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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20231212BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20231212BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20231212BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C08L67/02
C08L23/08
C08L67/00
C08K5/29
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020572194
(86)(22)【出願日】2020-02-05
(86)【国際出願番号】 JP2020004322
(87)【国際公開番号】W WO2020166444
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2019022661
(32)【優先日】2019-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 元暢
(72)【発明者】
【氏名】藤井 泰人
(72)【発明者】
【氏名】下拂 卓也
【審査官】南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-108378(JP,A)
【文献】特開2011-207927(JP,A)
【文献】国際公開第2011/111547(WO,A1)
【文献】特開平06-122794(JP,A)
【文献】特開2018-012209(JP,A)
【文献】国際公開第2016/076135(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固有粘度(IV)が0.60~0.95dl/gであるポリブチレンテレフタレート樹脂(A)84~95質量部、変性オレフィン系樹脂(B)3~9質量部、ポリエステルエラストマー(C)1~13質量部((A)、(B)及び(C)成分の合計が100質量部である)を含有し、
前記(A)、(B)及び(C)成分の合計100質量部に対して、さらにカルボジイミド化合物(D)0.1~1.2質量部を含有する、
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物であり、
前記変性オレフィン系樹脂(B)が、無水マレイン酸および/またはメタクリル酸グリシジルを合計で0.01~15質量%共重合したエチレン共重合体であり、
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を射出成形して得られる流動長(測定条件:シリンダー温度250℃、金型温度50℃、射出圧力80MPa)が155mm以上であることを特徴とする、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を射出成形して得られる成形品のシャルピー衝撃強度が4.5kJ/m以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、優れた衝撃特性、かつ高い流動性を有し、成形時の離型性、溶融安定性に優れ、薄肉成形に好適なポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、機械的性質、電気的性質、その他物理的、化学的特性に優れ、かつ加工性が良好であるため、エンジニアリングプラスチックとして自動車、電気・電子部品などの広範な用途に使用されている。特にその優れた電気特性のため、家電、OA機器、自動車などの用途向けが拡大傾向にある。これら製品の軽薄短小化の傾向には著しいものがあり、たとえばその外殻部品は極めて薄肉になっている。しかしながら、ポリブチレンテレフタレート樹脂は、シャルピー衝撃特性が乏しく、薄肉成形品では特に容易に破壊する欠点を持つ。加え、従来よりも高い流動性を兼ね備えた材料が要求される。
【0003】
そのため、シャルピー衝撃特性の優れたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が強く望まれている。ポリブチレンテレフタレート樹脂のシャルピー衝撃特性を向上する方法としては、ゴムを添加する方法が一般的に知られている。
【0004】
特許文献1では、ポリブチレンテレフタレート樹脂にグリシジル基を有するコアシェルゴムを添加することで、相溶性向上と耐衝撃性改良を行っている。しかしながら、流動性について留意されておらず、流動性が低いことが予想される。
特許文献2では、ポリブチレンテレフタレート樹脂にエチレン-アルキルアクリレート-グリシジルメタクリレート共重合体を添加することで、比較トラッキング指数を維持したまま樹脂改質が可能であることを示している。しかしながら、ポリブチレンテレフタレート樹脂とグリシジル基が反応することにより、流動性が低下することは容易に推察される。
【0005】
特許文献3では、ポリブチレンテレフタレート樹脂にゴム、およびコアシェルエラストマーを添加することで、耐衝撃性の改良、低ソリ性およびウェルド強度の向上を行っている。しかしながら、耐衝撃性向上のために多量のゴム、コアシェルエラストマーを添加する必要があり、流動性は低下するものと考えられる。
特許文献4では、ポリブチレンテレフタレート樹脂にコアシェルポリマー、ガラス繊維を併用することで、耐衝撃性、剛性の改良を施している。しかしながら、ガラス繊維の併用で流動抵抗が大きくなり、流動性は著しい低下を示すことが予想される。
【0006】
これらの文献からも分かるように、衝撃特性の改良については種々研究が続けられているが、高流動性を両立するための改良検討はなされておらず、それゆえに衝撃改良材の薄肉成形は困難であった。
【0007】
一方、特許文献5では、ポリブチレンテレフタレート樹脂にグリシジル基および/またはカルボン酸誘導体末端を有するエラストマーと鎖状ポリエステルオリゴマーを配合することで、衝撃特性と高流動性を両立する試みがなされている。しかしながら、鎖状ポリエステルオリゴマーは容易にガス化するため、射出成型時の金型汚れの原因や、製品内部の汚染などの根本的な課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平10-36645号公報
【文献】特開2017-27906号公報
【文献】特開2016-183294号公報
【文献】特開平10-95907号公報
【文献】特開2012-201857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決しようとするものであり、優れた衝撃特性、高流動性を有するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するためにポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の構成と特性を鋭意検討した結果、本発明を完成するに至ったものである。
【0011】
すなわち、本発明は以下の構成を有するものである。
[1] 固有粘度(IV)が0.60~0.95dl/gであるポリブチレンテレフタレート樹脂(A)70~97質量部、変性オレフィン系樹脂(B)2~15質量部、ポリエステルエラストマー(C)1~15質量部((A)、(B)及び(C)成分の合計が100質量部である)を含有するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
[2] 前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を射出成形して得られる流動長(測定条件:シリンダー温度250℃、金型温度50℃、射出圧力80MPa)が150mm以上であることを特徴とする、[1]に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
[3] 前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を射出成形して得られる成形品のシャルピー衝撃強度が4.5kJ/m以上であることを特徴とする、[1]または[2]に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
[4] 前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が、前記(A)、(B)及び(C)成分の合計100質量部に対して、さらにカルボジイミド化合物(D)0.05~1.5質量部を含有する、[1]~[3]のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
[5] 前記変性オレフィン系樹脂(B)が、無水マレイン酸および/またはメタクリル酸グリシジルを合計で0.01~15質量%共重合したエチレン共重合体である、[1]~[4]のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ポリブチレンテレフタレート樹脂においても、変性オレフィン系樹脂およびポリエステルエラストマーを特定の配合比で添加することにより、優れたシャルピー衝撃強度と高流動性を両立することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を具体的に説明する。
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物中の各成分の含有量(配合量)は、特に但し書きをしない限り、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)、変性オレフィン系樹脂(B)、及びポリエステルエラストマー(C)の合計を100質量部としたときの量で表している。本発明において、各成分の配合量は、そのままポリブチレンテレフタレート樹脂組成物中の含有量となる。
【0014】
[ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)]
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)は、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体を主たる成分とするジカルボン酸と、1、4-ブタンジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主たる成分とするジオールとを重縮合反応させるなどの一般的な重合方法によって得ることができる重合体である。ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)は、ブチレンテレフタレートの繰返し単位が80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることがさらに好ましく、100モル%であることが特に好ましい。
【0015】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)は、その特性を損なわない範囲、たとえば20モル%程度以下で、他の重合成分を含むことができる。他の重合成分を含むポリブチレンテレフタレート樹脂の例としては、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレン(テレフタレート/ナフタレート)、ポリ(ブチレン/エチレン)テレフタレートなどを挙げることができる。これらの成分を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0016】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度(IV)は、0.60~0.95dl/gである必要がある。固有粘度(IV)がこの領域であることで、流動性や機械的特性、化学的特性が良好となる。ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度(IV)は、0.65~0.90dl/gであることが好ましく、0.68~0.88dl/gであることがより好ましく、0.70~0.85dl/gであることがさらに好ましい。固有粘度(IV)が0.60dl/g未満であると、機械的強度や衝撃特性が低下する場合がある。固有粘度(IV)が0.95dl/g超であると、十分な流動性が得られず、薄肉成形が困難となる傾向がある。
【0017】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の末端カルボキシル基量は、特に限定されない。末端カルボキシル基から乖離する水素イオンは、ポリエステルの加水分解反応において触媒的な役割を担うため、末端カルボキシル基量の増加に伴って加水分解反応が加速する。この観点から、末端カルボキシル基量は少ないほうが好ましい。しかし一方で、変性オレフィン系樹脂(B)がもつグリシジル基などの反応性官能基は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の末端カルボキシル基と反応しうるため、末端カルボキシル基量が少なすぎると変性オレフィン系樹脂(B)との反応が不十分となり、十分な衝撃特性を得られない場合がある。
ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量(酸価)は、40eq/ton以下であることが好ましく、より好ましくは30eq/ton以下であり、さらに好ましくは25eq/ton以下である。グリシジル基などとの反応性の観点から、末端カルボキシル基量(酸価)の下限は5eq/tonである。
【0018】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の末端カルボキシル基量(酸価)(単位:eq/ton)は、たとえば、所定量のポリブチレンテレフタレート樹脂をベンジルアルコールに溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/lベンジルアルコール溶液を使用して滴定することにより測定することができる。指示薬は、たとえば、フェノールフタレイン溶液を用いればよい。
【0019】
上記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の含有量は、70~97質量部である。好ましくは75~96質量部であり、より好ましくは80~95質量部である。この範囲内にポリブチレンテレフタレート樹脂(A)を配合することにより、高いシャルピー衝撃特性、流動性をもつポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を得ることが可能となる。
【0020】
[変性オレフィン系樹脂(B)]
本発明で用いられる変性オレフィン系樹脂(B)は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の末端基(カルボキシル基、水酸基)と反応しうる官能基を有するように変性されたオレフィン系樹脂である。該反応しうる官能基としては、酸無水物基および/またはグリシジル基が好ましい。変性オレフィン系樹脂(B)は、無水マレイン酸および/またはメタクリル酸グリシジルを共重合したエチレン共重合体であることが好ましい。その共重合量は、エチレン共重合体中、無水マレイン酸および/またはメタクリル酸グリシジルを合計で0.01~15質量%とすることが好ましく、0.05~10質量%とすることがより好ましい。変性オレフィン系樹脂(B)は、通常公知の方法で製造することが可能である。共重合成分の配列については特に限定されず、たとえば、ランダム共重合でもグラフト共重合でもよい。
変性オレフィン系樹脂(B)のガラス転移温度は-30℃以下であることが好ましい。これによりポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の-30℃以下での耐衝撃性をも向上することができる。
【0021】
変性オレフィン系樹脂(B)は、無水マレイン酸および/またはメタクリル酸グリシジルなどの反応性成分の他、さらに酢酸ビニルやアクリル酸エステルなどの非反応性成分が共重合されていてもよく、それらの群から選択される1種もしくは2種以上が共重合されていてもよい。これらの成分の共重合量は特に限定されないが、変性オレフィン系樹脂100質量%に対し、合計で50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。これらの成分が共重合されることで、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)との相溶性をより高めることができる。
【0022】
本発明の変性オレフィン系樹脂(B)は、未変性のオレフィン系共重合体と変性オレフィン系共重合体とを併用して使用してもよい。その場合、使用される少なくとも一種の共重合体のガラス転移温度が-30℃以下であることが望ましい。これによりポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の-30℃以下での耐衝撃性をも向上することができる。未変性のオレフィン系共重合体と変性オレフィン系共重合体とを併用する場合、両者の合計を変性オレフィン系樹脂(B)の含有量と考え、また前記の無水マレイン酸および/またはメタクリル酸グリシジルの共重合量は、両者の合計質量に対する共重合量と考える。
未変性のオレフィン系共重合体と変性オレフィン系共重合体の合計を100質量%とすると、変性オレフィン系共重合体の配合量は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。
【0023】
上記変性オレフィン樹脂(B)の含有量は、2~15質量部である。好ましくは2~12質量部であり、より好ましくは3~10質量部であり、さらに好ましくは3~9質量部である。この範囲内に変性オレフィン樹脂(B)を配合することにより、ポリブチレンテレフタレート樹脂の本来の特性を維持したまま、高いシャルピー衝撃特性をもつポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を得ることが可能となる。
【0024】
[ポリエステルエラストマー(C)]
本発明で使用するポリエステルエラストマー(C)とは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族および/または脂環族のグリコールを構成成分とするポリエステルからなるハードセグメントと、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステルおよび脂肪族ポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種のソフトセグメントが結合したポリエステルエラストマーであることが好ましい。
【0025】
本発明で使用するポリエステルエラストマー(C)において、ハードセグメントのポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸は、通常の芳香族ジカルボン酸が広く用いられ、特に限定されないが、具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、およびこれらの機能的誘導体が挙げられる。好ましくはテレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸であり、これらは結晶化速度が速く成形性が良好な傾向にある。特に好ましくは、テレフタル酸およびテレフタル酸ジメチルエステル、イソフタル酸およびイソフタル酸ジメチルエステル、2,6-ナフタレンジカルボン酸および2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルである。さらに、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、ダイマ-酸などの脂肪族ジカルボン酸およびその機能的誘導体、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸およびその機能的誘導体を、ハードセグメントのポリエステルを構成するジカルボン酸成分中、50モル%未満で用いることもできる。芳香族ジカルボン酸以外の成分が好ましくは50モル%未満、より好ましくは40モル%未満、さらに好ましくは30モル%未満で、50モル%以上だとポリエステルエラストマーの結晶性が低下する傾向にあり、成形性、耐熱性が低下する傾向にある。
【0026】
また、本発明で使用するポリエステルエラストマー(C)において、ハードセグメントのポリエステルを構成する脂肪族または脂環族グリコールは、一般の脂肪族または脂環族グリコールが広く用いられ、特に限定されないが、主として炭素数2~8のアルキレングリコール類であることが望ましい。好ましくは、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールであり、特に好ましくは、エチレングリコール、1,4-ブタンジオールのいずれかである。
【0027】
上記のハードセグメントのポリエステルを構成する成分としては、エチレンテレフタレート単位(テレフタル酸とエチレングリコールからなる単位)あるいはブチレンテレフタレート単位(テレフタル酸と1,4-ブタンジオールからなる単位)よりなるものが物性、成形性、コストパフォーマンスの点より好ましい。
【0028】
また、本発明で使用するポリエステルエラストマー(C)におけるハードセグメントを構成するポリエステルとして好適な芳香族ポリエステルを事前に製造し、その後ソフトセグメント成分と共重合させる場合、該芳香族ポリエステルは、通常のポリエステルの製造法に従って容易に得ることができる。また、かかるポリエステルは、数平均分子量10000~40000を有しているものが望ましい。
【0029】
本発明に用いられるポリエステルエラストマー(C)のソフトセグメントは、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種である。脂肪族ポリエーテルとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシヘキサメチレングリコール、ポリオキシトリメチレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリオキシプロピレングリコールのエチレンオキシド付加物、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体などが挙げられる。
また、脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペートなどが挙げられる。
【0030】
また、脂肪族ポリカーボネートは、主として炭素数2~12の脂肪族ジオール残基からなるものであることが好ましい。これらの脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオールなどが挙げられる。特に、得られるポリエステルエラストマー(C)の柔軟性や低温特性の点より炭素数5~12の脂肪族ジオールが好ましい。これらの成分は、以下に説明する事例に基づき、単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0031】
本発明において、使用可能なポリエステルエラストマー(C)のソフトセグメントを構成する、低温特性が良好な脂肪族ポリカーボネートジオールとしては、融点が低く(例えば、70℃以下)かつ、ガラス転移温度が低いものが好ましい。一般に、ポリエステルエラストマーのソフトセグメントを形成するのに用いられる1,6-ヘキサンジオールからなる脂肪族ポリカーボネートジオールは、ガラス転移温度が-60℃前後と低く、融点も50℃前後となるため、低温特性が良好なものとなる。その他にも、上記脂肪族ポリカーボネートジオールに、例えば、3-メチル-1,5-ペンタンジオールを適当量共重合して得られる脂肪族ポリカーボネートジオールは、元の脂肪族ポリカーボネートジオールに対してガラス転移点が若干高くなるものの、融点が低下もしくは非晶性となるため、低温特性が良好な脂肪族ポリカーボネートジオールに相当する。また、例えば、1,9-ノナンジオールと2-メチル-1,8-オクタンジオールからなる脂肪族ポリカーボネートジオールは融点が30℃程度、ガラス転移温度が-70℃前後と十分に低いため、低温特性が良好な脂肪族ポリカーボネートジオールに相当する。
【0032】
本発明に用いるポリエステルエラストマー(C)は、経済性、耐熱性、耐寒性の理由から、テレフタル酸、1,4-ブタンジオール、およびポリオキシテトラメチレングリコールを主たる成分とする共重合体であることが好ましい。ポリエステルエラストマー(C)を構成するジカルボン酸成分中、テレフタル酸が40モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。ポリエステルエラストマー(C)を構成するグリコール成分中、1,4-ブタンジオールとポリオキシテトラメチレングリコールの合計が40モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。
【0033】
前記ポリオキシテトラメチレングリコールの数平均分子量は500~4000であることが好ましい。数平均分子量が500未満であると、エラストマー特性を発現しづらくなることがある。一方、数平均分子量が4000を超えると、ポリエステルエラストマー(C)のハードセグメントを構成するポリエステル部分との相溶性が低下し、ブロック状に共重合することが難しくなる場合がある。ポリオキシテトラメチレングリコールの数平均分子量は、800以上3000以下であることがより好ましく、1000以上2500以下がさらに好ましい。
【0034】
本発明に用いられるポリエステルエラストマー(C)のハードセグメントとソフトセグメントの共重合量は、ハードセグメント/ソフトセグメントの質量比が、85/15~35/65であることが好ましく、より好ましくは、75/25~50/50である。
【0035】
本発明で使用するポリエステルエラストマー(C)の硬度(表面硬度)は特に限定されないが、例えばショアD硬度25程度の低硬度のものからショアD硬度75程度の高硬度まで広い範囲のポリエステルエラストマーが使用可能であり、好ましくはショアD硬度30~65、さらに好ましくはショアD硬度35~60のものである。
【0036】
本発明に用いるポリエステルエラストマー(C)の還元粘度は、後記する測定方法で測定した場合、0.5dl/g以上3.5dl/g以下であることが好ましい。0.5dl/g未満では、樹脂としての耐久性が低く、3.5dl/gを超えると、成形性が不十分になる可能性がある。ポリエステルエラストマー(C)の還元粘度は、1.0dl/g以上3.0dl/g以下であることがより好ましく、1.3dl/g以上2.8dl/g以下であることがさらに好ましい。また、酸価は200eq/t以下が好ましく、60eq/t以下がより好ましい。
【0037】
本発明に用いられるポリエステルエラストマー(C)は、公知の方法で製造することができる。例えば、ジカルボン酸の低級アルコールジエステル、過剰量の低分子量グリコール、およびソフトセグメント成分を触媒の存在下エステル交換反応せしめ、得られる反応生成物を重縮合する方法、あるいはジカルボン酸と過剰量のグリコールおよびソフトセグメント成分を触媒の存在下エステル化反応せしめ、得られる反応生成物を重縮合する方法、また、あらかじめハードセグメントを作っておき、これにソフトセグメント成分を添加してエステル交換反応によりランダム化せしめる方法、ハードセグメントとソフトセグメントを鎖連結剤でつなぐ方法、さらにポリ(ε-カプロラクトン)をソフトセグメントに用いる場合は、ハードセグメントにε-カプロラクトンモノマを付加反応させるなど、いずれの方法をとってもよい。
【0038】
上記ポリエステルエラストマー(C)の含有量は、1~15質量部であり、好ましくは2~14質量部であり、より好ましくは3~13質量部である。この範囲内にポリエステルエラストマー(C)を配合することにより、衝撃特性を損なうことなく、高流動性をもつポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を得ることが可能となる。
【0039】
[カルボジイミド化合物(D)]
本発明におけるカルボジイミド化合物(D)は、分子中にカルボジイミド基(-N=C=N-)を有する化合物であれば特に制限されない。本発明で用いるカルボジイミド化合物(D)において、カルボジイミド基に結合する基は特に制限されず、脂肪族基、脂環族基、芳香族基、またはこれらの有機基が結合した基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1,4-キシリレン基など)などが挙げられる。本発明において好適に使用されるカルボジイミド化合物の例としては、カルボジイミド基に脂肪族基が連結した脂肪族カルボジイミド化合物、カルボジイミド基に脂環族基が連結した脂環族カルボジイミド化合物、および、カルボジイミド基に芳香族基または芳香族基を含む基が連結した芳香族カルボジイミド化合物などが挙げられる。カルボジイミド化合物(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
脂肪族カルボジイミド化合物の具体例としては、ジイソプロピルカルボジイミド、ジオクチルデシルカルボジイミドなどが挙げられ、脂環族カルボジイミド化合物の具体例としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ポリ(4,4’-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドなどが挙げられる。
【0041】
芳香族カルボジイミド化合物の具体例としては、ジフェニルカルボジイミド、ジ-2,6-ジメチルフェニルカルボジイミド、N-トリル-N’-フェニルカルボジイミド、ジ-p-ニトロフェニルカルボジイミド、ジ-p-アミノフェニルカルボジイミド、ジ-p-ヒドロキシフェニルカルボジイミド、ジ-p-クロロフェニルカルボジイミド、ジ-p-メトキシフェニルカルボジイミド、ジ-3,4-ジクロロフェニルカルボジイミド、ジ-2,5-クロロフェニルカルボジイミド、ジ-o-クロロフェニルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジ-o-トリルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジシクロヘキシルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジ-クロロフェニルカルボジイミド、エチレン-ビス-ジフェニルカルボジイミド等のモノ又はジカルボジイミド化合物、及び、ポリ(4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,5’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(1,3-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1-メチル-3,5-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5-トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)などのポリカルボジイミド化合物が挙げられる。
【0042】
カルボジイミド化合物(D)は、ポリカルボジイミド化合物であることが好ましい。ポリカルボジイミド化合物を使用することにより、溶融時の滞留安定性が向上する傾向にある。ポリカルボジイミド化合物の分子量は2000以上であるのが好ましい。
【0043】
本発明においてカルボジイミド化合物(D)は、必須成分では無いが、含有する場合、その含有(配合)量は、本発明の目的を阻害しない限り特に制限されないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の流動性を損なわない範囲として、0.05~1.5質量部の範囲であることが好ましく、0.1~1.2質量部の範囲がより好ましい。カルボジイミド化合物(D)はポリブチレンテレフタレート樹脂(A)とポリエステルエラストマー(C)と反応することにより、それらの相溶化剤としての役割、および耐加水分解性の向上や成形時のガスを低下させる役割を担っていると考えられるが、0.05質量部より少ない場合は所望の特性を得ることが困難であり、逆に1.5質量部より多い場合は(A)、(C)の末端との反応と同時に増粘する傾向にあることから流動性の低下を招く恐れがある。また、カルボジイミド化合物(D)がポリカルボジイミド化合物であり、その含有量が0.05~1.5質量部の範囲にあることで、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)とポリエステルエラストマー(C)の相溶化効果と、適度な増粘効果が得られることにより、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の衝撃強度の向上が期待できる。
【0044】
[その他の添加剤]
その他、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には、必要に応じて、本発明としての特性を損なわない範囲において、公知の各種添加剤を含有させることができる。公知の添加剤としては、例えば顔料などの着色剤、離型剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、変性剤、帯電防止剤、難燃剤、染料などが挙げられる。
離型剤としては、長鎖脂肪酸またはそのエステルや金属塩、アマイド系化合物、ポリエチレンワックス、シリコン、ポリエチレンオキシドなどが挙げられる。長鎖脂肪酸としては、特に炭素数12以上が好ましく、例えばステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸などが挙げられ、部分的もしくは全カルボン酸が、モノグリコールやポリグリコールによりエステル化されていてもよく、または金属塩を形成していても良い。アマイド系化合物としては、エチレンビステレフタルアミド、メチレンビスステアリルアミドなどが挙げられる。これら離型剤は、単独であるいは混合物として用いても良い。
これら各種添加剤は、前記(A)、(B)及び(C)の合計を100質量部とした時、合計で5質量部まで含有させることができる。ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物中、前記(A)、(B)及び(C)の必須成分の合計で、95質量%以上占めることが好ましい。
【0045】
[ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物]
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を製造する製造法としては、上記配合組成にて任意の配合順列で配合した後、タンブラー或いはヘンシェルミキサーなどで混合し、溶融混練される。溶融混練方法は、当業者に周知のいずれかの方法が可能であり、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロールなどが使用できるが、なかでも二軸押出機を使用することが好ましい。また、加工時の揮発成分、樹脂が分解して生じる低分子成分を除去するため、押出機先端のダイヘッドに近いベント口から真空ポンプによる吸引を行うことが望ましい。
【0046】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を射出成形して得られる流動長(測定条件:シリンダー温度250℃、金型温度50℃、射出圧力80MPa)は、150mm以上であることが好ましい。流動長の測定は、射出成形機で幅10mm、厚み1mmの流路を有する流動長評価金型を用いて行い、詳細な条件は実施例の項に記載の通りである。ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を上記の配合で得ることで、流動長を150mm以上とすることが可能となる。流動長は、155mm以上がより好ましい。
【0047】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を射出成形して得られる成形品のシャルピー衝撃強度は、4.5kJ/m以上であることが好ましい。シャルピー衝撃強度の測定は、ISO-179に準じて行い、詳細な条件は実施例の項に記載の通りである。ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を上記の配合で得ることで、シャルピー衝撃強度を4.5kJ/m以上とすることが可能となる。
【実施例
【0048】
実施例および比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例に記載された測定値は、以下の方法によって測定したものである。
【0049】
(1)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度
0.1gのサンプルをフェノール/テトラクロロエタン(質量比6/4)の混合溶媒25mlに溶解し、ウベローデ粘度管を用いて30℃で測定した。(単位:dl/g)
(2)ポリエステルエラストマーの還元粘度
0.05gのサンプルを25mlの混合溶媒(フェノール/テトラクロロエタン=60/40(質量比))に溶解し、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。(単位:dl/g)
【0050】
(3)ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエステルエラストマーの酸価
ポリブチレンテレフタレート樹脂(ポリエステルエラストマー)0.5gをベンジルアルコール25mlに溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/lベンジルアルコール溶液を使用して滴定することにより測定した。指示薬は、フェノールフタレイン溶液を用いた。(単位:eq/ton)
(4)ポリエステルエラストマーの硬度(表面硬度)
JIS K7215(-1986)に準じて測定した。試験片は、シリンダー温度240℃、金型温度50℃にて作製した射出成形品(長さ100mm、幅100mm、厚み2mm)を3枚重ねたものを使用し、測定圧5000g、タイプDの圧子を用いたデュロメーターにより測定し、測定開始5秒後の値をD硬度(ショアD硬度)とした。
【0051】
(5)ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の流動長
東芝機械社製の射出成形機(EC-100)、幅10mm、厚み1mmの流路を有する流動長評価金型を用い、射出圧力80MPa、シリンダー温度250℃、金型温度50℃にて、射出速度40mm/s、射出時間5s、冷却時間12s、成形サイクル20sで連続して20ショット射出成形を実施し、20ショット目の流動長を測定した。
(6)曲げ強度、曲げ弾性率
ISO-178に準じて測定した。試験片は、シリンダー温度250℃、金型温度50℃の条件で射出成形した。
(7)シャルピー衝撃強度
ISO-179に準じて、シャルピー衝撃試験機(東洋精機社製、DG-CB)を用いて23℃で測定した(秤量4.0J、ハンマー持ち上げ角150°)。試験片は、シリンダー温度250℃、金型温度50℃の条件で、ISOダンベル試験片(厚さ4mm)を射出成形したのち、ノッチングツール(東洋精機社製、A-4)にて切削、ノッチ加工した。
【0052】
実施例、比較例において使用した配合成分を次に示す。
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A);
(A-1)ポリブチレンテレフタレート樹脂: 固有粘度0.80dl/g、酸価15eq/ton
(A-2)ポリブチレンテレフタレート樹脂: 固有粘度0.75dl/g、酸価12eq/ton
(A-3)ポリブチレンテレフタレート樹脂: 固有粘度1.05dl/g、酸価17eq/ton
【0053】
変性オレフィン系樹脂(B);
(B-1):ボンドファースト7M(住友化学工業社製 エチレン/アクリル酸メチル/グリシジルメタクリレート共重合体、ガラス転移温度-33℃、グリシジルメタクリレート含有量6質量%)
(B-2):ボンダインAX-8390(アルケマ社製 エチレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸共重合体、ガラス転移温度-35℃、無水マレイン酸含有量1.3質量%)
【0054】
ポリエステルエラストマー(C);
(C-1)テレフタル酸(TPA)//1,4-ブタンジオール(BD)/ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG;数平均分子量1000)=100//93/7(モル%)のポリエステルエラストマー(ハードセグメント/ソフトセグメントの質量比=75/25): 融点210℃、還元粘度1.5dl/g、酸価50eq/ton
(C-2)テレフタル酸(TPA)//1,4-ブタンジオール(BD)/ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG;数平均分子量1000)=100//84/16(モル%)のポリエステルエラストマー(ハードセグメント/ソフトセグメントの質量比=57/43): 融点198℃、還元粘度1.9dl/g、酸価35eq/ton
【0055】
カルボジイミド化合物(D);
(D-1)カルボジライトLA-1(日清紡ケミカル社製 脂環族カルボジイミド)
(D-2)Stabaxol P(ラインケミー社製 芳香族カルボジイミド)
【0056】
その他の添加剤;
酸化防止剤: Irganox1010(BASF社製)
離型剤: リコルブWE40(クラリアントジャパン社製)
【0057】
<実施例1~12、比較例1~9>
表1に示した通りに配合し、シリンダー温度250℃に設定した同方向二軸押出機で溶融混練を行い、得られたストランドを水冷し、ペレット化した。得られた各ペレットを130℃で4時間乾燥し、上述の各評価試験に用いた。結果を表1に記す。
【0058】
【表1】
【0059】
表1より明らかなように、本発明の実施例1~12のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、固有粘度が特定の範囲であるポリブチレンテレフタレート樹脂を用い、変性オレフィン系樹脂とポリエステルエラストマーを特定の配合比で含有することで、高いシャルピー衝撃強度と高流動性を両立するに至っている。またカルボジイミド化合物の添加により、シャルピー衝撃強度がより向上することが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、優れた衝撃特性と高流動性を有するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を得ることができるため、精密成形が課題となる用途に好適に用いることができるほか、薄肉成形における、軽量化、形状の自由度向上、かつ容易に成形体を得ることができるようになるため、産業界に寄与すること大である。