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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】天井搬送車
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/04 20060101AFI20231212BHJP
   B61B 3/02 20060101ALI20231212BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B65G1/04 551Z
B61B3/02 Z
H01L21/68 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021089299
(22)【出願日】2021-05-27
(65)【公開番号】P2022182018
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】小林 誠
(72)【発明者】
【氏名】松村 陽平
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-046287(JP,A)
【文献】特開平09-286337(JP,A)
【文献】特開平11-059111(JP,A)
【文献】特開2008-307916(JP,A)
【文献】特開2018-048004(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0229003(US,A1)
【文献】中国実用新案第210258627(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/04
B61B 3/02
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の外輪と、前記一対の外輪の内側に配置された一対の内輪とを含む車輪がレール上を転動して走行する天井搬送車であって、前記外輪の回転軸と前記内輪の回転軸は同じ方向に延び、
走行車本体と、
前記走行車本体に対する回転軸の位置が不動であるように前記走行車本体に取り付けられた前記外輪及び前記内輪の何れか一方と、
前記走行車本体に上下動自在に設けられ車輪フレームと、
前記車輪フレームに取り付けられた前記外輪及び前記内輪の何れか他方と、
前記車輪フレームと前記走行車本体の下面部との間において圧縮された状態で介在される弾性体と、
前記車輪フレームに当接することで前記下面部に対する前記車輪フレームの所定量以上の下降を阻止するストッパと、を備える天井搬送車。
【請求項2】
前記走行車本体の走行方向に交差する方向に移動する横移載機構を備え、
前記外輪は回転軸の位置が前記走行車本体に対して不動であるように前記走行車本体に取り付けられ、前記内輪は前記車輪フレームに取り付けられて上下動可能であり、
前記外輪は前記レール上を転動して前記走行車本体を支持する、請求項1に記載の天井搬送車。
【請求項3】
前記車輪フレームは、シャフト部材を介して前記走行車本体に取り付けられており、前記シャフト部材の軸線を中心に上下方向に揺動自在である、
請求項1又は2に記載の天井搬送車。
【請求項4】
前記レールは、第1走行面と、前記第1走行面よりも高い第2走行面とを含み、
前記外輪は回転軸の位置が前記走行車本体に対して不動であるように前記走行車本体に取り付けられ、前記内輪は前記車輪フレームに取り付けられて上下動可能であり、
前記天井搬送車の走行状態が前記第1走行面上を前記外輪が転動する第1走行状態から、前記第2走行面上を前記内輪が転動する第2走行状態へと変わったときに、前記弾性体は、前記ストッパに対して上昇した前記車輪フレームと前記下面部との間に介在されて上下方向に更に圧縮される、
請求項1~3の何れか一項に記載の天井搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、天井搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天井に吊り下げられた走行レールに沿って走行する天井搬送車が知られている。例えば、特許文献1に記載される天井搬送車において、昇降装置は、複数のベルトが取り付けられる緩衝機構を備えている。把持部が設けられるベース部は、防振部を介して、支持部に対して鉛直方向に移動可能に設けられている。これらの構成により、この天井搬送車は、物品に伝わる振動を低減しつつ、物品の揺れを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/079146号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、天井搬送車が走行する際、レール上を転動する車輪に対し、レールの継ぎ目(接続)部分等において衝撃が加わる場合がある。例えば、あるレールから他のレールに車輪が乗り移る場合等に、レールの接地面(走行面)の高さが想定される高さとは異なる(段差がある)等の理由により、車輪に多少の衝撃が加わり得る。車輪に衝撃が加わると、天井搬送車全体に振動が生じ、結果として搬送物に振動が加わり得る。
【0005】
本開示は、車輪に加わる所定量以上の衝撃を好適に緩和することで天井搬送車全体の振動を抑制することができる天井搬送車を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、レール上を車輪が転動して走行する天井搬送車であって、走行車本体と、走行車本体に上下動自在に設けられる車輪フレームと、車輪フレームに取り付けられる車輪と、車輪フレームと走行車本体の下面部との間において圧縮された状態で介在される弾性体と、車輪フレームに当接することで下面部に対する車輪フレームの所定量以上の下降を阻止するストッパと、を備える。
【0007】
この天井搬送車によれば、通常の走行時には、弾性体は、ストッパに当接する車輪フレームと走行車本体の下面部との間に介在され、圧縮されている。圧縮(プリロード)された弾性体は、容易には縮まないため、通常の走行時においては、加減速時等のようにある程度(所定量以下)の力が加わった際においても車輪フレームはまったく或いはほとんど上下動せず、走行車本体は上下方向の姿勢を変える(前後方向において傾く)ことなく安定した状態で走行する。一方、あるレールから他のレールに車輪が乗り移る場合等に、車輪に所定量以上の衝撃が加わる場合がある。このような場合、この衝撃力によって、車輪フレームと下面部との間の弾性体が更に圧縮される。よって、車輪に加わる所定量以上の衝撃が、圧縮される弾性体によって好適に緩和(吸収)され、その結果として天井搬送車全体の振動を抑制することができる。
【0008】
天井搬送車は、走行車本体の走行方向に交差する方向に移動する横移載機構と、走行車本体に取り付けられ、レール上を転動して走行車本体を支持する補助車輪と、を備えてもよい。この構成によれば、横移載時に、弾性体が偏荷重を受けて圧縮されることがあっても、補助車輪が走行車本体を支持する。よって、横移載時の偏荷重により走行車本体が横方向において傾くのを防止することができる。
【0009】
車輪フレームは、シャフト部材を介して走行車本体に取り付けられており、シャフト部材の軸線を中心に上下方向に揺動自在であってもよい。この構成によれば、上下動自在な車輪フレームを簡易な構成で実現することができる。
【0010】
レールは、第1走行面と、第1走行面よりも高い第2走行面とを含み、天井搬送車の走行状態が第1走行面上を車輪が転動する第1走行状態から、第2走行面上を車輪が転動する第2走行状態へと変わったときに、弾性体は、ストッパに対して上昇した車輪フレームと下面部との間に介在されて上下方向に更に圧縮されてもよい。この構成によれば、レールにおいて段差又は高さの変化が存在する場合等でも、そのような部分を通過して走行状態が変わる際の天井搬送車全体の振動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の天井搬送車によれば、車輪に加わる衝撃が弾性体によって好適に緩和され、その結果として天井搬送車全体の振動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は本開示の一実施形態に係る天井搬送車システムにおける天井搬送車及びレールを示す概略側面図である。
図2図2は天井搬送車の走行部の概略構成を示す斜視図である。
図3図3は走行部における走行車本体と複数の車輪の配置を示す平面図である。
図4図4は走行車本体に対する内輪、車輪フレーム、ストッパ及びスプリングの取付構造(サスペンションユニット)を示す斜視図である。
図5図5はレール上における天井搬送車の走行状態(位置)を示す平面図である。
図6図6図5に続く天井搬送車の走行状態(位置)を示す平面図である。
図7図7図6の走行状態におけるサスペンションユニットを示す側面図である。
図8図8図6に続く天井搬送車の走行状態(位置)を示す平面図である。
図9図9(a)は図8の走行状態におけるサスペンションユニットを示す側面図、図9(b)は図10の走行状態におけるサスペンションユニットを示す側面図である。
図10図10図8に続く天井搬送車の走行状態(位置)を示す平面図である。
図11図11は天井搬送車における他方のサスペンションユニットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1に示されるように、天井搬送車システム1は、軌道4に沿って移動可能な天井搬送車6を用いて、物品10を搬送するためのシステムである。物品10には、例えば、複数の半導体ウェハを格納する容器、ガラス基板を格納する容器、レチクルポッド、一般部品等が含まれる。天井搬送車6(以下、単に「搬送車6」と称する。)は、工場の天井等に敷設された軌道4に沿って走行する。軌道4の側方には、物品10を保管するための載置部8を有する保管棚11が設置されている。載置部8上に、搬送車6から移載された物品10が載置される。保管棚11は、搬送車6から移載された物品10を受け、支持し、保管する。
【0015】
軌道4は、例えば、作業者の頭上スペースである天井付近に敷設されている。軌道4は、例えば、天井から吊り下げられている。軌道4は、搬送車6を走行させるための予め定められた走行路である。軌道4は、例えば、複数の軌道支柱5によって吊り下げ支持される。保管棚11は、複数の棚支柱9によって吊り下げ支持される。
【0016】
搬送車6は、例えば天井走行式無人走行車である。搬送車6は、軌道4に沿って走行し、物品10を搬送する。搬送車6は、例えば、軌道4に沿って+X方向(所定の走行方向)に走行する。搬送車6は、物品10を保管棚11の載置部8に移載可能に構成されている。軌道4を走行する搬送車6は、例えば、物品10をY方向(水平面内における横方向)に沿って移載する。物品10の移載方向であるY方向は、搬送車6の走行方向であるX方向に例えば水平面内において直交する。なお、天井搬送車システム1が備える搬送車6の台数は、特に限定されず、複数である。
【0017】
搬送車6は、搬送車6を軌道4に沿って走行させる走行部18と、例えば、非接触給電で軌道4側から受電する受電通信部20と、を有する。搬送車6は、軌道4の通信線(フィーダー線)等を利用して、図示しないコントローラと通信を行う。なお、搬送車6は、軌道4に沿って設けられた給電線を介してコントローラと通信を行ってもよい。搬送車6は、本体フレーム22と、横移載部24と、θドライブ26と、昇降駆動部28と、昇降台(昇降部)30と、本体カバー33と、を有する。
【0018】
横移載部24は、θドライブ26、昇降駆動部28及び昇降台30を一括してY方向に移動させる。横移載部24の下側に、θドライブ26が取り付けられている。横移載部24は、駆動モータ、ベルト、ギア、プーリ等を有しており、θドライブ26、昇降駆動部28及び昇降台30をY方向に移動させる。なお、横移載部24の構成は、上記に限られず、物品10の横移載を可能とする他の公知な構成が採用されてもよい。
【0019】
θドライブ26は、昇降駆動部28及び昇降台30を保持し、昇降駆動部28を水平面内で所定の角度範囲内で回動させる。昇降駆動部28は、昇降台30をワイヤ、ロープ及びベルト等の吊持材の巻取りないし繰出しによって昇降させる。昇降台30には、把持部31(チャックとも呼ばれる)が設けられている。把持部31は、物品10を把持又は解放することが可能である。昇降台30は、物品10を把持して昇降させる。本体カバー33は、例えば搬送車6の走行方向の前後に一対設けられている。本体カバー33は、図示しない爪等を物品10の下方に対して出没させて、搬送中に物品10が落下することを防止する。
【0020】
搬送車6は、上記した横移載部24、θドライブ26、昇降駆動部28、及び、把持部31を含んだ昇降台30を有する横移載機構7を備える。搬送車6は、横移載機構7により、物品10を保管棚11のバッファ8A(載置部8)との間で移載する。搬送車6は、横移載部24によって昇降駆動部28等を移載し、昇降台30を僅かに昇降させることによって、保管棚11のバッファ8Aとの間で物品10を受け渡しする。
【0021】
搬送車6との間で物品10が受け渡しされる載置部8には、例えば、バッファ8A及び受渡ポート8Bが含まれる。バッファ8Aは、物品10が一時的に載置される載置部である。バッファ8Aは、例えば、天井から棚支柱9により吊り下げられている。例えば、目的とする受渡ポート8Bに他の物品10が載置されている等の理由により、搬送車6が搬送している物品10をその受渡ポート8Bに移載できない場合に、バッファ8Aに物品10が仮置きされる。受渡ポート8Bは、例えば洗浄装置、成膜装置、リソグラフィ装置、エッチング装置、熱処理装置、平坦化装置をはじめとする半導体の処理装置12に対して物品10の受渡を行うための載置部である。なお、処理装置12は、特に限定されず、種々の装置であってもよい。
【0022】
横移載機構7は、バッファ8Aとの間で物品10を受け渡しするため、搬送車6の走行方向に直交する方向(交差する方向)に移動する。図1に示される例では、受渡ポート8Bは、軌道4すなわち搬送車6の真下に位置するが、受渡ポート8Bが、Y方向において軌道4(搬送車6)の位置の側方に配置されてもよい。その場合、搬送車6は、横移載部24によって昇降駆動部28等を移動させ、昇降駆動部28によって昇降台30を昇降させることによって、受渡ポート8B(載置部8)との間で物品10を受け渡しする。すなわち、横移載機構7は、受渡ポート8Bとの間で物品10を受け渡しするため、搬送車6の走行方向に直交する方向(交差する方向)に移動する。
【0023】
以下、図1図3を参照して、搬送車6の走行部18に備えられた、走行振動を低減するための機構について説明する。搬送車6の走行部18は、軌道4のレール4a(図1参照)上を走行車輪40が転動することによって走行する。走行部18は、走行車輪40がレール4aの走行面4b(図1参照)に接触することで生じる走行車輪40と走行面4bとの間の摩擦を利用して、推進力を得る。レール4aの走行面4bは、平坦面をなしており、例えば水平方向に延在する。
【0024】
走行部18は、複数の走行車輪40を有する。図2及び図3に示されるように、走行車輪40は、左右一対の前側の内輪41と、左右一対の前側の外輪42と、左右一対の後側の内輪43と、左右一対の後側の外輪44とを含む。すなわち、搬送車6は、8つの車輪を含む。内輪41及び内輪43は、Y方向(水平方向)に延びる内輪軸線L1を有する。外輪42及び外輪44は、Y方向(水平方向)に延びる外輪軸線L2を有する。一対の内輪41の左右の内輪軸線L1は、例えば同一直線上に位置する。一対の内輪43の左右の内輪軸線L1は、例えば同一直線上に位置する。前側の外輪42及び後側の外輪44についても、外輪軸線L2は、それぞれ同一直線上に位置する。前側の内輪41と外輪42に関して、内輪軸線L1と外輪軸線L2が同一直線上に位置してもよいが、これらがX方向及び/又はZ方向にずれた位置に配置されてもよい。後側の内輪43と外輪44に関しても、内輪軸線L1と外輪軸線L2が同一直線上に位置してもよいが、これらがX方向及び/又はZ方向にずれた位置に配置されてもよい。なお、図2に示されるように、走行部18は、複数のサイドローラ45及び複数の分岐ローラ46を有してもよい。サイドローラ45及び分岐ローラ46の回転軸線はZ方向に延びる。
【0025】
搬送車6では、例えば、合計4つの外輪42,44が、受電通信部20にて受電した電力により回転駆動されて、レール4a上での推進力を発生させる。搬送車6では、例えば、合計4つの内輪41,43は、回転駆動されず、従動回転する。なお、この関係が逆であってもよく、4つの内輪41,43が回転駆動され、4つの外輪42,44が従動回転してもよい。また、走行車輪40を電動モータ等で直接回転駆動するのではなく、走行部18にLDM(Linear DC Motor)を設け、レール4aに磁気プレートを設けることによって走行部18に推力を付与するようにし、走行車輪40を全て従動車輪としてもよい。
【0026】
内輪41の直径は、例えば、外輪42の直径より小さい。内輪41が接触する面と外輪42が接触する面は共通の平坦な走行面(例えば、図5に示される一般走行面71、第1補助走行面72及び第2補助走行面73)であるから、内輪41の下面と外輪42の下面は同じ高さに配置される。その場合、内輪41の内輪軸線L1は、外輪42の外輪軸線L2よりも僅かに低い位置に位置する。内輪43の直径と、外輪44の直径と、これらの内輪軸線L1及び外輪軸線L2についても、同様のことが言える。なお、必ずしも内輪41の直径を外輪42の直径より小さくする必要はなく、例えば内輪41の直径と外輪42の直径を等しくしてもよい。
【0027】
走行部18は、例えば、XY平面に沿って板状に延在する走行車本体15を有する。走行車本体15には、内輪41、外輪42、内輪43、外輪44、サイドローラ45、及び分岐ローラ46が取り付けられる。走行車本体15は、これらの車輪及びローラを取り付けることができる構造であればよく、走行車本体15の形状は板状に限定されない。
【0028】
図3に示されるように、搬送車6は、走行振動を低減するための機構として、2つのサスペンションユニット100を備える。走行車本体15の前後に1つずつ、サスペンションユニット100が設けられている。前側の一対の内輪41は、前側のサスペンションユニット100によって振動低減に寄与する上下動可能な車輪である。後側の一対の内輪43は、後側のサスペンションユニット100によって振動低減に寄与する上下動可能な車輪である。前側の一対の外輪42と、後側の一対の外輪44とは、レール4a上に乗って走行車本体15を支持する補助車輪である。外輪42及び外輪44は、走行車本体15に対して回転自在に取り付けられているが、それらの回転軸の位置は走行車本体15に対して不動であり、したがって外輪42及び外輪44の外輪軸線L2は、走行車本体15に対して不動である。外輪42及び外輪44は、走行車本体15にリジッドに取り付けられている。
【0029】
走行車本体15、及び、走行車本体15に取り付けられる外輪42と外輪44等の構造は、YZ平面に沿って延びる中央面Pに関して、面対称をなしている。したがって、内輪41の前側(図3の図示左側)には、Y方向に離間する2つの取付部55,55が形成されており、内輪41の後側(図3の図示右側)には、Y方向に離間する2つの取付部65,65が形成されている。これらの取付部55及び取付部65は、後述するサスペンションユニット100の構成部品を取り付けるための部分であり、走行車本体15の下面部15aに形成されている。内輪41(内輪軸線L1)を基準として、取付部55及び取付部65は、X方向に等しい距離となる位置に配置されている。一方、内輪43の前側(図3の図示左側)には、Y方向に離間する2つの取付部65,65が形成されており、内輪41の後側(図3の図示右側)には、Y方向に離間する2つの取付部55,55が形成されている。内輪41(内輪軸線L1)を基準として、取付部55及び取付部65は、X方向に等しい距離となる位置に配置されている。なお、外輪42と外輪44はいずれも駆動車輪であるから、それらの回転方向は、当然ながら面対称にはならず、同一の方向である。すなわち、外輪42と外輪44の回転方向は、Y方向から見ていずれも反時計回りである。
【0030】
各車輪について詳細に説明すると、前側の内輪41は、左の内輪41Aと右の内輪41Bとを含む。前側の外輪42は、左の外輪42Aと右の外輪42Bとを含む。後側の内輪43は、左の内輪43Aと右の内輪43Bとを含む。後側の外輪44は、左の外輪44Aと右の外輪44Bとを含む。左右一対の車輪(例えば前側の左の内輪41Aと前側の右の内輪41B等)としては、4組とも、同一の直径を有する同一の車輪が用いられる。走行車本体15の前部において、左の外輪42A、左の内輪41A、右の内輪41B、及び右の外輪42Bは、Y方向に離間して横一列に配設されている。走行車本体15の後部において、左の外輪44A、左の内輪43A、右の内輪43B、及び右の外輪44Bは、Y方向に離間して横一列に配設されている。
【0031】
続いて、図3図4及び図7を参照して、サスペンションユニット100の構成について詳細に説明する。以下の説明では、前側のサスペンションユニット100を例に説明するが、後側のサスペンションユニット100も同様の構成を有する。また、図7では、前側のサスペンションユニット100における右の内輪41Bの挙動が例示されている。以下、サスペンションユニット100を単にユニット100と称する。図4に示されるように、ユニット100は、走行車本体15の下面部15a側に設けられている。ユニット100は、走行車本体15に上下動自在に設けられる左右一対の車輪フレーム56,56と、車輪フレーム56に取り付けられる前側の左の内輪41A及び前側の右の内輪41Bとを備える。
【0032】
車輪フレーム56,56は、1つのシャフト部材50を介して走行車本体15の下面部15a側に取り付けられている。図3及び図4に示されるように、シャフト部材50は、1つの中間部材51と、中間部材51のY方向の両側に設けられた左右一対の支軸部52,52とを含む。中間部材51は、例えば矩形のブロック状を呈しており、2箇所の取付部55において、ビス等によって走行車本体15の下面部15aに固定されている。左右一対の支軸部52,52は、1本の(共通の)揺動軸線LAを有している。
【0033】
車輪フレーム56は、支軸部52が挿通される基部57と、基部57から後方(-X方向)に延びるアーム部58と、アーム部58の後端に設けられた先端部59とを含む。アーム部58は、取付部65の側面に沿ってXZ平面に沿って延びる薄板状をなしており、このアーム部58の側面に、Y方向に突出する車輪軸47を介して前側の左の内輪41A(又は前側の右の内輪41B)が取り付けられている。前側の左の内輪41A及び前側の右の内輪41Bは、車輪軸47の内輪軸線L1を中心に回転自在である。車輪フレーム56は、シャフト部材50の揺動軸線LAを中心に上下方向に揺動自在である。車輪フレーム56の揺動範囲は、後述する構造によって例えば2°程度(又はそれ未満)に限定されるので、アーム部58及び先端部59の移動は、(厳密には弧状の軌跡を描くが)上下動であるとみなせる。
【0034】
ユニット100は、車輪フレーム56の先端部59の上下方向の移動範囲を規制する1つのストッパ64と、一対の先端部59に与圧(プリロード)を与える左右一対のスプリング60,60とを備える。ストッパ64は、1つの取付部65と、取付部65のY方向の両側に設けられた左右一対のストッパ板66,66とを含む。取付部65は、例えば矩形のブロック状を呈しており、2箇所の取付部65において、ビス等によって走行車本体15の下面部15aに固定されている。
【0035】
走行車本体15の下面部15aは平坦面を形成しており、ストッパ板66は、下面部15aに略平行に延びる。ストッパ板66と下面部15aとの間に、車輪フレーム56の先端部59が配置されている。詳細には、先端部59は、取付部65の側面に沿ってXZ平面に沿って延びる先端板部59aと、先端板部59aの下端に連接されてXY平面に沿って延びる板状のスプリング保持部59bとを含む。スプリング保持部59bが、ストッパ板66と下面部15a(これらはいずれもXY平面に沿って延びる)との間に配置されている。
【0036】
車輪フレーム56が揺動すると先端部59のスプリング保持部59bが上下動するが、スプリング保持部59bと下面部15aとの間には、Z方向に延びる軸線を有するスプリング(弾性体)60が介在されている。スプリング60は、例えば、圧縮コイルばねである。スプリング60の上端61は走行車本体15の下面部15aに当接している。例えば、下面部15aに円形の凹部等が形成され、上端61がその凹部に嵌め込まれることで、上端61のX方向及びY方向における移動が規制されてもよい。スプリング60の下端62は、スプリング保持部59b上に突出するピン等からなる保持部材59cによって、スプリング保持部59bに保持されている。
【0037】
更に、車輪フレーム56がY方向から見て時計回りに揺動すると、先端部59のスプリング保持部59bが下降するが、ストッパ64のストッパ板66が、スプリング保持部59bに当接することで、下面部15aに対するスプリング保持部59b(車輪フレーム56)の所定量以上の下降を阻止する。ストッパ64は、車輪フレーム56の可動域を制限する。車輪フレーム56のスプリング保持部59bは、Z方向において、スプリング60の下端62とストッパ板66との間で挟まれている。別の観点では、スプリング60は、走行車本体15の下面部15aとスプリング保持部59bとの間で挟まれている。スプリング保持部59bがスプリング60からの付勢力を受けてストッパ板66に当接する状態において、スプリング保持部59bと下面部15aとの間に介在されたスプリング60は、その自然長よりも短い第1圧縮長を有している(図7参照)。すなわち、スプリング60は、スプリング保持部59bと下面部15aとの間において圧縮された状態で介在されている。
【0038】
この内輪41の初期位置において、内輪41の下端に位置する周面41aの高さは、外輪42の下端に位置する周面の高さに等しい。
【0039】
ユニット100では、内輪41(或いは搬送車6)に所定量以上の衝撃が加わった場合に、その衝撃力がスプリング60を更に縮め、車輪フレーム56の先端部59が上昇する(すなわち下面部15aに近づく)(9(a)参照)。車輪フレーム56の揺動に伴って、アーム部58に取り付けられた内輪41も上下動する。内輪41が上昇した場合に、内輪41が走行車本体15に干渉(接触)しないよう、走行車本体15には、例えば矩形の凹部15b(図4参照)が形成されている。凹部15bは、側方に開放された凹状である場合に限られず、走行車本体15に矩形の開口が設けられてもよい。なお、車輪フレーム56の上限位置においても、車輪フレーム56のアーム部58及び先端部59が走行車本体15に干渉(接触)しないよう、車輪フレーム56の形状に応じて、走行車本体15に凹部又は開口等が形成されている。
【0040】
以上の構成を有するユニット100を備えた搬送車6が、レール4a上を走行する場合のユニット100による振動低減作用について説明する。図5図6図8及び図10では、軌道4が2方向に分岐する部分(いわゆる三角州の部分)が示されている。図5に示されるように、搬送車6は、一般走行面71,71上を走行している。この走行状態S1において、左右の外輪42,44(すなわち前側の左の外輪42A、前側の右の外輪42B、後側の左の外輪44A、及び後側の右の外輪44B)のみが、一般走行面71に接地している。続いて、図6に示されるように、前側の左の内輪41Aが第1補助走行面72に乗り上げる。第1補助走行面72は一般走行面71と同一の高さをもって平坦な走行面を形成している場合、第1補助走行面72に乗り上げた前側の左の内輪41Aには、衝撃は加わらない。
【0041】
図6に示される走行状態S2において、前側の右の外輪42Bの下端に位置する周面41aは、一般走行面71と同一の高さをもって平坦な走行面を形成する第2補助走行面73上の高さに位置する(図7参照)。前側の右の内輪41Bは、平面的に見て間隙G内に位置しており、空中に浮いている。
【0042】
続いて、図8に示されるように、三角州の中央に位置する第3補助走行面74に前側の右の内輪41Bが乗り上げ、前側の右の外輪42Bが第2補助走行面73から離れ始める。この走行状態S3において、第3補助走行面74の接地面(走行面)の高さが想定される高さとは異なり、実際に第2補助走行面73よりも高くなっている場合(図9(a)参照)、前側の右の内輪41Bが段差に乗り上げた際の衝撃荷重により、車輪フレーム56が揺動軸線LAの周りで揺動し、アーム部58及び先端部59がスプリング60の付勢力に抗して上方に移動(ストローク)する。スプリング保持部59bは、ストッパ64のストッパ板66に対して上昇し、ストッパ板66から離れる。このとき、スプリング60は、ストッパ板66に対して上昇したスプリング保持部59bと下面部15aとの間に介在されて、上下方向に第1圧縮長よりも短い第2圧縮長となる。なお、前側の右の内輪41Bは、走行車本体15の凹部15b内に進入する。
【0043】
続いて、図10に示されるように、前側の右の外輪42Bは完全に第2補助走行面73から離れて浮いた状態となり、前側の右の内輪41Bが第3補助走行面74上を走行する。この走行状態S4において、前側の右の内輪41Bは、一段高い第3補助走行面74上を走行するが、スプリング60は第1圧縮長に戻り、前側の右の内輪41Bは上述した初期位置に戻る(図9(b)参照)。
【0044】
このように、レール4aが、一般走行面71及び第2補助走行面73(第1走行面)と、一般走行面71及び第2補助走行面73よりも高い第3補助走行面74(第2走行面)とを含む。搬送車6が一般走行面71及び第2補助走行面73上を走行する走行状態S1,S2(第1走行状態)から、前側の右の内輪41Bが第3補助走行面74上を転動する走行状態S3(第2走行状態)へと変わったときに、スプリング60は、ストッパ64に対して上昇した車輪フレーム56と下面部15aとの間に介在されて上下方向に更に圧縮される。
【0045】
本実施形態の搬送車6によれば、通常の走行時には、スプリング60は、ストッパ64に当接する車輪フレーム56と下面部15aとの間に介在され、圧縮されている。圧縮(プリロード)されたスプリング60は、容易には縮まないため、通常の走行時においては、加減速時等のようにある程度(所定量以下)の力が加わった際においても車輪フレーム56はまったく或いはほとんど上下動せず、走行車本体15は上下方向の姿勢を変える(前後方向において傾く)ことなく安定した状態で走行する。一方、あるレールから他のレールに内輪41(又は内輪43のいずれか)が乗り移る場合等に、内輪41(又は内輪43のいずれか)に所定量以上の衝撃が加わる場合がある。このような場合、この衝撃力によって、車輪フレーム56と下面部15aとの間のスプリング60が更に圧縮される。よって、内輪41(又は内輪43のいずれか)に加わる所定量以上の衝撃が、圧縮されるスプリング60によって好適に緩和(吸収)され、その結果として搬送車6全体の振動を抑制することができる。
【0046】
搬送車6は、走行車本体15の走行方向に直交するY方向に移動する横移載機構7と、走行車本体15に取り付けられ、レール4a上を転動して走行車本体15を支持する外輪42,44とを備える。よって、横移載時に、スプリング60が偏荷重を受けて圧縮されることがあっても、リジッドな外輪42,44が走行車本体15を支持する。よって、横移載時の偏荷重により走行車本体15が横方向において傾くのを防止することができる。
【0047】
車輪フレーム56は、シャフト部材50を介して走行車本体15に取り付けられており、シャフト部材50の揺動軸線LAを中心に上下方向に揺動自在である。これにより、上下動自在な車輪フレーム56が簡易な構成で実現されている。
【0048】
搬送車6の走行状態が一般走行面71及び第2補助走行面73上を前側の右の外輪42Bが転動する走行状態S1,S2(第1走行状態)から、第3補助走行面74上を前側の右の内輪41Bが転動する走行状態S3(第2走行状態)へと変わったときに、スプリング60は、車輪フレーム56と下面部15aとの間に介在されて上下方向に更に圧縮される。レール4aにおいて段差又は高さの変化が存在する場合でも、そのような部分を通過して走行状態が変わる際の搬送車6全体の振動が抑制される。
【0049】
さらに、図11に示される後側のユニット100のように、ユニット100では、X方向に関して180°向きを変えて走行車本体15に取り付けることが可能となっており、部品が共有化されている。すなわち、後側のユニット100では、取付部65にシャフト部材50が取り付けられ、取付部55にストッパ64が取り付けられている。搬送車6では、走行方向である+X方向において、シャフト部材50すなわち揺動軸線LAの後側に内輪41,43すなわち内輪軸線L1が位置する。この位置関係は、図9(a)に示されるような車輪フレーム56及びスプリング60による振動低減には有効である。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。たとえば、車輪フレームは、車輪フレーム56のようにアーム部58を備える形態に限られず、走行車本体15に対して上下動自在な他の形態を採ってもよい。弾性体は、コイルばねからなる場合に限られず、ゴム等の他の弾性部材からなってもよい。
【0051】
内輪41,43が走行車本体15にリジッドに取り付けられ、外輪42,44にユニット100と同様の機構が備えられてもよい。或いは、内輪41,43のユニット100に加えて、外輪42,44にユニット100と同様の機構が備えられてもよい。
【0052】
前側のユニット100又は後側のユニット100のいずれか一方が省略されてもよい。搬送車6が、4つのみの車輪(すなわち一対の内輪41と一対の外輪42)を備えてもよい。走行車本体15に対してリジッドな車輪(上記実施形態における外輪42,44)が省略され、振動低減(衝撃吸収)のための車輪のみが設けられてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…天井搬送車システム、4a…レール、7…横移載機構、15…走行車本体、15a…下面部、41…内輪、42…外輪、43…内輪、44…外輪、50…シャフト部材、56…車輪フレーム、60…スプリング(弾性体)、64…ストッパ、LA…揺動軸線(シャフト部材50の軸線)、100…サスペンションユニット。
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