより高まる。したがって、本発明の車両用乗員保護システムでは、乗員が移動を終了するまで、乗員の動作を解析しつつ上記の予防処理を継続するのが好ましい。または、乗員が移動開始した後には、より重度の処理(増進処理という)に変更しても良い。例えば予防処理として赤色灯の点灯による警告を行う場合、当該増進処理としては赤色灯の点滅による警告を行えば良い。乗員が移動予備動作を行わず急に移動を開始した場合等にも同様に、増進処理を行えば良い。
なお、本発明でいう移動とは、乗員の歩く動作のみならず、立ち上がる動作や着座する動作を包含する概念である。
【0018】
以下、本発明の車両用乗員保護システムをその構成要素ごとに説明する。
【0019】
本発明の車両用乗員保護システムは、乗合型の交通機関において乗員を保護するものであっても良いし、自家用乗用車において乗員を保護するものであっても良い。つまり、本発明の車両用乗員保護システムにおける車両は、バス、電車、自家用車両等の各種の車両を包含する概念である。
【0020】
本発明の車両用乗員保護システムにおける撮像部は、車両に搭乗している乗員と車両室内とを撮像して画像情報を経時的に取得する。
また、撮像部は上記の画像情報に加えて、乗員の手荷物および/または車両室内における車両内装品を撮像し、これらの画像情報を経時的に取得しても良い。
【0021】
ここでいう乗員の手荷物は、鞄、上着、携帯端末等の乗員が車両室内に持ち込んだ荷物を意味する。
乗員は手荷物とともに移動する場合が多いと考えられるため、乗員の手荷物の画像情報は、乗員の移動予備動作を検出するのに有用といい得る。
【0022】
また、車両室内には、座席や手すり等の多くの車両用内装品が配設される。車両室内の画像情報と乗員の画像情報とを組み合わせることで、乗員が取り得る次の動作をより精密に推測することが可能である。
例えば、手すりの近くにいる乗員が手すりを見た場合や手を動かした場合には、乗員が当該手すりに向けて移動する前段階にあると推測できる。また、乗員が空席を見た場合には、乗員が当該空席に向けて移動する前段階にあると推測できる。更には、乗員が昇降口を見た場合には、乗員が当該昇降口に向けて移動する前段階にあると推測できる。
【0023】
さらに、撮像部が画像情報を経時的に取得することで、後述する制御部により乗員やその手荷物、車両室内の状態を、時系列に沿って解析し、ひいては、乗員の動作を時系列に沿って解析することが可能である。これにより、後述する制御部によって、乗員の移動予備動作が単発的なまたは偶発的なものであるのか、それとも実際に移動する前段階として乗員が移動予備動作を行ったのかを推定することが可能である。そしてその結果、制御部によって当該移動予備動作が危険水準に達したか否かを判断する精度が向上する。
【0024】
撮像部が撮像する画像情報は、静止画であっても良いし、動画であっても良い。また、その撮像様式やデータの保存形式等は特に限定しない。
【0025】
撮像部は、車両に搭乗している乗員及び車両室内、必要に応じてさらに当該乗員の手荷物や車両内装品を撮像できれば良く、車両室内に取り付けても良いし、車両室外に取り付けても良い。
また、撮像部は、車両に搭乗している全ての乗員、当該全ての乗員の手荷物、及び、車両室内の全てを撮像しても良いし、車両に搭乗している一部の乗員及び、車両室内の一部を撮像するだけであっても良い。つまり、撮像部は、車両室内において乗員が転倒し易い場所においてのみ、車両に搭乗している乗員及び、車両室内を撮像しても良い。
【0026】
撮像部は、車両に乗車している乗員につき、その四肢および顔面に重点を置いて撮像するのが好ましい。
【0027】
撮像部が乗員の脚を撮像する場合には、乗員の重心の変化が含まれる画像情報を得ることができる。このため、撮像部が乗員の脚を撮像することは、乗員が場所の移動を開始したことを制御部によっていち早く検出する上で有用である。
【0028】
撮像部が乗員の手指を撮像する場合には、移動以外の乗員の動作の変化、例えば、乗員による携帯端末の操作の開始または中止、荷物の整理等が含まれる画像情報を得ることができる。このため、撮像部が乗員の手指を撮像することは、後述する乗員の意思動作を検出する上で有用である。
【0029】
撮像部が乗員の顔面を撮像する場合には、乗員の口元や目元の変化、例えば、乗員の会話の開始または中止、乗員の視線の動きが含まれる画像情報を得ることができる。このため、撮像部が乗員の顔面を撮像することは、後述する乗員の意思動作を検出する上で有用である。
【0030】
乗員の四肢および顔面に関する画像情報の解像度は、特に、乗員の目の動き、口元の動き、手指の動きの何れかを捉え得る程度に高いことがより好ましく、これら3種の全ての動きを捉え得る程度に高いことがさらに好ましい。
乗員の目の動き、口元の動き、手指の動きの少なくとも一種に基づき乗員の動作を解析することで、後述する乗員の意思動作を検出することが可能である。
【0031】
撮像部は、車両室内につき、ドア付近、ドライバーの真後ろの座席付近、後部座席付近の少なくとも一種を撮像するのが好ましい。
【0032】
特に車両がバスである場合には、車両のドア付近は、段差がある場合が多いために、乗員が転倒するリスクの高い箇所といい得る。
【0033】
また、バスにおいては、ドライバーの真後ろの座席は、車両における前輪の真上に位置する場合が多い。前輪の真上に位置する座席は、他の座席に比べて高い位置にある場合が多いために、乗員が転倒するリスクの高い箇所といい得る。
さらに、バスにおいては、ドライバー近くのドアが出口となっている場合がある。この場合には、運行中、特に走行中であっても乗員が出口付近、すなわち、当該ドライバーの真後ろの座席付近に移動してくる場合があるため、当該ドライバーの真後ろの座席付近は、乗員が転倒するリスクの高い箇所といい得る。
【0034】
バスにおいて、ドライバー近くのドアが出口となっている場合には、後部座席は出口から遠い。この場合、後部座席に着座していた乗員が、車両の停車前に出口に移動すべく、後部座席から立ち上がることが予想される。これにより、後部座席付近もまた、乗員が転倒するリスクの高い箇所といい得る。
【0035】
撮像部は、車両室内を、如何なる方向から撮像しても良いが、車両室内とともに乗員を撮像することを考慮すると、横側から撮像するのが合理的である。
【0036】
撮像部が画像情報を取得する期間については特に限定しないが、撮像部は車両が運行している間中連続的にまたは断続的に画像情報を取得するのが好ましい。特に車両が走行している間中連続的にまたは断続的に画像情報を取得するのが好ましい。更には、走行開始直前にも当該画像情報を取得するのが好ましい。
または、カーナビゲーションシステム等に登録された車両の走行経路に応じて、カーブの多い区間や交差点の多い区間等、車両室内の乗員に負荷が加わることが想定される区間を特定し、車両が当該区間を走行する際に、撮像部が画像情報を連続的に取得するのも好ましい。
【0037】
または、後述する制御部で検出した乗員の移動予備動作を基に、乗員の危険度が高いと予想される場合には、撮像部の検出感度を高めても良い。例えば、撮像部が撮像するフレームレート(fps:frames per second)を増大させることで、撮像部の検出感度を高めることが可能である。
具体的には、制御部で移動予備動作として後述する準備動作または直前動作を検出した場合には、乗員の危険度が高いと予想できる。また、乗員が高齢者または低年齢である場合、ドライバー席の真後ろの席等の危険度の高い場所に乗員がいる場合、カーブの多い区間等の走行時、悪天候である場合等にも、乗員の危険度が高いと予想できる。
【0038】
なお、撮像部が取得した画像情報については、任意の期間が経過した後に破棄しても良いし、データベースに保存しても良い。
【0039】
制御部は、撮像部により得られた画像情報に基づき乗員の動作を時系列に沿って解析する。このような制御部は、撮像部からの画像情報を受信できるよう、撮像部に有線または無線で電気的に接続される。制御部はその一部または全部が車両に搭載される。制御部の一部のみが車両に搭載される場合、当該制御部の他の部分は外部に設けられたサーバー上に搭載されても良い。制御部の全体が車両に搭載される場合には、システム全体の処理速度が高まる利点がある。一方、制御部の一部が外部すなわち車両以外に設けられたサーバー上に搭載される場合には、例えば制御部での解析結果を複数の車両間で共有することができ、ひいては近接する車両間で連携した車両制御、例えば減速制御等を行うことも可能である。制御部による当該制御機構を、例えば、路線バス等の公共交通機関、ある特定区間で運行されるシャトルバス、または複数車両が前後に連なって運行する観光バス等に適用すると、本発明の車両用乗員保護システムは、より効果的な集中管理・中央制御的運用が可能になり、複数の車両をより安全に運行することが可能になる。
なお、制御部としては、CPUやメモリ等を具備する演算装置を用いることができる。制御部は、本発明の車両用乗員保護システム専用のものであっても良いし、車両のECU(Electronic Control Unit)と兼用しても良い。
【0040】
制御部は、上記の乗員の動作のうち、車両室内における乗員の場所の移動につながる乗員の移動予備動作を検出し、当該予備移動動作が所定の危険水準に達したと判断した場合に、予防処理を行う。以下、必要に応じて、乗員の移動予備動作を、単に予備動作と称する場合がある。
【0041】
予備動作は、座っている乗員の予備動作と、立っている乗員の予備動作とに大別されるが、何れの場合にも、予備動作は初期段階→準備段階→移動直前段階の3段階で進行するものとする。
初期段階は、移動の開始前に、乗員が場所を移動する意思が顕れた意思動作をとった段階を意味する。準備段階は、移動の開始前に、乗員が場所を移動するための準備動作をとった段階を意味する。移動直前段階は、移動の開始前に、乗員が場所を移動するための直前動作をとった段階を意味する。以下、乗合型の交通機関に乗っている乗員を例に挙げ、各段階を説明する。
【0042】
先ず、乗員が座っている場合、具体的な初期段階の意思動作として、以下の(1-a)~(1-h)が例示される。
(1-a)車両の進行方向に視線を移す、
(1-b)車窓に視線を移す、
(1-c)車両の掲示装置に視線を移す、
(1-d)自分の進行方向に視線を移す、
(1-e)自分の足元に視線を移す、
(1-f)会話を止める、
(1-g)携帯端末の使用を中止する、または、
(1-h)手荷物を片付ける。
【0043】
乗合型の交通機関において、座っている乗員が場所を移動するのは、乗員が車両を降りる場合が主である。このため、上記(1-a)~(1-h)は車両を降りようとする乗員の意思が顕れれた動作とも言い得る。
【0044】
具体的には、車両を降りる前には、目的地が近いか否かを確認するために、乗員は上記(1-a)、(1-b)または(1-c)の動作をとる場合が多い。ここで、(1-c)車両の掲示装置とは、車両の行先や料金、次の停車駅等が表示される電光掲示板、ディスプレイ等を意味する。
【0045】
また、車両を降りる前には、ドアまでの経路が確保されているか否かを確認するために、乗員は、(1-d)または(1-f)の動作をとる場合が多い。さらに、同乗者と会話していた乗員は、車両を降りる前には(1-f)会話を止める場合が多く、携帯端末を使用していた乗員は、(1-g)当該携帯端末の使用を中止する場合が多い。なお、ここでいう「携帯端末の使用を中止する」とは、携帯端末を画面ロックまたはスリープ状態とする動作や、携帯端末の画面から目を離した後所定期間放置する動作、携帯端末を鞄や上着のポケット等に片付けたりする動作を含む。
また、車両を降りる前に、携帯端末や本、飲料等の手荷物を同じく手荷物である鞄にしまったり、それまで網棚や足元等に置いていた手荷物を手元に移動させたりすることで、(1-h)手荷物を片付ける場合が多い。
【0046】
乗員が座っている場合、具体的な準備段階の準備動作として、以下の(2-a)~(2-c)が例示される。
(2-a)膝に手を置く、
(2-b)座席に手を置く、または、
(2-c)手すりまたはつり革に手をかける。
上記(2-a)~(2-c)の予備動作は、乗員の手指および/または腕の動きを伴う動作といい得る。
【0047】
準備動作は、既述した意思動作よりも段階の進んだ動作であり、車両を降りるために、座席から立ち上がるための乗員の準備ともいい得る。
座席に着座している乗員は、立ち上がる際に、上記(2-a)~(2-c)のように、自分の支持点を増加させる場合が多い。
【0048】
乗員が座っている場合、具体的な移動直前段階の直前動作として、以下の(3-a)~(3-c)が例示される。
(3-a)座席から腰を浮かす、
(3-b)座席の背もたれから背中を離す、または、
(3-c)足を前後にずらす。
上記(3-a)~(3-c)の直前動作は、乗員の下肢部および/または胴体部の動きを伴う動作といい得る。
車両を降りるために座席から立ち上がろうとしている乗員は、上記(2-a)~(2-c)のように支持点を増加させた後、上記(3-a)~(3-c)のように、自分の重心を移動させようとする場合が多い。
【0049】
一方、立っている乗員が場所を移動する場合には、車両を降りたり他の乗員の少ない場所に移動したりする等、乗員が立った状態のままで移動する態様と、乗員が空席に座る等、立った状態から座った状態に移行する態様とが考えられる。
【0050】
乗員が立った状態のままで移動する態様では、具体的な初期段階の意思動作として、以下の(A-a)~(A-h)が例示される。
(A-a)車両の進行方向に視線を移す、
(A-b)車窓に視線を移す、
(A-c)車両の掲示装置に視線を移す、
(A-d)自分の進行方向に視線を移す、
(A-e)自分の足元に視線を移す、
(A-f)会話を止める、
(A-g)携帯端末の使用を中止する、または、
(A-h)手荷物を片付ける。
(A-a)および(A-h)は、上記(1-a)~(1-h)と同様に、車両を降りようとする乗員の意思が顕れれた動作と言い得る。
【0051】
乗員が立った状態のまま移動する態様では、具体的な準備段階の準備動作として、以下の(B-a)~(B-b)が例示される。
(B-a)手すりまたはつり革から手を離す、または、
(B-b)手すりまたはつり革に手をかけ、手を離す。
(B-a)の動作は、乗員が自分の支持点を減少させる動作ということができ、(B-b)の動作は乗員が移動するための勢いをつけるための動作ということができる。
【0052】
乗員が立った状態のまま移動する態様では、具体的な移動直前段階の直前動作として、以下の(C-a)が例示される。
(C-a)体の向きを変える。
(C-a)は、上記(3-a)~(3-c)と同様に、乗員が自分の重心を移動させようとする動作といい得る。
【0053】
乗員が立った状態から座った状態に移行する態様では、具体的な初期段階の意思動作として、以下の(I-a)、(I-b)が例示される。
(I-a)空席に視線を移す、または、
(I-b)通路を見回す。
(I-a)および(I-b)は、乗員が自分の移動先を確認する動作といい得る。
【0054】
乗員が立った状態から座った状態に移行する態様では、具体的な準備段階の準備動作として、以下の(II-a)~(II-c)が例示される。
(II-a)手すりまたはつり革に手をかける、
(II-b)座席の背もたれに手を置く、または、
(II-c)座席のアームレストに手を置く。
(II-a)~(II-c)は、上記(2-a)~(2-c)と同様に、自分の支持点を増加させる動作といい得る。
【0055】
乗員が立った状態から座った状態に移行する態様では、具体的な移動直前段階の直前動作として、以下の(III-a)が例示される。
(III-a)体の向きを変える。
(III-a)は、上記(3-a)~(3-c)と同様に、自分の重心を移動させようとする動作といい得る。
【0056】
制御部は、上に例示される各種の予備動作を検出すると、検出された当該予備動作が危険水準に達するものであるか否かを判断する。
当該判断の手順の一例を挙げると、予め、各予備動作にその危険度を表す危険点を割り当てておき、かつ、当該危険点の累積値として乗員が危険に曝されることが想定される値を、危険水準として定めておく。そして、当該危険点及び危険水準のデータを制御部に格納しておく。制御部は、運行時の車両において、予備動作を検知する毎に、当該予備動作に応じた危険点を加算し、得られた累積値と危険水準の値とを照らし合わせて、累積値が危険水準に達した場合に、予防処理を行えば良い。
【0057】
危険点は、上記した予備動作の段階が進む毎に高くなるように設定するのが好ましい。つまり、予備動作の危険点は、初期段階<準備段階<移動直前段階の順に高く設定するのが合理的である。
【0058】
また、危険点は、予備動作を行った乗員の状態に応じて異なる値にしても良い。例えば、立っている乗員が行った初期段階の予備動作の危険点を、座っている乗員が行った初期段階の予備動作の危険点よりも高くするのが好ましい。立っている乗員は、座っている乗員よりも簡単に移動できるため、乗員が予備動作を行ってから実際に移動するまでの時間は、乗員が座っている場合よりも立っている場合に短いと考えられるためである。
【0059】
また、危険点は、予備動作の推移に応じて異なる値にしても良い。例えば、上記した乗員の意思動作を検出した後、準備動作ではなく直前動作を検出した場合には、意思動作後に準備動作を経て直前動作を検知した場合と異なる危険点を付与することができる。但し、意思動作後に準備動作を経て直前動作を検知した場合に最も危険点を高く設定するのが好ましい。
【0060】
または、予備動作を行った乗員の状態に応じて、予備動作の危険点とは別の基礎点を付与しても良い。例えば、乗員が立っている場合には座っている場合よりも多くの基礎点を付与し、予備動作を検知した場合には危険点を当該基礎点に加算していくのが好ましい。
【0061】
更に、立っている乗員が完全に座った場合には、累積した危険点は一旦リセットするのが好ましい。乗員が座ったことで乗員の移動が一旦終了したとみなすことができ、また、乗員が姿勢を変えている途中の状態、例えば中腰の状態を脱したことで、乗員の危険度は低くなると考えられるためである。座っている乗員が完全に立ち上がった場合にも、同様に、累積した危険点は一旦リセットするのが好ましい。
危険点をリセットした場合、乗員の状態に応じて新たに基礎点を付与しても良い。
【0062】
さらには、予備動作を検出した後に、所定の期間が過ぎても次の予備動作を検出しない場合にも、危険点のリセットを行っても良い。当該所定の期間は、予備動作を検出した後の経過時間を基に設定しても良い。当該経過時間として、例えば、3秒~15秒、5秒~10秒を例示できる。
または、当該所定の期間は、予備行動を検出した後に撮像部が撮像したフレーム数を基に設定しても良い。例えば、撮像部がフレームレート20(fps:frames per second)で静止画を撮像する場合には、当該経過時間として20フレーム以上、60フレーム以上を例示できる。
【0063】
制御部は、移動予備動作が所定の危険水準に達したと判断した場合に、予防処理を行う。既述したように、予防処理としては、ドライバーや乗員に警告を発しても良いし、車両の運転制御を行っても良い。警告としては、ランプの点灯、ランプの点滅の他、音声の再生や画像の表示、振動等を例示できる。
車両の運転制御としては、減速や停車を例示できる。
【0064】
本発明の車両用乗員保護システムは、警告を行うための警告部を具備しても良い。この場合の警告部としては、例えば、ランプを有する照明装置や、ブザー等が例示される。または、車載用の照明装置やオーディオ装置等を警告部として利用し、本発明の車両用乗員保護システムにおける制御部によって、当該警告部を運転制御しても良い。
【0065】
以下、具体例を挙げて本発明の車両用乗員保護システムを説明する。
【0066】
(実施例)
実施例の車両用乗員保護システムは、乗合型の交通機関の一種であるバスの車両に搭載され、当該車両に乗車している乗員の安全を図るものである。
実施例の車両用乗員保護システムを模式的に説明する説明図を図1に示し、実施例の車両用乗員保護システムが検出する乗員の移動予備動作を模式的に説明する説明図を図2に示す。実施例の車両用乗員保護システムの動作を説明する説明図を図3および図4に示す。
【0067】
図1に示すように、実施例の車両用乗員保護システム1は、撮像部20、制御部30及び警告部40を具備する。撮像部20は車両室内99の複数個所に配設されたカメラであり、フレームレート20~60(fps:frames per second)で静止画を撮像する。
より具体的には、撮像部20は、車両98における車両室内99のドア付近、ドライバーの真後ろの座席付近、及び、後部座席付近(以上図略)に配置される。そして、各位置において、乗員90(図2参照)、当該乗員90の手荷物(図略)、および、車両室内99の車両内装品(図2参照)を撮像する。特に乗員90については、その顔面90f(図2参照)および四肢90e(図2参照)を高い解像度で撮像する。
【0068】
警告部40は、青色ランプ、黄色ランプおよび赤色ランプを有する照明装置であり、車両室内99においてドライバー席の前方に配設されている。
【0069】
制御部30は、上記した撮像部20および警告部40に電気的に接続され、撮像部20の画像情報を受信可能であり、かつ、警告部40を運転制御可能である。
【0070】
実施例の車両用乗員保護システム1の動作を以下に説明する。
【0071】
先ず、図2を基に、座っている乗員90の予備動作について説明する。座っている乗員90の動作のうち、移動すなわち立ち上がる動作よりも前の動作が、予備動作である。図2に示すように、実施例において、予備動作は初期段階→準備段階→移動直前段階の3段階で進行すると想定されている。
【0072】
制御部30は、撮像部20から伝送された画像情報を解析し、乗員90の予備動作を検出する。制御部30は、乗員90が複数フレーム連続して予備動作を行っている場合にはじめて乗員90が予備動作を行っていると判断して検出しても良い。この場合、乗員90の予備動作を誤検出し難くなる。さらに、乗員90の危険度が高い状況下で、上記の連続するフレーム数を、例えば、10フレームから5フレームに減少させてもよい。フレームレートが20fpsである場合には、予備動作を検出した後の経過時間を0.5秒から0.25秒に減少させることに相当する。これにより、時間的・空間的に変化する危険度に対して柔軟に対応した予防処理が可能になる。
また、制御部30は、乗員90の予備動作の検出において、検出精度が十分に高い場合には、1フレームのみで予備動作の検出を行っても良い。
【0073】
初期段階は、乗員90が意思動作をとった段階である。実施例における制御部30は、撮像部20から伝送された画像情報を解析し、当該意思動作として、下記の(1-a)~(1-h)を検出する。
(1-a)車両の進行方向に視線を移す、
(1-b)車窓に視線を移す、
(1-c)車両の掲示装置に視線を移す、
(1-d)自分の進行方向に視線を移す、
(1-e)自分の足元に視線を移す、
(1-f)会話を止める、
(1-g)携帯端末の使用を中止する、または、
(1-h)手荷物を片付ける。
【0074】
例えば、図2に示すように乗員90が視線を手元90hから上に移し、自分の進行方向先側を見た場合には、制御部は、(1-d)の意思動作を検出する。なお、当該意思動作の危険点は1点である。後述するように、当該危険点は累積され、乗員の予備動作が危険水準に達しているか否かの判断に用いられる。
【0075】
準備段階は、乗員90が準備動作をとった段階である。実施例における制御部30は、撮像部20から伝送された画像情報を解析し、当該準備動作として、以下の(2-a)~(2-c)を検出する。
(2-a)膝に手を置く、
(2-b)座席に手を置く、または、
(2-c)手すりまたはつり革に手をかける。
【0076】
例えば、図2に示すように乗員90が座席95に手を置いた場合には、制御部30は、(2-b)の準備動作を検出する。当該準備動作の危険点は2点である。
【0077】
移動直前段階は、乗員90が直前動作をとった段階である。実施例における制御部30は、撮像部20から伝送された画像情報を解析し、当該直前動作として、以下の(3-a)~(3-c)を検出する。
(3-a)座席から腰を浮かす、
(3-b)座席の背もたれから背中を離す、または、
(3-c)足を前後にずらす。
【0078】
例えば、図2に示すように乗員90が座席95から腰を浮かし、かつ、座席95の背もたれ95bから背中90bを離した場合には、制御部30は、(3-a)の直前動作および(3-b)の直前動作を検出する。当該直前動作の危険点は各々3点であり、このとき予備動作の累積値に合計6点が加算される。
【0079】
なお、特に図示しないが、実施例の車両用乗員保護システム1における制御部30は、立っている乗員90の予備動作として、既述した(A-a)~(A-h)、(B-a)~(B-b)、(C-a)、(I-a)、(I-b)、(II-a)~(II-c)、(III-a)の各動作を検出する。(A-a)~(A-h)の予備動作、(I-a)~(I-b)の予備動作の危険点は各々1点であり、(B-a)~(B-b)の予備動作および(II-a)~(II-c)の予備動作の危険点は各々2点であり、(C-a)の予備動作および(III-a)の予備動作の危険点は各々3点である。
【0080】
実施例の車両用乗員保護システム1では、制御部30によって上記の予備動作を検出し、その危険点を累積することにより、乗員の予備動作が危険水準に達しているか否かを判断する。そして、当該予備行動が所定の危険水準に達したと判断した場合には、予防処理すなわち警告部40によるランプの点灯を行う。
以下、図3および図4を基に、実施例の車両用乗員保護システムの動作を説明する。
【0081】
車両98が起動し運行を開始すると、実施例の車両用乗員保護システム1がスタートする。このとき撮像部20はフレームレート20fpsで撮像を開始し、画像情報を順次制御部30に伝送する。制御部30は、当該画像情報を解析し、当該画像情報に乗員90が含まれるか否かを判断する。乗員90が検出された場合(S1)、制御部30は当該乗員90が座っているか否かを判断する(S2)。乗員90が座っていない場合(S2におけるNO)、後述する起立モードスタート(S-b1)に進む。
【0082】
乗員90が座っている場合(S2におけるYES)には、制御部30は、着座モードをスタートする(S-a1)。このとき制御部30は危険点に基礎点0点を付与する(S-a2)。それに伴い制御部30は、安全を意味する警告部40の青色ランプを点灯制御し(S-a7)、後述するS-a3に進む。なお、実施例の車両用乗員保護システム1においては、危険水準を5点と定めている。
【0083】
次いで、制御部30は、画像情報を基に乗員90の動作を解析し(S-a3)、乗員90の予備動作を検出する(S-a4)。所定時間内に上記した予備動作の何れも検出されなかった場合(S-a4におけるNO)には危険点をリセットし(S-a15)、その後着座モードスタート(S-a1)に戻り、予備動作の検出を続ける。
【0084】
上記した予備動作の何れかが検出された場合(S-a4におけるYES)には、当該予備動作に対応する危険点を加算し(S-a5)、危険点の累積を算出する(S-a6)。
【0085】
当該累積値が0~2点である場合、制御部30は、安全を意味する警告部40の青色ランプを点灯制御し(S-a7)、S-a3に進んで予備動作の検出を続ける。
【0086】
累積値が3~4点である場合、制御部30は、先発処理として、注意喚起を意味する警告部40の黄色ランプを点灯(S-a8)し、その後、後述するS-a11に進む。
【0087】
累積点が5点である場合、制御部30は予防処理として警告ランプ40の赤色ランプを点灯制御(S-a9)し、その後、後述するS-a11に進む。
さらに、累積点が6点以上である場合には、制御部30は、増進処理として、警告部40の赤色ランプを点滅させ(S-a10)、その後、同様に後述するS-11に進む。
【0088】
その後、制御部30は、画像情報を基に、乗員90が起立したか否かを検知する(S-a11)。乗員90が起立した場合(S-a11におけるYES)には、制御部30は危険点をリセットし(S-a12)、後述する起立モードスタート(S-b1)に進む。
【0089】
乗員90が起立していない場合(S-a11におけるNO)には、制御部30は、画像情報を基に乗員90が降車したか否かを判断する(S-a13)。ここでいう降車は、乗員90が撮像部20の撮像範囲外に移動した場合を含む。乗員90が降車した場合(S-a13におけるYES)、制御部30は、着座モードを終了する(S-a14)。乗員90が降車していない場合(S-a13におけるNO)には、S-a3に戻り、予備動作の検出を続ける。
【0090】
一方、乗員90が起立している場合(S2におけるNO)の場合には、制御部30は、図4に示す起立モードをスタート(S-b1)する。このとき制御部30は危険点に基礎点5点を付与する(S-b2)。それに伴い、制御部30は、予防処理として警告部40の赤色ランプを点灯制御(S-b11〔a〕)し、後述するS-b3に進む。なお、ここで点灯した予防処理の赤色ランプは、後述するS-b9等の次のランプ点灯タイミング前に消灯し、次のランプ点灯と切り替えるものとする。
【0091】
制御部30は、画像情報を基に乗員90の動作を解析し(S-b3)、乗員90の予備動作を検出する(S-b4)。所定時間内に上記した予備動作の何れも検出されなかった場合(S-b4におけるNO)には、乗員が安定的に立っていると判断し、危険点の基礎点を1点に変更(S-b6)する。それに伴い制御部30は、安全を意味する警告部40の青色ランプを点灯制御し(S-b9〔a〕)、S-b3に戻って予備動作の検出を続ける。
【0092】
上記した予備動作の何れかが検出された場合(S-b4におけるYES)には、当該予備動作に対応する危険点を加算し(S-b7)、その累積を算出する(S-b8〔b〕)。
【0093】
当該累積値が0~2点である場合、制御部30は、安全を意味する警告部40の青色ランプを点灯制御し(S-b9〔b〕)、S-b3に戻る。
【0094】
累積値が3~4点である場合、制御部30は、先発処理として警告部40の黄色ランプを点灯(S-b10)し、その後、後述するS-b13に進む。
【0095】
累積値が5点である場合、制御部30は予防処理として警告部40の赤色ランプを点灯制御(S-b11)し、後述するS-b13に進む。
さらに、累積値が6点以上である場合には、制御部30は、増進処理として警告部40の赤色ランプを点滅させ(S-b12)、同様に、後述するS-b13に進む。
【0096】
その後、制御部30は、画像情報を基に、乗員90が着座したか否かを検知する(S-b13)。乗員90が着座した場合(S-b13におけるYES)には、制御部30は危険点をリセットし(S-b14)、着座モードスタート(S-a1)に進む。
【0097】
乗員90が着座していない場合(S-b13におけるNO)には、制御部30は、画像情報を基に乗員90が降車したか否かを判断する(S-b15)。乗員90が降車した場合(S-b15におけるYES)、制御部30は、起立モードを終了する(S-b16)。乗員90が降車していない場合(S-b15におけるNO)には、S-b3に戻り、予備動作の検出を続ける。
【0098】
実施例の車両用乗員保護システムによると、乗員に危険があることを早期に検出し適宜適切なタイミングで予防処理を行い得る。
【0099】
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。また、実施形態を含む本明細書に示した各構成要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて実施できる。
【符号の説明】
【0100】
1:車両用乗員保護システム
20:撮像部
30:制御部
40:警告部
90:乗員
95:座席
98:車両
99:車両室内
図1
図2
図3
図4