(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】患者状態予測装置、患者状態予測方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/00 20180101AFI20231212BHJP
【FI】
G16H50/00
(21)【出願番号】P 2021553994
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(86)【国際出願番号】 JP2019042830
(87)【国際公開番号】W WO2021084695
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【氏名又は名称】中村 聡延
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】林谷 昌洋
(72)【発明者】
【氏名】湯本 英二
(72)【発明者】
【氏名】細井 利憲
(72)【発明者】
【氏名】久保 雅洋
【審査官】鹿谷 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-512624(JP,A)
【文献】特開2006-155411(JP,A)
【文献】特開2018-180993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の状態である患者状態の変化に影響し得るデータである患者データを取得する取得手段と、
モデルごとに定められた過去の第1期間における前記患者状態を用いて将来の前記患者状態の変化を予測する複数の予測モデルの中から、前記患者データに基づいて一の予測モデルを選択する選択手段と、
前記一の予測モデルを用いて、将来の前記患者状態の変化を予測する予測手段と
を備えることを特徴とする患者状態予測装置。
【請求項2】
前記予測手段は、予測した将来の前記患者状態の変化に基づいて、前記患者が合併症を発症する可能性を示す合併症リスクを予測することを特徴とする請求項1に記載の患者状態予測装置。
【請求項3】
前記予測手段は、予測した前記合併症リスクに基づいて、前記患者に対する対処に関する情報を出力することを特徴とする請求項2に記載の患者状態予測装置。
【請求項4】
前記選択手段は、前記患者の入院期間が長くなるほど、前記第1期間の長いモデルを選択することを特徴とする請求項
1に記載の患者状態予測装置。
【請求項5】
前記選択手段は、前記患者の年齢が低くなるほど、前記第1期間の長いモデルを選択することを特徴とする請求項
1又は4に記載の患者状態予測装置。
【請求項6】
前記複数の予測モデルの各々は、前記予測モデルごとに定められた将来の第2期間における前記患者状態の変化を予測するモデルであることを特徴とする請求項1から
5のいずれか一項に記載の患者状態予測装置。
【請求項7】
前記選択手段は、前記患者の状態を把握すべき期間が長いほど、前記第2期間の長いモデルを選択することを特徴とする請求項
6に記載の患者状態予測装置。
【請求項8】
前記患者データは、前記患者が行える動作の程度によって定まる指標を含むことを特徴とする請求項1から
7のいずれか一項に記載の患者状態予測装置。
【請求項9】
前記患者データは、前記患者の入院期間に関する情報を含むことを特徴とする請求項1から
8のいずれか一項に記載の患者状態予測装置。
【請求項10】
前記患者データは、前記患者のバイタルサインに関する情報を含むことを特徴とする請求項1から
9のいずれか一項に記載の患者状態予測装置。
【請求項11】
少なくとも1つのコンピュータによって、
患者の状態である患者状態の変化に影響し得るデータである患者データを取得し、
モデルごとに定められた過去の第1期間における前記患者状態を用いて将来の前記患者状態の変化を予測する複数の予測モデルの中から、前記患者データに基づいて一の予測モデルを選択し、
前記一の予測モデルを用いて、将来の前記患者状態の変化を予測する
ことを特徴とする患者状態予測方法。
【請求項12】
患者の状態である患者状態の変化に影響し得るデータである患者データを取得し、
モデルごとに定められた過去の第1期間における前記患者状態を用いて将来の前記患者状態の変化を予測する複数の予測モデルの中から、前記患者データに基づいて一の予測モデルを選択し、
前記一の予測モデルを用いて、将来の前記患者状態の変化を予測する
ようにコンピュータを動作させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の状態を予測する患者状態予測装置、患者状態予測方法、及びコンピュータプログラムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、患者(例えば、病院に入院している患者等)の状態に関する予測を行うものが知られている。例えば特許文献1では、複数のクラスタに分類された患者の状態から、所定の事象の発生を予測する予測モデルを生成する技術が開示されている。
【0003】
また、予測モデルを利用する技術として、複数の予測モデルを利用するものが知られている。例えば特許文献2では、複数の予測モデルのうち、評価がより高い予測モデルを優先して選択する技術が開示されている。
【0004】
その他の関連する技術として、特許文献3では、患者の疾病が基準期間以内に発症することを予測して通知する技術が開示されている。特許文献4では、選択されたモデルから病に関する情報を導出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-180993号公報
【文献】国際公開2016/148107号パンフレット
【文献】特開2019-016235号公報
【文献】特開2018-200567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
患者の状態を予測モデルで予測する場合、その患者に適した予測モデルを使用することが好ましい。言い換えれば、患者に適さない予測モデルを使用してしまうと、患者の状態を正確に予測できないおそれがある。
【0007】
しかしながら、患者の特性は一人ひとり異なるため、すべての患者に適した予測モデルを予め用意することは難しい。また、複数種類の予測モデルを用意したとしても、その中から患者に適した予測モデルを選択することも決して容易ではない。即ち、上述した各特許文献には、患者の状態を正確に予測するという点において改善の余地がある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、適切な予測モデルを用いて患者の状態の変化を予測することが可能な患者状態予測装置、患者状態予測方法及びコンピュータプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の患者状態予測装置の一の態様は、患者に関する情報である患者データを取得する取得手段と、前記患者の状態である患者状態の変化を予測する複数の予測モデルの中から、前記患者データに基づいて一の予測モデルを選択する選択手段と、前記一の予測モデルを用いて、将来の前記患者状態の変化を予測する予測手段とを備える。
【0010】
本発明の患者状態予測方法の一の態様は、患者に関する情報である患者データを取得し、前記患者の状態である患者状態の変化を予測する複数の予測モデルの中から、前記患者データに基づいて一の予測モデルを選択し、前記一の予測モデルを用いて、将来の前記患者状態の変化を予測する。
【0011】
本発明のコンピュータプログラムの一の態様は、患者に関する情報である患者データを取得し、前記患者の状態である患者状態の変化を予測する複数の予測モデルの中から、前記患者データに基づいて一の予測モデルを選択し、前記一の予測モデルを用いて、将来の前記患者状態の変化を予測するようにコンピュータを動作させる。
【発明の効果】
【0012】
上述した患者状態予測装置、患者状態予測方法、及びコンピュータプログラムのそれぞれの一の態様によれば、適切な予測モデルを用いて、患者の状態の変化を正確に予測することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る患者状態予測装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態に係る患者状態予測装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係る患者状態予測装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【
図4】患者データに基づく予測モデルの選択方法の一例を示す図である。
【
図5】予測モデルを用いた患者状態の予測方法の一例を示すチャートである。
【
図6】第2実施形態に係る患者状態予測装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【
図7】予測された患者状態から合併症リスクを判定する方法の一例を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、患者状態予測装置、患者状態予測方法、及びコンピュータプログラムの実施形態について説明する。
【0015】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る患者状態予測装置について、
図1から
図5を参照して説明する。
【0016】
(装置構成)
まず、
図1及び
図2を参照しながら、第1実施形態に係る患者状態予測装置の構成について説明する。
図1は、第1実施形態に係る患者状態予測装置の全体構成を示すブロック図である。
図2は、第1実施形態に係る患者状態予測装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0017】
図1において、第1実施形態に係る患者状態予測装置1は、患者の状態(即ち、「患者状態」)の変化を予測する装置である。なお、ここでの「患者状態」とは、患者の症状の良し悪しに関する様子を表す文言であり、例えば、入院患者の術後の回復状態(より具体的には、症状が軽くなっているか、或いは、日常生活動作が行えるようになっているか)等を定量的に示したものである。患者状態予測装置1は、主な構成要素として、患者データ取得部110と、予測モデル選択部120と、患者状態予測部130とを備えて構成されている。
【0018】
患者データ取得部110は、患者に関する情報である患者データを取得することが可能に構成されている。「患者データ」とは、患者の属性や、病院で計測された患者に関する各種データ、患者状態から算出される指標等、今後の患者状態の変化に影響し得るデータである。患者データの具体的な例としては、一般的なバイタルサイン(血圧、脈拍、体温等)の他、FIM(Functional Independence Measure:機能的自立度評価表)、BI(Barthel Index:バーセルインデックス)、NIHSS(National Institute of Health Stroke Scale:脳卒中重症度の評価スケール)、MMT(Manual Muscle Test:徒手筋力テスト)、JCS(Japan Coma Scale:意識レベル)、及びSpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)等の患者の状態から算出された各種指標、並びに患者の入院期間に関する情報が挙げられる。なお、患者データの具体的な取得方法(或いは、算出方法)については、既存の技術を適宜採用することができるため、ここでの詳細な説明は省略する。患者データ取得部110で取得された患者データは、予測モデル選択部120に出力される構成となっている。
【0019】
予測モデル選択部120は、患者データ取得部110で取得された患者データに基づいて、患者状態を予測するための予測モデルを選択可能に構成されている。より具体的には、予測モデル選択部120は、予め複数種類の予測モデルを記憶しており、その中から、患者データに適した一の予測モデル(言い換えれば、その患者の患者状態をより正確に予測できる予測モデル)を選択する。予測モデルの具体的な選択方法については、後に詳述する。なお、「予測モデル」とは、将来の患者状態を予測するために用いられる演算モデルであり、例えば機械学習等によって生成される。なお、機械学習の手法は特に限定されず、使用される患者データ等に応じて適した手法を用いればよい。また。複数の予測モデルの各々は、同じ手法で生成されてもよいし、異なる手法で生成されてもよい。予測モデル選択部120による選択結果は、患者状態予測部130に出力される構成となっている。
【0020】
患者状態予測部130は、予測モデル選択部120で選択された予測モデルを用いて、将来の患者状態を予測可能に構成されている。具体的には、患者状態予測部130は、患者データ(過去や現時点での患者状態を含んでいてもよい)を予測モデルに入力し、その出力として、将来の患者状態を取得する。患者状態のより具体的な予測方法については、後に詳述する。患者状態予測部130で予測された患者状態は、外部装置(例えば、ディスプレイ等)に出力される構成となっている。
【0021】
図2に示すように、本実施形態に係る患者状態予測装置1は、CPU(Central Processing Unit)11と、RAM(Random Access Memory)12と、ROM(Read Only Memory)13と、記憶装置14とを備えている。患者状態予測装置1は更に、入力装置15と、出力装置16とを備えていてもよい。CPU11と、RAM12と、ROM13と、記憶装置14と、入力装置15と、出力装置16とは、データバス17を介して接続されている。
【0022】
CPU11は、コンピュータプログラムを読み込む。例えば、CPU11は、RAM12、ROM13及び記憶装置14のうちの少なくとも一つが記憶しているコンピュータプログラムを読み込んでもよい。例えば、CPU11は、コンピュータで読み取り可能な記録媒体が記憶しているコンピュータプログラムを、図示しない記録媒体読み取り装置を用いて読み込んでもよい。CPU11は、ネットワークインタフェースを介して、患者状態予測装置1の外部に配置される不図示の装置からコンピュータプログラムを取得してもよい(つまり、読み込んでもよい)。CPU11は、読み込んだコンピュータプログラムを実行することで、RAM12、記憶装置14、入力装置15及び出力装置16を制御する。本実施形態では特に、CPU11が読み込んだコンピュータプログラムを実行すると、CPU11内には、患者状態を予測するための機能ブロックが実現される。上述した、患者データ取得部110、予測モデル選択部120、及び患者状態予測部130は、例えばこのCPU11において実現されるものである。
【0023】
RAM12は、CPU11が実行するコンピュータプログラムを一時的に記憶する。RAM12は、CPU11がコンピュータプログラムを実行している際にCPU11が一時的に使用するデータを一時的に記憶する。RAM12は、例えば、D-RAM(Dynamic RAM)であってもよい。
【0024】
ROM13は、CPU11が実行するコンピュータプログラムを記憶する。ROM13は、その他に固定的なデータを記憶していてもよい。ROM13は、例えば、P-ROM(Programmable ROM)であってもよい。
【0025】
記憶装置14は、患者状態予測装置1が長期的に保存するデータを記憶する。記憶装置14は、CPU11の一時記憶装置として動作してもよい。記憶装置14は、例えば、ハードディスク装置、光磁気ディスク装置、SSD(Solid State Drive)及びディスクアレイ装置のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0026】
入力装置15は、患者状態予測装置1のユーザからの入力指示を受け取る装置である。入力装置15は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、スマートフォン、及びタブレットのうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0027】
出力装置16は、患者状態予測装置1に関する情報を外部に対して出力する装置である。例えば、出力装置16は、患者状態予測装置1に関する情報を表示可能な表示装置であってもよい。
【0028】
(動作説明)
次に、
図3を参照しながら、第1実施形態に係る患者状態予測装置1の動作の流れについて説明する。
図3は、第1実施形態に係る患者状態予測装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【0029】
図3に示すように、第1実施形態に係る患者状態予測装置1の動作時には、まず患者データ取得部110が、患者データを取得する(ステップS101)。なお、ここで取得される患者データは、現時点のものだけではなく、過去に取得されたもの(言い換えれば、蓄積された過去の患者データ)であってもよい。
【0030】
続いて、予測モデル選択部120が、患者データ取得部110で取得された患者データに基づいて、予測モデルを選択する(ステップS102)。予測モデル選択部120は、患者データが複数種類取得されている場合には、その中の1種類を用いて予測モデルを取得してもよいし、複数種類を用いて(組み合わせて)予測モデルを取得してもよい。
【0031】
続いて、患者状態予測部130が、予測モデル選択部120で選択された予測モデルを用いて、患者状態を予測する(ステップS103)。ここで予測される患者状態は、将来の患者の状態を示すものであり、例えば数日後の患者の症状の良し悪しや合併症のリスクを判定可能なものであってもよい。
【0032】
(予測モデルの選択)
次に、
図4を参照しながら、予測モデルの具体的な選択方法(即ち、
図3のステップS102の詳細)について説明する。
図4は、患者データに基づく予測モデルの選択方法の一例を示す図である。
【0033】
図4に示すように、予測モデル選択部120は、患者データとして取得された「(過去又は現在の)患者状態」及び「入院期間」に基づいて予測モデルを選択してもよい。例えば、予測モデル選択部120は、患者状態の程度と、入院期間における時期(即ち、入院期間全体で見た場合にどれくらい期間が経過した状態なのか)との双方に基づいて、予測モデルを選択してもよい。ここでは、患者状態が「良い」、「普通」、「悪い」のいずれであるか、及び入院期間が「初期」、「中期」、「後期」のいずれであるかによって、モデル1~9のいずれかが選択される。例えば、患者の入院期間が「初期」であり、患者状態が「悪い」である場合、その患者に適した予測モデルとしてモデル1が選択される。患者の入院期間が「中期」であり、患者状態が「普通」である場合、その患者に適した予測モデルとしてモデル5が選択される。患者の入院期間が「後期」であり、患者状態が「良い」である場合、その患者に適した予測モデルとしてモデル9が選択される。
【0034】
上記のように、予測モデルは、患者データ取得部110で取得された患者データに基づいて選択される。なお、
図4に示す選択方法はあくまで一例であり、その他の手法を用いて予測モデルが選択されても構わない。例えば、患者状態又は入院期間のいずれか一方のみに基づいて予測モデルを選択してもよいし、患者状態及び入院期間に加えて一又は複数の他の要因に基づいて予測モデルを選択してもよい。
【0035】
(患者状態の予測)
次に、
図5を参照しながら、予測モデルを用いた患者状態の予測方法(即ち、
図3のステップS103の詳細)について説明する。
図5は、予測モデルを用いた患者状態の予測方法の一例を示すチャートである。
【0036】
図7に示すように、予測モデルは、過去M日間の患者状態を用いて、N日後までの患者状態を予測するものであってもよい(なお「M」及び「N」は自然数とする)。この場合、患者状態予測部130は、予測モデル選択部120で選択された予測モデルに、過去M日間の患者状態を示すデータを入力する、すると、今日からN日後までの患者状態を示すデータが、予測結果として予測モデルから出力される。このような動作により、患者状態予測部130は、将来の患者状態を予測する。
【0037】
なお、本実施形態では、上述した「M」及び「N」の値が適宜定められた複数の予測モデルが予め用意されており、予測モデル選択部120は、その中から患者データに基づいて一の予測モデルを選択してもよい。言い換えれば、予測モデル選択部120は、患者データに基づいて、適切な「M」及び「N」を決定するようなものであってもよい。このようにすれば、予測モデルの選択によって、より正確に将来の患者状態を予測することができる。例えば、入院期間が比較的長くなると患者の容体が安定する傾向にある場合、入院期間が長くなるほどMを大きくする(即ち、Mの大きい予測モデルを選択する)ことで正確な予測が行える。また、患者の年齢が低くなると容体が安定する傾向がある場合、患者の年齢が低くなるほどMを大きくする(即ち、Mの大きい予測モデルを選択する)ことで正確な予測が行える。更に、より長期間の患者状態を把握すべき状況においては、Nを大きくする(即ち、Nの大きい予測モデルを選択する)ことで適切な予測が行える。
【0038】
(技術的効果)
次に、第1実施形態に係る患者状態予測装置1によって得られる技術的効果について説明する。
【0039】
図1から
図5で説明したように、第1実施形態に係る患者状態予測装置1によれば、患者データに基づいて選択された予測モデルを用いて患者状態が予測される。このため、毎回1つの予測モデルのみを使用して患者状態を予測する場合と比較すると、より正確な患者状態を予測することが可能である。即ち、患者一人ひとりに適した予測モデルを使用して患者状態が予測できるため、予測結果がより正確なものとなる。
【0040】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る患者状態予測装置について、
図6及び
図7を参照して説明する。なお、第2実施形態は、上述した第1実施形態と比較して一部の構成及び動作が異なるのみであり、その他の部分は概ね同様である。このため、以下ではすでに説明した第1実施形態と異なる部分について説明し、他の重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0041】
(動作説明)
まず、
図6を参照しながら、第2実施形態に係る患者状態予測装置1の動作の流れについて説明する。
図6は、第2実施形態に係る患者状態予測装置の動作の流れを示すフローチャートである。なお、
図6では、
図3で示した処理と同様の処理に同一の符号を付している。
【0042】
図6に示すように、第2実施形態に係る患者状態予測装置1の動作時には、第1実施形態と同様に、患者データ取得部110が、患者データを取得し(ステップS101)、予測モデル選択部120が、取得された患者データに基づいて予測モデルを選択し(ステップS102)、患者状態予測部130が、選択された予測モデルを用いて患者状態を予測する(ステップS103)。
【0043】
その後、第2実施形態では、患者状態予測部130が、予測した患者状態に基づいて患者に合併症が発生するリスク(以下、適宜「合併症リスク」と称する)があるか否かを判定する(ステップS201)。合併症リスクの具体的な判定方法については、後に詳述する。
【0044】
合併症リスクがあると判定された場合(ステップS201:YES)、患者状態予測部130は、患者に対する対処(ケア)に関する情報(典型的には、合併症リスクを小さくするための対処に関する情報)を出力する(ステップS202)。より具体的には、患者状態予測部130は、患者に発生し得る合併症を予測すると共に、その合併症の発生を抑制するのに有効な対処を特定し、特定した対処の内容を医療スタッフ等に通知する。なお、合併症リスクの高さに応じて、出力する情報が変更されてもよい。例えば、合併症リスクが比較的低い場合には、出力する対処の種類を減らされ、実践しやすい対処(例えば、口腔ケアや、ベッド角度アップ等)のみが出力される一方で、合併症リスクが比較的高い場合には、出力する対処の種類を増やし、実践しにくい対処(例えば、呼吸苦運連や腹圧訓練等)まで出力されるようにしてもよい。
【0045】
合併症リスクがないと判定された場合(ステップS201:NO)、上述したステップS202の処理は省略される。即ち、合併症リスクを小さくするための対処に関する情報は出力されない。
【0046】
(合併症リスクの判定)
次に、
図7を参照しながら、合併症リスクの判定方法(即ち、
図6のステップS201の詳細)について説明する。
図7は、予測された患者状態から合併症リスクを判定する方法の一例を示すチャートである。
【0047】
図7に示すように、合併症リスクは、患者状態予測部130で予測される患者状態の良し悪しに基づいて判定してもよい。具体的には、患者状態がリスク判定閾値を超えて悪化側に振れた場合、患者状態予測部130は、合併症リスクありと判定すればよい(図中の破線参照)。逆に、患者状態がリスク判定閾値を超えない場合、患者状態予測部130は、合併症リスクなしと判定すればよい(図中の一点鎖線参照)。なお、ここでの「リスク判定閾値」は、合併症リスクの有無を判定するために予め設定される閾値であり、例えば過去の合併症に関するデータ等に基づいて算出される値である。リスク判定閾値を複数設定すれば、段階的に合併症リスクを予測することもできる(即ち、合併症リスクの高さを予測することもできる)。なお、リスク判定閾値を用いる手法はあくまで一例であり、閾値以外の判定方法で合併症リスクの有無を判定してもよい。
【0048】
(技術的効果)
次に、第2実施形態に係る患者状態予測装置1によって得られる技術的効果について説明する。
【0049】
図6及び
図7で説明したように、第2実施形態に係る患者状態予測装置1によれば、予測した患者情報に基づいて、合併症リスクが予測される。このため、合併症の発生(言い換えれば、患者の容体の悪化)を事前に予測することが可能となる。また、合併症の発生が予測された場合には、合併症リスクを小さくするための対処に関する情報が出力される。このため、合併症の発生を効率的に予防することが可能である。
【0050】
合併症の発生は、医療施設における退院遅延の大きな原因にもなっている。よって、合併症の発生を予防することで、退院遅延の発生も回避することが可能となる。この結果、病床数不足等の問題に対しても有益な効果が得られる。
【0051】
なお、合併症リスクを小さくするための対処は、すべての患者に対して出力されてもよいが、その場合、医療スタッフがすべての患者に対応することが要求され、業務負荷が著しく増大してしまうおそれがある。しかるに本実施形態では、合併症リスクの有無に応じて対処に関する情報が出力されるため、医療スタッフは、対処を行うべき患者に対して効率的に対処を行うことができる。よって、医療スタッフの業務負荷を軽減することができる。
【0052】
<付記>
以上説明した実施形態に関して、更に以下の付記を開示する。
【0053】
(付記1)
付記1に記載の患者状態予測装置は、患者に関する情報である患者データを取得する取得手段と、前記患者の状態である患者状態の変化を予測する複数の予測モデルの中から、前記患者データに基づいて一の予測モデルを選択する選択手段と、前記一の予測モデルを用いて、将来の前記患者状態の変化を予測する予測手段とを備えることを特徴とする患者状態予測装置である。
【0054】
(付記2)
付記2に記載の患者状態予測装置は、前記予測手段は、予測した将来の前記患者状態の変化に基づいて、前記患者が合併症を発症する可能性を示す合併症リスクを予測することを特徴とする請求項1に記載の患者状態予測装置である。
【0055】
(付記3)
付記3に記載の患者状態予測装置は、前記予測手段は、予測した前記合併症リスクに基づいて、前記患者に対する対処に関する情報を出力することを特徴とする請求項2に記載の患者状態予測装置である。
【0056】
(付記4)
付記4に記載の患者状態予測装置は、前記複数の予測モデルの各々は、前記予測モデルごとに定められた過去の第1期間における前記患者状態を用いて、将来の前記患者状態の変化を予測するモデルであることを特徴とする付記1から3のいずれか一項に記載の患者状態予測装置である。
【0057】
(付記5)
付記5に記載の患者状態予測装置は、前記選択手段は、前記患者の入院期間が長くなるほど、前記第1期間の長いモデルを選択することを特徴とする付記4に記載の患者状態予測装置である。
【0058】
(付記6)
付記6に記載の患者状態予測装置は、前記選択手段は、前記患者の年齢が低くなるほど、前記第1期間の長いモデルを選択することを特徴とする付記4又は5に記載の患者状態予測装置である。
【0059】
(付記7)
付記7に記載の患者状態予測装置は、前記複数の予測モデルの各々は、前記予測モデルごとに定められた将来の第2期間における前記患者状態の変化を予測するモデルであることを特徴とする付記1から6のいずれか一項に記載の患者状態予測装置である。
【0060】
(付記8)
付記8に記載の患者状態予測装置は、前記選択手段は、前記患者の状態を把握すべき期間が長いほど、前記第2期間の長いモデルを選択することを特徴とする付記7に記載の患者状態予測装置である。
【0061】
(付記9)
付記9に記載の患者状態予測装置は、前記患者データは、前記患者が行える動作の程度によって定まる指標を含むことを特徴とする付記1から8のいずれか一項に記載の患者状態予測装置である。
【0062】
(付記10)
付記10に記載の患者状態予測装置は、前記患者データは、前記患者の入院期間に関する情報を含むことを特徴とする付記1から9のいずれか一項に記載の患者状態予測装置である。
【0063】
(付記11)
付記11に記載の患者状態予測装置は、前記患者データは、前記患者のバイタルサインに関する情報を含むことを特徴とする付記1から10のいずれか一項に記載の患者状態予測装置である。
【0064】
(付記12)
付記12に記載の患者状態予測方法は、患者に関する情報である患者データを取得し、前記患者の状態である患者状態の変化を予測する複数の予測モデルの中から、前記患者データに基づいて一の予測モデルを選択し、前記一の予測モデルを用いて、将来の前記患者状態の変化を予測することを特徴とする患者状態予測方法である。
【0065】
(付記13)
付記13に記載のコンピュータプログラムは、患者に関する情報である患者データを取得し、前記患者の状態である患者状態の変化を予測する複数の予測モデルの中から、前記患者データに基づいて一の予測モデルを選択し、前記一の予測モデルを用いて、将来の前記患者状態の変化を予測するようにコンピュータを動作させることを特徴とするコンピュータプログラムである。
【0066】
(付記14)
付記14に記載の記録媒体は、付記13に記載のコンピュータプログラムが記録されていることを特徴とする記録媒体である。
【0067】
本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う患者状態予測装置、患者状態予測方法、及びコンピュータプログラムもまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1 患者状態予測装置
11 CPU
12 RAM
13 ROM
14 記憶装置
15 入力装置
16 出力装置
17 データバス
110 患者データ取得部
120 予測モデル選択部
130 患者状態予測部