(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】外装部材及び電子楽器
(51)【国際特許分類】
G10H 1/32 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
G10H1/32 Z
(21)【出願番号】P 2021207675
(22)【出願日】2021-12-22
【審査請求日】2022-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤井 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 先勝
(72)【発明者】
【氏名】守屋 隆紘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊彦
【審査官】金子 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-011645(JP,A)
【文献】実開平06-054096(JP,U)
【文献】特開2018-105928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の放音孔を備えるフレーム部を有し、
前記フレーム部は、
前記放音孔の形成面を備える第1孔フレームと、
前記フレーム部の中央部に配置され、前記第1孔フレームよりも前記フレーム部の厚み方向に長い前記放音孔の形成面を備える第2孔フレームと、
を含み、
前記第2孔フレームの間には、前記フレーム部の厚み方向から傾いて配置される傾斜面を備える傾斜部が設けられる、外装部材。
【請求項2】
複数の放音孔を備えるフレーム部を有し、
前記フレーム部は、
前記放音孔の形成面を備える第1孔フレームと、
前記フレーム部の中央部に配置され、前記第1孔フレームよりも前記フレーム部の厚み方向に長い前記放音孔の形成面を備える第2孔フレームと、
を含み、
前記第2孔フレームに対応する位置にスピーカが設けられ、
前記第2孔フレームの内側の一部は、前記スピーカのスピーカコーンの内部に位置される、外装部材。
【請求項3】
前記傾斜部は、前記傾斜面が対向するよう一対に設けられる、請求項
1に記載の外装部材。
【請求項4】
前記フレーム部は、直線状フレームを備える、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の外装部材。
【請求項5】
前記フレーム部は、外側の面が面一に設けられる、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の外装部材。
【請求項6】
前記フレーム部を備える第1放音部と、前記フレームを備え、前記第1放音部に対し前記フレーム部の厚み方向に略直交する方向に配置された第2放音部を有し、
前記第1放音部の前記第2孔フレームにおける前記フレーム部の厚み方向の前記放音孔の前記形成面の長さは、前記第2放音部の前記第2孔フレームにおける前記フレーム部の厚み方向の前記放音孔の前記形成面の長さよりも長い、
請求項1乃至請求項5の何れかに記載の外装部材。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れかに記載の前記外装部材を備える電子楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装部材及び電子楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スピーカネットのように、複数の放音孔を備える外装部材が、電子楽器やラジオ等の音響デバイスに用いられている。例えば、特許文献1には、円形に設けられる複数の放音孔が千鳥格子状に配置されたスピーカネットが開示されている。該スピーカネットは、音孔部を備えるキャビネットの該音孔部を覆うようにして、該キャビネットに取り付けられる。音孔部の内側には、スピーカが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スピーカは、スピーカネットに覆われて保護されるが、スピーカネットの放音孔の周囲のフレームによって、音の指向性が損なわれることがある。従って、放音孔の周囲のフレームは、できるだけ細く設けたい要望があるが、一方で、フレームの強度が低減してしまう恐れがある。
【0005】
本発明は、スピーカから放音される音の指向性を向上しつつ、強度を確保した外装部材、外装部材の成形方法及び電子楽器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る外装部材は、複数の放音孔を備えるフレーム部を有し、前記フレーム部は、前記放音孔の形成面を備える第1孔フレームと、前記フレーム部の中央部に配置され、前記第1孔フレームよりも前記フレーム部の厚み方向に長い前記放音孔の形成面を備える第2孔フレームと、を含み、前記第2孔フレームの間には、前記フレーム部の厚み方向から傾いて配置される傾斜面を備える傾斜部が設けられる。
【0007】
本発明に係る外装部材は、複数の放音孔を備えるフレーム部を有し、前記フレーム部は、前記放音孔の形成面を備える第1孔フレームと、前記フレーム部の中央部に配置され、前記第1孔フレームよりも前記フレーム部の厚み方向に長い前記放音孔の形成面を備える第2孔フレームと、を含み、前記第2孔フレームに対応する位置にスピーカが設けられ、前記第2孔フレームの内側の一部は、前記スピーカのスピーカコーンの内部に位置される。
【0008】
本発明に係る電子楽器は、上述の前記外装部材を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スピーカから放音される音の指向性を向上しつつ、強度を確保した外装部材、外装部材の成形方法及び電子楽器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る外装部材(背面パネル)を備えた電子鍵盤楽器の斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る外装部材(背面パネル)を備えた電子鍵盤楽器の背面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る外装部材(背面パネル)における第1放音部及び第2放音部を表す、電子鍵盤楽器の拡大背面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る外装部材(背面パネル)の
図3のIV-IV断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る外装部材(背面パネル)の
図3のV-V断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る外装部材(背面パネル)の
図3のVI-VI断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る外装部材(背面パネル)の第2放音部の同形放音部に係る一部拡大図であり、(a)は
図3のP部の拡大背面図であり、(b)は(a)のVIIb-VIIb断面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る外装部材(背面パネル)の
図3のVIII-VIII断面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る外装部材(背面パネル)の第2放音部を内側から見た斜視図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る外装部材(背面パネル)の第1放音部を表側(外側)から見た図であって、コア型で成形する面を白抜き表示にて示し、キャビティ型で成形する面を網掛け表示にて示す斜視図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る外装部材(背面パネル)の第1放音部を表側(外側)から見た図であって、コア型で成形する面を白抜き表示にて示し、キャビティ型で成形する面を網掛け表示にて示す斜視図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る外装部材(背面パネル)を成形する金型を説明する図であり、(a)は製品である背面パネルの第2放音孔の表側(外側)の拡大背面図であり、(b)は(a)のXIIb-XIIb断面に対応する金型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
図1に示す音響デバイスである電子鍵盤楽器10(電子楽器)には、61鍵の鍵盤30と、楽器ケース19とを備える。電子鍵盤楽器10の上面11には、調整ノブ13を備える操作部31が設けられている。楽器ケース19は、
図2に示すように、外装部材としての背面パネル15と、背面パネル15の外側に配置される背面カバー12が設けられている。電子鍵盤楽器10の背面パネル15には、中央下部に、ACアダプタの接続口や、他の音響デバイスとの接続口やUSBの接続口を備えたコネクタパネル18が設けられている。
【0012】
なお、以下の説明においては、電子鍵盤楽器10の上下方向をZ軸(下側をZ軸のプラス側)、鍵の配列方向である左右方向をX軸(音高が高い側をX軸のプラス側)、鍵の前後方向をY軸(鍵の手前側をY軸のプラス側)とする。
【0013】
電子鍵盤楽器10の背面パネル15には、複数の放音孔150,250を備えるフレーム部110,210を有する第1放音部100と第2放音部200が、それぞれ2個ずつ設けられている。第1放音部100は、放音孔150,250の軸方向(
図2のY軸方向、すなわち、フレーム部110,210の厚さ方向)に直交する方向(
図2のX軸方向)に直列に配置されている。そして、2つの第1放音部100は、X軸方向おける電子鍵盤楽器10の外側(コネクタパネル18と反対側)に配置され、2つの第2放音部200はX軸方向における電子鍵盤楽器10の内側(コネクタパネル18側)に配置される。
図2の左右に配置される1組の第1放音部100、第2放音部200は、対称に設けられている。
【0014】
図4に示すように、背面パネル15の内側(Y軸方向のプラス側)には、第1放音部100及び第2放音部200のそれぞれに対応する放音装置20が設けられている。本実施形態においては、放音装置20は、スピーカである。背面パネル15(第1放音部100、第2放音部200)は、放音装置20に近接して配置されている。背面パネル15の外側には、背面カバー12が設けられている。背面カバー12は、第1放音部100及び第2放音部200に対応する部分が開口されている。また、図示しないが、背面カバー12の外側の面には、サランネットを設けることができる。
【0015】
図3に示すように、フレーム部110,210は、外縁の外形形状がX軸方向を長軸とする略楕円形に設けられている。フレーム部110,210は、複数のフレーム115,215を備える。ここで、フレーム115,215とは、例えば六角形の放音孔150,250を構成する一辺であり、フレーム部110,210は、複数のフレーム115,215からなる。また、放音孔150,250は、複数のフレーム115,215によって囲まれる領域によって設けられている。また、
図4に示すように、フレーム部110,210の外側(Y軸方向のマイナス側)の面(外側面110a,210a)は、面一に設けられる。
【0016】
第1放音部100について説明する。
図3に示すように、第1放音部100のフレーム部110に設けられる放音孔150は、それぞれ複数設けられる第1放音孔160-1~第6放音孔160-6と、複数の同形放音孔170と、を含む。第1放音部100は、フレーム部110の厚さ方向(Y軸方向)に直交する方向(X軸方向)における内側(コネクタパネル18側)に複数の同形放音孔170が設けられている。また、第1放音部100のフレーム部110には、直線状に長い直線状フレーム120-1~120-6が設けられている。直線状フレーム120-1~120-4は、Z軸方向に平行に、フレーム部110の外縁と接続して設けられている。直線状フレーム120-1,120-2は、フレーム部110のX軸方向における略中央部において、所定間隔を空けて、直線状フレーム120-1を内側、直線状フレーム120-2を外側として配置されている。
【0017】
直線状フレーム120-3は、直線状フレーム120-1に対してX軸方向の内側に配置され、直線状フレーム120-4は直線状フレーム120-2に対してX軸方向の外側に配置される。なお、直線状フレーム120-3,120-4は、第2放音孔160-2の六角形状の辺と重なる部分では、傾斜部(第2傾斜部162b)ともされている。直線状フレーム120-5,120-6は、X軸方向に平行に、フレーム部110の外縁と接続して設けられている。直線状フレーム120-5,120-6は、直線状フレーム120-5を下側とし、直線状フレーム120-6を上側として、フレーム部110のZ軸方向の外縁近傍に設けられている。
【0018】
フレーム部110における中央部の直線状フレーム120-1に対してX軸方向の内側であって、上下の直線状フレーム120-5,120-6間のフレーム部110には、多角形状である略六角形状の複数の同形放音孔170が略ハニカム状に設けられている。
図4に示すように、同形放音孔170は、放音孔150の軸方向(Y軸方向)における内側と外側の形状が略同一に設けられている。ここで、同形放音孔170,171,270等の同形放音孔とは、放音孔150の軸方向(Y軸方向、すなわち、フレーム部110の厚さ方向)における内側と外側の形状が略同一の孔のことをいう。フレーム部110の外縁や直線状フレーム120-5,120-6に接続する同形放音孔170は、略六角形状を変形したり、半分にしたりして設けられている。
【0019】
一方、直線状フレーム120-2に対してX軸方向の外側であって、直線状フレーム120-5,120-6間のフレーム部110には、多角形状である略六角形状の孔とされる各複数の第1放音孔160-1~第3放音孔160-3が略ハニカム状に設けられている。各複数の第1放音孔160-1~第3放音孔160-3は、それぞれX軸方向に一列に並んで、3列に配置されている。
図3を見て、上段には、複数の第1放音孔160-1が設けられ、中段には複数の第2放音孔160-2、下段には複数の第3放音孔160-3が配置されている。なお、
図3では、第1放音孔160-1~第7放音孔160-7における傾斜面を網掛け表示している。
【0020】
第1放音孔160-1は、第1放音孔160-1のうちの、
図5の断面図に係る第1放音孔161を例に説明すると、第1放音孔161の領域内(
図3の平面視略六角形の内側の領域内)に、第1放音孔161の軸方向(Y軸方向、すなわち、フレーム部110の厚さ方向)のフレーム部110の厚さ方向から傾いて配置される第1傾斜面161aを備える第1傾斜部161bを有する。第1傾斜面161aの傾斜方向(孔の内側における第1傾斜面161aの縁線161a1に直交する方向であって、第1放音孔161の内側から外側に向かう方向、すなわち放音方向)である第1方向161cは、X軸のマイナス側とZ軸のマイナス側の間を略半角にした方向である。
【0021】
同様に、第2放音孔160-2のうち、
図4の断面図に係る第2放音孔162を例として、第2放音孔162は、第2放音孔162の領域内に、第2放音孔162の軸方向(Y軸方向)のフレーム部110の厚さ方向から傾いて配置される第2傾斜面162aを備える第2傾斜部162bを有する。そして、第2傾斜面162aの傾斜方向である第2方向162cは、X軸のマイナス側の方向とされている。
【0022】
また同様に、第3放音孔160-3(第3放音孔163)は、第3傾斜面163aを備える第3傾斜部163bを有し、第3傾斜面163aの方向である第3方向163cは、X軸のマイナス側とZ軸のプラス側の間を略半角にした方向である。第1方向161c、第2方向162c、第3方向163cは、それぞれ、方向が異なっている。
【0023】
一方、上下の直線状フレーム120-5,120-6の各外側には、複数の四角形状の第4放音孔160-4及び複数の四角形状の第5放音孔160-5が、それぞれX軸方向に一列に配置されている。第4放音孔160-4(第4放音孔164)は、Z軸のプラス側の方向の第4方向164cが第4傾斜部164bの第4傾斜面164aの方向とされる。第5放音孔160-5(第5放音孔165)は、Z軸のマイナス側の方向の第5方向165cが第5傾斜部165bの第5傾斜面165aの方向とされている。第4傾斜部164b、第5傾斜部165bは、それぞれ、フレーム部110の厚み方向から傾いて配置された傾斜面(第4傾斜面164a、第5傾斜面165a)を備える。
【0024】
また一方、中央部の直線状フレーム120-1,120-2間であって、Z軸方向及びX軸方向におけるフレーム部110の略中央部には、同形放音孔172が設けられている。この同形放音孔172のZ軸方向における上側(マイナス側)及び下側(プラス側)は、Z軸方向に長い略長矩形状の第6放音孔160-6及び第7放音孔160-7が設けられている。
【0025】
図6に示すように、第6放音孔160-6の第6傾斜部166bの第6傾斜面166aは、フレーム部110の厚さ方向から傾いて配置されている。換言すれば、第6傾斜面166aは、フレーム部110の内側から外側に向けて拡開するように設けられている。第6傾斜部166bは、拡開方向に屈曲する屈曲部が設けられている。同様に、第7放音孔160-7の第7傾斜部167bの第7傾斜面167aは、前記と同様の屈曲部を備えてフレーム部110の厚さ方向から傾いて配置されている。第6放音孔160-6の第6傾斜面166aの傾斜方向は、第4方向164cと同じである。第7放音孔160-7の第7傾斜面167aの傾斜方向は、第5方向165cと同じである。傾斜面(第6傾斜面166a及び第7傾斜面167a)を備える傾斜部(第6傾斜部166b及び第7傾斜部167b)は、それぞれ、後述の第2孔フレーム112の間に設けられている。そして、傾斜部(第6傾斜部166b及び第7傾斜部167b)は、傾斜面(第6傾斜面166a及び第7傾斜面167a)が対向するよう一対に設けられている。
【0026】
このように、第1放音部100からの放音方向は、
図3の平面から見ると、第1放音孔160-1により右上方向(第1方向161c)とされ、第2放音孔160-2により右方向(第2方向162c)とされ、第3放音孔160-3により右下方向(第3方向163c)とされ、第4放音孔160-4及び第6放音孔160-6により上方向(第4方向164c)とされ、第5放音孔160-5及び第7放音孔160-7により下方向(第5方向165c)とされる。従って、第1放音部100は、放音する音に広がりを持たせることができる。
【0027】
またここで、第1放音部100のフレーム部110を構成する複数のフレーム115の高さ(フレーム部110の厚さ方向(Y軸方向)の長さ)について着目する。
図7(a)及び
図7(b)に示す同形放音孔171、172を例として説明する。第1放音部100のフレーム部110を構成する複数のフレーム115は、放音孔150の形成面を備える第1孔フレーム111と、第2孔フレーム112と、を有する。
図3のP部の拡大図である
図7(a)に示すように、同形放音孔171は、6個の第1孔フレーム111(符号a~f)がそれぞれ備える孔の形成面111aからなる。同様に、同形放音孔172は、6個の第2孔フレーム112(符号g~l)がそれぞれ備える孔の形成面112aからなる。なお、孔の形成面111a,112aは、フレーム部110の厚さ方向(Y軸方向)に沿う孔の側面である。従って、形成面の長さとは、形成面が広がる形状等であっても、フレーム部110の厚さ方向に着目する。
【0028】
そして、第2孔フレーム112は、
図7(b)に示すように、同形放音孔172のY軸方向(フレーム部110の厚み方向)の形成面112aの長さT2が、同形放音孔171の第1孔フレーム111におけるフレーム部110の厚み方向の形成面111aの長さT1よりも長い。フレーム部110の外側面110aは面一であるため、フレーム部110の中央部の内側面110bは、第2孔フレーム112の部分で凸状に設けられている。
図4に示すように、第2孔フレーム112は、放音装置20のスピーカコーン21の中央凹部に対応して設けることができる。なお、第2孔フレーム112は、スピーカコーン21の内部に位置する部分を備える。第1孔フレーム111は、スピーカコーン21の内部に位置していない。
【0029】
次に、第2放音部200について説明する。
図3及び
図4に示すように、第2放音部200のフレーム部210に設けられる放音孔250は、複数の同形放音孔270からなる。換言すれば、第2放音部200は、第1放音部100の第1放音孔160-1~第7放音孔160-7を含む複数の放音孔150に換えて、同形放音孔270からなる放音孔250を有するフレーム部210を備える。複数の同形放音孔270は、多角形状である略六角形状とされ、略ハニカム状に設けられている。また、第1放音部100と同様に、第2放音部200のフレーム部210には、直線状フレーム220-1~220-6が設けられている。
【0030】
次に、
図9に示すように、第2放音部200のフレーム215は、放音孔250の形成面211a,212aを備える第1孔フレーム211と第2孔フレーム212とを有する。
図8に示すように、第2孔フレーム212における放音孔250の軸方向(Y軸方向、フレーム部210の厚さ方向)の形成面212aの長さT4は、第1孔フレーム211におけるフレーム部210の厚さ方向(Y軸方向)における形成面211aの長さT3よりも長い。また、長さT4は、長さT2よりも短い。
【0031】
第2孔フレーム112は、第6放音孔160-6、第7放音孔160-7のように音を広げる目的で側面視凸状としたため、斜面を長く設け、よって長さT2は比較的長く設けられている。一方、第2放音部200のフレーム215は、音響特性上音を広げる必要がないため、長さT4は長さT2よりも短いものとした。なお、フレーム部110,210の配置は、本実施例に限定されず、所望の音響特性に応じて長さT2,T4の変更を含めた配置の変更をすることができる。
【0032】
第2放音部200においては、フレーム部210の略中央部の所定領域Qを第2孔フレーム212により構成することで、フレーム部210の強度を増している。また、
図4に示すように、第2孔フレーム212は、放音装置20のスピーカコーン21の中央の凹部に対応して設けることができる。
【0033】
ここで、背面パネル15は、樹脂の射出成形により成形される。このとき、放音孔150,250における孔の形成面は、背面パネル15の外側から内側に向かって拡開する抜きテーパーが設けられている。例えば、
図7(b)や
図8に示すように、形成面111a,112a,211a,212aは、背面パネル15の外側から内側に向かって僅かに拡開することで抜きテーパーが設けられている。
【0034】
背面パネル15を成形するための金型50は、キャビティ型51とコア型52とを有する。第1放音部100を示す
図10、
図11においては、網掛け部分(背面パネル15の表側)がキャビティ型51で成形する面であり、白抜きの部分がコア型52で成形する面である。なお、
図10に示す、第1放音部100の表側(外側)の外周には、背面カバー12を取り付けるための4つのボス15aが設けられている。
図11に示す、第1放音部100の裏側(内側)の周囲には、電子鍵盤楽器10の楽器ケース19と接続するためのボス15bが設けられている。
【0035】
同形放音孔170,270における六角形の孔の成形においては、コア型52に六角柱状の突起を設けて成形することができる。第1放音孔160-1~第3放音孔160-3の成形では、傾斜部(第1傾斜部161b~第3傾斜部163b)を構成するため、キャビティ型51、コア型52は、以下の構成とされる。
【0036】
金型50には、対向する側面に同方向に傾斜する一対の傾斜面51a,52aを備える六角柱53を、対向頂部M1,M2間で分割して分割した六角柱53の一方側であるピン51bをキャビティ型51に設け、他方側であるピン52bをコア型52に設ける。
【0037】
この金型50を用いた外装部材である背面パネル15の成形方法は、金型50を型締めする工程と、型締めした金型50に溶融樹脂を射出する工程とを備える。すると、六角柱53により孔の領域内に傾斜面(第1傾斜面161a等)を備える第1放音孔160-1~第3放音孔160-3が設けられたフレーム部110が成形される。
【0038】
このように、第1放音孔160-1~第3放音孔160-3のキャビティ型51及びコア型52では、六角形の対向する頂部M1,M2を結んだ線をパーティングラインPLとされている。
【0039】
さらに、第1孔フレーム111,211及び第2孔フレーム112,212について、第1放音部100の同形放音孔171,172の周辺を示す
図7(a)、
図7(b)を用いて成形方法を説明する。
図7(b)に示すように、金型50のコア型52は、第1孔フレーム111の形成面111aに対応する第1ピン52cと、第2孔フレーム112の形成面112aに対応する第2ピン52dとを備える。そして、金型50を用いた背面パネル15の成形方法は、上記と同様に金型50を型締めする型締め工程と、溶融樹脂を射出する工程とを有する。すると、第1孔フレーム111と、第2孔フレーム112とを含む複数の放音孔150を備えるフレーム部110が成形される。
【0040】
なお、
図7(a)及び
図7(b)は、第1放音部100について説明したが、第2放音部200の第1孔フレーム211、第2孔フレーム212についても同様である。
【0041】
以上、本発明の実施形態では、外装部材である電子鍵盤楽器10の背面パネル15は、複数の放音孔150,250を備えるフレーム部110,210を有し、フレーム部110,210は、放音孔150,250の形成面111a,211aを備える第1孔フレーム111,211と、第1孔フレーム111,211よりもフレーム部110,210の厚み方向(Y軸方向)に長い放音孔150,250の形成面111a,211aを備える第2孔フレーム112,212と、を有する。
【0042】
これにより、第2孔フレーム112,212により設けられる放音孔150,250は、第1孔フレーム111,211により設けられる放音孔150,250よりも長い筒状とすることができる。よって、放音装置20からの音の指向性を高めつつ、部分的にでもフレーム部110,210の強度を高めることができる。なお、全ての放音孔150,250について、放音孔150,250の軸方向の長さを長くすることも考えられるが、そうすると、外装部材を取り付ける装置全体の大きさも大きくなってしまう。
【0043】
また、第2孔フレーム112,212は、フレーム部110,210の中央部に配置される。これにより、放音装置20から放音される音の中心に、第2孔フレーム112,212からなる筒状の放音孔150,250を配置し易くすることができる。
【0044】
また、第2孔フレーム112の間には、フレーム部110の厚み方向(Y軸方向)から傾いて配置される傾斜面(第6傾斜面166a及び第7傾斜面167a)を備える傾斜部(第6傾斜部166b及び第7傾斜部167b)が設けられる。これにより、音の指向性を高めつつ、音の放音方向も任意に設定することができる。
【0045】
また、傾斜部(第6傾斜部166b及び第7傾斜部167b)は、傾斜面(第6傾斜面166a及び第7傾斜面167a)が対向するよう一対に設けられる。これにより、外装部材である背面パネル15の内側における傾斜面(第6傾斜面166a及び第7傾斜面167a)の間が狭くなり、音圧を高めて放音することができる。
【0046】
また、フレーム部110,210は、直線状フレーム120-1~120-6,220-1~220-6を備える。これにより、フレーム部110,210の強度を更に高めることができる。
【0047】
また、フレーム部110,210は、外側の面(外側面110a,210a)が面一に設けられる。これにより、第2孔フレーム112,212により内側が凸となり、見栄えがよく、サランネット等の布部材も取り付け易い背面パネル15とすることができる。
【0048】
また、第2孔フレーム112,212に対応する位置には、放音装置20であるスピーカが設けられる。筒状に放音孔を構成する第2孔フレーム112,212により、スピーカから発音される音の指向性を高めて放音することができる。
【0049】
また、第2孔フレーム112の内側の一部は、スピーカのスピーカコーン21の内部に位置される。フレーム部110は、スピーカコーン21の凹部に対応している部分のみスピーカコーン21の内部に入り込んでいるため、振動によりスピーカコーン21にフレーム部110が当たり難くなる。また、スピーカコーン21にフレーム部110(背面パネル15)を接近させることができるので、電子鍵盤楽器10を小型化にすることができる。
【0050】
また、フレーム部110,210をそれぞれ備える第1放音部100及び第2放音部200を有し、第1放音部100の第2孔フレーム112におけるフレーム部110の厚み方向の同形放音孔172(放音孔150)の形成面112aの長さT2は、第2放音部200の第2孔フレーム212におけるフレーム部210の厚み方向の放音孔250の形成面212aの長さT4よりも長い。これにより、所望の音響特性に応じて第1孔フレーム111,211や第2孔フレーム112,212の形成面に係る長さT2,T4を設定することができる。
【0051】
また、外装部材である背面パネル15は、電子楽器である電子鍵盤楽器10に設けられる。これにより、音の指向性を高めつつ強度を向上した外装部材を備える電子楽器を提供することができる。
【0052】
また、背面パネル15の成形方法であって、第1孔フレーム111,211の形成面111a,211aに対応する第1ピン52cと、第2孔フレーム112,212の形成面112a,212aに対応する第2ピン52dとを備えるコア型52と、キャビティ型51と、を有する金型50を型締めする工程と、金型50に溶融樹脂を射出して第1孔フレーム111,211と、第2孔フレーム112,212とを含む複数の放音孔150,250を備えるフレーム部110,210を成形する工程と、を有する。これにより、音の指向性を高めつつ、強度を高めた背面パネル15の成形方法を提供することができる。
【0053】
また、第1孔フレーム111,211の形成面111a,211a及び第2孔フレーム112,212の形成面112a,212aにおける抜きテーパーは、フレーム部110,210の外側から内側に向かって拡開するよう設けられる。これにより、特に同形放音孔170,270においては、音圧を高めて、放音性を高めた背面パネル15の成形方法を提供することができる。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0055】
以下に、本願出願の最初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]複数の放音孔を備えるフレーム部を有し、
前記フレーム部は、
前記放音孔の形成面を備える第1孔フレームと、
前記第1孔フレームよりも前記フレーム部の厚み方向に長い前記放音孔の形成面を備える第2孔フレームと、
を含む、外装部材。
[2]前記第2孔フレームは、前記フレーム部の中央部に配置される、前記[1に記載の外装部材。
[3]前記第2孔フレームの間には、前記フレーム部の厚み方向から傾いて配置される傾斜面を備える傾斜部が設けられる、前記[1]又は前記[2]に記載の外装部材。
[4]前記傾斜部は、前記傾斜面が対向するよう一対に設けられる、前記[3]に記載の外装部材。
[5]前記フレーム部は、直線状フレームを備える、前記[1]乃至前記[4]の何れかに記載の外装部材。
[6]前記フレーム部は、外側の面が面一に設けられる、前記[1]乃至前記[5]の何れかに記載の外装部材。
[7]前記第2孔フレームに対応する位置にスピーカが設けられる、前記[1]乃至前記[6]の何れかに記載の外装部材。
[8]前記第2孔フレームの内側の一部は、前記スピーカのスピーカコーンの内部に位置される、前記[7]に記載の外装部材。
[9]前記フレーム部をそれぞれ備える第1放音部及び第2放音部を有し、
前記第1放音部の前記第2孔フレームにおける前記フレーム部の厚み方向の前記放音孔の前記形成面の長さは、前記第2放音部の前記第2孔フレームにおける前記フレーム部の厚み方向の前記放音孔の前記形成面の長さよりも長い、
前記[1]乃至前記[8]の何れかに記載の外装部材。
[10]前記[1]乃至前記[9]の何れかに記載の前記外装部材を備える電子楽器。
[11]前記[1]乃至前記[10]の何れかに記載の外装部材の成形方法であって、
前記第1孔フレームの前記形成面に対応する第1ピンと、前記第2孔フレームの前記形成面に対応する第2ピンとを備えるコア型と、キャビティ型と、を有する金型を型締めする工程と、
前記金型に溶融樹脂を射出して前記第1孔フレームと、前記第2孔フレームとを含む複数の前記放音孔を備える前記フレーム部を成形する工程と、
を有する外装部材の成形方法。
[12]前記第1孔フレームの前記形成面及び前記第2孔フレームの前記形成面における抜きテーパーは、前記フレーム部の外側から内側に向かって拡開するよう設けられる、前記[11]に記載の外装部材の成形方法。
【符号の説明】
【0056】
10 電子鍵盤楽器 11 上面
12 背面カバー 13 調整ノブ
15 背面パネル 15a ボス
15b ボス 18 コネクタパネル
19 楽器ケース
20 放音装置 21 スピーカコーン
30 鍵盤 31 操作部
50 金型 51 キャビティ型
51a 傾斜面 51b ピン
52 コア型 52a 傾斜面
52b ピン 52c 第1ピン
52d 第2ピン 53 六角柱
100 第1放音部 110 フレーム部
110a 外側面 110b 内側面
111 第1孔フレーム 111a 形成面
112 第2孔フレーム 112a 形成面
115 フレーム
120-1~120-6 直線状フレーム
150 放音孔
160-1 第1放音孔 160-2 第2放音孔
160-3 第3放音孔 160-4 第4放音孔
160-5 第5放音孔 160-6 第6放音孔
160-7 第7放音孔 161 第1放音孔
161a 第1傾斜面 161a1 縁線
161b 第1傾斜部 161c 第1方向
162 第2放音孔 162a 第2傾斜面
162b 第2傾斜部 162c 第2方向
163 第3放音孔 163a 傾斜面
163b 第3傾斜部 163c 第3方向
164 第4放音孔 164a 第4傾斜面
164b 第4傾斜部 164c 第4方向
164c 第4方向
165 第5放音孔 165a 第5傾斜面
165b 第5傾斜部 165c 第5方向
166a 第6傾斜面 166b 第6傾斜部
167a 第7傾斜面 167b 第7傾斜部
170 同形放音孔 171 同形放音孔
172 同形放音孔 200 第2放音部
210 フレーム部 210a 外側面
211 第1孔フレーム 211a 形成面
212 第2孔フレーム 212a 形成面
215 フレーム
220-1~220-6 直線状フレーム
250 放音孔 270 同形放音孔