(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】アクセル装置
(51)【国際特許分類】
B60K 26/02 20060101AFI20231212BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20231212BHJP
G05G 25/02 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B60K26/02
G05G1/30 E
G05G25/02
(21)【出願番号】P 2020192456
(22)【出願日】2020-11-19
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鬼原 則泰
(72)【発明者】
【氏名】木村 純
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 豪宏
(72)【発明者】
【氏名】大雄 康弘
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/129377(WO,A1)
【文献】特開2019-101574(JP,A)
【文献】特開2018-147483(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0139445(US,A1)
【文献】特開2004-205964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 26/02
G05G 1/30
G05G 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロア(FP)に設置されるケース(30)と、
前記ケース外に配置され、ドライバにより踏み込まれるパッド(20)と、
前記ケース内に配置され、前記パッドの踏込力によりアクセル開方向へ回動するペダル(40)と、
前記パッドと前記ペダルとを連結しているアーム(50)と、
前記ペダルをアクセル閉方向に付勢している付勢部材(60)と、
を備え、
前記アームの一端部(51)は、前記パッドの連結部(22)に圧入により嵌め込まれており、
前記アームおよび前記パッドの一方または両方は、前記一端部と前記連結部とを当接させて前記一端部と前記連結部との圧入方向の遊びをなくす遊び除去部(71,72,73,74)を有する、アクセル装置。
【請求項2】
前記連結部は、
前記パッドの踏込部分を構成する板状の基部(24)と、前記基部から前記ケース側に突出し、前記一端部を挟んで対向する一対の支持壁(23)と、を含み、前記一対の支持壁における前記基部とは反対側に、圧入された前記一端部に対する抜け止め(26)を有し、
前記遊び除去部は、前記一端部に対して
前記連結部の前記基部側で、前記連結部
の前記基部から前記一端部に向かって又は前記一端部から前記連結部
の前記基部に向かって突出する突起
(71、72)である、請求項1に記載のアクセル装置。
【請求項3】
前記突起は複数ある、請求項2に記載のアクセル装置。
【請求項4】
前記突起は、前記アームおよび前記パッドのうち硬度が低い方に設けられている、請求項2または3に記載のアクセル装置。
【請求項5】
前記遊び除去部は、前記一端部を前記連結部に圧入する際に塑性変形することで前記一端部と前記連結部との圧入方向の遊びを吸収する、請求項1~4のいずれか一項に記載のアクセル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、オルガンペダル構造のアクセル装置が開示されている。当該アクセル装置は、車室内において着座しているドライバの足元近傍のフロアに設置され、ケース内のペダルとケース外のパッドとをアームにより連結し、ドライバによるパッドの踏込量を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、パッドとアームは、アームの突起部をパッドの連結部に圧入により嵌め込むことで組み立てられる。しかし設計上、突起部と連結部の抜け止めとの間に圧入方向のクリアランスを設定する必要があるため、圧入後は突起部と連結部との間に遊びが生じる。この遊びがあると、ドライバによるパッド操作の「踏み込み」と「戻し」が切り替わるとき、突起部と連結部との当接部位が変わるため、異音が発生する問題があった。
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、異音の発生が抑制されたアクセル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のアクセル装置は、フロア(FP)に設置されるケース(30)と、ケース外に配置され、ドライバにより踏み込まれるパッド(20)と、ケース内に配置され、パッドの踏込力によりアクセル開方向へ回動するペダル(40)と、パッドとペダルとを連結しているアーム(50)と、ペダルをアクセル閉方向に付勢している付勢部材(60)と、を備える。
【0007】
アームの一端部(51)は、パッドの連結部(22)に圧入により嵌め込まれている。アームおよびパッドの一方または両方は、一端部と連結部とを当接させて一端部と連結部との圧入方向の遊びをなくす遊び除去部(71,72)を有する。これによれば、パッドの連結部とアームの一端部とを遊びがない構造にすることができる。そのため、パッド操作の「踏み込み」と「戻し」が切り替わるときに遊びによって発生する異音が解消する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】
図1のパッドとアームとの組付け途中の状態を示す斜視図。
【
図4】
図1のパッドとアームとの組付け途中の状態を示す断面図であって、
図2に対応する図。
【
図5】第2実施形態のアクセル装置のパッドとアームとの連結箇所の断面図であって、
図2に対応する図。
【
図6】第3実施形態のアクセル装置のパッドとアームとの連結箇所の断面図であって、
図2に対応する図。
【
図7】第4実施形態のアクセル装置のパッドとアームとの連結箇所の断面図であって、
図2に対応する図。
【
図8】他の実施形態のアクセル装置のパッドとアームとの連結箇所の断面図であって、
図2に対応する図。
【
図9】
図8とは別の他の実施形態のアクセル装置のパッドとアームとの連結箇所の断面図であって、
図2に対応する図。
【
図10】比較形態のアクセル装置のパッドとアームとの連結箇所の断面図であって、
図2に対応する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、複数の実施形態を図面に基づき説明する。実施形態同士で実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0010】
[第1実施形態]
図1に示すように、第1実施形態のアクセル装置10は車体のフロアパネルFPに設置されている。
図1において、x軸は車両進行方向を示し、y軸は車幅方向を示し、z軸は鉛直上方向を示す。以下では、特に断らない限り、車体設置状態におけるアクセル装置10の形状または構成について説明する。例えば、「上方」または「上側」は、アクセル装置10が車体に設置された状態における上方または上側を意味する。
【0011】
アクセル装置10は、フロアパネルFPに取り付けられるケース30と、ドライバにより踏み込まれるパッド20と、パッド20の踏込力によりアクセル開方向へ回動するペダル40と、パッド20とペダル40とを連結するアーム50と、ペダル40をアクセル閉方向に付勢する付勢部材としてのバネ60と、を備えている。
図1では、ケース30の紙面手前側に設けられる図示しないカバーを外した状態を示している。
【0012】
パッド20は、ケース30外に配置され、下端にてケース30の支点部31により回動可能に支持されている。パッド20の側部には、ドライバの足が挟まれないように、パッド20とケース30との隙間を塞ぐ保護壁21が設けられている。
【0013】
ペダル40およびバネ60はケース30内に配置されている。ペダル40は、y軸と略平行な支軸41により回動可能に支持されている。バネ60はペダル40とケース30の内壁面32との間に介装されている。ケース30は、パッド20とペダル40との間に位置する隔壁部33を有する。隔壁部33には、アーム50が貫通する開口部34と、アーム50をアクセル全閉位置に停止させる全閉ストッパ35と、パッド20をアクセル全開位置に停止させる全開ストッパ36とが設けられている。
【0014】
アーム50は、パッド20側の一端部に設けられた軸部51と、ペダル40側の他端部に設けられた掛止部52とを有する。軸部51は、パッド20の長手方向の中間に位置する連結部22に組み付けられている。掛止部52は、ペダル40の先端部42に掛止されている。
【0015】
パッド20がフロア上のケース30により回動可能に支持され、パッド20がアーム50を介してペダル40に連結される構造は、当業者の間で「オルガンペダル構造」と呼ばれている。パッド20が踏み込まれていないとき、アーム50は、全閉ストッパ35に当接する。また、パッド20が全開位置まで踏み込まれると、パッド20は、全開ストッパ36に当接する。
【0016】
図2、
図3に示すように、軸部51は、パッド20の幅方向(すなわちy軸方向)の両側に突出するように、樹脂製のアーム50に一体的に設けられている。パッド20は、軸部51を回動可能に支持する一対の支持壁23を有する。一対の支持壁23は、パッド20の幅方向において軸部51を挟んで対向するように、樹脂製のパッド20の裏面に一体的に突設されている。支持壁23は、連結部22のうち踏込部分を構成する板状の基部24からケース30側に突出している。
【0017】
支持壁23には軸受部25が形成されている。軸受部25は、支持壁23の幅方向中央部に凹設されている。軸部51は、一端部53が一方の支持壁23の軸受部25に嵌合し、他端部54が他方の支持壁23の軸受部25に嵌合している。支持壁23のうち凹状の軸受部25よりも先端側の部分が抜け止め26になっている。軸部51は、連結部22の一対の支持壁23間に圧入により嵌め込まれている。軸部51の圧入方向はアクセル開閉方向と略同じである。
【0018】
ここで、
図10に示す比較形態の問題点を説明する。比較形態において、パッド29とアーム59は、軸部51を連結部22に圧入して軸受部25に嵌め込むことで組み立てられる。しかし寸法公差などを考慮してアーム59とパッド29とが確実に組み付くことを保証するべく、軸部51と支持壁23の抜け止め26との間に圧入方向のクリアランス80を設定する必要がある。そのためクリアランス80の分だけ、圧入後の軸部51と連結部22との間に遊びが生じる。この遊びがあると、ドライバによるパッド操作で「踏み込み」と「戻し」が切り替わるとき、軸部51と連結部22との当接部位が抜け止め26側と基部24側との間(すなわちアクセル開方向側とアクセル閉方向側との間)で変わるため、異音が発生する問題があった。
【0019】
これに対して第1実施形態では、パッド20は、軸部51と連結部22とを当接させて軸部51と連結部22との圧入方向の遊びをなくす「遊び除去部」としての突起71を有する。以下、突起71のことを遊び除去突起71と記載する。抜け止め26は軸部51に対して圧入方向の一方側(すなわちアクセル開方向側)に位置するのに対して、遊び除去突起71は軸部51に対して圧入方向の他方側(すなわちアクセル閉方向側)に位置する。遊び除去突起71は、連結部22の基部24から突出して軸部51に当接することで軸部51と連結部22とのアクセル閉方向の隙間をなくしつつ、軸部51を抜け止め26に向けて圧入方向の一方側に押し付けることで軸部51と連結部22とのアクセル開方向の隙間をなくしている。つまり遊び除去突起71は、軸部51をアクセル開方向およびアクセル開方向の両側において連結部22に当接させる。第1実施形態では、遊び除去突起71は軸部51の軸方向の中央に1つ設けられている。
【0020】
図4に示すように、一対の支持壁23は、軸部51が圧入されるとき軸部51により押し広げられ、根本部から先端部にかけて反るように弾性変形する。除去突起71は、アーム50およびパッド20のうち硬度が低い方であるパッド20に設けられている。そのため
図4に示すように軸部51が遊び除去突起71に丁度接触する位置からさらに軸部51が押し込まれると、遊び除去突起71が塑性変形する。そして抜け止め26と軸部51との干渉が解除されると支持壁23が弾性復帰し、
図2に示すように軸受部25が軸部51の端部53、54に嵌合する。遊び除去突起71は、軸部51を連結部22に圧入する際に塑性変形することで軸部51と連結部22との圧入方向の遊びが丁度なくなるように調整する。
【0021】
(効果)
以上説明したように、第1実施形態では、アーム50の軸部51は、パッド20の連結部22に圧入により嵌め込まれている。パッド20は、軸部51と連結部22とを当接させて軸部51と連結部22との圧入方向の遊びをなくす遊び除去部71を有する。これによれば、パッド20の連結部22とアーム50の軸部51とを遊びがない構造にすることができる。そのため、パッド操作の「踏み込み」と「戻し」が切り替わるときに遊びによって発生する異音が解消する。
【0022】
また、第1実施形態では、連結部22は、軸部51に対して圧入方向の一方側に位置する抜け止め26を有する。遊び除去突起71は、軸部51に対して圧入方向の他方側で、連結部22から軸部51に向かって又は軸部51から連結部22に向かって突出する突起である。これによれば、アーム50をパッド20に組み付けると、軸部51は圧入方向の一方側が抜け止め26と当接状態になるとともに、圧入方向の他方側が遊び除去部71と当接状態になるため、圧入方向の遊びが生じない。
【0023】
また、第1実施形態では、遊び除去突起71は、アーム50およびパッド20のうち硬度が低い方であるパッド20に設けられている。これによれば、軸部51を連結部22に圧入する際に遊び除去突起71を積極的に塑性変形させることができる。
【0024】
また、第1実施形態では、遊び除去突起71は、軸部51を連結部22に圧入する際に塑性変形することで軸部51と連結部22との圧入方向の遊びを吸収する。これによれば、パッド20の連結部22とアーム50の軸部51とを遊びがない構造にすることができる。
【0025】
[第2実施形態]
第2実施形態では、
図5に示すように遊び除去突起71は軸部51の軸方向に沿って並ぶように2つ設けられている。他の実施形態では、遊び除去突起71は3つ以上設けられてもよい。このように例えば軸部51の圧入荷重の調整等に応じて遊び除去突起71の数を変更することができる。
【0026】
[第3実施形態]
第3実施形態では、
図6に示すように遊び除去突起72は軸部51に一体的に設けられている。遊び除去突起72は、軸部51本体から基部24に向かって突出する突起である。第3実施形態では、遊び除去突起72は軸部51の軸方向の中央に1つ設けられている。このように例えばアーム50およびパッド20の材質などに応じて遊び除去突起72の形成対象を変更することができる。
【0027】
[第4実施形態]
第4実施形態では、
図7に示すように遊び除去突起72は軸部51の軸方向に沿って並ぶように2つ設けられている。他の実施形態では、遊び除去突起72は3つ以上設けられてもよい。このように例えば軸部51の圧入荷重の調整等に応じて遊び除去突起72の数を変更することができる。
【0028】
[他の実施形態]
他の実施形態では、
図8に示すように遊び除去部73は、パッド20またはアーム50に固定された金属製または樹脂製等のバネであってもよい。
図8では遊び除去部73はパッド20にインサートされている。また、他の実施形態では、
図9に示すように遊び除去部74は、パッド20およびアーム50に固定されたゴム製等の弾性部材であってもよい。
図9では遊び除去部74はパッド20に接着されている。このように遊び除去部は、パッドおよびアームとは別部材から構成されてもよく、また軸部の圧入時に塑性変形しなくてもよい。要するに、軸部と連結部とを当接させて両者の圧入方向の遊びをなくすように機能すればよい。
【0029】
他の実施形態では、遊び除去部は、パッドまたはアームと一体的に設けられつつ空洞または切欠き等を有することで弾性変形し易くなるように設けられてもよい。
【0030】
他の実施形態では、遊び除去部は、パッドおよびアームの両方に設けられてもよい。
【0031】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0032】
10 アクセル装置、20 パッド、22 連結部、30 ケース、
40 ペダル、50 アーム、51 軸部(一端部)、60 バネ(付勢部材)、
71,72 遊び除去部、FP フロアパネル。