(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】プロジェクターの制御方法、及びプロジェクター
(51)【国際特許分類】
H04N 5/74 20060101AFI20231212BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20231212BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H04N5/74 D
G03B21/00 D
G03B21/14 Z
(21)【出願番号】P 2021160691
(22)【出願日】2021-09-30
【審査請求日】2022-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内山 喜照
【審査官】長谷川 素直
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-120236(JP,A)
【文献】特開2020-191586(JP,A)
【文献】特開平08-149490(JP,A)
【文献】特開2019-191443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/74
G03B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロジェクターから投射面に投射する矩形の補正画像の4つの頂点のうち、前記投射面に投射されたときに前記プロジェクターの投射レンズから最も遠くに位置する頂点に接する、前記補正画像の2辺のうちの一方である第1の辺に配置された補正点の数が、前記2辺とは異なる第2の辺に配置された補正点の数よりも多い前記補正画像を前記投射面に投射すること、
前記第1の辺に配置された補正点に含まれる第1の補正点を移動させる操作を受け付けること、及び、
前記操作に基づく歪み補正を入力画像に適用した出力画像を前記投射面に投射すること、
を含むプロジェクターの制御方法。
【請求項2】
前記操作は、前記第1の辺と交わる軸に沿って前記第1の補正点を移動させる操作である、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記補正画像は、
前記2辺のうちの前記第1の辺とは異なる第3の辺に配置された補正点の数が、前記第2の辺に配置された補正点の数よりも多い、
請求項1又は請求項2に記載の制御方法。
【請求項4】
投射レンズを含む投射光学系と、
処理装置と、を含み、
前記処理装置は、
前記投射光学系から投射面に投射する矩形の補正画像の4つの頂点のうち、前記投射面に投射されたときに前記投射レンズから最も遠くに位置する頂点に接する、前記補正画像の2辺のうちの一方である第1の辺に配置された補正点の数が、前記2辺とは異なる第2の辺に配置された補正点の数よりも多い前記補正画像を前記投射光学系に投射させること、
前記第1の辺に配置された補正点に含まれる第1の補正点を移動させる操作を受け付けること、及び、
前記操作に基づく歪み補正を入力画像に適用した出力画像を前記投射光学系に投射させること、を実行する、
プロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プロジェクターの制御方法、及びプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
入力画像の投射先となる投射面に対してプロジェクターの投射光が斜めに入射する場合、投射面に映る出力画像は台形状に歪む。投射面に対してプロジェクターの投射光が斜めに入射するとは、投射面の法線とプロジェクターの光軸とが交わる状態のことをいう。従来のプロジェクターでは、補正点を格子状に配置した補正画像を投射面に投射し、これら格子状に配置される補正点の各々を移動させることで、投射面に対してプロジェクターの投射光が斜めに入射することに起因する歪みを補正することができた(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
投射面に対してプロジェクターの投射光が斜めに入射する場合の他にも、投射面にへこみ又は張り出しがある場合には、出力画像に歪みが生じる。近年、短い投射距離で大きな画像を投射できる超短焦点プロジェクターが提案されている。超短焦点プロジェクターでは、投射面のへこみ又は張り出しに起因する出力画像の歪みが顕著になる場合がある。特許文献1のように、補正画像の全体にわたって多数の補正点を配置すれば、即ち補正画像における補正点の密度を高くすれば、投射面のへこみ又は張り出しの位置に補正点を配置することが可能となり、出力画像の歪みを補正することが可能になる。しかし、補正画像に配置する補正点の数が多くなるほど、補正に要する手間及び時間が増え、補正作業が煩雑になる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のプロジェクターの制御方法は、プロジェクターから投射面に投射する矩形の補正画像の4つの頂点のうち、前記投射面に投射されたときに前記プロジェクターの投射レンズから最も遠くに位置する頂点に接する、前記補正画像の2辺のうちの一方である第1の辺に配置された補正点の数が、前記2辺とは異なる第2の辺に配置された補正点の数よりも多い前記補正画像を前記投射面に投射すること、前記第1の辺に配置された補正点に含まれる第1の補正点を移動させる操作を受け付けること、及び、前記操作に基づく歪み補正を入力画像に適用した出力画像を前記投射面に投射すること、を含む。
【0006】
本開示のプロジェクターは、投射レンズを含む投射光学系と、処理装置と、を含む。前記処理装置は、前記投射光学系から投射面に投射する矩形の補正画像の4つの頂点のうち、前記投射面に投射されたときに前記投射レンズから最も遠くに位置する頂点に接する、前記補正画像の2辺のうちの一方である第1の辺に配置された補正点の数が、前記2辺とは異なる第2の辺に配置された補正点の数よりも多い前記補正画像を前記投射光学系に投射させること、前記第1の辺に配置された補正点に含まれる第1の補正点を移動させる操作を受け付けること、及び、前記操作に基づく歪み補正を入力画像に適用した出力画像を前記投射光学系に投射させること、を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一実施形態に係るプロジェクター10の投射面PSに対する配置例を示す図である。
【
図2】投射面PSに対するプロジェクター10の配置例を示す図である。
【
図3】プロジェクター10の構成例を示す図である。
【
図4】プロジェクター10から投射面PSに投射される補正画像G1の一例を示す図である。
【
図6】補正画像G2を用いた従来の歪み補正の問題点を説明するための図である。
【
図7】補正画像G1における補正点の移動方向の一例を示す図である。
【
図8】本実施形態の効果を説明するための図である。
【
図9】補正点の指定を受け付けるためのカーソルCRの表示例を示す図である。
【
図10】処理装置150がプログラムPに従って実行する制御方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に述べる実施形態には技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかし、本開示の実施形態は、以下に述べる形態に限られるものではない。
1.実施形態
【0009】
図1及び
図2は、本開示の一実施形態に係るプロジェクター10の投射面PSに対する配置例を示す図である。より詳細に説明と、
図1は、プロジェクター10が設置される部屋Rを天井方向から見た透視図である。
図2は、
図1において矢印Xの示す方向から部屋Rを見た透視図である。
図1及び
図2に示されるように、本実施形態では、部屋Rの壁面のうちの一つが投射面PSとなっている。
【0010】
本実施形態のプロジェクター10は、超短焦点プロジェクターである。
図1及び
図2に示されるように、プロジェクター10は、投射面PSとなる壁面の近く配置されるテーブルT上に配置される。より詳細に説明すると、プロジェクター10は、
図1及び
図2に示されるように、基準線BLよりも左側且つ下側に配置される。基準線BLは、投射面PSとなる壁面の中心Cを通る当該壁面の法線である。本実施形態では、プロジェクター10は、光軸を中心Cに向けた姿勢で部屋Rに配置される。つまり、本実施形態では、プロジェクター10から投射面PSに対して投射される投射光は、左下側から斜めに投射面PSに入射する。
【0011】
本実施形態における投射面PSは、部屋Rの壁面のうちの一つであり、投射スクリーンのように平坦ではない。即ち、投射面PSには、場所によってはへこみ又は張り出しがある。このように平坦ではない投射面PSに対して従来の超短焦点プロジェクターから画像を投射すると、投射面PSのへこみ又は張り出しに起因する歪みが発生する。本実施形態のプロジェクター10は、プロジェクター10からの投射光が斜めに投射面PSに入射することに起因する台形歪みの補正に加えて、投射面PSのへこみ又は張り出しに起因する歪みも簡便に補正できるように構成されている。
【0012】
図3は、プロジェクター10の構成例を示す図である。
図3に示されるように、プロジェクター10は、通信装置100、画像処理装置110、投射光学系120、入力装置130、記憶装置140、及び処理装置150を有する。
【0013】
通信装置100は、有線LAN(Local Area Network)又は無線LAN等の通信網を介して他の装置と通信する装置である。有線LANを介して他の装置と通信する態様における通信装置100の具体例としては、LANケーブルを介して有線LANに接続されるNIC(Network Interface Card)が挙げられる。また、無線LANを介して他の装置と通信する態様における通信装置100の具体例としては、当該無線LANにおける通信電波を受信するアンテナ及び当該通信電波の変調及び復調を行う回路が挙げられる。通信網を介して通信装置100と通信する他の装置の具体例としては、プロジェクター10から投射面PSに投射する画像を表す画像データをプロジェクター10に送信する画像供給装置が挙げられる。以下では、画像供給装置からプロジェクター10に送信される画像データは入力画像データと称される。また、入力画像データの表す画像は入力画像と称される。通信装置100は、通信網を介して画像供給装置から送信される入力画像データを受信する。通信装置100は、受信した入力画像データを画像処理装置110へ出力する。本実施形態では、通信装置100が有線LANを介して他の装置と通信する場合について説明するが、これに限定されない。例えば、通信装置100は、USB(Universal Serial Bus)やHDMI(High-Definition Multimedia Interface)であってもよい。なお、HDMIは登録商標である。
【0014】
画像処理装置110は、通信装置100から出力された入力画像データに、歪み補正等の画像処理を施す装置である。この歪み補正には、プロジェクター10からの投射光が斜めに投射面PSに入射することに起因する台形歪みの補正と、投射面PSのへこみ又は張り出しに起因する歪みの補正とが含まれる。画像処理装置110は、記憶装置140に記憶される補正データに従って歪み補正を実行する。補正データは歪み補正の内容を規定するデータである。詳細については後述するが、補正データは処理装置150によって生成される。画像処理装置110は、補正データに従った歪み補正を入力画像データに施すことにより、補正済画像データを生成する。画像処理装置110は、補正済画像データを投射光学系120に出力する。画像処理装置110は、単一のプロセッサーで構成されてもよい。また、複数のプロセッサーが画像処理装置110として機能する構成であってもよい。画像処理装置110は、その他の回路と統合されたSoC(System on Chip)で構成されてもよい。画像処理装置110の機能の全てをハードウェアに実装した構成が採用されてもよく、画像処理装置110の機能の全てがプログラマブルデバイスを用いて構成されてもよい。
【0015】
投射光学系120は、画像処理装置110から出力された補正済画像データの表す出力画像を投射面PSへ投射する装置である。
図3に示されるように、投射光学系120は、投射レンズ121、液晶駆動部122、液晶パネル123、及び光源部124、を含む。液晶駆動部122は、画像処理装置110から出力された補正済画像データに従って液晶パネル123を駆動することにより、補正済画像データの表す出力画像を液晶パネル123に描画する。光源部124は、例えば、ハロゲンランプ又はレーザーダイオードなどの光源を含む。光源部124からの光は、液晶パネル123において画素毎に変調され、投射レンズ121を介して投射面PSに投射される。
【0016】
入力装置130は、テンキー等の複数の操作子を有する。入力装置130は、複数の操作子に対して押下等の操作が為されると、操作の内容を示す操作内容データを処理装置150に与える。これにより、入力装置130に対するユーザーの操作内容が処理装置150に伝達される。入力装置130は、リモコンなどの外部操作デバイスから受け取った操作内容データを処理装置150に与える構成でもよい。
【0017】
記憶装置140は、揮発性記憶装置であるRAM(Random Access Memory)と不揮発性記憶装置であるROM(Read Only Memory)とを含む。不揮発性記憶装置には、本開示の特徴を顕著に示す制御方法を処理装置150に実行させるプログラムPが記憶されている。揮発性記憶装置は、プログラムPを実行する際のワークエリアとして処理装置150によって利用される。
【0018】
また、揮発性記憶装置には、投射面PSに対する投射光学系120の姿勢を示す姿勢情報が記憶される。本実施形態では、プロジェクター10のユーザーは、部屋Rへプロジェクター10を設置した際のプロジェクター10の姿勢に応じた姿勢情報を入力装置130に対する入力操作により入力する。記憶装置140には、入力装置130に対する入力操作によって入力された姿勢情報が記憶される。本実施形態では、プロジェクター10は、
図1及び
図2に示されるように、部屋Rにおいて基準線BLよりも左側且つ下側に、光軸が右上を向く姿勢で配置される。このため、プロジェクター10は、右上向きの姿勢を示す姿勢情報を入力装置130に対する操作により入力し、この姿勢情報が記憶装置140に記憶される。
【0019】
処理装置150は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサー、即ちコンピューターを含む。処理装置150には、1つのプロセッサーが含まれてもよいし、複数のプロセッサーが含まれてもよい。処理装置150は、記憶装置140の一部または全部、及び/または、その他の回路と統合されたSoCで構成されてもよい。また、処理装置150は、プログラムを実行するCPUと、所定の演算処理を実行するDSP(Digital Signal Processor)との組合せにより構成されてもよい。処理装置150の機能の全てを、ハードウェアに実装した構成が採用されてもよく、プログラマブルデバイスを用いた構成が採用されてもよい。また、処理装置150は、画像処理装置110の機能を兼ねてもよい。すなわち、画像処理装置110の機能を、処理装置150が実行してもよい。処理装置150は、プロジェクター10の電源投入を契機として、プログラムPを不揮発性記憶装置から揮発性記憶装置へ読み出し、プログラムPの実行を開始する。
【0020】
プログラムPに従って作動している処理装置150は、
図3に示される第1投射制御部152、受付部154、及び第2投射制御部156として機能する。つまり、
図3に示される第1投射制御部152、受付部154、及び第2投射制御部156は、プログラムPに従ってコンピューターを作動させることにより実現されるソフトウェアモジュールである。第1投射制御部152、受付部154、及び第2投射制御部156の各々の機能は、次の通りである。
【0021】
第1投射制御部152は、歪み補正を指示する操作が入力装置130に対して為された場合、
図4に示す補正画像G1を投射光学系120に投射させる。補正画像G1は、出力画像において歪みを補正する位置、及び補正の内容をユーザーに指定させるための画像である。
図4に示されるように、補正画像G1の外延は矩形である。補正画像G1には、歪みを補正する位置、及び補正の内容をユーザーに指定させるための補正点が複数配置される。本実施形態では、これら複数の補正点の配置の仕方に特徴がある。以下では、本実施形態との対比のため、従来のプロジェクターの歪み補正における補正画像G2について説明する。
【0022】
図5は、補正画像G2の一例を示す図である。補正画像G2は、補正画像G1と同様に矩形の画像である。
図5に示されるように、補正画像G2の4隅、即ち4つの頂点には、夫々補正点A1~A4が一つずつ配置される。また、補正画像G2の4つの辺の中点には、夫々補正点A5~A8が一つずつ配置される。従来のプロジェクターのユーザーは、補正点A1~A8のうちの1又は複数を指定することにより、歪みを補正する位置を指定することができる。また、従来のプロジェクターのユーザーは、指定した補正点を移動させることにより、補正の方向及び補正量、即ち補正の内容を指定することができる。
【0023】
例えば、本来矩形として映るべき補正画像G2が、短辺L4に比較して短辺L2が短い台形状に歪んで投射面PSに映っていた場合、従来のプロジェクターのユーザーは、補正点A2及び補正点A3の各々を短辺L2に沿って補正画像G2の内側から外側に向かう方向に移動させることで台形歪みを補正することができる。具体的には、従来のプロジェクターのユーザーは、補正点A2を短辺L2に沿って補正点A6から遠ざかる方向に移動させ、かつ補正点A3を短辺L2に沿って補正点A6から遠ざかる方向に移動させることで台形歪みを補正することができる。
【0024】
このように台形歪みであれば、従来のプロジェクターにおいても簡便に補正することができた。しかし、
図6に示されるように、補正画像G2の長辺L1における補正点A1から補正点A5に至る区間には投射面PSのへこみに起因する歪みE1があり、且つ補正点A5から補正点A2に至る区間には投射面PSの張り出しに起因する歪みE2がある場合、従来のプロジェクターでは、歪みE1及び歪みE2を補正することはできなかった。補正画像G2における歪みE1及び歪みE2の位置には補正点が無いからである。補正画像G2に配置する補正点の数を増やせば、これらの歪みを補正することが可能になる。しかし、投射面PSのへこみ又は張り出しに起因する歪みが補正画像G2の何れの部分で発生するかを事前に把握することはできない。このため、従来のプロジェクターにおいて投射面PSのへこみ又は張り出しに起因する歪みの補正を可能にするには、補正画像G2全体にわたって多数の補正点を均等に配置することが必要となり、補正に要する手間及び時間が増えるという問題があった。
【0025】
本実施形態では、第1投射制御部152は、補正画像G1の4つの頂点に、夫々補正点A1~A4を配置する。この点は従来のプロジェクターと同様である。本実施形態では、補正点A1~A4に加えて、
図4に示されるように、補正点A5~A11が以下の要領で補正画像G1に配置される。より詳細に説明すると、第1投射制御部152は、まず、補正画像G1の4つの頂点のうち投射面PSに投射されたときに投射レンズ121から最も遠くに位置する頂点を姿勢情報を参照して特定する。そして、第1投射制御部152は、特定した頂点に接する2辺のうちの長辺に補正点A5~A11を配置する。投射レンズ121から最も遠くに位置する頂点に接する2辺の方が当該頂点に接しない2辺よりも投射面PSのへこみ又は張り出しに起因する歪みが生じやすく、長辺の歪みは短辺の歪みよりも目立ちやすいからである。補正画像G1において投射面PSに投射されたときに投射レンズ121から最も遠くに位置する頂点に接する長辺は本開示における第1の辺の一例である。投射レンズ121から最も遠くに位置する頂点に接しない長辺及び短辺は本開示における第2の辺の一例である。
【0026】
姿勢情報が右上向きの姿勢を示す場合、補正画像G1の4つの頂点のうち投射面PSに投射されたときに投射レンズ121から最も遠くに位置する頂点は、右上の頂点である。姿勢情報が右下向きの姿勢を示す場合、最も遠くに位置する頂点は、右下の頂点である。姿勢情報が左上向きの姿勢を示す場合、最も遠くに位置する頂点は、左上の頂点である。姿勢情報が左下向きの姿勢を示す場合、最も遠くに位置する頂点は、左下の頂点である。本実施形態では、記憶装置140に記憶されている姿勢情報は右上向きの姿勢を示すため、第1投射制御部152は、補正画像G1の4つの頂点のうち右上の頂点が最も遠くに位置する頂点として特定する。そして、第1投射制御部152は、
図4に示されるように、補正点A1~A4に加えて、投射面PSに投射されたときに投射レンズ121から最も遠くに位置する頂点に接する長辺L1に補正点A5~A11を配置した補正画像G1を投射光学系120に投射させる。
図4を参照すれば明らかなように、本実施形態では、長辺L1に配置された補正点の数は、短辺L2、長辺L3、及び短辺L4の各辺に配置された補正点の数よりも多い。
【0027】
プロジェクター10のユーザーは、補正点A1~A11のうちの1又は複数を入力装置130に対する操作により指定することで、歪みを補正する位置を指定することができる。補正点A1~A11のうちユーザーによって指定された補正点は本開示における第1の補正点の一例である。プロジェクター10のユーザーは、指定した補正点を入力装置130に対する操作により移動させることで、補正の方向及び補正量を指定することができる。
図7は、補正点の移動が可能な方向を説明するための図である。
図7では、補正点の移動が可能な方向がブロック矢印で示されている。
図7に示されるように、補正画像G1の左上の頂点に位置する補正点A1であれば、ユーザーは、長辺L1に直交する軸に沿って補正画像G1の内側から外側へ向かう方向又は逆向きの方向と、短辺L4に直交する軸に沿って補正画像G1の内側から外側へ向かう方向又は逆向きの方向に移動させることができる。補正点A2~A4の各々についても同様である。これに対して、補正点A5~A11のように頂点とは異なる位置に配置される補正点については、ユーザーは、当該補正点が配置される辺と直交する軸に沿って補正画像G1の内側から外側へ向かう方向又は逆向きの方向
に移動させることができる。以下では、補正点A5~A11の各々について、長辺L1と直交し、且つ補正画像G1の内側から外側に向かう方向は上方向と称される。補正点A1及び補正点A2についても同様である。また、補正点A5~A11の各々について、長辺L1と直交し、且つ補正画像G1の外側から内側に向かう方向は下方向と称される。補正点A1及び補正点A2についても同様である。なお、
図7には、補正点A5が移動可能な方向がブロック矢印で示されている。
【0028】
例えば、投射面PSのへこみ又は張り出しに起因して、
図8に示されるように、投射面PSに映る補正画像G1の長辺L1に歪みE1及び歪みE2が生じていたとする。この場合、プロジェクター10のユーザーは、歪みE1が生じている位置にある補正点A6を指定し、歪みE1の歪みの方向とは逆向きの方向、即ち下方向に歪みの大きさに応じた移動量で補正点A6を移動させることにより、歪みE1を補正することができる。また、プロジェクター10のユーザーは、歪みE2が生じている位置にある補正点A10を指定し、歪みE2の歪みの方向とは逆向きの方向、即ち上方向に歪みの大きさに応じた移動量で補正点A10を移動させることにより、歪みE2を補正することができる。
【0029】
受付部154は、補正点A1~A11の各々を指定する指定操作、及び指定した補正点を移動させる移動操作を、入力装置130を介して受け付ける。より詳細に説明すると、受付部154は、補正開始を指示する操作内容データを入力装置130から受け取る毎に以下の処理を実行する。受付部154は、まず、
図9に示されるように、補正点A1~A11の各々を指定して移動させるためのカーソルCRを補正画像G1
に重ねて投射光学系120に投射させる。受付部154は、カーソルCRを移動させる操作を示す操作内容データを入力装置130から受け取ると、受け取った操作内容データの示す操作に応じてカーソルCRを移動させる。受付部154は、カーソルCRの位置を決定する操作を示す操作内容データを入力装置130から受け取ると、当該操作内容データを受け取った時点でカーソルCRが位置する補正点を操作対象の補正点に決定し、カーソルCRを消去する。次いで、受付部154は、操作対象の補正点に対する移動操作を示す操作内容データを入力装置130から受け取ると、当該操作内容データに応じて移動方向及び移動量を特定し、特定した移動方向に特定した移動量で操作対象の補正点を移動させる。そして、受付部154は、補正完了を示す操作内容データを入力装置130から受け取ると、操作対象の補正点、当該補正点の移動方向及び移動量を示す補正データを生成し、当該補正データを記憶装置140に記憶させる。
【0030】
第2投射制御部156は、記憶装置140に記憶された補正データを読み出し、画像処理装置110に与える。以降、画像処理装置110は、通信装置100から与えられる入力画像データに補正データに応じた歪み補正を施し、歪みを補正済の入力画像を表す補正済画像データを投射光学系120に与える。これにより、入力画像に歪み補正を適用した出力画像が投射光学系120から投射面PSに投射される。
【0031】
また、プログラムPに従って作動している処理装置150は、本開示の特徴を顕著に示す制御方法を実行する。
図10は、この制御方法の流れを示すフローチャートである。
図10に示されるように、この制御方法は、第1投射制御処理SA100、入力処理SA110、判定処理SA120、生成処理SA130、及び第2投射制御処理SA140を含む。第1投射制御処理SA100、入力処理SA110、判定処理SA120、生成処理SA130、及び第2投射制御処理SA140の各々の処理内容は次の通りである。
【0032】
第1投射制御処理SA100では、処理装置150は、第1投射制御部152として機能する。第1投射制御処理SA100では、処理装置150は、補正画像G1を投射光学系120に投射させる。
【0033】
入力処理SA110、判定処理SA120、及び生成処理SA130では、処理装置150は、受付部154として機能する。入力処理SA110では、処理装置150は、補正点A1~A11の何れかを操作対象の補正点として指定する指定操作、及び指定操作により指定された補正点を移動させる移動操作を入力装置130を介して受け付ける。判定処理SA120では、処理装置150は、補正完了を指示する操作が入力装置130に対して為されたか否かを判定する。
図10に示されるように、判定処理SA120の判定結果が“No”である場合には、処理装置150は、入力処理SA110以降の処理を再度実行する。判定処理SA120の判定結果が“Yes”である場合には、処理装置150は、生成処理SA130を実行する。生成処理SA130では、処理装置150は、補正データを生成し、生成した補正データを記憶装置140に記憶させる。
【0034】
図8に示されるように、投射面PSに映る補正画像G1の長辺L1に歪みE1及び歪みE2が生じていた場合、ユーザーは、歪みE1が生じている位置にある補正点A6を指定し、補正点A6を下方向に移動させる操作を行う。入力処理SA110では、処理装置150は、当該ユーザーの操作に応じて補正点A6を移動させる。また、ユーザーは、歪みE2が生じている位置にある補正点A10を指定し、補正点A10を上方向に移動させる操作を行う。入力処理SA110では、処理装置150は、当該ユーザーの操作に応じて補正点A10を移動させる。そして、ユーザーが補正完了を指示する操作を行うと、判定処理SA120の判定結果が“Yes”となり、生成処理SA130が実行される。生成処理SA130では、処理装置150は、補正点A6及び補正点A10の各々の移動方向及び移動量に応じた補正データを生成し、記憶装置140に記憶させる。
【0035】
第2投射制御処理SA140では、処理装置150は、第2投射制御部156として機能する。第2投射制御処理SA140では、処理装置150は、記憶装置140に記憶された補正データを読み出し、画像処理装置110に与える。以降、画像処理装置110は、通信装置100から与えられる画像データに補正データに応じた歪み補正を施して補正済画像データを生成し、生成した補正済画像データを投射光学系120に与える。これにより、入力画像に歪み補正を適用した出力画像が投射光学系120から投射面PSに投射される。このため、出力画像には、投射面PSのへこみに起因する歪み、即ち歪みE1に対応する歪み、及び投射面PSの張り出しに起因する歪み、即ち歪みE2に対応する歪み、が表れることはない。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によれば、補正画像G1の全体にわたって多数の補正点を設けることなく、投射面PSのへこみ又は張り出しに起因する出力画像の歪みを補正することが可能になる。つまり、本実施形態によれば、補正画像G1の全体にわたって多数の補正点を設ける態様に比較して補正に要する手間及び時間の増加を抑えつつ、投射面PSのへこみ又は張り出しに起因する出力画像の歪みを補正することが可能になる。
【0037】
2.変形
以上説明した実施形態は、以下のように変形され得る。
(1)上記実施形態では、補正画像G1の4つの頂点のうち補正画像G1が投射面PSに投射されたときに投射レンズ121から最も遠くに位置する頂点に接する2辺のうちの長辺に、当該2辺以外の第2の辺よりも多くの補正点が配置された。しかし、投射レンズ121から最も遠くに位置する頂点に接する2辺のうちの第1の辺とは異なる辺、即ち短辺に配置された補正点の数が第2の辺に配置された補正点の数よりも多くてもよい。投射レンズ121から最も遠くに位置する頂点に接する2辺のうちの短辺には、当該頂点に接する長辺に次いで投射面PSのへこみ又は張り出しに起因する歪みが表れやすいからである。
図11に示す例では、補正画像G3の4つの頂点のうち右上の頂点が投射レンズ121から最も遠くに位置する頂点である。
図11に示されるように、補正画像G3の右上の頂点には長辺L1と短辺L2とが接する。
図11に示す補正画像G3では、長辺L1には補正点A1、A2、及びA5~A11が配置されており、短辺L2には補正点A2、A3及びA12~A14が配置されている。また、
図11に示す補正画像G3では長辺L3には補正点A3及び補正点A4が配置されており、短辺L4には補正点A1及び補正点A
4が配置されている。
図11における長辺L1は本開示における第1の辺の一例である。
図11における長辺L3及び短辺L4は本開示における第2の辺の一例である。
図11における短辺L2は本開示における第3の辺の一例である。本態様によれば、第3の辺と第2の辺とに同じ数の補正点を配置する態様に比較して補正に要する手間及び時間の増加を抑えつつ、ユーザーの目につきやすい第3の辺の歪みを補正することが可能になる。
【0038】
(2)上記実施形態では、補正点A5に対する移動操作は、補正点A5が位置する長辺L1に直交する軸に沿って補正点A5を移動させる操作であり、補正点A6~A11の各々に対する移動操作も同様であった。しかし、補正点A5に対する移動操作は、長辺L1と交わる軸に沿って補正点A5を移動させる操作であればよく、例えば、
図12に示されるように、長辺L1において補正点A5が配置される位置と補正画像G1の中心とを通る軸AX1に沿って補正点A5を移動させる操作であってもよい。補正点A6~A11の各々に対する移動操作についても同様に、長辺L1において補正点Anが配置される位置と補正画像G1の中心とを通る軸に沿って補正点Anを移動させる操作であってもよい。なお、nは6から11までの整数の何れかである。
【0039】
(3)上記実施形態におけるプロジェクター10は超短焦点プロジェクターであった。しかし、プロジェクター10は、大きな画像を投射する際に要する投射距離が超短焦点プロジェクターよりも長い一般的なプロジェクターであってもよい。プロジェクター10が一般的なプロジェクターであっても、本開示の制御方法を実行させることによって、補正に要する手間及び時間の増加を抑えつつ、投射面PSのへこみ又は張り出しに起因する出力画像の歪みを補正することが可能になる。
【0040】
(4)上記実施形態における第1投射制御部152、受付部154、及び第2投射制御部156はソフトウェアモジュールであったが、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアモジュールであってもよい。また、上記実施形態における入力処理SA110、判定処理SA120、及び生成処理SA130の3つの処理は、まとめて受付処理と称されてもよい。上記実施形態では、第1投射制御処理SA100、受付処理、及び第2投射制御処理SA140を処理装置150に実行させるプログラムPが記憶装置140に予め記憶されていたが、プログラムPが単体で製造されてもよく、有償又は無償で配布されてもよい。プログラムPの具体的な配布方法としては、フラッシュROM(Read Only Memory)等のコンピューター読み取り可能な記録媒体にプログラムPを書き込んで配布する態様、又はインターネット等の電気通信回線経由のダウンロードにより配布する態様が考えられる。これらの態様により配布されるプログラムPに従って、従来のプロジェクターのコンピューターを作動させることで、当該プロジェクターに本開示の制御方法を実行させることが可能になる。
【0041】
3.実施形態及び変形例から把握される態様
本開示は、上述した実施形態及び変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実現することができる。例えば、本開示は、以下の態様によっても実現可能である。以下に記載した各態様中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、或いは本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0042】
本開示のプロジェクターの制御方法の一態様は、以下の第1投射制御処理と、受付処理と、第2投射制御処理と、を含む。第1投射制御処理は、矩形の補正画像を投射面に投射する処理である。この補正画像の4つの頂点のうち投射面に投射されたときに投射レンズから最も遠くに位置する頂点に接する、当該補正画像の2つの辺のうちの一方である第1の辺に配置された補正点の数は、当該2つの辺とは異なる第2の辺に配置された補正点の数よりも多い。受付処理は、第1の辺に配置された補正点に含まれる第1の補正点を移動させる操作を受け付ける処理である。第2投射制御処理は、受付処理にて受け付けた操作に基づく歪み補正を入力画像に適用した出力画像を前記投射面に投射する処理である。本態様の制御方法によれば、第1の辺には、第2の辺よりも多くの補正点が配置されるので、第1の辺については、投射面のへこみ又は張り出しに起因する歪みを第2の辺における歪みよりもきめ細やかに補正することが可能になる。第1の辺は、矩形の補正画像の4つの頂点のうち、投射面に投射されたときに投射レンズから最も遠くに位置する頂点に接する2つの辺のうちの一方である。投射面のへこみ又は張り出しに起因する第1の辺の歪みは第2の辺の歪みよりも大きく、目だちやすい。本態様によれば、第1の辺と第2の辺とに同じ数の補正点を配置する態様に比較して補正に要する手間及び時間の増加を抑えつつ、目だちやすい第1の辺の歪みを補正することが可能になる。
【0043】
より好ましい態様の制御方法では、受付処理にて受け付ける操作は、前記第1の辺と交わる軸に沿って前記第1の補正点を移動させる操作であってもよい。本態様によれば、第1の辺と交わる軸に沿った方向の第1の辺の歪みを補正することが可能になる。
【0044】
別の好ましい態様の制御方法における第1投射制御処理は、前記2つの辺のうちの第1の辺とは異なる第3の辺に、第2の辺よりも多くの補正点を配置することを含でもよい。本態様によれば、第3の辺と第2の辺とに同じ数の補正点を配置する態様に比較して補正に要する手間及び時間の増加を抑えつつ、ユーザーの目につきやすい第3の辺の歪みを補正することが可能になる。
【0045】
また、本開示のプロジェクターの一態様は、投射レンズを含む投射光学系と、処理装置と、を含む。処理装置は、投射光学系から投射面に補正画像を投射する第1投射制御処理、受付処理、及び第2投射制御処理を実行する。本態様によっても、第1の辺と第2の辺とに同じ数の補正点を配置する態様に比較して補正に要する手間及び時間の増加を抑えつつ、ユーザーの目につきやすい第1の辺の歪みを補正することが可能になる。
【符号の説明】
【0046】
10…プロジェクター、100…通信装置、110…画像処理装置、120…投射光学系、130…入力装置、140…記憶装置、150…処理装置、152…第1投射制御部、154…受付部、156…第2投射制御部、P…プログラム、PS…投射面。