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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】ニーエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/206 20110101AFI20231212BHJP
【FI】
B60R21/206
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021046878
(22)【出願日】2021-03-22
(65)【公開番号】P2022146084
(43)【公開日】2022-10-05
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大須賀 真
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 真之介
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-247301(JP,A)
【文献】特開2004-025929(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0072904(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員のための膝部保護空間で膨張展開可能なエアバッグと、
上記エアバッグに膨張展開用のガスを供給するインフレータと、
上記エアバッグを収容する収容空間と、上記エアバッグが上記収容空間から上記膝部保護空間に向けて突出するのを許容する開口と、を有するケースと、
上記ケースのうち相対的に剛性が低い低剛性壁部が上記エアバッグから膨張展開初期に受ける荷重によって上記開口における上記エアバッグの突出方向と交差する方向に膨らむように撓み変形するのを規制するケース変形規制部と、
を備え、
上記ケース変形規制部は、上記ケースを車両骨格部に固定するための複数の固定部を有するブラケット部材によって構成されており、
上記ブラケット部材は、上記複数の固定部を連結する連結板部を有し、上記連結板部において上記ケースの上記低剛性壁部に接合されている、ニーエアバッグ装置。
【請求項2】
上記ブラケット部材は、上記突出方向と交差する方向に突設され且つ上記ケースの幅方向に延びる補強リブ部を有する、請求項に記載のニーエアバッグ装置。
【請求項3】
上記補強リブ部は、断面形状が略U字形をなすU字フランジ部によって構成されている、請求項に記載のニーエアバッグ装置。
【請求項4】
上記ブラケット部材は、上記補強リブ部から上記連結板部とは反対側に延出するように設けられた延出板部を有し、上記連結板部と上記延出板部の両方において上記ケースの上記低剛性壁部に接合されている、請求項またはに記載のニーエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるニーエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、車両用のニーエアバッグ装置が開示されている。このニーエアバッグ装置において、ケースに予め折り畳まれた状態で収容されているエアバッグは、インフレータからのガスの供給によって膨張展開を開始する。エアバッグは、膨張展開初期においてケースから開口を通じて乗員のための膝部保護空間に向けて水平方向に沿って突出する。その後、エアバッグは、膨張展開後期において膝部保護空間を内装面に沿って斜め上方に膨張展開する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-75138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のニーエアバッグ装置の場合、ケースがエアバッグの膨張展開初期に受ける荷重によって開口部分が膨らむように撓み変形すると、エアバッグを膝部保護空間に向けて突出する方向の動きを制御するのが難しい。このため、膝部保護空間でエアバッグを円滑に膨張展開させる妨げになるという問題が生じ得る。とりわけ、乗員の体格(例えば、乗員の身長や脚部の長さなど)のバラツキが要因で膝部保護空間が狭くなるときには、限られた大きさの空間でエアバッグを速やかに膨張展開させる必要があるため、このような問題がより顕著になるおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、乗員のための膝部保護空間でエアバッグを円滑に膨張展開させることができるニーエアバッグ装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
乗員のための膝部保護空間で膨張展開可能なエアバッグと、
上記エアバッグに膨張展開用のガスを供給するインフレータと、
上記エアバッグを収容する収容空間と、上記エアバッグが上記収容空間から上記膝部保護空間に向けて突出するのを許容する開口と、を有するケースと、
上記ケースのうち相対的に剛性が低い低剛性壁部が上記エアバッグから膨張展開初期に受ける荷重によって上記開口における上記エアバッグの突出方向と交差する方向に膨らむように撓み変形するのを規制するケース変形規制部と、
を備え、
上記ケース変形規制部は、上記ケースを車両骨格部に固定するための複数の固定部を有するブラケット部材によって構成されており、
上記ブラケット部材は、上記複数の固定部を連結する連結板部を有し、上記連結板部において上記ケースの上記低剛性壁部に接合されている、ニーエアバッグ装置、
にある。
【発明の効果】
【0007】
上述の態様のニーエアバッグ装置において、エアバッグは、ケースの収容空間から開口を通じて乗員のための膝部保護空間に向けて突出し、この膝部保護空間で膨張展開する。このとき、ケース変形規制部は、ケースのうち相対的に剛性が低く撓み変形し易い低剛性壁部の撓み変形を規制する機能を果たす。このケース変形規制部によれば、ケースの低剛性壁部がエアバッグから膨張展開初期に受ける荷重によって開口におけるエアバッグの突出方向と交差する方向に膨らむように撓み変形するのを規制することできる。これにより、エアバッグがケースの収容空間から開口を通じて膝部保護空間に向けて突出する方向の動きを制御でき、エアバッグが膝部保護空間まで突出する動きについての指向性を高めることができる。その結果、ケースの撓み変形が要因で膝部保護空間におけるエアバッグの膨張展開後期での動作が邪魔されるのを抑制することができる。
【0008】
以上のごとく、上述の態様によれば、乗員のための膝部保護空間でエアバッグを円滑に膨張展開させることができるニーエアバッグ装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1のニーエアバッグ装置の車両における設置状態を示す図。
図2】実施形態1のニーエアバッグ装置を背面側の上方からみた斜視図。
図3図2のIII-III線矢視断面図。
図4図3においてケースがエアバッグから膨張展開初期に受ける荷重によって撓み変形する様子を示す断面図。
図5図2においてケースがエアバッグから膨張展開初期に受ける荷重によって撓み変形する様子を示す斜視図。
図6】実施形態2のニーエアバッグ装置を背面側の上方からみた斜視図。
図7図6V-V線矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上述の態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0011】
なお、上述の態様において、「膨張展開」とは、予め所定の形態に折り畳まれたエアバッグが、ガスの供給を受けて膨張しながら折り畳まれた状態を解除するように展開する動作をいう。
【0012】
上述の態様のニーエアバッグ装置では、上記ケース変形規制部は、上記ケースを車両骨格部に固定するための複数の固定部を有するブラケット部材によって構成されており、
上記ブラケット部材は、上記複数の固定部を連結する連結板部を有し、上記連結板部において上記ケースの上記低剛性壁部に接合されているのが好ましい。
【0013】
このニーエアバッグ装置によれば、複数の固定部のみを有する既存のブラケット部材に連結板部を設けて新たなブラケット部材とし、このブラケット部材が連結板部においてケースの低剛性壁部に接合されることによって、低剛性壁部の撓み変形が規制される。このため、部品点数を増やすことなく、ケース変形規制部を構築することができる。
【0014】
上述の態様のニーエアバッグ装置では、上記ブラケット部材は、上記突出方向と交差する方向に突設され且つ上記ケースの幅方向に延びる補強リブ部を有するのが好ましい。
【0015】
このニーエアバッグ装置によれば、ブラケット部材に設けられた補強リブ部は、ケースの開口におけるエアバッグの突出方向と交差する方向に突設されており、且つケースの幅方向に延びるように構成されている。ブラケット部材に補強リブ部を設けることによりケースの低剛性壁部の幅方向の剛性を高めることができる。
【0016】
上述の態様のニーエアバッグ装置では、上記補強リブ部は、断面形状が略U字形をなすU字フランジ部によって構成されているのが好ましい。
【0017】
このニーエアバッグ装置によれば、断面形状が略U字形をなすU字フランジ部によって補強リブ部を構成することにより、ブラケット部材自体の剛性を高めるのに効果がある。
【0018】
上述の態様のニーエアバッグ装置では、上記ブラケット部材は、上記補強リブ部から上記連結板部とは反対側に延出するように設けられた延出板部を有し、上記連結板部と上記延出板部の両方において上記ケースの上記低剛性壁部に接合されているのが好ましい。
【0019】
このニーエアバッグ装置によれば、ブラケット部材は、エアバッグの突出方向をケースの長手方向としたとき、この長手方向の異なる二箇所(連結板部と延出板部の二箇所)でケースの低剛性壁部に接合される。これにより、ケースの低剛性壁部の幅方向の剛性に加えて長手方向の剛性をも高めることができる。
【0020】
以下、本実施形態のニーエアバッグ装置の具体例について図面を参照しつつ説明する。
【0021】
なお、本明細書の図面では、特に断わらない限り、車両後方を矢印RRで示し、車両上方を矢印UPで示すものとする。また、車幅方向を矢印Xで示し、車長方向を矢印Yで示し、車高方向を矢印Zで示すものとする。このとき、車両に設置されたニーエアバッグ装置のケースについて、その幅方向Xが車幅方向Xに相当し、その長手方向Yが車長方向Yに相当し、その高さ方向Zが車高方向Zに相当する。
【0022】
(実施形態1)
図1に示されるように、実施形態1のニーエアバッグ装置101は車両に装着されるものである。このニーエアバッグ装置101は、車両の前席シート(図示省略)に着座する乗員Cに対して設けられており、車両衝突時に乗員Cの膝部Kを主体に拘束して保護する機能を果たす。
【0023】
ニーエアバッグ装置101は、インストルメントパネル1のうち乗員Cの膝部Kよりも前方に位置する車両内装部であるパネル下部2に内蔵されている。このニーエアバッグ装置101は、膝保護用のニーエアバッグとしてのエアバッグ10と、ガス供給部としてのインフレータ11と、エアバッグ10及びインフレータ11をともに収容するケース20と、を備えている。
【0024】
エアバッグ10は、複数の基布を縫合して袋状に形成されている。このエアバッグ10は、乗員Cのための膝部保護空間Sで膨張展開可能となるように予め所定の形態に折り畳まれた状態でケース20の収容空間20aに収容されている。このエアバッグ10は、収容空間20aに収容された状態で、例えば車幅方向Xが未折状態の幅方向とされる。
【0025】
インフレータ11は、そのガス発生口(図示省略)がエアバッグ10の内部空間に連通しており、作動時にエアバッグ10の内部空間に膨張展開用のガスを供給するように構成されている。このインフレータ11は、衝突検知センサ102が車両の衝突を検知したときに制御ユニット(ECU)103から出力される制御信号に応じて作動する。衝突検知センサ102及び制御ユニット103はいずれも車両に搭載され、ニーエアバッグ装置101とともに、乗員Cを保護するための乗員保護システムを構築している。
【0026】
ケース20は、エアバッグ10を収容する収容空間20aと、エアバッグ10が収容空間20aから膝部保護空間Sに向けて突出するのを許容する開口20bと、を有している。ケース20の開口20bは、乗員Cの下腿前面部Laに対向する位置に設けられており、パネル下部2に設けられたエアバッグドア3によって覆われている。このとき、下腿前面部Laとは、乗員Cの膝部Kから脛部を経て足首までの領域である下腿Lの前側の部位をいう。
【0027】
エアバッグ10は、インフレータ11からのガスの供給を受けて膨張展開動作を開始する。このときの膨張展開とは、予め所定の形態に折り畳まれたエアバッグ10が、ガスの供給を受けて膨張しながら折り畳まれた状態を解除するように展開する動作をいう。
【0028】
エアバッグ10は、膨張展開初期において、ケース20の収容空間20aから開口20bを通じて膝部保護空間Sに向けて概ね水平方向である突出方向Aに突出する。このとき、エアバッグドア3がエアバッグ10から受ける荷重によってテアライン3aで開裂することによって、エアバッグ10は膝部保護空間Sまで到達し、この膝部保護空間Sでの膨張展開を開始する。その後、このエアバッグ10は、膨張展開後期において、膝部保護空間Sをパネル下部2に沿って斜め上方である展開方向Bに伸長しながら膨張展開する。
【0029】
インストルメントパネル1のパネル下部2のうち乗員Cの膝部Kに対向する位置に、突出部6のような箇所が設けられているときには、エアバッグ10は、膝部Kと突出部6との間の狭小空間Saを通過するように膨張展開する。
【0030】
膝部保護空間Sで膨張展開を完了したエアバッグ10は、乗員Cの少なくとも両方の膝部Kを拘束する機能を果たす。ここでいう拘束には、エアバッグ10の内圧による反力によって乗員Cの両方の膝部Kが前方へ移動する動作を規制する態様、乗員Cの両方の膝部Kが外側に開く動作を規制する態様、乗員Cが上方へ浮き上がる態様等が包含される。これにより、乗員Cの両方の膝部Kが車幅方向X、車長方向Y及び車高方向Zに動くのを抑制することができる。
【0031】
図2及び図3に示されるように、ケース20は、開口20bを除いて収容空間20aを取り囲む複数の壁部を有する。この複数の壁部には、ケース20の高さ方向Zの上部を形成する上壁部21と、ケース20の高さ方向Zの下部を形成する下壁部23(図3を参照)と、ケース20の長手方向Yについて開口20bと反対側に位置する背面壁部25と、が含まれている。上壁部21は、ケース20の幅方向Xに延びる稜線部21cを隔てて第1板片部21aと第2板片部21bとに分けられる。また、上壁部21の第2板片部21bと背面壁部25との境界部21dがケース20の幅方向Xに延びている。
【0032】
ケース20には、上壁部21の第1板片部21aから上方へ延びる複数の上側フック22と、下壁部23から下方へ延びる複数の下側フック24と、が設けられている。複数の上側フック22と複数の下側フック24はいずれも、ケース20幅方向Xに互いに空間を隔てて配置されている。ケース20は、パネル下部2の裏面に立設された立設壁4の係止孔4aに上側フック22が係合し、パネル下部2の裏面に立設された立設壁5の係止孔5aに下側フック24が係合することによって、パネル下部2に取り付けられる(図3を参照)。
【0033】
ケース20の上壁部21と下壁部23を比較した場合、上壁部21と下壁部23のそれぞれの板厚及び幅方向Xの寸法は同様である。一方で、上壁部21は、長手方向Yについての背面壁部25からの長さが下壁部23の長さを上回るように構成されているため、下壁部23に比べて剛性が相対的に低い低剛性部となる。なお、ケース20の材料は特に限定されるものではないが、外部からの想定荷重に耐え得る強度を有する金属材料を採用するのが好ましい。
【0034】
図2及び図3に示されるように、ニーエアバッグ装置101は、ブラケット部材30を備えている。ブラケット部材30は、ケース20に接合されて一体化されている。このブラケット部材30は、ケース20を車両骨格部7に固定するための複数の固定部31を有する(図2を参照)。このため、ブラケット部材30の複数の固定部31を車両骨格部7にボルトとナット等で固定することによって、ケース20はブラケット部材30を介して車両側に間接的に固定される。
【0035】
ブラケット部材30は、ケース20のうち相対的に剛性が低い低剛性壁部である上壁部21がエアバッグ10から膨張展開初期に受ける荷重によって開口20bにおけるエアバッグ10の突出方向Aと交差する方向A1に膨らむように撓み変形するのを規制するケース変形規制部としての機能を有する。この機能を達成するために、ブラケット部材30は、複数の固定部31を連結する連結板部32と、連結板部32に一体に設けられた補強リブ部としてのU字フランジ部33と、U字フランジ部33から連結板部32とは反対側に延出するように設けられた延出板部34と、を有する。
【0036】
連結板部32は、ケース20の幅方向Xを板幅方向としケース20の高さ方向Yを板厚方向とした板状部分である。この連結板部32は、ケース20の上壁部21の第1板片部21aの表面に接合されている。この連結板部32は、ケース20の上壁部21の第1板片部21aを間に挟んでエアバッグ10の直上に設けられている。
【0037】
延出板部34は、ケース20の幅方向Xを板幅方向としケース20の高さ方向Yを板厚方向とした板状部分である。この延出板部34の板幅は、U字フランジ部33の幅方向Xの寸法と同様である(図2を参照)。この延出板部34は、ケース20の上壁部21の第2板片部21bの表面に接合されている。U字フランジ部33と延出板部34の幅方向Xの寸法を変えることで変形量を変えることもできる。なお、U字フランジ部33と延出板部34の幅方向Xの寸法は必ずしも一致している必要はなく、必要に応じてそれぞれの幅方向Xの寸法を適宜に設定することができる。
【0038】
このように、ブラケット部材30は、連結板部32と延出板部34の両方においてケース20の上壁部21に接合されている、このときの接合には、スポット溶接などの接合手段を利用するのが好ましい。
【0039】
図2及び図3に示されるように、U字フランジ部33は、エアバッグ10の突出方向Aと交差する方向A1に突設されており、且つ、ケース20の幅方向Xに延びるように構成されている。このU字フランジ部33は、ケース20の上壁部21の第1板片部21aを間に挟んでエアバッグ10の直上に設けられている。また、エアバッグ10を間に挟んでこのU字フランジ部33の直下にケース20の下壁部23の下側フック24が配置されている。
【0040】
図3に示されるように、U字フランジ部33は、断面形状が略U字形をなしており、ケース20の長手方向Yについて互いに対向する2つのフランジ壁33a,33bを有する。ここで、フランジ壁33aは、ケース20の稜線部21cの直上の当接点から上方へ突出するように延びており、その突出方向D1がケース20の高さ方向に概ね一致している。これに対して、フランジ壁33bは、ケース20の第1板片部21aとの当接点から延出板部34に平行な仮想平面Mに直交する方向D2に突出するように延びている。
【0041】
次に、エアバッグ10の膨張展開初期におけるケース20の様子について図4及び図5を参照しつつ説明する。
【0042】
図4に示されるように、エアバッグ10は、インフレータ11の作動時に発生したガスによって膨張展開を開始し、収容空間20aから開口20bを通じて突出方向Aへ突出し始める。このとき、ケース20は、エアバッグ10から高さ方向Yの荷重を受ける。
【0043】
ここで、ケース20の上壁部21は、ブラケット部材30によって補強されており剛性が高められている。このため、ケース20の上壁部21は、エアバッグ10から受ける荷重に対して反力を生じ易い。そして、この反力によってケース20の下壁部23が下側フック24とともに下向きに撓み変形する(図4中の二点鎖線を参照)。このため、U字フランジ部33は、ケース20の下壁部23の撓み変形を容易にするケース変形起因部になる。このとき、下壁部23の下側フック24は、エアバッグ10を間に挟んでU字フランジ部33の直下に配置されているため、ケース20の上壁部21によって生じた反力を下側フック24の周辺に効率良く伝えることができる。
【0044】
ケース20の下壁部23の撓み変形に伴い、この下壁部23の下側フック24と係合関係にあるパネル下部2の立設壁5も下向きの荷重を受けて変形する。そして、立設壁5の変形に伴い、エアバッグドア3は下向きの荷重Fを受けてテアライン3aで開裂し易くなる。そして、このようにエアバッグ10の動きを制御することが可能となる結果、エアバッグ10を膨張展開初期の段階で突出方向Aに円滑に突出させることができる。
【0045】
図4及び図5に示されるように、ブラケット部材30は、複数の固定部31を連結する連結板部32がケース20の上壁部21の第1板片部21aに接合されているため、開口20bを拡張されるように第1板片部21aが変形方向E1に撓み変形するのを抑制することができる。
【0046】
また、ブラケット部材30は、U字フランジ部33を備えているため、ケース20の上壁部21の第1板片部21aが、幅方向Xに延びる稜線部21cを中心軸線として変形方向E2に撓み変形するのを抑制することができる。
【0047】
さらに、ブラケット部材30は、その延出板部34がケース20の上壁部21の第2板片部21bに接合されているため、第2板片部21bが、幅方向Xに延びる境界部21dを中心軸線として変形方向E3に撓み変形するのを抑制することができる。
【0048】
次に、上述の実施形態1の作用効果について説明する。
【0049】
実施形態1のニーエアバッグ装置101において、エアバッグ10は、ケース20の収容空間20aから開口20bを通じて乗員Cのための膝部保護空間Sに向けて突出し、この膝部保護空間Sで膨張展開するように構成されている。このとき、ケース変形規制部としてのブラケット部材30は、ケース20のうち相対的に剛性が低く撓み変形し易い低剛性壁部である上壁部21の撓み変形を規制する機能を果たす。
【0050】
このブラケット部材30によれば、ケース20の上壁部21がエアバッグ10から膨張展開初期に受ける荷重によってエアバッグ10の突出方向Aと交差する方向A1に膨らむように撓み変形するのを規制することできる。これにより、エアバッグドア3をテアライン3aで開裂し易くすることでエアバッグ10がケース20の収容空間20aから開口20bを通じて膝部保護空間Sに向けて突出する方向の動きを制御でき、エアバッグ10が膝部保護空間Sまで突出する動きについての指向性を高めることができる。その結果、ケース20の撓み変形が要因で膝部保護空間Sにおけるエアバッグ10の膨張展開後期での動作が邪魔されるのを抑制することができる。
【0051】
乗員Cの体格(例えば、乗員Cの身長や脚部の長さなど)のバラツキが要因で膝部保護空間Sが狭くなるようなときや、パネル下部2の突出部6の影響によって形成された狭小空間Saをエアバッグ10が通過するようなときでも、限られた大きさの空間でエアバッグ10を速やかに膨張展開させるのに有効である。
【0052】
従って、上述の実施形態1によれば、乗員Cのための膝部保護空間Sでエアバッグ10を円滑に膨張展開させることができるニーエアバッグ装置101を提供することが可能になる。
【0053】
実施形態1のニーエアバッグ装置101によれば、複数の固定部31のみを有する既存のブラケット部材に連結板部32を設けて新たなブラケット部材30とし、このブラケット部材30が連結板部32においてケース20の上壁部21の第1板片部21aに接合されることによって、ケース20の上壁部21の撓み変形が規制される。このため、部品点数を増やすことなく、ケース変形規制部を構築することができる。
【0054】
実施形態1のニーエアバッグ装置101によれば、ブラケット部材30に設けられたU字フランジ部33は、ケース20の開口20bにおけるエアバッグ10の突出方向Aと交差する方向A1に突設されており、且つケース20の幅方向Xに延びるように構成されている。ブラケット部材30にU字フランジ部33を設けることにより、ブラケット部材30自体の剛性を高めることで、ケース20の上壁部21の幅方向Xの剛性を高めることができる。また、ブラケット部材30は、ケース20の長手方向Yの異なる二箇所(連結板部32と延出板部34の二箇所)でケース20の上壁部21に接合される。これにより、ケース20の上壁部21の幅方向Xの剛性に加えて上壁部21の長手方向Yの剛性をも高めることができる。
【0055】
以下、上述の実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0056】
(実施形態2)
図6及び図7に示されるように、実施形態2のニーエアバッグ装置201は、ブラケット部材130の構造について、実施形態1のブラケット部材30の構造と相違している。ブラケット部材130は、実施形態1の連結板部32に相当する連結板部132と、実施形態1の延出板部34に相当する延出板部134と、実施形態1のU字フランジ部33に相当する補強リブ部としての接合フランジ部133と、を有する。接合フランジ部133は、連結板部132の立設片132aと、延出板部134の立設片134aとを互いに重ね合わせて合わせ面で接合することによって構成されている。
【0057】
その他の構成については、実施形態1の場合と同様である。
【0058】
実施形態2のニーエアバッグ装置201によれば、ブラケット部材130によってケース20の上壁部21の撓み変形を規制することができる。
【0059】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0060】
本発明は、上記の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記の実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0061】
上述の実施形態では、補強リブ部としてのU字フランジ部33や接合フランジ部133をケース20の上壁部21に対して設ける場合について例示したが、これに代えて、ケース20の下壁部23の方が上壁部21に比べて剛性が低い低剛性部であるときには、下壁部23に補強リブ部を設けるようにしてもよい。
【0062】
上述の実施形態では、ブラケット部材30,130に、連結板部32,132に加えて、補強リブ部(U字フランジ部33或いは接合フランジ部133)と延出板部34,134を設ける場合について例示したが、必要に応じて、ブラケット部材30,130から補強リブ部(U字フランジ部33或いは接合フランジ部133)と延出板部34,134の少なくとも一方が省略された構造を採用することもできる。
【0063】
上述の実施形態では、ブラケット部材30,130の一部によってケース変形規制部を構成する場合について例示したが、これに代えて、ケース20の一部がケース変形規制部となるように構成してもよい。例えば、ケース20の上壁部21を、補強リブ部(U字フランジ部33或いは接合フランジ部133)に相当する形状をなすように部分的に突出させた構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0064】
7 車両骨格部
10 エアバッグ
11 インフレータ
20 ケース
20a 収容空間
20b 開口
21 上壁部(低剛性部)
30 ブラケット部材(ケース変形規制部)
31 固定部
32 連結板部
33 U字フランジ部(補強リブ部)
34 延出板部
101,201 ニーエアバッグ装置
130 ブラケット部材(ケース変形規制部)
132 連結板部
133 接合フランジ部(補強リブ部)
134 延出板部
A 突出方向
A1 突出方向と交差する方向
C 乗員
S 膝部保護空間
X 幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7