IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カシオ計算機株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】連結構造及び装着型機器
(51)【国際特許分類】
   F16B 21/16 20060101AFI20231212BHJP
   A44C 5/14 20060101ALI20231212BHJP
   A44C 5/10 20060101ALI20231212BHJP
   F16C 11/04 20060101ALI20231212BHJP
   F16C 11/10 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
F16B21/16 B
A44C5/14 K
A44C5/14 N
A44C5/10 511C
A44C5/10 511G
F16C11/04 F
F16C11/10 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021197436
(22)【出願日】2021-12-06
(65)【公開番号】P2023083637
(43)【公開日】2023-06-16
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 善弘
(72)【発明者】
【氏名】天野 正男
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3194514(JP,U)
【文献】特開2004-294284(JP,A)
【文献】実開昭62-070812(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 21/16
A44C 5/14
A44C 5/10
F16C 11/04
F16C 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部分と、前記第1部分よりも太い第2部分と、を有し、前記第1部分と前記第2部分との間には段差部があり、連結対象の挿通孔及び被連結対象の挿通孔に挿通されることによって、前記連結対象及び前記被連結対象を互いに連結する連結ピンと、
前記連結対象及び前記被連結対象の一方に設けられている凹部の内部において、前記連結対象及び前記被連結対象の前記一方の前記挿通孔が延びている方向とは異なる移動方向に移動可能で、かつ、前記連結ピンが前記段差部で係合しているピン係合部が設けられたピン係止部材と、
前記ピン係止部材を、前記移動方向の一方向に付勢する付勢部材と、
前記連結対象及び前記被連結対象の前記一方に設けられ、前記付勢部材と協働して前記ピン係止部材を保持する第1状態と、前記ピン係止部材を前記凹部から取り出し可能な第2状態と、に選択的に操作可能な保持部材と、
を備える、
連結構造。
【請求項2】
前記保持部材は、前記連結対象及び前記被連結対象の前記一方に着脱可能に設けられ、前記連結対象及び前記被連結対象の前記一方に取り付けられることによって前記第1状態になり、前記連結対象及び前記被連結対象の前記一方から取り外されることによって前記第2状態になる、請求項1に記載の連結構造。
【請求項3】
前記保持部材は、前記第1状態において、前記連結対象及び前記被連結対象の前記一方に螺合している、請求項2に記載の連結構造。
【請求項4】
前記保持部材の前記付勢部材とは反対側の面には、前記連結対象及び前記被連結対象の前記一方への前記保持部材の取り付け時に当該保持部材を回転させるための工具に嵌合する溝が設けられている、請求項3に記載の連結構造。
【請求項5】
前記ピン係止部材の前記移動方向に直交する断面の中心軸は、前記挿通孔の長さ方向から見て、前記挿通孔の長さ方向に直交する断面の中心軸である挿通軸からずれた位置にあり、
前記ピン係合部は、前記ピン係止部材における少なくとも前記挿通軸側の部分に設けられた切り欠きの縁部である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の連結構造。
【請求項6】
前記ピン係止部材は、前記凹部の内部を、第1位置と、前記第1位置とは異なる第2位置との間で前記移動方向に移動可能であり、
前記付勢部材と前記保持部材との協働によって前記ピン係止部材が第1位置に位置しているときには、前記連結ピンが前記段差部で前記ピン係合部に係合しており、ユーザの操作により前記付勢部材による付勢力に抗して前記ピン係止部材が第2位置に位置しているときには、前記第2部分が前記ピン係合部を挿通可能である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の連結構造。
【請求項7】
前記ピン係止部材は、前記第2位置にあるときに前記凹部の内部における前記移動方向に交わる壁部に当接する当接部を有する、請求項6に記載の連結構造。
【請求項8】
前記付勢部材は、圧縮コイルばねであり、
前記当接部は、前記圧縮コイルばねの内側に位置している、
請求項7に記載の連結構造。
【請求項9】
前記連結対象としての機器本体部と、
前記機器本体部を対象に装着するための前記被連結対象としてのバンドと、
請求項1~8のいずれか一項に記載の連結構造と、
を備える、装着型機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結構造及び装着型機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、腕時計などの装着型機器の機器本体部とバンドとを互いに連結させたり、バンドを構成する複数の駒同士を連結させたりするための種々の連結構造が知られている。代表的な連結構造としては、連結対象の2つの部材を貫通する貫通孔に連結ピンを挿通して連結するものがある。特許文献1に開示されたこの種の連結構造では、連結ピンの長さ方向の中央に、その外周方向に一周する係合凹部が設けられ、連結ピンに垂直な方向に移動可能なピン係止部材が2つの部材の一方の収納空間に設けられるとともに、ピン係止部材の先端を係合凹部に係合させることで、連結ピンが貫通孔から抜けないよう係止される。また、特許文献1では、2つの部材の一方の収納空間から取り出せない状態でピン係止部材を収納空間に収納することで、ピン係止部材の離脱を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-82597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようにピン係止部材を収納空間に収納すると、収納されたピン係止部材等の部品の修理や交換を行うことができないため、メンテナンスの手間やコストが掛かるという課題がある。
【0005】
この発明の目的は、より簡易にメンテナンスを行うことができる連結構造及び装着型機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る連結構造は、
第1部分と、前記第1部分よりも太い第2部分と、を有し、前記第1部分と前記第2部分との間には段差部があり、連結対象の挿通孔及び被連結対象の挿通孔に挿通されることによって、前記連結対象及び前記被連結対象を互いに連結する連結ピンと、
前記連結対象及び前記被連結対象の一方に設けられている凹部の内部において、前記連結対象及び前記被連結対象の前記一方の前記挿通孔が延びている方向とは異なる移動方向に移動可能で、かつ、前記連結ピンが前記段差部で係合しているピン係合部が設けられたピン係止部材と、
前記ピン係止部材を、前記移動方向の一方向に付勢する付勢部材と、
前記連結対象及び前記被連結対象の前記一方に設けられ、前記付勢部材と協働して前記ピン係止部材を保持する第1状態と、前記ピン係止部材を前記凹部から取り出し可能な第2状態と、に選択的に操作可能な保持部材と、
を備える。
【0007】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る装着型機器は、
前記連結対象としての機器本体部と、
前記機器本体部を対象に装着するための前記被連結対象としてのバンドと、
前記連結構造と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より簡易にメンテナンスを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】時計の構成を示す図である。
図2】バンド連結構造の概略構成を示す図である。
図3】バンド連結構造の構成を示す斜視図である。
図4】連結ピン係止状態におけるX方向に垂直なバンド連結構造の断面を示す図である。
図5】連結ピン係止状態におけるY方向に垂直なバンド連結構造の断面を示す図である。
図6】連結ピン係止解除状態におけるX方向に垂直なバンド連結構造の断面を示す図である。
図7】連結ピン係止解除状態におけるY方向に垂直なバンド連結構造の断面を示す図である。
図8】+Z方向から見た凹部を示す図である。
図9A】蓋部材の構成を示す図である。
図9B】蓋部材の構成を示す図である。
図10A】ピン係止部材の構成を示す図である。
図10B】ピン係止部材の構成を示す図である。
図10C】ピン係止部材の構成を示す図である。
図11A】凹部の内部におけるピン係止部材の回転の制限を説明する図である。
図11B】凹部の内部におけるピン係止部材の回転の制限を説明する図である。
図11C】凹部の内部におけるピン係止部材の回転の制限を説明する図である。
図12A】連結ピンの挿通時の挙動を示す図である。
図12B】連結ピンの挿通時の挙動を示す図である。
図13】変形例1に係る凹部を+Z方向から見た図である。
図14A】変形例1に係るピン係止部材の構成を示す図である。
図14B】変形例1に係るピン係止部材の構成を示す図である。
図14C】変形例1に係るピン係止部材の構成を示す図である。
図15】変形例2に係る時計及びバンド連結構造の構成を示す図である。
図16】変形例3に係るバンド連結構造のX方向に垂直な断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
<時計の構成>
図1は、本実施形態の時計1の構成を示す図である。
時計1(装着型機器)は、機器本体部2と、手首への装着に用いられる帯状のバンド3と、を備えた腕時計である。機器本体部2は、外装部材(ケース)と、この外装部材の内部に組み込まれた種々の構成(例えば、文字盤、指針、及び指針を動作させるための機構や回路など)と、を有する。以下では、機器本体部2のうち指針が見える側を表面、表面とは反対側の面を裏面と記す。機器本体部2は、外装部材の外周部分であって、文字盤における12時側の部分と6時側の部分とに対応する部分に、バンド3が取り付けられるバンド取付部2aをそれぞれ備えている。一方、バンド3は、2つのバンド取付部2a、2aの各々に取り付けられる取付端部3aを有する。取付端部3aは、例えば、バンド3が有する複数の駒の1つであってもよい。時計1は、バンド取付部2aとバンド3の取付端部3aとを互いに連結するバンド連結構造100(連結構造)を備える。言い換えると、バンド連結構造100は、機器本体部2とバンド3とを互いに連結する構造である。バンド連結構造100は、2つのバンド取付部2aに対応して2つ設けられている。各バンド連結構造100は、機器本体部2(バンド取付部2a)とバンド3(取付端部3a)とを、ユーザの操作により着脱可能な状態で連結する。よって、ユーザは、好みや状況に応じてバンド3を付け替えることができる。本実施形態では、機器本体部2が、バンド連結構造100による連結対象に相当し、バンド3が、バンド連結構造100による被連結対象に相当する。
【0012】
<バンド連結構造の構成>
図2は、バンド連結構造100の概略構成を示す図である。
機器本体部2のバンド取付部2aは、機器本体部2の外周において突出して連結凸部をなしている。一方、バンド3の取付端部3aには、バンド取付部2aが嵌合する形状の連結凹部3bが設けられている。取付端部3aのうち、連結凹部3bにより隔たれた一対の先端部3cには、バンド3の幅方向に延びるバンド側挿通孔22(挿通孔)がそれぞれ設けられている。また、バンド取付部2aには、バンド3の幅方向に延びる本体側挿通孔21(挿通孔)が設けられている。バンド取付部2aが取付端部3aの連結凹部3bに嵌合すると、本体側挿通孔21と、2つのバンド側挿通孔22とが、互いに同一直線状に連通し、バンド取付部2a及び取付端部3aを貫通する一繋がりの連通挿通孔20となる。バンド連結構造100は、この連通挿通孔20に挿通されてバンド取付部2a及び取付端部3aを連結する連結ピン10を備える。また、連結ピン10を連通挿通孔20から取り外すことで、バンド取付部2aと取付端部3aとの連結を解除することができる。
【0013】
図3図7を参照して、バンド連結構造100の全体構成を説明する。
図3は、バンド連結構造100の構成を示す斜視図であり、バンド連結構造100の構成が見やすくなるように、バンド3を省略するとともに、機器本体部2を透視して描いている。図3では、機器本体部2の裏面が同図における上方を向いている。以下では、XYZ座標系を用いて、バンド連結構造100の各部材の向きを説明する。X方向は、挿通孔20の中心を通る挿通軸A1(本体側挿通孔21及びバンド側挿通孔22の長さ方向から見て、本体側挿通孔21及びバンド側挿通孔22の長さ方向に直交する断面の中心軸)に平行な方向とし、Z方向は、機器本体部2の厚さ方向に平行、かつ表面から裏面に向かう方向とする。また、Y方向は、X方向及びZ方向に垂直であり、かつバンド3から機器本体部2に向かう方向とする。図4及び図6は、X方向に垂直なバンド連結構造100の断面を示す図であり、図5及び図7は、Y方向に垂直なバンド連結構造100の断面を示す図である。なお、図5及び図7では、バンド3の記載を省略している。
【0014】
バンド連結構造100は、連結ピン10と、ピン係止部材30と、蓋部材50(保持部材)と、ばね60(付勢部材)と、を備える。このうちばね60は、図3では記載が省略されている。バンド取付部2a、取付端部3a、連結ピン10、ピン係止部材30、蓋部材50及びばね60の材質は、チタン合金又はステンレスといった金属とすることができる。ただし、金属に限られず、一定以上の強度を有する任意の材質、例えば樹脂等であってもよい。バンド取付部2aには、裏面側から-Z方向に向かって、本体側挿通孔21に連通するように凹部40が設けられている。凹部40が延びている方向は、Z方向に平行であり、挿通軸A1に対して垂直である。ピン係止部材30及びばね60は、凹部40の内部に位置している(凹部40内に収納されている)。蓋部材50は、凹部40の開口縁部41に着脱可能に取り付けられている。蓋部材50が取り付けられることで、ピン係止部材30及びばね60が、凹部40から離脱しない状態で凹部40内に収納される。ピン係止部材30は、凹部40の内部においてZ方向に移動可能である。図4図7には、凹部40の内部に位置するピン係止部材30の中心軸A2(ピン係止部材30の移動方向に直交する断面の中心軸)を通る断面が描かれている。
【0015】
ばね60は、例えば圧縮コイルばねであって、凹部40の底部とピン係止部材30との間に位置しており、ピン係止部材30を蓋部材50に向けて(凹部40の開口側に向けて)付勢する。外部からピン係止部材30に力が加わっていない場合には、ばね60により付勢されたピン係止部材30は、蓋部材50に当接した状態に維持される。このように、蓋部材50は、ばね60と協働してピン係止部材30を保持する。蓋部材50には、凹部40の内部と外部とを連通させる(すなわち、蓋部材50を貫通する)開口部53が設けられており、開口部53を通して、ピン係止部材30を、ばね60による弾性力に抗して-Z方向に押し込む(移動させる)ことが可能となっている。すなわち、ピン係止部材30は、挿通孔20が延びている方向(挿通軸A1の方向;X方向)とは異なる移動方向(Z方向)に移動可能である。ピン係止部材30のうち挿通軸A1側の部分には、本体側挿通孔21(連通挿通孔20)に挿通される連結ピン10が通過可能な大きさのピン挿通部30a(切り欠き)が設けられている。連結ピン10は、略丸棒状の形状を有し、第1部分11と、第1部分11の両側に位置し第1部分11よりも径の大きい(第1部分よりも太い)第2部分12と、を有している。
【0016】
図3図5に示すように、ピン係止部材30が、ばね60の付勢により+Z方向に蓋部材50に突き当てられているときには、連結ピン10の第1部分11と第2部分12との間の段差部13が、ピン係止部材30のピン挿通部30aの縁部30b(図5及び図10A図10C参照)に引っ掛かるようになっている。これにより、連結ピン10がピン係止部材30によって係止される。以下では、ピン係止部材30が蓋部材50に突き当てられているとき(ばね60と蓋部材50との協働によってピン係止部材30が保持されているとき)のピン係止部材30の位置を、「第1位置」と記す。本実施形態では、ピン係止部材30におけるピン挿通部30aの縁部30bが、連結ピン10の段差部13と係合する「ピン係合部」に相当する。
【0017】
一方、図6及び図7に示すように、ピン係止部材30が、例えばユーザ操作により開口部53を通してばね60の弾性力(付勢力)に抗して押し込まれ、第1位置よりも-Z方向側の「第2位置(図6及び図7に示すピン係止部材30の位置)」に移動すると、段差部13がピン挿通部30aの縁部30bに引っ掛からなくなり、連結ピン10の全体がピン挿通部30aを通過可能となる。よって、連結ピン10を本体側挿通孔21(連通挿通孔20)から取り出して、機器本体部2とバンド3との連結を解除することができる。
【0018】
以下、バンド取付部2aの凹部、及びバンド連結構造100の各部の詳細な構成について説明する。
【0019】
<凹部>
図4図7に示すように、凹部40は、+Z方向の端部に位置する開口縁部41と、開口縁部41よりも-Z方向側に位置する主要部42と、を有する。主要部42は、本体側挿通孔21よりも-Z方向側まで延びている。凹部40(主要部42)は、X-Y平面に平行な底部40a(壁部)を有する。主要部42の一部が、本体側挿通孔21と交差している。主要部42の側壁面は、凹部40の壁面のうち、ピン係止部材30の移動方向に延びている側壁面に相当する。また、主要部42の側壁面は、凹部40のうちピン係止部材30の側面(ピン係止部材30のうちのピン係止部材30の移動方向に延びている側面)に当接する。
【0020】
図8は、+Z方向から見た凹部40を示す図である。
図8では、連結ピン10、ピン係止部材30、蓋部材50及びばね60を取り除いた状態の凹部40が描かれている。主要部42は、中心軸A2が延びる方向(以下「中心軸A2方向」という)から見た形状のX方向(第1方向)の幅が、Y方向(第2方向)の幅よりも小さい。本実施形態の主要部42は、中心軸A2方向から見た形状が、Y方向に長い長円をなしている。すなわち、主要部42は、中心軸A2に垂直な断面が長円である長円柱をバンド取付部2aからくり抜いた形状を有し、側壁面が、長円柱の側面の形状を有する。なお、主要部42は、バンド取付部2aから楕円柱をくり抜いた形状を有していてもよく、この場合、主要部42を中心軸A2方向から見た形状は、楕円となる。
【0021】
また、凹部40の開口縁部41は、中心軸A2方向から見た形状が、蓋部材50の外周に嵌合する大きさの円形である。また、開口縁部41の円筒面状の側壁面には、図4~7に示すように、蓋部材50を螺合させるためのねじ溝が設けられている。
【0022】
また、図4図6及び図8に示すように、凹部40の内部に位置するピン係止部材30の中心軸A2は、本体側挿通孔21の挿通軸A1に一致しておらず、挿通軸A1に対して+Y方向にずれている。
【0023】
<蓋部材>
図9A及び図9Bは、蓋部材50の構成を示す図である。
図9Aは、+Z方向から見た蓋部材50を示す図であり、図9Bは、開口部53の中心を通りX方向に垂直な蓋部材50の断面を示す図である。
【0024】
蓋部材50は、略円柱形状を有する部材であり、開口部53が設けられた基部51と、基部51から、ピン係止部材30の移動方向(Z方向)の外方に突出した凸部52と、を有する。開口部53は、凹部40の内部と外部とを連通させるように基部51をZ方向に貫通している。開口部53は、Z方向から見て蓋部材50の中心に設けられている。図9A及び図9Bに示す開口部53の側壁面は円筒面であるが、これに限られない。
【0025】
基部51の側面には、凹部40の開口縁部41の側壁面に設けられたねじ溝に嵌合するねじ山55が設けられている。このねじ山55により、蓋部材50の基部51を、凹部40の開口縁部41に螺合させることができる。よって、蓋部材50は、凹部40の開口縁部41に対して着脱可能に取り付けられる。蓋部材50が開口縁部41に取り付けられた状態は、ばね60と協働してピン係止部材30を保持する「第1状態」に相当する。
【0026】
凸部52におけるばね60側(凹部40側)とは反対側の頂面50a(+Z方向側の端面)には、凹部40の開口縁部41への蓋部材50の取り付け時、及び開口縁部41からの蓋部材50の取り外し時に、当該蓋部材50を回転させるための工具(ドライバー等)に嵌合する溝54が設けられている。本実施形態では、X方向及びY方向に溝54が設けられて、プラスドライバー等に嵌合する十字状の溝54が形成されているが、これに限られず、マイナスドライバー等に嵌合する一直線状の溝54としてもよく、他の適当な工具(例えば六角レンチなど)に嵌合可能な形状の溝を採用してもよい。蓋部材50は、時計1の製造時において、凹部40の内部にピン係止部材30及びばね60が収納された状態で取り付けられる。ピン係止部材30及び/又はばね60に、故障や劣化などの不具合が生じた場合には、蓋部材50を取り外すことでピン係止部材30及び/又はばね60を取り出すことができるため、修理又は交換等のメンテナンスを簡易に行うことができる。蓋部材50が開口縁部41から取り外された状態は、ピン係止部材30を凹部40から取り出し可能な「第2状態」に相当する。蓋部材50は、機器本体部2に取り付けられることによって第1状態になり、機器本体部2から取り外されることによって第2状態になる。すなわち、蓋部材50は、第1状態と、第2状態と、に選択的に操作可能である。
【0027】
<連結ピン>
図3図5及び図7に示すように、本体側挿通孔21(連通挿通孔20)に挿通される連結ピン10は、X方向の中央に位置する円柱形状の第1部分11と、X方向について第1部分11の両側に位置し、第1部分11よりも径(ここでは、直径)の大きい円柱形状の第2部分12と、を有する。ここで、円柱形状には、端部にテーパーが設けられている形状が含まれるものとする。連結ピン10の形状は、言い換えると、隣接する第2部分12よりも径が小さくなるように、第1部分11に、外周方向に一周する溝が設けられた形状である。このような構成により、連結ピン10は、第1部分11と第2部分12との境界に段差部13を有する。段差部13は、X方向に垂直な棚状の段差面を有する。第1部分11のX方向の長さは、ピン係止部材30のX方向の幅より僅かに長くなっている。また、連結ピン10の両端(第2部分12の、第1部分11側とは反対側の端部)には、端面の角部に面取りがなされてテーパー部14が設けられている。
【0028】
<ピン係止部材>
図10A図10Cは、ピン係止部材30の構成を示す図である。
ピン係止部材30は、本体部31と、本体部31の+Z方向側に位置する押し込み部32と、本体部31の-Z方向側に位置する当接部33と、を有する。図10A図10Cには、ピン係止部材30の中心軸A2が描かれている。
【0029】
本体部31は、中心軸A2方向から見た形状が長円形である長円柱に、ピン挿通部30a(切り欠き)を設けた形状を有する。図3図7に示すように、凹部40の主要部42の側壁面には、本体部31の側面が当接する。すなわち、本体部31は、ピン係止部材30のうち凹部40に当接する部分に相当する。また、本体部31の側面は、ピン係止部材30のうちのピン係止部材30の移動方向に延びている側面に相当する。ピン係止部材30が第1位置にあるときには、本体部31のうち+Z方向側を向いた面(上面)が、蓋部材50のうち-Z方向を向いた面(下面)に当接する。本体部31は、中心軸A2方向から見た形状のX方向(第1方向)の幅が、Y方向(第2方向)の幅よりも小さい。本体部31を中心軸A2方向から見た形状は、ピン係止部材30が凹部40の内部をZ方向に円滑に移動できるように、凹部40の主要部42の側壁面との間で一定の隙間が確保される形状(主要部42の側壁面より一回り小さい形状、例えば相似形状)とされる。よって、例えば、中心軸A2方向から見て主要部42の形状が楕円である場合には、本体部31の形状も楕円とされる。なお、上記の隙間は小さいため、図3図7では隙間は描かれていない。
【0030】
図6及び図7に示すように、ピン挿通部30aは、ピン係止部材30が第2位置にあるときに、連結ピン10の第1部分11及び第2部分12がいずれも通過可能な大きさ及び位置に設けられている。ピン挿通部30aは、中心軸A2に垂直、かつ中心軸A2からずれた軸であって挿通軸A1に平行な軸を有する長円柱に相当する一部を、本体部31からくり抜いた形状を有する。
【0031】
押し込み部32は、円柱形状を有しており、押し込み部32の直径は本体部31の長円の短軸よりも小さい。また、押し込み部32の直径は、蓋部材50の開口部53を通過できる大きさとされている。押し込み部32は、ピン係止部材30が凹部40内でZ方向に移動するときに、蓋部材50の開口部53内をZ方向に移動する。
【0032】
図4に示すように、押し込み部32の+Z方向側の端面32aは、ピン係止部材30が第1位置にあるときに、蓋部材50の開口部53から見て露出する露出面である。また、ピン係止部材30が第1位置にあるときに、押し込み部32の端面32aは、蓋部材50の凸部52の頂面50aよりも、ばね60側(凹部40の底部40a側)に位置する。言い換えると、ピン係止部材30が第1位置にあるときに、図4に示す押し込み部32の端面32aのZ方向についての位置P2は、蓋部材50の頂面50aの位置P1よりも凹部40側に位置する。また、ピン係止部材30の移動方向(Z方向から見て)、蓋部材50の凸部52は、開口部53から露出している端面32aの周りに位置する。
【0033】
また、図6及び図7に示すように、ピン係止部材30が第2位置まで-Z方向に移動したときにも、押し込み部32の一部は、蓋部材50の開口部53の内部に位置する。言い換えると、押し込み部32は、ピン係止部材30が凹部40の内部において第1位置と第2位置の間で移動しても、蓋部材50の開口部53から抜けないようになっている。すなわち、押し込み部32の端面32aは、ピン係止部材30が中心軸A2の方向に第1位置及び第2位置の間を移動するときに、蓋部材50の開口部53の内部を中心軸A2の方向に移動する。
【0034】
押し込み部32の端面32aには、中心に向かって深くなる形状の穴が設けられている。この穴が設けられていることにより、開口部53を通して押し込み部32の端面32aの中心を、細い棒状の部材等によって押し込みやすくなっている。
【0035】
当接部33は、円柱形状を有しており、当接部33の直径は本体部31の長円の短軸よりも小さい。また、当接部33の直径は、圧縮コイルばねであるばね60の内径よりも小さく、当接部33は、ばね60の内側に位置している。当接部33は、ピン係止部材30が第2位置にあるときに、凹部40の底部40aに突き当たる。言い換えると、ユーザ操作により、当接部33が凹部40の底部40aに突き当たるまでピン係止部材30(押し込み部32)を-Z方向に押し込んで移動させることで、ピン係止部材30の位置を第2位置とすることができ、連結ピン係止解除状態とすることができる。
【0036】
このような形状のピン係止部材30は、中心軸A2方向から見て、本体部31が、凹部40の主要部42の側壁面より僅かに小さい形状とされていることと、中心軸A2方向から見た本体部31の形状が真円形でなく長円形であることにより、中心軸A2の回りの本体部31の回転が制限される。すなわち、凹部40及びピン係止部材30は、凹部40の内部におけるピン係止部材30の中心軸A2の回りの回転が制限される形状を有する。詳しくは、凹部40及びピン係止部材30は、ピン係止部材30の移動方向(Z方向)に延び且つピン係止部材30を通る仮想軸回りにピン係止部材30が凹部40の内部において自転するのが、ピン挿通部30aの縁部30b(ピン係合部)に連結ピン10を段差部13で係合可能な範囲内で制限される形状を有する。以下では、上記の仮想軸がピン係止部材30の中心軸A2に一致する場合を例に挙げて説明する。なお、仮想軸は、中心軸A2と一致しない場合もある。
【0037】
図11A図11Cは、凹部40の内部におけるピン係止部材30の回転の制限を説明する図である。図11B及び図11Cでは、ピン挿通部30aが設けられている範囲にハッチング(ドット)が付されている。
図11Aに示すように、凹部40の側壁面とピン係止部材30の側面との間に隙間(遊び)が設けられていることにより、ピン係止部材30は、凹部40の内部において中心軸A2の回りに僅かに回転し得る。図11Aでは、時計回りに最大に回転させたときのピン係止部材30(本体部31)の長軸の向きB1と、反時計回りに最大に回転させたときの長軸の向きB2と、が示されている。ピン係止部材30は、長軸の向きがB1となる状態からB2となる状態までの回転可能範囲R内で回転し得る。なお、図11A図11Cでは、説明の便宜上、回転可能範囲Rを誇張して実際よりも大きく描いている。
【0038】
ここで、ピン係止部材30は、第2位置にあるときの向きが、回転可能範囲R内のいずれの向きであっても、連結ピン10の第1部分11及び第2部分12がピン挿通部30aを通過可能であるような形状を有する。すなわち、図11Bに示すように、ピン係止部材30の長軸の向きがB1となる状態と、図11Cに示すように、ピン係止部材30の長軸の向きがB2となる状態との間の任意の状態において、挿通孔20が、ピン挿通部30aとして切りかかれた範囲(ドットを付した部分)を通り、ピン係止部材30に掛からないようになっている。これにより、ピン係止部材30を第2位置に移動させたときに、ピン係止部材30の回転方向の向きを調整しなくても、連結ピン10がピン挿通部30aを通過可能な状態とすることができる。
なお、回転可能範囲Rの一端又は両端の一部の範囲において、連結ピン10がピン挿通部30aを通過できなくなる構成であってもよい。このような構成においても、回転可能範囲Rの大部分において連結ピン10がピン挿通部30aを通過できるため、ある程度容易にピン係止部材30の向きを調整できる。この場合には、ピン係止部材30の端面32aに、ピン係止部材30を回転させるための工具に嵌合する溝を設けてもよい。
【0039】
<ばね>
図4図7に示すように、ばね60は、凹部40の底部40aとピン係止部材30との間に位置している。ばね60は、+Z方向の端部が、ピン係止部材30のうち本体部31の-Z方向側の端面に当接しており、ピン係止部材30に対して+Z方向に弾性力を及ぼす。ばね60は、ピン係止部材30が凹部40の外部から-Z方向の力を受けていない状態において、ピン係止部材30を+Z方向に付勢して蓋部材50に突き当てる。また、ばね60は、ピン係止部材30が開口部53を通して-Z方向に押し込まれた場合に、ピン係止部材30から受ける-Z方向の力に応じて、ピン係止部材30の当接部33が凹部40の底部40aに当接するまでZ方向に収縮する。
【0040】
<連結ピン係止状態>
蓋部材50により蓋がなされた凹部40の内部にピン係止部材30及びばね60が収納された状態において、連結ピン10を連通挿通孔20に挿通することで、図3図5に示す連結ピン係止状態とすることができる。詳しくは、ピン係止部材30が第1位置にある状態で連結ピン10を連通挿通孔20に挿通すると、図12Aに示すように、連結ピン10の先端に設けられたテーパー部14がピン挿通部30aの縁部30bに当接する。そのまま連結ピン10を押し込むことで、テーパー部14がピン挿通部30aの縁部30bを-Z方向に押し下げ、図12Bに示すように、連結ピン10の第2部分12がピン挿通部30aを通過する。
なお、上記に代えて、ユーザ操作により、凹部40の外部から蓋部材50の開口部53を通してピン係止部材30(押し込み部32)を-Z方向に押し込み、ピン係止部材30を、第2位置、又は第1位置及び第2位置の間の位置まで移動させた状態で連結ピン10を挿通してもよい。
【0041】
連結ピン10の第1部分11がピン挿通部30aの位置に来るまで連結ピン10を図12Bの-X方向に押し込むと、図3図5に示すように、ピン係止部材30がばね60の弾性力により第1位置に移動し、ピン挿通部30aの縁部30bが連結ピン10の段差部13に掛かって連結ピン10が係止される。この連結ピン係止状態においては、連結ピン10の第1部分11及び第2部分12のうち第1部分11のみがピン挿通部30aを通過可能であり、第2部分12がピン係止部材30により係止される。機器本体部2のバンド取付部2aを、バンド3の取付端部3aの連結凹部3bに嵌合させた状態で連結ピン10を連通挿通孔20に挿通し、連結ピン係止状態とすることで、連結ピン10が連通挿通孔20から外れない状態で機器本体部2とバンド3とを連結することができる。
【0042】
<連結ピン係止解除状態>
連結ピン係止状態において、ユーザ操作により、凹部40の外部から蓋部材50の開口部53を通してピン係止部材30(押し込み部32)を-Z方向に押し込み、当接部33が凹部40の底部40aに当接するまでピン係止部材30を移動させると、ピン係止部材30の位置が、図6及び図7に示す第2位置となり、連結ピン係止解除状態となる。この連結ピン係止解除状態では、ピン挿通部30aの縁部30bが連結ピン10の段差部13に掛からなくなり、連結ピン10の第1部分11及び第2部分12がピン挿通部30aを通過可能となる。言い換えると、ピン係止部材30が第2位置に位置しているときには、第1部分11及び第2部分12がピン挿通部30aの縁部30bを挿通可能(縁部30bに係合せずに縁部30bを通過可能)である。よって、連結ピン10をX方向に押すことで連通挿通孔20から連結ピン10を取り外すことができ、それにより、機器本体部2とバンド3との連結を解除することができる。
【0043】
<変形例1>
次に、上記実施形態の変形例1について説明する。変形例1は、凹部40及びピン係止部材30の形状が上記実施形態と異なる。以下では、上記実施形態との相違点について説明し、上記実施形態と共通する点については説明を省略する。
【0044】
図13は、変形例1に係る凹部40を+Z方向から見た図である。
変形例1に係る凹部40の主要部42(ピン係止部材30に当接する部分)は、中心軸A2の方向から見て回転非対称な形状を有する。ここで、回転非対称とは、中心軸A2の回りで(360/n)度回転させると元の形状と同一形状となるような数n(ただしn≠1)がないことをいう。詳しくは、主要部42は、中心軸A2の方向から見た形状が、円の一部及び当該円の弦からなる形状である。すなわち、主要部42の側壁面は、円柱の側面の一部に、中心軸A2に平行な平面であって中心軸A2から外れた平面42fを設けた形状を有する。主要部42の側壁面のうち平面42fと、曲面部分とは、稜線が形成されないように滑らかに接続されていてもよい。
【0045】
図14A図14Cは、変形例1に係るピン係止部材30の構成を示す図である。
変形例1に係るピン係止部材30の本体部31(凹部40に当接する部分)は、中心軸A2の方向から見て回転非対称な形状を有する。詳しくは、本体部31は、中心軸A2の方向から見た形状が、円の一部及び当該円の弦からなる形状である。すなわち、本体部31は、円柱の一部を、中心軸A2から外れた位置で、中心軸A2に平行な平面31fで切断した形状を有する。本体部31の側面のうち平面31fと、曲面部分とは、稜線が形成されないように滑らかに接続されていてもよい。本体部31を中心軸A2方向から見た形状は、ピン係止部材30が凹部40の内部をZ方向に円滑に移動できるように、凹部40の主要部42の側壁面との間で一定の隙間が確保される形状(主要部42の側壁面より一回り小さい形状)とされる。
【0046】
このように、凹部40及びピン係止部材30を回転非対称な形状とすることで、ピン係止部材30がある特定の向き(上記の隙間があることによる回転可能範囲を含む)となっている場合にのみ、凹部40内に入るようにすることができる。言い換えると、凹部40内におけるピン係止部材30の向きを、ある特定の向きに限定することができる。上記の特定の向きは、凹部40の平面42fと、ピン係止部材30の平面31fとが対向する向きである。この特定の向きでピン係止部材30が凹部40の内部に位置しているときに、ピン挿通部30aが本体側挿通孔21(連通挿通孔20)に連なるような位置及び範囲にピン挿通部30aが設けられる。これにより、凹部40に入るようにピン係止部材30の向きを合わせた上でピン係止部材30を凹部40に収納することで、簡易に、ピン挿通部30a及び本体側挿通孔21の位置が合うようにすることができる。例えば、図3において、中心軸A2の回りにピン挿通部30aを180度回転させた状態で凹部40に収納すると、ピン挿通部30aが+Y方向を向いてしまい本体側挿通孔21との位置が合わなくなるが、変形例1の構成によれば、このような状況が生じないようにすることができる。
【0047】
なお、凹部40及びピン係止部材30の形状は、中心軸A2から見て回転非対称な形状であればよく、図13及び図14A図14Cに示したものに限られない。例えば、中心軸A2から見て楕円の一部及び当該楕円の弦からなる形状であってもよい。また、中心軸A2から見て、凹部40及びピン係止部材30の一方に凸状の部分が設けられ、他方に、凸状の部分に嵌合する形状の凹状の部分が設けられている形状であってもよい。
【0048】
<変形例2>
次に、上記実施形態の変形例2について説明する。変形例2は、バンド3の取付端部3aに凹部40が設けられる点などが上記実施形態と異なる。変形例2は、変形例1と組み合わせてもよい。
図15は、変形例2に係る時計1及びバンド連結構造100の構成を示す図である。
変形例2では、バンド3の取付端部3aが連結凸部をなしており、機器本体部2のバンド取付部2aは、バンド3の取付端部3aが嵌合する形状の連結凹部を有する。取付端部3aには、バンド側挿通孔22が設けられており、バンド取付部2aの一対の先端部には、本体側挿通孔21がそれぞれ設けられている。本体側挿通孔21及びバンド側挿通孔22が連通してなる連通挿通孔20に、連結ピン10が挿通される。変形例2では、取付端部3aに凹部40が設けられている。この凹部40には、ピン係止部材30及びばね60が収納されており、凹部40の開口縁部41に蓋部材50が取り付けられている。凹部40が設けられている位置を除き、バンド連結構造100の構造は、上記実施形態と同様である。
【0049】
<変形例3>
次に、上記実施形態の変形例3について説明する。変形例3は、蓋部材50の構造が上記実施形態と異なる。変形例3は、変形例1及び変形例2の少なくとも一方と組み合わせてもよい。
【0050】
図16は、変形例3に係るバンド連結構造のX方向に垂直な断面を示す図である。
図16に示すように、変形例3に係る蓋部材50は、機器本体部2のバンド取付部2aに固定されたヒンジ部56を有し、ヒンジ部56を中心に回動可能に設けられている。詳しくは、蓋部材50は、図16の実線で示すように、凹部40の開口を塞ぐ状態と、図16の破線で示すように、凹部40の開口を開放する状態と、の間で回動可能である。蓋部材50のヒンジ部56とは反対側の端部には、当該端部をバンド取付部2aに固定して、蓋部材50を閉じた状態のまま(実線で示した状態のまま)保持する図示略の留め具(例えば、スナップ等)が設けられている。蓋部材50は、留め具により固定された状態において、ばね60による付勢力に抗してピン係止部材30を保持する。よって、実線で示したように蓋部材50が凹部40の開口を塞ぐ状態は、ばね60と協働してピン係止部材30を保持する「第1状態」に相当する。また、破線で示したように蓋部材50が凹部40の開口を開放する状態は、ピン係止部材30を凹部40から取り出し可能な「第2状態」に相当する。よって、蓋部材50は、ヒンジ部56を中心に回動させることにより、第1状態と、第2状態と、に選択的に操作可能である。
なお、蓋部材50は、ヒンジ部56を中心に回動するものに限られず、例えば、図16におけるXY平面に平行な方向にスライド移動可能なスライド式のシャッタであってもよい。
【0051】
<効果>
以上のように、本実施形態に係る連結構造としてのバンド連結構造100は、第1部分11と、第1部分よりも太い第2部分12と、を有し、第1部分11と第2部分12との間には段差部13があり、連結対象としての機器本体部2の本体側挿通孔21、及び被連結対象としてのバンド3のバンド側挿通孔22に挿通されることによって、機器本体部2及びバンド3を互いに連結する連結ピン10と、機器本体部2に設けられている凹部40の内部において、機器本体部2の本体側挿通孔21が延びている方向とは異なる移動方向(Z方向)に移動可能で、かつ、連結ピン10が段差部13で係合しているピン挿通部30aの縁部30b(ピン係合部)が設けられたピン係止部材30と、ピン係止部材30を、上記移動方向の一方向に付勢する付勢部材としてのばね60と、機器本体部2に設けられ、ばね60と協働してピン係止部材30を保持する第1状態と、ピン係止部材30を凹部40から取り出し可能な第2状態と、に選択的に操作可能な保持部材としての蓋部材50と、を備える。
このような構成によれば、蓋部材50を第2状態とすることで、凹部40の内部に収納されたピン係止部材30及び/又はばね60を取り出すことができる。よって、ピン係止部材30及び/又はばね60の修理や交換が容易なため、バンド連結構造100のメンテナンスを簡易に行うことができる。
【0052】
また、蓋部材50は、機器本体部2に着脱可能に設けられ、機器本体部2に取り付けられることによって第1状態になり、連結対象及び被連結対象の一方から取り外されることによって第2状態になる。このように蓋部材50を機器本体部2から完全に取り外すことが可能な構成とすることにより、ピン係止部材30及び/又はばね60を取り出しやすくすることができる。また、蓋部材50を簡易に交換することができる。
【0053】
また、蓋部材50は、第1状態において、機器本体部2に螺合している。これにより、蓋部材50を回転させる簡易な操作により蓋部材50を取り付けたり取り外したりすることができる。
【0054】
また、蓋部材50のばね60とは反対側の面には、機器本体部2への蓋部材50の取り付け時に当該蓋部材50を回転させるための工具に嵌合する溝54が設けられている。これにより、工具を用いて蓋部材50を強固に固定することができ、また、このように強固に固定された蓋部材50を、工具を用いて簡易に取り外すことができる。
【0055】
また、ピン係止部材30の移動方向に直交する断面の中心軸A2は、本体側挿通孔21(連通挿通孔20)の長さ方向から見て、本体側挿通孔21の長さ方向に直交する断面の中心軸である挿通軸A1からずれた位置にあり、連結ピン10が段差部13で係合しているピン係合部は、ピン係止部材30における少なくとも挿通軸A1側の部分に設けられたピン挿通部30a(切り欠き)の縁部30bである。これによれば、中心軸A2が挿通軸A1と1点で交差し、ピン係合部が、ピン係止部材30を(x軸方向に)貫通する孔の縁部である構成と比較して、中心軸A2に直交する方向についてのピン係止部材30の最大幅を小さくして、ピン係止部材30を小型化することができる。また、連結ピン10の径が、ピン係止部材30の最大幅未満に制限されないため、連結ピン10の設計自由度を高めることができる。
【0056】
また、ピン係止部材30は、凹部40の内部を、第1位置と、第1位置とは異なる第2位置との間で移動方向に移動可能であり、ばね60と蓋部材50との協働によってピン係止部材30が第1位置に位置しているときには、連結ピン10が段差部13でピン挿通部30aの縁部30bに係合しており、ユーザの操作によりばね60による付勢力に抗してピン係止部材30が第2位置に位置しているときには、第2部分12がピン挿通部30aの縁部30bを挿通可能である。
これによれば、ばね60による付勢力に抗してピン係止部材30を移動させる簡易な操作で、ピン係止部材30による連結ピン10の係止を解除することができる。連結ピン10の係止を解除して挿通孔20から連結ピン10を取り出すことで、機器本体部2とバンド3との連結を解除してバンド3を交換することができる。よって、特殊な工具や技能を要しない簡易な操作でバンド3を交換することができる。
また、ピン係止部材30のピン挿通部30aの縁部30bに、連結ピン10の第1部分11と第2部分12との間の段差部13が引っ掛かることで連結ピン10が係止される構造とすることで、ピン係止部材30と連結ピン10との接触領域を広く取ることができ、連結ピン10をより確実に係止することができる。よって、バンド連結構造100に衝撃が加わったときにも連結ピン10の係止が解除されにくいため、意図せずにバンド3が外れる不具合を生じにくくすることができる。
【0057】
また、ピン係止部材30は、第2位置にあるときに凹部40の内部における上記移動方向に交わる底部40a(壁部)に当接する当接部33を有する。これにより、当接部33が凹部40の底部40aに当接するまでピン係止部材30を押し込む分かりやすい操作により、ピン係止部材30を第2位置に移動させて、ピン係止部材30による連結ピン10の係止を解除することができる。
【0058】
また、弾性部材として、圧縮コイルばねであるばね60を用い、当接部33が、このばね60の内側に位置する構成とすることにより、凹部40の内部で、ばね60及び当接部33をコンパクトに収納することができる。よって、凹部40及びバンド連結構造100を小型化することができる。
【0059】
また、本実施形態に係る装着型機器としての時計1は、連結対象としての機器本体部2と、機器本体部2を対象に装着するための被連結対象としてのバンド3と、上記のバンド連結構造100と、を備える。これにより、簡易な操作でバンド3を交換することができる。また、バンド連結構造100のメンテナンスを簡易に行うことができる。
【0060】
<その他>
なお、上記実施形態における記述は、本発明に係る連結構造及び装着型装置の一例であり、これに限定されるものではない。
例えば、装着型機器として時計1を例示したが、これに限られず、ユーザが身体に装着して用いる任意の機器、例えば活動量計などのヘルスケア用デバイスなどであってもよい。
【0061】
また、連結対象は時計1の機器本体部2に限れられず、被連結対象は時計1のバンド3に限られない。例えば、連結対象及び被連結対象が、いずれもバンド3を構成する複数の駒のうちの1つであってもよい。すなわち、連結構造は、バンド3を構成する駒同士の連結に用いられるものであってもよい。
【0062】
また、機器本体部2又はバンド3への蓋部材50の取り付け方法として螺合を例示したが、これに限られず、機器本体部2又はバンド3における取り付け部位(上記実施形態では開口縁部41)、及び蓋部材50を破壊せずに着脱可能な任意の方法により取り付けることができる。例えば、開口縁部41及び蓋部材50にそれぞれ設けた凸状の部分及び凹状の部分を嵌め込むスナップフィットにより、凹部40の開口縁部41に蓋部材50を取り付けてもよい。
【0063】
また、保持部材は、凹部40の開口縁部41に取り付けられる蓋部材50に限られず、凹部40の内部におけるピン係止部材30の移動を規制可能であれば、任意の位置及び形状であってもよい。例えば、保持部材は、凹部40の側壁面に取り付けられた部材であってもよいし、凹部40の側壁面に設けられた突起状の部材であってもよい。
【0064】
また、凹部40がZ方向に延びている構成を例示したが、これに限られず、凹部40が延びる方向はZ方向に対して傾斜していてもよい。
【0065】
また、連通挿通孔20の挿通軸A1と、凹部40の内部に位置するピン係止部材30の中心軸A2とがずれている構成を例示したが、これに代えて、挿通軸A1及び中心軸A2が1点で交差し得る構成としてもよい。この場合には、連通挿通孔20に挿通される連結ピン10が、凹部40の内部に位置するピン係止部材30の中心を通過できるように、ピン係止部材30は、ピン係止部材30を貫通する孔とされる。
【0066】
また、ピン係止部材30として、ピン挿通部30aを有し、ピン挿通部30aの縁部30bがピン係合部に相当する構成を例示したが、これに限られない。例えば、ピン係止部材は、先端に連結ピン10の段差部13に係合する突起状のピン係合部を有するものであってもよい。
【0067】
また、連結ピン10の第1部分11に設けられる溝は、必ずしも外周方向に一周していなくてもよく、外周方向に沿って部分的に設けられていてもよい。例えば、上記の突起状のピン係合部を有するピン係止部材を用いる場合には、当該ピン係合部が係合する大きさの溝が少なくとも設けられていればよい。
【0068】
また、連通挿通孔20は、必ずしも機器本体部2のバンド取付部2a及びバンド3の取付端部3aを貫通している貫通孔でなくてもよく、当該貫通孔の一方の端部(図2の態様に適用する場合には、一方のバンド側挿通孔22のうち本体側挿通孔21とは反対側の端部)が閉塞端となっていてもよい。この場合には、連結ピン10の第2部分12は、第1部分11の閉塞端側の一方にのみ設けられていてもよい。この構成によれば、連結ピン10の閉塞端側への移動が閉塞端により規制され、閉塞端側とは反対側への移動が、段差部13のピン係止部材30との係合により規制される。
【0069】
また、付勢部材として、圧縮コイルばねであるばね60を例示したが、これに限られず、コイル状以外の形状のばねや、シリコン等の弾性を有する材質の部材であってもよい。また、付勢部材は、ピン係止部材30と蓋部材50との間に設けられ、かつ、ピン係止部材30及び蓋部材50の両者に取り付けられた引張ばねであってもよい。この場合、引張ばねは、ピン係止部材30及び蓋部材50の両者に着脱可能でも着脱不能でもよい。また、付勢部材は、磁力によりピン係止部材30を蓋部材50に向けて付勢するものであってもよい。
【0070】
また、ピン係止部材30を第1位置から第2位置に移動させるために、ピン係止部材30の押し込み部32を-Z方向に押す方法を例示したが、これに代えて、ピン係止部材30を蓋部材50側とは反対側から-Z方向側に引っ張る方法により移動させてもよい。この場合には、凹部40の底部40aを部分的に開口縁部41側とは反対側に貫通させ、ピン係止部材30に繋がる部材をこの貫通孔から引き出してユーザが引っ張れるようにすればよい。
【0071】
また、ピン係止部材30の当接部33が当接する凹部40の壁部として、X-Y平面に平行な平面を有する底部40aを例示したが、これに限られず、壁部は、ピン係止部材30の当接部33が当接する任意の形状であってもよい。また、凹部40の底の一部には、凹部40の開口縁部41側とは反対側に貫通する貫通孔が設けられていてもよい。
【0072】
また、上記実施形態における時計1及びバンド連結構造100の構成要素の細部構成及び細部動作に関しては、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能であることは勿論である。
【0073】
本発明の実施の形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
第1部分と、前記第1部分よりも太い第2部分と、を有し、前記第1部分と前記第2部分との間には段差部があり、連結対象の挿通孔及び被連結対象の挿通孔に挿通されることによって、前記連結対象及び前記被連結対象を互いに連結する連結ピンと、
前記連結対象及び前記被連結対象の一方に設けられている凹部の内部において、前記連結対象及び前記被連結対象の前記一方の前記挿通孔が延びている方向とは異なる移動方向に移動可能で、かつ、前記連結ピンが前記段差部で係合しているピン係合部が設けられたピン係止部材と、
前記ピン係止部材を、前記移動方向の一方向に付勢する付勢部材と、
前記連結対象及び前記被連結対象の前記一方に設けられ、前記付勢部材と協働して前記ピン係止部材を保持する第1状態と、前記ピン係止部材を前記凹部から取り出し可能な第2状態と、に選択的に操作可能な保持部材と、
を備える、
連結構造。
<請求項2>
前記保持部材は、前記連結対象及び前記被連結対象の前記一方に着脱可能に設けられ、前記連結対象及び前記被連結対象の前記一方に取り付けられることによって前記第1状態になり、前記連結対象及び前記被連結対象の前記一方から取り外されることによって前記第2状態になる、請求項1に記載の連結構造。
<請求項3>
前記保持部材は、前記第1状態において、前記連結対象及び前記被連結対象の前記一方に螺合している、請求項2に記載の連結構造。
<請求項4>
前記保持部材の前記付勢部材とは反対側の面には、前記連結対象及び前記被連結対象の前記一方への前記保持部材の取り付け時に当該保持部材を回転させるための工具に嵌合する溝が設けられている、請求項3に記載の連結構造。
<請求項5>
前記ピン係止部材の前記移動方向に直交する断面の中心軸は、前記挿通孔の長さ方向から見て、前記挿通孔の長さ方向に直交する断面の中心軸である挿通軸からずれた位置にあり、
前記ピン係合部は、前記ピン係止部材における少なくとも前記挿通軸側の部分に設けられた切り欠きの縁部である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の連結構造。
<請求項6>
前記ピン係止部材は、前記凹部の内部を、第1位置と、前記第1位置とは異なる第2位置との間で前記移動方向に移動可能であり、
前記付勢部材と前記保持部材との協働によって前記ピン係止部材が第1位置に位置しているときには、前記連結ピンが前記段差部で前記ピン係合部に係合しており、ユーザの操作により前記付勢部材による付勢力に抗して前記ピン係止部材が第2位置に位置しているときには、前記第2部分が前記ピン係合部を挿通可能である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の連結構造。
<請求項7>
前記ピン係止部材は、前記第2位置にあるときに前記凹部の内部における前記移動方向に交わる壁部に当接する当接部を有する、請求項6に記載の連結構造。
<請求項8>
前記付勢部材は、圧縮コイルばねであり、
前記当接部は、前記圧縮コイルばねの内側に位置している、
請求項7に記載の連結構造。
<請求項9>
前記連結対象としての機器本体部と、
前記機器本体部を対象に装着するための前記被連結対象としてのバンドと、
請求項1~8のいずれか一項に記載の連結構造と、
を備える、装着型機器。
【符号の説明】
【0074】
1 時計(装着型装置)
2 機器本体部(連結対象)
2a バンド取付部
3 バンド(被連結対象)
3a 取付端部
3b 連結凹部
3c 先端部
10 連結ピン
11 第1部分
12 第2部分
13 段差部
14 テーパー部
20 連通挿通孔
21 本体側挿通孔(挿通孔)
22 バンド側挿通孔(挿通孔)
30 ピン係止部材
30a ピン挿通部
30b 縁部(ピン係合部)
31 本体部
31f 平面
32 押し込み部
32a 端面(露出面)
33 当接部
40 凹部
40a 底部(壁部)
41 開口縁部
42 主要部
42f 平面
50 蓋部材(保持部材)
50a 頂面
51 基部
52 凸部
53 開口部
54 溝
55 ねじ山
100 バンド連結構造(連結構造)
A1 挿通軸
A2 中心軸
R 回転可能範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図14C
図15
図16