(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】多層積層フィルム
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20231212BHJP
G02B 5/26 20060101ALI20231212BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20231212BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B5/26
B32B7/023
B32B27/00 B
(21)【出願番号】P 2020548441
(86)(22)【出願日】2019-09-12
(86)【国際出願番号】 JP2019035948
(87)【国際公開番号】W WO2020066668
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2018182867
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 大
(72)【発明者】
【氏名】中西 庸介
(72)【発明者】
【氏名】渡部 誉之
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/052872(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/013784(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2014/0240829(US,A1)
【文献】特表2002-509280(JP,A)
【文献】特許第6736763(JP,B2)
【文献】特許第7143878(JP,B2)
【文献】国際公開第2020/066666(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/066667(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/26-30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂を含む複屈折性の第1層と第2の樹脂を含む等方性の第2層との多層交互積層体を有する多層積層フィルムであって、
前記第1層と前記第2層の光学干渉により波長380~780nmにある光を反射可能である層厚みプロファイルを有し、
第1層の光学厚みでの層厚みプロファイルは、第1の単調増加領域を有し、前記第1の単調増加領域は、最大光学厚みが100nmまでの1A単調増加領域および最小光学厚みが100nm超である1B単調増加領域からなり、
光学厚みが100nmまでの前記1A単調増加領域では傾きが一定で、光学厚みが100nmの層を境界として傾きが変化し、光学厚みが100nm超である前記1B単調増加領域では傾きが一定であり、前記1A単調増加領域における傾き1Aに対する、前記1B単調増加領域における傾き1Bの比1B/1Aが0.8以上1.5以下であり、
第2層の光学厚みでの層厚みプロファイルは、第2の単調増加領域を有し、前記第2の単調増加領域は、最大光学厚みが200nmまでの2A単調増加領域および最小光学厚みが200nm超である2B単調増加領域からなり、
光学厚みが200nmまでの前記2A単調増加領域では傾きが一定で、光学厚みが200nmの層を境界として傾きが変化し、光学厚みが200nm超である前記2B単調増加領域では傾きが一定であり、前記2A単調増加領域における傾き2Aに対する、前記2B単調増加領域における傾き2Bの比2B/2Aが1.5超5未満である、
多層積層フィルム。
【請求項2】
前記1A単調増加領域における平均光学厚みが65nm以上85nm以下であり、前記1B単調増加領域における平均光学厚みが140nm以上160nm以下である、請求項1に記載の多層積層フィルム。
【請求項3】
前記2A単調増加領域における平均光学厚みが130nm以上155nm以下であり、前記2B単調増加領域における平均光学厚みが250nm以上290nm以下である、請求項1または請求項2に記載の多層積層フィルム。
【請求項4】
法線入射において反射軸に平行に偏光された光の380nm~780nmの波長領域における平均反射率が85%以上である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の多層積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可視光領域の光を幅広く反射可能な多層積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
屈折率の低い層と高い層とを交互に多数積層させた多層積層フィルムは、層間の構造的な光干渉によって特定波長の光を選択的に反射または透過する光学干渉フィルムとすることができる。また、このような多層積層フィルムは、各層の膜厚を厚み方向に沿って徐々に変化させたり、異なる反射ピークを有するフィルムを貼り合わせたりすることで、幅広い波長範囲に渡って光を反射または透過することができ、金属を使用したフィルムと同等の高い反射率を得ることもでき、金属光沢フィルムや反射ミラーとして使用することもできる。さらには、このような多層積層フィルムを1方向に延伸することで、特定の偏光成分のみを反射する反射偏光フィルムとしても使用でき、液晶ディスプレイなどの輝度向上部材等に使用できることが知られている(特許文献1~4など)。
【0003】
これらの多層積層フィルムは、任意の波長領域においてより高い反射率が求められることが多い。しかし、積層する層数は有限であるため、その反射波長領域がブロードな場合、高反射率も両立することは非常に困難である。また、特定の波長領域の反射率のみを増加させることは他の反射波長領域の反射率の低下を招き、光学的な品質問題を引き起こすことが懸念される。
【0004】
[特許文献1]特開平04-268505号公報
[特許文献2]特表平9-506837号公報
[特許文献3]特表平9-506984号公報
[特許文献4]国際公開第01/47711号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、上記の多層積層フィルムでは、広い反射波長帯域を保持することに加え、高い偏光度を有することが要求されることがある。また、上記の多層積層フィルムでは、色目が均一であることも同時に要求されることがある。また、上記の多層積層フィルムでは、斜め方向から観察した場合にフィルム全体が赤み(色目)を帯びてみえることがあり、赤み(色目)を抑制することも同時に要求されることがある。特に、小型軽量化が望まれる多層積層フィルムにおいて、積層する層数は有限であるため、限られた厚み又は重量の範囲内で、上記の要求を満たすことが望まれる。
本開示の課題は、広い反射波長帯域を保持しながら、高い偏光度を有し、色目が均一であり、かつ斜め方向から観察したときの色目が抑制された多層積層フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1>
第1の樹脂を含む複屈折性の第1層と第2の樹脂を含む等方性の第2層との多層交互積層体を有する多層積層フィルムであって、前記第1層と前記第2層の光学干渉により波長380~780nmにある光を反射可能である層厚みプロファイルを有し、第1層の光学厚みでの層厚みプロファイルは、第1の単調増加領域を有し、前記第1の単調増加領域は、最大光学厚みが100nmまでの1A単調増加領域および最小光学厚みが100nm超である1B単調増加領域からなり、前記1A単調増加領域における傾き1Aに対する、前記1B単調増加領域における傾き1Bの比1B/1Aが0.8以上1.5以下であり、第2層の光学厚みでの層厚みプロファイルは、第2の単調増加領域を有し、前記第2の単調増加領域は、最大光学厚みが200nmまでの2A単調増加領域および最小光学厚みが200nm超である2B単調増加領域からなり、前記2A単調増加領域における傾き2Aに対する、前記2B単調増加領域における傾き2Bの比2B/2Aが1.5超5未満である、多層積層フィルム。
<2>
前記1A単調増加領域における平均光学厚みが65nm以上85nm以下であり、前記1B単調増加領域における平均光学厚みが140nm以上160nm以下である、<1>に記載の多層積層フィルム。
<3>
前記2A単調増加領域における平均光学厚みが130nm以上155nm以下であり、前記2B単調増加領域における平均光学厚みが250nm以上290nm以下である、<1>または<2>に記載の多層積層フィルム。
<4>
法線入射において反射軸に平行に偏光された光の380nm~780nmの波長領域における平均反射率が85%以上である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の多層積層フィルム。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、広い反射波長帯域を保持しながら、高い偏光度を有し、色目が均一で、かつ斜め方向から観察したときの色目が抑制された多層積層フィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の多層積層フィルムの層厚みプロファイルの一例を示す模式図である。
【
図2】本開示の多層積層フィルムの透過軸及び反射軸におけるそれぞれの透過スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一例である実施形態について説明する。本開示は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0010】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
[多層積層フィルム]
本開示の一実施形態の多層積層フィルムは、第1の樹脂を主体とする複屈折性の第1層と第2の樹脂を主体とする等方性の第2層との多層交互積層体を有し、第1層と第2層とによる光の干渉効果により、波長380~780nmの可視光領域において、幅広い波長範囲で反射可能である。例えば波長400~760nmの波長範囲において反射可能であり、好ましくは波長380~780nmの波長範囲において反射可能である。本開示において、反射可能とは、少なくともフィルム面内の任意の一方向において、かかる方向と平行な偏光の垂直入射での平均反射率が50%以上であることをいう。かかる反射は、多層積層フィルムが広い反射波長帯域を保持する観点から、各波長範囲での平均反射率として50%以上であればよく、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは85%以上である。
【0012】
本開示において、平均反射率とは、偏光フィルム測定装置(日本分光株式会社製「VAP7070S」)を用いて求めた、波長380~780nmでの平均透過率を100から引いた値である。
【0013】
本開示において、「樹脂を主体とする」とは、各層において樹脂が各層の全質量に対し70質量%以上を占めることをいい、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。
【0014】
このような反射特性とするために、多層交互積層体は、第1の樹脂を主体とし、膜厚が10~1000nmの複屈折性の第1層と、第2の樹脂を主体とし、膜厚が10~1000nmの等方性の第2層とが合計30層以上で厚み方向に交互に積層した構造を有することが好ましい。また、各層を構成する樹脂については、詳細は後述するが、複屈折性の層および等方性の層を形成し得るものであれば特に制限されない。いずれも、フィルムを製造し易い観点から、熱可塑性樹脂が好ましい。なお、本開示においては、縦方向、横方向、厚み方向の屈折率につき、最大と最小の差が0.1以上のものを複屈折性、0.1未満のものを等方性とする。
【0015】
[層厚みプロファイル]
本開示の一実施形態の多層積層フィルムは、様々な光学厚みの第1層および第2層を有することで、広い波長範囲の光を反射することが可能となる。これは、反射波長が多層積層フィルムを構成する各層の光学厚みに起因するためである。一般的に多層積層フィルムの反射波長は、下記(式1)で示される。
【0016】
λ=2(n1×d1+n2×d2) (式1)
(上式中、λは反射波長(nm)、n1、n2はそれぞれの層の屈折率、d1、d2はそれぞれの層の物理厚み(nm)を表わす)
【0017】
また、光学厚みλM(nm)は、下記(式2)のように、各層それぞれの屈折率nkおよび物理厚みdkの積で表される。ここでの物理厚みは透過型電子顕微鏡を用いて撮影した写真から求めたものが採用され得る。
【0018】
λM(nm)=nk×dk (式2)
【0019】
上記のことを鑑みれば、波長380~780nmにある光を広く反射可能である層厚みプロファイルとすることができる。例えば、後述する単調増加領域における厚み範囲を広くして、幅広い波長範囲の光を反射するように設計することもできるし、かかる単調増加領域では特定の波長範囲の光を反射するようにし、他の領域でかかる特定の波長範囲以外の光を反射するようにし、全体として幅広い波長範囲の光を反射するように設計することもできる。
【0020】
本開示の一実施形態においては、第1層と第2層のそれぞれの層厚みプロファイルを特定の態様とすることにより、広い反射波長帯域を保持しながら、高い偏光度を有し、色目が均一で、かつ斜め方向から観察したときの色目が抑制された多層積層フィルムを得ることができる。
【0021】
すなわち、第1層の光学厚みでの層厚みプロファイルは、第1の単調増加領域を有し、前記第1の単調増加領域は、最大光学厚みが100nmまでの1A単調増加領域および最小光学厚みが100nm超である1B単調増加領域からなり、前記1A単調増加領域における傾き1Aに対する、前記1B単調増加領域における傾き1Bの比1B/1Aが0.8以上1.5以下である。同時に、第2層の光学厚みでの層厚みプロファイルは、第2の単調増加領域を有し、前記第2の単調増加領域は、最大光学厚みが200nmまでの2A単調増加領域および最小光学厚みが200nm超である2B単調増加領域からなり、前記2A単調増加領域における傾き2Aに対する、前記2B単調増加領域における傾き2Bの比2B/2Aが1.5超5未満である。
図1に本開示の多層積層フィルムの層厚みプロファイルの一例の模式図を示し、
図1で示された層厚みプロファイルを有する多層積層フィルムの透過軸及び反射軸におけるそれぞれの透過スペクトルのグラフを
図2に示す。
【0022】
図1では、1A単調増加領域における傾き1Aに対する1B単調増加領域における傾き1Bの比1B/1Aが1.0であり、2A単調増加領域における傾き2Aに対する2B単調増加領域における傾き2Bの比2B/2Aが3.0である層厚みプロファイルが示されている。また、
図2では、
図1で示された層厚みプロファイルを有する多層積層フィルムの透過軸における透過スペクトル(点線)及び反射軸における透過スペクトル(実線)が示されている。
図2で示された透過スペクトルにより算出された多層積層フィルムの偏光度は79.0%であり、波長380~780nmでの反射軸の平均透過率が11.6%(平均反射率が88.4%)である。
すなわち、本開示の多層積層フィルムは、波長380~780nmの広い範囲で反射波長帯域を有しているといえる。
【0023】
図1に例示するように、第1の単調増加領域を構成する、傾き1Aを有する1A単調増加領域および傾き1Bを有する1B単調増加領域は、光学厚み100nmを境界とし、比1B/1Aが0.8以上1.5以下を満たす、連続する領域である。また、第2の単調増加領域を構成する、傾き2Aを有する2A単調増加領域および傾き2Bを有する2B単調増加領域は、光学厚み200nmを境界とし、比2B/2Aが1.5超5未満を満たす、連続する領域である。
【0024】
上記傾きの比1B/1Aの範囲と2B/2Aの範囲とを同時に満たすことによって、広い反射波長帯域を保持しながら、高い偏光度を有し、色目が均一で、かつ斜め方向から観察したときの色目が抑制された多層積層フィルムを得ることができる。これは、上記傾きの比を同時に満たすことで、ブロードな反射波長帯域を有しつつ、より高反射率の多層積層フィルムが実現できるからである。従来では、高反射率にすると反射波長帯域は狭くなる傾向にあるところ、本開示の一実施形態は広い反射波長帯域を保持しながら、高い偏光度を有し、色目が均一で、かつ斜め方向から観察したときの色目が抑制された多層積層フィルムを得ることができるというものである。
【0025】
層数を増加すれば、理論的には、広い反射波長帯域でありながら高い偏光度とすることができるが、層数の増加は、通常、設備の変更が必要となる。したがって、本実施形態の多層積層フィルムについて、上記傾きの比1B/1Aを0.8以上1.5以下、及び上記傾きの比2B/2Aを1.5超5未満に調整すれば、既存の設備においても特段の設備の拡張を必要とせず、広い反射波長帯域を保持しながら、高い偏光度を有し、色目が均一で、かつ斜め方向から観察したときの色目が抑制された多層積層フィルムの作製が可能であり、また、多層積層フィルムの層数を既存のものから変更させることなく作製することも可能である。
【0026】
なお、本開示において層厚みプロファイルの傾きとは、以下の方法による1次近似直線の傾きである。すなわち、第1層の1A単調増加領域における層厚みプロファイルの1次近似直線の傾きを1Aとし、1B単調増加領域における層厚みプロファイルの1次近似直線の傾きを1Bとして、得られた値から1B/1Aを求める。また、第2層の2A単調増加領域における層厚みプロファイルの1次近似直線の傾きを2Aとし、2B単調増加領域における層厚みプロファイルの1次近似直線の傾きを2Bとして、得られた値から2B/2Aを求める。また、本開示の一実施形態においては後述のようにダブリング等により層数増加することも可能であるが、このような場合においては、1つのパケットについての層厚みプロファイルを見ればよく、かかる1つのパケットは多層交互積層体になり得る。パケットは、多層積層フィルムの全体の層厚みプロファイルを見たときに、例えば、同じような層厚みプロファイルの部分が複数あれば、それぞれがパケットであるとみなせるし、中間層等に区切られたそれぞれの多層構造部分は異なるパケットであるとみなせる。
【0027】
第1層については、第1の単調増加領域において、境界を100nmの光学厚みとし、光学厚みが薄い範囲である1A単調増加領域における傾きと光学厚みが厚い範囲である1B単調増加領域における傾きの比を特定の範囲とすることで、かかる第1の単調増加領域に対応する波長領域を広げつつ、視感度の高い波長550nm付近での反射強度を均一に高くすることができ、偏光度を均一に向上させることが可能となる。他方、かかる傾きの比(1B/1A)が1.5より大きいと、高い偏光度が得られにくくなる。
ここで境界を100nmとすることで波長550nm付近での反射強度をより均一に高くすることが可能となる。第1層について境界が150nmや200nmであったりすると、任意の波長領域で反射強度を均一に調整することが困難になる傾向にある。
【0028】
第2層については、第2の単調増加領域において、境界を200nmの光学厚みとし、光学厚みが薄い範囲である2A単調増加領域における傾きに対して光学厚みが厚い範囲である2B単調増加領域における傾きを特定の範囲とすることで、反射波長帯域を広げ、高い偏光度が得られやすくなる。
また、ここで境界を200nmとし、傾き2Aおよび2Bとの関係において、傾き2Aを比較的小さくすることで、反射強度を均一に調整することが可能となる。また、傾き2Bを比較的大きくすることで、反射波長帯域を広げながらも、2次反射、3次反射といった高次反射を利用することで目的の波長領域の反射強度を増加させることが可能となる。
【0029】
このような観点から、1B/1Aの比の値は、0.8以上1.5以下であり、例えば下限値として0.8、0.9、0.95または1.00とする態様、上限値として1.5、1.4、1.3または1.25とする態様、およびこれらの任意の下限値および上限値を組み合わせた態様が好ましい。より具体的には、0.9~1.4の範囲とする態様、0.95~1.3の範囲とする態様、1.0~1.25の範囲とする態様等が好ましい。
また、2B/2Aの比の値は、1.5超5未満であり、例えば下限値として1.7、1.9、2.1、2.3または2.5とする態様、上限値として4.75、4.5、4.0、3.75または3.5とする態様、およびこれらの任意の下限値および上限値を組み合わせた態様が好ましい。より具体的には、1.7~4.75の範囲とする態様、1.9~4.5の範囲とする態様、2.1~4.0の範囲とする態様、2.3~3.75の範囲とする態様、2.5~3.5の範囲とする態様等が好ましい。
【0030】
このような層厚みプロファイルは、フィードブロックにおける櫛歯の調整などにより得ることができる。
【0031】
第1の単調増加領域において、光学厚み100nmまでの範囲における1A単調増加領域の傾き1Aは、好ましくは0.80~1.35、より好ましくは0.85~1.30、さらに好ましくは0.90~1.15である。また、光学厚み100nmからの範囲における1B単調増加領域の傾き1Bは、好ましくは0.80~1.35、より好ましくは1.00~1.30、さらに好ましくは1.05~1.25である。このようにすることで上記した傾きの比による効果にさらに優れ、偏光度の低下、及び斜め方向から観察したときの色目がより抑制され得る。
【0032】
第2の単調増加領域において、光学厚み200nmまでの範囲における2A単調増加領域の傾き2Aは、好ましくは1.00~1.60、より好ましくは1.05~1.50、さらに好ましくは1.15~1.35である。また、光学厚み200nmからの範囲における2B単調増加領域の傾き2Bは、好ましくは2.00~6.00、より好ましくは2.50~5.50、さらに好ましくは3.00~4.50である。このようにすることで上記した傾きの比による効果にさらに優れ、偏光度の低下がより抑制され得る。
【0033】
第1の単調増加領域において、1A単調増加領域の光学厚みの薄い側の端の層は、光学厚み(nm)が40~60であることが好ましく、より好ましくは43~57、さらに好ましくは46~54である。また、1B単調増加領域の光学厚みの厚い側の端の層は、光学厚みが180~220であることが好ましく、より好ましくは185~215、さらに好ましくは190~210である。このようにすることで上記した傾きの比による効果にさらに優れ、偏光度の低下がより抑制され得る。また、広い反射波長帯域とすることができる。
【0034】
第2の単調増加領域において、2A単調増加領域の光学厚みの薄い側の端の層は、光学厚み(nm)が70~90であることが好ましく、より好ましくは74~86、さらに好ましくは78~82である。また、2B単調増加領域の光学厚みの厚い側の端の層は、光学厚みが295~385であることが好ましく、より好ましくは310~370、さらに好ましくは325~355である。このようにすることで上記した傾きの比による効果にさらに優れ、偏光度の低下がより抑制され得る。また、広い反射波長帯域とすることができる。
【0035】
第1層の光学厚みの平均(以下、平均光学厚みとも称する)は、第1の単調増加領域において、1A単調増加領域において65nm~85nmであり、1B単調増加領域において140nm~160nmであることが好ましい。このようにすることで上述したような第1層の層厚みプロファイルによる効果をより奏し易くなり、偏光度の低下抑制の効果がより向上する。
【0036】
第2層の光学厚みの平均(以下、平均光学厚みとも称する)は、第2の単調増加領域において、2A単調増加領域において130nm~155nmであり、2B単調増加領域において、250nm~290nmであることが好ましい。このようにすることで上述したような第2層の層厚みプロファイルによる効果をより奏し易くなり、偏光度の低下抑制の効果がより向上する。
【0037】
さらにこれらを同時に満たすことで、色目がより均一となり、より高い偏光度を示し、かつ斜め方向から観察したときの色目が抑制された多層積層フィルムを得ることが出来る。
【0038】
上記第1層の光学厚みの平均は、上記効果をさらに奏し易くする観点から、1A単調増加領域と1B単調増加領域とで、それぞれ67nm~83nmと143nm~157nmとであることが好ましい。さらに好ましくはそれぞれ69nm~81nmと146nm~154nmとである。
【0039】
上記第2層の光学厚みの平均は、上記効果をさらに奏し易くする観点から、2A単調増加領域と2B単調増加領域とで、それぞれ133nm~152nmと255nm~285nmとであることが好ましい。さらに好ましくはそれぞれ136nm~149nmと260nm~280nmとである。
【0040】
[単調増加領域]
本開示において「単調増加」とは、多層積層フィルムにおける多層交互積層体の全てにおいてより厚い側の層がより薄い側の層よりも厚くなっていることが好ましいが、それに限定されず、全体を見て厚みがより薄い側からより厚い側に厚みが増加している傾向が見られればよい。より具体的には、光学厚みがより薄い側からより厚い側に向かって層に番号を付し、それを横軸として、各層の膜厚を縦軸にプロットしたときに、膜厚が増加傾向を示す範囲内での層数を5等分し、膜厚が厚くなる方向に、等分された各エリアでの膜厚の平均値が全て増加している場合は単調増加であるとし、そうでない場合は単調増加でないとした。
なお、第1層と第2層とはそれぞれ個別に見ればよく、第1層の単調増加と第2層の単調増加とは、それぞれ異なる傾きであり得る。また、上記単調増加については、多層交互積層体における一方の最表層から他方の最表層までの全てにおいて単調増加している態様であってもよいが、多層交互積層体において、層数で80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の部分において単調増加している態様であってもよく、その余の部分においては厚みが一定であったり減少していたりしていてもよい。例えば本開示の実施例1は、100%の部分において単調増加している態様であるが、かかる厚みプロファイルの層番号が小さい側および/または層番号が大きい側に単調増加でない領域を設けた態様であってもよい。
【0041】
本開示の一実施形態において、第1層の単調増加領域のうち、上述の比1B/1Aが0.8以上1.5以下を満たす領域を第1の単調増加領域といい、第2層の単調増加領域のうち、上述の比2B/2Aが1.5超5未満を満たす領域を第2の単調増加領域という。
【0042】
第1層と第2層とは交互に多層積層され多層交互積層体を形成するところ、第1層および第2層の単調増加領域の範囲は、多層交互積層体として光学干渉により波長380~780nmの光を反射可能である範囲を有していればよい。また、第1層および第2層の単調増加領域の範囲は、多層交互積層体を形成した際に波長380~780nmの光を反射可能な範囲を超える広さを有してもよい。
【0043】
[多層積層フィルムの構成]
[第1層]
本開示の一実施形態の多層積層フィルムを構成する第1層は、複屈折性の層であり、すなわちこれを構成する樹脂(本開示において、第1の樹脂ともいう)は、複屈折性の層を形成し得るものである。従って、第1層を構成する樹脂としては配向結晶性の樹脂が好ましく、かかる配向結晶性の樹脂として特にポリエステルが好ましい。該ポリエステルは、それを構成する繰り返し単位を基準として好ましくはエチレンテレフタレート単位および/またはエチレンナフタレート単位を、より好ましくはエチレンナフタレート単位を、80モル%以上、100モル%以下の範囲で含有することが、より高い屈折率の層とし易く、それにより第2層との屈折率差を大きくしやすいことから好ましい。ここで樹脂の併用の場合は、合計の含有量である。
【0044】
(第1層のポリエステル)
第1層の好ましいポリエステルとして、ジカルボン酸成分としてナフタレンジカルボン酸成分を含有し、その含有量は該ポリエステルを構成するジカルボン酸成分を基準として80モル%以上、100モル%以下であることが好ましい。かかるナフタレンジカルボン酸成分としては、2,6-ナフタレンジカルボン酸成分、2,7-ナフタレンジカルボン酸成分、またはこれらの組み合わせから誘導される成分、もしくはそれらの誘導体成分が挙げられ、特に2,6-ナフタレンジカルボン酸成分もしくはその誘導体成分が好ましく例示される。ナフタレンジカルボン酸成分の含有量は、好ましくは85モル%以上、より好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%未満、より好ましくは98モル%以下、さらに好ましくは95モル%以下である。
【0045】
第1層のポリエステルを構成するジカルボン酸成分としては、ナフタレンジカルボン酸成分以外にさらに本開示の目的を損なわない範囲でテレフタル酸成分、イソフタル酸成分などを含有してもよく、中でもテレフタル酸成分を含有することが好ましい。含有量は0モル%を超え、20モル%以下の範囲であることが好ましい。かかる第2のジカルボン酸成分の含有量は、より好ましくは2モル%以上、さらに好ましくは5モル%以上であり、また、より好ましくは15モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下である。
【0046】
液晶ディスプレイ等に用いられる輝度向上部材や反射型偏光板として使用する場合、第1層が第2層よりも相対的に高屈折率特性を有する層であり、第2層が第1層よりも相対的に低屈折率特性を有する層であり、また1軸方向に延伸することが好ましい。なお、この場合、本開示においては、1軸延伸方向をX方向、フィルム面内においてX方向と直交する方向をY方向(非延伸方向ともいう。)、フィルム面に対して垂直な方向をZ方向(厚み方向ともいう。)と称する場合がある。
【0047】
第1層に、上記のようにナフタレンジカルボン酸成分を主成分として含有するポリエステルを用いることで、X方向に高屈折率を示すと同時に1軸配向性の高い複屈折率特性を実現でき、X方向について第2層との屈折率差を大きくすることができ、高偏光度に寄与する。一方、ナフタレンジカルボン酸成分の含有量が下限値に満たないと、非晶性の特性が大きくなり、X方向の屈折率nXと、Y方向の屈折率nYとの差異が小さくなる傾向にあるため、多層積層フィルムにおいて、フィルム面を反射面とし、1軸延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分と定義される本開示におけるP偏光成分について十分な反射性能が得難くなる傾向にある。なお、本開示におけるS偏光成分とは、多層積層フィルムにおいて、フィルム面を反射面とし、1軸延伸方向(X方向)を含む入射面に対して垂直な偏光成分と定義される。
【0048】
第1層の好ましいポリエステルを構成するジオール成分としては、エチレングリコール成分が用いられ、その含有量は該ポリエステルを構成するジオール成分を基準として80モル%以上、100モル%以下であることが好ましく、より好ましくは85モル%以上、100モル%以下、さらに好ましくは90モル%以上、100モル%以下、特に好ましくは90モル%以上、98モル%以下である。該ジオール成分の割合が下限値に満たない場合は、前述の1軸配向性が損なわれることがある。
【0049】
第1層のポリエステルを構成するジオール成分として、エチレングリコール成分以外に、さらに本開示の目的を損なわない範囲でトリメチレングリコール成分、テトラメチレングリコール成分、シクロヘキサンジメタノール成分、ジエチレングリコール成分などを含有してもよい。
【0050】
(第1層のポリエステルの特性)
第1層に用いられるポリエステルの融点は、好ましくは220~290℃の範囲、より好ましくは230~280℃の範囲、さらに好ましくは240~270℃の範囲である。融点は示差走査熱量計(DSC)で測定して求めることができる。該ポリエステルの融点が上限値を越えると、溶融押出して成形する際に流動性が劣り、吐出などが不均一化しやすくなることがある。一方、融点が下限値に満たないと、製膜性は優れるものの、ポリエステルの持つ機械的特性などが損なわれやすくなり、また液晶ディスプレイの輝度向上部材や反射型偏光板として使用される際の屈折率特性が発現し難い傾向にある。
【0051】
第1層に用いられるポリエステルのガラス転移温度(以下、Tgと称することがある。)は、好ましくは80~120℃、より好ましくは82~118℃、さらに好ましくは85~118℃、特に好ましくは100~115℃の範囲にある。Tgがこの範囲にあると、耐熱性および寸法安定性に優れ、また液晶ディスプレイの輝度向上部材や反射型偏光板として使用される際の屈折率特性を発現し易い。かかる融点やガラス転移温度は、共重合成分の種類と共重合量、そして副生物であるジエチレングリコールの制御などによって調整できる。
【0052】
第1層に用いられるポリエステルは、o-クロロフェノール溶液を用いて35℃で測定した固有粘度が0.50~0.75dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.55~0.72dl/g、さらに好ましくは0.56~0.71dl/gである。これにより適度な配向結晶性を有し易くなる傾向にあり、第2層との屈折率差を発現し易くなる傾向にある。
【0053】
[第2層]
本開示の一実施形態の多層積層フィルムを構成する第2層は、等方性の層であり、すなわちこれを構成する樹脂(本開示において、第2の樹脂ともいう)は、等方性の層を形成し得るものである。従い、第2層を構成する樹脂としては非晶性の樹脂が好ましい。中でも非晶性であるポリエステルが好ましい。なおここで「非晶性」とは、極めて僅かな結晶性を有することを排除するものではなく、本願発明の多層積層フィルムが目的とする機能を奏する程度に第2層を等方性にできればよい。
【0054】
(第2層の共重合ポリエステル)
第2層を構成する樹脂としては、共重合ポリエステルが好ましく、特に、ナフタレンジカルボン酸成分、エチレングリコール成分およびトリメチレングリコール成分を共重合成分として含む共重合ポリエステルを用いることが好ましい。なお、かかるナフタレンジカルボン酸成分としては、2,6-ナフタレンジカルボン酸成分、2,7-ナフタレンジカルボン酸成分、またはこれらの組み合わせから誘導される成分、もしくはそれらの誘導体成分が挙げられ、特に2,6-ナフタレンジカルボン酸成分もしくはその誘導体成分が好ましく例示される。なお、本開示における共重合成分とは、ポリエステルを構成するいずれかの成分であることを意味しており、従たる成分(共重合量として全酸成分または全ジオール成分に対して50モル%未満)としての共重合成分に限定されず、主たる成分(共重合量として全酸成分または全ジオール成分に対して50モル%以上)も含めて用いられる。
【0055】
本開示の一実施形態においては、上述したように、第2層の樹脂としてエチレンナフタレート単位を主成分とするポリエステルを用いることが好ましく、そのとき、第2層の樹脂としてナフタレンジカルボン酸成分を含む共重合ポリエステルを用いることで、第1層との相溶性が高くなり、第1層との層間密着性が向上する傾向にあり、層間剥離が生じ難くなるため好ましい。
【0056】
第2層の共重合ポリエステルは、ジオール成分がエチレングリコール成分と、トリメチレングリコール成分の少なくとも2成分を含むことが好ましい。このうち、エチレングリコール成分は、フィルム製膜性などの観点より主たるジオール成分として用いられることが好ましい。
【0057】
本開示の一実施形態における第2層の共重合ポリエステルは、さらにジオール成分としてトリメチレングリコール成分を含有することが好ましい。トリメチレングリコール成分を含有することで、層構造の弾性を補い、層間剥離を抑制する効果が高まる。
【0058】
かかるナフタレンジカルボン酸成分、好ましくは2,6-ナフタレンジカルボン酸成分は、第2層の共重合ポリエステルを構成する全カルボン酸成分の30モル%以上、100モル%以下であることが好ましく、より好ましくは30モル%以上、80モル%以下、さらに好ましくは40モル%以上、70モル%以下である。これにより第1層との密着性をより高くできる。ナフタレンジカルボン酸成分の含有量が下限に満たないと相溶性の観点から密着性が低下することがある。また、ナフタレンジカルボン酸成分の含有量の上限は特に制限されないが、多すぎると第1層との屈折率差を発現し難くなる傾向にある。なお、第1層との屈折率の関係を調整するために他のジカルボン酸成分を共重合させてもよい。
【0059】
エチレングリコール成分は、第2層の共重合ポリエステルを構成する全ジオール成分の50モル%以上、95モル%以下であることが好ましく、より好ましくは50モル%以上、90モル%以下、さらに好ましくは50モル%以上、85モル%以下、特に好ましくは50モル%以上、80モル%以下である。これにより第1層との屈折率差を発現し易くなる傾向にある。
【0060】
トリメチレングリコール成分は、第2層の共重合ポリエステルを構成する全ジオール成分の3モル%以上、50モル%以下であることが好ましく、さらに5モル%以上、40モル%以下であることが好ましく、より好ましくは10モル%以上、40モル%以下、特に好ましくは10モル%以上、30モル%以下である。これにより第1層との層間密着性をより高くできる。また、第1層との屈折率差を発現し易くなる傾向にある。トリメチレングリコール成分の含有量が下限に満たないと層間密着性の確保が難しくなる傾向にあり、上限を超えると所望の屈折率とガラス転移温度の樹脂とすることがし難くなる。
【0061】
本開示の一実施形態における第2層は、本開示の目的を損ねない範囲であれば、第2層の質量を基準として10質量%以下の範囲内で該共重合ポリエステル以外の熱可塑性樹脂を第2のポリマー成分として含有してもよい。
【0062】
(第2層のポリエステルの特性)
本開示の一実施形態において、上述する第2層の共重合ポリエステルは、85℃以上のガラス転移温度を有することが好ましく、より好ましくは90℃以上、150℃以下、さらに好ましくは90℃以上、120℃以下、特に好ましくは93℃以上、110℃以下である。これにより耐熱性により優れる。また、第1層との屈折率差を発現し易くなる傾向にある。第2層の共重合ポリエステルのガラス転移温度が下限に満たない場合、耐熱性が十分に得られないことがあり、例えば90℃近辺での熱処理などの工程を含むときに第2層の結晶化や脆化によってヘーズが上昇し、輝度向上部材や反射型偏光板として使用される際の偏光度の低下を伴うことがある。また、第2層の共重合ポリエステルのガラス転移温度が高すぎる場合には、延伸時に第2層のポリエステルも延伸による複屈折性が生じることがあり、それに伴い延伸方向において第1層との屈折率差が小さくなり、反射性能が低下することがある。
【0063】
上述した共重合ポリエステルの中でも、90℃×1000時間の熱処理で結晶化によるヘーズ上昇を極めて優れて抑制できる点から、非晶性の共重合ポリエステルであることが好ましい。ここでいう非晶性とは、DSCにおいて昇温速度20℃/分で昇温させたときの結晶融解熱量が0.1mJ/mg未満であることを指す。
【0064】
第2層の共重合ポリエステルの具体例として、(1)ジカルボン酸成分として2,6-ナフタレンジカルボン酸成分を含み、ジオール成分としてエチレングリコール成分およびトリメチレングリコール成分を含む共重合ポリエステル、(2)ジカルボン酸成分として2,6-ナフタレンジカルボン酸成分およびテレフタル酸成分を含み、ジオール成分としてエチレングリコール成分およびトリメチレングリコール成分を含む共重合ポリエステル、が挙げられる。
【0065】
第2層の共重合ポリエステルは、o-クロロフェノール溶液を用いて35℃で測定した固有粘度が0.50~0.70dl/gであることが好ましく、さらに好ましくは0.55~0.65dl/gである。第2層に用いられる共重合ポリエステルが共重合成分としてトリメチレングリコール成分を有する場合、製膜性が低下することがあり、該共重合ポリエステルの固有粘度を上述の範囲とすることで製膜性をより高めることができる。第2層として上述する共重合ポリエステルを用いる場合の固有粘度は、製膜性の観点からはより高い方が好ましいものの、上限を超える範囲では第2層のポリエステルとの溶融粘度差が大きくなり、各層の厚みが不均一になることがある。
【0066】
[その他の層]
(最外層)
本開示の一実施形態の多層積層フィルムは、片方または両方の表面に最外層を有していても良い。かかる最外層は、樹脂を主体とする。なお、ここで「樹脂を主体とする」とは、層において樹脂が層の全質量に対し70質量%以上を占めることをいい、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。また、最外層は、等方性の層であることが好ましく、製造上の容易性の観点からは第2層と同一樹脂であってもよく、上述した第2層の共重合ポリエステルから構成することができ、そのような態様が好ましい。
【0067】
(中間層)
本開示の一実施形態の多層積層フィルムは、中間層を有していてもよい。
該中間層は、本開示において内部厚膜層などと称することがあるが、第1層と第2層の交互積層構成の内部に存在する厚膜の層を指す。なお、ここで厚膜とは、光学的に厚膜であることをいう。本開示においては、多層積層フィルムの製造の初期段階で交互積層構成の両側に膜厚の厚い層(厚み調整層、バッファ層と称することがある。)を形成し、その後ダブリングにより積層数を増やす方法が好ましく用いられるが、その場合は、膜厚の厚い層同士が2層積層されて中間層が形成されることとなり、内部に形成された厚膜の層が中間層となり、外側に形成された厚膜の層が最外層となる。
【0068】
中間層は、たとえば層厚みが好ましくは5μm以上、また、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下の厚さであることが好ましい。このような中間層を第1層と第2層の交互積層構成の一部に有する場合、偏光機能に影響をおよぼすことなく、第1層および第2層を構成する各層厚みを均一に調整しやすくなる。中間層は、第1層、第2層のいずれかと同じ組成、またはこれらの組成を部分的に含む組成であってもよく、層厚みが厚いため、反射特性には寄与しない。一方、透過特性には影響することがあるため、層中に粒子を含める場合は光線透過率を考慮して粒子径や粒子濃度を選択すればよい。
【0069】
該中間層の厚さが下限に満たない場合は、多層構造の層構成に乱れが生じることがあり、反射性能が低下することがある。一方、該中間層の厚さが上限を超える場合は、多層積層フィルム全体の厚みが厚くなり、薄型の液晶ディスプレイの反射型偏光板や輝度向上部材として用いた場合に省スペース化しにくいことがある。また、多層積層フィルム内に複数の中間層を含む場合には、それぞれの中間層の厚みは、上記範囲の下限以上であることが好ましく、また中間層の厚みの合計は、上記範囲の上限以下であることが好ましい。
【0070】
中間層に用いられるポリマーは、本開示の多層積層フィルムの製造方法を用いて多層構造中に存在させることができれば、第1層あるいは第2層と異なる樹脂を用いてもよいが、層間接着性の観点より、第1層または第2層のいずれかと同じ組成か、これらの組成を部分的に含む組成であることが好ましい。
【0071】
該中間層の形成方法は特に限定されないが、例えばダブリングを行う前の交互積層構成の両側に膜厚の厚い層を設け、それをレイヤーダブリングブロックと呼ばれる分岐ブロックを用いて交互積層方向に垂直な方向に2分割し、それらを交互積層方向に再積層することで中間層を1層設けることができる。同様の手法で3分割、4分割することにより中間層を複数設けることもできる。
【0072】
(塗布層)
本開示の一実施形態の多層積層フィルムは、少なくとも一方の表面に塗布層を有することができる。
かかる塗布層としては、滑り性を付与するための易滑層や、プリズム層や拡散層等との接着性を付与するためのプライマー層などが挙げられる。塗布層は、バインダー成分を含み、滑り性を付与するためにはたとえば粒子を含有させるとよい。易接着性を付与するためには、用いるバインダー成分を、接着したい層の成分と化学的に近いものとすることが挙げられる。また、塗布層を形成するための塗布液は、環境の観点から水を溶媒とする水系塗布液であることが好ましいが、特にそのような場合等において、積層多層フィルムに対する塗布液の濡れ性を向上させる目的で、界面活性剤を含有することができる。その他、塗布層の強度を高めるために架橋剤を添加したりなど、機能剤を添加してもよい。
【0073】
[多層積層フィルムの製造方法]
本開示の一実施形態の多層積層フィルムの製造方法について詳述する。なお、ここで以下に示す製造方法は一例であり、本開示はこれに限定されない。また、異なる態様についても、以下を参照して得ることができる。
【0074】
本開示の一実施形態の多層積層フィルムは、第1層を構成するポリマーと第2層を構成するポリマーとを、多層フィードブロック装置を用いて溶融状態で交互に重ね合わせて、例えば、合計で30層以上の交互積層構成を作成し、その両面にバッファ層を設け、その後レイヤーダブリングと呼ばれる装置を用いて該バッファ層を有する交互積層構成を例えば2~4分割し、該バッファ層を有する交互積層構成を1ブロックとしてブロックの積層数(ダブリング数)が2~4倍になるように再度積層する方法で積層数を増やすことで得ることができる。かかる方法によると、多層構造の内部にバッファ層同士が2層積層された中間層と、バッファ層1層からなる最外層を両面に有する多層積層フィルムを得ることができる。
【0075】
かかる多層構造は、第1層と第2層の各層の厚みが所望の傾斜構造を有するように積層される。これは、たとえば、多層フィードブロック装置においてスリットの間隔や長さを変化させることで得られる。例えば、第1層および第2層は、少なくとも2つの光学厚み領域で異なる傾きの変化率を有することから、該多層フィードブロックにおいても、少なくとも1つ以上の変曲点を有するようにスリットの間隔や長さを調整すればよい。
【0076】
上述した方法で所望の積層数に積層したのち、ダイより押出し、キャスティングドラム上で冷却し、多層未延伸フィルムを得る。多層未延伸フィルムは、製膜機械軸方向、またはそれにフィルム面内で直交する方向(横方向、幅方向またはTDという場合がある)の少なくとも1軸方向(かかる1軸方向はフィルム面に沿った方向である。)に延伸されることが好ましい。延伸温度は、第1層のポリマーのガラス転移点温度(Tg)~(Tg+20)℃の範囲で行うことが好ましい。従来よりも低めの温度で延伸を行うことにより、フィルムの配向特性をより高度に制御することができる。
【0077】
延伸倍率は2.0~7.0倍で行うことが好ましく、さらに好ましくは4.5~6.5倍である。かかる範囲内で延伸倍率が大きいほど、第1層および第2層における個々の層の面方向の屈折率のバラツキが延伸による薄層化により小さくなり、多層積層フィルムの光干渉が面方向に均一化され、また第1層と第2層の延伸方向の屈折率差が大きくなるので好ましい。このときの延伸方法は、棒状ヒータによる加熱延伸、ロール加熱延伸、テンター延伸など公知の延伸方法を用いることができるが、ロールとの接触によるキズの低減や延伸速度などの観点から、テンター延伸が好ましい。
【0078】
また、かかる延伸方向とフィルム面内で直交する方向(Y方向)にも延伸処理を施し、2軸延伸を行う場合は、用途にもよるが、反射偏光特性を具備させたいときは、1.01~1.20倍程度の延伸倍率にとどめることが好ましい。Y方向の延伸倍率をこれ以上高くすると、偏光性能が低下することがある。
【0079】
また、延伸後にさらに(Tg)~(Tg+30)℃の温度で熱固定を行いながら、5~15%の範囲で延伸方向にトーアウト(再延伸)させることにより、得られた多層積層フィルムの配向特性を高度に制御することができる。
【0080】
本開示の一実施形態において上述の塗布層を設ける場合、多層積層フィルムへの塗布は任意の段階で実施することができるが、フィルムの製造過程で実施することが好ましく、延伸前のフィルムに対して塗布することが好ましい。
かくして本開示の一実施形態の多層積層フィルムが得られる。
【0081】
なお、金属光沢フィルムや反射ミラーの用途に用いる多層積層フィルムである場合は、2軸延伸フィルムとすることが好ましく、この場合は、逐次2軸延伸法、同時2軸延伸法のいずれであってもよい。また、延伸倍率は、第1層および第2層の各層の屈折率および膜厚が、所望の反射特性を奏するように調整されるようにすればよいが、例えばこれら層を構成する樹脂の通常の屈折率を考慮すると、縦方向および横方向ともに2.5~6.5倍程度とすればよい。
【0082】
[用途]
以下、本開示の多層積層フィルムが好ましく適用され得る用途について説明する。本開示の多層積層フィルムは、輝度向上部材あるいは反射型偏光板として使用されることが特に好ましい。
【0083】
(輝度向上部材としての用途)
本開示の多層積層フィルムは、上述したポリマー組成や層構成、配向の態様とすることで、一方の偏光成分を選択的に反射し、該偏光成分と垂直方向の偏光成分を選択的に透過させる性能を奏することができる。より具体的には1軸延伸した態様である。かかる性能を利用し、液晶ディスプレイなどの輝度向上部材として用いることができる。輝度向上部材として用いた場合、一方の偏光成分は透過し、他方の透過しなかった偏光成分は吸収せずに光源側に反射させることによって光を再利用でき、良好な輝度向上効果が得られる。
また、本開示の多層積層フィルムの少なくとも一方の面にプリズム層や拡散層等の硬化性樹脂層を積層してもよい。ここで硬化性樹脂層は、熱硬化性樹脂層や電子線硬化性樹脂層である。その際、プライマー機能等を有する塗布層を介してこれらプリズム層あるいは拡散層を積層することもでき、好ましい。
本開示の多層積層フィルムを用いてプリズム層などの部材と貼り合わせ、または本開示の多層積層フィルムの表面にプリズム等を形成し、ユニット化することにより、組み立て時の部材数を低減でき、また液晶ディスプレイの厚みをより薄くすることができる。また、本開示の多層積層フィルムを用いてこれらの部材と貼り合せることにより、加工時などに加わる外力による層間剥離を抑制できるため、より信頼性の高い輝度向上部材を提供できる。
本開示の多層積層フィルムを輝度向上部材として用いる場合、液晶ディスプレイの光源と、偏光板/液晶セル/偏光板で構成される液晶パネルとの間に輝度向上部材を配置する態様の液晶ディスプレイ装置が例示される。プリズム層またはプリズムをさらに設ける場合は、輝度向上部材の液晶パネル側にプリズム層またはプリズムを配置することが好ましい。
【0084】
(反射型偏光板としての用途)
本開示の多層積層フィルムは、吸収型偏光板と併用して、或いは単独で用いて液晶ディスプレイなどの偏光板として用いることができる。特に反射偏光性能を高め、後述する偏光度(P)で85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは99.5%以上となる高偏光度を有するものについては、吸収型偏光板を併用することなく、単独で液晶セルに隣接して用いられる液晶ディスプレイの偏光板として用いることができる。
本開示の積層多層フィルムの用途としては、より具体的には、本開示の積層多層フィルムからなる第1の偏光板、液晶セル、および第2の偏光板がこの順で積層された液晶ディスプレイが挙げられる。
【実施例】
【0085】
以下に、本開示の実施形態を実施例を挙げて説明するが、本開示は以下に示した実施例に制限されるものではない。なお、実施例中の物性や特性は、下記の方法にて測定または評価した。
【0086】
(1)各層の厚み
多層積層フィルムをフィルム長手方向2mm、幅方向2cmに切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂(リファインテック(株)製エポマウント)にて包埋した。包埋されたサンプルをミクロトーム(LEICA製ULTRACUT UCT)で幅方向に垂直に切断し、50nm厚の薄膜切片にした。透過型電子顕微鏡(日立S-4300)を用いて加速電圧100kVにて観察撮影し、写真から各層の厚み(物理厚み)を測定した。
1μmを超える厚さの層について、多層構造の内部に存在しているものを中間層、最表層に存在しているものを最外層とし、それぞれの厚みを測定した。
【0087】
上記で得られた各層の物理厚みの値と、下記(2)により求めた各層の屈折率(nX)の値を用い、これらを上記(式2)に代入することで各層の光学厚みを求め、第1層について、単調増加領域において、光学厚みが薄い側の端~100nmの範囲および100nm~厚い側の端の範囲のそれぞれについて平均光学厚みを求めた。第2層についても同様にして、単調増加領域において、光学厚みが薄い側の端~200nmの範囲および200nm~厚い側の端の範囲のそれぞれについて平均光学厚みを求めた。
なお、第1層か第2層かは、屈折率の態様により判断できるが、それが困難な場合は、NMRでの解析や、TEMでの解析による電子状態により判断することも可能である。
【0088】
(2)各方向の延伸後の屈折率
多層積層フィルムの第1層及び第2層の屈折率は、得られた多層積層フィルムの製造条件と同様の条件で、層の厚み比率が1:1である2層積層フィルムを作成し、それを用いて測定した第1層及び第2層の屈折率を、それぞれ多層積層フィルムの第1層及び第2層の屈折率として求める。
例えば、本実施形態においては、厚み比率が第1層:第2層=1:1である2層積層フィルムとする以外は後述する実施例1と同様の条件で合計厚み75μmのフィルムを作成し、第1層、第2層のそれぞれについて、それぞれ延伸方向(X方向)とその直交方向(Y方向)、厚み方向(Z方向)のそれぞれの屈折率(それぞれnX、nY、nZとする)を、メトリコン製プリズムカプラを用いて波長633nmにおける屈折率を測定して求め、第1層及び第2層それぞれの延伸後の屈折率とした。
【0089】
(3)単調増加の判断
第1層と第2層とを個別に、各層の光学厚みの値を縦軸に入力し、各層の層番号を横軸に入力した際の層厚みプロファイルの任意の領域において、膜厚が増加傾向を示す範囲内での層数を5等分し、膜厚が厚くなる方向に、等分された各エリアでの膜厚の平均値が全て増加している場合は単調増加であるとし、そうでない場合は単調増加でないとした。
【0090】
ここで、第1層の上記単調増加領域において、薄い側の端の層および厚い側の端の層を確定し、光学厚みが薄い側の端から100nmの範囲における層厚みプロファイルの1次近似直線の傾きを1Aとし、光学厚みが100nmを越え厚い側の端までの範囲における層厚みプロファイルの1次近似直線の傾きを1Bとした。また、第2層の上記単調増加領域において薄い側の端の層および厚い側の端の層を確定し、光学厚みが薄い側の端から200nmの範囲における層厚みプロファイルの1次近似直線の傾きを2Aとし、光学厚みが200nmを超え厚い側の端までの範囲における層厚みプロファイルの1次近似直線の傾きを2Bとした。これら得られた値から1B/1Aおよび2B/2Aを求めた。
【0091】
(4)色目の評価、及び平均反射率
偏光フィルム測定装置(日本分光株式会社製「VAP7070S」)を用いて、得られた多層積層フィルムの反射スペクトルを測定した。なお、測定はスポット径調整用マスクΦ1.4、および偏角ステージを使用し、測定光の入射角は0度設定とし、クロスニコルサーチ(650nm)で定まる多層積層フィルムの透過軸と直交する軸(反射軸という。)の各波長における透過率を波長380~780nmの範囲で5nm間隔で測定した。波長380~780nmの範囲で透過率の平均値をとり、平均透過率を100から引いた値を法線入射における反射軸の平均反射率とした。平均反射率が50%以上であれば、測定した多層積層フィルムの反射軸において反射可能であると判断した。輝度向上部材等の光学用に用いる場合は、かかる平均反射率は85%以上、好ましくは87%以上、より好ましくは90%以上である。
また、多層積層フィルムの色目の評価は、以下の方法により評価した。即ち、上記の測定で得られた透過スペクトルから、波長505~555nmの範囲での平均透過率、および、波長555~605nmでの平均透過率を求め、これらの比が1.0に近いほど多層積層フィルムの正面方向から観察される色目が均一であると評価できる。かかる観点から、前述した比(波長505~555nmの範囲での平均透過率)/(波長555~605nmでの平均透過率)は、好ましくは1.0±0.7、より好ましくは1.0±0.5、更に好ましくは1.0±0.3、更に好ましくは1.0±0.1である。
【0092】
(5)波長750~850nmでの透過率の最大値
分光光度計(島津製作所製、UV-3101PCおよびMPC-3100)を用い、波長300nmから1200nmの範囲での、得られた多層積層フィルムの透過軸における透過率と、該透過軸と直交する軸(反射軸)における透過率とをそれぞれ測定し、分光スペクトルを得た。なお、測定光の入射角は0度設定とした。
波長750~850nmの範囲は、フィルムを斜め方向(入射角度で45度~60度の方向)から観察した際に、スペクトルの短波長側へのシフトにより、可視光領域(特に赤色の領域)に掛かる波長範囲である。したがって、かかる波長範囲において透過率の最大値が大きいと、多層積層フィルムを斜め方向から観測した際に、多層積層フィルムの着色がより顕著になる傾向にある。多層積層フィルムを斜め方向から観察した際に着色が著しいということは、すなわち反射波長帯域が狭いということになる。かかる観点から、波長750~850nmにおける透過率の最大値は、好ましくは38%以下、より好ましくは36%以下、更に好ましくは34%以下、更に好ましくは30%以下である。
(6)偏光度
偏光フィルム測定装置(日本分光株式会社製「VAP7070S」)を用いて、得られた多層積層フィルムの視感度補正偏光度を測定し、偏光度(P)(単位:%)とした。なお、測定はスポット径調整用マスクΦ1.4、および偏角ステージを使用し、測定光の入射角は0度設定とし、クロスニコルサーチ(650nm)で定まる多層積層フィルムの透過軸と該透過軸と直交する軸の各々の平均透過率(波長範囲400~800nm)をもとに算出される。
ここで、偏光度(P)は、75%以上であることが好ましい。輝度向上部材等の光学用に用いる場合は、好ましくは76%以上、より好ましくは77%以上、更に好ましくは78%以上である。
【0093】
[製造例1]ポリエステルA
第1層用ポリエステルとして、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、そしてエチレングリコールを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、酸成分の95モル%が2,6-ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の5モル%がテレフタル酸成分、グリコール成分がエチレングリコール成分である共重合ポリエステル(固有粘度0.64dl/g)(o―クロロフェノール、35℃、以下同様)を準備した。
【0094】
[製造例2]ポリエステルB
第2層用ポリエステルとして、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、そしてエチレングリコールとトリメチレングリコールを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、酸成分の50モル%が2,6-ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の50モル%がテレフタル酸成分、グリコール成分の85モル%がエチレングリコール成分、グリコール成分の15モル%がトリメチレングリコール成分である共重合ポリエステル(固有粘度0.63dl/g)を準備した。
【0095】
[実施例1]
第1層用にポリエステルAを170℃で5時間乾燥した後、第2層用にポリエステルBを85℃で8時間乾燥した後、それぞれ第1、第2の押し出し機に供給し、300℃まで加熱して溶融状態とし、第1層用ポリエステルを138層、第2層用ポリエステルを137層に分岐させた後、第1層と第2層が交互に積層され、かつ表1に示すような層厚みプロファイルとなるような櫛歯を備える多層フィードブロック装置を使用して、総数275層の積層状態の溶融体とし、その積層状態を保持したまま、その両側に第3の押し出し機から第2層用ポリエステルと同じポリエステルを3層フィードブロックへと導き、層数275層の積層状態(両表層は第1層である)の溶融体の積層方向の両側にバッファ層をさらに積層した。両側のバッファ層の合計が全体の47%となるよう第3の押し出し機の供給量を調整した。その積層状態をさらにレイヤーダブリングブロックにて、2分岐して1:1の比率で積層し、内部に中間層、最表層に2つの最外層を含む全層数553層の未延伸多層積層フィルムを作製した。
この未延伸多層積層フィルムを130℃の温度で幅方向に5.9倍に延伸した。得られた1軸延伸多層積層フィルムの厚みは75μmであった。
【0096】
[実施例2~8、比較例1~8]
表1に示す層厚みプロファイルとなるように用いる多層フィードブロック装置を変更した以外は実施例1と同様にして、1軸延伸多層積層フィルムを得た。
【0097】
【0098】
表1からわかるように、実施例の多層積層フィルムでは、比較例の多層積層フィルムと比べ、広い反射波長帯域を保持しながら、高い偏光度を有し、色目が均一で、かつ斜め方向から観察したときの色目が抑制されたものが得られた。
【0099】
本開示の一実施形態によれば、本開示の多層積層フィルムは、交互に積層した複屈折性の層と等方性の層の光学的厚みを適切に設計することで、広い反射波長帯域を保持しながら、高い偏光度で、色目が均一で、かつ斜めから観察したときの色目の抑制を実現させることが可能となる。そのため、例えば偏光性能が求められる輝度向上部材、反射型偏光板などとして用いる場合に、広い反射波長帯域において高偏光度、及び色目が抑制されていることから、より信頼性の高い輝度向上部材、液晶ディスプレイ用偏光板などを提供できる。
【0100】
2018年9月27日に出願された日本国特許出願2018-182867の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。