(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】トルク伝達軸
(51)【国際特許分類】
F16D 1/02 20060101AFI20231212BHJP
F16D 1/04 20060101ALI20231212BHJP
F16D 3/26 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
F16D1/02 210
F16D1/04 400
F16D3/26 X
(21)【出願番号】P 2020558372
(86)(22)【出願日】2019-11-18
(86)【国際出願番号】 JP2019045052
(87)【国際公開番号】W WO2020105582
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2018219568
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 誠一
(72)【発明者】
【氏名】中尾 圭佑
【審査官】中野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-310724(JP,A)
【文献】実開平1-158826(JP,U)
【文献】特開2017-172613(JP,A)
【文献】特開2008-155778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 1/02
F16D 1/04
F16D 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向一端部と、該軸方向一端部に備えられ、他の部材に対してトルク伝達可能に接続可能である接続部と、軸方向他端部と、軸方向他端側部分に備えられ、軸方向に伸長し、軸方向一方側の閉鎖端と軸方向他方側の開口端を有するスリットと、および、前記軸方向他端部の内周面に備えられた雌セレーションとを有し、中空筒形状である、シャフトと、
円周方向1箇所に配置された不連続部と、該不連続部を挟んで両側に配置され、締付部材が挿入可能な取付孔を有する1対のフランジ部と、および、部分円筒形状であり、前記1対のフランジ部を円周方向に連結する連結部とを有し、欠円筒形状を有する、クランプと、
を備え、
前記接続部は、前記シャフトと一体に設けられており、および、前記クランプは、前記シャフトとは別体で、前記シャフトの前記軸方向他端部に外嵌固定されており、前記スリットの幅寸法を狭めることにより、前記シャフトの前記軸方向他端側部分を縮径させることが可能であ
り、
前記クランプは、前記スリットの幅寸法を狭めた際に、前記シャフトの前記軸方向他端部のうちの軸方向一方側部分に対して、該軸方向他端部のうちの軸方向他方側部分よりも大きな締付力を付与するように構成されている、
トルク伝達軸。
【請求項2】
前記連結部は、軸方向他方側部分に、前記フランジ部の軸方向他端面から軸方向一方側に凹んだ切り欠きを備える、請求項
1に記載したトルク伝達軸。
【請求項3】
軸方向一端部と、該軸方向一端部に備えられ、他の部材に対してトルク伝達可能に接続可能である接続部と、軸方向他端部と、軸方向他端側部分に備えられ、軸方向に伸長し、軸方向一方側の閉鎖端と軸方向他方側の開口端を有するスリットと、および、前記軸方向他端部の内周面に備えられた雌セレーションとを有し、中空筒形状である、シャフトと、
円周方向1箇所に配置された不連続部と、該不連続部を挟んで両側に配置され、締付部材が挿入可能な取付孔を有する1対のフランジ部と、および、部分円筒形状であり、前記1対のフランジ部を円周方向に連結する連結部とを有し、欠円筒形状を有する、クランプと、
を備え、
前記接続部は、前記シャフトと一体に設けられており、および、前記クランプは、前記シャフトとは別体で、前記シャフトの前記軸方向他端部に外嵌固定されており、前記スリットの幅寸法を狭めることにより、前記シャフトの前記軸方向他端側部分を縮径させることが可能であ
り、
前記連結部は、軸方向他方側部分に、前記フランジ部の軸方向他端面から軸方向一方側に凹んだ切り欠きを備える、
トルク伝達軸。
【請求項4】
前記切り欠きは、前記取付孔の中心軸よりも軸方向他方側に配置される、請求項
2または3に記載したトルク伝達軸。
【請求項5】
前記切り欠きは、前記連結部の円周方向に関して前記フランジ部から離れるほど軸方向幅が大きくなる形状を有する、請求項
2~4のいずれか1項に記載したトルク伝達軸。
【請求項6】
前記切り欠きは、前記連結部の円周方向に関して軸方向幅が一定である形状を有する、請求項
2~4のいずれか1項に記載したトルク伝達軸。
【請求項7】
前記連結部の円周方向に関する前記切り欠きの端部は、前記取付孔の中心軸および前記シャフトの中心軸にそれぞれ直交する方向に関して、前記シャフトの中心軸よりも前記取付孔に近い側に配置される、請求項
2~6のうちのいずれか1項に記載したトルク伝達軸。
【請求項8】
前記切り欠きは、前記シャフトの中心軸を含み、かつ、前記取付孔の中心軸に直交する仮想平面に関して対称形状を有する、請求項
2~7のうちのいずれか1項に記載したトルク伝達軸。
【請求項9】
前記接続部は、ヨーク部により構成される、請求項1~8のうちのいずれか1項に記載したトルク伝達軸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のステアリング装置などに組み込まれるトルク伝達軸に関する。
【背景技術】
【0002】
図11は、特開2017-25964号公報に記載された、自動車用のステアリング装置の従来例を示す。ステアリング装置は、ステアリングホイール1と、ステアリングシャフト2と、ステアリングコラム3と、1対の自在継手4a、4bと、中間シャフト5と、ステアリングギヤユニット6と、1対のタイロッド7とを備える。
【0003】
ステアリングホイール1は、ステアリングコラム3の内側に回転自在に支持されたステアリングシャフト2の後端部に取り付けられる。ステアリングシャフト2の前端部は、1対の自在継手4a、4bおよび中間シャフト5を介して、ステアリングギヤユニット6のピニオン軸8に接続される。ピニオン軸8の回転が図示しないラックの直線運動に変換されて、1対のタイロッド7が押し引きされることにより、操舵輪にステアリングホイール1の操作量に応じた舵角が付与される。
【0004】
自在継手4a、4bは、互いに同一直線上に存在しない回転軸である、ステアリングシャフト2と中間シャフト5、並びに、中間シャフト5とピニオン軸8を、トルク伝達可能に接続する。自在継手4a、4bとしては、特開2011-220398号公報などに記載されている、1対のヨークと十字軸とを備えた自在継手が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-25964号公報
【文献】特開2011-220398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
大型の自動車に搭載されるステアリング装置にあっては、ステアリングシャフトからステアリングギヤユニットまでの距離が長い。このため、自在継手を構成するヨークに対して、ステアリングシャフトやピニオン軸などの軸を直接固定する代わりに、延長軸と呼ばれるトルク伝達軸を介して、前記軸を固定することが考えられる。
【0007】
図12(A)~
図12(C)は、本発明者らが先に考えたトルク伝達軸9を示す。トルク伝達軸9は、ヨーク10と、ステアリングシャフトやピニオン軸などの軸11との間に配置され、ヨーク10と軸11とをトルク伝達可能に接続する。トルク伝達軸9は、軸方向一端部の外周面に設けられた雄セレーション12と、軸方向他端部の内周面に設けられた雌セレーション13と、軸方向他端部に一体に設けられ、トルク伝達軸9の軸方向他端部を縮径するためのクランプ部14とを備える。クランプ部14は、トルク伝達軸9の軸方向他端部の円周方向1箇所に設けられた不連続部15と、不連続部15の両側に配置された1対のフランジ部16と、1対のフランジ部16に設けられ、図示しない締付部材を挿入可能な取付孔17とを備える。
【0008】
トルク伝達軸9の軸方向一端部は、ヨーク10を構成する基部18の内側に挿入される。雄セレーション12は、基部18の内周面に設けられた雌セレーション19とセレーション係合する。トルク伝達軸9と基部18は、溶接ビード部20により全周にわたり溶接固定される。
【0009】
トルク伝達軸9の軸方向他端部の内側には、軸11の軸方向一端部が挿入される。雌セレーション13は、軸11の外周面に設けられた雄セレーション21とセレーション係合する。前記締付部材の先端部を取付孔17あるいは図示しないナットに螺合することにより、トルク伝達軸9の内周面により軸11の外周面は強く締め付けられる。
【0010】
トルク伝達軸9は、通常、冷間鍛造加工により造られる。熱間鍛造加工による場合に比べて、冷間鍛造加工により造られたトルク伝達軸9の形状精度および寸法精度は高い。しかしながら、トルク伝達軸9では、金属材料の流動が複雑になるクランプ部14が一体に設けられていることなどに起因して、トルク伝達軸9の軸方向両端部に設けられた雄セレーション12と雌セレーション13との同軸度を高度に確保することが難しい。また、トルク伝達軸9とヨーク10とが溶接固定されているため、熱変形などに起因して、トルク伝達軸9とヨーク10との同軸度が低くなりやすい。このため、
図12(C)に示すように、トルク伝達軸9に接続される軸、すなわち、ヨーク10を介して接続される軸11a、あるいは、雌セレーション13に接続される軸11の振れ回りが大きくなる可能性がある。この結果、トルク伝達軸9が適用されたステアリング装置の一部で、トルク伝達軸9に接続された軸の振れ回りに起因して、回転方向の摺動異音、スティックスリップ振動異音などの異音が発生する可能性がある。
【0011】
本発明は、上述のような事情に鑑み、トルク伝達軸に接続される軸の振れ回りを抑えることができる、トルク伝達軸の構造を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のトルク伝達軸は、シャフトと、該シャフトとは別体のクランプとを備える。
【0013】
前記シャフトは、中空筒形状であり、軸方向一端部と、該軸方向一端部に備えられ、他の部材に対してトルク伝達可能に接続可能である接続部と、軸方向他端部と、軸方向他端側部分に備えられ、軸方向に伸長し、軸方向一方側の閉鎖端と軸方向他方側の開口端を有するスリットと、前記軸方向他端部の内周面に備えられた雌セレーションとを有する。前記接続部は、前記シャフトと一体に設けられる。
【0014】
前記クランプは、欠円筒形状であり、円周方向1箇所に配置された不連続部と、該不連続部を挟んで両側に配置され、締付部材が挿入可能な取付孔を有する1対のフランジ部と、および、部分円筒形状であり、前記1対のフランジ部を円周方向に連結する連結部とを有する。該クランプは、前記シャフトとは別体で、前記シャフトの前記軸方向他端部に外嵌固定されており、前記スリットの幅寸法を狭めることにより、前記シャフトの前記軸方向他端側部分を縮径させることが可能である。
【0015】
前記クランプは、前記スリットの幅寸法を狭めた際に、前記シャフトの前記軸方向他端部のうちの軸方向一方側部分に対して、該軸方向他端部のうちの軸方向他方側部分よりも大きな締付力を付与するように構成されることができる。
【0016】
具体的には、前記連結部は、該連結部の軸方向他方側部分に、前記フランジ部の軸方向他端面から軸方向一方側に凹んだ切り欠きを備える。
【0017】
前記切り欠きは、前記取付孔の中心軸よりも軸方向他方側に配置されることができる。
【0018】
前記切り欠きは、前記連結部の円周方向に関して前記フランジ部から離れるほど、軸方向幅が大きくなる形状を有することができる。
【0019】
あるいは、前記切り欠きは、前記連結部の円周方向に関して軸方向幅が一定である形状を有することもできる。
【0020】
前記連結部の円周方向に関する前記切り欠きの端部は、前記取付孔の中心軸および前記シャフトの中心軸にそれぞれ直交する方向に関して、前記シャフトの中心軸よりも前記取付孔に近い側に配置されることができる。
【0021】
前記切り欠きは、前記シャフトの中心軸を含み、かつ、前記取付孔の中心軸に直交する仮想平面に関して対称形状を有することができる。
【0022】
前記接続部は、自在継手を構成するヨーク部により構成されることができる。あるいは、前記接続部は、セレーション部、スプライン部、あるいは、キー係合部により構成されることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のトルク伝達軸では、トルク伝達軸の軸方向両端部に設けられた接続部と雌セレーションとの同軸度、並びに、トルク伝達軸と接続部との同軸度をいずれも高度に確保することができる。また、本発明のトルク伝達軸では、クランプにより、雌セレーション側に接続される軸を、該軸に歳差運動が生じないように締め付けることができる。このため、本発明のトルク伝達軸では、該トルク伝達軸に接続される軸の振れ回りを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態の第1例のトルク伝達軸の斜視図である。
【
図2】
図2は、第1例のトルク伝達軸の側面図である。
【
図4】
図4は、第1例のトルク伝達軸を構成するシャフトの平面図である。
【
図5】
図5は、第1例のトルク伝達軸を構成するシャフトの側面図である。
【
図6】
図6は、第1例のトルク伝達軸を構成するクランプの斜視図である。
【
図7】
図7(A)は、第1例のトルク伝達軸を構成するクランプの平面図であり、
図7(B)は、第1例のトルク伝達軸を構成するクランプの側面図である。
【
図8】
図8は、第1例のトルク伝達軸と該トルク伝達軸に接続される軸との接続部を示す断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施の形態の第2例のトルク伝達軸の側面図である。
【
図10】
図10は、第2例のトルク伝達軸を構成するクランプの側面図である。
【
図11】
図11は、従来のステアリング装置を示す部分切断側面図である。
【
図12】
図12(A)は、本発明者らが先に考えたトルク伝達軸を介して、ヨークと回転軸とを接続した状態を示す斜視図であり、
図12(B)は
図12(A)の分解斜視図であり、
図12(C)は、トルク伝達軸に接続される軸に振れ回りが生じる状態を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1例]
本発明の実施の形態の第1例について、
図1~
図8を用いて説明する。本例のトルク伝達軸22は、例えば、大型の自動車のステアリング装置に組み込まれて、互いに同一直線上に存在しない回転軸である、ステアリングシャフトと中間シャフト、あるいは、中間シャフトとピニオン軸を、トルク伝達可能に接続するために使用される。
【0026】
トルク伝達軸22は、中空筒形状のシャフト23と、シャフト23とは別体で、欠円筒形状(略U字状)のクランプ24とを備える。以下の説明において、軸方向とは、特に断らない限り、トルク伝達軸22の軸方向をいう。また、軸方向に関して一方(一端)側とは、
図1、
図2、
図4、
図5、
図6、
図7および
図8では、左側である。軸方向に関して他方(他端)側とは、クランプ24が配置される側をいい、
図1、
図2、
図4、
図5、
図6、
図7および
図8では、右側である。
【0027】
シャフト23は、炭素鋼鋳鋼材(SC材)などの素材に、鍛造加工(冷間鍛造加工または熱間鍛造加工)および切削加工などを施すことにより、全体を一体に造られている。シャフト23は、軸方向一端部と、該軸方向一端部に備えられ、他の部材に対してトルク伝達可能に接続可能である接続部とを備える。本例では、シャフト23の接続部は、二股状のヨーク部25により構成される。シャフト23の軸方向中間部から軸方向他端部までは、筒部26により構成される。
【0028】
ヨーク部25は、十字軸式の自在継手を構成する。ヨーク部25は、腕部27a、27bを備える。腕部27a、27bは、筒部26の軸方向一端縁の直径方向反対側となる2箇所位置から軸方向一方側に伸長している。腕部27a、27bのそれぞれは、互いに同軸の円孔28を有する。円孔28の内側には、図示しない軸受カップおよびニードルが配置され、十字軸を構成する軸部が回転自在に支持される。
【0029】
筒部26は、中空筒形状を有し、軸方向一方側から順に、大径筒部29と、大径側円すい筒部30と、中径筒部31と、小径側円すい筒部32と、小径筒部33とを備える。
【0030】
大径筒部29は、段付円筒形状を有し、筒部26の軸方向一端部に配置される。大径筒部29の軸方向他端縁は、大径側円すい筒部30の軸方向一端縁に接続する。大径筒部29の外径寸法および内径寸法は、大径筒部29の軸方向他方側に存在する、筒部26を構成するその他の部分の外径寸法および内径寸法よりも大きい。すなわち、大径筒部29は、筒部26の中では最も大径である。
【0031】
大径側円すい筒部30は、部分円すい筒形状を有し、外径寸法および内径寸法が、軸方向他方側に向かうほど小さくなる。大径側円すい筒部30の軸方向他端縁は、中径筒部31の軸方向一方側端縁に接続する。
【0032】
中径筒部31は、円筒形状を有し、筒部26の軸方向中間部に配置される。中径筒部31の外径寸法および内径寸法は、軸方向にわたり一定である。中径筒部31の軸方向他端縁は、小径側円すい筒部32の軸方向一端縁に接続する。
【0033】
小径側円すい筒部32は、部分円すい筒形状を有し、外径寸法および内径寸法が、軸方向他方側に向かうほど小さくなる。小径側円すい筒部32の軸方向他端縁は、小径筒部33の軸方向一端縁に接続する。
【0034】
小径筒部33は、段付円筒形状を有し、筒部26の軸方向他端部に配置される。小径筒部33は、その軸方向他方側半部に、軸方向一方側に隣接する小径筒部33の軸方向一方側半部よりも小さい外径寸法を有する嵌合筒部34を備える。小径筒部33は、その外周面の軸方向中間部に、軸方向他方側を向いた略円輪状(C字状)の段差面35を有する。本例では、小径筒部33の軸方向他方側半部の外周面に、切削加工を施すことにより、嵌合筒部34および段差面35を形成している。嵌合筒部34は、円筒面状の外周面を有しており、小径筒部33の軸方向一方側半部に比べて、肉厚が小さい。嵌合筒部34の軸方向寸法は、クランプ24の軸方向寸法とほぼ同じである。段差面35は、クランプ24を嵌合筒部34に外嵌する際に、クランプ24の軸方向一端面を突き当てることで、シャフト23に対するクランプ24の軸方向に関する位置決めを図るために利用される。
【0035】
本例では、筒部26の内周面のうち、軸方向他端部に相当する、小径筒部33および小径側円すい筒部32の内周面にのみ、雌セレーション36が全長にわたり設けられている。
図1では、雌セレーションの図示を省略している。小径筒部33の内側には、
図8に示すように、ステアリングシャフトやピニオン軸などの軸37の端部が挿入される。雌セレーション36は、軸37の外周面に形成された雄セレーション38とセレーション係合する。
【0036】
シャフト23のうち、軸方向他端側部分(軸方向中間部から軸方向他端部)に相当する、中径筒部31から小径筒部33にわたる範囲に、軸方向に伸長するスリット39が設けられている。スリット39は、シャフト23の内周面と外周面とを連通しており、ヨーク部25を構成する1対の腕部27a、27bと円周方向に関する位相(周方向位置)が90度ずれた位置に配置される。スリット39の軸方向一方側は閉鎖端であり、小径筒部33よりも軸方向一方側に存在する中径筒部31の軸方向他端部に位置する。スリット39の軸方向他方側は開口端であり、シャフト23の嵌合筒部34の軸方向他端縁に開口する。本例では、スリット39の幅寸法は、全長にわたり一定である。スリット39は、カッターなどの回転切削工具を用いた切削加工により形成される。スリット39の軸方向一端部(奥端部)は、部分円弧状の断面形状を有する。スリット39は、軸方向一端部が閉鎖端であり、軸方向他端部が開口端であるため、クランプ24が外嵌される嵌合筒部34の剛性は、スリット39の開口端に近い軸方向他方側部分よりも、スリット39の閉鎖端に近い軸方向一方側部分の方が高い。
【0037】
シャフト23は、嵌合筒部34の軸方向中間部の外周面のうちで、スリット39と周方向の位相が一致する部分に、シャフト23の中心軸O23に対し直交する方向に伸長する係合凹溝40を備える。係合凹溝40は、スリット39と交差するように形成されている。係合凹溝40とスリット39との交差部は、スリット39のうちで交差部の軸方向両側に隣接する部分に比べて幅寸法が大きい幅広部からなる。係合凹溝40は、部分円筒面形状を有し、係合凹溝40の曲率半径はクランプ24の取付孔45a、45bの曲率半径とほぼ同じである。
【0038】
クランプ24は、シャフト23の軸方向他端部のうちの嵌合筒部34に外嵌固定されており、シャフト23の軸方向他端側部分、具体的には、スリット39が備えられた中径筒部31の軸方向他端部から嵌合筒部34にわたる範囲を縮径させるために用いられる。クランプ24は、シャフト23を構成する材料よりも硬度の高い、機械構造用炭素鋼であるS35Cなどの素材に熱間鍛造加工もしくは切削加工などを施すことにより、あるいは、機械構造用炭素鋼であるS10CやS15Cなどの素材に加工硬化を生じる冷間鍛造加工を施すことにより造られる。
【0039】
クランプ24は、全体として欠円筒形状(略U字状)を有し、不連続部41と、1対のフランジ部42と、連結部43と、挿入孔44とを備える。
【0040】
不連続部41は、1対のフランジ部42の間に位置する、クランプ24の円周方向1箇所に配置される。1対のフランジ部42は、不連続部41を挟んで両側に配置される。1対のフランジ部42を構成するそれぞれのフランジ部は、略矩形板形状を有する。連結部43は、クランプ24の直径方向に関して不連続部41の反対側に配置され、1対のフランジ部42を構成するフランジ部を円周方向に連結する。挿入孔44は、連結部43の内周面と1対のフランジ部42の径方向内側面とにより構成される。挿入孔44には、シャフト23の嵌合筒部34が挿入される。挿入孔44は、部分円筒面状で、その内径寸法は、クランプ24の自由状態で、嵌合筒部34の自由状態での外径寸法と同じかこれよりも僅かに大きい。
【0041】
クランプ24をシャフト23の嵌合筒部34に固定した状態で、不連続部41とスリット39の周方向位置は、互いに一致する。本例では、クランプ24の自由状態での不連続部41の幅寸法と、シャフト23(嵌合筒部34)の自由状態でのスリット39の幅寸法は、互いにほぼ同じである。
【0042】
1対のフランジ部42を構成するフランジ部の互いに整合する部分に、板厚方向に貫通し、互いに同軸である取付孔45a、45bが備えられる。取付孔45a、45bは、挿入孔44の中心軸O44に対し捩れの位置に形成されており、挿入孔44に開口する。取付孔45a、45bのうちの一方の取付孔45aは通孔により構成され、他方の取付孔45bはねじ孔により構成される。クランプ24をシャフト23の嵌合筒部34に固定した状態で、取付孔45a、45bの開口部に対向する位置に、係合凹溝40が位置する。すなわち、取付孔45a、45bと係合凹溝40との軸方向位置は一致する。また、1対のフランジ部42を構成するフランジ部の板厚(厚さ寸法)は、互いにほぼ同じである。
【0043】
連結部43は、半円筒形状を有し、その軸方向他方側部分に、フランジ部42の軸方向他端面から軸方向一方側に凹んだ切り欠き46を備える。切り欠き46は、連結部43の円周方向に伸長し、シャフト23の中心軸O
23および挿入孔44の中心軸O
44を含み、かつ、取付孔45a、45bの中心軸O
45に直交する仮想平面に関して対称形状を有する。切り欠き46の形状は、
図7(B)に示すように、取付孔45a、45bの軸方向から見た場合に、略三角形状である。このため、切り欠き46の切り欠き深さに相当する軸方向幅Lは、連結部43の円周方向に関してフランジ部42から離れるほど(
図7(B)の上側に向かうほど)大きくなり、直径方向に関して不連続部41の反対側に位置する部分(
図7(B)の上端部)で最も大きくなる。すなわち、切り欠き46の軸方向幅Lは、連結部43の円周方向両端部で最も小さくなり、連結部43の円周方向中央部で最も大きくなる。
【0044】
切り欠き46は、取付孔45a、45bの中心軸O
45よりも軸方向他方側に配置される。具体的には、切り欠き46の軸方向一端縁は、取付孔45a、45bの中心軸O
45よりも軸方向他方側で、かつ、取付孔45a、45bの軸方向他端縁よりも軸方向一方側に位置する。連結部43の円周方向に関する切り欠き46の端部(連結部43と切り欠き46との円周方向に関する境界位置)は、連結部43の軸方向他端縁において、取付孔45a、45bの中心軸O
45およびシャフト23の中心軸O
23にそれぞれ直交する方向(
図2および
図7(B)の上下方向)に関して、シャフト23の中心軸O
23よりも取付孔45a、45bに近い側(
図2および
図7(B)の下側)に位置する。
【0045】
連結部43は、切り欠き46を形成する以前の状態では、1対のフランジ部42と同じ軸方向幅を全周にわたり有していたが、切り欠き46を形成することで、1対のフランジ部42に接続する円周方向両端部では、1対のフランジ部42と同じ軸方向幅を有しているが、円周方向に関して1対のフランジ部42から離れるほど軸方向幅が小さくなり、直径方向に関して不連続部41の反対側に位置する円周方向中央部では、その軸方向幅は1対のフランジ部42の軸方向幅のおよそ3/5程度である。このため、連結部43の形状は、取付孔45a、45bの軸方向から見た場合に、軸方向他方側の肩部(角部)が斜めに切り落とされたような台形状である。連結部43の軸方向他端面(連結部43と切り欠き46との軸方向に関する境界位置)は、連結部43の円周方向に関して1対のフランジ部42から離れるほど軸方向一方側に向かう方向に直線的に傾斜する。すなわち、連結部43の軸方向他端面は、連結部43の軸方向一端面のように、挿入孔44の中心軸O44に直交する仮想平面上には存在せず、挿入孔44の中心軸O44に対して傾斜する。図示の例では、挿入孔44の中心軸O44に対する連結部43の軸方向他端面の傾斜角度は60度である。本例では、嵌合筒部34の軸方向他方側部分のうち、直径方向に関してスリット39の反対側に位置する部分が、クランプ24の連結部43によって覆われずに、切り欠き46から外部に露出する。
【0046】
本例では、シャフト23とクランプ24とは結合固定されている。シャフト23とクランプ24との結合固定の構造は特に限定されないが、例えば、シャフト23とクランプ24とを溶接固定した構造を採用することができる。あるいは、シャフト23の外周面に形成した凸状(または凹状)のシャフト側係合部と、クランプ24の内周面に形成した凹状(または凸状)のクランプ側係合部とを凹凸係合させるとともに、シャフト側係合部またはクランプ側係合部を塑性変形させた(かしめた)構造なども採用することができる。いずれの場合でも、シャフト23とクランプ24とを固定した状態では、シャフト23とクランプ24との相対回転および軸方向に関する相対変位が防止される。
【0047】
シャフト23とクランプ24とを結合固定する際には、まず、クランプ24の挿入孔44の内側に、シャフト23の軸方向他端部を、クランプ24の軸方向一方側から挿入する。クランプ24の不連続部41とシャフト23のスリット39との周方向位置を一致させるとともに、取付孔45a、45bと係合凹溝40との軸方向位置を一致させる。本例では、クランプ24の軸方向一端面を段差面35に突き当てることで、取付孔45a、45bと係合凹溝40との軸方向位置が一致するように、各部の寸法が規制されている。
【0048】
次に、取付孔45a、45bと係合凹溝40の内側に、締付部材に相当する締付ボルト47を配置する。具体的には、締付ボルト47の基端寄り部分を通孔である一方の取付孔45aの内側に挿入するとともに、締付ボルト47の中間部を係合凹溝40の内側に配置する。この状態で、締付ボルト47の先端部を、ねじ孔である他方の取付孔45bに少しだけ、すなわち、嵌合筒部34を縮径させない程度に螺合する。そして、係合凹溝40と、クランプ24に対して両端部が支持された締付ボルト47とを、キー係合させる。これにより、クランプ24がシャフト23から軸方向他方側に抜け出ないようにするとともに、シャフト23とクランプ24とが相対回転しないようにする。そして最後に、溶接などの固定手段により、シャフト23とクランプ24とを結合固定する。
【0049】
本例では、トルク伝達軸22の使用状態では、トルク伝達軸22の軸方向一端部に配置されたヨーク部25は、図示しない別のヨークおよび十字軸と組み合わされる。これにより、トルク伝達軸22は、前記別のヨークを備えた中間シャフトなどの軸にトルク伝達可能に接続される。ただし、本発明を実施する場合に、トルク伝達軸の軸方向一端部に配置される接続部は、自在継手を構成するヨーク部に代替して、該接続部に軸などの他の部材を接続可能な、セレーション部、スプライン部、あるいは、キー係合部により構成されることも可能である。
【0050】
小径筒部33の内側に、ステアリングシャフトやピニオン軸などの軸37が挿入され、軸37の外周面の雄セレーション38に、小径筒部33の内周面の雌セレーション36がセレーション係合する。これにより、トルク伝達軸22と軸37との相対回転が防止される。軸37の先端部外周面に雄セレーション38を周方向に横切るように形成された周方向凹溝48の内側に、係合凹溝40とスリット39との交差部である幅広部を通じて締付ボルト47の中間部が進入し、周方向凹溝48と締付ボルト47とがキー係合する。これにより、軸37とトルク伝達軸22との軸方向の相対移動が防止される。締付ボルト47の他方の取付孔45bに対する螺合量の増加に伴って、不連続部41の幅寸法が小さくなり、小径筒部33が縮径して、小径筒部33の内周面により軸37の外周面が強く締め付けられる。これにより、トルク伝達軸22と軸37とがトルク伝達可能に結合する。
【0051】
本例のトルク伝達軸22では、トルク伝達軸22に接続される軸の振れ回りが抑止される。すなわち、本例のトルク伝達軸22では、クランプはシャフトに対して一体に設けられておらず、別体のクランプ24がシャフト23に対して固定されている。このため、シャフト23の軸方向両端部に配置されるヨーク部25と雌セレーション36との同軸度が、高く確保される。また、本例のトルク伝達軸22では、別体のヨーク部をシャフトに固定するのではなく、シャフト23とヨーク部25は一体に設けられている。このため、溶接時の熱変形の影響を受けずに済み、シャフト23(筒部26)に対するヨーク部25の同軸度が、高く確保される。したがって、ヨーク部25に接続される軸および雌セレーション36に接続される軸37の振れ回りが効果的に抑止される。この結果、ステアリング装置の一部で、軸の振れ回りに起因した、回転方向の摺動異音、スティックスリップ振動異音などの異音の発生が防止される。また、本例のシャフト23は、中空状であるため、トルク伝達軸22全体としての軽量化が図られる。
【0052】
本例のトルク伝達軸22では、シャフト23の軸方向他端部に接続された軸37の歳差運動が抑止され、この軸37の歳差運動に起因する、シャフト23の雌セレーション36と軸37の雄セレーション38とのセレーション係合部におけるフレッチング摩耗の発生が抑制される。すなわち、シャフト23に備えられたスリット39のうち、軸方向一方側が閉鎖端であり、軸方向他方側が開口端であるため、クランプ24が外嵌される嵌合筒部34の剛性は、スリット39の開口端に近い軸方向他方側部分よりも、スリット39の閉鎖端に近い軸方向一方側部分の方が高い。さらに、小径筒部33のうちで、嵌合筒部34よりも軸方向一方側に存在する部分の肉厚は、嵌合筒部34の肉厚よりも大きいため、この面からも、嵌合筒部34は、軸方向他方側部分の剛性よりも軸方向一方側部分の剛性の方が高くなる。このため、本例とは異なって、連結部に切り欠きが備えられていないクランプを用いて嵌合筒部34を縮径した場合、嵌合筒部34は、軸方向一方側部分よりも軸方向他方側部分の方が大きく変形する傾向になる。したがって、嵌合筒部34の内周面と軸37の外周面との間の面圧は、軸方向一方側部分(軸37の先端側部分)よりも軸方向他方側部分(軸37の基端側部分)の方が高くなる。すなわち、軸37は、嵌合筒部34の軸方向他方側部分で強く締め付けられ、それよりも軸方向一方側に位置する部分では比較的緩く締め付けられた状態になる。このため、軸37は、嵌合筒部34の軸方向他方側部分によって強く締め付けられた部分を中心に歳差運動しやすくなる。軸37の歳差運動が生じると、雌セレーション36と雄セレーション38とのセレーション係合部にフレッチング摩耗が発生し、摩耗量が過大になりやすくなる。
【0053】
本例では、連結部43の軸方向他側部分に切り欠き46が設けられており、剛性の低い嵌合筒部34の軸方向他方側部分は、連結部43により覆われない。このため、クランプ24により嵌合筒部34を縮径した際に、嵌合筒部34のうちで、剛性の高い軸方向一方側部分に、剛性の低い軸方向他方側部分に比べて大きな締付け力が付与される。嵌合筒部34に生じる変形量を、軸方向一方側部分と軸方向他方側部分とで互いに近づけることができる。嵌合筒部34の内周面と軸37の外周面との間の面圧も、軸方向一方側部分と軸方向他方側部分とで互いに近づけることができる。この結果、シャフト23の軸方向他端部に接続された軸37に歳差運動が生じることが抑制され、雌セレーション36と雄セレーション38とのセレーション係合部に、フレッチング摩耗が生じることが抑制される。これにより、シャフト23と軸37との間にがたつきが生じることが防止され、がたつきに起因した異音の発生が防止される。
【0054】
切り欠き46は、取付孔45a、45bの中心軸よりも軸方向他方側に配置されるため、クランプ24により嵌合筒部34を縮径した際に、連結部43によって、剛性の高い嵌合筒部34の軸方向一方側部分に大きな締付け力を付与することができる。このため、嵌合筒部34の軸方向一方側部分の内周面と軸37の外周面との間の面圧を効果的に高めることができる。さらに、連結部43の円周方向に関する切り欠き46の端部は、連結部43の軸方向他端縁において、取付孔45a、45bの中心軸O
45およびシャフト23の中心軸O
23にそれぞれ直交する方向に関して、シャフト23の中心軸O
23よりも取付孔45a、45bに近い側に位置する。このため、
図3(B)に示すように、シャフト23の軸方向他端縁は、直径方向に関してスリット39の反対側に位置する半円弧状部分が、外部に露出した状態になり、連結部43によって覆われない。したがって、クランプ24により嵌合筒部34を縮径した際に、シャフト23の軸方向他端縁に加わる締付け力を十分に小さくできる。したがって、シャフト23の軸方向他端部に連結される軸37に歳差運動が生じることがより有効に防止される。また、切り欠き46は、連結部43にのみ配置され、フランジ部42には配置されていないため、シャフト23に対するクランプ24の軸方向に関する嵌合長が十分に確保される。このため、シャフト23に対するクランプ24の姿勢を安定させることができる。
【0055】
[第2例]
本発明の実施の形態の第2例について、
図9~
図10を用いて説明する。本例では、シャフト23の嵌合筒部34に外嵌されるクランプ24aの形状が、第1例の構造と異なっている。具体的には、本例では、クランプ24aを構成する連結部43aの軸方向他方側部分(半部)に設けられた切り欠き46aの形状が、第1例の切り欠き46の形状と異なっている。切り欠き46aの形状は、取付孔45a、45bの軸方向から見た場合に、略矩形状である。切り欠き46aの軸方向幅Lは、連結部43aの円周方向に関して一定である。このため、連結部43aの形状は、取付孔45a、45bの軸方向から見た場合に、軸方向他方側半部が切り落とされたような略矩形状である。連結部43aの軸方向他端面(連結部43aと切り欠き46aとの軸方向に関する境界位置)は、連結部43aの軸方向一端面と平行で、挿入孔44の中心軸O
44に直交する仮想平面上に存在する。
【0056】
切り欠き46aは、取付孔45a、45bの中心軸
45よりも軸方向他方側(
図9および
図10の右側)に位置する。具体的には、切り欠き46aの軸方向一端縁は、取付孔45a、45bの軸方向他端縁とほぼ同じ軸方向位置に存在する。また、連結部43aの円周方向に関する切り欠き46aの端部(連結部43aと切り欠き46aとの円周方向に関する境界位置)は、シャフト23の中心軸O
23と平行に配置されており、取付孔45a、45bの中心軸O
45およびシャフト23の中心軸O
23にそれぞれ直交する方向(
図9および
図10の上下方向)に関して、シャフト23の中心軸O
23よりも取付孔45a、45bに近い側(
図9および
図10の下側)に位置する。本例では、嵌合筒部34の軸方向他方側部分のうちで、直径方向に関してスリット39の反対側に位置する部分が、第1例の場合よりも広い範囲にわたって、切り欠き46aから外部に露出する。
【0057】
本例では、切り欠き46aの形成範囲が、第1例に比べて大きいため、クランプ24aから、嵌合筒部34のうちで剛性の低い軸方向他方側部分に作用する締付け力をより小さくすることができる。その他の構成および作用効果については、第1例と同じである。
【0058】
本発明を実施する場合に、クランプの連結部に形成する切り欠きの形状およびその形成範囲は、本発明の実施の形態の各例で示した構造に限定されることはない。連結部の円周方向に関する切り欠きの端部を、取付孔の中心軸およびシャフトの中心軸にそれぞれ直交する方向に関して、シャフトの中心軸を挟んで取付孔と反対側に配置させることもできるし、シャフトの中心軸上に配置させることもできる。また、クランプの取付孔をすべて通孔により構成し、締付ボルトとナットを組み合わせて使用することもできる。さらに、本発明の実施の形態の各例の構造は、矛盾が生じない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 ステアリングホイール
2 ステアリングシャフト
3 ステアリングコラム
4a、4b 自在継手
5 中間シャフト
6 ステアリングギヤユニット
7 タイロッド
8 ピニオン軸
9 トルク伝達軸
10 ヨーク
11、11a 軸
12 雄セレーション
13 雌セレーション
14 クランプ部
15 不連続部
16 フランジ部
17 取付孔
18 基部
19 雌セレーション
20 溶接ビード部
21 雄セレーション
22 トルク伝達軸
23 シャフト
24、24a クランプ
25 ヨーク部
26 筒部
27a、27b 腕部
28 円孔
29 大径筒部
30 大径側円すい筒部
31 中径筒部
32 小径側円すい筒部
33 小径筒部
34 嵌合筒部
35 段差面
36 雌セレーション
37 軸
38 雄セレーション
39 スリット
40 係合凹溝
41 不連続部
42 フランジ部
43、43a 連結部
44 挿入孔
45a、45b 取付孔
46、46a 切り欠き
47 締付ボルト
48 周方向凹溝