(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】冷却システム
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
H05K7/20 M
H05K7/20 B
H05K7/20 F
(21)【出願番号】P 2021106093
(22)【出願日】2021-06-25
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 誠也
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-18737(JP,A)
【文献】実開平1-73996(JP,U)
【文献】実開昭55-34628(JP,U)
【文献】特開昭59-136997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(2)の自動運転制御に関する処理を実行する自動運転制御装置(3)を、冷却する冷却システム(1)であって、
前記車両の外界をセンシングしたセンサデータを前処理する前処理回路モジュール(30)と、前処理された前記センサデータに基づいて前記外界の認識処理を実行する認識回路モジュール(31)と、を有する前記自動運転制御装置と、
前記前処理回路モジュール及び前記認識回路モジュールを、絶縁液体(8)と共に収容する筐体ユニット(6)とを、備え、
前記前処理回路モジュールは、前記絶縁液体外への配置により空冷され、
前記認識回路モジュールは、前記絶縁液体内への浸漬により液冷される冷却システム。
【請求項2】
前記筐体ユニットと熱伝導可能に接続される熱伝導体(7)を、有し、
前記前処理回路モジュールは、前記前処理に伴う発熱量が異なる複数の発熱素子を、有し、それら発熱素子のうち、前記発熱量の高い側の発熱素子が前記熱伝導体に熱伝導可能に接続される請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
前記筐体ユニットは、前記絶縁液体を収容する浸漬室(620、631)と、前記浸漬室とは隔絶される空気室(610、630)とを、形成し、
前記前処理回路モジュールは、前記空気室内に配置され、
前記認識回路モジュールは、前記浸漬室内に配置される請求項1又は2に記載の冷却システム。
【請求項4】
前記筐体ユニットは、前記空気室(610)を形成する空気室形成ケーシング(61)と、前記浸漬室(620)を形成する浸漬室形成ケーシング(62)とを、結合した状態で有する請求項3に記載の冷却システム。
【請求項5】
前記筐体ユニットは、前記空気室(610)を形成する空気室形成ケーシング(61)と、前記浸漬室(620)を形成する浸漬室形成ケーシング(62)とを、分離した状態で有する請求項3に記載の冷却システム。
【請求項6】
前記前処理回路モジュールが実装される第一実装面(360)と、前記第一実装面とは反対側において前記認識回路モジュールが実装される第二実装面(361)とを、有する共通基板(36)を、さらに備え、
前記筐体ユニットは、前記共通基板を収容する共通ケーシング(63)を、有し、
前記空気室(630)は、前記共通ケーシングと前記第一実装面とによって区画され、
前記浸漬室(631)は、前記共通ケーシングと前記第二実装面とによって区画される請求項3に記載の冷却システム。
【請求項7】
前記前処理回路モジュール及び前記認識回路モジュールが実装された共通基板(37)を、さらに備え、
前記筐体ユニットは、前記絶縁液体及び前記共通基板が収容される共通室(640)を、形成し、
前記共通室において、前記前処理回路モジュールが前記絶縁液体よりも上方の大気空間内に位置し、前記認識回路モジュールが前記絶縁液体内に位置する請求項1又は2に記載の冷却システム。
【請求項8】
前記自動運転制御装置は、前記前処理回路モジュール及び前記認識回路モジュールのうち少なくとも一方をバックアップ処理するバックアップ回路モジュール(32)を、さらに有し、
前記バックアップ回路モジュールは、収容される前記筐体ユニット内において前記絶縁液体外への配置により空冷される請求項1ないし7のいずれか一項に記載の冷却システム。
【請求項9】
前記前処理回路モジュールは、複数の外界センサ(4)から取得したセンサデータを前処理し、
前記バックアップ回路モジュールは、前記前処理回路モジュールのバックアップ処理として、前記複数の外界センサの一部から取得したセンサデータを前処理する、請求項8に記載の冷却システム。
【請求項10】
前記認識回路モジュールは、グラフィックスプロセッシングユニット(311)を有する請求項1ないし9のいずれか一項に記載の冷却システム。
【請求項11】
前記認識回路モジュールは、第一グラフィックスプロセッシングユニットである前記グラフィックスプロセッシングユニットと並列に設けられる第二グラフィックスプロセッシングユニット(313)を有する請求項10に記載の冷却システム。
【請求項12】
前記認識回路モジュールは、前記グラフィックスプロセッシングユニットと組み合わされる中央処理装置(310)を、有する請求項10又は11に記載の冷却システム。
【請求項13】
前記認識回路モジュールは、第一中央処理装置である前記中央処理装置と並列に設けられる第二中央処理装置(312)を有する請求項12に記載の冷却システム。
【請求項14】
前記認識回路モジュールは、前処理された前記センサデータに基づいてパス計画処理をさらに実行する請求項1ないし13のいずれか一項に記載の冷却システム。
【請求項15】
前記筐体ユニットとの間において循環される前記絶縁液体から放熱させる放熱ユニット(11)を、さらに備える請求項1ないし14のいずれか一項に記載の冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動運転制御装置を冷却する冷却システムに、関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転制御装置は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に開示の自動運転制御装置は、多数のセンサからの膨大なセンサデータを処理することで、車両の自動制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるような自動運転制御装置は、膨大なセンサデータを処理することで、処理に伴う発熱量が増大する。そこで、自動運転制御装置を高効率で稼働させるためには、当該制御装置を冷却する必要がある。ここで冷却方法としては、自動運転制御装置を絶縁液体に浸漬して冷却する液冷が、考えられる。しかし、膨大なセンサデータを処理する自動運転制御装置では、回路サイズが増大するため、当該制御装置全体を液冷しようとすると、大量の絶縁液体が必要となる。
【0005】
本開示の課題は、液冷に必要な絶縁液体量を低減して効率的に自動運転制御装置を冷却する冷却システムを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、課題を解決するための本開示の技術的手段について、説明する。なお、特許請求の範囲及び本欄に記載された括弧内の符号は、後に詳述する実施形態に記載された具体的手段との対応関係を示すものであり、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
本開示の一態様は、
車両(2)の自動運転制御に関する処理を実行する自動運転制御装置(3)を、冷却する冷却システム(1)であって、
車両の外界をセンシングしたセンサデータを前処理する前処理回路モジュール(30)と、前処理されたセンサデータに基づいて外界の認識処理を実行する認識回路モジュール(31)と、を有する自動運転制御装置と、
前処理回路モジュール及び認識回路モジュールを、絶縁液体(8)と共に収容する筐体ユニット(6)とを、備え、
前処理回路モジュールは、絶縁液体外への配置により空冷され、
認識回路モジュールは、絶縁液体内への浸漬により液冷される。
【0008】
一態様によると、自動運転制御装置のうち、前処理回路モジュールは絶縁液体外に配置され、認識回路モジュールは絶縁液体内に浸漬される。これによれば、外界の認識処理という比較的高負荷の処理を実行する認識回路モジュールは、絶縁液体内への浸漬により液冷とする一方で、センサデータの前処理という比較的低負荷の処理を実行する前処理回路モジュールは、絶縁液体外への配置により空冷とすることができる。故に、自動運転制御装置全体を液冷する場合に比べて、必要な絶縁液体量を低減し、効率的に自動運転制御装置を冷却することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第一実施形態による自動運転制御装置の搭載された車両を示す模式図である。
【
図2】第一実施形態による自動運転制御装置の詳細構成を示すブロック図である。
【
図3】第一実施形態による冷却システムを示す模式図である。
【
図4】第一実施形態による筐体ユニット及び自動運転制御装置を示す断面図である。
【
図5】第二実施形態による筐体ユニット及び自動運転制御装置を示す断面図である。
【
図6】第三実施形態による筐体ユニット及び自動運転制御装置を示す断面図である。
【
図7】他の実施形態による筐体ユニット及び自動運転制御装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、複数の実施形態を図面に基づき説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことで、重複する説明を省略する場合がある。また、各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。さらに、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。
【0011】
(第一実施形態)
第一実施形態の冷却システム1は、
図1に示す車両2に搭載されて、自動運転制御装置3を冷却する。自動運転制御装置3は、複数の外界センサを含む外界センサ群4からのセンサデータに基づいて、車両2の自律運転に関わる処理を実行する。自動運転制御装置3は、車両2の車体内又はルーフ上等に配置される。
【0012】
外界センサ群4の各外界センサは、車両2の周辺環境となる外界の情報を、取得する。ここで外界センサは、車両2の外界に存在する物標を検知することで、外界情報を取得してもよい。物標検知タイプの外界センサは、例えばカメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging / Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダ、及びソナー等のうち、少なくとも一種類である。外界センサは、車両2の外界に存在するGNSS(Global Navigation Satellite System)の人工衛星から測位信号を受信することで、外界情報を取得してもよい。測位タイプの外界センサは、例えばGNSS受信機等である。外界センサは、車両2の外界に存在するV2Xシステムとの間において通信信号を送受信することで、外界情報を取得してもよい。通信タイプの外界センサは、例えばDSRC(Dedicated Short Range Communications)通信機、セルラV2X(C-V2X)通信機、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)機器、Wi-Fi(登録商標)機器、及び赤外線通信機器等のうち、少なくとも一種類である。
【0013】
図1に示す自動運転制御装置3は、例えばLAN(Local Area Network)回線、ワイヤハーネス、内部バス、及び無線通信回線等のうち、少なくとも一種類を介して外界センサ群4と制御系5に接続されている。制御系5は、実際に車両2の運転を制御する、操舵制御装置等である。
【0014】
図2に示すように自動運転制御装置3は、それぞれプロセッサ及び図示しないメモリを少なくとも一つずつ含んで構成される、前処理回路モジュール30、認識回路モジュール31、バックアップ回路モジュール32、及び車両IF(インターフェース)回路モジュール33を有する。これら各回路モジュール30,31,32,33は、例えばLAN(Local Area Network)回線、ワイヤハーネス、内部バス、及び無線通信回線等のうち、少なくとも一種類を介して相互に通信可能に接続されている。
【0015】
前処理回路モジュール30は、外界センサ群4によって外界をセンシングしたセンサデータを前処理する。前処理回路モジュール30は、通信インターフェース300,301と、中央処理装置(CPU)302とを有する。通信インターフェース300は、外界センサ群4のうち一部の外界センサと直接接続され、該接続された外界センサからのセンサデータを取得する。通信インターフェース301は、後述するバックアップ回路モジュール32の通信インターフェース320と接続され、外界センサ群4のうち通信インターフェース300と直接接続されていない外界センサからのセンサデータを、後述するようにバックアップ回路モジュール32を介して取得する。
【0016】
中央処理装置302は、通信インターフェース300,301によって取得したセンサデータに対して前処理を行う。中央処理装置302は、各通信インターフェース300,301を通じて取得した外界センサ群4を構成する複数外界センサからのセンサデータを、認識回路モジュール31へ送る前の前処理として、それら外界センサ間の同期タイミング毎に統合する。
【0017】
前処理回路モジュール30においてそれぞれチップとして形成される通信インターフェース300,301及び中央処理装置302は、処理に伴って発熱する、発熱素子といえる。通信インターフェース300,301、及び中央処理装置302は、処理に伴う発熱量がそれぞれ異なっており、中央処理装置302では、各通信インターフェース300,301と比べて、処理に伴う発熱量が高くなっている。以上より、センサデータの前処理という比較的低負荷の処理を実行する前処理回路モジュール30では、全体としての発熱量が、後述する認識回路モジュール31と比べて低くなっている。
【0018】
認識回路モジュール31は、前処理回路モジュール30によって前処理されたセンサデータに基づいて、認識処理とパス計画処理とを実行する。認識回路モジュール31は、認識処理として、車両2の外界状況及びその中での車両2の置かれた状況を、統合されたセンサデータから把握する。認識回路モジュール31は、パス計画処理として、車両2に将来走行させる経路及び軌道を含む走行パスを、計画する。パス計画処理は、センサデータに応じた車両2の将来走行を制御するために、例えばシミュレーション等の演算によって実行されてもよい。認識回路モジュール31は、認識処理及びパス計画処理を共同して実行する、第一中央処理装置310及び第一グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)311を有する。
【0019】
認識回路モジュール31は、第一中央処理装置310と並列処理可能に設けられた第二中央処理装置312と、第一グラフィックスプロセッシングユニット311と並列処理可能に設けられた第二グラフィックスプロセッシングユニット313とを有するように、冗長設計されている。このような冗長設計により認識回路モジュール31は、第一中央処理装置310及び第一グラフィックスプロセッシングユニット311と、第二中央処理装置312及び第二グラフィックスプロセッシングユニット313とによって、認識処理及びパス計画処理を並行して実行する。第一中央処理装置310及び第一グラフィックスプロセッシングユニット311の少なくとも一方に異常が発生している場合には、第二中央処理装置312及び第二グラフィックスプロセッシングユニット313によって、認識処理及びパス計画処理を継続可能となる。逆に、第二中央処理装置312又は第二グラフィックスプロセッシングユニット313に異常が発生している場合には、第一中央処理装置310及び第一グラフィックスプロセッシングユニット311によって、認識処理及びパス計画処理を継続可能となる。
【0020】
認識回路モジュール31においてそれぞれチップとして形成される中央処理装置310,312、及びグラフィックスプロセッシングユニット311,313は、処理に伴って発熱する、発熱素子といえる。ここで、認識処理及びパス計画処理という比較的高負荷の処理を並列実行する中央処理装置310,312及びグラフィックスプロセッシングユニット311,313では、処理に伴う発熱量が高くなっている。特に、認識処理及びパス計画処理において画像処理に特化したグラフィックスプロセッシングユニット311,313では、中央処理装置310,312よりも発熱量が高い。したがって、認識回路モジュール31全体としての発熱量は、自動運転制御装置3における前処理回路モジュール30、後述するバックアップ回路モジュール32及び車両IF回路モジュール33と比べて高くなっている。
【0021】
バックアップ回路モジュール32は、前処理回路モジュール30及び認識回路モジュール31のうち少なくとも一方をバックアップする、バックアップ処理を実行する。バックアップ回路モジュール32は、通信インターフェース320,321と、中央処理装置322とを有する。通信インターフェース321は、外界センサ群4一部の外界センサと接続され、該接続された外界センサからセンサデータを取得する。通信インターフェース321によって取得されるセンサデータは、バックアップ処理に必要な最低限のセンサデータである。通信インターフェース321によって取得されたセンサデータは、通信インターフェース320を介して前処理回路モジュール30へと渡される。中央処理装置322は、前処理回路モジュール30及び認識回路モジュール31のうち少なくとも一方に異常が発生した場合に、異常が発生した回路モジュール30,31の処理の少なくとも一部を代替可能に構成されている。
【0022】
バックアップ回路モジュール32においてそれぞれチップとして形成される通信インターフェース320,321及び中央処理装置322は、処理に伴って発熱する、発熱素子といえる。通信インターフェース320,321及び中央処理装置322は、処理に伴う発熱量がそれぞれ異なっており、中央処理装置322では、各通信インターフェース320,321と比べて、処理に伴う発熱量が高い。以上より、バックアップ処理という比較的低負荷の処理を実行するバックアップ回路モジュール32では、全体としての発熱量が、認識回路モジュール31と比べて低くなっている。
【0023】
車両IF回路モジュール33は、認識回路モジュール31によって演算されたパス計画に基づいて車両2の制御目標を演算し、制御系5へ出力する。車両IF回路モジュール33は、制御目標を演算する中央処理装置330と、演算された制御目標を制御系5へ出力する通信インターフェース331と、を有する。車両IF回路モジュール33においてそれぞれチップとして形成される中央処理装置330及び通信インターフェース331は、処理に伴って発熱する、発熱素子といえる。中央処理装置330及び通信インターフェース331は、処理に伴う発熱量がそれぞれ異なっており、中央処理装置330では、通信インターフェース331と比べて、処理に伴う発熱量が高くなっている。以上より、車両2の制御目標演算という比較的低負荷の処理を実行する車両IF回路モジュール33では、全体としての発熱量が、認識回路モジュール31の発熱量と比べて低くなっている。
【0024】
図3に示す冷却システム1は、自動運転制御装置3に加えて、筐体ユニット6、ポンプ10、放熱ユニット11、フィルタ12、及び配管13を備える。筐体ユニット6と、ポンプ10と、放熱ユニット11と、フィルタ12とは、配管13を介して連結されることで、冷媒回路を構成している。冷却システム1は、内部を循環する絶縁液体8によって、筐体ユニット6に収容された自動運転制御装置3を冷却する。
【0025】
絶縁液体8は、冷却対象である自動運転制御装置3を収容する筐体ユニット6の内部に、上流側の配管13から流入し、下流側の配管13へと排出されることで、冷却システム1内を循環する。循環により筐体ユニット6内には、実質一定容積にて絶縁液体8が収容される。循環される絶縁液体8としては、絶縁性と高い熱伝導性を有する種々の浸漬冷却用冷媒が、使用可能である。
【0026】
ポンプ10は、電動モータ部及び圧送部等を主体として構成される、例えば容積式ポンプ又は非容積式ポンプ等である。ポンプ10は電動モータ部の発生する回転力によって圧送部を駆動することで、上流側の配管13から吸入される絶縁液体8を下流側の配管13へ圧送する。ポンプ10は、絶縁液体8を圧送することで、筐体ユニット6と放熱ユニット11との間に、絶縁液体8を循環させる。
【0027】
放熱ユニット11は、積層管内の絶縁液体8と積層管外の外気との間での熱交換により絶縁液体8から外気へ放熱させる、例えばラジエータ等である。放熱ユニット11は、例えば車両2の前部等に配置されることで、絶縁液体から外気へと放熱させる。
【0028】
フィルタ12は、絶縁液体8内の異物を捕集する、例えばメッシュフィルタ、積層フィルタ、又は不織布フィルタ等である。フィルタ12は、冷却システム1において筐体ユニット6よりも上流側に配置されることで、配管13から筐体ユニット6へ流入する絶縁液体8中の異物を除去する。
【0029】
図4に示す第一実施形態の筐体ユニット6は、内部に空気室610を区画する空気室形成ケーシング61と、内部に浸漬室620を区画する浸漬室形成ケーシング62と、を有する。空気室形成ケーシング61は、筐体ユニット6全体の重量を軽量化する観点から、軽量な樹脂材料により形成される。なお、空気室形成ケーシング61の材料は樹脂材料以外に、例えばアルミニウム等の軽量な金属材料によって形成されてもよい。一方、浸漬室形成ケーシング62は、筐体ユニット6全体の重量を軽量化する観点に加えて、後述する熱伝導体7からの熱を効率的に絶縁液体8へと伝える観点から、例えばアルミニウム等の軽量かつ熱伝導性の高い金属材料によって形成される。
【0030】
空気室形成ケーシング61は、一面の開口したカップ形状を呈している。空気室形成ケーシング61においてカップ形状の開口側の端部は、浸漬室形成ケーシング62の外側上面に結合されている。結合の方法としては、例えば接着剤を用いた接着等、種々の結合方法を採用可能である。浸漬室形成ケーシング62への結合により空気室形成ケーシング61は、浸漬室形成ケーシング62の外側上面と共同して空気室610を区画している。空気室形成ケーシング61の区画する空気室610内は、空気で充たされている。なお、空気室形成ケーシング61は単一の部材から形成されてもよく、複数部材を結合することで形成されてもよい。
【0031】
空気室610には、前処理回路モジュール30、バックアップ回路モジュール32、及び車両IF回路モジュール33の実装された空冷基板34が、収容されている。空冷基板34は、例えばプリント基板等であり、絶縁性を有する基材の表面及び裏面に配線パターンを形成している。空冷基板34には、例えば耐腐食性コーティング等の酸化に対する耐腐食加工が施されていてもよい。空冷基板34は浸漬室形成ケーシング62の外側上面から突出する突出部621に載置されることで、浸漬室形成ケーシング62の外側上面から離れるように配置されている。空冷基板34は、例えば図示しないねじ等の締結部材によって、突出部621に結合されている。このような空冷基板34の配置によれば、空冷基板34上の各回路モジュール30,32,33は、浸漬室620に収容される絶縁液体外に配置されることになる。したがって、空冷基板34上の各回路モジュール30,32,33は、空気室610内の空気にて空冷される。
【0032】
なお、
図4~6では、車両IF回路モジュール33の図示を省略しているが、車両IF回路モジュール33は、前処理回路モジュール30及びバックアップ回路モジュール32と同様に、空冷基板34上に配置されている。また、
図4~6では、配管13の図示を省略しているが、絶縁液体8が浸漬室620と放熱ユニット11との間で循環可能なように配管13は、浸漬室620内部と連通している。
【0033】
図4に示すように、前処理回路モジュール30のうち発熱量の低い側の発熱素子である通信インターフェース300,301と、バックアップ回路モジュール32のうち発熱量の低い側の発熱素子である通信インターフェース320,321とは、空冷基板34の上側実装面又は下側実装面に実装されている。また、図示していない車両IF回路モジュール33のうち発熱量の低い側の発熱素子である通信インターフェース331も、空冷基板34の上側実装面又は下側実装面に実装される。このような構成により、通信インターフェース300,301,320,321,331は、空気室610内の空気により空冷される。
【0034】
一方、前処理回路モジュール30のうち発熱量の高い側の発熱素子である中央処理装置302と、バックアップ回路モジュール32のうち発熱量の高い側の発熱素子である中央処理装置322とは、空冷基板34の実装面のうち、浸漬室形成ケーシング62の外側上面と対向する下側実装面に実装されている。また、図示していない車両IF回路モジュール33のうち発熱量の高い側の発熱素子である中央処理装置330も、空冷基板34の下側実装面に実装される。これら中央処理装置302,322,330と浸漬室形成ケーシング62の外側上面との間には、それぞれ異なる熱伝導体7が挟まれている。各熱伝導体7としては、例えば熱伝導ゲル又は熱伝導シート等の、種々の熱伝導体を使用可能である。各熱伝導体7は、中央処理装置302,322,330及び浸漬室形成ケーシング62と熱伝導可能に接続されている。
【0035】
このような構成により、中央処理装置302,322,330は、空気室610内の空気により空冷される。さらに中央処理装置302,322,330の熱は、熱伝導体7及び浸漬室形成ケーシング62を介して、浸漬室620内の絶縁液体8へと放熱される。また、浸漬室形成ケーシング62の内側上面には、浸漬室形成ケーシング62から絶縁液体8への熱伝導を促進するように、放熱フィン623が設けられている。放熱フィン623は、浸漬室形成ケーシング62の一部として形成されてもよい。あるいは放熱フィン623は、浸漬室形成ケーシング62とは別体に形成されて、浸漬室形成ケーシング62内側上面に設置されてもよい。
【0036】
浸漬室形成ケーシング62は、空気室610と隔絶された浸漬室620を区画する、略直方体形状を呈している。浸漬室形成ケーシング62の区画する浸漬室620内は、上述したように配管13を通じて循環する絶縁液体8によって充たされている。浸漬室形成ケーシング62の形状は、内部に浸漬室620を区画していればよく、直方体形状に限定されない。浸漬室形成ケーシング62は、例えば円柱形状等であってもよい。浸漬室形成ケーシング62は、複数部材を結合することで形成されている。なお、
図4においては、浸漬室形成ケーシング62を形成する各部材の図示を、省略している。
【0037】
浸漬室620には、認識回路モジュール31の中央処理装置310,312及びグラフィックスプロセッシングユニット311,313の実装された浸漬基板35が、収容されている。浸漬基板35は浸漬室形成ケーシング62の内側下面から突出する突出部622上に載置されることで、浸漬室形成ケーシング62の内側下面から離れるように配置されている。浸漬基板35は、例えば図示しないねじ等の締結部材によって、突出部622に結合されている。浸漬室620には、放熱ユニット11により放熱された絶縁液体8が流入する。絶縁液体8が収容された浸漬室620に配置されることで浸漬基板35は、全体的に絶縁液体8内に浸漬可能となっている。浸漬基板35の絶縁液体8内への浸漬により、浸漬基板35上の認識回路モジュール31が液冷される。浸漬基板35は、例えばプリント基板等であり、絶縁性を有する基材の表面及び裏面に配線パターンを形成している。浸漬基板35には、例えば耐腐食性コーティング等の絶縁液体8に対する耐腐食加工が施されている。
【0038】
(作用効果)
以上説明した第一実施形態の作用効果を、以下に説明する。
【0039】
第一実施形態では、自動運転制御装置3のうち、前処理回路モジュール30は絶縁液体8外に配置され、認識回路モジュール31は絶縁液体8内に浸漬される。これによれば、外界の認識処理という比較的高負荷の処理を実行する認識回路モジュール31は、絶縁液体8内への浸漬により液冷とする一方で、センサデータの前処理という比較的低負荷の処理を実行する前処理回路モジュール30は、絶縁液体8外への配置により空冷とすることができる。故に、自動運転制御装置3全体を液冷する場合に比べて、必要な絶縁液体量を低減し、効率的に自動運転制御装置3を冷却することが可能となる。
【0040】
第一実施形態の前処理回路モジュール30は、前処理に伴う発熱量が異なる複数の発熱素子を、有する。そこで、これら発熱素子のうち発熱量の高い側の発熱素子である中央処理装置302と、筐体ユニット6とが、熱伝導体7に対して熱伝導可能に接続される。これによれば、前処理回路モジュール30における高発熱量側の発熱素子からの熱を、熱伝導体7及び筐体ユニット6を介して絶縁液体8まで伝導させることができる。故に、空冷される前処理回路モジュール30であっても高発熱量側の発熱素子は、絶縁液体8外からの絶縁液体8への熱伝導も利用して冷却することができる。故に、前処理回路モジュール30における高発熱量側の発熱素子も含めて液冷する場合に比べて、必要な絶縁液体量を低減し、効率的に自動運転制御装置3を冷却することが可能となる。
【0041】
第一実施形態では、前処理回路モジュール30が配置される空気室610とは隔絶された浸漬室620内に、認識回路モジュール31が配置される。これによれば、認識回路モジュール31が配置される浸漬室620に限定して絶縁液体8を収容することで、前処理回路モジュール30が配置される空気室610にまで絶縁液体8を収容する場合に比べて、必要な絶縁液体量を低減することができる。故に、効率的に自動運転制御装置3を冷却することが可能となる。
【0042】
第一実施形態では、筐体ユニット6は、空気室610を形成する空気室形成ケーシング61と、浸漬室620を形成する浸漬室形成ケーシング62と、を有する。これによれば、自動運転制御装置3の各回路モジュール30,31,32,33を物理的に分離した構成において、それら回路モジュール30,31,32,33の一つである認識回路モジュール31の配置される浸漬室620に限定して絶縁液体8を収容することで、必要な絶縁液体量を低減することができる。故に、効率的に自動運転制御装置3を冷却することが可能となる。
【0043】
第一実施形態では、前処理回路モジュール30及び認識回路モジュール31のうち少なくとも一方をバックアップ処理するバックアップ回路モジュール32は、収容される筐体ユニット6内において絶縁液体8外に配置される。これによれば、バックアップ処理という比較的低負荷となる処理を実行するバックアップ回路モジュール32も、前処理回路モジュール30と同様に空冷とすることができる。故に、バックアップ回路モジュール32までも液冷する場合に比べて、必要な絶縁液体量を低減し、効率的に自動運転制御装置3を冷却することが可能となる。
【0044】
第一実施形態のバックアップ回路モジュール32は、バックアップ処理に伴う発熱量が異なる複数の発熱素子を、有する。そこで、それら発熱素子のうち発熱量の高い側の発熱素子である中央処理装置322と、筐体ユニット6とが、熱伝導体7に対して熱伝導可能に接続される。これによれば、バックアップ回路モジュール32における高発熱量側の発熱素子からの熱を、熱伝導体7及び筐体ユニット6を介して絶縁液体8まで伝導することができる。故に、空冷されるバックアップ回路モジュール32であっても高発熱量側の発熱素子は、絶縁液体8外からの絶縁液体8への熱伝導も利用して冷却することができる。故に、バックアップ回路モジュール32における高発熱量側の発熱素子も含めて液冷する場合に比べて、必要な絶縁液体量を低減し、効率的に自動運転制御装置3を冷却することが可能となる。
【0045】
第一実施形態では、バックアップ回路モジュール32が配置される空気室610とは隔絶された浸漬室620内に、認識回路モジュール31が配置される。これによれば、認識回路モジュール31が配置される浸漬室620に限定して絶縁液体8を収容することで、バックアップ回路モジュール32が配置される空気室610にまで絶縁液体8を収容する場合に比べて、必要な絶縁液体量を低減することができる。故に、効率的に自動運転制御装置3を冷却することが可能となる。
【0046】
第一実施形態では、車両IF回路モジュール33がバックアップ回路モジュール32と同様に配置されている。したがって、上記したバックアップ回路モジュール32の配置によって得られる効果を、車両IF回路モジュール33の配置によっても同様に得ることができる。
【0047】
第一実施形態の放熱ユニット11は、筐体ユニット6との間において循環される絶縁液体8から放熱させる。これによれば、認識回路モジュール31から絶縁液体8へ伝導した熱を、筐体ユニット6外において放出することができる。故に、絶縁液体8による認識回路モジュール31の冷却効果を持続させることで、効果的に自動運転制御装置3を冷却することが可能となる。
【0048】
第一実施形態では、バックアップ回路モジュール32は、前処理回路モジュール30のバックアップ処理として、外界センサ群4の一部から取得したセンサデータを前処理する。これによれば、前処理回路モジュール30に異常が発生した場合には、バックアップ回路モジュール32が前処理回路モジュール30による前処理の一部を代替することで、車両2の自動運転制御を継続することが可能となる。
【0049】
第一実施形態では、液冷される認識回路モジュール31は、処理に伴う発熱量が高い発熱素子であるグラフィックスプロセッシングユニット311を、有する。これによれば、高発熱量のグラフィックスプロセッシングユニット311を含めて液冷することで、効率的に自動運転制御装置3を冷却することが可能となる。
【0050】
第一実施形態では、液冷される認識回路モジュール31は、第一グラフィックスプロセッシングユニット311と並列に設けられる第二グラフィックスプロセッシングユニット313を、有する。これによれば、外界の認識処理及びパス計画処理を、第一、第二グラフィックスプロセッシングユニット311,313によって並行して実行することができる。また、第一、第二グラフィックスプロセッシングユニット311,313のうち、一方に異常が発生した場合にも、異常が発生していない他方によって、外界の認識処理及びパス計画処理を継続することができる。しかも、高発熱量の第二グラフィックスプロセッシングユニット313を含めて液冷するので、効率的に自動運転制御装置3を冷却することが可能となる。
【0051】
第一実施形態では、液冷される認識回路モジュール31は、処理に伴う発熱量が高い発熱素子である中央処理装置310を、有する。これによれば、高発熱量の中央処理装置310を含めて液冷することで、効率的に自動運転制御装置3を冷却することが可能となる。
【0052】
第一実施形態では、液冷される認識回路モジュール31は、第一中央処理装置310と並列に設けられる第二中央処理装置312を有する。これによれば、外界の認識処理及びパス計画処理を、第一、第二中央処理装置310,312によって並行して実行することができる。これにより第一、第二中央処理装置310,312のうち、一方に異常が発生した場合にも、異常が発生していない他方によって、外界の認識処理及びパス計画処理を継続することができる。しかも、高発熱量の第二中央処理装置312を含めて液冷するので、効率的に自動運転制御装置3を冷却することが可能となる。
【0053】
第一実施形態では、液冷される認識回路モジュール31はパス計画処理を実行する。これによれば、パス計画処理という比較的高負荷の処理を実行する認識回路モジュール31を液冷することで、効率的に自動運転制御装置3を冷却することが可能となる。
【0054】
(第二実施形態)
図5に示すように第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。第二実施形態では、自動運転制御装置3及び筐体ユニット6の構成が第一実施形態と異なっている。
【0055】
第二実施形態の筐体ユニット6は、
図5に示す共通ケーシング63を有する。共通ケーシング63は、筐体ユニット6全体の重量を軽量化する観点、及び、熱伝導体7からの熱を効率的に絶縁液体8へと伝える観点から、例えばアルミニウム等の軽量かつ熱伝導性の高い金属材料によって形成される。
【0056】
共通ケーシング63は、内部に空気室630及び浸漬室631を区画する略直方体形状を呈している。共通ケーシング63の形状は内部に空気室630及び浸漬室631を区画可能であればよく、直方体形状に限定されない。共通ケーシング63は、例えば円柱形状等であってもよい。共通ケーシング63は、複数部材を結合することで形成されている。なお、
図5においては、共通ケーシング63を形成する各部材の図示を、省略している。
【0057】
共通ケーシング63内には、自動運転制御装置3の各回路モジュール30,31,32,33の実装された共通基板36が、収容されている。共通基板36は、例えばプリント基板等であり、絶縁性を有する基材の表面及び裏面に配線パターンを形成している。共通基板36には、例えば酸化又は絶縁液体8に対する耐腐食性コーティング等の耐腐食加工が、施されていてもよい。
【0058】
共通基板36は、車両2への搭載状態において第一実装面360が鉛直方向上側かつ第二実装面361が鉛直方向下側をそれぞれ向くように、共通ケーシング63内に配置されている。共通ケーシング63の内側下面から突出した環状の段差部632に、第二実装面361の周縁部が周方向に連続して密接するように、共通基板36は段差部632上に載置されている。共通基板36は、例えば図示しないねじ等の締結部材によって、段差部632に結合されている。共通基板36と段差部632との間には、図示しないOリングが配置されることで、第二実装面361と段差部632の端面との間が液密にシールされている。このような共通基板36の配置により、共通ケーシング63内の共通基板36よりも上側には、第一実装面360及び共通ケーシング63によって空気室630が区画される。一方で共通ケーシング63内の共通基板36よりも下側には、第二実装面361及び共通ケーシング63によって、絶縁液体8の収容される浸漬室631が区画されている。
【0059】
共通ケーシング63を有する第二実施形態の筐体ユニット6、ポンプ10、放熱ユニット11、及びフィルタ12は、第一実施形態と同様に配管13を介して連結されることで、冷媒回路を構成している。
図5において配管13の図示を省略しているが、配管13は、絶縁液体8が浸漬室631と放熱ユニット11との間で循環可能なように、液密の浸漬室631内と連通している。このような構成において絶縁液体8は、ポンプ10によって圧送されることで、共通ケーシング63の浸漬室631と放熱ユニット11との間を循環する。このとき絶縁液体8は、共通ケーシング63の上流側に配置されるフィルタ12によって異物が除去された後、浸漬室631へ流入する。
【0060】
自動運転制御装置3の各回路モジュール30,31,32,33のうち前処理回路モジュール30、バックアップ回路モジュール32、及び車両IF回路モジュール33は、空気室630を区画する第一実装面360に実装されている。一方で認識回路モジュール31は、浸漬室631を区画する第二実装面361に実装されている。
【0061】
このような構成下、第一実装面360上の各回路モジュール30,32,33は、空気室630内への収容により絶縁液体8外に配置されることで、当該空気室630内の空気によって空冷される。一方、第二実装面361上の認識回路モジュール31は、浸漬室631内への収容により絶縁液体8内に配置されることで、当該絶縁液体8への浸漬によって液冷される。
【0062】
前処理回路モジュール30のうち発熱量の高い側の発熱素子である中央処理装置302と、共通ケーシング63の内側上面との間には、熱伝導体7が挟まれている。バックアップ回路モジュール32のうち発熱量の高い側の発熱素子である中央処理装置322と、共通ケーシング63の内側上面との間には、別の熱伝導体7が挟まれている。図示していない車両IF回路モジュール33のうち発熱量の高い側の発熱素子である中央処理装置330と、共通ケーシング63の内側上面との間にも、さらに別の熱伝導体7が挟まれている。各熱伝導体7は、中央処理装置302,322,330及び共通ケーシング63と熱伝導可能に接続されている。これらの熱伝導体7によって、中央処理装置302,322,330の熱は、共通ケーシング63を介して浸漬室631内の絶縁液体8へと放熱される。
【0063】
(作用効果)
以上説明した第二実施形態の作用効果を、以下に説明する。
【0064】
第二実施形態では、共通基板36の第一実装面360に前処理回路モジュール30が実装される一方、第一実装面360とは反対側の第二実装面361に認識回路モジュール31が実装される。そこで、空気室630が共通基板36の第一実装面360と共通ケーシング63とによって区画される一方、浸漬室631が第二実装面361と共通ケーシング63とによって区画される。これによれば、認識回路モジュール31が実装された第二実装面361側の浸漬室631に限定して液冷を適用することで、前処理回路モジュール30が実装された第一実装面360にも液冷を適用する場合に比べて、必要な絶縁液体量を低減することができる。故に、効率的に自動運転制御装置3を冷却することが可能となる。
【0065】
第二実施形態では、共通基板36の第一実装面360にバックアップ回路モジュール32が実装される一方、第一実装面360とは反対側の第二実装面361に認識回路モジュール31が実装される。そこで、空気室630が共通基板36の第一実装面360と共通ケーシング63とによって区画される一方、浸漬室631が第二実装面361と共通ケーシング63とによって区画される。これによれば、認識回路モジュール31が実装された第二実装面361側の浸漬室631に限定して液冷を適用することで、バックアップ回路モジュール32が実装された第一実装面360にも液冷を適用する場合に比べて、必要な絶縁液体量を低減することができる。故に、効率的に自動運転制御装置3を冷却することが可能となる。
【0066】
第二実施形態では、共通基板36の第一実装面360に車両IF回路モジュール33が実装される一方、第一実装面360とは反対側の第二実装面361に認識回路モジュール31が実装される。そこで、空気室630が共通基板36の第一実装面360と共通ケーシング63とによって区画される一方、浸漬室631が第二実装面361と共通ケーシング63とによって区画される。これによれば、認識回路モジュール31が実装された第二実装面361側の浸漬室631に限定して液冷を適用することで、車両IF回路モジュール33が実装された第一実装面360にも液冷を適用する場合に比べて、必要な絶縁液体量を低減することができる。故に、効率的に自動運転制御装置3を冷却することが可能となる。
【0067】
(第三実施形態)
図6に示すように第三実施形態は、第一実施形態の変形例である。第三実施形態では、自動運転制御装置3及び筐体ユニット6の構成が第一実施形態と異なっている。
【0068】
第三実施形態の筐体ユニット6は、
図6に示す共通ケーシング64を有する。共通ケーシング64は、筐体ユニット6全体の重量を軽量化する観点、及び熱伝導体7からの熱を効率的に絶縁液体8へと伝える観点から、例えばアルミニウム等の軽量かつ熱伝導性の高い金属材料から形成される。共通ケーシング64は、内部に共通室640を区画する略直方体形状を呈している。共通ケーシング64の形状は内部に共通室640を区画していればよく、直方体形状に限定されない。共通ケーシング64は、例えば円柱形状であってもよい。共通ケーシング64は、複数部材を結合することで形成されている。なお、
図6においては、共通ケーシング64を形成する各部材の図示を、省略している。
【0069】
共通室640には、自動運転制御装置3の各回路モジュール30,31,32,33の実装された共通基板37が、収容されている。共通基板37は、例えばプリント基板等であり、絶縁性を有する基材の表面及び裏面に配線パターンを形成している。共通基板37には、酸化及び絶縁液体8に対する耐腐食性コーティング等の耐腐食加工が、施されていてもよい。共通室640には、共通室640の容積よりも少ない容積にて、絶縁液体8が収容されている。絶縁液体8は、認識回路モジュール31を浸漬可能な量だけ、共通室640に収容されていればよい。
【0070】
共通ケーシング64を有する第三実施形態の筐体ユニット6、ポンプ10、放熱ユニット11、及びフィルタ12は、第一、第二実施形態と同様に配管13を介して連結されることで、冷媒回路を構成している。
図6において配管13の図示を省略しているが、配管13は、絶縁液体8が共通室640と放熱ユニット11との間で循環可能なように、共通室640内と連通している。このような構成において絶縁液体8は、ポンプ10によって圧送されることで、共通ケーシング64の共通室640と放熱ユニット11との間を循環する。このとき絶縁液体8は、共通ケーシング64の上流側に配置されるフィルタ12によって異物が除去された後、共通室640へ流入する。
【0071】
共通基板37は、一方側領域が他方側領域に対して鉛直方向下側に位置するように、共通ケーシング64の内側側面から突出する突出部641に結合されている。結合の方法としては、例えば図示しないねじ等の締結部材による結合が採用可能である。このような共通基板37の配置により、一方側領域が絶縁液体8内に浸漬されると共に、他方側領域は絶縁液体8よりも上方の大気空間内に位置する。
【0072】
各回路モジュール30,31,32,33のうち認識回路モジュール31は、絶縁液体8内に浸漬される一方側領域に実装されている。これに対し、その他の回路モジュール30,32,33は、絶縁液体8上方の大気空間内に位置する他方側領域に実装されている。
【0073】
前処理回路モジュール30のうち発熱量の高い側の発熱素子である中央処理装置302と、共通ケーシング64の内側側面との間には、熱伝導体7が挟まれている。バックアップ回路モジュール32のうち発熱量の高い側の発熱素子である中央処理装置322と、共通ケーシング64の内側側面との間には、別の熱伝導体7が挟まれている。図示していない車両IF回路モジュール33のうち発熱量の高い側の発熱素子である中央処理装置330と、共通ケーシング64の内側側面との間にも、さらに別の熱伝導体7が挟まれている。各熱伝導体7は、中央処理装置302,322,330及び共通ケーシング64と熱伝導可能に接続されている。これらの熱伝導体7によって、中央処理装置302,322,330の熱は、共通ケーシング64を介して絶縁液体8へと放熱される。
【0074】
(作用効果)
以上説明した第三実施形態の作用効果を、以下に説明する。
【0075】
第三実施形態では、前処理回路モジュール30と認識回路モジュール31とが、共通基板37に実装される。さらに、共通基板37は、前処理回路モジュール30が絶縁液体8よりも上方の大気空間に位置し、認識回路モジュール31が絶縁液体8内に浸漬されるように、配置される。これによれば、共通基板37のうち認識回路モジュール31が配置される領域に限定して液冷を適用することで、共通基板37全体を液冷する場合に比べて、必要な絶縁液体量を低減することができる。故に、効率的に自動運転制御装置3を冷却することが可能となる。
【0076】
第三実施形態では、バックアップ回路モジュール32と認識回路モジュール31とが、共通基板37に実装される。さらに、共通基板37は、バックアップ回路モジュール32が絶縁液体8よりも上方の大気空間に位置し、認識回路モジュール31が絶縁液体8内に浸漬されるように、配置される。これによれば、共通基板37のうち認識回路モジュール31が配置される領域に限定して液冷を適用することで、共通基板37全体を液冷する場合に比べて、必要な絶縁液体量を低減することができる。故に、効率的に自動運転制御装置3を冷却することが可能となる。
【0077】
第三実施形態では、車両IF回路モジュール33と認識回路モジュール31とが、共通基板37に実装される。さらに、共通基板37は、車両IF回路モジュール33が絶縁液体8よりも上方の大気空間に位置し、認識回路モジュール31が絶縁液体8内に浸漬されるように、配置される。これによれば、共通基板37のうち認識回路モジュール31が配置される領域に限定して液冷を適用することで、共通基板37全体を液冷する場合に比べて、必要な絶縁液体量を低減することができる。故に、効率的に自動運転制御装置3を冷却することが可能となる。
【0078】
(他の実施形態)
以上、本開示の複数の実施形態について説明したが、本開示は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0079】
図7に示す第一実施形態の変形例では、空気室形成ケーシング61と浸漬室形成ケーシング62とが結合されずに、分離して配置されてもよい。この変形例のように自動運転制御装置3の各モジュールを物理的に分離した構成でも、当該分離モジュールの一つである認識回路モジュール31の配置される浸漬室620に限定して絶縁液体8を収容することで、必要な絶縁液体量を低減することができる。故に、効率的に自動運転制御装置3を冷却することが可能となる。
【0080】
第一実施形態の変形例では、空冷基板34は複数に分割されてもよい。この変形例では、分割された空冷基板34が、複数に分割された空気室形成ケーシング61のそれぞれに個別に収容されてもよい。第一実施形態の変形例では、浸漬基板35が複数に分割されてもよい。この場合、分割された浸漬基板35が、複数に分割された浸漬室形成ケーシング62のそれぞれに個別に収容されてもよい。第二実施形態の変形例では、共通基板36が複数に分割されてもよい。この場合、分割された共通基板36が、複数に分割された共通ケーシング63のそれぞれに個別に収容されてもよい。第三実施形態の変形例では、共通基板37が複数に分割されてもよい。この場合、分割された共通基板37が、複数に分割された共通ケーシング64のそれぞれに個別に収容されてもよい。
【0081】
第一、第二、第三実施形態の変形例の冷却システム1は、回路モジュール30,32,33のうち一部を、絶縁液体8内への浸漬により液冷としてもよい。第一、第二、第三実施形態の変形例の冷却システム1は、熱伝導体7を有さず、中央処理装置302,322,330を空冷のみで冷却する構成としてもよい。第一、第二、第三実施形態の変形例の前処理回路モジュール30は、外界センサ群4に含まれる全ての外界センサと直接接続され、全てのセンサデータを取得するように構成されてもよい。第一、第二、第三実施形態の変形例の認識回路モジュール31は、第二中央処理装置312及び第二グラフィックスプロセッシングユニット313を有していなくてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1:冷却システム、11:放熱ユニット、2:車両、3:自動運転制御装置、4:外界センサ、30:前処理回路モジュール、31:認識回路モジュール、310:中央処理装置、311:グラフィックスプロセッシングユニット、312:第二中央処理装置、313:第二グラフィックスプロセッシングユニット、32:バックアップ回路モジュール、36,37:共通基板、360:第一実装面、361:第二実装面、6:筐体ユニット、61:空気室形成ケーシング、610,630:空気室、62:浸漬室形成ケーシング、620,631:浸漬室、63:共通ケーシング、640:共通室、7:熱伝導体、8:絶縁液体