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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】全方向移動車の走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20231212BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20231212BHJP
【FI】
G05D1/02 W
B60W60/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020192383
(22)【出願日】2020-11-19
(65)【公開番号】P2022081075
(43)【公開日】2022-05-31
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】細川 翔太郎
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-75707(JP,A)
【文献】国際公開第2019/069626(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/171090(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
B60W 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後進時に回転する複数の全方向移動型車輪を具備した全方向移動車を目標停止位置まで走行させる全方向移動車の走行制御装置において、
前記全方向移動型車輪を独立に回転駆動させる複数の走行モータと、
前記目標停止位置に対する前記全方向移動車の旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差を検知する誤差検知部と、
前記全方向移動車が前記目標停止位置に向かって前後進している状態で、前記誤差検知部により検知された前記全方向移動車の旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差に基づいて、前記角度誤差及び前記位置誤差が小さくなるように前記複数の走行モータを制御する走行制御処理を実行する走行制御部とを備え
前記走行制御部は、前記全方向移動車が前記目標停止位置に向かって前後進するように前記複数の走行モータを制御した後、前記全方向移動車が前記角度誤差がある方向とは反対の方向に旋回するように前記複数の走行モータを制御すると共に、前記全方向移動車が前記位置誤差がある方向とは反対の方向に横移動するように前記複数の走行モータを制御する全方向移動車の走行制御装置。
【請求項2】
前後進時に回転する複数の全方向移動型車輪を具備した全方向移動車を目標停止位置まで走行させる全方向移動車の走行制御装置において、
前記全方向移動型車輪を独立に回転駆動させる複数の走行モータと、
前記目標停止位置に対する前記全方向移動車の旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差を検知する誤差検知部と、
前記全方向移動車が前記目標停止位置に向かって前後進している状態で、前記誤差検知部により検知された前記全方向移動車の旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差に基づいて、前記角度誤差及び前記位置誤差が小さくなるように前記複数の走行モータを制御する走行制御処理を実行する走行制御部と、
前記走行制御部による前記走行制御処理の実行前に、前記全方向移動車の前後進が停止した状態で、前記誤差検知部により検知された前記全方向移動車の旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差に基づいて、前記角度誤差及び前記位置誤差が小さくなるように前記複数の走行モータを制御する事前制御部とを備える全方向移動車の走行制御装置。
【請求項3】
前記事前制御部は、前記誤差検知部により検知された前記旋回方向の角度誤差が規定角度以上であるときに、前記全方向移動車が前記角度誤差がある方向とは反対の方向に旋回するように前記複数の走行モータを制御すると共に、前記誤差検知部により検知された前記左右方向の位置誤差が規定距離以上であるときに、前記全方向移動車が前記位置誤差がある方向とは反対の方向に横移動するように前記複数の走行モータを制御する請求項記載の全方向移動車の走行制御装置。
【請求項4】
前後進時に回転する複数の全方向移動型車輪を具備した全方向移動車を目標停止位置まで走行させる全方向移動車の走行制御装置において、
前記全方向移動型車輪を独立に回転駆動させる複数の走行モータと、
前記目標停止位置に対する前記全方向移動車の旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差を検知する誤差検知部と、
前記全方向移動車が前記目標停止位置に向かって前後進している状態で、前記誤差検知部により検知された前記全方向移動車の旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差に基づいて、前記角度誤差及び前記位置誤差が小さくなるように前記複数の走行モータを制御する走行制御処理を実行する走行制御部と、
前記全方向移動車が前記目標停止位置に到達したときに、前記全方向移動車の停止精度が規定値以上であるかを判断し、前記全方向移動車の停止精度が前記規定値以上でないときは、警報を行うように警報器を制御する異常制御部とを備える全方向移動車の走行制御装置。
【請求項5】
前後進時に回転する複数の全方向移動型車輪を具備した全方向移動車を目標停止位置まで走行させる全方向移動車の走行制御装置において、
前記全方向移動型車輪を独立に回転駆動させる複数の走行モータと、
前記目標停止位置に対する前記全方向移動車の旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差を検知する誤差検知部と、
前記全方向移動車が前記目標停止位置に向かって前後進している状態で、前記誤差検知部により検知された前記全方向移動車の旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差に基づいて、前記角度誤差及び前記位置誤差が小さくなるように前記複数の走行モータを制御する走行制御処理を実行する走行制御部と、
前記全方向移動車が前記目標停止位置に到達したときに、前記全方向移動車の停止精度が規定値以上であるかを判断し、前記全方向移動車の停止精度が前記規定値以上でないときは、前記全方向移動車が前記目標停止位置よりも手前の制御再開位置まで戻るように前記複数の走行モータを制御する異常制御部とを備え
前記走行制御部は、前記全方向移動車が前記制御再開位置に戻ったときは、前記走行制御処理を再度実行する全方向移動車の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全方向移動車の走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
全方向移動車の走行制御装置としては、例えば特許文献1に記載されている技術が知られている。特許文献1に記載の全方向移動車の走行制御装置は、車両本体に設けられた4つの全方向移動車輪をそれぞれ回転させる4つの走行モータと、これらの走行モータの回転数及び回転方向を制御することで、全方向移動車を直進、斜行及び横行させる制御部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-30586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
全方向移動車輪を回転させる走行モータとして、安価な速度制御モータを使用する場合には、全方向移動車輪の精密な位置決めが困難である。このため、全方向移動車輪を目標停止位置に正確に停止させることは困難となる。回転角を正確に制御することが可能なステッピングモータを使用すれば、全方向移動車輪の精密な位置決めが可能となる。しかし、速度制御モータと比較してステッピングモータの単価は高いため、全方向移動車の製造コストが高くなってしまう。
【0005】
本発明の目的は、安価な走行モータを使用しても、目標停止位置に対する全方向移動車の停止精度を向上させることができる全方向移動車の走行制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、前後進時に回転する複数の全方向移動型車輪を具備した全方向移動車を目標停止位置まで走行させる全方向移動車の走行制御装置において、全方向移動型車輪を独立に回転駆動させる複数の走行モータと、目標停止位置に対する全方向移動車の旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差を検知する誤差検知部と、全方向移動車が目標停止位置に向かって前後進している状態で、誤差検知部により検知された全方向移動車の旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差に基づいて、角度誤差及び位置誤差が小さくなるように複数の走行モータを制御する走行制御処理を実行する走行制御部とを備える。
【0007】
走行モータの一つである安価な速度制御モータは、不感帯を有している。このため、速度制御モータを停止状態から微小量だけ回転させることは難しい。しかし、速度制御モータが回転している状態で、速度制御モータの回転速度を微小に増減させることは容易に行える。本発明は、そのような知見に基づいて成されている。
【0008】
即ち、本発明の一態様に係る全方向移動車の走行制御装置においては、全方向移動車が目標停止位置に向かって前後進している状態で、目標停止位置に対する全方向移動車の旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差が検知される。そして、全方向移動車の旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差に基づいて、角度誤差及び位置誤差が小さくなるように複数の走行モータが制御される。このとき、全ての全方向移動型車輪が回転して全方向移動車が前後進している状態で、複数の走行モータの制御が行われる。このため、各走行モータが不感帯を有する場合でも、不感帯を使用しなくて済み、各走行モータの回転速度を微小量だけ変化させることが可能となる。従って、特に高価かつ高性能の走行モータを使用しなくても、全方向移動車の旋回方向の角度精度及び左右方向の位置精度が高くなる。これにより、安価な走行モータを使用しても、目標停止位置に対する全方向移動車の停止精度が向上する。
【0009】
走行制御部は、全方向移動車が目標停止位置に向かって前後進するように複数の走行モータを制御した後、全方向移動車が角度誤差がある方向とは反対の方向に旋回するように複数の走行モータを制御すると共に、全方向移動車が位置誤差がある方向とは反対の方向に横移動するように複数の走行モータを制御してもよい。
【0010】
このような構成では、全方向移動車が目標停止位置に向かって前後進している状態で、全方向移動車が角度誤差がある方向とは反対の方向に旋回するように複数の走行モータが制御されると共に、全方向移動車が位置誤差がある方向とは反対の方向に横移動するように複数の走行モータが制御される。従って、走行モータが不感帯を有する場合でも、不感帯が使用されないため、目標停止位置に対する全方向移動車の停止精度が確実に向上する。
【0011】
走行制御装置は、走行制御部による走行制御処理の実行前に、全方向移動車の前後進が停止した状態で、誤差検知部により検知された全方向移動車の旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差に基づいて、角度誤差及び位置誤差が小さくなるように複数の走行モータを制御する事前制御部を更に備えてもよい。
【0012】
全方向移動車の旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差が大きいときは、走行モータの回転量を増大させればよい。従って、走行モータの回転速度を微小に変化させるために全方向移動車を予め前後進させる必要がない。そこで、全方向移動車の前後進が停止した状態で、全方向移動車の旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差に基づいて、角度誤差及び位置誤差が小さくなるように複数の走行モータを制御することにより、目標停止位置の手前に十分な走行スペースがない場合でも、目標停止位置に対する全方向移動車の停止精度が向上する。
【0013】
事前制御部は、誤差検知部により検知された旋回方向の角度誤差が規定角度以上であるときに、全方向移動車が角度誤差がある方向とは反対の方向に旋回するように複数の走行モータを制御すると共に、誤差検知部により検知された左右方向の位置誤差が規定距離以上であるときに、全方向移動車が位置誤差がある方向とは反対の方向に横移動するように複数の走行モータを制御してもよい。
【0014】
このような構成では、旋回方向の角度誤差が規定角度以上であるときは、全方向移動車が角度誤差がある方向とは反対の方向に旋回するように複数の走行モータが制御される。左右方向の位置誤差が規定距離以上であるときは、全方向移動車が位置誤差がある方向とは反対の方向に横移動するように複数の走行モータが制御される。従って、目標停止位置の手前に十分な走行スペースがない場合でも、目標停止位置に対する全方向移動車の停止精度が確実に向上する。
【0015】
走行制御装置は、全方向移動車が目標停止位置に到達したときに、全方向移動車の停止精度が規定値以上であるかを判断し、全方向移動車の停止精度が規定値以上でないときは、異常制御処理を実行する異常制御部を更に備えてもよい。
【0016】
このような構成では、全方向移動車の停止精度が規定値よりも低いときは、異常制御処理が実行されるため、何らかの要因で全方向移動車が目標停止位置からずれたままとなる事態を防止することができる。
【0017】
異常制御部は、全方向移動車の停止精度が規定値以上でないときは、異常制御処理として、全方向移動車が目標停止位置よりも手前の制御再開位置まで戻るように複数の走行モータを制御し、走行制御部は、全方向移動車が制御再開位置に戻ったときは、走行制御処理を再度実行してもよい。
【0018】
このような構成では、全方向移動車の停止精度が規定値よりも低いときは、全方向移動車が制御再開位置まで戻り、制御再開位置から目標停止位置への全方向移動車の走行制御が再度行われる。従って、全方向移動車が一度目標停止位置からずれて停止した場合でも、最終的に目標停止位置に対する全方向移動車の停止精度が向上する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、安価な走行モータを使用しても、目標停止位置に対する全方向移動車の停止精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係る全方向移動車の走行制御装置の概略構成を示すブロック図である。
図2図1に示された走行制御装置が適用される全方向移動車の平面図である。
図3図1に示された走行制御装置が適用されない全方向移動車の平面図である。
図4】目標停止位置の一例を全方向移動車と共に示す平面図である。
図5図1に示された走行制御部により実行される制御処理の手順の詳細を示すフローチャートである。
図6図1に示された異常制御部により実行される制御処理の手順の詳細を示すフローチャートである。
図7図1に示された走行モータである速度制御モータの特性を示すグラフである。
図8】速度制御モータを使用する場合に生じ得る不具合を示す側面図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る全方向移動車の走行制御装置の概略構成を示すブロック図である。
図10図9に示された事前制御部により実行される制御処理の手順の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図中、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
図1は、本発明の第1実施形態に係る全方向移動車の走行制御装置の概略構成を示すブロック図である。図1において、本実施形態の走行制御装置1は、図2に示されるような全方向移動車2に搭載されている。全方向移動車2は、前後方向、左右方向及び旋回方向の3方向に移動することが可能な車両である。
【0023】
全方向移動車2は、車両本体3と、この車両本体3の前後左右に配置された複数(ここでは4つ)の全方向移動型車輪4A~4D(以下、単に車輪4A~4D)とを具備している。車輪4Aは、左前輪である。車輪4Bは、右前輪である。車輪4Cは、左後輪である。車輪4Dは、右後輪である。
【0024】
図2(a)に示される全方向移動車2の車輪4A~4Dは、45度オムニホイールである。図2(b)に示される全方向移動車2の車輪4A~4Dは、メカナムホイールである。これらの全方向移動車2の前後進時には、全ての車輪4A~4Dが回転する。
【0025】
従って、本実施形態の走行制御装置1は、図3に示されるように、前後進時に回転しない車輪51を有する全方向移動車50には適用されない。図3(a)に示される全方向移動車50の4つの車輪51は、90度オムニホイールである。全方向移動車50の前後進時には、前後2つの車輪51が回転しない。図3(b)に示される全方向移動車2の3つの車輪51は、120度間隔オムニホイールである。全方向移動車50の前後進時には、後の車輪51が回転しない。
【0026】
本実施形態の走行制御装置1は、全方向移動車2を制御開始位置から目標停止位置Pまで走行させる装置である。制御開始位置は、目標停止位置Pの正面手前側の任意の位置である。目標停止位置Pは、例えば図4(a)に示されるように、全方向移動車2と充電器20との接続を行う位置である。目標停止位置Pは、図4(b)に示されるように、全方向移動車2から積み降ろし用のコンベア25に荷物Mを移載する位置であってもよい。
【0027】
図1に戻り、走行制御装置1は、レーザセンサ5と、カメラ6と、コントローラ7と、4つの走行モータ8A~8Dと、警報器9とを備えている。
【0028】
レーザセンサ5は、目標停止位置P(図4参照)に向けてレーザを照射し、レーザの反射光を受光することにより、全方向移動車2から目標停止位置Pまでの距離を検出する。レーザセンサ5としては、例えば2Dまたは3Dのレーザレンジファインダが使用される。カメラ6は、目標停止位置Pを含む全方向移動車2の周辺領域を撮像する画像センサである。
【0029】
コントローラ7は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。コントローラ7は、レーザセンサ5の検出データ及びカメラ6の撮像画像を入力し、全方向移動車2の走行制御に関する処理を実行し、走行モータ8A~8D及び警報器9を制御する。
【0030】
走行モータ8A~8Dは、車輪4A~4Dをそれぞれ独立に回転駆動させる電動モータである。走行モータ8A~8Dとしては、速度制御モータが使用される。警報器9は、警報音(ブザー)を発生させたり、警報表示を行う。
【0031】
コントローラ7は、誤差算出部11と、走行制御部12と、異常制御部13とを有している。
【0032】
誤差算出部11は、レーザセンサ5の検出データ及びカメラ6の撮像画像に基づいて、目標停止位置Pに対する全方向移動車2の旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差を算出する。誤差算出部11は、レーザセンサ5及びカメラ6と協働して、目標停止位置Pに対する全方向移動車2の旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差を検知する誤差検知部を構成している。
【0033】
走行制御部12は、全方向移動車2が目標停止位置Pに向かって前進している状態で、誤差算出部11により算出された全方向移動車2の旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差に基づいて、角度誤差及び位置誤差が小さくなるように走行モータ8A~8Dを制御する走行制御処理を実行する。
【0034】
走行制御部12は、全方向移動車2が目標停止位置Pに向かって前進するように走行モータ8A~8Dを制御した後、全方向移動車2が角度誤差がある方向とは反対の方向に旋回するように走行モータ8A~8Dを制御すると共に、全方向移動車2が位置誤差がある方向とは反対の方向に横移動するように走行モータ8A~8Dを制御する。
【0035】
異常制御部13は、全方向移動車2が目標停止位置Pに到達したときに、全方向移動車2の停止精度が規定値以上であるかを判断し、全方向移動車2の停止精度が規定値以上でないときは、異常制御処理を実行する。
【0036】
異常制御部13は、全方向移動車2の停止精度が規定値以上でないときは、異常制御処理として、全方向移動車2が目標停止位置Pよりも手前の制御再開位置まで戻るように走行モータ8A~8Dを制御する。走行制御部12は、全方向移動車2が制御再開位置に戻ったときは、上記の走行制御処理を再度実行する。
【0037】
図5は、走行制御部12により実行される制御処理の手順の詳細を示すフローチャートである。本処理は、全方向移動車2が制御開始位置(前述)において停止した状態で、実行される。
【0038】
図5において、走行制御部12は、まず全方向移動車2を一定速度で前進させるための指定値を走行モータ8A~8Dに出力する(手順S101)。続いて、走行制御部12は、誤差算出部11により算出された全方向移動車2の旋回方向の角度誤差データを取得する(手順S102)。
【0039】
そして、走行制御部12は、旋回方向の角度誤差に基づいて、全方向移動車2が左側に傾いているかどうかを判断する(手順S103)。このとき、走行制御部12は、例えば全方向移動車2が少しでも左側に傾いているかどうかを判断する。
【0040】
走行制御部12は、全方向移動車2が左側に傾いていると判断したときは、車輪4A,4Cを加速させると共に車輪4B,4Dを減速させるための指令値を走行モータ8A~8Dに出力する(手順S104)。これにより、全方向移動車2が右側に旋回するようになる。
【0041】
走行制御部12は、全方向移動車2が左側に傾いていないと判断したときは、旋回方向の角度誤差に基づいて、全方向移動車2が右側に傾いているかどうかを判断する(手順S105)。このとき、走行制御部12は、例えば全方向移動車2が少しでも右側に傾いているかどうかを判断する。
【0042】
走行制御部12は、全方向移動車2が右側に傾いていると判断したときは、車輪4B,4Dを加速させると共に車輪4A,4Cを減速させるための指令値を走行モータ8A~8Dに出力する(手順S106)。これにより、全方向移動車2が左側に旋回するようになる。
【0043】
走行制御部12は、全方向移動車2が右側に傾いていないと判断したときは、手順S104,S106を実行しない。その後、走行制御部12は、誤差算出部11により算出された全方向移動車2の左右方向の位置誤差データを取得する(手順S107)。
【0044】
そして、走行制御部12は、左右方向の位置誤差に基づいて、全方向移動車2が左側にずれているかどうかを判断する(手順S108)。このとき、走行制御部12は、例えば全方向移動車2が少しでも左側にずれているかどうかを判断する。
【0045】
走行制御部12は、全方向移動車2が左側にずれていると判断したときは、車輪4A,4Dを加速させると共に車輪4B,4Cを減速させるための指令値を走行モータ8A~8Dに出力する(手順S109)。これにより、全方向移動車2が右側に横移動するようになる。
【0046】
走行制御部12は、全方向移動車2が左側にずれていないと判断したときは、左右方向の位置誤差に基づいて、全方向移動車2が右側にずれているかどうかを判断する(手順S110)。このとき、走行制御部12は、例えば全方向移動車2が少しでも右側にずれているかどうかを判断する。
【0047】
走行制御部12は、全方向移動車2が右側にずれていると判断したときは、車輪4B,4Cを加速させると共に車輪4A,4Dを減速させるための指令値を走行モータ8A~8Dに出力する(手順S111)。これにより、全方向移動車2が左側に横移動するようになる。
【0048】
走行制御部12は、全方向移動車2が右側にずれていないと判断したときは、手順S109,S111を実行しない。その後、走行制御部12は、カメラ6の撮像画像に基づいて、全方向移動車2が目標停止位置Pに到達したかどうかを判断する(手順S112)。走行制御部12は、全方向移動車2が目標停止位置Pに到達していないと判断したときは、上記の手順S101を再度実行する。
【0049】
走行制御部12は、全方向移動車2が目標停止位置Pに到達したと判断したときは、全方向移動車2の前進走行を停止させるための指令値を走行モータ8A~8Dに出力し(手順S113)、本処理を終了する。
【0050】
図6は、異常制御部13により実行される制御処理の手順の詳細を示すフローチャートである。本処理は、全方向移動車2が目標停止位置Pに到達すると、実行される。
【0051】
図6において、異常制御部13は、まず誤差算出部11により算出された全方向移動車の旋回方向の角度誤差データ及び左右方向の位置誤差データを取得する(手順S121)。そして、異常制御部13は、旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差に基づいて、全方向移動車2の停止精度が予め決められた規定値以上であるかどうかを判断する(手順S122)。
【0052】
異常制御部13は、全方向移動車2の停止精度が規定値以上であると判断したときは、本処理を終了する。このとき、異常制御部13は、例えば旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差が何れも予め決められた閾値以下であるときに、全方向移動車2の停止精度が規定値以上であると判定する。
【0053】
異常制御部13は、全方向移動車2の停止精度が規定値以上でないと判断したときは、警報器9により警報を行うように警報器9を制御する(手順S123)。そして、異常制御部13は、全方向移動車2が制御再開位置(前述)まで後退して戻るための指令値を走行モータ8A~8Dに出力し(手順S124)、本処理を終了する。なお、制御再開位置は、制御開始位置と同じ位置でもよいし、制御開始位置よりも目標停止位置P側の位置でもよい。
【0054】
以上のような走行制御装置1において、全方向移動車2が目標停止位置Pの正面手前の制御開始位置に達すると、全方向移動車2が一旦停止する。そして、全方向移動車2が目標停止位置Pに向かって前進する。このとき、レーザセンサ5の検出データ及びカメラ6の撮像画像に基づいて、目標停止位置Pに対する全方向移動車2の旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差が算出される。そして、旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差が小さくなるように、全方向移動車2が前進しながら旋回及び横移動を行う。
【0055】
具体的には、全方向移動車2が左右に傾いてもずれてもいないときは、全方向移動車2は旋回及び横移動を行うことなく前進する。全方向移動車2が左側に傾いているときは、全方向移動車2は前進しながら右側に旋回する。全方向移動車2が右側に傾いているときは、全方向移動車2は前進しながら左側に旋回する。全方向移動車2が左側にずれているときは、全方向移動車2は前進しながら右側に横移動する。全方向移動車2が右側にずれているときは、全方向移動車2は前進しながら左側に横移動する。
【0056】
そして、全方向移動車2が目標停止位置Pに到達すると、全方向移動車2の停止精度が判定される。全方向移動車2の停止精度が規定値よりも低いときは、警報器9により警報が行われる。また、全方向移動車2が制御再開位置まで一旦後退し、全方向移動車2が制御再開位置から再び前進しながら旋回及び横移動を行う。
【0057】
ところで、走行モータ8A~8Dとしては、安価な速度制御モータが使用されている。速度制御モータは、図7に示されるように、指令値の増加に関わらず回転速度がゼロである不感帯Fを有している。速度制御モータの不感帯Fでは、微小な指令値に対して応答しない(図7中の矢印A参照)。しかし、速度制御モータの不感帯F以外の領域では、指令値の微小な増減に対して応答する(図7中の矢印B参照)。
【0058】
従って、図8(a)に示されるように、走行モータ8A~8Dの停止状態において走行モータ8A~8Dに微小な指令値を与えても、走行モータ8A~8Dが回転しないため、車輪4A~4Dが回転せず、全方向移動車2が動かない。一方、図8(b)に示されるように、走行モータ8A~8Dの停止状態において走行モータ8A~8Dに大きめの指令値を与えると、走行モータ8A~8Dが回転する。このため、車輪4A~4Dが回転し、全方向移動車2が動くが、全方向移動車2は目標停止位置Pを通り過ぎてしまう。
【0059】
また、図4に示されるような目標停止位置Pでの停止精度としては、全方向移動車2の左右方向の位置精度が重要であり、全方向移動車2の前後方向の位置精度には比較的寛容である。
【0060】
例えば図4(a)に示されるように、全方向移動車2と充電器20との接続を行う場合には、全方向移動車2の充電口(図示せず)に充電器20の充電端子21が接続されるまで、全方向移動車2が前進すればよい。しかし、全方向移動車2が充電器20に対して左右方向にずれると、充電端子21が充電口(図示せず)に接続されない。
【0061】
また、図4(b)に示されるように、全方向移動車2から積み降ろし用のコンベア25に荷物Mを移載する場合には、全方向移動車2のコンベア26と積み降ろし用のコンベア25との間に多少の間隔があってもよいし、或いは全方向移動車2のバンパ(図示せず)が積み降ろし用のコンベア25のストッパ(図示せず)に当たるまで、全方向移動車2が前進してもよい。しかし、全方向移動車2が積み降ろし用のコンベア25に対して左右方向にずれると、荷物Mの引っ掛かりや落下が起こる可能性がある。
【0062】
そのような不具合を解消するには、回転角を正確に制御することが可能なステッピングモータを使用することが考えられる。しかし、速度制御モータと比較してステッピングモータの単価は高いため、全方向移動車2の製造コストが高くなってしまう。
【0063】
これに対し、本実施形態では、全方向移動車2が目標停止位置Pに向かって前進している状態で、目標停止位置Pに対する全方向移動車2の旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差が検知される。そして、全方向移動車2の旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差に基づいて、角度誤差及び位置誤差が小さくなるように走行モータ8A~8Dが制御される。このとき、全ての車輪4A~4Dが回転して全方向移動車2が前進している状態で、走行モータ8A~8Dの制御が行われる。このため、走行モータ8A~8Dの不感帯を使用しなくて済み、走行モータ8A~8Dの回転速度を微小量だけ変化させることが可能となる。従って、特に高価かつ高性能の走行モータを使用しなくても、全方向移動車2の旋回方向の角度精度及び左右方向の位置精度が高くなる。これにより、安価な走行モータ8A~8Dを使用しても、目標停止位置Pに対する全方向移動車2の停止精度が向上する。その結果、全方向移動車2の充電口(図示せず)に充電器20の充電端子21を確実に接続することができる。また、全方向移動車2から積み降ろし用のコンベア25に荷物Mを確実に移載することができる。
【0064】
また、本実施形態では、全方向移動車2が目標停止位置Pに向かって前進している状態で、全方向移動車2が角度誤差がある方向とは反対の方向に旋回するように走行モータ8A~8Dが制御されると共に、全方向移動車2が位置誤差がある方向とは反対の方向に横移動するように走行モータ8A~8Dが制御される。従って、走行モータ8A~8Dの不感帯が使用されないため、目標停止位置Pに対する全方向移動車2の停止精度が確実に向上する。
【0065】
また、本実施形態では、全方向移動車2の停止精度が規定値よりも低いときは、異常制御処理が実行されるため、何らかの要因で全方向移動車2が目標停止位置Pからずれたままとなる事態を防止することができる。
【0066】
また、本実施形態では、全方向移動車2の停止精度が規定値よりも低いときは、全方向移動車2が制御再開位置まで戻り、制御再開位置から目標停止位置Pへの全方向移動車2の走行制御が再度行われる。従って、全方向移動車2が一度目標停止位置Pからずれて停止した場合でも、最終的に目標停止位置Pに対する全方向移動車2の停止精度が向上する。
【0067】
図9は、本発明の第2実施形態に係る全方向移動車の走行制御装置の概略構成を示すブロック図である。図9において、本実施形態の走行制御装置1Aは、上記の第1実施形態におけるコントローラ7に代えて、コントローラ7Aを備えている。
【0068】
コントローラ7Aは、上記の誤差算出部11、走行制御部12及び異常制御部13に加え、事前制御部15を有している。
【0069】
事前制御部15は、走行制御部12による走行制御処理の実行前に、全方向移動車2の前進が停止した状態で、誤差算出部11により算出された全方向移動車2の旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差に基づいて、角度誤差及び位置誤差が小さくなるように走行モータ8A~8Dを制御する。
【0070】
事前制御部15は、誤差算出部11により算出された旋回方向の角度誤差が規定角度以上であるときに、全方向移動車2が角度誤差がある方向とは反対の方向に旋回するように走行モータ8A~8Dを制御すると共に、誤差算出部11により算出された左右方向の位置誤差が規定距離以上であるときに、全方向移動車2が位置誤差がある方向とは反対の方向に横移動するように走行モータ8A~8Dを制御する。
【0071】
図10は、事前制御部15により実行される制御処理の手順の詳細を示すフローチャートである。本処理は、全方向移動車2が制御開始位置(前述)において停止した状態で、実行される。
【0072】
図10において、事前制御部15は、まず誤差算出部11により算出された全方向移動車2の旋回方向の角度誤差データを取得する(手順S151)。そして、事前制御部15は、旋回方向の角度誤差に基づいて、全方向移動車2が左側に傾いているかどうかを判断する(手順S152)。
【0073】
事前制御部15は、全方向移動車2が左側に傾いていると判断したときは、旋回方向の角度誤差が予め決められた規定角度以上であるかどうかを判断する(手順S153)。事前制御部15は、旋回方向の角度誤差が規定角度以上であると判断したときは、車輪4A,4Cを加速させると共に車輪4B,4Dを減速させるための指令値を走行モータ8A~8Dに出力する(手順S154)。これにより、全方向移動車2が右側に旋回するようになる。事前制御部15は、旋回方向の角度誤差が規定角度以上でないと判断したときは、手順S154を実行しない。
【0074】
事前制御部15は、手順S152で全方向移動車2が左側に傾いていないと判断したときは、旋回方向の角度誤差に基づいて、全方向移動車2が右側に傾いているかどうかを判断する(手順S155)。
【0075】
事前制御部15は、全方向移動車2が右側に傾いていると判断したときは、旋回方向の角度誤差が規定角度以上であるかどうかを判断する(手順S156)。事前制御部15は、旋回方向の角度誤差が規定角度以上であると判断したときは、車輪4B,4Dを加速させると共に車輪4A,4Cを減速させるための指令値を走行モータ8A~8Dに出力する(手順S157)。これにより、全方向移動車2が左側に旋回するようになる。事前制御部15は、旋回方向の角度誤差が規定角度以上でないと判断したときは、手順S157を実行しない。
【0076】
事前制御部15は、手順S155で全方向移動車2が右側に傾いていないと判断したときは、手順S154,S157を実行しない。その後、事前制御部15は、誤差算出部11により算出された全方向移動車2の左右方向の位置誤差データを取得する(手順S158)。
【0077】
そして、事前制御部15は、左右方向の位置誤差に基づいて、全方向移動車2が左側にずれているかどうかを判断する(手順S159)。事前制御部15は、全方向移動車2が左側にずれていると判断したときは、左右方向の位置誤差が予め決められた規定距離以上であるかどうかを判断する(手順S160)。
【0078】
事前制御部15は、左右方向の位置誤差が規定距離以上であると判断したときは、車輪4A,4Dを加速させると共に車輪4B,4Cを減速させるための指令値を走行モータ8A~8Dに出力する(手順S161)。これにより、全方向移動車2が右側に横移動するようになる。事前制御部15は、左右方向の位置誤差が規定距離以上でないと判断したときは、手順S161を実行しない。
【0079】
事前制御部15は、手順S159で全方向移動車2が左側にずれていないと判断したときは、左右方向の位置誤差に基づいて、全方向移動車2が右側にずれているかどうかを判断する(手順S162)。事前制御部15は、全方向移動車2が右側にずれていると判断したときは、左右方向の位置誤差が規定距離以上であるかどうかを判断する(手順S163)。
【0080】
事前制御部15は、左右方向の位置誤差が規定距離以上であると判断したときは、車輪4B,4Cを加速させると共に車輪4A,4Dを減速させるための指令値を走行モータ8A~8Dに出力する(手順S164)。これにより、全方向移動車2が左側に横移動するようになる。事前制御部15は、左右方向の位置誤差が規定距離以上でないと判断したときは、手順S164を実行しない。
【0081】
事前制御部15は、手順S162で全方向移動車2が右側にずれていないと判断したときは、手順S161,S164を実行しない。その後、事前制御部15は、事前制御完了信号を走行制御部12に出力する(手順S165)。
【0082】
走行制御部12は、事前制御部15からの事前制御完了信号を受けると、図5に示されるような走行制御処理を実行する。
【0083】
以上のような走行制御装置1Aにおいて、全方向移動車2が目標停止位置Pの正面手前の制御開始位置に達すると、全方向移動車2が一旦停止する。そして、レーザセンサ5の検出データ及びカメラ6の撮像画像に基づいて、目標停止位置Pに対する全方向移動車2の旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差が算出される。そして、旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差が大きいときは、その角度誤差及び位置誤差が小さくなるように、その場で全方向移動車2が旋回及び横移動を行う。
【0084】
具体的には、全方向移動車2が左側に規定角度以上傾いているときは、全方向移動車は前進せずに右側に旋回する。全方向移動車2が右側に規定角度以上傾いているときは、全方向移動車2は前進せずに左側に旋回する。全方向移動車2が左側に規定距離以上ずれているときは、全方向移動車2は前進せずに右側に横移動する。全方向移動車2が右側に規定距離以上ずれているときは、全方向移動車2は前進せずに左側に横移動する。
【0085】
その状態で、全方向移動車2は、目標停止位置Pに向かって一定速度で前進する。そして、全方向移動車2は、上記の第1実施形態と同様に、旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差が小さくなるように、前進しながら旋回及び横移動を行う。
【0086】
ところで、旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差が大きいほど、旋回方向の角度合わせ及び左右方向の位置合わせに時間がかかるため、その分だけ長い走行距離が必要となる。一方で、旋回方向の角度誤差が大きいときは、全方向移動車2を大きく旋回させるための指令値のみを走行モータ8A~8Dに与えることで、全方向移動車2が旋回する。左右方向の位置誤差が大きいときは、全方向移動車2を大きく横移動させるための指令値のみを走行モータ8A~8Dに与えることで、全方向移動車2が横移動する。従って、走行モータ8A~8Dの回転速度を微小に変化させるために全方向移動車2を予め前進させる必要がない。
【0087】
そこで、本実施形態では、全方向移動車2の前進が停止した状態で、全方向移動車2の旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差に基づいて、角度誤差及び位置誤差が小さくなるように走行モータ8A~8Dを制御することにより、目標停止位置Pの手前に十分な走行スペースがない場合でも、目標停止位置Pに対する全方向移動車2の停止精度が向上する。
【0088】
また、本実施形態では、旋回方向の角度誤差が規定角度以上であるときは、全方向移動車2が角度誤差がある方向とは反対の方向に旋回するように走行モータ8A~8Dが制御される。左右方向の位置誤差が規定距離以上であるときは、全方向移動車2が位置誤差がある方向とは反対の方向に横移動するように走行モータ8A~8Dが制御される。従って、目標停止位置Pの手前に十分な走行スペースがない場合でも、目標停止位置Pに対する全方向移動車2の停止精度が確実に向上する。
【0089】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、全方向移動車2の旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差が小さくなるように走行モータ8A~8Dが制御されているが、角度誤差及び位置誤差の量に応じて比例制御やPID制御等のフィードバック制御を行ってもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、全方向移動車2の停止精度が規定値よりも低いときは、全方向移動車2が制御再開位置まで戻り、目標停止位置Pへの全方向移動車2の走行制御が再度行われているが、コントローラ7,7Aによる演算処理の簡素化を図る必要がある場合は、そのような異常制御処理については、特に実行しなくてもよい。この場合には、例えば警報器9の警報音によって管理者を呼び出し、管理者が手動運転を行うことで、全方向移動車2を目標停止位置Pに停止させてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、全方向移動車2が制御開始位置から目標停止位置Pまで前進走行しているが、特にその形態には限られず、全方向移動車2を制御開始位置から目標停止位置Pまで後進走行させてもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、レーザセンサ5の検出データ及びカメラ6の撮像画像に基づいて、目標停止位置Pに対する全方向移動車2の旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差が算出されているが、特にそのような形態には限られない。例えば、カメラ6を使用せずに、レーザセンサ5の検出データのみに基づいて、目標停止位置Pに対する全方向移動車2の旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差を算出してもよい。また、マーカや磁気テープ等を用いて、目標停止位置Pに対する全方向移動車2の旋回方向の角度誤差及び左右方向の位置誤差を算出してもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、全方向移動車2は4つの車輪4A~4Dを具備しているが、本発明は、前後進時に回転する3つ以上の全方向移動型車輪を具備した全方向移動車であれば、適用可能である。
【符号の説明】
【0094】
1,1A…走行制御装置、2…全方向移動車、4A~4D…全方向移動型車輪、5…レーザセンサ(誤差検知部)、6…カメラ(誤差検知部)、8A~8D…走行モータ、11…誤差算出部(誤差検知部)、12…走行制御部、13…異常制御部、15…事前制御部、P…目標停止位置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10