(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】電流計測装置、蓄電装置
(51)【国際特許分類】
G01R 19/00 20060101AFI20231212BHJP
G01R 15/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
G01R19/00 B
G01R15/00 500
(21)【出願番号】P 2021565287
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2019050109
(87)【国際公開番号】W WO2021124551
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今中 佑樹
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-282050(JP,A)
【文献】特開2001-118607(JP,A)
【文献】特表2014-509747(JP,A)
【文献】特開2002-257909(JP,A)
【文献】特開2011-12964(JP,A)
【文献】特開2013-152231(JP,A)
【文献】特開2007-132806(JP,A)
【文献】特開2016-118437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 19/00-19/32、
31/36-31/44、
15/00-17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子の電流を計測する電流計測装置であって、
電流経路上に位置し、抵抗体を有する計測用抵抗器と、
前記電流経路上において前記抵抗体の両側に位置する一対の検出点と、
一対の前記検出点に接続される一対の電圧入力部を有し、一対の検出点間の電圧差から前記蓄電素子の電流を検出する電流検出部と、
前記電流検出部との共通グランドに接続されるグランド接続点とを含み、
一対の前記検出点のうち前記グランド接続点に近い一方の前記検出点から前記グランド接続点までの前記電流経路の抵抗は、前記電流検出部の入力電圧の許容値を、前記蓄電素子の所定電流で除した値より小さ
く、
前記計測用抵抗器は、前記抵抗体の両側に一対の電極を有し、
一対の前記電極は、一対の前記検出点を有し、
一対の前記電極のうち一方の前記電極は、一方の前記検出点に加えて、前記グランド接続点を有し、
前記計測用抵抗器は、
一対の前記検出点に対応して一対の検出端子と、
前記グランド接続点に対応してグランド端子と、を有し、
一対の前記検出端子と前記グランド端子は、基板に設けられたコネクタに嵌合する、電流計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電流計測装置であって、
一方の前記検出点から前記グランド接続点までの前記電流経路の抵抗は、前記電流検出部の入力電圧の前記許容値から所定電流時の前記抵抗体の両端電圧を引いた電圧を、前記所定電流で除した値より小さい、電流計測装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電流計測装置であって、
前記グランド接続点は、一方の前記検出点と共通であり、共通する2点間の電流経路の抵抗は、ゼロである、電流計測装置。
【請求項4】
請求項1~
請求項3のいずれか一項に記載の電流計測装置であって、
前記所定電流は、最大電流である、電流計測装置。
【請求項5】
蓄電素子と、
請求項1~
請求項4のいずれか一項に記載の電流計測装置を有する、蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子の電流を計測する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電素子の電流計測装置の一つに、シャント抵抗などの計測用抵抗器を利用する場合がある。下記特許文献1には、シャント抵抗にグランド端子を設ける点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電流計測装置は、抵抗体の電圧差から電流を検出する電流検出部を有している。電流検出部の入力電圧には許容値がある。許容値を超えた入力電圧は、許容値に飽和した状態になるため、電流の計測精度が低下する。
【0005】
本発明は、入力電圧の飽和を抑制し、電流の計測精度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
蓄電素子の電流を計測する電流計測装置は、電流経路上に位置し、抵抗体を有する計測用抵抗器と、前記電流経路上において前記抵抗体の両側に位置する一対の検出点と、一対の前記検出点に接続される一対の電圧入力部を有し、一対の検出点間の電圧差から前記蓄電素子の電流を検出する電流検出部と、前記電流検出部との共通グランドに接続されるグランド接続点とを含み、一対の前記検出点のうち前記グランド接続点に近い一方の前記検出点から前記グランド接続点までの前記電流経路の抵抗は、前記電流検出部の入力電圧の許容値を、前記蓄電素子の所定電流で除した値より小さい。
【0007】
本技術は、蓄電装置に適用することが出来る。
【発明の効果】
【0008】
電流の計測精度を向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図7】回路基板のコネクタに抵抗器を嵌合させた状態を示す斜視図
【
図13】計測用抵抗器に対するグランド線と入力線の接続構造を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(電流計測装置の概要)
発明者らは、蓄電素子の電流計測精度やSOC推定精度を向上させることを検討した結果、電流検出部の入力電圧が許容値を超えた場合に、電流検出部が飽和して、計測精度が低下することを突き止めた。
【0011】
蓄電素子の電流を計測する電流計測装置は、電流経路上に位置し、抵抗体を有する計測用抵抗器と、前記電流経路上において前記抵抗体の両側に位置する一対の検出点と、一対の前記検出点に接続される一対の電圧入力部を有し、一対の検出点間の電圧差から前記蓄電素子の電流を検出する電流検出部と、前記電流検出部との共通グランドに接続されるグランド接続点とを含み、一対の前記検出点のうち前記グランド接続点に近い一方の前記検出点から前記グランド接続点までの前記電流経路の抵抗は、前記電流検出部の入力電圧の許容値を、前記蓄電素子の所定電流で除した値より小さい。
【0012】
蓄電素子が所定電流以下の場合、少なくとも一方の検出点の電圧は、電流検出部の入力電圧の許容値を超えない。少なくとも一方の検出点は、入力電圧の飽和が起きないので、電流の計測誤差を抑えることが出来る。
【0013】
一方の前記検出点から前記グランド接続点までの前記電流経路の抵抗は、前記電流検出部の入力電圧の前記許容値から所定電流時の前記抵抗体の両端電圧を引いた電圧を、前記所定電流で除した値より小さくてもよい。
【0014】
蓄電素子が所定電流以下の場合、一対の検出点の2点とも、入力電圧の飽和が起きないので、電流の計測精度をより一層、高めることが出来る。
【0015】
前記計測用抵抗器は、前記抵抗体の両側に一対の電極を有し、一対の前記電極は、一対の前記検出点を有し、一対の前記電極のうち一方の前記電極は、一方の前記検出点に加えて、前記グランド接続点を有してもよい。
【0016】
一方の電極に対して、一方の検出点とグランド接続点を設けることで、一方の検出点からグランド接続点までの距離が短くなり、一方の検出点からグランド接続点までの抵抗を小さくすることが出来る。抵抗を小さくすることで、検出点の電圧上昇を抑えて、入力電圧が飽和することを抑制出来る。
【0017】
前記グランド接続点は、一方の前記検出点と共通であり、共通する2点間の電流経路の抵抗は、ゼロでもよい。2点間の抵抗がゼロになることから、グランドに対する検出点の電圧上昇を抑えることができ、入力電圧が飽和することを抑制出来る。
【0018】
前記計測用抵抗器は、一対の前記検出点に対応して一対の検出端子と、前記グランド接続点に対応してグランド端子と、を有し、一対の前記検出端子と前記グランド端子は、基板に設けられたコネクタに嵌合してもよい。各端子とコネクタとの間に熱抵抗が存在するため、計測用抵抗器と基板をハーネスで接続する場合に比べて熱が伝わり難く、計測用抵抗器が発熱しても、基板への影響を小さくできる。
【0019】
前記所定電流は、最大電流でもよい。蓄電素子が最大電流でも、入力電圧が飽和することを抑制でき、電流の計測誤差を抑えることが出来る。
【0020】
<実施形態1>
1.バッテリの電気的構成
図1は自動車の側面図である。自動車1は、エンジン駆動車であり、駆動装置としてエンジン5を有する。
図1は、エンジン5とバッテリ20のみ図示し、自動車1を構成する他の部品は省略している。バッテリ20は、蓄電装置の一例である。
【0021】
図2を参照して、バッテリ20の電気的構成を説明する。バッテリ20は、エンジン始動用である。バッテリ20には、自動車1に搭載されたエンジン5を始動するためのセルモータ15とIGスイッチ17が接続されている。
【0022】
IGスイッチ17がオンすると、バッテリ20からセルモータ15に電流が流れ、セルモータ15が駆動する。セルモータ15の駆動により、エンジン5を始動することが出来る。
【0023】
バッテリ20には、セルモータ15の他に、電装品などの車両負荷(図略)やオルタネータ(図略)が接続されている。オルタネータの発電量が車両負荷の電力消費より大きい場合、バッテリ20はオルタネータによる充電される。オルタネータの発電量が車両負荷の電力消費より小さい場合、バッテリ20は、その不足分を補うため、放電する。
【0024】
バッテリ20は、組電池30と、計測用抵抗器80と、電流遮断装置120と、管理部130と、信号処理回路150と、回路基板90を備える。組電池30は、直列接続された複数の二次電池31から構成されている。二次電池31は、例えば、リチウムイオン二次電池である。
【0025】
組電池30、電流遮断装置120及び計測用抵抗器80は、パワーライン55P、55Nを介して、直列に接続されている。パワーライン55P、55Nは、組電池30の電流経路Xである。
【0026】
パワーライン55Pは、正極の外部端子22Pと組電池30の正極とを接続するパワーラインである。パワーライン55Nは、負極の外部端子22Nと組電池30の負極とを接続するパワーラインである。
【0027】
電流遮断装置120は、組電池30の正極側に位置し、正極側のパワーライン55Pに設けられている。
【0028】
計測用抵抗器80は、組電池30の負極に位置し、負極側のパワーライン55Nに設けられている。計測用抵抗器80は、
図3に示すように、一方向(電流経路Xの方向)に長い長方形状の金属導体である。計測用抵抗器80は、一対の電極83A、83Bと、抵抗体81と、を備える。
【0029】
抵抗体81は、電気抵抗の温度変化率の小さい合金(一例として、銅、マンガン、ニッケルの合金:マンガニン)である。抵抗体81は、計測用抵抗器80に流れる電流に比例した電圧Vrを発生する。
【0030】
一対の電極83A、83Bは、例えば、銅などの金属である。一対の電極83A、83Bは、抵抗体81のX方向両側に位置しており、抵抗体81に対して溶接により接合されている。溶接方法は、電子ビーム溶接や抵抗溶接などを用いることが出来る。
【0031】
一対の電極83A、83Bは、バスバー取り付け用にビス孔84を有する。電極83Aはバスバー(図略)によって、組電池30の負極に接続され、電極83Bはバスバー(図略)によって、負極の外部端子22Nに接続される。
【0032】
一対の電極83A、83Bは、一対の検出点Pa、Pbを有している。一対の検出点Pa、Pbは、電流経路X上において、抵抗体81の両側に位置している。
【0033】
一対の電極83A、83Bは、一対の検出点Pa、Pbに対応して、一対の検出端子85A、85Bを有している。一対の検出端子85A、85Bは、各電極83A、83Bの側面から電流経路Xに直交するY方向に平行に突出する。電極83Aの検出端子85Aは電流経路Xの検出点Paの位置にあり、電極83Bの検出端子85Bは電流経路Xの検出点Pbの位置にある。一対の検出点Pa、Pbは、検出端子85A、85B、コネクタ100を介して、第1信号処理部160の2つの入力端子161A、161Bにそれぞれ電気的に接続される。
【0034】
計測用抵抗器80は、グランド接続点Pgを有している。グランド接続点Pgは、電極83A上にあり、検出点Paと隣接する。グランド接続点Pgは、抵抗体81から見て、検出点Paよりも外方に位置する遠点である。グランド接続点Pgは、電流経路X上において、検出点Paと組電池30の負極との間に位置する(
図2参照)。
【0035】
図3に示すように、電極83Aは、グランド接続点Pgに対応して、グランド端子87を有している。グランド端子87は、電極83Aの側面から電流経路Xに直交するY方向に突出する。グランド端子87は、検出端子85A、85Bと平行である。電極83Aのグランド端子87は、電流経路Xのグランド接続点Pgの位置にある。グランド接続点Pgは、グランド端子87、コネクタ100を介して、回路基板90の共通グランドGNDに電気的に接続されている。
【0036】
電流遮断装置120は、リレーやFETなどの半導体スイッチである。電流遮断装置120をOPENすることで、バッテリ20の電流を遮断することが出来る。電流遮断装置120は、正常時、CLOSEに制御される。
【0037】
信号処理回路150は、
図2に示すように、回路基板90上に実装されており、第1信号処理部160と、第2信号処理部170と、を備える。信号処理回路150は、正極側のパワーライン55Pに分岐線57を介して接続されており、組電池30を電源として電力の供給を受ける。信号処理回路150は、回路基板90の共通グランドGNDに、電気的に接続されている。
【0038】
第1信号処理部160は、アンプ161と、ADコンバータ163とを含む。アンプ161は、2つの入力端子161A、161Bと、1つの出力端子161Cを備える。
【0039】
2つの入力端子161A、161Bは、コネクタ100、検出端子85A、85Bを介して、抵抗体81の両側に位置する2つの検出点Pa、Pbにそれぞれ電気的に接続されている。
【0040】
アンプ161は、2つの入力端子161A、161B間の電圧差、つまり、抵抗体81の両端電圧Vrを増幅する。アンプ161は、抵抗体81の両端電圧Vrを検出する検出部である。ADコンバータ163は、アンプ161の出力端子161Cと接続されており、アンプ161の出力値をアナログ信号からディジタル信号に変換して出力する。第1信号処理部160は、2つの入力端子161A、161Bの電圧差Vrから、バッテリ20の電流Iを検出する電流検出部の一例である。
【0041】
計測用抵抗器80、コネクタ100、第1信号処理部160は、電流計測装置50の一例である。
【0042】
第2信号処理部170は、マルチプレクサ171と、ADコンバータ173とを含む。マルチプレクサ171は、5つの入力端子171A~171Eと、1つの出力端子171Fを備える。5つの入力端子171A~171Eは、各二次電池31の電極にそれぞれ電気的に接続される。
【0043】
マルチプレクサ171は、測定対象の二次電池31を切り換えつつ、各二次電池31の電圧を順に検出して出力する。ADコンバータ173は、マルチプレクサ171の出力端子171Fと接続されており、マルチプレクサ171の出力値を、アナログ信号からディジタル信号に変換して出力する。
【0044】
第1信号処理部160、第2信号処理部170は、バス180を介して管理部130と接続されており、両信号処理部160、170の出力(計測値)は、管理部130に対して入力される。
【0045】
管理部130は、
図2に示すように、回路基板90上に実装されている。管理部130は、CPU131と、メモリ133を備える。管理部130は、正極側のパワーライン55Pに分岐線58を介して接続されており、組電池30を電源として電力の供給を受ける。管理部130は、回路基板90の共通グランドGNDに、接続されている。
【0046】
CPU131は、第1信号処理部160の出力に基づいて、バッテリ20の電流Iを監視する。CPU131は、第2信号処理部170の出力に基づいて、各二次電池31の電圧や組電池30の総電圧を監視する。
【0047】
CPU131は、二次電池31の電圧、電流、温度に異常がある場合、電流遮断装置120に指令を送って、電流Iを遮断することにより、バッテリ20を保護する。
【0048】
SOC(state of charge)は、バッテリ20の充電状態である。SOCは満充電容量(実容量)に対する残存容量の比率であり、下記の(1)式にて定義することが出来る。
【0049】
SOC[%]=(Cr/Co)×100 (1)
Coは二次電池の満充電容量、Crは二次電池の残存容量である。
【0050】
CPU131は、下記の(2)式で示すように、計測用抵抗器80により計測される電流Iの時間に対する積分値に基づいて、バッテリ20のSOCを推定する。
【0051】
SOC=SOCo+100×(∫Idt)/Co (2)
SOCoは、SOCの初期値、Iは電流である。
【0052】
2.バッテリ20の構造説明
図4はバッテリの斜視図、
図5はバッテリの分解斜視図である。バッテリ20は、
図4に示すように、ブロック状の電池ケース21を有している。電池ケース21内には、複数の二次電池31からなる組電池30や、計測用抵抗器80、電流遮断装置120、回路基板90などが収容されている。
【0053】
電池ケース21は、
図5に示すように、上方に開口する箱型のケース本体23と、複数の二次電池31を位置決めする位置決め部材24と、ケース本体23の上部に装着される中蓋25と、中蓋25の上部に装着される上蓋29とを備える。ケース本体23内には、複数のセル室23AがX方向に並んで設けられている。各セル室23Aには、各二次電池31が個別に収容される。
【0054】
位置決め部材24は、各セル室23Aに収容された各二次電池31を位置決めする。
図5に示すように、位置決め部材24の上面には、複数のバスバー24Aが配置されている。複数のバスバー24は、各セル室23Aに収容された各二次電池31を直列に接続する。
【0055】
中蓋25は、
図5に示すように平面視略矩形状である。中蓋25は、X方向両端部に、一対の外部端子22P、22Nを有する。一対の外部端子22P、22Nは、例えば鉛合金等の金属からなり、22Pが正極の外部端子、22Nが負極の外部端子である。外部端子22P、22Nは、バッテリ20を、セルモータ15などの電気負荷に接続するための端子である。
【0056】
図5に示すように、中蓋25の上面には、第1収容部25Aと、第2収容部25Bが設けられている。これら2つの収容部25A、25Bは、外壁26により囲まれている。
図6に示すように、第1収容部25Aには、回路基板90が螺子止めにより固定された状態で収容されている。
図6において、回路基板90は、コネクタ100、信号処理回路150など一部のみを示し、それ以外の部品は、省略している。
【0057】
回路基板90は、概ね長方形状であり、基板上面にコネクタ100を配置している。コネクタ100は、計測用抵抗器80と向かい合う対向部に配置されている。コネクタ100は、回路基板90の上面に爪等の固定部115によって固定されている。
【0058】
コネクタ100は、3つの内部端子を有している(図は省略)。つまり、2つの内部端子は、計測用抵抗器80に設けられた2の検出端子85A、85Bと対応し、1つの内部端子は、グランド端子87と対応する。各内部端子は、回路基板90の上面に設けられた導体パターンに、例えば、半田付けにより接合されている。
【0059】
図6に示すように、第2収容部25Bには、計測用抵抗器80が収容されている。計測用抵抗器80は、2つの検出端子85A、85B及びグランド端子87をコネクタ100に嵌合(
図7参照)させつつ、2つの電極83A、83Bを、螺子止めされた状態で収容されている。
【0060】
検出端子85A、85Bをコネクタ100に嵌合すると、検出端子85A、85Bが、内部端子と弾性的に接触し、検出端子85A、85Bを回路基板90に搭載された第1信号処理部160に電気的に接続できる。
【0061】
グランド端子87を、コネクタ100に嵌合すると、グランド端子87が、内部端子と弾性的に接触し、計測用抵抗器80のグランド端子87を、回路基板90の共通グランドGNDに電気的に接続できる。
【0062】
各端子85A、85B、87とコネクタ100との間に熱抵抗が存在するため、計測用抵抗器80と回路基板90をハーネスで接続する場合に比べて熱が伝わり難く、計測用抵抗器80が発熱しても、回路基板90への影響を小さくできる。
【0063】
3.第1信号処理部160の入力電圧と電流計測誤差
アンプ161は入力電圧の大きさに制限がある。アンプ161に対して、許容値Vmを超える電圧を入力した場合、アンプ161は飽和し、第1信号処理部160の計測値に計測誤差が生じる。
【0064】
入力電圧の許容値Vmは、一例として、±300mVである。+は放電、-は充電である。検出点Paの電圧が+310[mV]、検出点Pbの電圧が+330[mV]の場合、アンプ161への入力電圧は、2つの検出点Pa、Pbとも+300[mV]に飽和してしまい、計測誤差が生じる。つまり、2つの検出点Pa、Pbの間の電位差は、正しくは+20[mV]であるのに、ゼロと計測されてしまう。
【0065】
計測用抵抗器80のグランド接続点Pgは、回路基板90の共通グランドGNDに接続され、回路基板90の共通グランドGNDと同電位である。
【0066】
グランド接続点Pgを共通グランドGNDと同電位にすることで、計測用抵抗器80と回路基板90の基準電位差を小さくする事ができ、共通グランドGNDを基準とした、検出点Pa、Pbの電圧を下げることが出来る。
【0067】
グランド端子87を、検出端子85A、85Bとは別に設けた場合、
図8に示すように、管理部130や信号処理回路150の消費電流Irは、グランド端子87を通って、組電池30に帰還する。そのため、検出端子85A、85Bに、消費電流Irが流れなくなり、電流計測精度の低下を抑制することが出来る。
【0068】
電極83Aに対してグランド接続点Pgと検出点Paを別々に設けた場合、計測用抵抗器80に電流が流れると、グランド接続点Pgと検出点Paの間に、電圧が生じる。電圧が生じる理由は、電極83A、83Bは銅製であり、材料自体に電気抵抗があるからである。つまり、グランド接続点Pgから検出点Paまでの抵抗により、2点間Pg~Paに電圧が生じる。
【0069】
電極83Aの電気抵抗率をρ[Ωm]、電極83Aの断面積をS[m2]、グランド接続点Pgから検出点Paまでの電流経路Xに沿った長さをL[m]とすると、グランド接続点Pgから検出点Paまでの電流経路Xの抵抗Rga[Ω]は、以下の(3)式により得られる。
Rga=ρ×L/S (3)
【0070】
グランド接続点Pgから検出点Paまで電流経路Xの抵抗Rgaは、以下の(4)式を満たし、第1信号処理部160の入力電圧の許容値Vmを、バッテリ20の最大電流Imaxで除した数値以下である。
【0071】
Rga≦Vm/Imax (4)
Vmは、第1信号処理部(アンプ)の入力電圧の許容値、Imaxは、バッテリ20の最大電流である。最大電流Imaxは、バッテリ20が短時間に放電又は充電できる電流の最大値である。最大電流Imaxは、バッテリ20の特性(起電力、内部抵抗など)により決まる数値であり、設計値や実験値を用いることが出来る。
【0072】
第1信号処理部160の入力電圧の許容値Vmが±300[mV]、バッテリ20の最大電流±Imaxが6000[A]の場合、Rga≦50[μΩ]である。+は放電、-は充電である。
【0073】
抵抗Rgaは、(3)式で示すように、グランド接続点Pgから検出点Paまでの電流経路Xに沿った長さLに比例し、電極83Aの断面積Sに反比例する。そのため、計測用抵抗器80は、抵抗Rgaが(4)式を満たすように、グランド端子87から検出端子85Aまでの電流経路Xに沿った長さLや、電極83Aの断面積Sを定めている。
【0074】
抵抗Rgaが、上記の(4)式を満たしている場合、バッテリ20が最大電流Imaxであっても、検出端子85Aの電圧は、第1信号処理部160の入力電圧の許容値Vmを超えない。そのため、2つの検出点Pa、Pbのうち、グランド接続点Pgに近い一方の検出点Paでは、入力電圧の飽和が起きない。検出点Paと検出点Pbの2点とも、入力電圧が飽和しなければ、飽和による電流計測誤差はほとんど無く、電流計測精度を高くすることが出来る。また、検出点Pbにて、入力電圧の飽和が起きた場合でも、検出点Paは非飽和であることから、2つの検出点Pa、Pbの電圧差がゼロになることは無い。そのため、2つの検出点Pa、Pbとも、入力電圧が飽和する場合に比べて、飽和による電流計測誤差を抑制することが出来る。
【0075】
3.効果説明
バッテリ20は、第1信号処理部160に対する入力電圧超過による電流Iの計測誤差を抑えることが出来、電流Iの計測精度を高めることが出来る。また、電流Iの計測精度が向上することで、SOCの推定精度も向上する。
【0076】
<実施形態2>
実施形態2は、実施形態1に対して、グランド接続点Pgから検出点Paまでの電流経路Xの抵抗Rgaの値が異なる。
【0077】
抵抗Rgaは、以下の(5)式を満たし、第1信号処理部160の入力電圧の許容値Vmから抵抗体81の両端電圧Vrの最大値Vrmaxを引いた電圧を、バッテリ20の最大電流Imaxで除した数値以下である。
【0078】
Rga≦(Vm-Vrmax)/Imax (5)
Vmは第1信号処理部の入力電圧の許容値、Vrmaxは抵抗体81の最大電圧、Imaxはバッテリ20の最大電流である。Vrmaxは、抵抗体81の抵抗値とバッテリ20の最大電流Imaxの積である。
【0079】
第1信号処理部160の入力電圧の許容値Vmが±300[mV]、抵抗体81の最大電圧Vrmaxが±150[mV]、バッテリ20の最大電流Imaxが±6000[A]の場合、Rga≦25[μΩ]である。
【0080】
抵抗Rgaが、上記の(5)式を満たしている場合、バッテリ20が最大電流Imaxであっても、検出端子85Aに加え、検出端子85Bの電圧も、第1信号処理部160の入力電圧の許容値Vmを超えない。2つの検出点Pa、Pbの双方とも、入力電圧の飽和が起きないため、電流の計測精度を高めることが出来る。
【0081】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0082】
(1)上記実施形態1、2では、蓄電素子を二次電池31とした。二次電池31は、リチウムイオン二次電池に限らず他の非水電解質二次電池でもよい。鉛蓄電池などを使用することも出来る。蓄電素子は、二次電池31に限らず、キャパシタでもよい。蓄電素子は複数を直並列に接続する場合に限らず、直列の接続や、単セルの構成でもよい。
【0083】
(2)上記実施形態1、2では、バッテリ20を車両用とした。バッテリ20の使用用途は、特定の用途に限定されない。バッテリ20は、移動体用(車両用や船舶用、AGVなど)や、定置用(無停電電源システムや太陽光発電システムの蓄電装置)など、種々の用途に使用することが出来る。
【0084】
(3)上記実施形態1、2では、第1信号処理部160をアンプ161と、ADコンバータ163とから構成した。第1信号処理部160は、2つの電圧入力端子を有し、2つの電圧入力端子の電圧差からバッテリ20の電流を検出するものであれば、どのような構成でもよい。例えば、アンプとコンパレータでもよい。アンプの出力値からコンパレータを用いて電流の大きさを検出する構成でもよい。
【0085】
(4)上記実施形態1では、抵抗Rgaを、バッテリ20の最大電流Imaxで規定した。抵抗Rgaは、バッテリ20の定格電流で規定してもよい。つまり、第1信号処理部160の入力電圧の許容値Vmを、バッテリ20の定格電流(バッテリ20を安全に使用できる使用限度の電流)で除した値より小さな値としてもよい。抵抗Rgaは、バッテリ20の所定電流で規定することが出来る。所定電流は、バッテリの最大電流や定格電流である。実施形態2の(5)式も同様である。
【0086】
(5)上記実施形態1、2では、管理部130をバッテリ20の内部に設けた。バッテリ20は、組電池30と信号処理回路150を少なくとも有していればよく、管理部130はバッテリ20の外部に設けられていてもよい。
【0087】
(6)上記実施形態1、2では、計測用抵抗器80のグランド接続点Pgを、グランド端子87を介して共通グランドGNDに接続した。計測用抵抗器80のグランド接続点Pgを、ハーネスを使用して、共通グランドGNDに接続してもよい。この場合、グランド接続点Pgに対して、ハーネス端子を固定するビス孔を計測用抵抗器80に設けるとよい。
【0088】
(7)上記実施形態1、2では、計測用抵抗器80にグランド接続点Pgを設けた。グランド接続点は、組電池30の電流経路X上であれば、どこにあってもよい。計測用抵抗器80以外の場所でもよい。
【0089】
(8)上記実施形態1、2では、グランド接続点Pgを、組電池30の負極と抵抗体81との間に設けた。グランド接続点Pgを、抵抗体81と負極の外部端子22Nとの間に設けてもよい。
図9に示すバッテリ200は、電流計測装置250を備えている。電流計測装置250は、計測用抵抗器280、コネクタ100、第1信号処理部160を含む。計測用抵抗器280は、グランド接続点Pgを、抵抗体81と負極の外部端子22Nとの間に設けている。この場合、グランド接続点Pgから検出点Pbまで電流経路Xの抵抗Rgbが実施形態1の(4)式、又は実施形態2の(5)式を満たすとよい。
【0090】
(9)上記実施形態1、2では、計測用抵抗器80に対して、検出端子85A、85Bと並んでグランド端子87を設けた。Rga≦Vm/Imaxを満たせば、グランド端子87は、計測用抵抗器80のどこに設けてもよい。
図10に示す計測用抵抗器380は、
図3に示す計測用抵抗器80に対してグランド端子87の位置が相違しており、計測用抵抗器380の2つの長辺のうち、検出端子85A、85Bが設けられた長辺とは、反対側の長辺にグランド端子87を設けている。グランド端子87は、計測用抵抗器380の短辺に設けてもよい。
【0091】
(10)上記実施形態1、2では、計測用抵抗器80は、組電池30の負極側に配置したが、組電池30の電流経路上であれば、正極側に配置してもよい。
【0092】
(11)
図11は、バッテリ400Aの回路図である。バッテリ400Aは、バッテリ20に対して、計測用抵抗器480のグランドの取り方が相違している。具体的には、計測用抵抗器480は、グランド接続点Pgを、一方の検出点Paと共通にしている。
【0093】
グランド接続点Pgと検出点Paを共通にする場合、共通する2点Pg、点Paは同電位であり、2点Pg、Pa間の電流経路Xの抵抗はゼロである。そのため、共通グランドGNDを基準とした、検出点Pa、Pbの電圧上昇を抑えることが出来るので、アンプ161の入力電圧が飽和することを抑制出来る。
【0094】
(12)
図12は、バッテリ400Bの回路図である。バッテリ400Bは、グランド接続点Pgが検出点Paと共通であることは同じであるが、計測用抵抗器480のグランド線410Gを、アンプ161への入力線410Aとは別に設けている点が、相違する。
【0095】
グランド線410Gを、入力線410Aと別に設けることで、管理部130や信号処理回路150の消費電流Irは、グランド線410Gを通って組電池30に戻り、入力線410Aを通らなくなる。そのため、消費電流Irによる電流計測誤差が無いことから、電流計測精度が高いと言うメリットがある。
【0096】
グランド線410Gを入力線410Aと別に設ける場合、
図13に示すように2つの線410G、410Aを、検出点Paに設けた接続孔485Aに対して、共通接続してもよい。例えば、ビス486等の締結具により、共通接続してもよい。411Aは入力線410Aの端子、411Gはグランド線410Gの端子である。
【0097】
(13)
図14は、計測用抵抗器480の平面図である。計測用抵抗器480は、検出点Paに接続孔485Aを有し、検出点Pbに接続孔485Bを有している。2つの接続孔485A、485Bは、アンプ161に対する入力線410A、410Bの接続用である。2つの接続孔485A、接続孔485Bは、抵抗体81の中心線Lcに対して対称でもよい。2つの接続孔485A、485Bを対称に配置することで、抵抗体81の両端電圧を正確に検出することが出来、電流計測精度が向上する。グランド線410Gは、接続孔485Aに共通接続してもいいし、専用の接続孔485Gを専用に設けて、入力線410Aとは別に接続してもよい。また、計測用抵抗器480は、両端にビス孔84を有しているが、接続孔485A、485Bと共通化して廃止してもよい。
【0098】
(14)
図15は、計測用抵抗器580の平面図である。計測用抵抗器580は、外形がL字型をしており、電流経路Xが直線でない点が計測用抵抗器480と相違する。電流経路Xが直線でない場合、電流経路Xに対して抵抗体81の中心線Lcを傾けることで、中心線Lcに対して2つの接続孔485A、接続孔485Bを対称に配置することが出来る。バスバー取り付け用のビス孔84も同様である。
【符号の説明】
【0099】
20 バッテリ(蓄電装置の一例)
31 二次電池(蓄電素子の一例)
50 電流計測装置
80 計測用抵抗器
81 抵抗体
83A、83B 電極
85A、85B 検出端子
87 グランド端子
90 回路基板
100 コネクタ
130 管理部
160 第1信号処理部(電流検出部)
170 第2信号処理部
Pa、Pb 検出点
Pg グランド接続点