(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】ガス絶縁装置
(51)【国際特許分類】
H02B 13/065 20060101AFI20231212BHJP
H02G 5/06 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H02B13/065 E
H02B13/065 F
H02G5/06 371Z
H02G5/06 391
(21)【出願番号】P 2021006019
(22)【出願日】2021-01-18
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 椋平
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-005355(JP,A)
【文献】特開昭61-227327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 13/065
H02G 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ガスが充填された金属容器と、
前記金属容器内に充填された前記絶縁ガスの温度の値を計測する温度計と、
前記金属容器内に充填された前記絶縁ガスの圧力の値を計測する圧力計と、
前記金属容器と配管を介して接続され、前記金属容器内に充填された前記絶縁ガスの前記圧力の値を調整する圧力調整装置と、
前記温度計が計測した前記絶縁ガスの前記温度の値と前記圧力計が計測した前記絶縁ガスの前記圧力の値と、予め設定された前記絶縁ガスの液化曲線とに基づいて、前記絶縁ガスが所定のガス密度を保持しつつ、かつ液化しない前記圧力の値を算出する算出部と、
前記算出部が算出した前記圧力の値に基づいて、前記圧力調整装置の動作を制御する動作制御部と、
を備えることを特徴とするガス絶縁装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガス絶縁装置において、
前記圧力調整装置は、
前記配管を介して前記金属容器と接続され、一端側に前記絶縁ガスを保持する絶縁ガス保持部を有する圧力調整用タンクと、
前記圧力調整用タンクにおける前記一端側の前記絶縁ガス保持部の容積を増減させる可動隔壁と、
前記可動隔壁と接続され、前記可動隔壁を前記圧力調整用タンクの前記一端側と他端側との間で移動させる駆動手段と、
を備え、
前記動作制御部は、前記駆動手段の動作を制御することにより、前記圧力調整装置の動作を制御する
ことを特徴とするガス絶縁装置。
【請求項3】
請求項1に記載のガス絶縁装置において、
前記圧力調整装置は、
前記絶縁ガスが所定の圧力よりも高圧力で充填された圧力容器と、
前記金属容器と前記圧力容器との両方に前記配管を介して接続され、前記圧力容器から前記金属容器に前記絶縁ガスを送り込むレギュレーターと、
前記金属容器と前記圧力容器との両方に前記配管を介して接続され、前記金属容器から前記圧力容器に前記絶縁ガスを送り込むポンプと、
を備え、
前記動作制御部は、前記レギュレーター及び前記ポンプの動作を制御することにより、前記圧力調整装置の動作を制御する
ことを特徴とするガス絶縁装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のガス絶縁装置において、
前記金属容器は、スペーサによって気密に区切られた複数の圧力管理区画で構成されており、
前記温度計と前記圧力調整装置とは、前記複数の圧力管理区画のそれぞれに対応してそれぞれ複数備えられ、
前記算出部は、前記気密に区切られた複数の圧力管理区画のそれぞれに対応して備えられた複数の温度計が計測する前記圧力管理区画ごとの前記温度の値に基づいて、前記圧力管理区画ごとに前記圧力の値を算出し、
前記動作制御部は、前記圧力管理区画ごとに算出された前記圧力の値に基づいて、前記複数の圧力管理区画のそれぞれに対応して備えられた複数の圧力調整装置の動作をそれぞれ制御する
ことを特徴とするガス絶縁装置。
【請求項5】
請求項4に記載のガス絶縁装置において、
前記複数の圧力管理区画は、少なくとも開閉器を有する第1の圧力管理区画と、前記開閉器を有しない第2の圧力管理区画とで構成され、
前記圧力調整装置は、少なくとも前記第1の圧力管理区画の圧力を調整する第1の圧力調整装置と、前記第2の圧力管理区画の圧力を調整する第2の圧力調整装置とで構成され、
前記第1の圧力調整装置は、前記第1の圧力管理区画において、前記絶縁ガスが第1のガス密度以上の密度を保持するように動作し、
前記第2の圧力調整装置は、前記第2の圧力管理区画において、前記絶縁ガスが第2のガス密度以上の密度を保持するように動作し、
前記第1のガス密度は、前記第2のガス密度以上の密度である
ことを特徴とするガス絶縁装置。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のガス絶縁装置において、
前記温度計は、前記金属容器の所定の複数の位置のそれぞれに対応して複数備えられ、
前記算出部は、複数の前記温度計が示す複数の温度の値のうち、最も低い温度の値に基づいて前記圧力の値を算出する
ことを特徴とするガス絶縁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス絶縁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス絶縁装置は、所定のガス密度を保つことにより、必要な絶縁能力を維持するようにしている。周囲温度が内部の絶縁ガスの液化温度まで低下すると、ガス絶縁装置の容器に充填された絶縁ガスの一部が液化し、ガス絶縁装置の容器内は、気体と液体とが平衡して共存する状態となる。この場合、絶縁ガスの一部が液化する前よりもガス絶縁装置の容器内の絶縁ガスの密度が低くなるため、絶縁ガスは、充分な絶縁耐力を得ることができない。このため、例えば、零下30℃~40℃となるような寒冷地区にてガス絶縁装置を設置する場合、ガス絶縁装置内の絶縁ガスの気相を保つために、液化防止のための装置の設置が必要であった。従来では、例えば、スペースヒータ等のヒータを用いて液化した絶縁ガスを加熱し、再び絶縁ガスを気化することで絶縁耐力を保っていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ヒータを用いてガス絶縁装置の容器内の絶縁ガスの絶縁耐力を保つ方式の場合、絶縁ガスが液化温度に達したとき、ヒータを始動してから所定の温度まで温度を上げるのに時間がかかってしまう。このため、温度を上げている時間帯では、ガス絶縁装置の容器内は、気体と液体とが共存した状態となり、ガス密度が大きく低下し、充分な絶縁耐力を保てないという問題があった。また、ガス絶縁装置の容器内の温度を急激に上げようとすると、大容量のヒータが必要となり、電力容量あるいは温度を所定値以上に維持するための電力量が増大するという問題があった。また、ヒータが壊れた際は、ヒータを設置したガス絶縁装置の容器の取り外しが伴い、メンテナンス費用が増大するという問題もあった。
【0005】
ところで、絶縁ガスは、圧力が下がると液化温度も下がるという温度-圧力特性を有している。この絶縁ガスが有する温度-圧力特性に従えば、ガス絶縁装置の密閉金属製容器内の圧力を変化させ、ガス密度を調整することにより、絶縁ガスの液化温度を調整することが可能である。
【0006】
そこで、本発明は、周囲温度が所定の温度以下になっても充分な絶縁耐力を保つことが可能であり、かつ、従来よりも消費電力量が小さいガス絶縁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るガス絶縁装置は、絶縁ガスが充填された金属容器と、金属容器内に充填された絶縁ガスの温度の値を計測する温度計と、金属容器内に充填された絶縁ガスの圧力の値を計測する圧力計と、金属容器と配管を介して接続され、金属容器内に充填された絶縁ガスの圧力の値を調整する圧力調整装置と、温度計が計測した絶縁ガスの温度の値と圧力計が計測した絶縁ガスの圧力の値と、予め設定された絶縁ガスの液化曲線とに基づいて、絶縁ガスが所定のガス密度を保持しつつ、かつ液化しない圧力の値を算出する算出部と、算出部が算出した圧力の値に基づいて、圧力調整装置の動作を制御する動作制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、周囲温度が所定の温度以下になっても充分な絶縁耐力を保つことが可能であり、かつ、従来よりも消費電力量が小さいガス絶縁装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るガス絶縁装置の構成例を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係るガス絶縁装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図3】SF
6ガスの温度-圧力特性を示す図である。
【
図4】第1実施形態の変形例に係るガス絶縁装置の構成例を示す図である。
【
図5】第2実施形態に係るガス絶縁装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るガス絶縁装置の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るガス絶縁装置1の構成例を示す図である。
図1に示す実施形態において、ガス絶縁装置1は、例えば、ガス絶縁開閉装置(GIS:Gas Insulated Switch)である。以下、本明細書において、ガス絶縁装置1は、「GIS1」とも称する。
【0012】
GIS1は、例えば、絶縁性能・消弧性能に優れ無害で不活性な絶縁ガスを充填した密閉金属製容器内に、発電所や変電所に設置される遮断器や断路器、及びこれらをつなぐ電路等を収納した設備である。GIS1は、密閉金属製容器内の絶縁ガス中で電流の開閉を行い、電流を遮断する際に開閉器の電極間に発生するアーク放電に対し、絶縁ガスを吹き付けることでアーク放電を消弧(消滅)させる。
【0013】
本実施形態におけるGIS1は、密閉金属製容器(以下、単に「金属容器」という。)10と、温度計20と、圧力計30と、配管40と、圧力調整装置50と、制御装置60とを有する。金属容器10は、温度計20と圧力計30とがそれぞれ配置されている。また、金属容器10は、配管40を介して圧力調整装置50と接続されている。また、温度計20と、圧力計30と、圧力調整装置50とは、信号線60a、60b、及び60cを介して、制御装置60とそれぞれ接続されている。
【0014】
金属容器10は、例えば、接地金属容器とも称される密閉金属製容器であり、温度計20と、圧力計30とがそれぞれ配置されている。また、金属容器10は、例えば、円筒形状の鉄製の密閉容器であり、内部には、スペーサ12に支持された導体13が軸方向(
図1中左右方向)に挿通されている。なお、導体13は電路であり、金属容器10内で、不図示の開閉器に接続されている。また、金属容器10は、内部が大気圧よりも高圧の絶縁ガス11で充填されている。金属容器10は、配管40を介して圧力調整装置50と連通しているため、絶縁ガス11は、金属容器10と圧力調整装置50との間で相互に流出入可能である。
【0015】
絶縁ガス11は、例えば、六フッ化硫黄(sulfur hexafluoride)であり、化学式SF6で表される硫黄の六フッ化物である。六フッ化硫黄(SF6)は、硫黄原子を中心にフッ素原子が正八面体構造をとっており、絶縁性能が非常に高く、その絶縁耐力は空気の3倍にも及ぶ。また、六フッ化硫黄(SF6)は、不活性であり、熱伝導性も高いことからアーク放電によって過熱した電極を速やかに冷却することができる。以下、本明細書において、絶縁ガス11は、「SF6ガス11」とも称する。
【0016】
SF6ガス11は、金属容器10の内部において、絶縁性能や消弧性能を保つために、所定のガス密度gy(第1のガス密度gy)が必要であり、大気圧より高圧に保持されている。SF6ガス11は、気体と液体とでは、圧力にも依存するが数十倍の体積の差が出てしまう。このため、SF6ガス11の絶縁性能や消弧性能を保つためには、SF6ガス11を液化させないことが重要となる。
【0017】
スペーサ12は、絶縁スペーサ12aと、中心導体12cとを有する。絶縁スペーサ12aは、例えば略円錐形の絶縁構造部材であり、金属容器10のフランジ12bに、例えば不図示のボルト等で固定されている。絶縁スペーサ12aとフランジ12bとの接続部は、気密を保持しながら接続される。スペーサ12は、絶縁スペーサ12aの中心部に中心導体12cを有し、中心導体12cに接続された導体13を金属容器10内で中空に支持する。スペーサ12は、高電圧に印加された導体13を中空に支持することで、導体13と金属容器10との間を絶縁する。
【0018】
金属容器10は、スペーサ12によって、例えば容器10aと容器10bとに区切られている。スペーサ12は、容器10aと容器10bとの間を互いに気密に保持してもよい。これにより、金属容器10の容器10a内のSF
6ガス11の圧力と容器10b内のSF
6ガス11の圧力とを異ならせることができる。こうすることで、容器10aと容器10bとのSF
6ガス11のガス管理を別々に行うことができる。但し、
図1の例では、配管40にて容器10aと容器10bとは接続されているので、両者の圧力は等しい。
【0019】
導体13は電路であり、スペーサ12によって中空に支持されて金属容器10の軸方向(
図1中左右方向)に配されて、金属容器10内の不図示の開閉器に接続される。不図示の開閉器は、電流を遮断する際に電極間にアーク放電が発生する。GIS1は、アーク放電に対し、不図示のピストン等によりSF
6ガス11を吹き付けてアーク放電を消弧させる構造を有する。なお、導体13は、単相型でも三相一括型でもよい。
【0020】
温度計20は、例えば、温度センサ等の温度検出器であり、例えば、金属容器10の内部又は外部に配置される。なお、外側に配置されれば、温度計20の追加又は撤去を容易に行うことが可能である。金属容器10は、例えば鉄製であるため、金属容器10の内部と外部との温度差が大きくない。このため、温度計20は、金属容器10の外側から、外気の温度又は金属容器10を構成する金属(例えば、鉄)の温度を計測することによって、金属容器10内部のSF6ガス11の温度を間接的に計測あるいは推定することができる。一般的に金属容器10内のSF6ガス11は導体13に通電される電流により発生するジュール熱で温められるので、金属容器10の外側で計測された温度は内側のSF6ガス11の温度より低くなるため、液化防止の観点からは安全サイドに動作することになる。
【0021】
温度計20は、制御装置60と信号線60aを介して接続されており、温度計20が計測した温度tの値(以下、「計測温度tm」とも称する。)は、制御装置60によって取得される。なお、温度計20は、同一圧力管理区画内の金属容器10の複数の位置に複数配置されてもよい。例えば、日当たり等の関係で、金属容器10の位置により温度が異なる場合もあるからである。また、温度計20は、日光の照射を受けにくい金属容器10の内部や外部を問わず、底面側に設けられてもよい。
【0022】
圧力計30は、例えば、圧力センサ等の圧力検出器であり、例えば、金属容器10の所定の位置に配置され、金属容器10内部のSF6ガス11の圧力を計測する。圧力計30は、信号線60bを介して制御装置60と接続されており、圧力計30が計測した圧力pの値(以下、「計測圧力pm」とも称する。)は、制御装置60によって取得される。
【0023】
なお、圧力計30は、配管40や、圧力調整装置50に配置されてもよい。金属容器10と配管40と圧力調整装置50とは、互いに連通しており、SF6ガス11の圧力は、基本的にいずれの場所でも一定だからである。また、圧力計30は、金属容器10、配管40、圧力調整装置50等に複数配置されても良く、SF6ガス11の圧力は基本的にいずれの場所でも一定であるため、いずれかの場所に1つ配置されていてもよい。
【0024】
配管40は、金属容器10と圧力調整装置50とを接続し、SF6ガス11を金属容器10と圧力調整装置50との間で相互に連通させる。なお、1台の圧力調整装置50に接続された配管40が、途中で分岐し、金属容器10の容器10aと容器10bとにそれぞれ接続されてもよい。また、金属容器10と圧力調整装置50とが併設又は付設され、配管40が省略されてもよい。一方、配管40により、金属容器10と圧力調整装置50とが、離れた場所に配置されてもよい。
【0025】
圧力調整装置50は、圧力調整用タンク51と、ボールねじ52と、可動隔壁53と、駆動手段54とを有する。圧力調整装置50は、制御装置60の制御に従って、可動隔壁53を一端側51aと他端側51cとの間で移動させることにより、金属容器10内のSF6ガス11の圧力を調整する。
【0026】
圧力調整用タンク51は、一端側51aにSF6ガス11を保持する絶縁ガス保持部51bを有し、可動隔壁53を隔てた他端側51cに例えば窒素ガス等の気体を保持するガス保持部51dを有する。絶縁ガス保持部51bは、配管40を介して金属容器10と接続されている。可動隔壁53が他端側51cから一端側51aに移動すると、絶縁ガス保持部51bのSF6ガス11が圧縮され、金属容器10内のSF6ガス11の圧力pの値が可動隔壁53の移動前よりも大きくなる。一方、可動隔壁53が一端側51aから他端側51cに移動すると、絶縁ガス保持部51bのSF6ガス11の圧縮が解かれ、金属容器10内のSF6ガス11の圧力pの値が可動隔壁53の移動前よりも小さくなる。
【0027】
ボールねじ52は、駆動手段54の回転運動を直線運動に変換する機械要素である。ボールねじ52は、可動隔壁53と接続されており、ボールねじ52が回転することにより、可動隔壁53が、一端側51aと他端側51cとを相互に移動する。
【0028】
可動隔壁53は、圧力調整用タンク51における絶縁ガス保持部51bとガス保持部51dとを気密に仕切り、一端側51aと他端側51cとを相互に移動することにより、絶縁ガス保持部51bとガス保持部51dとの容積を増減させる。
【0029】
駆動手段54は、例えば、不図示の電源を動力とするモータであり、制御装置60と信号線60cを介して接続されている。また、駆動手段54は、ボールねじ52と接続されており、制御装置60の指示により、ボールねじ52を正回転又は逆回転させる。駆動手段54がボールねじ52を正回転又は逆回転させることにより、可動隔壁53は、一端側51aと他端側51cとを相互に移動する。
【0030】
制御装置60は、例えば、不図示の記憶部に記憶されたプログラムを実行することにより動作するCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)を有する。制御装置60は、算出部61と、動作制御部62としての機能を有し、所定のプログラムを実行することにより、圧力調整装置50の動作を制御する。制御装置60は、信号線60a、60b、及び60cを介して、温度計20、圧力計30、及び駆動手段54と接続されている。なお、制御装置60は、GIS1の制御部としてGIS1に付設(包含)されていてもよく、信号線60a、60b、及び60cではなく、有線又は無線のネットワークを介して温度計20、圧力計30、及び駆動手段54と接続されていてもよい。
【0031】
算出部61は、計測温度tmと、計測圧力pmとから、現状のガス密度gm(以下、「計算ガス密度gm」とも称する。)を求める。さらに計算ガス密度gmと液化曲線とに基づいて、SF6ガス11が液化せず、所定の絶縁性能と消弧性能とを維持可能な第1のガス密度gy以上の値を保持するような第1計算圧力pxの値と第1計算温度txの値とを算出する。算出部61は、算出した第1計算圧力pxの値と第1計算温度txの値とを動作制御部62に出力する。すなわち、第1のガス密度gyは所定の絶縁性能と消弧性能を満たすための下限値となるガス密度である。なお、算出部61の詳細な動作は、後述する。
【0032】
動作制御部62は、算出部61によって算出された第1計算圧力pxの値と第1計算温度txの値とを受け、金属容器10内のSF6ガス11の圧力を、信号線60cを介して駆動手段54の動作により制御する。なお、動作制御部62の詳細な動作は、後述する。
【0033】
<第1実施形態の動作例>
次に、第1実施形態に係るガス絶縁装置1の動作例について説明する。
【0034】
図2は、第1実施形態に係るガス絶縁装置1の動作例を示すフローチャートである。
図2に示すフローチャートにおいて、GIS1の金属容器10の内部には、例えば、0.4~0.6メガパスカルのSF
6ガス11が充填されているものとする。
【0035】
図2に示すフローチャートは、GIS1が運用を開始すると同時に開始される。なお、
図2に示すフローチャートは、例えば、寒冷地区において、周囲温度が所定の温度以下となった場合や、冬の時期等の所定の時期になったときに開始されてもよい。温暖な地区や、周囲温度が高い時期や、夏の時期等には、SF
6ガス11の液化は問題とはならないからである。
【0036】
ステップS1において、算出部61は、温度計20が計測した計測温度tmと、圧力計30が計測した計測圧力pmとを取得する。なお、算出部61は、金属容器10に温度計20が複数配置されていた場合、最も低い温度を示す値を計測温度tmとして取得してもよい。金属容器10は、日当たり等の関係で、位置によって温度tの値が異なることがあるが、最も低い温度tの値が液化温度を下回っていなければ、金属容器10の何れの位置においてもSF6ガス11が液化することは無いからである。
【0037】
ステップS2において、算出部61は、後述の式(1)の変形式により、計測温度tmと計測圧力pmとからSF6ガス11の計算ガス密度gmを算出する。さらに、数値演算等のより、計算ガス密度gmにおける式(1)で示されるSF6ガス11の温度-圧力特性の交点に相当する液化限界温度である第1計算温度txと第1計算圧力pxとを算出する。
【0038】
図3は、SF
6ガス11の温度-圧力特性を示す図である。
図3において、縦軸は、圧力P(kg/cm2)を示し、横軸は、温度T(℃)を示す。
図3の中央の縦方向の曲線は、液化曲線を示し、横方向の2本の直線は、2種類のガス密度を示している。図中の液化曲線の右側は、SF
6ガス11が気相を保つ(気体である)範囲であり、図中の液化曲線の左側は、SF
6ガス11が液化する(液体となる)範囲である。液化曲線は予め実験等により求めることができ、例えば、制御装置60内の不図示の記憶部に記憶されている。
【0039】
図3によれば、算出部61は、SF
6ガス11の計測温度tmと計測圧力pmとに基づいて、計算ガス密度gmにおけるSF
6ガス11が液化しない第1計算圧力pxの値を算出することができる。
図3において、例えば、温度t1において、圧力p2では液化してしまうが、同じ温度t1でも、圧力がp1であれば、SF
6ガス11は、気相を保つことができる。このため、温度tの値が下がった場合であっても、SF
6ガス11の圧力pの値を下げれば、SF
6ガス11の液化温度を下げることができる。
【0040】
一方、SF
6ガス11の絶縁耐力はガス密度に依存するため、SF
6ガス11の圧力を下げ過ぎるとガス密度が下がり過ぎ、絶縁耐力や消弧性能を保つことができない。すなわち、SF
6ガス11の絶縁耐力と消弧性能とを保つためには、ガス密度の管理が重要となる。このため、算出部61は、SF
6ガス11が第1のガス密度gy以上の値を保ちつつ液化しない圧力pの値を算出する必要がある。例えば、
図3において、ガス密度1を第1のガス密度gyとすると、算出部61は、SF
6ガス11のガス密度が、ガス密度1からガス密度2の範囲に収まり、かつ、液化曲線の右側の領域の圧力pの値と温度tの値とを算出する。なお、算出部61は、圧力pの値を所定のマージンを設けて算出してもよく、所定の下限値以上をキープするように算出してもよい。
【0041】
ここで、密度は、温度と圧力との関数である。このため、温度と圧力とから密度を算出することで、所定の密度を保つためには、圧力をどこまで下げられるかを算出することが可能となる。算出部61は、例えば、公知の関数に基づいて圧力pの値を算出する。算出部61は、SF6ガス11の容積、温度、重量が与えられた場合、発生する圧力を、例えば、式(1)に示す公知のBeatlie-Bridgemanの式により(V>0.215)求めることができる。ここで、Vはモル容積であるので、ガス密度の逆数に相当する。よって式(1)を変形することにより、ガス密度を求めることができる。
【0042】
P={RT(V+B)/V2}-{A/V2}・・・(1)
但し、
A:15.78(1-0.1062V-1)
B:0.366(1-0.1236V-1)
P:圧力(atm・abs)
V:モル容積(l/mol)
T:温度(゜K)
R:0.08207(l-atm/mol゜K)
誤差:±1%
【0043】
算出部61は、式(1)を用い、さらに、第1のガス密度gyで、液化曲線と温度-圧力特性の交点に相当する第2計算圧力pyと第2計算温度tyとを算出する。また必要に応じ(1)式の代りに、他の圧力とガス密度と温度との関係式を使用してもよい。
【0044】
なお、絶縁耐力を保てる具体的な第1のガス密度gyの値は、GIS1の製造上の仕様等に依存する。例えば、GIS1は、仕様によっては、絶縁距離が大きく、SF6ガス11の圧力を大気圧程度としても耐えられるものもあるが、SF6ガス11の圧力を高めて(すなわちガス密度を高めて)絶縁距離を小さくすることにより小型化を図っているものもある。このため、算出部61は、メーカーの仕様等により、対象となるGIS1の絶縁性能や消弧性能の許容できる範囲を考慮して、第2計算圧力pyと第2計算温度tyとを算出する。尚、第1計算圧力px、第2計算圧力pyと、第1計算温度tx、第2計算温度tyとは実際の交点に対し、所定のマージンを加えた値としてもよい。
【0045】
ステップS3において、制御装置60は、計測温度tmと第2計算温度tyとの差が第2温度閾値以下の場合、ガス温度が低下しており、圧力調整による液化防止の余裕は無いと判定し(No側)、ステップS4に処理を移行させる。一方、制御装置60は、計測温度tmと第2計算温度tyとの差が第2温度閾値を超える場合、ガス温度に余裕があると判定し(Yes側)、ステップS5に処理を移行させる。例えば、第2温度閾値は、ゼロまたは正の値の場合である。
【0046】
ステップS4において、制御装置60は、
図1では不図示のスペースヒータを動作させSF
6ガス11の温度を上昇させる。なお、ステップS4の処理が行われた後は、制御装置60は、ステップS1に処理を移行させ、ステップS1以降の処理を繰り返す。
【0047】
ステップS5において、制御装置60は、計算ガス密度gmと第1のガス密度gyとの差が第2ガス密度閾値以下の場合、ガス密度が低下しており、圧力調整による液化防止の余裕はないと判定し(No側)、ステップS6に処理を移行させる。一方、制御装置60は、計算ガス密度gmと第1のガス密度gyとの差が第2ガス密度閾値を超える場合、ガス密度に余裕があると判定し(Yes側)、ステップS7に処理を移行させる。例えば、第2ガス密度閾値は、ゼロまたは正の値である。
【0048】
ステップS6において、制御装置60は、
図1では不図示の上位の監視装置等に警報を発する。これにより、上位の監視装置は、GIS1の運用を停止するなど必要な保護措置を行うことが出来る。なお、ステップS6の処理が行われた後は、制御装置60は、ステップS1に処理を移行させ、ステップS1以降の処理を繰り返す。
【0049】
ステップS7において、動作制御部62は、算出部61が算出した値に基づいて、金属容器10内のSF6ガス11の圧力pの値を下げる必要があるか否かを判定する。例えば、計測温度tmと第1計算温度txとの差が第1温度閾値以下の場合、金属容器10内のSF6ガス11の圧力pの値を下げる必要があると判定する。動作制御部62は、金属容器10内のSF6ガス11の圧力pの値を下げる必要があると判定した場合(Yes側)、ステップS8に処理を移行させる。一方、動作制御部62は、金属容器10内のSF6ガス11の圧力pの値を下げる必要が無いと判定した場合(No側)、ステップS9に処理を移行させる。例えば、第1温度閾値は、ゼロまたは正の値である。なお、ステップS7の動作は、制御装置60内の動作制御部62とは別の不図示の判定部等が行ってもよい。
【0050】
ステップS8において、動作制御部62は、圧力調整装置50の駆動手段54を制御してボールねじ52を例えば正回転させることにより、可動隔壁53を、圧力調整用タンク51の一端側51aから他端側51cに移動させる。可動隔壁53が一端側51aから他端側51cに移動すると、絶縁ガス保持部51bの容積が大きくなり、金属容器10内のSF6ガス11の圧力pの値を可動隔壁53の移動前よりも下げることができる。金属容器10内のSF6ガス11の圧力pの値を下げることにより、SF6ガス11の液化を防止することができる。
【0051】
なお、動作制御部62は、算出部61が算出した所定のガス密度を保つことが可能な圧力pの値に基づいて、圧力調整装置50の動作を制御するため、金属容器10内のSF6ガス11は、液化が防止されつつも、絶縁耐力も保つことができる。なお、ステップS8の処理が行われた後は、制御装置60は、ステップS1に処理を移行させ、ステップS1以降の処理を繰り返す。
【0052】
ステップS9において、動作制御部62は、計算ガス密度gmに基づいて、金属容器10内のSF6ガス11の圧力pの値を上げる必要があるか否かを判定する。例えば、動作制御部62は、計算ガス密度gmと第1のガス密度gyとの差が第1ガス密度閾値以下の場合、金属容器10内のSF6ガス11の圧力pの値を上げる必要があると判定する。動作制御部62は、金属容器10内のSF6ガス11の圧力pの値を上げる必要があると判定した場合(Yes側)、ステップS10に処理を移行させる。一方、動作制御部62は、金属容器10内のSF6ガス11の圧力pの値を上げる必要が無いと判定した場合(No側)、ステップS11に処理を移行させる。なお、ステップS9の動作は、制御装置60内の動作制御部62とは別の不図示の判定部等が行ってもよい。
【0053】
ステップS10において、動作制御部62は、圧力調整装置50の駆動手段54を制御してボールねじ52を例えば逆回転させることにより、可動隔壁53を、圧力調整用タンク51の他端側51cから一端側51aに移動させる。可動隔壁53が他端側51cから一端側51aに移動すると、絶縁ガス保持部51bの容積が小さくなり、金属容器10内のSF6ガス11の圧力pの値を可動隔壁53の移動前よりも上げること、すなわちガス密度を上げることができる。
【0054】
例えば、金属容器10内のSF6ガス11の密度が下がったままであると、SF6ガス11は、通常運用に耐えうる絶縁耐力を有しているとしても、開閉サージ電圧や雷インパルス電圧等の異常電圧には耐えられない場合がある。あるいは異常時の大電流遮断の消弧性能を満足できない場合がある。
【0055】
このため、例えば、算出部61が算出した計算ガス密度gmに基づいて、ステップS10の処理を行うことで、ガス密度を第1のガス密度gy以上に維持し、SF6ガス11の絶縁耐力を異常電圧にも耐えられる適切な絶縁耐力に維持することができる。なお、ステップS10の処理が行われた後は、制御装置60は、ステップS1に処理を移行させ、ステップS1以降の処理を繰り返す。
【0056】
ステップS11において、制御装置60は、GIS1の運用が停止したか否かを判定する。制御装置60は、GIS1の運用が停止したと判定した場合(Yes側)、
図2のフローチャートの処理を終了させる。一方、制御装置60は、GIS1の運用が継続していると判定した場合(No側)、ステップS1に処理を移行させ、ステップS1以降の処理を繰り返す。GIS1の運用が停止する場合は、例えば、GIS1の点検や部品交換等の場合が考えられる。なお、ステップS11の処理において、例えば、周囲温度が所定の温度以上となった場合や、夏の時期等の所定の時期になったときに、
図2のフローチャートの処理を終了させてもよい。周囲温度が高い場合や、夏の時期等には、SF
6ガス11の液化は問題とはならないからである。
【0057】
<第1実施形態の作用効果>
以上、
図1から
図3に示す実施形態によれば、制御装置60は、計測温度tmと計測圧力pmとに基づいて、計測温度tmが第1計算温度txを下回らず、かつ、計算ガス密度gmが第1のガス密度gyを下回らないように、圧力調整装置50の動作を制御する。これにより、周囲温度が低下した場合でも、GIS1は、金属容器10内のSF
6ガス11について、絶縁性能と消弧性能とを保つことが可能なガス密度を保持させつつ、液化させないようにすることが可能である。すなわち、
図1から
図3に示す実施形態によれば、
図3に示すSF
6ガス11が有する液化温度特性及び温度-圧力特性を応用することで、周囲温度が所定の温度以下になってもSF
6ガス11が液化させないようにすることが可能である。さらに、
図1から
図3に示す実施形態によれば、SF
6ガス11に充分な絶縁性能と消弧性能とを有するガス密度を保持させることが可能である。
【0058】
また、
図1から
図3に示す実施形態によれば、圧力調整装置50を用いて金属容器10内のSF
6ガス11圧力を調整することにより、SF
6ガス11の液化を防止する。これにより、GIS1に設置されたスペースヒータは、圧力制御で対応できない低温の期間のみ動作させればよく、従来よりも、消費電力量が小さいGIS1を提供することができる。あるいは、周囲環境から、圧力制御のみで液化防止が可能な場合は、スペースヒータを省略することが出来る。なお、スペースヒータの設置を省略した場合は、
図2に示すフローチャートにおいてステップS3とステップS4とを省略してもよい。また、警報を省略する場合は、
図2に示すフローチャートにおいてステップS5とステップS6とを省略してもよい。
【0059】
<第1実施形態の変形例>
図4は、第1実施形態の変形例に係るガス絶縁装置1Aの構成例を示す図である。
図4において、
図1と同一の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明は、省略する。
【0060】
図4において、GIS1Aは、
図1から
図3に示す実施形態と同様に金属容器を有するが、
図4に示す金属容器10Aは、
図1に示す容器10bの他に、容器10a1と容器10c1とを有する。容器10bは、容器10a1と容器10c1との間に設けられている。容器10bは、例えば、SF
6ガス11で満たされたガス絶縁母管である。
図4において、容器10bには、電流の開閉を行う開閉器70とスペースヒータ80とを有する。
【0061】
容器10a1と容器10c1とは、例えば、不図示のトランス等と接続される導体(母線)13が配され、SF6ガス111で満たされた金属製の連結管である。容器10a1と容器10c1とは、開閉器70を有しない。容器10bと容器10a1との間、及び容器10bと容器10c1との間は、中心導体12cを有するスペーサ12により気密性を保持した状態で区画されている。このため、容器10a1及び容器10c1は、容器10bとは接続(連通)されてない。容器10a1と容器10c1との不図示の左右の外側も、容器10b側と同様に、スペーサ12等で気密性を保持され区画されている。なお、金属容器10Aの容器10b内のSF6ガス11の圧力は、圧力調整装置50にて調整される。なお、容器10bの部分は、請求項の第1の圧力管理区画の一例であり、圧力調整装置50は、請求項の第1の圧力調整装置の一例である。
【0062】
容器10a1と容器10c1との内部は、SF6ガス111で充填されており、その圧力は、配管401を介した圧力調整装置501によって調整される。圧力調整装置501の構造は圧力調整装置50と同様であり、駆動手段541による可動隔壁531の移動によってなされるので、詳細な説明は省略する。また、第1実施形態と同様に、温度計201と圧力計301とが、容器10a1と容器10c1とに配置され、SF6ガス111の温度と圧力とが測定される。なお、圧力は、第1実施形態と同様に、同一圧力管理区画内では原理的に同じであるため、1箇所で計測してもよい。温度計201と圧力計301とで計測された値は、各々信号線60a1と信号線60b1とによって制御装置601に送られる。制御装置601は、信号線60c1により駆動手段541と接続されている。制御装置601は、後述のとおり、下限値となるガス密度gy2(以下、「第2のガス密度gy2」とも称する。)が第1実施形態と異なる以外は、第1実施形態と同様な手段で、駆動手段541を動作させることにより圧力調整装置501を制御する。なお、容器10a1と容器10c1との部分は、請求項の第2の圧力管理区画の一例であり、圧力調整装置501は、請求項の第2の圧力調整装置の一例である。
【0063】
開閉器70は、電流を遮断する際に電極間に発生するアーク放電に対し、不図示の消弧室において不図示のピストン等を用いてSF6ガス11を吹き付けることでアーク放電を消弧させる。アーク放電を消弧させるためにはガス密度が重要となる。ガス密度が低いと、吹き付けるSF6ガス11の圧力が下がるとともに、アークの冷却機能も下がってしまうため、ガス密度が高い場合よりも消弧性能が低下してしまうためである。このため、金属容器10Aにおいて、開閉器70を有する容器10bの部分が最も消弧性能、すなわちガス密度を上げなければならず、最もSF6ガス11の絶縁耐力を高めることが求められる。
【0064】
一方、開閉器70を有さない容器10a1と容器10c1との部分は、消弧性能を上げなければならないほどSF6ガス111の絶縁耐力を高める必要はない。例えば、三相(三線)で電力を送っている場合、容器10a1と容器10c1との部分は、三線の間、及び導体(母線)13と対地容器(容器10a1、10c1)との間の絶縁耐力さえ保てればよい。
【0065】
このため、
図4に示す実施形態では、開閉器70を有する容器10bの部分にのみ、SF
6ガス11の圧力pの値を低下させないため、スペースヒータ80を用いてSF
6ガス11の液化を防止する。すなわち、上述の第1実施形態で示したとおり、制御装置60は、
図2のフローチャートに示すとおり、圧力調整装置50やスペースヒータ80を動作させ、容器10b内のSF
6ガス11の圧力pと温度tとを制御する。そして、容器10bの部分は、所定の絶縁性能と消弧性能とを維持可能なようにし、SF
6ガス11のガス密度を第1のガス密度gy以上に保つようにしている。
【0066】
一方、開閉器70を有さない容器10a1と容器10c1との部分には、
図1から
図3に示す実施形態と同様の圧力調整装置501を用いて、SF
6ガス111の液化を防止する。すなわち、温度計201と圧力計301とにより、容器10c1のSF
6ガス111の計測温度tm1と計測圧力pm1とが計測され、それぞれ信号線60a1、60b1を介して制御装置601に送信される。そして、SF
6ガス111の圧力は、制御装置601によって調整される。ここで、SF
6ガス111の下限値のガス密度gy2は、三線の間、及び母線と対地容器(容器10a1、10c1)との間の絶縁性能の両者を維持するように調整される。一般的に絶縁性能を維持する方が消弧性能を維持するよりもガス密度は低くてよい。従って、SF
6ガス111の下限値のガス密度gy2(第2のガス密度gy2)は、第1のガス密度gyよりも低く設定できる。なお、圧力調整装置50と圧力調整装置501とにより、SF
6ガス11とSF
6ガス111との密度(あるいは圧力)を独立に調整できる場合は、制御装置60と制御装置601とを1つの制御装置にまとめてもよい。
【0067】
制御装置601は、制御装置60における計測温度tm、計測圧力pm、計算ガス密度gm、第1計算圧力px及び第2計算圧力pyを、各々計測温度tm1、計測圧力pm1、計算ガス密度gm1、第3計算圧力px1及び第4計算圧力py1として置き換える。また、制御装置601は、制御装置60における第1計算温度tx、第2計算温度ty及び第1のガス密度gyを、各々第3計算温度tx1、第4計算温度ty1及び第2のガス密度gy2として置き換えることにより、制御装置60と同様の制御を行う。これにより、容器10a1及び容器10c1内のSF6ガス111の圧力は調整され、第2のガス密度gy2以上の値が維持される。
【0068】
なお、容器10a1と容器10c1との一部分又は全ての部分に対して、圧力調整装置501と不図示のスペースヒータとを省略したり、あるいはこれらを併用したりするハイブリッド方式であってもよい。この場合、求められる絶縁耐力や容器内容積によって、スペースヒータの設置数や設置面積等を変更してもよい。また、金属容器10Aは、日当たり等の関係で、温度が低下しやすい場所がある場合、スペースヒータ80が、金属容器10Aのうち温度が低下しやすい場所にのみ設置されてもよい。
【0069】
また、圧力調整装置50、501を省略し、SF6ガス11、111の温度が所定の閾値よりも下がるとアラームが鳴る(又は表示される)ようにしてもよい。そして、この場合、アラームが鳴った場合にスペースヒータ80を始動させ、SF6ガス11、111の温度を、所定の下限値以上に維持するようにしてもよい。
【0070】
<第1実施形態の変形例の作用効果>
以上、
図4に示す実施形態によれば、
図1から
図3に示す実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0071】
また、
図4に示す実施形態によれば、容器10bに設けられたスペースヒータ80は、開閉器70の設けられた圧力管理区画の温度のみによって管理されればよいので、第1実施形態よりも消費電力量を低減できる。さらに、容器10a1と容器10c1とは第1のガス密度gyよりも低い第2のガス密度gy2を基準に管理が行われる。このため、液化しないガス温度を低くすることが可能であるため、第1実施形態よりも消費電力量を低減することができる。あるいは、容器10a1と容器10c1との部分は、スペースヒータを省略することができるため、全ての部分にスペースヒータが配置される場合よりも消費電力量を低減することができる。
【0072】
また、スペースヒータ80のみを用いていた従来は、スペースヒータ80が壊れたときは、スペースヒータ80を設置したGIS1の金属容器10の取り外しが伴うため、その間は、GIS1の運用を継続することができない。一方、
図4に示す実施形態では、スペースヒータ80が壊れたときは、圧力調整装置50、501のみにより、GIS1Aの運用を継続することができる。また、圧力調整装置50、501等が破損した場合であっても、配管40、401の接続先を、破損していない圧力調整装置50、501等とすることで、GIS1Aの運用を継続することができる。
【0073】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態に係るガス絶縁装置1Bの構成例を示す図である。
図4において、
図1と同一の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明は、省略する。
図5において、GIS1Bは、
図1から
図4に示す実施形態の圧力調整装置50、501の代わりに圧力調整装置90を有し、制御装置60、601の代わりに制御装置60Bを有する。
【0074】
圧力調整装置90は、圧力容器91と、レギュレーター92と、ポンプ93とを有する。GIS1Bと圧力容器91とは、レギュレーター92とポンプ93とを介して配管40にて接続されている。
【0075】
圧力容器91は、大気圧と異なる圧力で気体や液体を貯留するように設計された容器である。
図5に示す圧力容器91は、金属容器10内のSF
6ガス11よりも高い圧力でSF
6ガス11が保持されている。圧力容器91は、配管40を介してレギュレーター92及びポンプ93と接続されている。
図5において、配管40の矢印の向きはSF
6ガス11の流れる方向を示している。すなわち、SF
6ガス11は、圧力容器91からレギュレーター92に向かって配管40内を流れる。一方、SF
6ガス11は、ポンプ93から圧力容器91に向かって配管40内を流れる。
【0076】
レギュレーター92は、圧力レギュレーターとも称され、高圧の流体を所定の圧力へ下げるバルブであり、圧力容器91内のSF6ガス11の圧力を下げて、SF6ガス11を圧力容器91から金属容器10へ送り込む。レギュレーター92は、信号線60dを介して制御装置60Bと接続されており、制御装置60Bの制御に従って動作する。レギュレーター92が動作することで、圧力容器91内のSF6ガス11が金属容器10内に流入し、金属容器10内のSF6ガス11の圧力pの値をレギュレーター92の動作前よりも上げることができる。
【0077】
ポンプ93は、外部からの動力供給により連続して流体にエネルギーを与えることにより、低圧部から高圧部へ流体を送り出すための機械であり、相対的に低圧の金属容器10から相対的に高圧の圧力容器91へSF6ガス11を送り込む。ポンプ93は、信号線60eを介して制御装置60Bと接続されており、制御装置60Bの制御に従って動作する。ポンプ93が動作することで、金属容器10内のSF6ガス11が圧力容器91内に流入し、金属容器10内のSF6ガス11の圧力pの値をポンプ93の動作前よりも下げることができる。
【0078】
制御装置60Bは、
図1から
図4に示す実施形態における制御装置60と基本的には同様の機能を有する。但し、
図1から
図4に示す実施形態における制御装置60は、信号線60cを介して駆動手段(モータ)54と接続されていた。一方、
図5に示す実施形態における制御装置60Bは、信号線60d及び60eを介して、レギュレーター92及びポンプ93とそれぞれ接続されている。なお、制御装置60Bは、
図1から
図4に示す実施形態と同様に、GIS1Bの制御部としてGIS1Bに付設(包含)されていてもよい。また、制御装置60Bは、信号線60a、60b、60d、及び60eではなく、
図1から
図4に示す実施形態と同様に、有線又は無線のネットワークを介して温度計20、圧力計30、レギュレーター92、及びポンプ93と接続されていてもよい。
【0079】
また、
図1から
図4に示す実施形態における動作制御部62は、駆動手段(モータ)54の動作を制御していたが、
図5に示す実施形態における動作制御部62Bは、レギュレーター92及びポンプ93の動作をそれぞれ制御する。
【0080】
具体的には、
図5に示す実施形態では、
図2に示すステップS8において、動作制御部62Bは、ポンプ93を動作させる。これにより、ポンプ93の動作前よりも金属容器10内のSF
6ガス11の圧力pの値を下げることができ、SF
6ガス11の液化を防止することができる。なお、
図1から
図4に示す実施形態と同様に、動作制御部62Bは、算出部61が算出した計算ガス密度gmと、第1のガス密度gyを保ちつつ液化しない圧力や温度の値とに基づいて、圧力調整装置90の動作を制御する。このため、
図5に示す実施形態においても、金属容器10内のSF
6ガス11は、液化が防止されつつも、絶縁耐力や消弧性能も保つことができる。
【0081】
また、
図5に示す実施形態では、
図2に示すステップS10において、動作制御部62Bは、レギュレーター92を動作させる。これにより、レギュレーター92の動作前よりも金属容器10内のSF
6ガス11の圧力pの値を上げることができ、SF
6ガス11の絶縁耐力を異常電圧発生時にも耐えられる適切な絶縁性能や消弧性能を維持可能な第1のガス密度gy以上の値に維持できる。
【0082】
<第2実施形態の作用効果>
以上、
図5に示す実施形態によれば、
図1から
図4に示す実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0083】
また、
図5に示す実施形態によれば、GIS1Bは、
図1から
図4に示す実施形態における圧力調整装置50、501の代わりに圧力調整装置90を有する。圧力調整装置50、501の圧力調整用タンク51、511よりも圧力調整装置90の圧力容器91の方が、容積が小さいことが一般的であるため、
図5に示す実施形態の方が、
図1から
図4に示す実施形態よりも設置スペースを小さくすることができる。
【0084】
なお、
図5に示す実施形態においても、
図4に示す実施形態と同様に、開閉器70を有する圧力管理区画と開閉器70を有さない圧力管理区画とに分けて、さらに、圧力調整装置90とスペースヒータ80とを併用してもよい。これにより、
図5に示す実施形態は、
図4に示す実施形態と同様に、SF
6ガス11の液化防止のためにスペースヒータ80のみを用いていた従来よりも、消費電力量を小さくすることができる。
【0085】
<実施形態の補足事項>
図1から
図5に示す実施形態では、圧力調整装置50、501、90(以下、これらをまとめて「圧力調整装置50等」という。)が1台又は2台のみ設けられているが、これには限られない。例えば、ガス管理を一括して行いたいときは、共通の圧力調整装置50等が1台設けられても良い。また、例えば、ガス管理を個別に行いたいときは、容器10a(10a1)、容器10b、容器10c1ごとに、又は圧力管理区画ごとに、複数の圧力調整装置50等がそれぞれ設けられてもよい。これにより、GIS1、1A、1B(以下、これらをまとめて「GIS1等」という。)の圧力管理を細かく行うことができる。
【0086】
なお、GIS1等に圧力調整装置50等が複数設けられた場合、それらの複数の圧力調整装置50等は、1つの共通の制御装置60、601、60B(以下、これらをまとめて「制御装置60等」という。)によって制御されてもよい。また、複数の圧力調整装置50等は、それらの複数の圧力調整装置50等にそれぞれ対応して設けられた複数の制御装置60等によって、それぞれ個別に制御されてもよい。この場合、容器10a(10a1)、容器10b、10c1ごと、又は圧力管理区画ごとに温度計20が複数設けられている場合は、制御装置60等は、それぞれの温度計20の温度tの値に基づいて複数の圧力調整装置50等の動作を個別に制御してもよい。また、制御装置60等は、圧力管理区画ごとの最も低い温度を示す温度計20の温度tの値に基づいて複数の圧力調整装置50等の動作をそれぞれ制御してもよい。
【0087】
また、
図1から
図3に示す実施形態の構成と、
図4に示す実施形態の構成と、
図5に示す実施形態の構成とを適宜組み合わせてもよい。一例として、
図5に示す実施形態において、
図4に示す実施形態と同様に、スペースヒータ80を併用してもよい。
【0088】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲がその精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずである。したがって、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。
【符号の説明】
【0089】
1,1A,1B…ガス絶縁装置(GIS);10,10A…密閉金属製容器(金属容器);10a,10b…容器(母管);10a1,10c1…容器(連結管);11…絶縁ガス(SF6ガス):12…スペーサ;12a…絶縁スペーサ;12b…フランジ;12c…中心導体;13…導体(母線);20…温度計;30…圧力計;40…配管;50…圧力調整装置;51…圧力調整用タンク;51a…一端側;51b…絶縁ガス保持部;51c…他端側;51d…ガス保持部;52…ボールねじ;53…可動隔壁;54…駆動手段(モータ);60,60B…制御装置;60a,60a1,60b,60b1,60c,60c1,60d,60e…信号線;61…算出部;62,62B…動作制御部;70…開閉器;80…スペースヒータ;90…圧力調整装置;91…圧力容器;92…レギュレーター;93…ポンプ;111…絶縁ガス(SF6ガス):201…温度計;301…圧力計;401…配管;501…圧力調整装置;511…圧力調整用タンク;51a1…一端側;51b1…絶縁ガス保持部;51c1…他端側;51d1…ガス保持部;521…ボールねじ;531…可動隔壁;541…駆動手段;601…制御装置;gm,gm1…ガス密度(計算ガス密度);gy…ガス密度(第1のガス密度);gy2…ガス密度(第2のガス密度);P,p,p2…圧力;pm,pm1…計測圧力;px…第1計算圧力;py…第2計算圧力;px1…第3計算圧力;py1…第4計算圧力;T,t,t1…温度;tm,tm1…計測温度;tx…第1計算温度;ty…第2計算温度;tx1…第3計算温度;ty1…第4計算温度