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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】水素生成装置および燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/38 20060101AFI20231212BHJP
   H01M 8/0612 20160101ALI20231212BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20231212BHJP
   H01M 8/0662 20160101ALI20231212BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20231212BHJP
【FI】
C01B3/38
H01M8/0612
H01M8/04 N
H01M8/04 Z
H01M8/0662
H01M8/12 101
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021020933
(22)【出願日】2021-02-12
(65)【公開番号】P2022123553
(43)【公開日】2022-08-24
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 哲也
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/157274(WO,A1)
【文献】特開2006-104003(JP,A)
【文献】特開2002-356308(JP,A)
【文献】特開2002-352844(JP,A)
【文献】特開2018-098192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00 - 6/34
F28
H01M 8/00 - 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原燃料ガスから水素を生成する水素生成装置であって、
原燃料ガスを触媒の存在のもとで水素と反応させて硫黄化合物を除去する水添脱硫器(2)と、
前記水添脱硫器から供給される原燃料ガスを水蒸気改質反応により水素および水蒸気を含む燃料ガスに改質する改質器(3)と、
前記改質器から吐き出された燃料ガスの一部を前記水添脱硫器に循環する循環流路(4)と、を備え、
前記循環流路の途中に、前記循環流路を流れる燃料ガスを冷却する熱交換器(43)が設けられ、
前記熱交換器は、燃料ガスから凝縮した液体が流路内を流下可能な下り勾配に流路が形成された潜熱区間(48)と、前記潜熱区間よりも前記改質器側で前記潜熱区間よりも緩やかな下り勾配に流路が形成された顕熱区間(47)とを有している、水素生成装置。
【請求項2】
前記循環流路のうち前記潜熱区間より下流側の流路に設けられ、前記循環流路を流れる燃料ガスの流量を調整する流量調整弁(46)をさらに備える請求項1に記載の水素生成装置。
【請求項3】
前記熱交換器は、上下方向に配置される所定の軸芯周りに螺旋形状に形成された配管により構成されており、前記顕熱区間において上下に隣り合う配管のピッチ(P1)は、前記潜熱区間において上下に隣り合う配管のピッチ(P2)よりも小さくなっている、請求項1または2に記載の水素生成装置。
【請求項4】
前記熱交換器は、下り勾配を所定の間隔で折り返した配管により構成されており、前記顕熱区間において上下に隣り合う配管のピッチ(P3)は、前記潜熱区間において上下に隣り合う配管のピッチ(P4)よりも小さくなっている、請求項1または2に記載の水素生成装置。
【請求項5】
前記熱交換器の周囲に空気の流れを形成する換気ファン(33)をさらに備え、
前記熱交換器は、前記換気ファンの駆動により前記熱交換器の周囲を流れる空気と燃料ガスとを熱交換させることで燃料ガスを冷却する、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の水素生成装置。
【請求項6】
前記熱交換器内で凝縮した液体を前記循環流路から排出する排水路(44)をさらに備え、
前記排水路は、前記循環流路のうち前記潜熱区間より下流側に接続されている、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の水素生成装置。
【請求項7】
前記循環流路を流れる燃料ガスを原燃料ガスと共に前記水添脱硫器に圧送供給する燃料ポンプ(19)をさらに備える請求項1ないし6のいずれか1つに記載の水素生成装置。
【請求項8】
前記改質器から吐き出された水素を含む燃料ガスのうち前記循環流路に流れる燃料ガスを除く燃料ガスは、水素を含む燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により電気エネルギを出力する固体酸化物型の燃料電池(5)に供給されるように構成されている、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の水素生成装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1つに記載の水素生成装置(1)と、
酸化剤ガスを加熱する空気予熱器(6)と、
水蒸気を生成して前記改質器に供給する水蒸発器(7)と、
前記改質器から吐き出された水素を含む燃料ガスのうち前記循環流路に流れる燃料ガスを除く燃料ガスと前記予熱器から供給される酸化剤ガスとの電気化学反応により電気エネルギを出力する固体酸化物型の燃料電池(5)と、
前記燃料電池から排出される排出燃料ガスを燃焼させる燃焼器(8)と、
前記燃焼器で燃焼した燃焼ガスの熱が前記改質器、前記予熱器、前記水蒸発器および前記水添脱硫器に供給されるように燃焼ガスが流れるオフガス流路(12)と、を備える燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素生成装置、およびそれを用いた燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、改質器により生成された水素含有ガスの一部を、リサイクル流路を介して水添脱硫器に戻す技術が開示されている。より具体的には、水素含有ガスに含まれる水蒸気をリサイクル流路で凝縮させ、発生した凝縮水が下り勾配のあるリサイクル流路を伝って自重で落ちるようにしている。
【0003】
特許文献1の段落0044には「かかる水素含有ガスがリサイクル流路12の内部を流通すると、水素含有ガスは放熱し、温度が低下する。その結果、液体の水である凝縮水が発生する。」と記載されている。すなわちリサイクル流路12での顕熱変化(前述の「温度が低下する」の部分)と潜熱変化(前述の「凝縮水が発生する」の部分)について言及している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6473956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、潜熱変化の部分では凝縮水を自重で落とすためにリサイクル流路に所定の下り勾配を設けることが必要だが、顕熱変化の部分については凝縮水が発生しないので所定の下り勾配を設ける必要がないことを見出した。
しかしながら特許文献1では、その点について言及がなく、顕熱変化の部分と潜熱変化の部分を区別することなくリサイクル流路の角度を設定していると思われる。
この場合、本発明者の知見に基づけば、特許文献1の技術は、所定の下り勾配を設ける必要のない顕熱部分についても下り勾配を設けているので、その分、リサイクル流路の上下方向の高さが大きくなるという問題がある。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、体格を小型化することの可能な水素生成装置および燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、原燃料ガスから水素を生成する水素生成装置であって、水添脱硫器(2)、改質器(3)および循環流路(4)を備えている。水添脱硫器は、原燃料ガスを触媒の存在のもとで水素と反応させて硫黄化合物を除去する。改質器は、水添脱硫器から供給される原燃料ガスを水蒸気改質反応により水素および水蒸気を含む燃料ガスに改質する。循環流路は、改質器から吐き出された燃料ガスの一部を水添脱硫器に循環する。循環流路の途中に、循環流路を流れる燃料ガスを冷却する熱交換器(43)が設けられている。その熱交換器は、燃料ガスから凝縮した液体が流路内を流下可能な下り勾配に流路が形成された潜熱区間(48)と、その潜熱区間よりも改質器側で潜熱区間よりも緩やかな下り勾配に流路が形成された顕熱区間(47)とを有している。
【0008】
これによれば、熱交換器のうち改質器側に配置される顕熱区間には、改質器から吐出される高温の燃料ガスが流れる。そのため、顕熱区間では、燃料ガスに含まれる水蒸気の凝縮が無いかまたは凝縮量が少ない。そこで、顕熱区間では下り勾配を緩やかにすることで、顕熱区間の上下方向(すなわち、鉛直方向)の体格を小型化することが可能である。一方、顕熱区間より下流側に設けられる潜熱区間には、顕熱区間に比べて低温の燃料ガスが流れる。そのため、潜熱区間では、燃料ガスに含まれる水蒸気が凝縮する、または凝縮量が多くなる。そこで、潜熱区間では下り勾配を大きくすることで、燃料ガスから凝縮した液体を自重により流下させ、潜熱区間に液体が滞留することを防ぐことが可能である。したがって、この水素生成装置は、循環流路の途中の熱交換器に潜熱区間と顕熱区間を設けることで、熱交換器の排水性を確保すると共に、その熱交換器の上下方向の体格を小型化することができる。なお、顕熱区間は、その一部に水平領域を含んでいてもよい。
【0009】
請求項9に係る発明は、燃料電池システムに関する発明である。燃料電池システムは、水素生成装置(1)、空気予熱器(6)、水蒸発器(7)、燃料電池(5)、燃焼器(8)およびオフガス流路(12)を備えている。水素生成装置は上記請求項1に記載した構成のものである。空気予熱器は、酸化剤ガスを加熱する。水蒸発器は、水蒸気を生成して改質器に供給する。燃料電池は、改質器で生成された水素を含む燃料ガスのうち循環流路に流れる燃料ガスを除く燃料ガスと空気予熱器から供給される酸化剤ガスとの電気化学反応により電気エネルギを出力する固体酸化物型燃料電池である。燃焼器は、燃料電池から排出される排出燃料ガスを燃焼させる。オフガス流路は、燃焼器で燃焼した燃焼ガスの熱が改質器、空気予熱器、水蒸発器および水添脱硫器に供給されるように燃焼ガスが流れる。
【0010】
これによれば、一般に、この種の燃料電池システムは、定置式のものが多く、設置性を良くするために設置面積を小さくすることで、その分、高さ方向の寸法が大きくなる傾向にある。しかし、燃料電池システムの高さ方向の寸法が大きくなると、室内や軒下での設置が制限され、さらに、重心が高くなり転倒防止の設置制約も発生するといった問題がある。そこで、請求項9に係る発明では、燃料電池システムが備える水素生成装置の熱交換器に流路の下り勾配が小さい顕熱区間を設けることで、熱交換器の上下方向の体格を小型化することが可能である。これにより、燃料電池システムの上下方向の体格を小型化し、設置性を良くすることができる。
【0011】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る水素生成装置を備えた燃料電池システムの概略構成図である。
図2】第1実施形態に係る水素生成装置が備える熱交換器の断面図である。
図3】比較例の水素生成装置が備える熱交換器の断面図である。
図4】第2実施形態に係る水素生成装置が備える熱交換器の斜視図である。
図5】第3実施形態に係る水素生成装置が備える熱交換器の斜視図である。
図6】第4実施形態に係る水素生成装置を備えた燃料電池システムの概略構成図である。
図7】第5実施形態に係る水素生成装置を備えた燃料電池システムの概略構成図である。
図8】第6実施形態に係る水素生成装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、本実施形態の水素生成装置1は、燃料電池システム10に用いられる。水素生成装置1は、原燃料ガスから硫黄化合物を除去する水添脱硫器2、その水添脱硫器2から吐出される原燃料ガスを水素を含む燃料ガスに改質する改質器3、および、改質器3で改質された燃料ガスの一部を水添脱硫器2に循環する循環流路4などを備えている。そして、燃料電池システム10は、水素生成装置1の他に、燃料電池5、空気予熱器6、水蒸発器7および燃焼器8などを備えている。
【0015】
まず、燃料電池システム10について説明する。
燃料電池システム10が備える燃料電池5は、セルスタックとも呼ばれるものであり、図示しない複数の燃料電池セルの集合体である。燃料電池セルは、高温で作動する固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)であり、電解質を挟んで一方側の面に燃料極(すなわち、アノード)が形成され、他方の面に空気極(すなわち、カソード)が形成された構成となっている。燃料電池5は、水素生成装置1で生成されて燃料極に供給される燃料ガスと、空気予熱器6を経由して空気極に供給される酸化剤ガスとしての空気(詳細には、空気中の酸素)との電気化学反応により発電する。
【0016】
燃料電池5は、炭化水素系の原燃料ガスである都市ガス(すなわち、メタンを主成分とするガス)を改質して生成した水素および一酸化炭素を燃料ガスとしている。なお、使用する原燃料ガスは、炭化水素系の燃料であれば、都市ガス以外のガスを採用してもよい。
【0017】
燃料電池5は、以下の反応式F1、F2に示す水素および酸素の電気化学反応により電気エネルギを出力する。
【0018】
(燃料極)2H+2O2-→2HO+4e …(F1)
(空気極)O+4e→2O2- …(F2)
【0019】
また、燃料電池5は、以下の反応式F3、F4に示す一酸化炭素および酸素の電気化学反応により電気エネルギを出力する。
【0020】
(燃料極)2CO+2O2-→2CO+4e …(F3)
(空気極)O+4e→2O2- …(F4)
【0021】
図1に示す空気ブロア11は、大気中から吸い込んだ空気を、空気経路9および空気予熱器6を経由して燃料電池5の空気極に圧送する。空気ブロア11と燃料電池5との間の空気経路9に設けられた空気予熱器6は、燃焼器8および燃料電池5の熱により、燃料電池5に供給される空気を加熱する。これにより、燃料電池5に供給される空気と燃料ガスとの温度差が縮小し、燃料電池5の発電効率が向上する。
【0022】
燃焼器8では、燃料電池5から排出される排出燃料ガス(以下、「オフガス」という)が、燃料電池5から排出される排出空気(以下、「オフ空気」という)と共に燃焼される。なお、燃料電池5から排出されるオフガスの一部を図示しない配管およびエジェクタなどを用いて改質器3の上流側に戻し、燃料電池5の発電に再利用してもよい。
【0023】
燃焼器8で燃焼した燃焼ガスはオフガス流路12を流れ、改質器3、空気予熱器6、水添脱硫器2、水蒸発器7などの昇温に用いられる。なお、図1では、オフガス流路12の一例を破線で示しているが、オフガス流路12の経路はこれに限らず、各機器の必要な温度に応じて任意に設定できる。オフガス流路12のうち排気口13付近から分岐した排水管14には、オフガス流路12内で凝縮した水が流れる。排水管14の途中には逆止弁15が設けられている。排水管14を流れる水は、水タンク16に貯められる。
【0024】
水タンク16の水は、水ポンプ17によって吸い上げられ、水蒸発器7に供給される。水蒸発器7は、燃焼器8で燃焼した燃焼ガスの熱により水を蒸発させて水蒸気を生成する。その水蒸気は、水素生成装置1の改質器3に供給される。なお、水蒸発器7は、水素生成装置1が備えていてもよい。
【0025】
次に、燃料電池システム10に用いられる水素生成装置1について説明する。上述したように、水素生成装置1は、原燃料ガスから水素を含む燃料ガスを生成する装置であり、水添脱硫器2、改質器3および循環流路4などを備えている。
【0026】
水添脱硫器2には、炭化水素系の原燃料である都市ガスが流れる燃料配管18が接続されている。燃料配管18の途中に設けられた燃料ポンプ19は、燃料配管18を流れる原燃料ガスと、後述する循環流路4から燃料配管18に流入する水素を含む燃料ガスとを水添脱硫器2に向けて圧送する。
【0027】
水添脱硫器2は、原燃料ガスを触媒の存在のもとで水素と反応させて、原燃料ガスに含まれている硫黄化合物を除去する。硫黄化合物は、付臭成分として人為的に原料へ添加されるものであってもよいし、原料自体に由来する天然の硫黄化合物であってもよい。具体的には、硫黄化合物として、ターシャリーブチルメルカプタン(TBM:tertiary-butylmercaptan)、ジメチルスルフィド(DMS:dimethyl sulfide)、テトラヒドロチオフェン(THT:tetrahydrothiophene)、硫化カルボニル(COS:carbonyl sulfide)、硫化水素(hydrogen sulfide)などが例示される。
【0028】
水添脱硫器2は、例えば、容器に水添脱硫剤が充填されて構成される。水添脱硫剤として、例えば、硫黄化合物を硫化水素に変換する機能と硫化水素を吸着する機能を共に有するCuZn系触媒が用いられる。なお、水添脱硫剤は、これに限定されるものではなく、例えば、原料中の硫黄化合物を硫化水素に変換するCoMo系触媒と、変換された硫化水素を吸着する吸着剤であるZnO系触媒及びCuZn系触媒の少なくともいずれか一方とで構成されてもよい。水添脱硫器2により硫黄化合物が除去された原燃料ガスは、改質器3に供給される。
【0029】
水添脱硫器2と改質器3とを接続する流路20の途中には、水蒸発器7で生成された水蒸気が流れる流路21が接続されている。そのため、改質器3には、水添脱硫器2で硫黄化合物が除去された原燃料ガスと、水蒸発器7で生成された水蒸気とが供給される。
【0030】
改質器3は、水添脱硫器2から供給される原燃料ガスを水蒸気改質反応により水素を含む燃料ガスに改質する機器である。改質器3は、例えばニッケルを含む水蒸気改質触媒を含んで構成されている。改質器3は、水添脱硫器2側の流路から供給される原燃料ガスと水蒸気を、燃焼器8からオフガス流路12を流れる燃焼ガスとの熱交換により加熱する。そして、改質器3は、その加熱した原燃料ガスと水蒸気を触媒の存在のもとで水蒸気改質反応させて水素を含む燃料ガスに改質する。
【0031】
具体的には、改質器3は、以下の反応式F5に示す改質反応、および反応式F6に示すシフト反応により、水素と一酸化炭素を含む燃料ガスを生成する。
【0032】
CH+HO→CO+H …(F5)
CO+HO→CO+H …(F6)
【0033】
なお、改質器3から吐き出される燃料ガスの温度は、例えば500~700℃程度である。その燃料ガスには、水素と一酸化炭素の他に水蒸気改質反応で使用されなかった水蒸気などが含まれている。
【0034】
改質器3で生成された燃料ガスの一部は、燃料電池5の燃料極に供給され、燃料電池5の発電に用いられる。また、改質器3で生成された燃料ガスのうち燃料電池5に供給されるものを除く一部は水添脱硫器2に供給され、原燃料ガスからの硫黄化合物の除去に用いられる。そのため、改質器3から燃料電池5に燃料ガスを供給する燃料ガス流路22の途中には、循環流路4の一端が接続されている。その循環流路4の他端は、燃料ポンプ19の上流側の燃料配管18に接続されている。すなわち、循環流路4は、改質器3から吐き出された燃料ガスの一部を水添脱硫器2に供給するための流路である。本実施形態での説明では、循環流路4の一端と燃料ガス流路との接続部を循環流路4の入口41と呼び、循環流路4の他端と燃料配管18との接続部を循環流路4の出口42と呼ぶこととする。なお、循環流路4は、このような構成に限らず、改質器3または改質器3より下流側で水素の流れる流路と、水添脱硫器2または水添脱硫器2より上流側の流路とを接続する構成であればよい。本実施形態では、循環流路4の入口41に流入する燃料ガスの温度は、例えば300~500℃程度である。
【0035】
循環流路4の途中には、入口41側から熱交換器43、排水路44の分岐部45、流量調整弁46がこの順に設けられている。
流量調整弁46は、循環流路4のうち熱交換器43より下流側に設けられ、循環流路4を流れる燃料ガスの流量を調整するものである。流量調整弁46により、改質器3から吐き出された燃料ガスの一部が循環流路4を経由して水添脱硫器2に供給される流量を調整することが可能である。本実施形態では、流量調整弁46は、所定の温度(例えば50℃)で正常に作動することが保証されているものとする。
【0036】
なお、循環流路4の出口42より下流側(すなわち水添脱硫器2の上流側)の燃料配管18には燃料ポンプ19が設けられている。燃料ポンプ19は、燃料配管18を流れる原燃料ガスと、循環流路4の出口42から燃料配管18に流入する燃料ガスとを水添脱硫器2に向けて圧送する。本実施形態では、燃料ポンプ19も、所定の温度(例えば50℃)で正常に作動することが保証されているものとする。
【0037】
循環流路4の途中に設けられる熱交換器43は、循環流路4の入口41に流入する燃料ガスの温度(例えば300~500℃)を、流量調整弁46および燃料ポンプ19が正常に作動する温度(例えば50℃)に低下させる機能を有している。本実施形態では、熱交換器43は、その配管内を流れる燃料ガスを、配管の周囲の空気へ放熱させることで冷却する。なお、配管の周囲の空気へ放熱は、自然放熱でもよく、または、必要に応じて後述の第5実施形態で説明するように換気ファンを用いた強制放熱としてもよい。
【0038】
上述したように、循環流路4を流れる燃料ガスには、水素および水蒸気などが含まれている。そのため、循環流路4を流れる燃料ガスが熱交換器43で冷却され、燃料ガスの温度が露点温度よりも低下すると、燃料ガスに含まれる水蒸気が凝縮し、凝縮水が発生する。なお、燃料ガスの露点温度は、燃料ガスに含まれる水蒸気の割合により変化するが、本実施形態では、説明の便宜上、燃料ガスの露点温度を例えば60℃wetとして説明する。なお、燃料ガスの露点温度は、水素生成装置1の運転条件などに応じた燃料ガス中の水蒸気の割合により変化するものである。
【0039】
熱交換器43は、入口41側に設けられる顕熱区間47と、その顕熱区間47より下流側に設けられる潜熱区間48とを有している。
顕熱区間47は、熱交換器43を流れる燃料ガスに含まれる水蒸気の凝縮が無いか、または、凝縮量が少ない区間である。すなわち、顕熱区間47は、その区間を流れる燃料ガスの顕熱の放出量が、潜熱区間48を流れる燃料ガスの顕熱の放出量に比べて大きい区間である。顕熱区間47は、水蒸気の凝縮が無いかまたは凝縮量が少ないので、水平に対する配管の傾斜角を小さくしている区間である。したがって、顕熱区間47は、配管の下り勾配を緩やかにしている区間であることから「緩傾斜区間」と呼ぶこともできる。なお、顕熱区間47は、その一部に水平領域を含んでいてもよい。
【0040】
一方、潜熱区間48は、熱交換器43を流れる燃料ガスに含まれる水蒸気が凝縮する、または、凝縮量が多い区間である。すなわち、潜熱区間48は、その区間を流れる燃料ガスの潜熱の放出量が、顕熱区間47を流れる燃料ガスの潜熱の放出量に比べて大きい区間である。潜熱区間48は、水蒸気が凝縮するかまたは凝縮量が多いので、その凝縮水が配管内を自重により流下可能なように、水平に対する配管の傾斜角を大きくしている区間である。したがって、潜熱区間48は、配管の下り勾配を急峻にしている区間であることから「急傾斜区間」と呼ぶこともできる。
【0041】
なお、顕熱区間47と潜熱区間48との接続箇所49は、燃料ガスがその露点温度(例えば60℃wet)となる場所に設定することか好ましい。ただし、上述したように、燃料ガスの露点温度は、燃料ガスに含まれる水蒸気の割合により変化するものである。また、循環流路4の入口41に流入する燃料ガスの温度や、循環流路4を流れる燃料ガスの流量などは、水素生成装置1の運転条件により変化する。また、熱交換器43の周囲の温度も環境などにより変化する。そのため、顕熱区間47と潜熱区間48との接続箇所49は、種々の運転条件において適切となる位置に設定される。なお、実際には、顕熱区間47と潜熱区間48との接続箇所49よりも上流側の位置から燃料ガスに含まれる水蒸気の凝縮が開始される場合もある。或いは、顕熱区間47と潜熱区間48との接続箇所49よりも下流側の位置から燃料ガスに含まれる水蒸気の凝縮が開始される場合もある。
【0042】
すなわち、燃料ガス中の水蒸気の混合割合によって露点温度は変化するため、凝縮開始点は必ずしも傾斜角をきつくした潜熱区間48で起こるとは限らない。つまり、傾斜のゆるい顕熱区間47で凝縮する可能性がある。その場合は、当初設定よりも潜熱区間48の配管長を長く設定することで、凝縮水を排水しながらも、従来案よりも熱交換器43の高さを低くすることができる。
【0043】
循環流路4のうち潜熱区間48より下流側には排水路44の分岐部45が設けられている。その分岐部から排水路44が延びている。排水路44は、熱交換器43で凝縮した水を熱交換器43および循環流路4から排出するための流路である。排水路44の途中には逆止弁53が設けられている。排水路44を流れる水は、水タンク16に貯められる。
【0044】
ここで、本実施形態の熱交換器43と比較例の熱交換器430について、図2および図3を参照して説明する。
【0045】
図2は、本実施形態の熱交換器43の配管を模式的に示した断面図である。図2では、熱交換器43の入口50から中間位置51までが顕熱区間47であり、中間位置51から出口52までが潜熱区間48である。顕熱区間47の長さをL1、潜熱区間48の長さをL2とする。潜熱区間48は、配管内を水滴Wが流下可能な下り勾配に形成されている。一方、顕熱区間47は、潜熱区間48よりも緩やかな下り勾配に形成されている。
【0046】
熱交換器43の入口50から配管内を流れる燃料ガスは、配管の周囲の空気(以下、「周囲空気」という)と熱交換する。入口50の燃料ガスの温度は約300℃、周囲空気の温度は約40℃とする。燃料ガスは、周囲空気に放熱して冷却される。燃料ガスは、顕熱区間47で顕熱を放出し、中間位置51の付近で露点温度(約60℃)となり、潜熱区間48で水蒸気の凝縮と共に潜熱を放出する。潜熱区間48で発生した水滴Wは、自重によって配管内を流下し、熱交換器43の出口52から排出される。出口52の燃料ガスの温度は約50℃とする。
【0047】
それに対し、図3は、比較例の熱交換器430の配管を模式的に示した断面図である。図3においても、熱交換器430の入口500から中間位置510までが顕熱区間470に相当し、中間位置510から出口520までが潜熱区間480に相当する。図3に示す比較例の熱交換器430の顕熱区間470の長さL1および潜熱区間48の長さL2は、図2で示す本実施形態の熱交換器43の顕熱区間47の長さL1および潜熱区間48の長さL2と同一である。比較例においても、潜熱区間480は、配管内を水滴Wが流下可能な下り勾配に形成されている。比較例では、顕熱区間470が、潜熱区間480と同一の下り勾配に形成されている。
【0048】
比較例においても、熱交換器430の入口500から配管内を流れる燃料ガスは、周囲空気と熱交換する。入口500の燃料ガスの温度は約300℃、周囲空気の温度は約40℃とする。燃料ガスは、周囲空気に放熱して冷却される。燃料ガスは、顕熱区間470で顕熱を放出し、中間位置510の付近で露点温度(約60℃)となり、潜熱区間480で水蒸気の凝縮と共に潜熱を放出する。潜熱区間480で発生した水滴Wは、自重によって配管内を流下し、熱交換器430の出口520から排出される。出口520の燃料ガスの温度は約50℃とする。
【0049】
ここで、図2に示した本実施形態の熱交換器43の有する顕熱区間47の上下方向の距離をH1とし、図3に示した比較例の熱交換器430の有する顕熱区間470の上下方向の距離をH2とする。比較例では、顕熱区間470と潜熱区間480とが同一の下り勾配に形成されている。そのため、本実施形態の顕熱区間47の上下方向の距離H1は、比較例の顕熱区間470の上下方向の距離H2よりも小さくなっている。したがって、本実施形態の熱交換器43は、比較例の熱交換器430に対し、凝縮水の排水性を確保しつつ、上下方向の体格を小型化することが可能である。
【0050】
以上説明した本実施形態の水素生成装置1および燃料電池システム10は、次の作用効果を奏するものである。
(1)本実施形態では、循環流路4の途中に、循環流路4を流れる燃料ガスを冷却する熱交換器43が設けられている。その熱交換器43は、燃料ガスから凝縮した水滴が流路内を流下可能な下り勾配に流路が形成された潜熱区間48と、その潜熱区間48よりも改質器3側で潜熱区間48よりも緩やかな下り勾配に流路が形成された顕熱区間47とを有している。
【0051】
これによれば、熱交換器43のうち改質器3側に配置される顕熱区間47には、改質器3から吐出される高温の燃料ガスが流れる。そのため、顕熱区間47では、燃料ガスに含まれる水蒸気の凝縮が無いかまたは凝縮量が少ない。そこで、顕熱区間47では下り勾配を緩やかにすることで、顕熱区間47の上下方向の体格を小型化することが可能である。一方、顕熱区間47より下流側に設けられる潜熱区間48には顕熱区間47に比べて低温の燃料ガスが流れる。そのため、潜熱区間48では、燃料ガスに含まれる水蒸気が凝縮する、または凝縮量が多くなる。そこで、潜熱区間48では下り勾配を大きくすることで、燃料ガスから凝縮した液体を自重により流下させ、潜熱区間48に液体が滞留することを防ぐことが可能である。したがって、この水素生成装置1は、循環流路4の途中の熱交換器43に潜熱区間48と顕熱区間47とを設けることで、熱交換器43の排水性を確保すると共に、その体格を小型化することができる。
【0052】
(2)本実施形態では、循環流路4のうち潜熱区間48より下流側の流路に流量調整弁46を備えている。流量調整弁46は、循環流路4を流れる燃料ガスの流量を調整する。
これによれば、循環流路4に流量調整弁46を設けた場合、改質器3から吐出される高温の燃料ガス(例えば500~700℃)を熱交換器43により、流量調整弁46が正常に作動する温度(例えば50℃)に低下する必要がある。このように熱交換器43で低下させる温度が大きい場合、熱交換器43の有する配管を長くして燃料ガスの放熱量を増加させることが考えられる。その場合、上記特許文献1に記載の技術によれば、熱交換器の有する配管を長くすることに伴って熱交換器が大型化するおそれがあった。
そこで、本実施形態では、熱交換器43に流路の下り勾配が小さい顕熱区間47を設けることで、熱交換器43の配管を長くして放熱量を増加した場合でも、熱交換器43の体格が上下方向に大型化することを防ぎ、流量調整弁46が正常に作動する温度に燃料ガスの温度を低下することができる。
【0053】
(3)本実施形態では、熱交換器43内で凝縮した液体を循環流路4から排出する排水路44を備えている。その排水路44は、循環流路4のうち潜熱区間48より下流側に接続されている。
これによれば、熱交換器43の主に潜熱区間48で凝縮した液体を排水路44から排出することで、潜熱区間48に液体が滞留することを防ぐことが可能である。
【0054】
(4)本実施形態では、循環流路4を流れる燃料ガスを原燃料ガスと共に水添脱硫器2に圧送供給する燃料ポンプ19を備えている。
これによれば、燃料ポンプ19の動力により、改質器3から吐き出された燃料ガスの一部を循環流路4を経由して水添脱硫器2に供給することが可能である。その場合、改質器3から吐出される高温の燃料ガス(例えば500~700℃)を熱交換器43により、燃料ポンプ19が正常に作動する温度(例えば50℃)に低下する必要がある。このように熱交換器43で低下させる温度が大きい場合、上記特許文献1に記載の技術によれば熱交換器の有する配管を長くすることに伴って熱交換器が大型化するおそれがあった。
そこで、本実施形態では、熱交換器43に流路の下り勾配が小さい顕熱区間47を設けることで、熱交換器43の配管を長くして放熱量を増加した場合でも、熱交換器43の体格が上下方向に大型化することを防ぎ、燃料ポンプ19が正常に作動する温度に燃料ガスの温度を低下することができる。
【0055】
(5)本実施形態では、改質器3から吐き出された水素を含む燃料ガスのうち循環流路4に流れる燃料ガスを除く燃料ガスは、水素を含む燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により電気エネルギを出力する固体酸化物型の燃料電池5に供給されるように構成されている。
これによれば、水素生成装置1は、燃料電池5を備える燃料電池システム10に適用されるものである。一般に、この種の燃料電池システム10は、定置式のものが多く、設置性を良くするために設置面積を小さくすることで、その分、高さ方向の寸法が大きくなる傾向にある。しかし、燃料電池システム10の高さが高くなると、室内や軒下での設置が制限され、さらに、重心が高くなり転倒防止の設置制約も発生するといった問題がある。そこで、本実施形態では、燃料電池システム10が備える熱交換器43に流路の下り勾配が小さい顕熱区間47を設けることで、その体格を小型化することが可能である。これにより、燃料電池システム10の上下方向の体格を小型化し、設置性を良くすることができる。
【0056】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対して循環流路4の途中に設けられる熱交換器43の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0057】
図4に示すように、第2実施形態では、循環流路4の途中に設けられる熱交換器43は、螺旋形状に形成された配管によって構成されている。この熱交換器43は、螺旋形状の軸芯(不図示)が上下方向となるように配置されている。そして、この螺旋形状の熱交換器43も、入口側に設けられる顕熱区間47と、その顕熱区間47より下流側に設けられる潜熱区間48とを有している。
【0058】
顕熱区間47は、上記第1実施形態で説明したように、配管内を流れる燃料ガスに含まれる水蒸気の凝縮が無いか、または、凝縮量が少ない区間である。顕熱区間47は、水平に対する配管の傾斜角を小さくしている区間である。本実施形態の顕熱区間47は、連続した下り勾配となっている。ただし、顕熱区間47は、その一部に水平領域を含んでいてもよい。
【0059】
潜熱区間48も、上記第1実施形態で説明したように、配管内を流れる燃料ガスに含まれる水蒸気が凝縮する、または、凝縮量が多い区間である。潜熱区間48は、凝縮水が配管内を自重により流下可能なように、水平に対する配管の傾斜角を大きくしている区間である。潜熱区間48も、連続した下り勾配となっている。
【0060】
顕熱区間47において上下に隣り合う配管のピッチをP1とする。一方、潜熱区間48において上下に隣り合う配管のピッチをP2とする。このとき、P1<P2の関係にある。これにより、顕熱区間47の配管の下り勾配を小さくすることが可能である。
【0061】
以上説明した第2実施形態では、水素生成装置1および燃料電池システム10が備える熱交換器43が、上下方向に配置される所定の軸芯周りに螺旋形状に形成された配管により構成されている。そして、この熱交換器43は、顕熱区間47における上下に隣り合う配管のピッチP1を、潜熱区間48における上下に隣り合う配管のピッチP2よりも小さくすることで、顕熱区間47の配管の下り勾配を小さくしている。これにより、第2実施形態では、熱交換器43の配管の長さを長くした場合でも、上下方向の体格を小型化できると共に、水平方向の体格も小型化することができる。
【0062】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。第3実施形態も、第1実施形態等に対して循環流路4の途中に設けられる熱交換器43の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態等と同様であるため、第1実施形態等と異なる部分についてのみ説明する。
【0063】
図5に示すように、第3実施形態では、循環流路4の途中に設けられる熱交換器43は、下り勾配を所定の間隔で折り返した配管によって構成されている。この熱交換器43も、入口側に設けられる顕熱区間47と、その顕熱区間47より下流側に設けられる潜熱区間48とを有している。
【0064】
顕熱区間47は、上記第1実施形態等で説明したように、配管内を流れる燃料ガスに含まれる水蒸気の凝縮が無いか、または、凝縮量が少ない区間である。顕熱区間47は、水平に対する配管の傾斜角を小さくしている区間である。本実施形態の顕熱区間47は、連続した下り勾配となっている。ただし、顕熱区間47は、その一部に水平領域を含んでいてもよい。
【0065】
潜熱区間48も、上記第1実施形態等で説明したように、配管内を流れる燃料ガスに含まれる水蒸気が凝縮する、または、凝縮量が多い区間である。潜熱区間48は、凝縮水が配管内を自重により流下可能なように、水平に対する配管の傾斜角を大きくしている区間である。潜熱区間48も、連続した下り勾配となっている。
【0066】
顕熱区間47において上下に隣り合う配管のピッチをP3とする。一方、潜熱区間48において上下に隣り合う配管のピッチをP4とする。このとき、P3<P4の関係にある。これにより、顕熱区間47の配管の下り勾配を小さくすることが可能である。
【0067】
以上説明した第3実施形態は、水素生成装置1および燃料電池システム10が備える熱交換器43が、下り勾配を所定の間隔で折り返した配管により構成されている。そして、この熱交換器43は、顕熱区間47における上下に隣り合う配管のピッチP3を、潜熱区間48における上下に隣り合う配管のピッチP4よりも小さくすることで、顕熱区間47の配管の下り勾配を小さくしている。これにより、第3実施形態では、熱交換器43の配管の長さを長くした場合でも、上下方向の体格を小型化できると共に、水平方向の体格、および、奥行き方向の体格も小型化することができる。
【0068】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。第4実施形態は、燃料電池システム10を具体的に説明するものである。
【0069】
図6に示すように、第4実施形態では、燃料電池システム10の各構成が筐体30の内側に設けられている。その筐体30の内側において、燃料電池システム10の各構成のうち、水添脱硫器2、改質器3、燃料電池5、空気予熱器6、水蒸発器7および燃焼器8などはホットモジュール31として一体に構成されている。一方、燃料ポンプ19、水ポンプ17、空気ブロア11、水タンク16、循環流路4および熱交換器43などは、筐体30の内側においてホットモジュール31の外側に設けられている。なお、第4実施形態では、熱交換器43として、上記第2実施形態で説明した螺旋形状のもの、または、上記第3実施形態で説明した下り勾配を所定の間隔で折り返したものが採用されている。熱交換器43は、下り勾配の緩い顕熱区間47と、下り勾配が急峻な潜熱区間48とを有している。
【0070】
筐体30は、熱交換器43の上部に換気口32を備えている。これにより、筐体30の内側の空気を換気口32から外へ排出し、熱交換器43による燃料ガスの冷却性能を高めることが可能である。
【0071】
以上説明したように、第4実施形態の燃料電池システム10は筐体30に格納されている。このような燃料電池システム10は、定置式のものが多く、設置性を良くするために設置面積を小さくすることで、その分、高さ方向の寸法が大きくなる傾向にある。しかし、燃料電池システム10の高さが高くなると、室内や軒下での設置が制限され、さらに、重心が高くなり転倒防止の設置制約も発生するといった問題がある。そこで、第4実施形態においても、燃料電池システム10が備える熱交換器43に流路の下り勾配が小さい顕熱区間47を設けることで、その体格を小型化することが可能である。これにより、燃料電池システム10の上下方向の体格を小型化し、設置性を良くすることができる。
【0072】
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。図7に示すように、第5実施形態の燃料電池システム10は、換気ファン33を備えている。換気ファン33は、熱交換器43の周囲に空気の流れを形成するものである。そのため、熱交換器43は、換気ファン33の駆動により熱交換器43の周囲を流れる空気と燃料ガスとを熱交換させることで燃料ガスを冷却することが可能である。
【0073】
なお、図7では、換気ファン33は、熱交換器43の側面に配置されているが、換気ファン33の配置はこれに限るものではない。換気ファン33は、熱交換器43の下または上に配置することも可能である。そして、換気ファン33は、熱交換器43に風を吹き付ける構成としてもよく、または、熱交換器43の周囲から空気を吸い込む構成としてもよい。
【0074】
以上説明した第5実施形態では、換気ファン33を利用した強制空冷により、熱交換器43を流れるガスを冷却することが可能である。そのため、熱交換器43によるガスの冷却性能を高め、ガスの温度を流量調整弁46および燃料ポンプ19が正常に作動する温度に低下することができる。
【0075】
(第6実施形態)
第6実施形態について説明する。第6実施形態では、水素生成装置1について説明する。図8に示すように、水素生成装置1は、水添脱硫器2、改質器3、循環流路4、排水路44、水蒸発器7、流量調整弁46、燃料ポンプ19などを備えている。循環流路4の途中に設けられる熱交換器43は、顕熱区間47と潜熱区間48とを有している。これらの構成は、第1実施形態等で説明したものと同一であるので、その説明を省略する。
【0076】
第6実施形態では、水素生成装置1で生成した水素を含むガスを、燃料電池システム10に限らず、種々の用途に用いることが可能である。
【0077】
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、循環流路4の途中に流量調整弁46を設けたが、これに限らず、例えば、循環流路4の途中に流量調整弁46に代えてオリフィスなどの固定絞りを設けてもよい。
【0078】
(2)上記各実施形態では、循環流路4の入口41を改質器3と燃料電池5とを接続する燃料ガス流路22の途中に設けたが、これに限らず、例えば、循環流路4の入口41は、改質器3に接続してもよい。または、循環流路4の入口41は、燃料電池5と燃焼器8とを接続する流路の途中に設けてもよい。
【0079】
(3)上記各実施形態では、循環流路4の出口42を燃料ポンプ19の上流側の燃料配管18に設けたが、これに限らず、例えば、循環流路4の出口42は、水添脱硫器2に接続してもよい。または、循環流路4の出口42は、燃料ポンプ19と水添脱硫器2との間の燃料配管18に接続してもよい。なお、それらの場合、循環流路4にエジェクタ等を設けることが好ましい。
【0080】
(4)上記各実施形態では、循環流路4の途中に設けた熱交換器43を配管によって構成したが、これに限らず、例えば、熱交換器43は配管に加えて放熱フィンなどを備えていてもよい。
【0081】
(5)上記各実施形態では、顕熱区間47と潜熱区間48を接続箇所49にて接続したが、これに限らず、例えば、顕熱区間47から潜熱区間48にかけて傾斜角を次第に大きくしてもよい。その場合、接続箇所49は、所定の長さを有するものとしてもよい。
【0082】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0083】
1 水素生成装置
2 水添脱硫器
3 改質器
4 循環流路
43 熱交換器
47 顕熱区間
48 潜熱区間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8