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  • 特許-ブリケットの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】ブリケットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10L 5/14 20060101AFI20231212BHJP
   B01F 23/60 20220101ALI20231212BHJP
   B01F 35/90 20220101ALI20231212BHJP
   C10B 53/08 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C10L5/14
B01F23/60
B01F35/90
C10B53/08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021045795
(22)【出願日】2021-03-19
(65)【公開番号】P2022144681
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】本多 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】川畑 聡志
(72)【発明者】
【氏名】今西 大輔
(72)【発明者】
【氏名】長島 康雄
(72)【発明者】
【氏名】迎 孝征
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-169288(JP,A)
【文献】特開昭62-015294(JP,A)
【文献】特開昭52-035713(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101275091(CN,A)
【文献】特開平10-165921(JP,A)
【文献】特開平04-057890(JP,A)
【文献】特開2001-259598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 5/14
B01F 23/60
B01F 35/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭粉デンプンを、攪拌羽根を有する混合機により混合して成型するブリケットの製造方法であって、前記混合の間は蒸気吹き込みにより加熱しながら前記攪拌羽根を回転駆動させ、該回転駆動の負荷の時間勾配(A/sec)を測定し、該測定された数値が0.1A/sec以下となったとき、前記回転駆動を停止して混合物を排出し、該排出された混合物を成型してブリケットとすることを特徴とするブリケットの製造方法。
【請求項2】
前記混合時の蒸気吹き込み後の混合物の温度が、前記デンプンの糊化温度以上であることを特徴とする請求項1に記載のブリケットの製造方法。
【請求項3】
前記蒸気吹き込みを行う混合攪拌時間は、60秒以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のブリケットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄プロセスで用いられる原料粉体とバインダーとを加熱混合して得られる混合物を加圧成型するブリケットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄プロセスにおいては、原料コストの低減、中間製品の品質向上、飛散防止による環境負荷低減を目的として様々な粉体原料をブリケット化し使用している。例えば、安価な低品位の鉄鉱石を破砕、選別して不純物を除去した後にブリケット化することで高品位原料として利用したり、粉状の石炭をブリケット化して成型炭とする、あるいは粉状の石炭と粉状の鉄鉱石をブリケット化してフェロコークスとするといったことも行われている。また、転炉への投入ダストをブリケット化することにより、ダストの飛散防止も行われている。
【0003】
ブリケットは、破砕し粉末状にした原料粉体と、粉体同士を結合させる材料であるバインダー(「粘結材」ともいう。)とを混合した後、成型機で加圧成型することにより製造される。
【0004】
その際、ブリケットには、搬送中の粉化を抑止するために一定以上の強度が必要とされ、強度を向上させるために、例えば、特許文献1には、混合機内で十分原料粉体とバインダーを混合するとともに、バインダーの軟化点以上に混合物の温度を上昇させて成型する技術が提案されている。
【0005】
しかしながら、十分な強度を持つブリケットを製造するためには、混合機内で原料とバインダーを十分混合した後、バインダーの軟化点温度以上まで加熱して得られた混合物を成型することが重要であるが、ブリケット強度に影響を与える因子は混合物の温度のみにならず、混合物の水分や粒度、混合機の羽根の回転数、形状などの種々の影響を受けるので、特許文献1のように、混合物の温度のみを管理したとしても、ブリケットの強度にバラツキが生じるという問題がある。また、ブリケット強度を確保するために混合機内での混合・加熱時間を長くしたとしても、バインダーの種類によっては、例えばデンプンのように、ある温度域以上では粘度が低下するバインダーもあり、混合・加熱時間の長時間化は、生産能力の低下に留まらず、ブリケット強度の低下をもたらすという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-63581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、原料粉体とバインダーとを混合し加熱して得られる混合物を成型する従来のブリケットの製造方法においては、加熱温度を管理してもブリケットの強度にバラツキが生じたり、十分な強度が得られないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、原料粉体とバインダーとを混合して、成型するブリケットの製造方法において、十分な強度を有し、かつ強度のバラツキが少ないブリケットを効率的に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討し、その結果、原料とバインダーの混合割合や混合物の温度、水分、粒度、粘性および流動性等を考慮し、ブリケットの強度確保および生産効率の観点から最適となる混合終了のタイミング、つまり、混合機からの排出タイミングを判断する技術が有効であることを見出した。特に、バインダーとしてデンプンを用いる場合には、デンプンの粘度が温度に大きく依存することから、ブリケットの強度が混合物の粘性、流動性に関係していることが判明し、それに基づき混合物の粘性、流動性を間接的に監視する効率的な方法を知見した。
【0010】
本発明は、以上の知見に基づきなされたもので、その要旨は以下の通りである。
〔1〕原料粉体とバインダーを、攪拌羽根を有する混合機により混合して成型するブリケットの製造方法であって、前記混合の間は加熱しながら前記攪拌羽根を回転駆動させ、該回転駆動の負荷の時間勾配(A/sec)を測定し、該測定された数値がしきい値以下となったとき、前記回転駆動を停止して混合物を排出し、該排出された混合物を成型してブリケットとすることを特徴とするブリケットの製造方法。
〔2〕〔1〕において、前記しきい値が0.1A/secであることを特徴とするブリケットの製造方法。
〔3〕〔1〕または〔2〕において、前記原料である粉体が石炭粉であることを特徴とするブリケットの製造方法。
〔4〕〔1〕ないし〔3〕のいずれか一つにおいて、前記バインダーがデンプンであることを特徴とするブリケットの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原料粉体とデンプンを混合して成型するブリケットを製造する場合に、混合機からの混合物の排出タイミングを最適化することで、ブリケットの強度が安定し、デンプンの使用量削減や加熱のためのユーティリティ(電気や蒸気等)の使用量を下げることができ、製造コストの低減が期待できる。また、原料粉体の水分や粒度、混合物の表面などを検知する装置(センサー等)も最小化することができ、設備コストの増大を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ヘンシェル型粉体混合機の一例を示す概略断面図である。
図2】混合機の回転駆動の負荷および混合物の温度の推移を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について、以下にバインダーとしてデンプンを使用した製鉄プロセスで用いられる成型炭ブリケットの製造方法を例に説明するが、前述のように、成型炭ブリケットのみならず、鉱石粉ブリケット、鉱石粉と石炭粉の混合ブリケット、あるいは転炉投入ダストブリケットなどの製造方法にも適用することができる。
【0014】
本発明においては、製造するブリケットの用途に応じて、種々の原料粉体を使用することができる。コークス製造用の成型炭を製造する場合は、石炭を原料粉体とすればよい。高炉原料としてフェロコークスや炭材内装ペレット等を製造する場合は、鉄鉱石や石炭を原料粉体とすることができる。あるいは、製鋼プロセスでは熱源、鉄源として使用するためのブリケットを製造する際には、コークス粉、製鉄ダスト等を原料紛体とすることができる。従って原料紛体として石炭、鉄鉱石、製鉄ダスト、製鉄スラッジ等、用途に応じて、種々のものを使用することができる。
【0015】
[粉体の混合方法および混合機]
本発明の原料粉体の混合方法を、図1に示すような攪拌羽根2(「水平回転刃」ともいう。)を有するヘンシェル型と呼ばれる混合機1を使用した場合について説明する。ただし、本発明の実施に際しては、ヘンシェル型混合機ではなくとも、竪型パドル式などの粉体を回転させて混合するものであって、回転軸が縦軸(鉛直方向)で、蒸気による加熱をすることができればどのような混合機を用いても良い。
【0016】
図1では攪拌羽根2を上下方向に2段有する形態を示しているが、1段あるいは3段以上有する形態であってもよい。この攪拌羽根2は、2枚の羽根が回転軸3に対して相対する位置に取り付けられているが、羽根の枚数は特に制限はなく1枚あるいは3枚以上であっても良い。また、2枚羽根の強度を保つために、2枚の羽根の途中を円形状につないだ補助部材を取り付けても良い。そして、羽根の形状についても特に制限はなく、水平板形状、パドル形状、プロペラ形状などでも良い。回転刃の回転速度が小さすぎると、装入粉体全体を混合することができない。また、回転速度が大きすぎると、装入粉体が粉体混合機から飛び出してしまうこともある。したがって、攪拌羽根の先端部の周速が5~40m/s程度で混合攪拌することが好ましい。
【0017】
混合機1の内容積は、特に限定されるものではなく、75L程度の小型のものから4000L以上の大型のものなどがある。
【0018】
[粉体]
原料となる粉体としては、石炭粉、鉱石粉、その他転炉投入ダストなどの粉体が挙げられるが、製鉄プロセスの成型炭ブリケットの製造においては、石炭粉を用いるのが好ましい。石炭粉の粒径は、特に限定されないが、細かいものほどブリケットの強度が向上するので好ましく、10mm未満が90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。なお、粒径が10mm未満が90質量%未満の石炭粉を用いる場合には、粉砕するか、又は別の細かい粒度の石炭粉と混合して上記粒径範囲となるように調整してもよい。
【0019】
[バインダー]
粉体に混合するバインダーとしては、種々の粘結材を用いることができるが、本実施態様の成型炭ブリケットの製造方法に使用するバインダーとしては、デンプンを用いるのが好ましい。
【0020】
デンプンの種類は、特に限定されず、タピオカ、じゃがいも、さつまいも、とうもろこし、米、小麦、豆類などの原料植物から製造されたデンプンが適宜使用でき、また、植物由来のデンプンを加工したデンプン誘導体や化学合成したデンプンなども使用することができる。これらのデンプンの中では、比較的糊化温度が低く、混合時に粘度が高いタピオカ由来のデンプンを用いるのが好ましい。なお、デンプンには、糊化(α化)した糊状のαデンプンとα化前のβデンプンとがあるが、前述したように、本発明においては、βデンプンを用いるのが好ましい。
【0021】
[混合割合]
原料紛体とデンプンとの配合割合は、原料紛体の性状や製造するブリケットに要求される強度等により適宜決めることができる。例えば、コークス原料用成型炭を製造する場合は、原料紛体とデンプンの合計質量に対し、0.5~2.0質量%のデンプンを添加するのか好ましい。
【0022】
[混合物の粘性とブリケット強度との関係]
次に、原料粉体とバインダーの混合割合や混合物の温度、水分、粒度、流動性等を考慮し、ブリケットの強度確保の観点から最適となる混合終了のタイミング、つまり、混合機からの排出タイミングを判断する方法を検討した。特に、バインダーとしてデンプンを用いる場合には、デンプンの粘度が温度に大きく依存することから、ブリケットの強度が混合物の粘性に関係していること、つまり、粘性が最も大きくなった、言い換えると、流動性が最も小さくなった混合物を成型して製造したブリケットが高強度で粉化し難いことが判明した。そこで、混合物の粘性が最大となる時に混合物の混合を終了する効率的な方法を見出したので、それについて説明する。
【0023】
[混合終了確認方法]
前述したように、ブリケットの強度を高くするためには、原料粉体とバインダーの混合物が加熱混合されて、その粘性が最大となった時の混合物をブリケットとするのが好ましいことが分かったので、混合物の粘性(粘度)を知る必要がある。しかしながら、混合機内の混合物の粘度を混合中に測定することは、煩雑であるために、従来は別の指標で確認する方法が行われている。その方法は、デンプンの糊化する温度に基づいて定めた温度を目標温度として設定し、その混合物の温度を連続的に測定して、その目標温度に到達した時点で混合を終了するという方法である。ところが、混合物が目標温度に到達していても得られるブリケットの強度にはバラツキが生じ、高強度のブリケットが得られない場合があった。これは、混合物の温度は上昇していても粘性自体はそれほど上昇していない場合があるなどの理由が考えられ、温度による混合終了の確認方法は、十分な確認方法ではないことが分かった。
【0024】
そこで、混合物の粘性測定の代わりとなる新たな混合終了の確認方法について検討したところ、混合物を混合する攪拌羽根の回転駆動の負荷を測定する方法が効率的であることを見出した。すなわち、攪拌羽根の回転駆動の負荷は、電流値(A)となって現れるので、その電流値の変化する状態を示す回転駆動の負荷の時間勾配、つまり、時間当たりの回転駆動負荷(A/sec)を測定し、その数値に基づいて混合終了を確認する方法である。
【0025】
上記の回転駆動の負荷の時間勾配を測定し、その測定した数値がしきい値以下になった時点で混合を終了するという方法である。このしきい値は、後述する実施例に記載した検討実験の結果によると、0.1A/secであることが好ましい。(より好ましくは、0~0.08A/secの範囲内にある値である。)なお、しきい値は、混合機の規模や原料粉体やバインダーの配合量、混合割合、その他混合の諸条件が異なることで変わる可能性はあるが、時間勾配という時間あたりの変化量を測定項目とすることで、条件が異なったとしても共通的な指標として用いることができる。
【0026】
[混合物加熱方法]
原料紛体とデンプンの混合を開始してから、加熱しながら混合を行うと、駆動負荷の時間勾配の上昇の程度が大きくなり、早く横ばいとなるため、混合時間を低減することができ、ブリケット製造の生産性を向上することができる。
【0027】
混合物を加熱する方法としては、混合粉体中に蒸気を吹き込む方法が好ましい。混合機の上方から蒸気配管を挿入して、蒸気配管先端の吐出口を混合粉体中に載置させて蒸気を吹き込む。
【0028】
混合攪拌時の蒸気吹き込み後の混合物の温度は、バインダーとして用いるデンプンの糊化温度以上であることが好ましい。この糊化温度は、デンプンの種類によって異なっているので、使用するデンプンに応じて蒸気吹き込み後の混合物の温度を調整すればよい。例えば、タピオカ由来のデンプンを用いる場合には、その糊化温度は、58.5~70.0℃であるので、蒸気吹き込み後の混合物の温度は、70.0~95.0℃とするのが好ましい。より好ましくは、70.0~80.0℃である。同様に、じゃがいも由来のデンプンを用いた場合には、その糊化温度が56.0~66.0℃であるので、蒸気吹き込み後の混合物の温度は、66.0~95.0℃とするのが好ましい。より好ましくは、66.0~80.0℃である。
【0029】
混合物の温度を制御するのは、混合粉体中に吹き込む蒸気の温度を調整することで達成できる。その蒸気の温度調整は、蒸気の流量調整や常温の水を混合させて行う方法などがある。
【0030】
[蒸気吹き込み時間(混合時間)]
蒸気吹き込みを行う混合攪拌時間は、粉体やバインダーの種類により適宜調整すればよいが、デンプンを用いた場合には、糊化して粉体と均一に混合した状態となるための時間が必要であり、例えば、前述の成型炭プロセスの場合の加熱時間は、60秒以上が好ましく、120秒以上がより好ましい。
【0031】
さらに、蒸気吹き込み混合を行う前の未加熱状態での混合時間は、同様に、粉体やバインダーの種類により適宜調整すれば良いが、例えば、前述の成型炭ブリケットの製造プロセスで用いる場合の未加熱状態での混合を行う時間は、15秒以上程度でよい。
【0032】
[成型方法」
前述の混合方法によって得られた混合物を、ブリケット成型装置に装入して加圧成型することにより、成型炭のブリケットが得られる。この成型方法は、特に限定されず、また、ブリケット成型装置としては、ロール圧縮、転動、押出方式のいずれの成型機を用いてもよい。特に、ブリケット内部まで均一に加圧できるロール表面に凹部を設けたダブルロール成型機を用いるのが好ましい。なお、本実施態様においては、成型炭ブリケットを例に説明したが、製鉄プロセスにおけるその他のブリケット(鉱石粉ブリケットや転炉投入ダストブリケットなど)にも適用することができる。
【実施例
【0033】
以下、実施例として、前述の新しい混合終了確認方法を見出した根拠となる攪拌羽根の回転駆動の負荷の変化と従来の温度変化の比較を行った検討実験について説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
本実験では、原料粉体として、その粒径が10mm未満の大きさが95質量%で、その他5質量%は10mm以上20mm未満である石炭粉(配合炭)を使用し、バインダーとして、タピオカ由来のβデンプンを合計1質量%使用した。このタピオカ由来のβデンプンは、約75℃において最高粘度を示すデンプンである。
【0035】
上記の原料粉体(石炭粉)とバインダー(βデンプン)を、図1に示すヘンシェル型混合機を用い、未加熱状態で混合を行った後、蒸気を吹き込みながら加熱混合した。混合物の温度は、混合機内に設置した熱電対により測定し、攪拌羽根の回転駆動の負荷を示す電流値も測定した。
【0036】
ブリケット強度(%)は、混合を終了して排出した混合物に加圧ロール式成型機で圧縮力を作用させて、46mm×46mm×38mmのマセックタイプの成型炭ブリケットに成型し、2時間自然養生した後のブリケット10個を、2mの高さから3回落下させ、落下させたブリケットの質量に対する15mm以上の塊の質量の割合(%)をブリケットの落下強度(%)として求めた。
【0037】
上記の実験結果を図2に示す。この図で、実線は、混合する経過時間とともに推移する混合機の回転駆動の負荷を電流値(左側の縦軸)で測定した値を示している。この曲線は、当初時間とともに回転駆動の負荷が上昇していくが、120sec経過すると負荷の上昇が飽和する。また、点線は、同時に測定した混合物の温度(右側の縦軸)の推移である。ここで、横軸上にある(イ)、(ロ)、(ハ)の3つの時点で混合を終了してブリケット強度を調べたところ、(イ)の80sec経過時点では、駆動負荷の電流値が上昇途中であり、得られたブリケットの強度は80%程度でまだ高いとは言えなかった。しかし、(ロ)の120sec経過時点では、電流値の上昇が止まり横ばい状態になったところであり、ブリケットの強度は95%と高強度であった。さらに(ハ)の170sec経過時点では、電流値が横ばい状態で推移しており、ブリケットの強度は(ロ)と同等の95%で高いものであった。
【0038】
これに対し、点線で示す温度変化を見ると、(ハ)の時点で目標とする75℃に到達している。つまり、実質的には、目標温度到達前の時点(ロに相当)で、既に強度は十分出ることが見込まれる混合物になっているにもかかわらず、蒸気加熱混合を継続していることになる。以上のことから、電流値が横ばい状態に移る時点(ロ)で混合を終了する方法が、混合時間が短縮でき、使用する蒸気量も削減できるという効果が得られることが分かった。
【0039】
そして、その横ばい状態(ロ)を知る方法として、時間あたりの負荷(電流値)である上記曲線の負荷の時間勾配を求めて、その時間勾配が、特定の値以下になった時点とするのが好ましいことを見出した。この値をしきい値として規定し、0.1A/secであるとした。
【0040】
曲線の形状は、混合機の規模や原料粉体やバインダーの配合量、混合割合、その他混合の諸条件が異なることで変動するが、時間勾配という時間あたりの変化量を規定することで、条件が異なったとしても共通的な指標として用いることができる。
【0041】
以上のことから、混合終了確認の方法が、温度による方法に比べて回転駆動負荷の時間勾配による方法は、混合時間や蒸気量の削減ができる効率的な確認方法であり、また、ブリケット強度のバラツキの少ない高強度のブリケットが得られるという優れた効果を奏することも分かった。さらに、混合物の温度は、バインダーの粘度発現という観点から非常に重要な因子ではあるが、それ以上に混合時の回転駆動の負荷を管理することで、混合物の水分や粒度、混合機の回転数や羽根形状など様々な外乱を考慮した最適な排出タイミングを判断することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 混合機
2 攪拌羽根
3 回転軸
4 原料粉体装入口
5 蒸気配管
6 蒸気配管の吐出口
7 蒸気配管挿入口
S 蒸気
図1
図2