(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】感放射線性樹脂組成物、レジストパターン形成方法及び化合物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20231212BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
G03F7/004 503A
G03F7/039 601
(21)【出願番号】P 2021524689
(86)(22)【出願日】2020-04-14
(86)【国際出願番号】 JP2020016474
(87)【国際公開番号】W WO2020246143
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2019106474
(32)【優先日】2019-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】錦織 克聡
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-131911(JP,A)
【文献】特開2003-177539(JP,A)
【文献】特開2017-151474(JP,A)
【文献】特開2002-062653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/039
C08F 212/14
C08F 220/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸解離性基を含む構造単位を有する重合体と、
感放射線性酸発生体と、
下記式(1)で表される化合物と
を含有する感放射線性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1は、水素原子又は炭素数1~30の1価の有機基である。X
n+は、n価の感放射線性オニウムカチオンである。nは、1~3の整数である。)
【請求項2】
上記式(1)におけるR
1が有機基であり、この有機基が環構造を有する請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】
上記式(1)におけるR
1が有機基であり、この有機基が酸解離性基である請求項1又は請求項2に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
上記式(1)におけるX
n+がスルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン又はこれらの組み合わせである請求項1、請求項2又は請求項3に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
上記式(1)におけるnが1である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項6】
基板に直接又は間接に
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物を塗工する工程と、
上記塗工工程により形成されたレジスト膜を露光する工程と、
上記露光工程後のレジスト膜を現像する工程と
を備
えるレジストパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性樹脂組成物、レジストパターン形成方法及び化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイス構造の微細化に伴って、リソグラフィー工程におけるレジストパターンのさらなる微細化が要求されており、そのため、種々の感放射線性樹脂組成物が検討されている。このような感放射線性樹脂組成物は、ArFエキシマレーザー等の遠紫外線、極端紫外線(EUV)、電子線などの露光光の照射により露光部に酸を生成させ、この酸の触媒作用により露光部と未露光部の現像液に対する溶解速度に差を生じさせ、基板上にレジストパターンを形成させる。
【0003】
かかる感放射線性樹脂組成物には、解像性に優れることが求められる。この要求に対して、感放射線性樹脂組成物に含有される重合体の構造が種々検討されており、ブチロラクトン構造、ノルボルナンラクトン構造等のラクトン構造を有することで、レジストパターンの基板への密着性を高めると共に、これらの性能を向上できることが知られている(特開平11-212265号公報、特開2003-5375号公報及び特開2008-83370号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-212265号公報
【文献】特開2003-5375号公報
【文献】特開2008-83370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レジストパターンのさらなる微細化に伴い、露光光として極端紫外線(EUV)や電子線が用いられるようになってきており、感放射線性樹脂組成物の感度の向上が課題となっている。また、レジストパターンのさらなる微細化に伴い、露光・現像条件のわずかなブレがレジストパターンの形状や欠陥の発生に及ぼす影響もますます大きくなっている。このようなプロセス条件のわずかなブレを吸収できるようなプロセスウィンドウ(プロセス余裕度)の広い感放射線性樹脂組成物も求められている。しかし、上記従来の感放射線性樹脂組成物ではこれらの要求を満たすことはできていない。
【0006】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、感度に優れ、かつプロセスウィンドウが広い感放射線性樹脂組成物、レジストパターン形成方法及び化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、酸解離性基を含む構造単位を有する重合体(以下、「[A]重合体」ともいう)と、感放射線性酸発生体(以下、「[B]酸発生体」ともいう)と、下記式(1)で表される化合物(以下、「[C]化合物」ともいう)とを含有する感放射線性樹脂組成物である。
【化1】
(式(1)中、R
1は、水素原子又は炭素数1~30の1価の有機基である。X
n+は、n価の感放射線性オニウムカチオンである。nは、1~3の整数である。)
【0008】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、基板に直接又は間接に当該感放射線性樹脂組成物を塗工する工程と、上記塗工工程により形成されたレジスト膜を露光する工程と、上記露光工程後のレジスト膜を現像する工程とを備えるレジストパターン形成方法である。
【0009】
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、下記式(1)で表される化合物である。
【化2】
(式(1)中、R
1は、水素原子又は炭素数1~30の1価の有機基である。X
n+は、n価のカチオンである。nは、1~3の整数である。)
【0010】
ここで、「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
【発明の効果】
【0011】
本発明の感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法によれば、優れた感度及び広いプロセスウィンドウでレジストパターンを形成することができる。本発明の化合物は、当該感放射線性樹脂組成物の成分として好適に用いることができる。従って、これらは、今後ますます微細化が進行すると予想される半導体デバイスの加工プロセス等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<感放射線性樹脂組成物>
当該感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体と、[B]酸発生体と、[C]化合物とを含有する。当該感放射線性樹脂組成物は、通常、溶媒(以下、「[D]溶媒」ともいう)を含有し、また、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の任意成分を含有していてもよい。
【0013】
当該感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体と[B]酸発生体と[C]化合物とを含有するため、感度に優れ、プロセスウィンドウが広い。当該感放射線性樹脂組成物が上記構成を備えることで、上記効果を奏する理由については必ずしも明確ではないが、例えば以下のように推察することができる。すなわち、[C]化合物は、-COO-基に隣接する-CF2CF2-基を有している。この-CF2CF2-基におけるフッ素原子はEUV等の露光光を吸収し、二次電子の発生等により[B]酸発生体からの酸の発生を促進し、その結果、当該感放射線性樹脂組成物の感度が向上すると考えられる。また、[C]化合物は、適度な疎水性を有すると共に、-CF2CF2-基が隣接する-COO-基が適度な塩基性を有することにより、効果的に酸拡散制御性を発揮することができると考えられる。その結果、レジストパターンの形状がより良好なものとなり、結果として、プロセスウィンドウが広くなると考えられる。
以下、各成分について説明する。
【0014】
<[A]重合体>
[A]重合体は、酸解離性基を含む構造単位(以下、「構造単位(I)」ともいう)を有する重合体である。「酸解離性基」とは、カルボキシ基、ヒドロキシ基等の水素原子を置換する基であって、酸の作用により解離する基をいう。
【0015】
[A]重合体は、構造単位(I)以外に、フェノール性水酸基を含む構造単位(以下、「構造単位(II)」ともいう)を有することが好ましく、構造単位(I)及び(II)以外のその他の構造単位を有していてもよい。以下、各構造単位について説明する。
【0016】
[構造単位(I)]
構造単位(I)は、酸解離性基を含む構造単位である。
【0017】
構造単位(I)としては、例えば下記式(2-1A)、式(2-1B)、式(2-2A)又は式(2-2B)で表される構造単位(以下、「構造単位(I-1A)、(I-1B)、(I-2A)、(I-2B)」ともいう)、アセタール構造を含む構造単位(以下、「構造単位(I-3)」ともいう)等が挙げられる。
【0018】
【0019】
上記式(2-1A)中、RTは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。RXは、炭素数1~20の1価の炭化水素基又は水素原子である。RY及びRZは、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、又はRY及びRZが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の脂環構造の一部である。
【0020】
上記式(2-1B)中、RTは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。RXは、炭素数1~20の1価の炭化水素基である。RY及びRZは、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、又はRY及びRZが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の脂環構造の一部である。
【0021】
上記式(2-2A)中、RTは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。RUは、水素原子又は炭素数1~20の1価の炭化水素基である。RV及びRWは、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、又はRV及びRWが互いに合わせられRUが結合する炭素原子及びこの炭素原子に隣接する酸素原子と共に構成される環員数4~20の脂肪族複素環構造の一部である。
【0022】
上記式(2-2B)中、RTは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。RUは、水素原子又は炭素数1~20の1価の炭化水素基である。RV及びRWは、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、又はRV及びRWが互いに合わせられRUが結合する炭素原子及びこの炭素原子に隣接する酸素原子と共に構成される環員数4~20の脂肪族複素環構造の一部である。
【0023】
構造単位(I-1A)~(I-2B)において、カルボキシ基若しくはフェノール性水酸基に由来するオキシ酸素原子に結合する-CRXRYRZ又は-CRURV(ORW)が酸解離性基である。
【0024】
RTとしては、構造単位(I)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0025】
「炭化水素基」には、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が含まれる。この「炭化水素基」は、飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよい。「鎖状炭化水素基」とは、環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された炭化水素基をいい、直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基の両方を含む。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基をいい、単環の脂環式炭化水素基及び多環の脂環式炭化水素基の両方を含む。但し、脂環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を含んでいてもよい。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基をいう。但し、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環構造を含んでいてもよい。「環員数」とは、脂環構造、芳香環構造、脂肪族複素環構造及び芳香族複素環構造の環を構成する原子数をいい、多環の場合は、この多環を構成する原子数をいう。
【0026】
RX、RY、RZ、RU、RV及びRWで表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0027】
炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基としては、例えば
メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基等のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基などが挙げられる。
【0028】
炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば
シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環の脂環式飽和炭化水素基;
シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の単環の脂環式不飽和炭化水素基;
ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基等の多環の脂環式飽和炭化水素基;
ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基等の多環の脂環式不飽和炭化水素基などが挙げられる。
【0029】
炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基としては、例えば
フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基;
ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、アントリルメチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
【0030】
RY及びRZが炭素原子と共に構成する炭素数3~20の脂環構造としては、例えば
シクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロペンテン構造、シクロヘキセン構造等の単環の脂環構造;
ノルボルナン構造、アダマンタン構造等の多環の脂環構造などが挙げられる。
【0031】
RV及びRWが炭素原子及び酸素原子と共に構成する炭素数4~20の脂肪族複素環構造としては、例えば
オキサシクロブタン構造、オキサシクロペンタン構造、オキサシクロヘキサン構造、オキサシクロペンテン構造、オキサシクロヘキセン構造等の単環の脂肪族複素環構造;
オキサノルボルナン構造、オキサアダマンタン構造等の多環の脂肪族複素環構造などが挙げられる。
【0032】
構造単位(I-1A)としては、下記式(2-1A-1)~(2-1A-6)で表される構造単位(以下、「構造単位(I-1A-1)~(I-1A-6)」ともいう)が好ましい。
【0033】
【0034】
上記式(2-1A-1)~(2-1A-5)中、RT、RX、RY及びRZは、上記式(2-1A)と同義である。i及びjは、それぞれ独立して、1~4の整数である。
【0035】
上記式(2-1A-6)中、RTは、上記式(2-1A)と同義である。sは、1~4の整数である。RS1及びRS2は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基である。
【0036】
RXとしては、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数6~10のアリール基が好ましく、メチル基、エチル基、i-プロピル基、t-ブチル基又はフェニル基がより好ましい。
RS1及びRS2としては、水素原子又はメチル基が好ましい。
i及びjとしては、1又は2が好ましい。
sとしては、2が好ましい。
【0037】
構造単位(I)としては、構造単位(I-1A)が好ましく、構造単位(I-1A-1)又は構造単位(I-1A-6)がより好ましい。
【0038】
(構造単位(I-3))
構造単位(I-3)は、アセタール構造を含む構造単位である。アセタール構造を含む基としては、例えば下記式(3)で表される基(以下、「基(X)」ともいう)等が挙げられる。基(X)は、酸の作用により分解して、*-RI-OH、RJRKC=O及びRLOHを生じる。基(X)において-CRJRK(ORL)が酸解離性基である。
【0039】
【0040】
上記式(3)中、RIは単結合若しくは炭素数1~20の2価の炭化水素基であり、RJ及びRKはそれぞれ独立して水素原子若しくは炭素数1~20の1価の炭化水素基であり、RLは炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、又はRI、RJ、RK及びRLのうちの2つ以上が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子又は原子鎖と共に構成される環員数3~20の環構造の一部である。*は、構造単位(I-3)中の上記基(X)以外の部分との結合部位を示す。
【0041】
RIで表される炭素数1~20の2価の炭化水素基としては、例えば上記RX、RY及びRZとして例示した炭素数1~20の1価の炭化水素基から1個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0042】
RIとしては、単結合又は炭素数1~20の2価の鎖状炭化水素基が好ましく、炭素数1~20の2価の鎖状炭化水素基がより好ましく、炭素数1~10のアルカンジイル基がさらに好ましく、メタンジイル基が特に好ましい。
【0043】
RJ、RK及びRLで表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば上記RX、RY及びRZの炭素数1~20の1価の炭化水素基として例示した基と同様の基等が挙げられる。
【0044】
RJ及びRKとしては、水素原子又は鎖状炭化水素基が好ましく、水素原子又はアルキル基がより好ましく、水素原子又はメチル基がさらに好ましい。RZとしては、鎖状炭化水素基が好ましく、アルキル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0045】
RIとしては、単結合又は鎖状炭化水素基が好ましく、鎖状炭化水素基がより好ましく、アルカンジイル基がさらに好ましく、メタンジイル基が特に好ましい。
【0046】
RI及びRLが原子鎖と共に構成する環員数5~20の環構造としては、例えば1,3-ジオキサシクロペンタン構造等の1,3-ジオキサシクロアルカン構造などが挙げられる。
【0047】
RJ及びRKが炭素原子と共に構成する環員数3~20の環構造としては、例えばシクロペンタン構造、シクロヘキサン構造等のシクロアルカン構造などが挙げられる。
【0048】
基(X)としては、例えば2,2-ジメチル-1,3-ジオキサシクロペンタン-4-イル基等が挙げられる。
【0049】
構造単位(I)の含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、20モル%が好ましく、40モル%がより好ましく、50モル%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、90モル%が好ましく、80モル%がより好ましく、70モル%がさらに好ましい。構造単位(I)の含有割合を上記範囲とすることで、感度及びプロセスウィンドウをより向上させることができる。
【0050】
[構造単位(II)]
構造単位(II)は、フェノール性水酸基を含む構造単位である。「フェノール性水酸基」とは、ベンゼン環に直結するヒドロキシ基に限らず、芳香環に直結するヒドロキシ基全般を指す。[A]重合体が構造単位(II)を有することで、レジスト膜の親水性を高めることができ、現像液に対する溶解性を適度に調整することができ、その結果、プロセスウィンドウをより広げることができる。また、KrF露光、EUV露光又は電子線露光の場合、感度をより向上させることができる。
【0051】
構造単位(II)としては、例えば下記式(P)で表される構造単位等が挙げられる。
【0052】
【0053】
上記式(P)中、RPは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。RQは、単結合、-O-、-COO-又は-CONH-である。Arは、環員数6~20のアレーンから(g+h+1)個の芳香環上の水素原子を除いた基である。gは、0~10の整数である。gが1の場合、RRは、炭素数1~20の1価の有機基又はハロゲン原子である。gが2以上の場合、複数のRRは、互いに同一又は異なり、炭素数1~20の1価の有機基若しくはハロゲン原子であるか、又は複数のRRのうちの2つ以上が互いに合わせられこれらが結合する炭素鎖と共に構成される環員数4~20の環構造の一部である。hは、1~11の整数である。但し、g+hは11以下である。
【0054】
RPとしては、構造単位(II)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0055】
RQとしては、単結合又は-COO-が好ましく、単結合がより好ましい。
【0056】
RRで表される炭素数1~20の1価の有機基としては、例えば炭素数1~20の1価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素-炭素間に2価のヘテロ原子含有基を含む1価の基(α)、上記炭化水素基及び基(α)が有する水素原子の一部又は全部を1価のヘテロ原子含有基で置換した1価の基(β)、上記炭化水素基、基(α)又は基(β)と2価のヘテロ原子含有基とを組み合わせた1価の基(γ)等が挙げられる。
【0057】
炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば上記式(2-1A)~(2-2B)のRX~RWとして例示した炭素数1~20の1価の炭化水素基と同様の基等が挙げられる。
【0058】
1価及び2価のヘテロ原子含有基を構成するヘテロ原子としては、例えば酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、ハロゲン原子等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0059】
2価のヘテロ原子含有基としては、例えば-O-、-CO-、-S-、-CS-、-NR’-、これらのうちの2つ以上を組み合わせた基等が挙げられる。R’は、水素原子又は1価の炭化水素基である。これらの中で、-CO-が好ましい。
【0060】
1価のヘテロ原子含有基としては、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、アミノ基、スルファニル基等が挙げられる。
【0061】
Arを与える環員数6~20のアレーンとしては、例えばベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、ピレン等が挙げられる。これらの中で、ベンゼン又はナフタレンが好ましく、ベンゼンがより好ましい。
【0062】
RRとしては、炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0063】
複数のRRのうちの2つ以上が炭素鎖と共に構成する環員数4~20の環構造としては、例えばシクロヘキサン構造、シクロヘキセン構造等の脂環構造などが挙げられる。
【0064】
gとしては、0~2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0065】
hとしては、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1がさらに好ましい。
【0066】
構造単位(II)としては、例えば下記式(P-1)~(P-14)で表される構造単位(以下、「構造単位(II-1)~(II-14)」ともいう)等が挙げられる。
【0067】
【0068】
上記式(P-1)~(P-14)中、RPは、上記式(P)と同義である。
【0069】
これらの中で、構造単位(II-1)又は(II-2)が好ましい。
【0070】
[A]重合体が構造単位(II)を有する場合、構造単位(II)の含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%が好ましく、20モル%がより好ましく、25モル%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、80モル%が好ましく、60モル%がより好ましく、50モル%がさらに好ましい。構造単位(II)の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の感度及びプロセスウィンドウをより向上させることができる。
【0071】
構造単位(II)は、例えばアセトキシスチレン等のアシロキシスチレンなどの単量体を用いて得られた重合体を、トリエチルアミン等の塩基存在下で加水分解すること等により形成することができる。
【0072】
<その他の構造単位>
その他の構造単位としては、例えばアルコール性水酸基を含む構造単位、ラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造又はこれらの組み合わせを含む構造単位、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、スルホンアミド基又はこれらの組み合わせを含む構造単位、非酸解離性の炭化水素基を含む構造単位等が挙げられる。
【0073】
アルコール性水酸基を含む構造単位としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0074】
【0075】
上記式中、RL2は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0076】
[A]重合体がその他の構造単位を有する場合、その他の構造単位の含有割合の上限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、30モル%が好ましく、15モル%がより好ましい。
【0077】
[A]重合体の含有割合の下限としては、当該感放射線性樹脂組成物の[D]溶媒以外の全成分に対して、50質量%が好ましく、70質量%がより好ましく、80質量%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、99質量%が好ましく、95質量%がより好ましい。
【0078】
当該感放射線性樹脂組成物における[A]重合体の含有割合の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましく、1質量%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、50質量%が好ましく、30質量%がより好ましく、10質量%がさらに好ましい。[A]重合体は、1種又は2種以上を含有することができる。
【0079】
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体は、例えば各構造単位を与える単量体を、ラジカル重合開始剤等を用い、溶媒中で重合することにより合成できる。
【0080】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)の下限としては、1,000が好ましく、3,000がより好ましく、4,000がさらに好ましく、5,000が特に好ましい。上記Mwの上限としては、50,000が好ましく、30,000がより好ましく、20,000がさらに好ましく、10,000が特に好ましい。[A]重合体のMwを上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の塗工性を向上させることができ、その結果、感度及びプロセスウィンドウをより向上させることができる。
【0081】
[A]重合体のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(Mw/Mn)の上限としては、5が好ましく、3がより好ましく、2がさらに好ましく、1.6が特に好ましい。上記比の下限としては、通常1であり、1.1が好ましい。
【0082】
本明細書における重合体のMw及びMnは、以下の条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される値である。
GPCカラム:東ソー(株)の「G2000HXL」2本、「G3000HXL」1本及び「G4000HXL」1本
カラム温度 :40℃
溶出溶媒 :テトラヒドロフラン(富士フィルム和光純薬(株))
流速 :1.0mL/分
試料濃度 :1.0質量%
試料注入量 :100μL
検出器 :示差屈折計
標準物質 :単分散ポリスチレン
【0083】
<[B]酸発生体>
[B]酸発生体は、露光により酸を発生する物質である。この発生した酸により[A]重合体等が有する酸解離性基が解離してカルボキシ基、ヒドロキシ基等が生じ、[A]重合体の現像液への溶解性が変化するため、当該感放射線性樹脂組成物からレジストパターンを形成することができる。当該感放射線性樹脂組成物における[B]酸発生体の含有形態としては、低分子化合物の形態(以下、「[B]酸発生剤」ともいう)でも、重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0084】
[B]酸発生体から発生する酸としては例えばスルホン酸、イミド酸等が挙げられる。
【0085】
[B]酸発生剤としては、例えばオニウム塩化合物、N-スルホニルオキシイミド化合物、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物等が挙げられる。
【0086】
オニウム塩化合物としては、例えばスルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。
【0087】
[B]酸発生剤の具体例としては、例えば特開2009-134088号公報の段落[0080]~[0113]に記載されている化合物等が挙げられる。
【0088】
[B]酸発生剤としては、例えば下記式(4)で表される化合物等が挙げられる。
【0089】
【0090】
上記式(4)中、A-は、1価のスルホン酸アニオン又は1価のイミド酸アニオンである。T+は、1価の感放射線性オニウムカチオンである。
【0091】
露光によりスルホン酸を発生する[B]酸発生剤としては、例えば下記式(4-1)で表される化合物(以下、「化合物(4-1)」ともいう)等が挙げられる。[B]酸発生剤が下記構造を有することで、[A]重合体との相互作用等により、露光により発生する酸のレジスト膜中の拡散長がより適度に短くなると考えられ、その結果、プロセスウィンドウをより広げることができる。
【0092】
【0093】
上記式(4-1)中、Rp1は、環員数5以上の環構造を含む1価の基である。Rp2は、2価の連結基である。Rp3及びRp4は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1~20の1価の炭化水素基又は炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基である。Rp5及びRp6は、それぞれ独立して、フッ素原子又は炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基である。np1は、0~10の整数である。np2は、0~10の整数である。np3は、0~10の整数である。但し、np1+np2+np3は、1以上30以下である。np1が2以上の場合、複数のRp2は互いに同一又は異なる。np2が2以上の場合、複数のRp3は互いに同一又は異なり、複数のRp4は互いに同一又は異なる。np3が2以上の場合、複数のRp5は互いに同一又は異なり、複数のRp6は互いに同一又は異なる。T+は、1価の感放射線性オニウムカチオンである。
【0094】
Rp1で表される環員数5以上の環構造を含む1価の基としては、例えば環員数5以上の脂環構造を含む1価の基、環員数5以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基、環員数5以上の芳香環構造を含む1価の基、環員数5以上の芳香族複素環構造を含む1価の基等が挙げられる。
【0095】
環員数5以上の脂環構造としては、例えば
シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘプタン構造、シクロオクタン構造、シクロノナン構造、シクロデカン構造、シクロドデカン構造等の単環の飽和脂環構造;
シクロペンテン構造、シクロヘキセン構造、シクロヘプテン構造、シクロオクテン構造、シクロデセン構造等の単環の不飽和脂環構造;
ノルボルナン構造、アダマンタン構造、トリシクロデカン構造、テトラシクロドデカン構造等の多環の飽和脂環構造;
ノルボルネン構造、トリシクロデセン構造等の多環の不飽和脂環構造等が挙げられる。
【0096】
環員数5以上の脂肪族複素環構造としては、例えば
ヘキサノラクトン構造、ノルボルナンラクトン構造等のラクトン構造;
ヘキサノスルトン構造、ノルボルナンスルトン構造等のスルトン構造;
オキサシクロヘプタン構造、オキサノルボルナン構造等の酸素原子含有複素環構造;
アザシクロヘキサン構造、ジアザビシクロオクタン構造等の窒素原子含有複素環構造;
チアシクロヘキサン構造、チアノルボルナン構造等の硫黄原子含有複素環構造などが挙げられる。
【0097】
環員数5以上の芳香環構造としては、例えばベンゼン構造、ナフタレン構造、フェナントレン構造、アントラセン構造等が挙げられる。
【0098】
環員数5以上の芳香族複素環構造としては、例えば
フラン構造、ピラン構造、ベンゾフラン構造、ベンゾピラン構造等の酸素原子含有複素環構造;
ピリジン構造、ピリミジン構造、インドール構造等の窒素原子含有複素環構造などが挙げられる。
【0099】
Rp1の環構造の環員数の下限としては、6が好ましく、8がより好ましく、9がさらに好ましく、10が特に好ましい。上記環員数の上限としては、15が好ましく、14がより好ましく、13がさらに好ましく、12が特に好ましい。上記環員数を上記範囲とすることで上述の酸の拡散長をさらに適度に短くすることができ、その結果、プロセスウィンドウをより広げることができる。
【0100】
Rp1の環構造が有する水素原子の一部又は全部は、置換基で置換されていてもよい。上記置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基、アシロキシ基等が挙げられる。これらの中でヒドロキシ基が好ましい。
【0101】
Rp1としては、環員数5以上の脂環構造を含む1価の基又は環員数6以上の芳香環構造を含む1価の基が好ましい。
【0102】
Rp2で表される2価の連結基としては、例えばカルボニル基、エーテル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、チオカルボニル基、スルホニル基、2価の炭化水素基等が挙げられる。これらの中で、カルボニルオキシ基、スルホニル基、アルカンジイル基又は2価の脂環式飽和炭化水素基が好ましく、カルボニルオキシ基又は2価の脂環式飽和炭化水素基がより好ましく、カルボニルオキシ基又はノルボルナンジイル基がさらに好ましく、カルボニルオキシ基が特に好ましい。
【0103】
Rp3及びRp4で表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば炭素数1~20のアルキル基等が挙げられる。Rp3及びRp4で表される炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基としては、例えば炭素数1~20のフッ素化アルキル基等が挙げられる。Rp3及びRp4としては、水素原子、フッ素原子又はフッ素化アルキル基が好ましく、フッ素原子又はパーフルオロアルキル基がより好ましく、フッ素原子又はトリフルオロメチル基がさらに好ましい。
【0104】
Rp5及びRp6で表される炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基としては、例えば炭素数1~20のフッ素化アルキル基等が挙げられる。Rp5及びRp6としては、フッ素原子又はフッ素化アルキル基が好ましく、フッ素原子又はパーフルオロアルキル基がより好ましく、フッ素原子又はトリフルオロメチル基がさらに好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
【0105】
np1としては、0~5が好ましく、0~3がより好ましく、0~2がさらに好ましく、0又は1が特に好ましい。
【0106】
np2としては、0~5が好ましく、0~2がより好ましく、0又は1がさらに好ましく、0が特に好ましい。
【0107】
np3の下限としては、1が好ましく、2がより好ましい。np3を1以上とすることで、化合物(4-1)から生じる酸の強さを高めることができ、その結果、プロセスウィンドウをより広げることができる。np3の上限としては、8が好ましく、6がより好ましく、4がさらに好ましい。
【0108】
np1+np2+np3の下限としては、2が好ましく、4がより好ましい。np1+np2+np3の上限としては、20が好ましく、10がより好ましい。
【0109】
T+で表される1価の感放射線性オニウムカチオンとしては、例えば下記式(T-1)で表されるカチオン(以下、「カチオン(T-1)」ともいう)、下記式(T-2)で表されるカチオン(以下、「カチオン(T-2)」ともいう)、下記式(T-3)で表されるカチオン(以下、「カチオン(T-3)」ともいう)等が挙げられる。
【0110】
【0111】
上記式(T-1)中、Ra1及びRa2は、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の有機基である。k1は、0~5の整数である。k1が1の場合、Ra3は、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子である。k1が2~5の場合、複数のRa3は、互いに同一若しくは異なり、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基若しくはハロゲン原子であるか、又は複数のRa3が互いに合わせられこれらが結合する炭素鎖と共に構成される環員数4~20の環構造の一部である。t1は、0~3の整数である。
【0112】
Ra1、Ra2及びRa3で表される炭素数1~20の1価の有機基としては、例えば上記式(P)のRRとして例示した炭素数1~20の1価の有機基と同様の基等が挙げられる。
【0113】
Ra1及びRa2としては、炭素数1~20の1価の非置換の炭化水素基又は水素原子が置換基により置換された炭化水素基が好ましく、炭素数6~18の1価の非置換の芳香族炭化水素基又は水素原子が置換基により置換された芳香族炭化水素基がより好ましく、置換又は非置換のフェニル基がさらに好ましく、非置換のフェニル基が特に好ましい。
【0114】
Ra1及びRa2として表される炭素数1~20の1価の炭化水素基が有する水素原子を置換していてもよい置換基としては、置換又は非置換の炭素数1~20の1価の炭化水素基、-OSO2-Rk、-SO2-Rk、-ORk、-COORk、-O-CO-Rk、-O-Rkk-COORk、-Rkk-CO-Rk又は-S-Rkが好ましい。Rkは、炭素数1~10の1価の炭化水素基である。Rkkは、単結合又は炭素数1~10の2価の炭化水素基である。
【0115】
Ra3としては、置換若しくは非置換の炭素数1~20の1価の炭化水素基、-OSO2-Rk、-SO2-Rk、-ORk、-COORk、-O-CO-Rk、-O-Rkk-COORk、-Rkk-CO-Rk又は-S-Rkが好ましい。Rkは、炭素数1~10の1価の炭化水素基である。Rkkは、単結合又は炭素数1~10の2価の炭化水素基である。
【0116】
上記式(T-2)中、k2は、0~7の整数である。k2が1の場合、Ra4は、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子である。k2が2~7の場合、複数のRa4は、互いに同一若しくは異なり、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基若しくはハロゲン原子であるか、又は複数のRa4が互いに合わせられこれらが結合する炭素鎖と共に構成される環員数4~20の環構造の一部である。k3は、0~6の整数である。k3が1の場合、Ra5は、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子である。k3が2~6の場合、複数のRa5は、互いに同一若しくは異なり、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基若しくはハロゲン原子であるか、又は複数のRa5が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子若しくは炭素鎖と共に構成される環員数3~20の環構造の一部である。rは、0~3の整数である。Ra6は、単結合又は炭素数1~20の2価の有機基である。t2は、0~2の整数である。
【0117】
Ra4及びRa5としては、置換若しくは非置換の炭素数1~20の1価の炭化水素基、-ORk、-COORk、-O-CO-Rk、-O-Rkk-COORk又は-Rkk-CO-Rkが好ましい。Rkは、炭素数1~10の1価の炭化水素基である。Rkkは、単結合又は炭素数1~10の2価の炭化水素基である。
【0118】
上記式(T-3)中、k4は、0~5の整数である。k4が1の場合、Ra7は、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子である。k4が2~5の場合、複数のRa7は、互いに同一若しくは異なり、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基若しくはハロゲン原子であるか、又は複数のRa7が互いに合わせられこれらが結合する炭素鎖と共に構成される環員数4~20の環構造の一部である。k5は、0~5の整数である。k5が1の場合、Ra8は、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子である。k5が2~5の場合、複数のRa8は、互いに同一若しくは異なり、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基若しくはハロゲン原子であるか、又は複数のRa8が互いに合わせられこれらが結合する炭素鎖と共に構成される環員数4~20の環構造の一部である。
【0119】
Ra7及びRa8としては、置換若しくは非置換の炭素数1~20の1価の炭化水素基、-OSO2-Rk、-SO2-Rk、-ORk、-COORk、-O-CO-Rk、-O-Rkk-COORk、-Rkk-CO-Rk、-S-Rk又はこれらの基のうちの2つ以上が互いに合わせられ構成される環構造が好ましい。Rkは、炭素数1~10の1価の炭化水素基である。Rkkは、単結合又は炭素数1~10の2価の炭化水素基である。
【0120】
Ra3、Ra4、Ra5、Ra7及びRa8で表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば
メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基等の直鎖状のアルキル基、i-プロピル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基等の分岐状のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0121】
Ra6で表される2価の有機基としては、例えば上記式(P)のRRとして例示した炭素数1~20の1価の有機基から1個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0122】
上記Ra3、Ra4、Ra5、Ra7及びRa8で表される炭化水素基が有する水素原子を置換していてもよい置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基、アシロキシ基等が挙げられる。これらの中で、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0123】
Ra3、Ra4、Ra5、Ra7及びRa8としては、非置換の直鎖状又は分岐状の1価のアルキル基、1価のフッ素化アルキル基、非置換の1価の芳香族炭化水素基、-OSO2-Rk、-SO2-Rk又は-ORkが好ましく、フッ素化アルキル基、非置換の1価の芳香族炭化水素基又はアルコキシ基がより好ましく、フッ素化アルキル基又はアルコキシ基がさらに好ましい。
【0124】
式(T-1)におけるk1としては、0~2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。t1としては、0又は1が好ましく、0がより好ましい。式(T-2)におけるk2としては、0~2が好ましく、0又は1がより好ましく、1がさらに好ましい。k3としては、0~2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。rとしては、2又は3が好ましく、2がより好ましい。t2としては、0又は1が好ましく、1がより好ましい。式(T-3)におけるk4及びk5としては、0~2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0125】
T+としては、カチオン(T-1)又はカチオン(T-2)が好ましく、カチオン(Z-1)がより好ましく、トリフェニルスルホニウムカチオンがさらに好ましい。
【0126】
[B]酸発生剤としては、スルホン酸を発生する酸発生剤として、例えば下記式(4-1-1)~(4-1-19)で表される化合物(以下、「化合物(4-1-1)~(4-1-19)」ともいう)、イミド酸を発生する酸発生剤として、例えば下記式(4-2-1)~(4-2-3)で表される化合物(以下、「化合物(4-2-1)~(4-2-3)」ともいう)等が挙げられる。
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
上記式(4-1-1)~(4-1-19)及び(4-2-1)~(4-2-3)中、T+は、1価の感放射線性オニウムカチオンである。
【0131】
[B]酸発生剤としては、化合物(4-1)が好ましく、化合物(4-1-1)、(4-1-3)、(4-1-4)、(4-1-16)、(4-1-17)又は(4-1-19)が好ましい。
【0132】
[B]酸発生体が[B]酸発生剤の場合、[B]酸発生剤の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部が好ましく、1質量部がより好ましく、5質量部がさらに好ましく、10質量部が特に好ましい。上記含有量の上限としては、50質量部が好ましく、40質量部がより好ましく、30質量部がさらに好ましく、25質量部が特に好ましい。[B]酸発生剤の含有量を上記範囲とすることで、感度及びプロセスウィンドウをより向上させることができる。[B]酸発生体は、1種又は2種以上を含有することができる。
【0133】
<[C]化合物>
[C]化合物は、下記式(1)で表される化合物である。[C]化合物は、当該感放射線性樹脂組成物において、酸拡散制御剤として作用するものである。
【0134】
【0135】
上記式(1)中、R1は、水素原子又は炭素数1~30の1価の有機基である。Xn+は、n価の感放射線性オニウムカチオンである。nは、1~3の整数である。
【0136】
R1で表される炭素数1~30の1価の有機基としては、例えば上記式(P)のRRの炭素数1~20の1価の有機基として例示した基と同様の基等が挙げられる。
【0137】
R1の有機基の具体例としては、例えば
t-ブチル基、1-メチルシクロペンタン-1-イル基、1-エチルシクロペンタン-1-イル基、1-フェニルシクロヘキサン-1-イル基、2-エチルアダマンタン-2-イル基、アダマンタン-1-イル基等の第3級炭素原子を結合部位とする鎖状又は脂環式炭化水素基(より詳細には、第3級炭素原子がカルボニルオキシ基のオキシ酸素原子に結合する鎖状又は脂環式炭化水素基);
シクロヘキシル基、ノルボルニル基、i-プロピル基等の第2級炭素原子を結合部位とする鎖状又は脂環式炭化水素基(より詳細には、第2級炭素原子がカルボニルオキシ基のオキシ酸素原子に結合する鎖状又は脂環式炭化水素基);
エチル基、ペンチル基等の第1級炭素原子を結合部位とする鎖状炭化水素基(より詳細には、第1級炭素原子がカルボニルオキシ基のオキシ酸素原子に結合する鎖状炭化水素基);
フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等の芳香族炭化水素基;
1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2-イル基、2,2,2-トリフルオロエタン-1-イル基、パーフルオロシクロヘキサン-1-イル基、2,4,6-トリフルオロフェニル基等のフッ素化炭化水素基などが挙げられる。
【0138】
R1の有機基は環構造を有することが好ましい。R1が環構造を有すると、[C]化合物のレジスト膜中での拡散がより適度に抑制され、その結果、プロセスウィンドウをより広げることができる。環構造を有する有機基としては、例えば置換又は非置換の脂環式炭化水素基、置換又は非置換の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0139】
また、R1の有機基としては、酸解離性基が好ましい。R1が酸解離性基であると、露光により[B]酸発生体等から発生する酸の作用によりR1が解離してカルボキシ基が生じ、現像液に対する溶解性が向上し、その結果、プロセスウィンドウをより広げることができる。酸解離性基である有機基としては、例えば上述の第3級炭素原子を結合部位とする鎖状又は脂環式炭化水素基として例示した基(但し、アダマンタン-1-イル基を除く)、シクロヘキセン-3-イル基等のシクロアルケン-3-イル基などが挙げられる。
【0140】
Xn+で表されるn価の感放射線性オニウムカチオンとしては、スルホニウムカチオン、テトラヒドロチオフェニウムカチオン、ヨードニウムカチオン等が挙げられる。これらの中で、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンが好ましい。
【0141】
nが1の場合のスルホニウムカチオンとしては、例えば[B]酸発生体におけるカチオン(T-1)等が挙げられる。nが1の場合のヨードニウムカチオンとしては、例えば[B]酸発生体におけるカチオン(T-3)等が挙げられる。
【0142】
Xn+としては、1価のスルホニウムカチオンが好ましく、カチオン(T-1)がより好ましく、トリフェニルスルホニウムカチオンがさらに好ましい。
【0143】
nとしては、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0144】
[C]化合物としては、例えば下記式(1-1)~(1-9)で表される化合物(以下、「化合物(1-1)~(1-9)」ともいう)等が挙げられる。
【0145】
【0146】
上記式(1-1)~(1-9)中、(Xn+)1/nは、上記式(1)と同義である。
【0147】
[C]化合物の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部が好ましく、0.5質量部がより好ましく、1質量部がさらに好ましく、2質量部が特に好ましい。上記含有量の上限としては、20質量部が好ましく、15質量部がより好ましく、10質量部がさらに好ましく、7質量部が特に好ましい。
【0148】
[C]化合物の含有量の下限としては、[B]酸発生剤100モル%に対して、1モル%が好ましく、5モル%がより好ましく、10モル%がさらに好ましく、15モル%が特に好ましい。上記含有量の上限としては、100モル%が好ましく、50モル%がより好ましく、30モル%がさらに好ましく、25モル%が特に好ましい。
【0149】
[C]化合物の含有量を上記範囲とすることで、感度及びプロセスウィンドウをより向上させることができる。
【0150】
<[C]化合物の合成方法>
[C]化合物は、例えばR1-OHで表されるアルコールと、テトラフルオロコハク酸無水物とを、トリエチルアミン等の塩基存在下、ジクロロメタン等の溶媒中で反応させた後、反応生成物にトリフェニルスルホニウムクロライド等の塩を加えて、イオン交換することにより合成することができる。
【0151】
<[D]溶媒>
[D]溶媒は、少なくとも[A]重合体、[B]酸発生体、[C]化合物及び所望により含有される任意成分を溶解又は分散可能な溶媒であれば特に限定されない。
【0152】
[D]溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0153】
アルコール系溶媒としては、例えば
4-メチル-2-ペンタノール、n-ヘキサノール等の炭素数1~18の脂肪族モノアルコール系溶媒;
シクロヘキサノール等の炭素数3~18の脂環式モノアルコール系溶媒;
1,2-プロピレングリコール等の炭素数2~18の多価アルコール系溶媒;
プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル等の炭素数3~19の多価アルコール部分エーテル系溶媒などが挙げられる。
【0154】
エーテル系溶媒としては、例えば
ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル等のジアルキルエーテル系溶媒;
テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル系溶媒;
ジフェニルエーテル、アニソール等の芳香環含有エーテル系溶媒などが挙げられる。
【0155】
ケトン系溶媒としては、例えば
アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-iso-ブチルケトン、2-ヘプタノン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-iso-ブチルケトン、トリメチルノナノン等の鎖状ケトン系溶媒:
シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒:
2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等が挙げられる。
【0156】
アミド系溶媒としては、例えば
N,N’-ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等の環状アミド系溶媒;
N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド等の鎖状アミド系溶媒などが挙げられる。
【0157】
エステル系溶媒としては、例えば
酢酸n-ブチル、乳酸エチル等のモノカルボン酸エステル系溶媒;
酢酸プロピレングリコール等の多価アルコールカルボキシレート系溶媒;
酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒;
シュウ酸ジエチル等の多価カルボン酸ジエステル系溶媒;
ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート系溶媒などが挙げられる。
【0158】
炭化水素系溶媒としては、例えば
n-ペンタン、n-ヘキサン等の炭素数5~12の脂肪族炭化水素系溶媒;
トルエン、キシレン等の炭素数6~16の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0159】
これらの中で、アルコール系溶媒及び/又はエステル系溶媒が好ましく、多価アルコール部分エーテル系溶媒及び/又は多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒がより好ましく、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル及び/又は酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテルがさらに好ましい。[D]溶媒は、1種又は2種以上を含有することができる。
【0160】
<その他の任意成分>
その他の任意成分としては、例えば酸拡散制御体(但し、[C]化合物に該当するものを除く)、界面活性剤等が挙げられる。これらのその他の任意成分はそれぞれ1種又は2種以上を併用してもよい。
【0161】
[酸拡散制御体]
酸拡散制御体は、露光により[B]酸発生剤等から生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を制御し、非露光領域における好ましくない化学反応を抑制する効果を奏する。当該感放射線性樹脂組成物における酸拡散制御体の含有形態としては、遊離の化合物(以下、適宜「酸拡散制御剤」と称する)の形態でも、[A]重合体等の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0162】
酸拡散制御剤としては、例えば窒素含有化合物、光崩壊性塩基(但し、[C]化合物に該当するものを除く)等が挙げられる。光崩壊性塩基は、露光により分解して塩基性が低下する化合物である。
【0163】
窒素含有化合物としては、例えばモノアルキルアミン等の1個の窒素原子を有する化合物、エチレンジアミン等の2個の窒素原子を有する化合物、ポリエチレンイミン等の3個以上の窒素原子を有する化合物、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド基含有化合物、1,1,3,3-テトラメチルウレア等のウレア化合物、N-(ウンデシルカルボニルオキシエチル)モルホリン、N-t-ブトキシカルボニル-4-ヒドロキシピペリジン等の含窒素複素環化合物などが挙げられる。
【0164】
光崩壊性塩基としては、例えばトリフェニルスルホニウムサリチレート、トリフェニルスルホニウム10-カンファースルホネート、トリフェニルスルホニウムアダマンタン-1-イルオキサレート、トリフェニルスルホニウム2,3,4,5-テトラフルオロ-6-ヒドロキシベンゾエート、トリフェニルスルホニウム5,6-ジ(シクロヘキシルオキシカルボニル)ノルボルナン-2-スルホネート、トリフェニルスルホニウム1,2-ジ(ノルボルナン-2,6-ラクトン-5-イルオキシカルボニル)エタン-1-スルホネート、トリフェニルスルホニウム3-(アダマンタン-1-イル)-3-ヒドロキシ-2,2-ジフルオロプロピオネート、トリフェニルスルホニウム4-シクロヘキシルオキシカルボニル-2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロブチレート等が挙げられる。
【0165】
当該感放射線性樹脂組成物が酸拡散制御剤を含有する場合、酸拡散制御剤の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部が好ましく、1質量部がより好ましく、2質量部がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、20質量部が好ましく、10質量部がより好ましく、7質量部がさらに好ましい。
【0166】
当該感放射線性樹脂組成物が酸拡散制御剤を含有する場合、酸拡散制御剤の含有量の下限としては、[B]酸発生剤100モル%に対して、1モル%が好ましく、5モル%がより好ましく、10モル%がさらに好ましく、15モル%が特に好ましい。上記含有量の上限としては、100モル%が好ましく、50モル%がより好ましく、30モル%がさらに好ましく、25モル%が特に好ましい。当該感放射線性樹脂組成物は酸拡散制御体を1種又は2種以上含有していてもよい。
【0167】
[界面活性剤]
界面活性剤は、塗工性、ストリエーション、現像性等を改良する効果を奏する。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル等のノニオン系界面活性剤等が挙げられる。当該感放射線性樹脂組成物が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量の上限としては、[A]重合体100質量部に対して、2質量部が好ましい。
【0168】
<感放射線性樹脂組成物の調製方法>
当該感放射線性樹脂組成物は、例えば[A]重合体、[B]酸発生体、[C]化合物、[D]溶媒及び必要に応じてその他の任意成分を所定の割合で混合し、好ましくは得られた混合物を、例えば孔径0.2μm程度のフィルター等でろ過することにより調製することができる。
【0169】
<レジストパターン形成方法>
当該レジストパターン形成方法は、基板に直接又は間接に感放射線性樹脂組成物を塗工する工程(以下、「塗工工程」ともいう)と、上記塗工工程により形成されたレジスト膜を露光する工程(以下、「露光工程」ともいう)と、上記露光されたレジスト膜を現像する工程(以下、「現像工程」ともいう)とを備える。当該レジストパターン形成方法においては、上記感放射線性樹脂組成物として上述の当該感放射線性樹脂組成物を用いる。
【0170】
上記レジストパターン形成方法によれば、当該感放射線性樹脂組成物を用いているので、高い感度及び広いプロセスウィンドウでレジストパターンを形成することができる。
以下、各工程について説明する。
【0171】
[塗工工程]
本工程では、基板に直接又は間接に当該感放射線性樹脂組成物を塗工する。これにより、レジスト膜が形成される。このレジスト膜を形成する基板としては、例えばシリコンウェハ、二酸化シリコン、アルミニウムで被覆されたウェハ等の従来公知のもの等が挙げられる。また、基板に間接に当該感放射線性樹脂組成物を塗工する場合としては、例えば基板上に形成された反射防止膜等の下層膜上に当該感放射線性樹脂組成物を塗工することなどが挙げられる。このような反射防止膜としては、例えば特公平6-12452号公報や特開昭59-93448号公報等に開示されている有機系又は無機系の反射防止膜などが挙げられる。塗工方法としては、例えば回転塗工(スピンコーティング)、流延塗工、ロール塗工等が挙げられる。塗工した後に、必要に応じて、塗膜中の溶媒を揮発させるため、プレベーク(PB)を行ってもよい。PB温度の下限としては、60℃が好ましく、80℃がより好ましい。PB温度の上限としては、160℃が好ましく、140℃がより好ましい。PB時間の下限としては、5秒が好ましく、10秒がより好ましい。PB時間の上限としては、600秒が好ましく、300秒がより好ましい。形成されるレジスト膜の平均厚みの下限としては、10nmが好ましく、20nmがより好ましい。上記平均厚みの上限としては、1,000nmが好ましく、500nmがより好ましい。なお、レジスト膜の平均厚みは、分光エリプソメータ(J.A.WOOLLAM社の「M2000D」)を用いて測定した値である。
【0172】
[露光工程]
本工程では、上記塗工工程により形成されたレジスト膜を露光する。この露光は、フォトマスクを介して(場合によっては、水等の液浸媒体を介して)露光光を照射することにより行う。露光光としては、目的とするパターンの線幅に応じて、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、極端紫外線(EUV)、X線、γ線等の電磁波;電子線、α線等の荷電粒子線などが挙げられる。これらの中でも、遠紫外線、EUV又は電子線が好ましく、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)、EUV又は電子線がより好ましく、EUV又は電子線がさらに好ましい。
【0173】
上記露光の後、ポストエクスポージャーベーク(PEB)を行い、レジスト膜の露光された部分において、露光により[B]酸発生体等から発生した酸による[A]重合体等が有する酸解離性基の解離を促進させることが好ましい。このPEBによって、露光部と未露光部とで現像液に対する溶解性の差を増大させることができる。PEB温度の下限としては、50℃が好ましく、80℃がより好ましい。PEB温度の上限としては、180℃が好ましく、140℃がより好ましい。PEB時間の下限としては、5秒が好ましく、10秒がより好ましい。PEB時間の上限としては、600秒が好ましく、300秒がより好ましい。
【0174】
[現像工程]
本工程では、上記露光されたレジスト膜を現像する。これにより、所定のレジストパターンを形成することができる。現像後は、水又はアルコール等のリンス液で洗浄し、乾燥することが一般的である。現像工程における現像方法は、アルカリ現像であっても、有機溶媒現像であってもよい。これらの中で、アルカリ現像が好ましい。
【0175】
アルカリ現像の場合、現像に用いる現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]-5-ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液等が挙げられる。これらの中でも、TMAH水溶液が好ましく、2.38質量%TMAH水溶液がより好ましい。
【0176】
有機溶媒現像の場合、現像液としては、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒等の有機溶媒、上記有機溶媒を含有する溶媒等が挙げられる。上記有機溶媒としては、例えば上述の感放射線性樹脂組成物の[D]溶媒として列挙した溶媒の1種又は2種以上等が挙げられる。これらの中で、エステル系溶媒又はケトン系溶媒が好ましい。エステル系溶媒としては、酢酸エステル系溶媒が好ましく、酢酸n-ブチルがより好ましい。ケトン系溶媒としては、鎖状ケトンが好ましく、2-ヘプタノンがより好ましい。現像液中の有機溶媒の含有量の下限としては、80質量%が好ましく、90質量%がより好ましく、95質量%がさらに好ましく、99質量%が特に好ましい。現像液中の有機溶媒以外の成分としては、例えば水、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0177】
現像方法としては、例えば現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0178】
<化合物>
当該化合物は、下記式(1)で表される化合物である。当該化合物は、感放射線性樹脂組成物における酸拡散制御剤として好適に用いることができる。
【0179】
【0180】
上記式(1)中、R1は、水素原子又は炭素数1~30の1価の有機基である。Xn+は、n価のカチオンである。nは、1~3の整数である。
【0181】
Xn+で表されるn価のカチオンとしては、例えば
1価のカチオンとして、1価のオニウムカチオン、アルカリ金属カチオン等が、
2価のカチオンとして、2価のオニウムカチオン、アルカリ土類金属カチオン等が、
3価のカチオンとして、3価のオニウムカチオン、3価の金属カチオン等が挙げられる。
【0182】
オニウムカチオンは、感放射線性であっても、感放射線性でなくてもよい。感放射線性オニウムカチオンとしては、上記[B]酸発生剤における式(4)のT+の1価の感放射線性オニウムカチオンとして例示したスルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、テトラヒドロチオフェニウムカチオン等が挙げられる。2価及び3価のカチオンには、2+又は3+の電荷を有するカチオン部位を含むカチオン、及び1+の電荷を有するカチオン部位を2個又は3個含むカチオンの両方が含まれる。
【0183】
上記式(1)におけるXn+のカチオンとしては、オニウムカチオンが好ましい。このオニウムカチオンは、感放射線性であることが好ましい。
【実施例1】
【0184】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例における物性値は下記のようにして測定した。
【0185】
[重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分散度(Mw/Mn)]
東ソー(株)のGPCカラム(G2000HXL:2本、G3000HXL:1本、G4000HXL:1本)を用い、流量:1.0mL/分、溶出溶媒:テトラヒドロフラン、試料濃度:1.0質量%、試料注入量:100μL、カラム温度:40℃、検出器:示差屈折計の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。また、分散度(Mw/Mn)は、Mw及びMnの測定結果より算出した。
【0186】
[重合体の各構造単位の含有割合]
重合体の各構造単位の含有割合は、核磁気共鳴装置(日本電子(株)の「JNM-Delta400」)を用いた13C-NMR分析により行った。
【0187】
<[A]重合体の合成>
[A]重合体の合成に用いた単量体を以下に示す。なお、以下の合成例においては特に断りのない限り、質量部は使用した単量体の合計質量を100質量部とした場合の値を意味し、モル%は使用した単量体の合計モル数を100モル%とした場合の値を意味する。
【0188】
【0189】
[合成例1](重合体(A-1)の合成)
上記単量体(M-3)及び単量体(M-1)をモル比率が60/40となるようプロピレングリコール-1-モノメチルエーテル(200質量部)に溶解した。次に、ラジカル重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(6モル%)を添加し、単量体溶液を調製した。一方、空の反応容器にプロピレングリコール-1-モノメチルエーテル(100質量部)を加え、撹拌しながら85℃に加熱した。次いで、上記調製した単量体溶液を3時間かけて滴下し、その後、さらに3時間85℃で加熱し、重合反応を合計6時間実施した。重合反応終了後、重合反応液を室温に冷却した。
ヘキサン(重合反応液100質量部に対して500質量部)中に冷却した重合反応液を投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末をヘキサン(重合反応液100質量部に対して100質量部)で2回洗浄した後、ろ別し、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル(300質量部)に溶解した。次に、メタノール(500質量部)、トリエチルアミン(50質量部)及び超純水(10質量部)を加え、撹拌しながら70℃で6時間加水分解反応を実施した。
反応終了後、残溶媒を留去し、得られた固体をアセトン(100質量部)に溶解させた。得られた溶液を水(500質量部)中に滴下して重合体を凝固させ、得られた固体をろ別した。50℃で12時間乾燥させて、白色粉末状の重合体(A-1)を合成した。重合体(A-1)のMwは5,700、Mw/Mnは1.61であった。また、13C-NMR分析の結果、(M-3)及び(M-1)に由来する各構造単位の含有割合は、それぞれ59.1モル%及び40.9モル%であった。
【0190】
[合成例2~9]
下記表1に示す種類及び使用割合の各単量体を用いた以外は、合成例1と同様にして、重合体(A-2)~(A-9)を合成した。表1中の「-」は該当する単量体を用いなかったことを示す。
【0191】
【0192】
<[C]化合物の合成>
[実施例1](化合物(Z-1)の合成)
下記反応スキームに従って、化合物(Z-1)を合成した。
【0193】
【0194】
反応容器に上記式(ppz-1)で表される化合物(シクロヘキサノール)29mmol、トリエチルアミン(NEt3)29mmol及びジクロロメタン100gを加えた。0℃で撹拌後、テトラフルオロこはく酸無水物14.5mmolを滴下した。室温で12時間撹拌後、生成した上記式(pz-1)で表される化合物(トリエチルアンモニウム 2-(シクロヘキシルカルボニル)-1,1,2,2-テトラフルオロ-プロピオネート)に、水100g及びトリフェニルスルホニウムクロライド(TPS-Cl)16mmolを加えた。室温で2時間撹拌後、有機層を分離した。得られた有機層を水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去し、再結晶することで化合物(Z-1)を得た。
【0195】
[実施例2~9](化合物(Z-2)~(Z-9)の合成)
前駆体を適宜選択し、実施例1と同様の処方を選択することで、下記式(Z-2)~(Z-9)で表される化合物を合成した。
【0196】
【0197】
<感放射線性樹脂組成物の調製>
当該感放射線性樹脂組成物の調製に用いた[B]酸発生剤、[D]溶媒及び比較例の感放射線性樹脂組成物の調製に用いた[E]酸拡散制御剤について以下に示す。
【0198】
[[B]酸発生剤]
B-1~B-6:下記式(B-1)~(B-6)で表される化合物
【0199】
【0200】
[[D]溶媒]
D-1:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
D-2:プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル
【0201】
[[E]酸拡散制御剤]
E-1~E-3:下記式(E-1)~(E-3)で表される化合物
【0202】
【0203】
[実施例10]
[A]重合体としての(A-1)100質量部、[B]酸発生剤としての(B-1)20質量部、[C]化合物としての(Z-1)を(B-1)100モル%に対して20モル%、並びに[D]溶媒としての(D-1)4,800質量部及び(D-2)2,000質量部を混合し、得られた混合液を孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過して感放射線性樹脂組成物(R-1)を調製した。
【0204】
[実施例11~31及び比較例1~3]
下記表2に示す種類及び含有量の各成分を用いた以外は、実施例10と同様に操作して、感放射線性樹脂組成物(R-2)~(R-22)及び(CR-1)~(CR-3)を調製した。
【0205】
【0206】
<レジストパターンの形成>
平均厚み20nmの下層膜(Brewer Science社の「AL412」)が形成された12インチのシリコンウェハ表面に、スピンコーター(東京エレクトロン(株)の「CLEAN TRACK ACT12」)を使用して、上記調製した感放射線性樹脂組成物を塗工し、130℃で60秒間PBを行った後、23℃で30秒間冷却し、平均厚み50nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜に、EUV露光機(ASML社の「NXE3300」、NA=0.33、照明条件:Conventional s=0.89、マスクimecDEFECT32FFR02)を用いてEUV光を照射した。照射後、上記レジスト膜に130℃で60秒間PEBを行った。次いで、2.38質量%TMAH水溶液を用い、23℃で30秒間現像し、ポジ型の32nmラインアンドスペースパターンを形成した。
【0207】
<評価>
上記形成した各レジストパターンについて、下記方法に従い、各感放射線性樹脂組成物の感度及びプロセスウィンドウを評価した。なお、レジストパターンの測長には、走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズの「CG-4100」)を用いた。評価結果を下記表3に示す。
【0208】
[感度]
上記レジストパターンの形成において、32nmラインアンドスペースパターンを形成する露光量を最適露光量とし、この最適露光量を感度(mJ/cm2)とした。感度は、30mJ/cm2以下の場合は「良好」と、30mJ/cm2を超える場合は「不良」と評価できる。
【0209】
[プロセスウィンドウ]
32nmラインアンドスペース(1L/1S)を形成するマスクを用いて、低露光量から高露光量までのパターンを形成した。一般的に、低露光量側ではパターン間の繋がり等の欠陥が、高露光量側ではパターン倒れ等の欠陥が見られる。これらの欠陥が見られないレジスト寸法の上限値と下限値の差を「CD(Critical Dimension)マージン」とし、プロセスウィンドウの指標とした。CDマージン(nm)の値が大きいほど、プロセスウィンドウが広いと考えられる。CDマージンは、30nm以上の場合は「良好」と、30nm未満の場合は「不良」と評価できる。
【0210】
【0211】
表3の結果から明らかなように、実施例の感放射線性樹脂組成物ではいずれも、感度及びCDマージンが比較例の感放射線性樹脂組成物対比で良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0212】
本発明の感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法によれば、優れた感度及び広いプロセスウィンドウでレジストパターンを形成することができる。本発明の化合物は、当該感放射線性樹脂組成物の成分として好適に用いることができる。従って、これらは、今後ますます微細化が進行すると予想される半導体デバイスの加工プロセス等に好適に用いることができる。