(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
E05F 15/41 20150101AFI20231212BHJP
E05F 15/643 20150101ALN20231212BHJP
【FI】
E05F15/41
E05F15/643
(21)【出願番号】P 2021026044
(22)【出願日】2021-02-22
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】辻 佑斗
(72)【発明者】
【氏名】生田 規之
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-345765(JP,A)
【文献】特開2001-254567(JP,A)
【文献】特開2006-307577(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0212335(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00-15/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動ドアにおけるドアの開閉動作を制御する制御装置であって、
前記ドアの開閉動作の駆動力を発生する駆動モータと、
前記駆動モータを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、記憶部と、実情報取得部と、原点復帰処理部と、判定部と、を備え、
前記ドアの開閉動作中に変化する前記駆動モータのトルクを示す情報を動作中トルク情報として、
前記記憶部は、正常に前記ドアが開閉動作を行う場合の基準となる前記動作中トルク情報である基準トルク情報を記憶し、
前記実情報取得部は、実際に前記ドアが開閉動作を行っている間の前記動作中トルク情報である実トルク情報を取得し、
前記原点復帰処理部は、前記ドアの現在位置の認識精度が低下する特定状況になったと判定した場合に、通常の前記ドアの開閉動作中の上限速度よりも低い速度を制限速度として、前記制限速度以下の速度で前記ドアを基準位置まで移動させる原点復帰処理を実行し、
前記原点復帰処理の実行中における、一定の値に設定された前記駆動モータのトルクを復帰中基準トルクとして、
前記判定部は、通常の前記ドアの開閉動作中は、前記実トルク情報に示されるトルクと前記基準トルク情報に示されるトルクとの差が第1規定値以上である場合に動作異常と判定する第1異常判定処理を実行し、前記原点復帰処理の実行中は、前記実トルク情報に示されるトルクと前記復帰中基準トルクとの差が、前記第1規定値と同じ又は異なる値の第2規定値以上である場合に動作異常と判定する第2異常判定処理を、前記ドアの移動速度が一定である間のみ実行する、制御装置。
【請求項2】
前記第2規定値は、前記第1規定値よりも小さい値である、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記ドアの開閉方向の絶対位置を検出するセンサ、及び、前記駆動モータの回転方向の絶対位置を検出するセンサのいずれも備えず、
前記特定状況は、通常の前記ドアの開閉動作中に前記動作異常と判定された後の状況、及び、前記駆動モータへの電力供給が遮断されてから電力供給が再開した後の状況、の少なくともいずれかである、請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、差分トルク導出部と、ノイズ除去部と、入力時期調整部と、を更に備え、
前記差分トルク導出部は、前記実トルク情報に示されるトルクと前記基準トルク情報に示されるトルクとの差である差分トルクを導出し、
前記ノイズ除去部は、前記実トルク情報に示されるトルク又は前記差分トルクから高調波成分を除去し、
前記入力時期調整部は、前記差分トルク導出部に入力される前記実トルク情報と前記基準トルク情報との時間軸を合わせるように、前記基準トルク情報に示されるトルクの前記差分トルク導出部への入力時期を調整する、請求項1から3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記基準トルク情報に含まれるトルクのサンプリング周期が、前記実トルク情報に含まれるトルクのサンプリング周期と同じである、請求項1から4のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記ドアの移動速度が増加又は減少している間の前記第1規定値を、前記ドアの移動速度が一定である間の前記第1規定値よりも大きく設定する、請求項1から5のいずれか一項に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動ドアにおけるドアの開閉動作を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような制御装置の一例が、特開2000-345765号公報(特許文献1)に開示されている。以下、この背景技術の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1の制御装置(6)は、ドア(21)を開閉駆動するモータ(41)の負荷トルク(s6)を検出し、負荷トルク(s6)が安全トルク閾値(s9)を上回ったときに、モータ(41)に安全動作のための駆動信号(s3)を出力するように構成されている。制御装置(6)は、安全トルク閾値(s9)を算出する安全関数発生器(65)を備えており、安全関数発生器(65)は、開閉位置信号(s7)及び開閉速度信号(s8)を受けて、ドア(21)を駆動させるために必要なトルク値に、ドア(21)への支障外力となるトルク値を加算して、安全トルク閾値(s9)を算出する(段落0015参照)。特許文献1によれば、ドア(21)を開閉駆動するだけでも大きいトルク変動が生じるような伝達機構においても、安全トルク閾値(s9)をそのトルク変動を基準にして定めることにより、確実にトルク異常を検出することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の段落0018には、ドア開閉装置の初動時にドアが全開位置と全閉位置との間に位置するときは、開閉位置信号の基準位置が校正されていないため、ドアを遅い速度で全開位置又は全閉位置まで移動させて、ドアの基準位置を校正することが記載されている。自動ドアにおける異物の挟み込み等の動作異常は、基準位置の校正のためにドアを移動させている間のように、ドアの現在位置の認識精度が低下する状況になった後の原点復帰動作の実行中にも起こり得る。しかしながら、特許文献1の技術では、このような原点復帰動作の実行中に動作異常を検出することについて考慮されていない。
【0006】
そこで、ドアの現在位置の認識精度が低下する状況になった後の原点復帰動作の実行中にも、動作異常の判定を適切に行うことが可能な制御装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る制御装置は、自動ドアにおけるドアの開閉動作を制御する制御装置であって、前記ドアの開閉動作の駆動力を発生する駆動モータと、前記駆動モータを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、記憶部と、実情報取得部と、原点復帰処理部と、判定部と、を備え、前記ドアの開閉動作中に変化する前記駆動モータのトルクを示す情報を動作中トルク情報として、前記記憶部は、正常に前記ドアが開閉動作を行う場合の基準となる前記動作中トルク情報である基準トルク情報を記憶し、前記実情報取得部は、実際に前記ドアが開閉動作を行っている間の前記動作中トルク情報である実トルク情報を取得し、前記原点復帰処理部は、前記ドアの現在位置の認識精度が低下する特定状況になったと判定した場合に、通常の前記ドアの開閉動作中の上限速度よりも低い速度を制限速度として、前記制限速度以下の速度で前記ドアを基準位置まで移動させる原点復帰処理を実行し、前記原点復帰処理の実行中における、一定の値に設定された前記駆動モータのトルクを復帰中基準トルクとして、前記判定部は、通常の前記ドアの開閉動作中は、前記実トルク情報に示されるトルクと前記基準トルク情報に示されるトルクとの差が第1規定値以上である場合に動作異常と判定する第1異常判定処理を実行し、前記原点復帰処理の実行中は、前記実トルク情報に示されるトルクと前記復帰中基準トルクとの差が、前記第1規定値と同じ又は異なる値の第2規定値以上である場合に動作異常と判定する第2異常判定処理を、前記ドアの移動速度が一定である間のみ実行する。
【0008】
本構成によれば、通常のドアの開閉動作中は、第1異常判定処理の実行により動作異常の判定を行うことができ、ドアの現在位置の認識精度が低下する特定状況になった後の原点復帰処理の実行中は、第2異常判定処理の実行により動作異常の判定を行うことができる。ここで、第1異常判定処理では、動作異常の判定基準となるトルク(具体的には、実トルク情報に示されるトルクと比較されるトルク)が、基準トルク情報に示されるトルクとされるのに対して、第2異常判定処理では、動作異常の判定基準となるトルクが、一定の値に設定された復帰中基準トルクとされている。基準トルク情報は、正常にドアが開閉動作を行う場合の、開閉動作中に変化するトルクを示す情報である。そのため、特定状況において基準トルク情報に示されるトルクを動作異常の判定基準として用いると、ドアの現在位置の認識誤差によって動作異常の判定を適切に行うことができないおそれがある。これに対して、本構成では、第2異常判定処理では、一定の値に設定された復帰中基準トルクを動作異常の判定基準として用いるため、原点復帰処理の実行中にも動作異常の判定を適切に行うことが可能となっている。
【0009】
ところで、ドアの移動速度が増加又は減少している間は、一般に、ドアの移動速度が一定である間に比べて大きなトルクリップルが発生しやすい。この点に関して、本構成では、原点復帰処理の実行中は、ドアの移動速度が一定である間のみ第2異常判定処理が実行される。そのため、一定の値に設定された復帰中基準トルクを動作異常の判定基準として用いても、動作異常の判定を適切に行いやすい。
【0010】
以上のように、本構成によれば、ドアの現在位置の認識精度が低下する状況になった後の原点復帰動作の実行中にも、動作異常の判定を適切に行うことが可能となっている。
【0011】
制御装置の更なる特徴と利点は、図面を参照して説明する実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】自動ドアが設けられた物品搬送設備の概略平面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
制御装置の実施形態について、図面を参照して説明する。制御装置100は、自動ドア20におけるドア21の開閉動作を制御する装置である。
図1に示すように、ドア21は、開口部22を開閉するように設けられる。ドア21は、例えば、上下方向又は水平方向にスライド移動して開口部22を開閉するスライド式ドアとされる。なお、ドア21は、揺動軸回りに揺動して開口部22を開閉する揺動式ドア等の、スライド式以外の形態のものであってもよい。また、ドア21は、単数の扉体を備えたものであっても複数の扉体を備えたものであってもよい。
【0014】
自動ドア20は、あらゆる設備に設けられ、一例として、
図1に示すような物品搬送設備30に設けられる。
図1に示す例では、物品搬送設備30は、物品37を収納する複数の収納部34を備えた収納棚33と、入出庫部35に又は入出庫部35から物品37を搬送するコンベヤ36と、レール32に沿って走行して入出庫部35と収納部34との間で物品37を搬送するスタッカクレーン31と、を備えている。そして、自動ドア20は、コンベヤ36による物品37の搬送経路上に設けられている。具体的には、コンベヤ36による物品37の搬送経路は、壁部23を貫通するように形成されており、壁部23における当該搬送経路が貫通する部分に、自動ドア20のドア21によって開閉される開口部22が形成されている。コンベヤ36による物品37の搬送動作時には、開口部22を開くようにドア21が制御され、コンベヤ36による物品37の搬送動作の停止時には、開口部22を閉じるようにドア21が制御される。
【0015】
このように、
図1に示す例では、ドア21によって開閉される開口部22は、物品37を通過させるためのものであるが、これに限らず、ドア21によって開閉される開口部22は、例えば、物品37を搬送する搬送装置(例えば、スタッカクレーン31)或いは作業者を通過させるためのものであってもよい。また、
図1に示す例では、ドア21によって開閉される開口部22は、壁部23に設けられているが、これに限らず、開口部22は、例えば、床部に設けられてもよい。更に、ドア21の用途は、例えば気密性を確保するためとされるが、これに限らず、例えば、防火或いは安全のためであってもよい。
【0016】
図2に示すように、制御装置100は、ドア21の開閉動作の駆動力を発生する駆動モータ2を備えている。駆動モータ2は、例えばサーボモータとされる。制御装置100は、更に、駆動モータ2の駆動力をドア21に伝達する駆動伝達機構3を備えている。駆動伝達機構3は、例えば、プーリとプーリに巻かれたベルトとを用いて動力を伝達するベルト式の伝達機構とされる。なお、駆動伝達機構3は、リンクを用いて動力を伝達するリンク式の伝達機構等の、ベルト式以外の伝達機構であってもよい。
【0017】
図2に示すように、制御装置100は、駆動モータ2を制御する制御部1を備えている。制御部1は、記憶部16と、実情報取得部14と、原点復帰処理部11と、判定部13と、を備えている。制御部1は、更に、指令部10と、駆動制御部12と、差分トルク導出部15と、ノイズ除去部17と、入力時期調整部18と、給電部19と、を備えている。制御部1の各機能は、演算処理装置等のハードウェアと、当該ハードウェア上で実行されるプログラムとの協働により実現される。記憶部16は、例えば、フラッシュメモリやハードディスク等の記憶媒体を備える。制御部1の複数の構成要素は、互いに情報の受け渡しを行うことが可能に構成されている。なお、
図2に示す制御部1の各構成要素は、少なくとも論理的に区別されるものであり、物理的には必ずしも区別される必要はない。
【0018】
指令部10は、駆動制御部12に対して指令を出力する機能部である。本実施形態では、指令部10は、ドア21を開閉動作させるためのドア21の移動速度パターン(
図3に例示するような移動速度のパターン)に応じた、設定時間毎(演算周期毎)の目標速度を生成し、目標速度に応じた速度指令を駆動制御部12に出力する。
図3に例示する移動速度パターンには、ドア21の移動速度が増加する加速期間(時刻T1までの期間)、ドア21の移動速度が一定である定速期間(時刻T1から時刻T2までの期間)、及び、ドア21の移動速度が減少する減速期間(時刻T2から時刻T3までの期間)が、順に規定されている。また、
図4に例示する移動速度パターンには、加速期間(時刻T11までの期間)、第1の定速期間(時刻T11から時刻T12までの期間)、第1の減速期間(時刻T12から時刻T13までの期間)、第2の定速期間(時刻T13から時刻T14までの期間)、及び、第2の減速期間(時刻T14以降の期間)が、順に規定されている。なお、指令部10が、移動速度パターンに応じた設定時間毎の目標位置を生成し、目標位置に応じた位置指令を駆動制御部12に出力する構成とすることもできる。
【0019】
移動速度パターンは、ドア21を現在位置から目標位置に移動させるためのパターンとされる。目標位置は、基本的に、全開位置又は全閉位置とされる。現在位置も、基本的に、全開位置又は全閉位置とされるが、ドア21の開閉動作中に動作異常と判定されてドア21の移動が停止された場合には、全開位置と全閉位置との間の位置が、現在位置となり得る。指令部10は、ドア21の開閉動作中に動作異常と判定された場合には、例えば、ドア21をそれまでとは反対方向に移動させた後に(すなわち、反転動作させた後に)停止させる。詳細は後述するが、動作異常の判定は判定部13によって行われる。
【0020】
駆動制御部12は、指令部10から入力される指令に応じて駆動モータ2を駆動する機能部である。駆動制御部12は、指令部10から入力される指令に追従するように、フィードバック制御により駆動モータ2を駆動する。具体的には、駆動制御部12は、指令部10から入力される指令と、当該指令に対応するフィードバック値との偏差に基づき、駆動指令(トルク指令)を生成する。このフィードバック値は、駆動モータ2に設けられた検出器(例えば、エンコーダ)によって検出され、或いは、当該検出器による検出結果に基づき算出される。そして、駆動制御部12は、駆動指令に応じた電流指令を生成し、電流指令に応じた電流が駆動モータ2に供給されることで、駆動指令に応じたトルクを出力するように駆動モータ2の駆動が制御される。本実施形態では、駆動制御部12は、指令部10から入力される速度指令に追従するように、速度フィードバック制御により駆動モータ2を制御する。例えば、駆動モータ2がサーボモータである場合、駆動制御部12はサーボアンプとされる。
【0021】
給電部19は、電源(図示せず)の電力の駆動制御部12への給電状態を制御する機能部である。駆動制御部12は、給電部19から供給される電力を駆動モータ2に供給して、駆動モータ2を駆動する。給電部19は、指令部10からの指令に応じて、駆動制御部12への電力供給を開始し又は停止する。
【0022】
指令部10は、原点復帰処理部11を備えている。原点復帰処理部11は、ドア21の現在位置の認識精度が低下する特定状況になったと判定した場合に、原点復帰処理を実行する機能部である。原点復帰処理は、通常のドア21の開閉動作中(言い換えれば、特定状況になっていない状況でのドア21の開閉動作中)の上限速度V1よりも低い速度を制限速度V2として(
図4参照)、制限速度V2以下の速度でドア21を基準位置まで移動させる処理である。ここで、基準位置は、ドア21の開閉動作の制御における原点となる位置であり、例えば、ドア21の全開位置と全閉位置との少なくとも一方とされる。制御装置100は、ドア21が基準位置に位置することを検出するセンサ(例えば、リミットスイッチ)を備えている。
【0023】
本実施形態では、制御装置100は、ドア21の開閉方向の絶対位置を検出するセンサ、及び、駆動モータ2の回転方向の絶対位置を検出するセンサのいずれも備えていない。そのため、制御装置100は、ドア21の開閉方向の現在位置を、上述した基準位置からのドア21の移動量に基づき認識するように構成されている。基準位置からのドア21の移動量は、例えば、駆動モータ2に設けられたエンコーダやドア21の変位量を直接検出するエンコーダの検出結果に基づき取得される。
【0024】
通常のドア21の開閉動作時は、ドア21の移動開始位置は、基本的に基準位置とされる。そのため、制御部1(具体的には、指令部10)は、通常のドア21の開閉動作中、基準位置からのドア21の移動量に基づき、ドア21の現在位置を比較的高い精度で認識することができる。一方、本実施形態では、制御装置100が、ドア21の開閉方向の絶対位置を検出するセンサ、及び、駆動モータ2の回転方向の絶対位置を検出するセンサのいずれも備えていない。そのため、通常のドア21の開閉動作中に動作異常と判定されてドア21が停止された場合、ドア21が反転動作されること等によって、その後の指令部10によるドア21の現在位置の認識精度が、通常のドア21の開閉動作時に比べて低下しやすい。また、駆動モータ2への電力供給が遮断されてから電力供給が再開した後(例えば、電源のオン操作がなされた後、又は、停電後に復電した後)も、ドア21が基準位置に位置していなければ、その後の指令部10によるドア21の現在位置の認識精度が、通常のドア21の開閉動作時に比べて低下しやすい。例えば、駆動モータ2への電力供給が遮断されてから電力供給が再開した場合には、ドア21の現在位置の情報を消失している場合があり、ドア21の現在位置の情報の消失によって、その後の指令部10によるドア21の現在位置の認識精度が低下し得る。
【0025】
そこで、本実施形態では、通常のドア21の開閉動作中に動作異常と判定された後の状況や、駆動モータ2への電力供給が遮断されてから電力供給が再開した後の状況において、原点復帰処理部11が原点復帰処理を実行するように構成されている。すなわち、本実施形態では、ドア21の現在位置の認識精度が低下する特定状況は、通常のドア21の開閉動作中に動作異常と判定された後の状況、及び、駆動モータ2への電力供給が遮断されてから電力供給が再開した後の状況、の少なくともいずれかであり、ここでは双方である。なお、上記のようにドア21の現在位置の情報が消失する場合があり、本実施形態では、ドア21の現在位置の情報が消失した後の状況も、ドア21の現在位置の認識精度が低下する特定状況(具体的には、駆動モータ2への電力供給が遮断されてから電力供給が再開した後の状況)である。
【0026】
ドア21の開閉動作中は、駆動モータ2のトルクが変化する。具体的には、ドア21の開閉動作中は、ドア21の移動速度が移動速度パターン(
図3参照)に従って変化するように駆動モータ2のトルクが制御されるため、駆動モータ2のトルクは当該移動速度パターンの傾き(すなわち、速度の変化率)に応じて変化する。また、ドア21の開閉動作中は、駆動モータ2のトルクが、駆動モータ2や駆動伝達機構3の機械的構造に起因するトルクリップルによっても変化する。例えば、駆動伝達機構3におけるギヤの噛み合い周波数や回転軸の偏心に起因するトルクリップルによって、駆動モータ2のトルクは駆動モータ2の機械位置に応じて変化する。また、駆動伝達機構3におけるギヤのバックラッシュに起因するトルクリップルによって、駆動モータ2のトルクは変化し、バックラッシュに起因するトルクリップルは、駆動モータ2の回転方向を反転させて加速させる方向反転加速時等の特定の状況において大きくなる。
【0027】
このように、ドア21の開閉動作中は、駆動モータ2のトルクが変化する。ここで、ドア21の開閉動作中に変化する駆動モータ2のトルクを示す情報を、動作中トルク情報とする。すなわち、動作中トルク情報は、ドア21の開閉動作中における駆動モータ2のトルクの時間変化を示す情報である。記憶部16は、正常に(すなわち、異物の挟み込み等の動作異常のない状態で)ドア21が開閉動作を行う場合の基準となる動作中トルク情報である基準トルク情報D1を記憶している。例えば、正常にドア21が開動作を行う場合の基準トルク情報D1と、正常にドア21が閉動作を行う場合の基準トルク情報D1とが、各別に記憶部16に記憶される。
図3に、基準トルク情報D1に示されるトルク(基準トルク)の時間変化の一例を示しているが、
図3では基準トルクの時間変化を簡略化して示している。
【0028】
正常にドア21が開閉動作を行っている間の駆動モータ2のトルクの変化を予め計測し、計測されたトルクの時間変化の情報(すなわち、計測された動作中トルクの情報)が基準トルク情報D1として記憶部16に記憶されている。この計測は、ドア21の開閉動作パターン(具体的には、ドア21の移動速度パターン)や駆動制御部12が実行するフィードバック制御のゲイン等の条件を、通常のドア21の開閉動作時と同一の条件に設定して行われる。本実施形態では、上記の計測において、正常にドア21が開閉動作を行っている間の動作中トルク情報を後述する実情報取得部14により取得し、取得された動作中トルク情報が基準トルク情報D1として記憶部16に記憶されている。また、本実施形態では、実情報取得部14により取得された動作中トルク情報が、後述するノイズ除去部17によってトルクの高調波成分を除去する処理が行われた後、基準トルク情報D1として記憶部16に記憶されている。
【0029】
実情報取得部14は、実際にドア21が開閉動作を行っている間の動作中トルク情報である実トルク情報D2を取得する機能部である。本実施形態では、基準トルク情報D1に含まれるトルクのサンプリング周期が、実トルク情報D2に含まれるトルクのサンプリング周期と同じである。実情報取得部14は、実際にドア21が開閉動作を行っている間、駆動制御部12から出力される駆動モータ2のトルクの情報(具体的には、駆動制御部12によって生成されるトルク指令の情報)を取得して、実トルク情報D2を取得する。駆動制御部12から出力されるトルク信号(具体的には、トルク指令信号)がアナログ信号である場合には、実情報取得部14は、当該アナログ信号をデジタル信号に変換する変換回路を備える。
【0030】
差分トルク導出部15は、実トルク情報D2に示されるトルクと基準トルク情報D1に示されるトルク(基準トルク)との差である差分トルクを導出する機能部である。差分トルク導出部15は、実際にドア21が開閉動作を行っている間、実情報取得部14により取得される駆動モータ2のトルクを、当該トルクが取得された時点に対応する基準トルクと比較して、差分トルクを導出する。すなわち、差分トルク導出部15は、実トルク情報D2と基準トルク情報D1との時間軸を合わせてこれら2つの動作中トルク情報に示されるトルク同士を比較して、差分トルクを導出する。
【0031】
入力時期調整部18は、差分トルク導出部15に入力される実トルク情報D2と基準トルク情報D1との時間軸を合わせるように、基準トルク情報D1に示されるトルク(基準トルク)の差分トルク導出部15への入力時期を調整する機能部である。入力時期調整部18は、ドア21の開閉動作の開始時点(例えば、ドア21の開動作の開始時点、又は、ドア21の閉動作の開始時点)を一致させるように、実トルク情報D2と基準トルク情報D1との時間軸を合わせる。入力時期調整部18は、駆動モータ2のトルクが実情報取得部14により取得されてから差分トルク導出部15に入力されるまでの遅れ時間を考慮して、差分トルク導出部15に入力される実トルク情報D2と基準トルク情報D1との時間軸が合うように、基準トルクの差分トルク導出部15への入力時期を調整する。入力時期調整部18は、例えば、記憶部16からの基準トルクの読み出しタイミングを遅らせることで、基準トルクの差分トルク導出部15への入力時期を上記のように調整する。
【0032】
差分トルク導出部15は、通常のドア21の開閉動作中は、実トルク情報D2に示されるトルクと基準トルク情報D1に示されるトルク(基準トルク)との差を、差分トルクとして導出する。一方、原点復帰処理の実行中における、一定の値に設定された駆動モータ2のトルクを復帰中基準トルク(
図4参照)として、差分トルク導出部15は、原点復帰処理の実行中は、実トルク情報D2に示されるトルクと復帰中基準トルクとの差を、差分トルクとして導出する。復帰中基準トルクの情報は、例えば記憶部16に記憶されている。
【0033】
ノイズ除去部17は、実トルク情報D2に示されるトルク又は差分トルクから高調波成分を除去する機能部である。ノイズ除去部17は、高調波成分の除去対象のトルクに対して一次遅れフィルタ処理(ローパスフィルタ処理)を行って、当該トルクから高調波成分を除去する。
図2に示す例では、ノイズ除去部17は、差分トルクに対して一次遅れフィルタ処理を行って、差分トルクから高調波成分を除去する。
【0034】
判定部13は、通常のドア21の開閉動作中は、第1異常判定処理を実行し、原点復帰処理の実行中は、ドア21の移動速度が一定である間のみ第2異常判定処理を実行する機能部である。ここで、第1異常判定処理は、実トルク情報D2に示されるトルクと基準トルク情報D1に示されるトルク(基準トルク)との差が第1規定値A以上である場合に動作異常と判定する処理である。すなわち、第1異常判定処理では、実トルク情報D2に示されるトルクが、
図3において2つの一点鎖線で囲まれるトルク領域から外れたことが検出された場合に(例えば、設定回数以上検出された場合に、又は、設定時間以上継続して検出された場合に)、動作異常と判定される。
【0035】
上述したように、駆動モータ2のトルクリップルは、駆動モータ2の回転方向を反転させて加速させる方向反転加速時等の特定の状況において大きくなり得る。この点に鑑みて、本実施形態では、判定部13は、ドア21の移動速度が増加又は減少している間の第1規定値Aを、ドア21の移動速度が一定である間の第1規定値Aよりも大きく設定するように構成されている(
図3参照)。なお、判定部13が、ドア21の移動速度が増加している間の第1規定値Aと、ドア21の移動速度が減少している間の第1規定値Aとの、一方のみ(例えば、ドア21の移動速度が増加している間の第1規定値Aのみ)を、ドア21の移動速度が一定である間の第1規定値Aよりも大きく設定する構成とすることもできる。
【0036】
第2異常判定処理は、実トルク情報D2に示されるトルクと復帰中基準トルクとの差が、第1規定値Aと同じ又は異なる値の第2規定値B以上である場合に動作異常と判定する処理である。すなわち、第2異常判定処理では、実トルク情報D2に示されるトルクが、
図4において2つの一点鎖線で囲まれるトルク領域から外れたことが検出された場合に(例えば、設定回数以上検出された場合に、又は、設定時間以上継続して検出された場合に)、動作異常と判定される。本実施形態では、第2規定値Bは、第1規定値Aよりも小さい値である。原点復帰処理でのドア21の移動開始位置はその都度変化するため、原点復帰処理でのドア21の動作条件は一定ではないが、一定の値に設定された復帰中基準トルクを動作異常の判定基準として用いることで、原点復帰処理の実行中にも動作異常の判定を適切に行うことが可能となっている。
【0037】
判定部13は、原点復帰処理の実行中は、ドア21の移動速度が一定である間のみ第2異常判定処理を実行する。
図4に示す例では、第1の定速期間(時刻T11から時刻T12までの期間)と第2の定速期間(時刻T13から時刻T14までの期間)とで、第2異常判定処理が実行される。判定部13は、例えば、駆動制御部12から出力される信号に基づきドア21の移動速度が一定であるか否かを判定して、ドア21の移動速度が一定である間のみ第2異常判定処理を実行する。なお、原点復帰処理では、通常のドア21の開閉動作中の上限速度V1よりも低い速度を制限速度V2として、制限速度V2以下の速度でドア21が移動されるため、ドア21の移動速度が増加又は減少する期間は、通常のドア21の開閉動作時に比べて基本的に短くなる。そのため、第2異常判定処理の実行期間をドア21の移動速度が一定である間に限定しても、動作異常の検知遅れを抑制することが可能となっている。
【0038】
なお、本明細書で開示する制御部1の技術的特徴は、駆動モータ2の制御方法にも適用可能であり、駆動モータ2の制御方法も本明細書に開示されている。この制御方法には、基準トルク情報D1を記憶部16に記憶させる工程、実情報取得部14が実トルク情報D2を取得する工程、原点復帰処理部11が原点復帰処理を実行する工程、及び、判定部13が第1異常判定処理及び第2異常判定処理を実行する工程が含まれる。本実施形態では、この制御方法には、更に、差分トルク導出部15が差分トルクを導出する工程、ノイズ除去部17が実トルク情報D2に示されるトルク又は差分トルクから高調波成分を除去する工程、入力時期調整部18が基準トルク情報D1に示されるトルクの差分トルク導出部15への入力時期を調整する工程、指令部10が駆動制御部12に対して指令を出力する工程、及び、駆動制御部12が指令部10から入力される指令に応じて駆動モータ2を駆動するする工程が含まれる。
【0039】
〔その他の実施形態〕
次に、制御装置のその他の実施形態について説明する。
【0040】
(1)上記の実施形態では、第2規定値Bが第1規定値Aよりも小さい値である構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第2規定値Bが第1規定値A以上の値である構成とすることもできる。
【0041】
(2)上記の実施形態では、判定部13が、ドア21の移動速度が増加又は減少している間の第1規定値Aを、ドア21の移動速度が一定である間の第1規定値Aよりも大きく設定する構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、例えば、判定部13が、ドア21の移動速度が増加又は減少している間の第1規定値Aを、ドア21の移動速度が一定である間の第1規定値Aと同じ値に設定する構成とすることもできる。
【0042】
(3)上記の実施形態では、制御部1がノイズ除去部17及び入力時期調整部18を備える構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、動作異常の誤検知が生じる可能性を低く維持できる場合には、制御部1がノイズ除去部17及び入力時期調整部18の一方又は双方を備えない構成とすることもできる。
【0043】
(4)上記の実施形態では、基準トルク情報D1に含まれるトルクのサンプリング周期が、実トルク情報D2に含まれるトルクのサンプリング周期と同じである構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、基準トルク情報D1に含まれるトルクのサンプリング周期が、実トルク情報D2に含まれるトルクのサンプリング周期と異なる構成とすることもできる。
【0044】
(5)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用すること(その他の実施形態として説明した実施形態同士の組み合わせを含む)も可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0045】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した制御装置の概要について説明する。
【0046】
自動ドアにおけるドアの開閉動作を制御する制御装置であって、前記ドアの開閉動作の駆動力を発生する駆動モータと、前記駆動モータを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、記憶部と、実情報取得部と、原点復帰処理部と、判定部と、を備え、前記ドアの開閉動作中に変化する前記駆動モータのトルクを示す情報を動作中トルク情報として、前記記憶部は、正常に前記ドアが開閉動作を行う場合の基準となる前記動作中トルク情報である基準トルク情報を記憶し、前記実情報取得部は、実際に前記ドアが開閉動作を行っている間の前記動作中トルク情報である実トルク情報を取得し、前記原点復帰処理部は、前記ドアの現在位置の認識精度が低下する特定状況になったと判定した場合に、通常の前記ドアの開閉動作中の上限速度よりも低い速度を制限速度として、前記制限速度以下の速度で前記ドアを基準位置まで移動させる原点復帰処理を実行し、前記原点復帰処理の実行中における、一定の値に設定された前記駆動モータのトルクを復帰中基準トルクとして、前記判定部は、通常の前記ドアの開閉動作中は、前記実トルク情報に示されるトルクと前記基準トルク情報に示されるトルクとの差が第1規定値以上である場合に動作異常と判定する第1異常判定処理を実行し、前記原点復帰処理の実行中は、前記実トルク情報に示されるトルクと前記復帰中基準トルクとの差が、前記第1規定値と同じ又は異なる値の第2規定値以上である場合に動作異常と判定する第2異常判定処理を、前記ドアの移動速度が一定である間のみ実行する。
【0047】
本構成によれば、通常のドアの開閉動作中は、第1異常判定処理の実行により動作異常の判定を行うことができ、ドアの現在位置の認識精度が低下する特定状況になった後の原点復帰処理の実行中は、第2異常判定処理の実行により動作異常の判定を行うことができる。ここで、第1異常判定処理では、動作異常の判定基準となるトルク(具体的には、実トルク情報に示されるトルクと比較されるトルク)が、基準トルク情報に示されるトルクとされるのに対して、第2異常判定処理では、動作異常の判定基準となるトルクが、一定の値に設定された復帰中基準トルクとされている。基準トルク情報は、正常にドアが開閉動作を行う場合の、開閉動作中に変化するトルクを示す情報である。そのため、特定状況において基準トルク情報に示されるトルクを動作異常の判定基準として用いると、ドアの現在位置の認識誤差によって動作異常の判定を適切に行うことができないおそれがある。これに対して、本構成では、第2異常判定処理では、一定の値に設定された復帰中基準トルクを動作異常の判定基準として用いるため、原点復帰処理の実行中にも動作異常の判定を適切に行うことが可能となっている。
【0048】
ところで、ドアの移動速度が増加又は減少している間は、一般に、ドアの移動速度が一定である間に比べて大きなトルクリップルが発生しやすい。この点に関して、本構成では、原点復帰処理の実行中は、ドアの移動速度が一定である間のみ第2異常判定処理が実行される。そのため、一定の値に設定された復帰中基準トルクを動作異常の判定基準として用いても、動作異常の判定を適切に行いやすい。
【0049】
以上のように、本構成によれば、ドアの現在位置の認識精度が低下する状況になった後の原点復帰動作の実行中にも、動作異常の判定を適切に行うことが可能となっている。
【0050】
ここで、前記第2規定値は、前記第1規定値よりも小さい値であると好適である。
【0051】
本構成によれば、第2規定値が第1規定値以上の値とされる場合に比べて、第2異常判定処理における動作異常の検出感度の向上を図ることができる。なお、原点復帰処理では、通常のドアの開閉動作中の上限速度よりも低い速度を制限速度として、制限速度以下の速度でドアが移動されるため、トルクリップルによるトルクの変動幅は、通常のドアの開閉動作中に比べて基本的に小さくなる。そのため、第2規定値を第1規定値よりも小さい値としても、第2異常判定処理における動作異常の誤検知が生じる可能性を低減することができる。
【0052】
また、前記ドアの開閉方向の絶対位置を検出するセンサ、及び、前記駆動モータの回転方向の絶対位置を検出するセンサのいずれも備えず、前記特定状況は、通常の前記ドアの開閉動作中に前記動作異常と判定された後の状況、及び、前記駆動モータへの電力供給が遮断されてから電力供給が再開した後の状況、の少なくともいずれかであると好適である。
【0053】
本構成のように、ドアの開閉方向の絶対位置を検出するセンサ、及び、駆動モータの回転方向の絶対位置を検出するセンサのいずれも備えない場合、通常のドアの開閉動作中に動作異常と判定された後や、駆動モータへの電力供給が遮断されてから電力供給が再開した後に、ドアの現在位置の認識精度が低下する特定状況となり得る。本開示の制御装置によれば、特定状況になった後の原点復帰処理の実行中にも、動作異常の判定を適切に行うことができるため、通常のドアの開閉動作中に動作異常と判定された後や、駆動モータへの電力供給が遮断されてから電力供給が再開した後に、特定状況となった場合であっても、動作異常の判定を行いながら原点復帰処理を行うことができる。
【0054】
また、前記制御部は、差分トルク導出部と、ノイズ除去部と、入力時期調整部と、を更に備え、前記差分トルク導出部は、前記実トルク情報に示されるトルクと前記基準トルク情報に示されるトルクとの差である差分トルクを導出し、前記ノイズ除去部は、前記実トルク情報に示されるトルク又は前記差分トルクから高調波成分を除去し、前記入力時期調整部は、前記差分トルク導出部に入力される前記実トルク情報と前記基準トルク情報との時間軸を合わせるように、前記基準トルク情報に示されるトルクの前記差分トルク導出部への入力時期を調整すると好適である。
【0055】
本構成によれば、第1異常判定処理において、動作異常の誤検知の要因となり得るノイズをノイズ除去部により減少させると共に、動作異常の誤検知の要因となり得る実トルク情報と基準トルク情報との間の時間軸のずれを入力時期調整部により小さく抑えることができる。よって、第1異常判定処理における動作異常の判定精度の向上を図ることができる。
【0056】
また、前記基準トルク情報に含まれるトルクのサンプリング周期が、前記実トルク情報に含まれるトルクのサンプリング周期と同じであると好適である。
【0057】
本構成によれば、基準トルク情報に含まれるトルクのサンプリング周期を、実トルク情報に含まれるトルクのサンプリング周期に合わせることで、実トルク情報に示されるトルクと基準トルク情報に示されるトルクとの差が、実トルク情報に含まれる動作異常によるものではないトルクの変化(例えば、トルクリップルによるトルクの変化)によって大きくなることを抑制することができる。よって、第1異常判定処理における動作異常の判定精度の向上を図ることができる。
【0058】
また、前記判定部は、前記ドアの移動速度が増加又は減少している間の前記第1規定値を、前記ドアの移動速度が一定である間の前記第1規定値よりも大きく設定すると好適である。
【0059】
本構成によれば、ドアの移動速度が増加又は減少している間は、一般に、ドアの移動速度が一定である間に比べて大きなトルクリップルが発生しやすいことを考慮して、第1異常判定処理における動作異常の誤検知が抑制されるように規定値を設定することができる。
【0060】
本開示に係る制御装置は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができればよい。
【符号の説明】
【0061】
1:制御部
2:駆動モータ
11:原点復帰処理部
13:判定部
14:実情報取得部
15:差分トルク導出部
16:記憶部
17:ノイズ除去部
18:入力時期調整部
20:自動ドア
21:ドア
100:制御装置
A:第1規定値
B:第2規定値
D1:基準トルク情報
D2:実トルク情報
V1:上限速度
V2:制限速度