(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】紙製バリア基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
D21H 23/48 20060101AFI20231212BHJP
D21H 19/60 20060101ALI20231212BHJP
D21H 19/82 20060101ALI20231212BHJP
D21H 27/10 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
D21H23/48
D21H19/60
D21H19/82
D21H27/10
(21)【出願番号】P 2021511968
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020013898
(87)【国際公開番号】W WO2020203721
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2019067070
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019067071
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】521362922
【氏名又は名称】ジュウジョウ サーマル オーユー
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】大石 有理
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健太
(72)【発明者】
【氏名】津田 悟司
(72)【発明者】
【氏名】岡本 匡史
(72)【発明者】
【氏名】紺屋本 博
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-529316(JP,A)
【文献】特開2012-207319(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170462(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/133092(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 11/00 - 27/42
D21B 1/00 - 1/38
D21C 1/00 - 11/14
D21D 1/00 - 99/00
D21F 1/00 - 13/12
D21G 1/00 - 9/00
D21J 1/00 - 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材上に、少なくとも水蒸気バリア性樹脂と顔料とを含有する水蒸気バリア層用塗工液を、カーテン塗工法により塗工して水蒸気バリア層を形成する工程を有し、
前記水蒸気バリア層用塗工液が、粘性改良剤を含有し、
該粘性改良剤が、エチレン変性ポリビニルアルコールを含有し、
前記水蒸気バリア層用塗工液の、固形分濃度32重量%、温度25℃における曳糸性が0.07秒以上0.4秒以下であることを特徴とする紙製バリア基材の製造方法。
【請求項2】
前記エチレン変性ポリビニルアルコールの配合量が、前記水蒸気バリア層用塗工液中の前記顔料に対して固形分で1重量%以上20重量%以下であることを特徴とする請求項
1に記載の紙製バリア基材の製造方法。
【請求項3】
前記水蒸気バリア層用塗工液が、さらに撥水剤と界面活性剤を含有し、固形分濃度32重量%、温度25℃における静的表面張力が40mN/m以下であることを特徴とする請求項1
または2に記載の紙製バリア基材の製造方法。
【請求項4】
前記撥水剤が、パラフィン系撥水剤を含むことを特徴とする請求項
3に記載の紙製バリア基材の製造方法。
【請求項5】
前記撥水剤の配合量が、前記水蒸気バリア層用塗工液中の前記顔料100重量部に対して固形分で20重量部以上100重量部以下であることを特徴とする請求項
3または
4に記載の紙製バリア基材の製造方法。
【請求項6】
前記界面活性剤の配合量が、前記水蒸気バリア層用塗工液中の前記顔料100重量部に対して固形分で0.3重量部以上3.0重量部以下であることを特徴とする請求項
3~
5のいずれかに記載の紙製バリア基材の製造方法。
【請求項7】
前記水蒸気バリア層用塗工液の固形分濃度が、25重量%以上45重量%以下であることを特徴とする請求項1~
6のいずれかに記載の紙製バリア基材の製造方法。
【請求項8】
前記水蒸気バリア層上に、ガスバリア層用塗工液を塗工してガスバリア層を形成する工程、を含むことを特徴とする請求項1~
7のいずれかに記載の紙製バリア基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工液の安定性及び連続操業性が良好な紙製バリア基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗工層の製造方法として、接触式の塗工方式であるブレード塗工法とロール塗工法が一般的に用いられている。
【0003】
これら接触式の塗工方式の品質面における特徴として、以下の点がある。
ブレード塗工法は、塗工液を原紙に塗工した後、ブレードにより過剰な塗工液を掻き落して所望の塗工量に仕上げるレベリング塗工(平滑化塗工)であり、いわゆる後計量方式の塗工方法である。そのため、塗工層表面の平滑性は良好となるが、塗工量が原紙の凹凸の影響を受けるために、まだら状の塗工面になり易い。特に原紙の凹凸が酷い場合には、原紙表面をブレードで引き掻くために原紙凸部で繊維が露出してしまう程に塗工液が掻き落されてしまう。ブレード塗工法により形成された塗工層は、このような塗工量のバラツキにより、塗工層表面から原紙表面までの距離である膜厚に差が生じるため、膜厚に依存する性能にバラツキが生じたり、掻き落とす際に内部構造が乱れ、所定の性能が発揮されないという問題がある。また、塗工液がブレードを通過する際に、塗工液がブレードで加圧されて塗工液中の水分が紙に浸透し、この水分が乾燥する際に紙が収縮して、スジ状のムラが発生し、塗工面の面感に劣る場合がある。
一方、ロール塗工法は、予めロール上にメタリングされた塗工液を原紙に転写して塗工する、いわゆる前計量方式の塗工方法である。そのため、予め所望の量の塗工液をロール上に均一に広げる必要があり、複雑な装置、操作を必要とするという問題があった。また、塗工の際に筋状のパターンが生じやすく、塗工ムラのない塗工面を得ることは非常に難しく、使用可能な塗工液の粘度、濃度に制限を受ける。その他、塗工液を転写するロール上に異物が混入した場合、ロール上の塗工液が原紙に転写されない部分が生ずるおそれがあった。
【0004】
また、これらの接触式の塗工方式の操業面における特徴として、運転効率に限界がある点が挙げられる。すなわち、接触式の塗工方式では、ブレードまたはロールが塗工液を介して原紙に接触するために、原紙にかかる負荷が大きく、断紙が発生する可能性が高い。この傾向は塗工速度が速くなるほど大きくなり、断紙の頻度は飛躍的に増大する。また、塗工時に接触する設備、つまりブレードやロールは摩耗が避けられず、消耗品として定期的な交換を行なう必要がある。加えて、接触式の塗工方式では塗工設備が塗工液と絶えず接触するため、塗工設備に汚れが付着しやすく、汚れによる塗工欠陥の発生を抑えるために定期的な清掃が必要となる。このように、接触式の塗工方式の運転効率には限界があり、特に塗工速度が高速になるほど効率が悪化する問題がある。
【0005】
以上のような接触式の塗工方式に対して、カーテン塗工法やスプレー塗工法などの非接触式の塗工方式が知られている。
カーテン塗工法は、塗工液のカーテン膜を形成し、その膜に原紙を通すことにより原紙上に塗工層を設ける塗工方式であり、塗工に際しては設備が一切原紙に触れない。そのため、品質面においては、均一な塗工液のカーテン膜を形成することにより、幅方向、流れ方向の塗工量が均一となる。また、非接触式であるために、塗工液を原紙へ押し込むことなく転写でき、均一な厚さの塗工層が得られ、原紙への被覆性も良好となる。このようにカーテン塗工法では均一な膜厚の塗工層が得られるために、膜厚に依存する性能にバラツキが小さく、設計通りの性能が発揮されやすいという利点がある。操業面においては、塗工時の断紙が少なくなり、消耗品の発生もない。また、カーテン塗工法は前計量方式の塗工方法であり、落下した塗工液が全て原紙に転移するため、塗工量の管理が容易であり、濃度、流量を管理することで所望の塗工量で塗工することができる。
【0006】
以上のように、カーテン塗工法は非常に優れた塗工法であり、感圧複写紙(特許文献1)、感熱紙(特許文献2)、板紙へのワックス塗工などへの利用が提案されている。また、一般印刷用塗工紙にカーテン塗工法を導入する方法も提案されている。例えば、塗料面からクレーターの問題を解決するために、塗工液に適当な増粘剤を添加することにより、伸ばされても切れ難い性状(曳糸性)にする方法(特許文献3)が提案されている。
しかしながら、カーテン塗工法は、塗工液の固形分、粘度、曳糸性等を適切な範囲に制御しないと、長時間連続塗工するとカーテン膜の安定性が低下し、膜切れが生じる等の操業上の問題が発生する。また、増粘剤を添加することにより、経時で塗工液の粘度が上昇して送液性や取扱い性が低下するといった、塗工液の安定性が低下する傾向が見られる。
【0007】
また、カーテン塗工法は、塗工液の静的表面張力等を適切な範囲に制御しないと、塗工液が有する表面張力によりカーテン膜幅を縮小しようとして、基材幅方向の中央部と端部の膜厚にムラが生じる「ネックイン」が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開昭54-085811号公報
【文献】特開昭54-074761号公報
【文献】特開平06-294099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、塗工液の安定性及び連続操業性が良好な紙製バリア基材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の課題を解決するための手段は、以下のとおりである。
1.紙基材上に、少なくとも水蒸気バリア性樹脂と顔料とを含有する水蒸気バリア層用塗工液を、カーテン塗工法により塗工して水蒸気バリア層を形成する工程を有し、
前記水蒸気バリア層用塗工液の、固形分濃度32重量%、温度25℃における曳糸性が0.07秒以上0.4秒以下であることを特徴とする紙製バリア基材の製造方法。
2.前記水蒸気バリア層用塗工液が、粘性改良剤を含有することを特徴とする1.に記載の紙製バリア基材の製造方法。
3.前記粘性改良剤が、エチレン変性ポリビニルアルコールを含有することを特徴とする2.に記載の紙製バリア基材の製造方法。
4.前記エチレン変性ポリビニルアルコールの配合量が、前記水蒸気バリア層用塗工液中の前記顔料に対して固形分で1重量%以上20重量%以下であることを特徴とする3.に記載のバリア基材の製造方法。
5.前記粘性改良剤が、ポリアクリル酸ナトリウムを含有することを特徴とする2.に記載の紙製バリア基材の製造方法。
6.前記ポリアクリル酸ナトリウムの配合量が、前記水蒸気バリア層用塗工液中の前記顔料に対して固形分で0.01重量%以上0.5重量%以下であることを特徴とする5.に記載の紙製バリア基材の製造方法。
7.前記水蒸気バリア層用塗工液が、さらに撥水剤と界面活性剤を含有し、固形分濃度32重量%、温度25℃における静的表面張力が40mN/m以下であることを特徴とする1.~6.のいずれかに記載の紙製バリア基材の製造方法。
8.前記撥水剤が、パラフィン系撥水剤を含むことを特徴とする7.に記載の紙製バリア基材の製造方法。
9.前記撥水剤の配合量が、前記水蒸気バリア層用塗工液中の前記顔料100重量部に対して固形分で20重量部以上100重量部以下であることを特徴とする7.または8.に記載の紙製バリア基材の製造方法。
10.前記界面活性剤の配合量が、前記水蒸気バリア層用塗工液中の前記顔料100重量部に対して固形分で0.3重量部以上3.0重量部以下であることを特徴とする7.~9.のいずれかに記載の紙製バリア基材の製造方法。
11.前記水蒸気バリア層用塗工液の固形分濃度が、25重量%以上45重量%以下であることを特徴とする1.~10.のいずれかに記載の紙製バリア基材の製造方法。
12.前記水蒸気バリア層上に、ガスバリア層用塗工液を塗工してガスバリア層を形成する工程、を含むことを特徴とする、1.~11.のいずれかに記載の紙製バリア基材の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法は、塗工液の安定性が良好であり、且つ、カーテン塗工法で長時間連続塗工することにより発生する、膜切れ等の操業上の問題を抑制することが可能である。さらに、静的表面張力を制御することにより、ネックインの発生を抑制し、幅方向で膜厚にムラなく塗工することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、紙製バリア基材の製造方法に関し、
紙基材上に、少なくとも水蒸気バリア性樹脂と顔料とを含有する水蒸気バリア層用塗工液を、カーテン塗工法により塗工して水蒸気バリア層を形成する工程を有し、この水蒸気バリア層用塗工液の、固形分濃度32重量%、温度25℃における曳糸性が0.07秒以上0.4秒以下であることを特徴とする。
【0013】
「紙製バリア基材の製造方法」
紙製バリア基材は、紙基材上に、少なくとも水蒸気バリア性樹脂と顔料とを含有する水蒸気バリア層用塗工液を、カーテン塗工法により塗工して水蒸気バリア層を形成することにより製造される。
【0014】
カーテン塗工法とは、塗工液をカーテン状に流下させてカーテン膜を形成し、カーテン膜に基材を通すことにより基材に塗工層を設ける塗工方式である。カーテン塗工法は、基材に沿って塗工層が形成される輪郭塗工であり、また、上記したようにいわゆる前計量方式であるため、塗工量の制御が容易であるという特徴を有する。
【0015】
本発明においてカーテン塗工法により水蒸気バリア層用塗工液を塗工する際は、カーテン塗工法に用いられる公知の装置を使用することができる。例えば、ダイから塗工液を下向きに吐出することにより直接カーテン膜を形成するスロット型カーテン塗工装置、ダイから塗工液を上向きに吐出し、ダイ上の斜面で塗工液の膜を形成しつつ流動していき、その後ダイを離れて自由落下することによりカーテン膜を形成するスライド型カーテン塗工装置等、いずれの塗工装置も使用することができる。
【0016】
(水蒸気バリア層用塗工液)
水蒸気バリア層用塗工液は、少なくとも水蒸気バリア性樹脂と顔料とを含有し、これらが溶解、分散した水を主体とする塗工液であり、固形分濃度32重量%、温度25℃における曳糸性が0.07秒以上0.4秒以下であることを特徴とする。なお、本発明の水蒸気バリア層用塗工液は、少なくとも水蒸気バリア性樹脂と顔料とを含有すればよく、下記で詳述する水溶性高分子、架橋剤、撥水剤、粘性改良剤等を含有することができる。
【0017】
ここで、塗工液の曳糸性とは、塗工液の伸びやすさの指標であり、伸長粘度計で測定される値である。具体的には、曳糸性は、1)同軸かつ軸が垂直になるように配置された一対の直径8mmの円形プレートを備える粘度計を用いて、前記プレート間(ギャップ1mm)に液温が25℃の塗工液を封入し、2)上方のプレートを400mm/秒の速度で8mm垂直に引き上げてそのまま保持し、3)前記プレートの引き上げ開始時点から塗工液フィラメントが破断するまでの時間を測定して求められる。フィラメントが破断するまでの時間は、レーザーで測定することが好ましく、この際の時間分解能は2ms程度が好ましい。このような測定が可能な伸長粘度計の例には、サーモハーケ社製伸長粘度計(機種名:CaBER1)が含まれる。
【0018】
カーテン塗工法では、カーテン膜の落下速度と基材の進行速度との差により、カーテン膜が基材に接触した瞬間に、カーテン膜は基材に引っ張られて伸長する。塗工液の曳糸性を0.07秒以上とすることにより、カーテン膜はこの伸長に追従することができ、安定したカーテン膜を形成することができる。曳糸性が0.07秒より短いと、カーテン膜がこの伸長に追従しにくくなるため、カーテン膜の安定性が低下し、膜切れが生じる等の操業上の問題が発生する。一方、曳糸性が0.4秒を超えると、カーテン膜の基材への追従が過度となり、カーテン膜が基材の流れ方向に揺動し、やはり膜切れ等の操業上の問題が発生する。水蒸気バリア層用塗工液の固形分濃度32重量%、温度25℃における曳糸性は、0.3秒以下であることが好ましい。
【0019】
本発明に用いる水蒸気バリア層用塗工液は、固形分濃度32重量%、温度25℃におけるB型粘度が100mPa・s以上1500mPa・s以下の範囲であることが好ましい。このB型粘度が100mPa・sより低いと、塗工液が基材に過剰に浸透し、得られる紙製バリア基材の品質が低下する可能性がある。また、このB型粘度が1500mPa・sより高いと、塗工液の送液性や取扱い性が劣る等の操業上の問題が発生しやすくなる。なお、塗工液のB型粘度は、ブルックフィールド粘度計(B型粘度計)を使用し、No.3のローターを用いて、60rpmの回転速度で測定される値である。
【0020】
本発明に用いる水蒸気バリア層用塗工液は、固形分濃度32重量%、温度25℃における静的表面張力が40mN/m以下であることが好ましい。この静的表面張力を40mN/m以下とすることにより、ダイから流下中のカーテン膜の安定性が増し、少ない流量においても、カーテン膜のネックイン(カーテン膜がすぼんで中央部と端部の膜厚にムラが生じる現象)や膜切れを抑制し、均一で安定したカーテン膜を作成することが容易となる。また、固形分濃度32重量%、温度25℃における静的表面張力は25mN/m以上であることが好ましい。静的表面張力が25mN/m未満であると、水蒸気バリア層用塗工液の基材への過剰な濡れ性により、水蒸気バリア層用塗工液が基材に過度に浸透し、水蒸気バリア性が低下することがある。なお、塗工液の静的表面張力は、液温25℃でプレート法(Wilhelmy法)で測定される値であり、このような測定が可能な表面張力計の例には、協和界面科学社製全自動表面張力計(機種名:CBVP-Z)が含まれる。
【0021】
本発明に用いる水蒸気バリア層用塗工液の曳糸性、静的表面張力等の特性は、下記で詳述する粘性改良剤、撥水剤、界面活性剤等の添加量や、塗工液に含まれる水蒸気バリア性樹脂、顔料等の配合比等により調整することができる。これは、水蒸気バリア層用塗工液中の顔料粒子やその他の配合物の間の相互作用の大きさに基づく。
本発明に用いる水蒸気バリア層用塗工液の固形分濃度は、特に限定されないが、25重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。また、固形分濃度の上限も特に制限されないが、送液性等を考慮すると、45重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましい。
【0022】
(水蒸気バリア性樹脂)
水蒸気バリア性樹脂としては、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、パラフィン(WAX)系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成接着剤、またはそれらのパラフィン(WAX)配合合成接着剤等を単独あるいは2種類以上混合して使用することができる。これらの中では、水蒸気バリア性の点からスチレン・ブタジエン系合成接着剤、スチレン・アクリル系合成接着剤を使用することが好ましい。
本発明においてスチレン・ブタジエン系合成接着剤とは、スチレンとブタジエンを主構成モノマーとし、これに変性を目的とする各種のコモノマーを組み合わせ、乳化重合したものである。コモノマーの例として、メチルメタクリレート、アクリロニトリル、アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレートや、イタコン酸、マレイン酸、アクリル酸などの不飽和カルボン酸などが挙げられる。また、乳化剤としては、オレイン酸ナトリウム、ロジン酸石鹸、アルキルアリルスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤が単独、またはノニオン性界面活性剤と組み合わせて用いることができる。目的によっては、両性またはカチオン性界面活性剤を用いることもできる。また、スチレン・アクリル系合成接着剤とは、スチレンとアクリルを主構成モノマーとし、これに変性を目的とする各種のコモノマーを組み合わせ、乳化重合したものである。
【0023】
(水溶性高分子)
なお、水蒸気バリア性に問題がない程度であれば、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、エチレン共重合ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパクなどのタンパク質類、酸化澱粉、カチオン化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などの澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウムなどの水溶性高分子を、上記水蒸気バリア性樹脂と併用することも可能である。
【0024】
(顔料)
顔料は、水蒸気バリア層の水蒸気バリア性を高め、また、水蒸気バリア層の上にガスバリア層を塗工する場合に、水蒸気バリア層とガスバリア層の密着性を向上させることができる。
顔料としてはカオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコア-シェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。
これらの顔料の中でも、水蒸気バリア性の向上と、ガスバリア層用塗工液の浸透抑制の両方の観点から、形状が扁平なカオリン、マイカ、タルクなどの無機顔料が好ましく、カオリン、マイカがより好ましい。これらの中で、アスペクト比が10以上の無機顔料を単独または2種類以上混合して使用することが好ましい。アスペクト比は100以上がより好ましく、200以上がさらに好ましい。また、体積50%平均粒子径(D50)(以下、「平均粒子径」とも言う。)が5μm以上の無機顔料を単独または2種類以上混合して使用することが好ましい。使用する無機顔料の平均粒子径またはアスペクト比が上記範囲より小さいと、水蒸気バリア性の向上効果が小さくなる。
【0025】
本発明において、水蒸気バリア性の向上、及びガスバリア層との密着性向上のため、平均粒子径が5μm以上の無機顔料を含有する水蒸気バリア層に、さらに平均粒子径が5μm以下の顔料を含有させてもよい。平均粒子径が5μm以下の顔料を併用することにより、平均粒子径が5μm以上の無機顔料により形成された水蒸気バリア層中の空隙を減少させることができるため、さらに優れた水蒸気バリア性が発現する。つまり、水蒸気バリア層に平均粒子径の異なる顔料を含有させた場合、水蒸気バリア層中で大きな平均粒子径の無機顔料により形成される空隙に小さな平均粒子径の顔料が充填された状態となり、水蒸気は顔料を迂回して通過するため、異なる平均粒子径の顔料を含有していない水蒸気バリア層と比較して、高い水蒸気バリア性を有するものと推測される。
本発明において、平均粒子径が5μm以上の無機顔料と、平均粒子径が5μm以下の顔料を併用する場合、平均粒子径が5μm以上の無機顔料と、平均粒子径が5μm以下の顔料の配合比率は、乾燥重量で、50/50~99/1であることが好ましい。平均粒子径が5μm以上の無機顔料の配合比率が上記範囲より少ないと、水蒸気が水蒸気バリア層中を迂回する回数が減少し、移動する距離が短くなるため、水蒸気バリア性の改善効果が小さくなることがある。一方、平均粒子径が5μm以上の無機顔料の配合比率が上記範囲より多いと、水蒸気バリア層中の大きな平均粒子径の無機顔料が形成する空隙を平均粒子径が5μm以下の顔料で十分に埋めることができないため、水蒸気バリア性のさらなる向上は見られない。
【0026】
本発明において、平均粒子径が5μm以上の無機顔料と併用する平均粒子径が5μm以下の顔料としては、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコア-シェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。これらの顔料の中では、重質炭酸カルシウムを使用することが好ましい。
【0027】
水蒸気バリア層に顔料を含有させる場合、顔料の配合量は、固形分で顔料100重量部に対して、水蒸気バリア性樹脂と水溶性高分子の合計で5重量部以上200重量部以下の範囲で使用されることが好ましく、より好ましくは水蒸気バリア性樹脂と水溶性高分子の合計で10重量部以上150重量部以下である。
【0028】
(架橋剤)
本発明において、水蒸気バリア層に多価金属塩などに代表される架橋剤を添加することができる。架橋剤は水蒸気バリア層に含有される水蒸気バリア性樹脂や水溶性高分子と架橋反応を起こすため、水蒸気バリア層内の結合の数(架橋点)が増加する。つまり、水蒸気バリア層が緻密な構造となり、良好な水蒸気バリア性を発現することができる。
本発明において、架橋剤の種類としては特に限定されるものではなく、水蒸気バリア層に含有される水蒸気バリア性樹脂や水溶性高分子の種類に合わせて、多価金属塩(銅、亜鉛、銀、鉄、カリウム、ナトリウム、ジルコニウム、アルミニウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、チタンなどの多価金属と、炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、珪酸イオン、窒素酸化物、ホウ素酸化物などのイオン性物質が結合した化合物)、アミン化合物、アミド化合物、アルデヒド化合物、ヒドロキシ酸など適宜選択して使用することが可能である。
水蒸気バリア性に優れた効果を発現するスチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系などのスチレン系の水蒸気バリア性樹脂を用いた場合、架橋効果発現の観点から、多価金属塩を使用することが好ましく、カリウムミョウバンを使用することがより好ましい。
架橋剤の配合量については、塗工可能な塗工液濃度や塗工液粘度の範囲内であれば特に限定されることなく配合することができるが、好ましくは顔料100重量部に対して、架橋剤が1重量部以上10重量部以下であり、より好ましくは3重量部以上5重量部以下である。1重量部未満であると架橋剤の添加効果が十分に得られないことがある。また、10重量部より多いと塗工液の粘度上昇が著しくなり、塗工が困難となることがある。
【0029】
本発明において、水蒸気バリア層用塗工液に架橋剤を添加する場合、アンモニアなどの極性溶媒に架橋剤を溶解させてから塗工液へ添加することが好ましい。架橋剤を極性溶媒に溶解させると架橋剤と極性溶媒で結合を作るため、塗工液へ添加しても直ちには水蒸気バリア性樹脂や水溶性高分子との架橋反応が起こらないため、塗工液の増粘を抑制することができる。その場合、紙基材への塗工後に乾燥することにより極性溶媒成分が揮発し、水蒸気バリア性樹脂や水溶性高分子との架橋反応が起こり、緻密な水蒸気バリア層が形成されると推測される。
【0030】
(撥水剤)
本発明において、水蒸気バリア性向上の観点から、水蒸気バリア層に撥水剤を含有させることが好ましい。撥水剤としては、アルカン化合物を主体とするパラフィン系撥水剤、カルナバやラノリンなどの動植物由来の天然油脂系撥水剤、シリコーンまたはシリコーン化合物を含有するシリコーン含有系撥水剤、フッ素化合物を含有するフッ素含有系撥水剤など例示することができる。これらの中では、水蒸気バリア性能発現の観点からパラフィン系撥水剤を使用することが好ましい。また、これらの撥水剤を単独あるいは2種類以上混合して使用することができる。
【0031】
本発明において、撥水剤の配合量は特に限定されるものではないが、撥水剤の配合量は、固形分で水蒸気バリア性樹脂と水溶性高分子の合計100重量部に対して、撥水剤が1重量部以上100重量部以下であることが好ましい。撥水剤の配合量が1重量部未満であると、水蒸気バリア性の向上効果が十分に得られない可能性がある。一方、100重量部を超えた場合には、水蒸気バリア層上にガスバリア層を設ける場合にガスバリア層が均一に形成し難くなるため、ガスバリア性が低下する可能性がある。
【0032】
(界面活性剤)
本発明において、水蒸気バリア層用塗工液のレベリング性の向上及びガスバリア層との密着性の観点より、水蒸気バリア層に界面活性剤を含有させることが好ましい。界面活性剤のイオン性は制限されるものではなく、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤のいずれの種類でも単独もしくは2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、具体的な種類としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アルコール系界面活性剤、アセチレン基を有するアセチレン系界面活性剤、アセチレン基と2つの水酸基を有するアセチレンジオール系界面活性剤、アルキル基とスルホン酸を有するアルキルスルホン酸系界面活性剤、エステル系界面活性剤、アミド系界面活性剤、アミン系界面活性剤、アルキルエーテル系界面活性剤、フェニルエーテル系界面活性剤、硫酸エステル系界面活性剤、フェノール系界面活性剤などを例示することができる。これらの中では、水蒸気バリア層用塗工液のレベリング性の向上効果が大きい、アセチレンジオール系界面活性剤を使用することが好ましい。なお、水蒸気バリア層用塗工液のレベリング性が向上すると、水蒸気バリア層の均一性が向上すると共に、水蒸気バリア層上にガスバリア層を設ける場合にガスバリア層が均一に形成しやすくなり、水蒸気バリア層とガスバリア層との密着性が向上して、水蒸気バリア性、ガスバリア性共に向上する傾向が見られる。
【0033】
本発明において、界面活性剤の配合量は特に限定されるものではないが、界面活性剤の配合量は、固形分で水蒸気バリア層中の顔料100重量部に対して、界面活性剤が0.3重量部以上3.0重量部以下であることが好ましく、0.3重量部以上2.0重量部以下であることがより好ましい。界面活性剤の配合量が0.3重量部未満であると、水蒸気バリア層用塗工液のレベリング性向上効果が十分に得られない可能性がある。一方、3.0重量部を超えると、水蒸気バリア層用塗工液のレベリング性向上効果が飽和すると共に、水蒸気バリア性が低下する可能性がある。
【0034】
(粘性改良剤)
本発明において、水蒸気バリア層用塗工液は粘性改良剤を含有することが好ましい。粘性改良剤は、塗工液の流動性を調整する作用を有する薬剤であり、粘性改良剤を含有することにより、水蒸気バリア層用塗工液の曳糸性を所望の値に制御しやすくなる。
粘性改良剤の具体例としては、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂等の親水性高分子が挙げられる。これらの中で、エチレン変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムが、粘性改良剤添加による水蒸気バリア性の低下の度合いが低く、また、カーテン塗工法による塗工適性に優れているため好ましい。特に、エチレン変性ポリビニルアルコールは、疎水基導入型であるため、親水性高分子でありながら水蒸気バリア性への影響が小さいため好ましい。
粘性改良剤は、親水性であるため、添加量が多いと水蒸気バリア性が低下する場合がある。また、塗工液の安定性や連続操業性が低下する傾向も見られるため、粘性改良剤の添加量は、水蒸気バリア層用塗工液の曳糸性を0.07秒以上とすることができるのであれば少ないほうが好ましい。例えば、エチレン変性ポリビニルアルコールの添加量は、水蒸気バリア層用塗工液中の顔料に対して固形分で1重量%以上20重量%以下であることが好ましく、1重量%以上10重量%以下であることがより好ましい。また、ポリアクリル酸ナトリウムの添加量は、水蒸気バリア層用塗工液中の顔料に対して固形分で0.01重量%以上0.5重量%以下であることが好ましく、0.01重量%以上0.1重量%以下であることがより好ましい。
【0035】
また、水蒸気バリア層用塗工液には、上記した水蒸気バリア性樹脂、水溶性高分子、顔料、架橋剤、撥水剤、界面活性剤、粘性改良剤の他、分散剤、消泡剤、耐水化剤、染料、蛍光染料等の通常使用される各種助剤を使用することができる。
【0036】
本発明において、水蒸気バリア層の塗工量は、乾燥重量で3g/m2以上50g/m2以下とすることが好ましく、5g/m2以上40g/m2以下とすることがより好ましく、7g/m2以上30g/m2以下とすることがさらに好ましい。水蒸気バリア層の塗工量が3g/m2未満であると、紙基材を塗工液が完全に被覆することが困難となり、十分な水蒸気バリア性が得られなくなることや、水蒸気バリア層上にガスバリア層用塗工液を塗工する場合に、ガスバリア層用塗工液が紙基材にまで浸透して、十分なガスバリア性が得られなくなることがある。一方、水蒸気バリア層の塗工量が50g/m2より多いと、塗工時の乾燥負荷が大きくなる。
なお、本発明において、水蒸気バリア層は1層であってもよく、2層以上の多層で構成してもよい。水蒸気バリア層を2層以上の多層で構成する場合は、全ての水蒸気バリア層を合計した塗工量を上記範囲内とすることが好ましい。
【0037】
(紙基材)
本発明において紙基材は、パルプ、填料、各種助剤等からなるシートである。
パルプとしては、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未漂白パルプ(NUKP)、サルファイトパルプなどの化学パルプ、ストーングラインドパルプ、サーモメカニカルパルプなどの機械パルプ、脱墨パルプ、古紙パルプなどの木材繊維、ケナフ、竹、麻などから得られた非木材繊維などを用いることができ、適宜配合して用いることが可能である。これらの中でも、原紙中への異物混入が発生し難いこと、使用後の紙容器を古紙原料に供してリサイクル使用する際に経時変色が発生し難いこと、高い白色度を有するため印刷時の面感が良好となり、特に包装材料として使用した場合の使用価値が高くなることなどの理由から、化学パルプ、機械パルプを用いることが好ましく、化学パルプを用いることがより好ましい。
【0038】
填料としては、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、ゼオライト、合成樹脂填料等の公知の填料を使用することができる。また、硫酸バンドや各種のアニオン性、カチオン性、ノニオン性あるいは、両性の歩留まり向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤や内添サイズ剤等の抄紙用内添助剤を必要に応じて使用することができる。さらに、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等も必要に応じて添加することができる。
【0039】
紙基材の製造(抄紙)方法は特に限定されるものではなく、公知の長網フォーマー、オントップハイブリッドフォーマー、ギャップフォーマーマシン等を用いて、酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ抄紙方式で抄紙して紙基材を製造することができる。また、紙基材は1層であってもよく、2層以上の多層で構成されていてもよい。
さらに、紙基材の表面を各種薬剤で処理することが可能である。使用される薬剤としては、酸化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉、酵素変性澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、表面サイズ剤、耐水化剤、保水剤、増粘剤、滑剤などを例示することができ、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。さらに、これらの各種薬剤と顔料を併用してもよい。顔料としてはカオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコア-シェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。
【0040】
紙基材の表面処理の方法は特に限定されるものではないが、ロッドメタリングサイズプレス、ポンド式サイズプレス、ゲートロールコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、カーテンコーターなど公知の塗工装置を用いることができる。
この様にして得られる紙基材としては、上質紙、中質紙、塗工紙、片艶紙、クラフト紙、片艶クラフト紙、晒クラフト紙、グラシン紙、板紙、白板紙、ライナーなどの各種公知のものが例示可能である。
また、紙基材の坪量は、紙製バリア基材に所望される各種品質や取り扱い性等により適宜選択可能であるが、通常は20g/m2以上500g/m2以下程度のものが好ましい。食品などの包装材、容器、カップなど、包装用途に使用する紙製バリア包装材料の場合は、25g/m2以上400g/m2以下のものがより好ましく、特に後述する軟包装材用途に使用する紙製バリア包装材料の場合は、30g/m2以上110g/m2以下のものがより好ましい。
【0041】
(ガスバリア層)
本発明の紙製バリア基材の製造方法は、水蒸気バリア層上に、ガスバリア層用塗工液を塗工して、ガスバリア層を形成することができる。ガスバリア層用塗工液は、水溶性高分子や水分散性高分子などの高分子が溶解、分散した水を主体とする塗工液であることが好ましい。水溶性高分子や水分散性高分子などの高分子を含有するガスバリア層を有する本発明の紙製バリア基材は、優れた水蒸気バリア性およびガスバリア性を併せ持つ。
【0042】
本発明において、ガスバリア層に使用される水溶性高分子としては、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、エチレン共重合ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパクなどのタンパク質類、酸化澱粉、カチオン化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などの澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウムなどを例示することができる。これらの中では、ガスバリア性の点から、ポリビニルアルコール類、セルロース誘導体が好ましく、ポリビニルアルコール類がさらに好ましい。
また、ガスバリア層に使用される水分散性高分子としては、ポリ塩化ビニリデン、エチレン酢酸ビニル系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂などを例示することができる。
【0043】
本発明において、ガスバリア層に顔料を含有させることは、ガスバリア性向上の観点から好ましい。ガスバリア層に使用される顔料としては、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコア-シェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。
これらの顔料の中でも、ガスバリア性向上の観点から、形状が扁平なカオリン、マイカ、タルクなどの無機顔料が好ましく、カオリン、マイカがより好ましい。また、平均粒子径が3μm以上の無機顔料を使用することがより好ましく、平均粒子径が5μm以上の無機顔料を使用することがさらに好ましい。また、アスペクト比が10以上の無機顔料を使用することがより好ましく、アスペクト比が30以上の無機顔料を使用することがさらに好ましい。
【0044】
ガスバリア層に顔料を含有させた場合、酸素などのガスは顔料を迂回して通過する。このため、顔料を含有していない水溶性高分子や水分散性高分子などの高分子からなるガスバリア層と比較して高湿度雰囲気下における優れたガスバリア性を有する。
本発明において、ガスバリア層に顔料を含有させる場合、顔料と水溶性高分子及び水分散性高分子の配合比率は、乾燥重量で、顔料/(水溶性高分子と水分散性高分子の合計)=1/100~1000/100であることが好ましい。顔料の比率が上記範囲外であると、ガスバリア性の改善効果が小さくなることがある。
なお、本発明において、顔料を水溶性高分子、水分散性高分子中に配合する際に、顔料がスラリー化したものを添加し混合することが好ましい。
【0045】
本発明において、ガスバリア層に多価金属塩などに代表される架橋剤を添加することができる。架橋剤はガスバリア層に含有される水溶性高分子や水分散性高分子などの高分子と架橋反応を起こすため、ガスバリア層内の結合の数(架橋点)が増加する。つまり、ガスバリア層が緻密な構造となり、良好なガスバリア性を発現することができる。
本発明において、架橋剤の種類としては特に限定されるものではなく、ガスバリア層に含有される水溶性高分子や水分散性高分子などの高分子の種類に合わせて、多価金属塩(銅、亜鉛、銀、鉄、カリウム、ナトリウム、ジルコニウム、アルミニウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、チタンなどの多価金属と、炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、珪酸イオン、窒素酸化物、ホウ素酸化物などのイオン性物質が結合した化合物)、アミン化合物、アミド化合物、アルデヒド化合物、ヒドロキシ酸など適宜選択して使用することが可能である。なお、架橋効果発現の観点から、多価金属塩を使用することが好ましく、カリウムミョウバンを使用することがより好ましい。
架橋剤の配合量については、塗工可能な塗工液濃度や塗工液粘度の範囲内であれば特に限定されることなく配合することができるが、好ましくは顔料100重量部に対して、架橋剤が1重量部以上10重量部以下であり、より好ましくは3重量部以上5重量部以下である。1重量部未満であると架橋剤の添加効果が十分に得られないことがある。また、10重量部より多いと塗工液の粘度上昇が著しくなり、塗工が困難となることがある。
【0046】
(界面活性剤)
本発明において、水蒸気バリア層との密着性の観点より、ガスバリア層中に界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤のイオン性は制限されるものはなく、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤のいずれの種類でも単独もしくは2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、具体的な種類としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アルコール系界面活性剤、アセチレン基を有するアセチレン系界面活性剤、アセチレン基と2つの水酸基を有するアセチレンジオール系界面活性剤、アルキル基とスルホン酸を有するアルキルスルホン酸系界面活性剤、エステル系界面活性剤、アミド系界面活性剤、アミン系界面活性剤、アルキルエーテル系界面活性剤、フェニルエーテル系界面活性剤、硫酸エステル系界面活性剤、フェノール系界面活性剤などを例示することができる。これらの中では塗工液のレベリング性の向上効果が大きい、アセチレンジオール系界面活性剤を使用することが好ましい。なお、塗工液のレベリング性が向上すると、ガスバリア層の均一性が向上するため、ガスバリア性が向上する。
【0047】
本発明において、ガスバリア層には、上記した水溶性高分子、顔料の他、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、染料、蛍光染料等の通常使用される各種助剤を使用することができる。
【0048】
本発明において、ガスバリア層の塗工量は、乾燥重量で0.2g/m2以上20g/m2以下とすることが好ましい。ガスバリア層の塗工量が0.2g/m2未満であると、均一なガスバリア層を形成することが困難であるため、十分なガスバリア性が得られなくなることがある。一方、20g/m2より多いと、塗工時の乾燥負荷が大きくなる。
なお、本発明において、ガスバリア層は1層であってもよく、2層以上の多層で構成してもよい。ガスバリア層を2層以上の多層で構成する場合は、全てのガスバリア層を合計した塗工量を上記範囲内とすることが好ましい。
【0049】
水蒸気バリア層上にガスバリア層を塗工する場合には、ガスバリア層の塗工方法は特に制限されず、カーテンコーター、ブレードコーター、バーコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、リバースロールコーター、スプレーコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーターなどが挙げられる。
【0050】
(紙製バリア基材)
本発明の紙製バリア基材は、紙基材上に少なくとも水蒸気バリア層用塗工液をカーテン塗工法により塗工した後、通常の乾燥工程を経て製造される。好ましい態様において、製造後の塗工紙水分が3重量%以上10重量%以下、より好ましくは4重量%以上8重量%以下程度となるように調整して仕上げられる。水蒸気バリア層、ガスバリア層を乾燥させる手法としては、例えば、蒸気加熱ヒーター、ガスヒーター、赤外線ヒーター、電気ヒーター、熱風加熱ヒーター、マイクロウェーブ、シリンダードライヤー等の通常の方法が用いられる。平滑化処理には、通常のスーパーキャレンダ、グロスキャレンダ、ソフトキャレンダ、熱キャレンダ、シューキャレンダ等の平滑化処理装置を用いることができる。平滑化処理装置は、オンマシンやオフマシンで適宜用いられ、加圧装置の形態、加圧ニップの数、加温等も適宜調整される。
【0051】
本発明の紙製バリア基材は、紙製バリア基材のまま、または各種樹脂等と積層する、各種汎用フィルム、バリアフィルム、アルミ箔等と貼合するなどして、食品などの包装材、容器、カップ等の包装用途に用いられる紙製バリア包装材料、または産業用資材などに用いられる積層体とすることが可能である。
これらの中で、食品などの包装材、容器、カップ等の包装用途に用いられる紙製バリア包装材料として好適に使用することができ、食品などの軟包装材として特に好適に使用することができる。なお、軟包装材とは、構成としては、柔軟性に富む材料で構成されている包装材であり、一般には紙、フィルム、アルミ箔等の薄く柔軟性のある材料を、単体あるいは貼り合せた包装材を指す。また、形状としては、袋など、内容物を入れることにより立体形状を保つような包装材を指す。
本発明の紙製バリア基材を食品などの包装材、特に軟包装材として用いる場合は、ヒートシール性を有する樹脂と積層することにより、包装材料としての密閉性を高め、内容物を酸素による酸化や湿気などによる劣化などから守り、保存期間の延長を可能にすることができる。
また、産業用資材などに用いられる積層体として使用する場合においても、酸素や湿気の侵入を抑えることで、腐敗、劣化を防止できるほか、溶剤の臭気が漏れ出るのを防止するフレーバーバリア性などの効果が期待される。
【実施例】
【0052】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、もちろんこれらの例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、例中の部および%は、それぞれ重量部、重量%を示す。なお、得られた紙製バリア基材について以下に示す様な評価方法に基づいて試験を行った。
【0053】
(評価方法)
<水蒸気透過度(水蒸気バリア性)>
温度40±0.5℃、相対湿度差90±2%の条件下で、JIS K7129A:2008に準拠して、透湿度測定器(Dr.Lyssy社製、L80-4000)を用いて測定した。
<酸素透過度(ガスバリア性)>
MOCON社製、OX-TRAN2/21を使用し、23℃-0%RH条件にて測定した。
【0054】
<曳糸性>
得られた調製直後の水蒸気バリア層用塗工液の固形分濃度32重量%、温度25℃の時の曳糸性を、伸長粘度計(サーモハーケ社製、CaBER1)を使用して測定した。
<B型粘度>
得られた調製直後の水蒸気バリア層用塗工液の固形分濃度32重量%、温度25℃の時の粘度を、ブルックフィールド粘度計(東京計器社製、BII形粘度計)を使用し、No.3のローターを用いて、60rpmの回転速度で測定した。
<静的表面張力>
得られた調製直後の水蒸気バリア層用塗工液の固形分濃度32重量%、温度25℃の時の静的表面張力を、全自動表面張力計(協和界面科学社製、CBVP-Z)を使用して測定した。
【0055】
<塗工液の安定性>
得られた水蒸気バリア層用塗工液(固形分濃度32重量%)について、調製直後と温度25℃で12時間静置した後の粘度を、ブルックフィールド粘度計(東京計器社製、BII形粘度計)を使用し、温度25℃でNo.3のローターを用いて、60rpmの回転速度で測定した。
静置前後の粘度の差から、下記の基準で塗工液の安定性を評価した。
(評価基準)
○:静置前後の粘度の差が500mPa・s未満
×:静置前後の粘度の差が500mPa・s以上
【0056】
<連続操業性>
調製直後の水蒸気バリア層用塗工液を乾燥重量で塗工量10g/m2となるよう塗工速度300m/minでカーテンコーターを用いて18,000m(1時間)連続塗工した時の、カーテン膜に膜切れを生じた回数から、下記の基準で連続操業性を評価した。
(評価基準)
○:膜切れを生じた回数が0回(膜切れが発生しない)
△:膜切れを生じた回数が1回
×:膜切れを生じた回数が2回以上
【0057】
<ネックイン>
カーテンヘッドから水蒸気バリア層用塗工液を供給した時に、水蒸気バリア層用塗工液の落下高(カーテンヘッドから基材までの間隔)100mmの条件において、カーテンヘッドの幅に対する基材接触時のカーテン膜の幅が95%以下になった場合をネックインが発生したものとして、ネックイン発生の頻度を下記の基準で判断した。
○:ネックインの発生が10分間に1回未満。
△:ネックインの発生が10分間に1回以上、1分間に1回未満。
×:ネックインの発生が1分間に1回以上。
【0058】
[実施例1]
(紙基材の作製)
カナダ式標準ろ水度(CSF)500mlの広葉樹クラフトパルプ(LBKP)とCSF530mlの針葉樹クラフトパルプ(NBKP)を80/20の重量比で配合して、原料パルプとした。
原料パルプに、乾燥紙力増強剤として分子量250万のポリアクリルアミド(PAM)を対絶乾パルプ重量あたり0.1%、サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(AKD)を対絶乾パルプ重量あたり0.35%、湿潤紙力増強剤としてポリアミドエピクロロヒドリン(PAEH)系樹脂を対絶乾パルプ重量あたり0.15%、さらに歩留剤として分子量1000万のポリアクリルアミド(PAM)を対絶乾パルプ重量あたり0.08%添加した後、長網抄紙機にて抄紙し、坪量59g/m2の紙を得た。
次いで、得られた紙に固形分濃度2%に調製したポリビニルアルコール(クラレ社製、製品名:PVA117)をロッドメタリングサイズプレスで、両面合計で1.0g/m2塗工、乾燥し、坪量60g/m2の原紙を得た。得られた原紙をチルドカレンダーを用いて、速度300min/m、線圧50kgf/cm、1パスにて平滑化処理を行った。
【0059】
(水蒸気バリア層用塗工液A1の調製)
エンジニアードカオリン(イメリス社製、製品名:バリサーフHX、平均粒子径9.0μm、アスペクト比80-100)に分散剤としてポリアクリル酸ソーダを添加し(対顔料0.2%)、セリエミキサーで分散して固形分濃度60%のカオリンスラリーを調製した。調製したカオリンスラリー90部(固形分)に対しタルク(Specialty MINERALS社製、製品名:TALCRON)10部(固形分)を添加し、固形分濃度50%の顔料スラリーを調製した。
得られた顔料スラリー中に、顔料100部(固形分)に対し水蒸気バリア性樹脂としてスチレン・アクリル系共重合体エマルション(サイデン化学社製、製品名:X-511-374E)を50部(固形分)、アクリル系樹脂(三井化学社製、製品名:バリアスターASN1004)を50部(固形分)配合し、更に粘性改良剤(エチレン変性ポリビニルアルコール、クラレ社製、製品名:エクセバールRS4104)を5部(固形分)となるように配合し、固形分濃度32%の水蒸気バリア層用塗工液A1を得た。
【0060】
(ガスバリア層用塗工液B1の調製)
ポリビニルアルコール(クラレ社製、製品名:PVA117)水溶液を固形分濃度12%となるよう調製し、ガスバリア層用塗工液B1を得た。なお、このガスバリア層用塗工液B1の表面張力は35mN/mであった。
【0061】
(紙製バリア基材の作製)
得られた原紙上に、水蒸気バリア層用塗工液A1を乾燥重量で塗工量10g/m2となるよう塗工速度300m/minでカーテンコーターを用いて片面塗工、乾燥した後、その上にガスバリア層用塗工液B1を乾燥重量で塗工量5.0g/m2となるよう塗工速度300m/minでカーテンコーターを用いて片面塗工し、紙製バリア基材を得た。
【0062】
[実施例2]
(水蒸気バリア層用塗工液A2の調製)
粘性改良剤(エチレン変性ポリビニルアルコール)5部(固形分)を、粘性改良剤(ポリアクリル酸ナトリウム、東亜合成社製、製品名:アロンビスMX)0.05部(固形分)に替えた以外は水蒸気バリア層用塗工液A1と同様にして、固形分濃度32%の水蒸気バリア層用塗工液A2を得た。
水蒸気バリア層用塗工液A1に替えて水蒸気バリア層用塗工液A2を使用した以外は、実施例1と同様にして紙製バリア基材を得た。
【0063】
[実施例3]
(水蒸気バリア層用塗工液A3の調製)
粘性改良剤(エチレン変性ポリビニルアルコール)5部(固形分)を粘性改良剤(ポリアクリル酸ナトリウム、東亜合成社製、製品名:アロンビスMX)0.3部(固形分)に替えた以外は水蒸気バリア層用塗工液A1と同様にして、固形分濃度32%の水蒸気バリア層用塗工液A3を得た。
水蒸気バリア層用塗工液A1に替えて水蒸気バリア層用塗工液A3を使用した以外は、実施例1と同様にして紙製バリア基材を得た。
【0064】
[比較例1]
(水蒸気バリア層用塗工液A4の調製)
粘性改良剤を配合しない以外は水蒸気バリア層用塗工液A1と同様にして、固形分濃度32%の水蒸気バリア層用塗工液A4を得た。
水蒸気バリア層用塗工液A1に替えて水蒸気バリア層用塗工液A4を使用した以外は、実施例1と同様にして紙製バリア基材を得た。
【0065】
[比較例2]
(水蒸気バリア層用塗工液A5の調製)
粘性改良剤(エチレン変性ポリビニルアルコール)5部(固形分)を粘性改良剤(ポリアクリル酸ナトリウム、東亜合成社製、製品名:アロンビスMX)0.45部(固形分)に替えた以外は水蒸気バリア層用塗工液A1と同様にして、固形分濃度32%の水蒸気バリア層用塗工液A5を得た。
水蒸気バリア層用塗工液A1に替えて水蒸気バリア層用塗工液A5を使用した以外は、実施例1と同様にして紙製バリア基材を得た。
【0066】
[実施例4]
(水蒸気バリア層用塗工液A6の調製)
粘性改良剤(エチレン変性ポリビニルアルコール)の配合量を15部(固形分)とした以外は水蒸気バリア層用塗工液A1と同様にして、固形分濃度32%の水蒸気バリア層用塗工液A6を得た。
水蒸気バリア層用塗工液A1に替えて水蒸気バリア層用塗工液A6を使用した以外は、実施例1と同様にして紙製バリア基材を得た。
【0067】
【0068】
実施例1、2は塗工液の安定性、連続操業性共に良好であり、実施例3は、実施例1、2よりやや連続操業性が劣ったが、実用に耐えるものであった。
比較例1は、塗工液の安定性は良好であったが連続操業性が劣り、比較例2は、塗工液の安定性、連続操業性共に劣り、いずれも実用に耐えなかった。
【0069】
[実施例5]
(水蒸気バリア層用塗工液a1の調製)
エンジニアードカオリン(イメリス社製、製品名:バリサーフHX、平均粒子径9.0μm、アスペクト比80-100)に分散剤としてポリアクリル酸ソーダを添加し(対顔料0.2%)、セリエミキサーで分散して固形分濃度60%のカオリンスラリーを調製した。調製したカオリンスラリー90部(固形分)に対しタルク(Specialty MINERALS社製、製品名:TALCRON)10部(固形分)を添加し、固形分濃度50%の顔料スラリーを調製した。
得られた顔料スラリー中に、顔料100部(固形分)に対し水蒸気バリア性樹脂としてスチレン・アクリル系共重合体エマルション(サイデン化学社製、製品名:X-511-374E)を50部(固形分)、アクリル系樹脂(三井化学社製、製品名:バリアスターASN1004)を50部(固形分)配合した。更に、顔料100部に対し、パラフィン系撥水剤(丸芳化学社製、製品名:MYE―35G、ワックス含有ポリエチレンエマルジョン)を70部(固形分)、シリコーン系界面活性剤(サンノプコ社製、製品名:SNウェット125)を1.5部(固形分)、粘性改良剤(ポリアクリル酸ナトリウム、東亜合成社製、製品名:アロンビスMX)を0.05部(固形分)となるように配合し、固形分濃度32%の水蒸気バリア層用塗工液a1を得た。
【0070】
(ガスバリア層用塗工液b1の調製)
ポリビニルアルコール(クラレ社製、製品名:PVA117)水溶液を固形分濃度12%となるよう調製し、ガスバリア層用塗工液b1を得た。
【0071】
(紙製バリア基材の作製)
得られた原紙上に、水蒸気バリア層用塗工液a1を乾燥重量で塗工量10g/m2となるよう塗工速度300m/minでカーテンコーターを用いて片面塗工、乾燥した後、その上にガスバリア層用塗工液b1を乾燥重量で塗工量5.0g/m2となるよう塗工速度300m/minでカーテンコーターを用いて片面塗工し、紙製バリア基材を得た。
【0072】
[実施例6]
(水蒸気バリア層用塗工液a2の調製)
シリコーン系界面活性剤(サンノプコ社製、製品名:SNウェット125)を顔料100部に対して、2.0部(固形分)となるように配合した以外は水蒸気バリア層用塗工液a1と同様にして、固形分濃度32%の水蒸気バリア層用塗工液a2を得た。
水蒸気バリア層用塗工液a1に替えて水蒸気バリア層用塗工液a2を使用した以外は、実施例5と同様にして紙製バリア基材を得た。
【0073】
[実施例7]
(水蒸気バリア層用塗工液a3の調製)
シリコーン系界面活性剤(サンノプコ社製、製品名:SNウェット125)を顔料100部に対して、3.0部(固形分)となるように配合した以外は水蒸気バリア層用塗工液a1と同様にして、固形分濃度32%の水蒸気バリア層用塗工液a3を得た。
水蒸気バリア層用塗工液a1に替えて水蒸気バリア層用塗工液a3を使用した以外は、実施例5と同様にして紙製バリア基材を得た。
【0074】
【0075】
実施例5~7は、塗工液の安定性、連続操業性共に良好であった。実施例5、6はカーテン塗工時にネックインが発生せず、得られた紙製バリア基材の水蒸気バリア性、ガスバリア性共に良好であった。実施例7は、実施例5、6よりやや水蒸気バリア性が劣ったが、実用に耐えるものであった。