(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】車両用パワーユニット構造
(51)【国際特許分類】
B60K 1/00 20060101AFI20231212BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B60K1/00
B62D25/20 C
(21)【出願番号】P 2022033878
(22)【出願日】2022-03-04
(62)【分割の表示】P 2018159625の分割
【原出願日】2018-08-28
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】村井 大介
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-153229(JP,A)
【文献】特開2011-006050(JP,A)
【文献】特開2015-089806(JP,A)
【文献】特開2015-074435(JP,A)
【文献】国際公開第2013/168227(WO,A1)
【文献】特開2015-137010(JP,A)
【文献】特開2013-230731(JP,A)
【文献】特開2013-103588(JP,A)
【文献】特開2013-017245(JP,A)
【文献】国際公開第2013/073484(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0075035(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第106864231(CN,A)
【文献】中国実用新案第204415115(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00- 1/04
B62D 25/08、25/20
H02K 11/30
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーユニットルーム内に配置され、駆動輪に駆動力を伝達可能とされ
ると共にサスペンションメンバに支持されたモータと、
供給された電力を前記モータに供給可能に変換可能とされ、当該モータの車両上方側に配置された電力変換部と、
電源から供給された電力を前記電力変換部に分配可能とされ、車両前後方向又は車両幅方向から見て前記電力変換部と重なる位置に配置され
ると共に車両側部に対して取り付けられた電力分配部と、
を有
し、
前記電源としての外部電源から電力が供給される充電用の接続部が、前記車両側部の意匠面側の一部を構成するフェンダー部に設けられており、
前記電力分配部が前記電力変換部よりも前記接続部側に配置されると共に、
前記接続部と前記電力分配部とが側部側ワイヤーハーネスで電気的に接続され、
前記電力変換部が、前記モータに固定されている、
車両用パワーユニット構造。
【請求項2】
前記電力分配部は、車両幅方向から見て前記電力変換部と重なる位置に配置されている、
請求項1に記載の車両用パワーユニット構造。
【請求項3】
前記電力分配部は、車両側部の一部を構成する車体構成部材に設けられた取付部に取り付けられている、
請求項1又は請求項2に記載の車両用パワーユニット構造。
【請求項4】
前記取付部は、前記車体構成部材としての一対のサスペンションタワー間に車両幅方向に架け渡されている、
請求項3に記載の車両用パワーユニット構造。
【請求項5】
前記取付部は、前記車体構成部材としての一対のフロントサイドメンバ間に車両幅方向に架け渡されている、
請求項3に記載の車両用パワーユニット構造。
【請求項6】
前記一対のフロントサイドメンバには、それぞれ車両幅方向内側に突出すると共に前記取付部の取り付けに用いられる軸部が設けられており、
前記取付部には、前記軸部が当該軸部の軸方向に挿通された被挿通部と、当該被挿通部と隣接して設けられると共に当該取付部に所定値以上の大きさの車両後方側への荷重が作用したときに塑性変形して前記軸部と当該被挿通部との車両前後方向の相対変位を許容するヒューズ部と、が設けられている、
請求項5に記載の車両用パワーユニット構造。
【請求項7】
前記モータの車両上方側にはモータ側コネクタが設けられており、
前記電力変換部の車両下方側には前記モータ側コネクタと電気的に接続可能な電力変換部側コネクタが設けられている、
請求項
1に記載の車両用パワーユニット構造。
【請求項8】
前記電力変換部と前記電力分配部とがパワーユニット側ワイヤーハーネスで電気的に接続されている、
請求項1~請求項
7の何れか1項に記載の車両用パワーユニット構造。
【請求項9】
前記電力変換部の車両上方側には、車両幅方向から見て前記電力分配部と重なる位置に当該電力分配部から電力を供給可能とされた水加熱ヒータが配置されている、
請求項1~請求項
8の何れか1項に記載の車両用パワーユニット構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用パワーユニット構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、モータルーム構造に関する発明が開示されている。このモータルーム構造では、モータの車両上方側に、電源からの電力を変換してモータに供給するインバータ(電力変換部)が配置されている。
【0003】
一方、下記特許文献2に記載された電気自動車の強電ボックス構造では、インバータの車両上方側にジャンクションボックス(電力分配部)が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-20628号公報
【文献】特開平9-277840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、モータ、インバータ及びジャンクションボックスを配置するにあたって、上記特許文献1に記載の先行技術に上記特許文献2に記載の先行技術を適用した構成を採用すると、モータ、インバータ及びジャンクションボックスが全て車両上下方向に連なって配置されることとなる。
【0006】
しかしながら、モータ、インバータ及びジャンクションボックスが全て車両上下方向に連なって配置されると、これらが納まるパワーユニットルームが車両上下方向に大きくなることが考えられる。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、パワーユニットルーム内にモータ、電力変換部及び電力分配部を配置しても、パワーユニットルームが車両上下方向に大きくなることを抑制することができる車両用パワーユニット構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明に係る車両用パワーユニット構造は、パワーユニットルーム内に配置され、駆動輪に駆動力を伝達可能とされると共にサスペンションメンバに支持されたモータと、供給された電力を前記モータに供給可能に変換可能とされ、当該モータの車両上方側に配置された電力変換部と、電源から供給された電力を前記電力変換部に分配可能とされ、車両前後方向又は車両幅方向から見て前記電力変換部と重なる位置に配置されると共に車両側部に対して取り付けられた電力分配部と、を有し、前記電源としての外部電源から電力が供給される充電用の接続部が、前記車両側部の意匠面側の一部を構成するフェンダー部に設けられており、前記電力分配部が前記電力変換部よりも前記接続部側に配置されると共に、前記接続部と前記電力分配部とが側部側ワイヤーハーネスで電気的に接続され、前記電力変換部が、前記モータに固定されている。
【0009】
請求項1に記載の本発明によれば、電源から供給された電力が電力分配部によって電力変換部に分配される。また、電力変換部に電力分配部から供給された電力は、パワーユニットルーム内に配置されたモータに供給可能となるように電力変換部で変換される。そして、電力変換部から電力を供給されたモータが駆動することで、駆動輪に駆動力が伝達されて当該駆動輪が駆動する。
【0010】
ところで、モータ、電力変換部及び電力分配部が全て車両上下方向に連なって配置されると、これらを納めるのに必要なスペースが車両上下方向に大きくなることが考えられる。
【0011】
ここで、本発明では、電力変換部がモータの車両上方側に配置されると共に、電力分配部が、車両前後方向又は車両幅方向から見て電力変換部と重なる位置に配置されている。このため、モータ、電力変換部及び電力分配部が全て車両上下方向に連なって配置された構成に比し、電力分配部と電力変換部とが重なっている分だけ、モータ、電力変換部及び電力分配部を納めるのに必要なスペースが車両上下方向に大きくなることを抑制することができる。
また、本発明によれば、外部電源から電力が供給される充電用の接続部が車両側部の意匠面側の一部を構成するフェンダー部に設けられている。また、接続部と電力分配部とが側部側ワイヤーハーネスで電気的に接続されている。ここで、本発明では、電力分配部が電力変換部よりも接続部側に配置されており、電力分配部と電力変換部とが車両上下方向に連なって配置されている構成に比し、側部側ワイヤーハーネスを短くすることができる。
さらに、本発明によれば、電力変換部がモータに固定されており、電力変換部及びモータがサブアッセンブリ化された状態で、これらを車体に取り付けることができる。
【0012】
請求項2に記載の本発明に係る車両用パワーユニット構造は、請求項1に記載の発明において、前記電力分配部は、車両幅方向から見て前記電力変換部と重なる位置に配置されている。
【0013】
請求項2に記載の本発明によれば、電力分配部が車両幅方向から見て電力変換部と重なる位置に配置されているため、電力分配部と電力変換部とが重なっている分だけ、モータ、電力変換部及び電力分配部を納めるのに必要なスペースが車両前後方向に大きくなることを抑制することができる。
【0014】
請求項3に記載の本発明に係る車両用パワーユニット構造は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記電力分配部は、車両側部の一部を構成する車体構成部材に設けられた取付部に取り付けられている。
【0015】
請求項3に記載の本発明によれば、電力分配部が、取付部を介して、車両側部の一部を構成する車体構成部材に支持される。
【0016】
請求項4に記載の本発明に係る車両用パワーユニット構造は、請求項3に記載の発明において、前記取付部は、前記車体構成部材としての一対のサスペンションタワー間に車両幅方向に架け渡されている。
【0017】
請求項4に記載の本発明によれば、取付部が一対のサスペンションタワー間に車両幅方向に架け渡されており、当該取付部によってこれらのサスペンションタワーが車両幅方向に連結される。このため、車両の走行時等において、サスペンションタワー同士の車両幅方向の相対変位が抑制され、その結果、車体の捩れが抑制される。
【0018】
請求項5に記載の本発明に係る車両用パワーユニット構造は、請求項3に記載の発明において、前記取付部は、前記車体構成部材としての一対のフロントサイドメンバ間に車両幅方向に架け渡されている。
【0019】
請求項5に記載の本発明によれば、一対のフロントサイドメンバ間に取付部が車両幅方向に架け渡されている。このため、フロントサイドメンバが車両前方側からの衝突荷重によって潰れ変形するときに、取付部でフロントサイドメンバ同士の車両幅方向の相対変位が抑制される。その結果、フロントサイドメンバが潰れ変形するときに当該フロントサイドメンバが車両幅方向に折れ変形することを抑制することができる。
【0020】
請求項6に記載の本発明に係る車両用パワーユニット構造は、請求項5に記載の発明において、前記一対のフロントサイドメンバには、それぞれ車両幅方向内側に突出すると共に前記取付部の取り付けに用いられる軸部が設けられており、前記取付部には、前記軸部が当該軸部の軸方向に挿通された被挿通部と、当該被挿通部と隣接して設けられると共に当該取付部に所定値以上の大きさの車両後方側への荷重が作用したときに塑性変形して前記軸部と当該被挿通部との車両前後方向の相対変位を許容するヒューズ部と、が設けられている。
【0021】
請求項6に記載の本発明によれば、一対のフロントサイドメンバのそれぞれに車両幅方向内側に突出した軸部が設けられており、当該軸部には、電力分配部が取り付けられた取付部が取り付けられている。
【0022】
ところで、フロントサイドメンバが車両前方側からの衝突荷重によって潰れ変形するときに、フロントサイドメンバにおける取付部の取付箇所では、当該フロントサイドメンバが潰れ変形しにくくなることが考えられる。
【0023】
ここで、本発明では、取付部に被挿通部が設けられており、当該被挿通部にはフロントサイドメンバに設けられた軸部が挿通されている。また、取付部には、被挿通部と隣接してヒューズ部が設けられている。そして、取付部に所定値以上の車両後方側への荷重が作用すると、ヒューズ部が塑性変形し、軸部と被挿通部との車両前後方向の相対変位が許容され、ひいてはフロントサイドメンバと取付部との相対変位が許容される。
【0024】
このため、フロントサイドメンバが車両前方側からの衝突荷重によって潰れ変形するときに、当該潰れ変形が軸部が設けられている箇所まで達しても、取付部は車両後方側に変位し、当該取付部が当該潰れ変形に対する抵抗となることを抑制することができる。
【0029】
請求項7に記載の本発明に係る車両用パワーユニット構造は、請求項1に記載の発明において、前記モータの車両上方側にはモータ側コネクタが設けられており、前記電力変換部の車両下方側には前記モータ側コネクタと電気的に接続可能な電力変換部側コネクタが設けられている。
【0030】
請求項7に記載の本発明によれば、電力変換部をモータに固定するときに、モータの車両上方側のモータ側コネクタと電力変換部の車両下方側の電力変換部側コネクタとを結合することで、モータと電力変換部とを電気的に接続することができる。
【0031】
請求項8に記載の本発明に係る車両用パワーユニット構造は、請求項1~請求項7の何れか1項に記載の発明において、前記電力変換部と前記電力分配部とがパワーユニット
側ワイヤーハーネスで電気的に接続されている。
【0032】
請求項8に記載の本発明によれば、電力変換部と電力分配部とがパワーユニット側ワイヤーハーネスで電気的に接続されているので、電力変換部の振動モードと電力分配部の振動モードとが異なっていても、電力変換部と電力分配部との電気的な接続状態を安定した状態で維持することができる。
【0033】
請求項9に記載の本発明に係る車両用パワーユニット構造は、請求項1~請求項8の何れか1項に記載の発明において、前記電力変換部の車両上方側には、車両幅方向から見て前記電力分配部と重なる位置に当該電力分配部から電力を供給可能とされた水加熱ヒータが配置されている。
【0034】
請求項9に記載の本発明によれば、水加熱ヒータに電力が供給されて当該水加熱ヒータが駆動されることで、車室内側に送風される空気を暖めることができる。また、本発明では、水加熱ヒータが車両幅方向から見て電力分配部と重なる位置に配置されている。これにより、水加熱ヒータを電力分配部の車両上方側に配置するような構成に比し、モータ、電力変換部、電力分配部及び水加熱ヒータを納めるのに必要なスペースが車両上下方向に大きくなることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係る車両用パワーユニット構造は、パワーユニットルーム内にモータ、電力変換部及び電力分配部を配置しても、パワーユニットルームが車両上下方向に大きくなることを抑制することができるという優れた効果を有する。
また、本発明に係る車両用パワーユニット構造は、パワーユニットルームが車両上下方向に大きくなることを抑制しつつ、外部電源の充電用の接続部から電力分配部に電力が供給されるまでに発生する電力損失を低減することができるという優れた効果を有する。
さらに、本発明に係る車両用パワーユニット構造は、パワーユニットルームが
車両上下方向に大きくなることを抑制しつつ、パワーユニットルーム内にモータ及び電力変換部を配置するときの工数を低減することができるという優れた効果を有する。
【0036】
請求項2に記載の本発明に係る車両用パワーユニット構造は、パワーユニットルーム内にモータ、電力変換部及び電力分配部を配置しても、パワーユニットルームが車両前後方向に大きくなることを抑制することができるという優れた効果を有する。
【0037】
請求項3に記載の本発明に係る車両用パワーユニット構造は、安定した状態で電力分配部を支持することができるという優れた効果を有する。
【0038】
請求項4に記載の本発明に係る車両用パワーユニット構造は、車両の走行時等において電力分配部が車体の変形から受ける影響を低減することができるという優れた効果を有する。
【0039】
請求項5に記載の本発明に係る車両用パワーユニット構造は、電力分配部を安定した状態で支持しつつ、フロントサイドメンバの衝撃吸収性能を確保することができるという優れた効果を有する。
【0040】
請求項6に記載の本発明に係る車両用パワーユニット構造は、電力分配部を安定した状態で支持しつつ、フロントサイドメンバの車両前方側からの衝突荷重に対する潰れ代を確保することができるという優れた効果を有する。
【0043】
請求項7に記載の本発明に係る車両用パワーユニット構造は、モータと電力変換部との組付作業の工数を低減することができるという優れた効果を有する。
【0044】
請求項8に記載の本発明に係る車両用パワーユニット構造は、電力分配部から電力変換部に安定して電力を供給することができるという優れた効果を有する。
【0045】
請求項9に記載の本発明に係る車両用パワーユニット構造は、パワーユニットルーム内にモータ、電力変換部及び電力分配部に加えて水加熱ヒータを配置しても、パワーユニットルームが車両上下方向に大きくなることを抑制することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】第1実施形態に係る車両用パワーユニット構造が適用されたパワーユニット及び車体前部の構成を示す車両後方側から見た背面図である。
【
図2】第1実施形態に係る車両用パワーユニット構造が適用されたパワーユニットの構成を示す車両幅方向外側から見た側面図(
図1の2方向矢視図)である。
【
図3】第1実施形態に係る車両用パワーユニット構造が適用されたパワーユニットにおける各構成要素の電気的な接続状態を示す車両後方側から見た背面図である。
【
図4】第1実施形態に係る車両用パワーユニット構造が適用されたパワーユニット並びにその周辺に配置された各構成要素の電気的な接続状態を示すブロック図である。
【
図5】第1実施形態に係る車両用パワーユニット構造が適用されたパワーユニットにおけるモータと電力変換部との関係を示す車両後方外側から見た斜視図(
図7の5方向矢視図)である。
【
図6】第1実施形態に係る車両用パワーユニット構造が適用されたパワーユニットにおけるモータと電力変換部との関係を示す車両後方外側から見た部分断面図(
図5の6-6線に沿って切断した状態を示す断面図)である。
【
図7】第1実施形態に係る車両用パワーユニット構造が適用されたパワーユニット及び車体前部の構成を示す車両前方外側から見た斜視図である。
【
図8】第2実施形態に係る車両用パワーユニット構造が適用されたパワーユニット及び車体前部の構成を示す車両後方側から見た背面図である。
【
図9】第2実施形態に係る車両用パワーユニット構造が適用されたパワーユニットのマウントとフロントサイドメンバとの連結状態を示す車両幅方向内側から見た側面図(
図8の9方向矢視図)である。
【
図10】第3実施形態に係る車両用パワーユニット構造が適用されたパワーユニット及び車体前部の構成を示す車両後方側から見た背面図である。
【
図11】第4実施形態に係る車両用パワーユニット構造が適用されたパワーユニット及び車体前部の構成を示す車両後方側から見た背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
<第1実施形態>
以下、
図1~
図7を用いて、本発明に係る車両用パワーユニット構造の第1実施形態について説明する。なお、各図に適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印RHは車両幅方向右側を示している。
【0048】
まず、
図7を用いて、本実施形態に係る車両用パワーユニット構造が適用されたパワーユニット10が配置された「パワーユニットルーム12」を有する車体14の車両前方側の部分を構成する車体前部16の構成について説明する。
【0049】
車体前部16は、車体構成部材としての一対の「フロントサイドメンバ18」、バンパリインフォースメント20(以下、バンパR/F20と称する)、サスペンションメンバ22及びダッシュパネル24を備えている。
【0050】
フロントサイドメンバ18は、「車両26」における「車両側部28」の一部を構成しており、パワーユニットルーム12の車両幅方向外側に配置されている。このフロントサイドメンバ18は、車両前後方向に延びる前部18Aと、前部18Aの車両後方側の部分から車両後方側に向かって下り勾配で傾斜して延びるキック部18Bとを含んで構成されている。
【0051】
より詳しくは、前部18Aは、
図1にも示されるように、その車両幅方向外側の部分を構成する前部アウタ30と、その車両幅方向内側の部分を構成する前部インナ32とを含んで構成されると共に、車両前後方向から見た断面形状が略矩形枠状とされた閉断面構造とされている。
【0052】
バンパR/F20は、フロントサイドメンバ18の車両前方側にその長手方向を車両幅方向とされて配置されており、その長手方向から見た断面形状が車両上下方向に2分割された矩形枠状とされたアルミニウム合金の押し出し材によって構成されている。このバンパR/F20は、その両端部がクラッシュボックス34を介してフロントサイドメンバ18の車両前方側の端部に連結されており、バンパR/F20は、一対のフロントサイドメンバ18間に車両幅方向に架け渡された状態となっている。
【0053】
サスペンションメンバ22は、その主な部分を構成するサスメン本体部22Aと、一対の延出部22Bとを含んで構成されている。サスメン本体部22Aは、車両上下方向から見て略矩形状に構成されており、その車両後方側の部分が、図示しない取付部材でフロントサイドメンバ18の前部18Aにおける車両後方側の部分に取り付けられている。
【0054】
また、サスメン本体部22Aの車両幅方向外側の部分には、それぞれ図示しないサスペンションアームが取り付けられている。なお、サスペンションアームの先端部には、図示しないショックアブソーバの車両下方側の端部が連結されている。
【0055】
延出部22Bは、サスメン本体部22Aの車両前方側の部分から車両前方側に延出されており、その先端側の部分が、図示しない取付部材でフロントサイドメンバ18の前部18Aにおける車両前方側の部分に取り付けられている。
【0056】
一方、フロントサイドメンバ18の車両幅方向外側には、それぞれ車両上下方向に延びるフロントピラー36が配置されている。なお、フロントピラー36は、その車両下方側において、トルクボックス部38を介して、フロントサイドメンバ18のキック部18Bと繋がっている。そして、フロントサイドメンバ18の車両後方側でかつフロントサイドメンバ18間には、ダッシュパネル24が配置されている。
【0057】
ダッシュパネル24は、車両幅方向及び車両上下方向に延在するプレス成型部材であり、板厚方向を車両前後方向として配置されている。このダッシュパネル24は、車両幅方向外側の端部がフロントピラー36に、車両前方側の面がフロントサイドメンバ18のキック部18Bにそれぞれ溶接等による図示しない接合部で接合されている。
【0058】
なお、本実施形態において、パワーユニットルーム12は、車両上下方向から見てバンパR/F20、フロントサイドメンバ18及びダッシュパネル24で仕切られた空間と見なすことができる。
【0059】
一方、
図1に示されるように、それぞれのフロントサイドメンバ18の車両幅方向外側には、車両側部28の一部を構成する車体構成部材としての「サスペンションタワー40」が配置されている。
【0060】
サスペンションタワー40は、サスタワー本体部40Aと縦壁部40Bとを含んで構成されたプレス成形部材とされている。サスタワー本体部40Aは、サスペンションタワー40の主な部分を構成しており、車両下方側が開放されると共に、その内側に上述したショックアブソーバ及び当該ショックアブソーバに取り付けられた図示しないスプリングの一部を収容可能な箱状又は筒状に構成されている。なお、サスタワー本体部40Aの車両上方側の部分には、ショックアブソーバの車両上方側の端部が連結されている。
【0061】
縦壁部40Bは、サスタワー本体部40Aの車両幅方向内側の部分から車両下方側に延びており、その車両下方側の端部がフロントサイドメンバ18の前部18Aにおける車両上方側の部分に図示しない溶接等による図示しない接合部で接合されている。
【0062】
ここで、本実施形態では、
図1及び
図2に示されるように、パワーユニット10を構成する「モータ42」、「電力分配部44」、「水加熱ヒータ46」及び電力変換部としての「DC/ACインバータ48(以下、インバータ48と称する)」の配置に第1の特徴がある。また、電力分配部44及び水加熱ヒータ46が取り付けられた「取付部50」の構成に第2の特徴がある。以下、本実施形態の要部を構成するパワーユニット10及び取付部50の構成について詳細に説明することとする。
【0063】
モータ42は、その外殻を構成するハウジング52を備えており、ハウジング52の内側には、それぞれ図示しないモータ本体部、カウンタギア機構及びディファレンシャルギア機構が配置されている。モータ本体部は、電力が供給されることで駆動されるようになっており、当該モータ本体部の駆動力は、カウンタギア機構及びディファレンシャルギア機構を介して一対の駆動軸54に伝達されて「駆動輪56(前輪)」を駆動させるようになっている。
【0064】
また、ハウジング52は、その車両幅方向左側の部分を構成する第1収容部52Aと、その車両幅方向右側の部分を構成する第2収容部52Bとを含んで構成されている。そして、第1収容部52Aの内側には、モータ本体部及びディファレンシャルギア機構の主な部分が納まっており、第2収容部52Bの内側には、カウンタギア機構の主な部分が納まっている。
【0065】
このハウジング52の車両幅方向両側には、それぞれマウントブラケット58が設けられている。このマウントブラケット58は、ハウジング52に図示しない取付部材で取り付けられた取付部58Aと、サスメン本体部22Aに支持された支持部58Bとを含んで構成されている。また、支持部58Bには、車両上下方向に貫通された貫通部60が形成されており、当該貫通部60にはゴム等の弾性体で構成されたブシュ62が取り付けられている。そして、マウントブラケット58が、ブシュ62を介してサスメン本体部22Aに取り付けられることで、モータ42がサスペンションメンバ22に支持された状態となっている。
【0066】
一方、電力分配部44は、モータ42の第2収容部52Bの車両上方側に配置されており、インバータ48は、モータ42の第1収容部52Aの車両上方側に配置されており、水加熱ヒータ46は、インバータ48の車両上方側に配置されている。
【0067】
詳しくは、電力分配部44は、外形が略直方体状の箱状とされたハウジング62と、当該ハウジング62の内側に内蔵された図示しない複数の電子機器、すなわち、高圧ジャンクションボックス、DC充電リレー、AC充電器及びDC/DCインバータを備えている。この電力分配部44は、
図3及び
図4に示されるように、接続部としての「充電ポート64」に側部側ワイヤーハーネスとしての「ワイヤーハーネス66」を介して電気的に接続されている。
【0068】
また、本実施形態では、一例として、充電ポート64が、車両幅方向右側の車両側部28において意匠面側の一部を構成する「フェンダー部68」に設けられている。そして、電力分配部44がインバータ48よりも充電ポート64側、すなわち、車両幅方向右側に配置されている。
【0069】
また、電力分配部44は、インバータ48とパワーユニット側ワイヤーハーネスとしての「ワイヤーハーネス70」を介して、水加熱ヒータ46とワイヤーハーネス72を介して、それぞれ電気的に接続されている。さらに、電力分配部44は、図示しない充電スタンド等の外部電源から充電ポート64を介して供給された電力を、電源としての「メインバッテリ74(内部電源)」に供給(分配)するようになっている。そして、メインバッテリ74に蓄えられた電力は、電力分配部44によって、インバータ48及び水加熱ヒータ46に分配可能とされている。
【0070】
さらに、電力分配部44は、エアコンコンプレッサ76、車両後方側に配置された電力変換部としての「DC/ACインバータ78(以下、インバータ78と称する)」にも電力を分配可能とされている。
【0071】
一方、水加熱ヒータ46は、外形がハウジング62よりも小さい箱状とされたハウジング80と、当該ハウジング80の内側に内蔵された図示しない複数の電子機器とを含んで構成されると共に、車室内側に送風される空気を暖めることが可能とされている。
【0072】
詳しくは、水加熱ヒータ46は、電力が供給されて駆動されることで、図示しないヒータコアに接続された配管内をヒータコアに向かって流れる水(熱媒体)を暖めることが可能とされている。そして、図示しないブロアからヒータコアを経由して車室内側に送風されることで、車室内に温風を送ることが可能とされている。また、水加熱ヒータ46は、
図2に示されるように、車両幅方向から見て、電力分配部44と重なる位置、より具体的には、水加熱ヒータ46の外周が全て電力分配部44の外周の内側に納まる位置に配置されている。
【0073】
インバータ48は、外形がハウジング62よりも小さく、ハウジング80よりも大きい箱状とされたハウジング82と、当該ハウジング82の内側に内蔵された図示しない複数の電子機器とを含んで構成されると共に、供給された電力をモータ42に供給可能に変換可能とされている。詳しくは、インバータ48は、メインバッテリ74等からの直流電流を交流電流に変換し、モータ42に流すことが可能とされている。なお、インバータ78もインバータ48と同様の構成とされており、インバータ78は、供給された電力を、車両後方側の図示しない駆動輪(後輪)に駆動力を伝達可能なモータ84に供給可能に変換可能とされている。
【0074】
図5にも示されるように、インバータ48は、ハウジング52の第1収容部52Aの車両上方側の部分を構成する上壁部52A1に取り付けられている。詳しくは、上壁部52A1は、車両後方側から車両前方側に向かって下り勾配に傾斜しており、インバータ48は、上壁部52A1に沿って配置されると共に、ハウジング82の四隅がボルト86(締結部材)でハウジング52に固定されている(
図6参照)。なお、
図5では、便宜上、モータ42及びインバータ48の断面に、これらの内部を図示していない。
【0075】
そして、上述した電力分配部44は、車両幅方向から見て、その車両下方側の部分が、インバータ48の車両上方側の部分と重なる位置に配置されている。これは、電力分配部44の一部が、インバータ48の一部と、車両上下方向において同じ高さに位置していると見なすこともできる。
【0076】
また、
図6に示されるように、インバータ48の車両下方側には、モータ側コネクタとしての「コネクタ88」が設けられており、コネクタ88は、インバータ48のハウジング82内の電子機器と電気的に接続されている。一方、モータ42のハウジング52における上壁部52A1には、凹部90が設けられており、凹部90の内側には、スペーサ92を介して電力分配部側コネクタとしての「コネクタ94」が固定されている。このコネクタ94は、ハウジング52内の電子機器と電気的に接続されていると共に、コネクタ88に結合されることで、当該コネクタ88と電気的に接続可能とされている。
【0077】
次に、取付部50の構成について説明することとする。
図1に示されるように、取付部50は、本体部96と補強板部98とを備えている。本体部96は、金属製の板材が複数箇所で折り曲げられて構成されており、電力分配部44が載置される載置部96Aと、水加熱ヒータ46が載置される載置部96Bと、一対の取付片部96Cとを含んで構成されている。
【0078】
載置部96Aは、板厚方向を車両上下方向とされると共に車両幅方向及び車両前後方向に延びる板状とされており、その車両下方側の面には図示しない複数のウエルドナットが設けられている。そして、電力分配部44は、載置部96Aに載置された状態で、車両上方側からハウジング62に挿通された図示しないボルト等の締結部材が載置部96Aのウエルドナットに締結されることで、載置部96Aに固定されている。
【0079】
一方、載置部96Bは、板厚方向を車両上下方向とされると共に車両幅方向及び車両前後方向に延びる板状とされており、その車両下方側の面には図示しない複数のウエルドナットが設けられている。また、載置部96Bは、載置部96Aに対して車両幅方向右側でかつ車両上方側に配置されている。そして、水加熱ヒータ46は、載置部96Bに載置された状態で、車両上方側からハウジング80に挿通された図示しないボルト等の締結部材が載置部96Bのウエルドナットに締結されることで、載置部96Bに固定されている。なお、載置部96Bの車両幅方向内側の周縁部は、当該周縁部から車両幅方向内側でかつ車両下方側に延びる接続部96Dで載置部96Aの車両幅方向内側の周縁部と繋がれている。また、接続部96Dには、ワイヤーハーネス70が挿通される図示しない被挿通部が設けられている。
【0080】
取付片部96Cは、それぞれ板厚方向を車両幅方向とされると共に車両上下方向及び車両前後方向に延びる板状とされており、図示しない複数の被挿通部が形成されている。また、車両幅方向右側の取付片部96Cの車両下方側の周縁部は、当該周縁部から車両幅方向内側でかつ車両下方側に延びる接続部96Eで載置部96Aの車両幅方向外側の周縁部と繋がれている。一方、車両幅方向左側の取付片部96Cの車両上方側の周縁部は、当該周縁部から車両幅方向内側でかつ車両下方側に延びる接続部96Fで載置部96Bの車両幅方向外側の周縁部と繋がれている。
【0081】
補強板部98は、車両前後方向から見て車両上方側から車両下方側に向かうに従って拡幅された台形の板状とされている。この補強板部98は、その車両幅方向内側の周縁部が接続部96Fの車両下方側の面に溶接等による図示しない接合部で接合されており、その車両幅方向外側の周縁部が車両幅方向左側の取付片部96Cの車両幅方向内側の面に溶接等による図示しない接合部で接合されている。
【0082】
一方、サスペンションタワー40の縦壁部40Bには、当該縦壁部40Bと一体に、板厚方向を車両幅方向とされると共に車両上下方向及び車両前後方向に延びる取付壁部40B1が設けられている。また、取付壁部40B1の車両幅方向外側の面には、取付片部96Cの被挿通部に対応する図示しないウエルドナットが設けられている。そして、ボルト100(締結部材)が、車両幅方向内側から取付片部96Cの被挿通部に挿通されて取付壁部40B1のウエルドナットに締結されることで、取付部50が一対のサスペンションタワー40間に車両幅方向に架け渡された状態で当該サスペンションタワー40に固定されている。
【0083】
なお、取付部50がサスペンションタワー40に取り付けられた状態において、取付部50の車両下方側の面と水加熱ヒータ46及びモータ42との間には、所定の隙間が確保されており、車両26の走行時等において、取付部50と水加熱ヒータ46及びモータ42とが干渉しないようになっている。
【0084】
(本実施形態の作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果を説明する。
【0085】
本実施形態では、
図3及び
図4に示されるように、充電スタンド等の外部電源やメインバッテリ74等の内部電源から供給された電力が電力分配部44によってインバータ48に分配される。また、インバータ48に電力分配部44から供給された電力は、パワーユニットルーム12内に配置されたモータ42に供給可能となるようにインバータ48で変換される。そして、インバータ48から電力を供給されたモータ42が駆動することで、駆動輪56に駆動力が伝達されて駆動輪56が駆動する。
【0086】
ところで、モータ42、インバータ48及び電力分配部44が全て車両上下方向に連なって配置されると、これらを納めるのに必要なスペースが車両上下方向に大きくなることが考えられる。
【0087】
ここで、本実施形態では、
図1及び
図2に示されるように、インバータ48がモータ42の車両上方側に配置されると共に、電力分配部44が、車両幅方向から見てインバータ48と重なる位置に配置されている。このため、モータ42、インバータ48及び電力分配部44が全て車両上下方向に連なって配置された構成に比し、電力分配部44とインバータ48とが重なっている分だけ、モータ42、インバータ48及び電力分配部44を納めるのに必要なスペースが車両上下方向に大きくなることを抑制することができる。
【0088】
したがって、本実施形態では、パワーユニットルーム12内にモータ42、インバータ48及び電力分配部44を配置しても、パワーユニットルーム12が車両上下方向に大きくなることを抑制することができる。その結果、車両26の前部において、車高が高くなることを抑制し、車両26の意匠性の向上に寄与することができる。
【0089】
また、本実施形態では、電力分配部44が車両幅方向から見てインバータ48と重なる位置に配置されているため、電力分配部44とインバータ48とが重なっている分だけ、モータ42、インバータ48及び電力分配部44を納めるのに必要なスペースが車両前後方向に大きくなることを抑制することができる。その結果、パワーユニットルーム12内にモータ42、インバータ48及び電力分配部44を配置しても、パワーユニットルーム12が車両前後方向に大きくなることを抑制することができる。
【0090】
また、本実施形態では、電力分配部44が、取付部50を介して、車両側部28の一部を構成するサスペンションタワー40に支持されるため、安定した状態で電力分配部44を支持することができる。
【0091】
また、本実施形態では、取付部50が一対のサスペンションタワー40間に車両幅方向に架け渡されており、取付部50によってこれらのサスペンションタワー40が車両幅方向に連結される。このため、車両26の走行時等において、サスペンションタワー40同士の車両幅方向の相対変位が抑制され、その結果、車体14の捩れが抑制される。すなわち、取付部50が車体14のスタビライザとして機能する。したがって、車両26の走行時等において電力分配部44が車体14の変形から受ける影響を低減することができる。
【0092】
また、本実施形態では、
図3に示されるように、外部電源から電力が供給される充電用の充電ポート64が車両側部28の意匠面側の一部を構成するフェンダー部68に設けられている。また、充電ポート64と電力分配部44とがワイヤーハーネス66で電気的に接続されている。ここで、本実施形態では、電力分配部44がインバータ48よりも充電ポート64側に配置されており、電力分配部44とインバータ48とが車両上下方向に連なって配置されている構成に比し、ワイヤーハーネス66を短くすることができる。したがって、パワーユニットルーム12が車両上下方向に大きくなることを抑制しつつ、充電ポート64から電力分配部44に電力が供給されるまでに発生する電力損失を低減することができる。
【0093】
また、本実施形態では、インバータ48がモータ42に固定されており、インバータ48及びモータ42がサブアッセンブリ化された状態で、これらを車体14に取り付けることができる。その結果、パワーユニットルーム12が車両上下方向に大きくなることを抑制しつつ、パワーユニットルーム12内にモータ42及びインバータ48を配置するときの工数を低減することができる。
【0094】
また、本実施形態では、
図6に示されるように、インバータ48をモータ42に固定するときに、モータ42の車両上方側のコネクタ88とインバータ48の車両下方側のコネクタ94とを結合することで、モータ42とインバータ48とを電気的に接続することができる。その結果、モータ42とインバータ48との組付作業の工数を低減することができる。
【0095】
また、本実施形態では、
図3に示されるように、インバータ48と電力分配部44とがワイヤーハーネス70で電気的に接続されている。
【0096】
ところで、インバータ48は、サスペンションメンバ22に支持されたモータ42に取り付けられると共に、電力分配部44はサスペンションタワー40に固定された取付部50に固定されているため、車両26の走行時等において、インバータ48と電力分配部44とで振動モードが異なることが考えられる。この点、本実施形態では、上述したように、インバータ48と電力分配部44とがワイヤーハーネス70で電気的に接続されているため、インバータ48の振動モードと電力分配部44の振動モードとが異なっていても、インバータ48と電力分配部44との電気的な接続状態を安定した状態で維持することができる。その結果、電力分配部44からインバータ48に安定して電力を供給することができる。
【0097】
加えて、本実施形態では、水加熱ヒータ46に電力が供給されて水加熱ヒータ46が駆動されることで、車室内側に送風される空気を暖めることができる。また、本実施形態では、水加熱ヒータ46が車両幅方向から見て電力分配部44と重なる位置に配置されている。これにより、水加熱ヒータ46を電力分配部44の車両上方側に配置するような構成に比し、モータ42、インバータ48、電力分配部44及び水加熱ヒータ46を納めるのに必要なスペースが車両上下方向に大きくなることを抑制することができる。その結果、パワーユニットルーム12内にモータ42、インバータ48及び電力分配部44に加えて水加熱ヒータ46を配置しても、パワーユニットルーム12が車両上下方向に大きくなることを抑制することができる。
【0098】
<第2実施形態>
以下、
図8及び
図9を用いて、本発明に係る車両用パワーユニット構造の第2実施形態について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一構成部分については同一番号を付してその説明を省略する。
【0099】
本実施形態に係るパワーユニット110は、基本的に第1実施形態に係るパワーユニット10と同様の構成とされているものの、電力分配部44及び水加熱ヒータ46を支持する「取付部112」がフロントサイドメンバ18に取り付けられている点に特徴がある。
【0100】
具体的には、取付部112は、本体部114と、補強板部116、118とを備えている。本体部114は、基本的に本体部96と同様の構成とされており、電力分配部44が載置される載置部114Aと、水加熱ヒータ46が載置される載置部114Bと、一対の取付片部114Cとを含んで構成されている。
【0101】
取付片部114Cは、それぞれ板厚方向を車両幅方向とされると共に車両上下方向及び車両前後方向に延びる板状とされている。また、車両幅方向右側の取付片部114Cの車両上方側の周縁部は、当該周縁部から車両幅方向内側でかつ車両上方側に延びる接続部114Dで載置部114Aの車両幅方向外側の周縁部と繋がれている。一方、車両幅方向左側の取付片部114Cの車両上方側の周縁部は、当該周縁部から車両幅方向内側でかつ車両下方側に延びる接続部114Eで載置部114Bの車両幅方向外側の周縁部と繋がれている。
【0102】
補強板部116は、接続部114Dと略平行となるように延びる板状とされている。この補強板部116は、その車両幅方向外側の端部が車両幅方向右側の取付片部114Cの車両幅方向内側の面に溶接等による図示しない接合部で接合されており、その車両幅方向内側の端部が載置部114Aの車両下方側の面に溶接等による図示しない接合部で接合されている。
【0103】
一方、補強板部118は、接続部114Eと略平行となるように延びる板状とされている。この補強板部118は、その車両幅方向外側の端部が車両幅方向左側の取付片部114Cの車両幅方向内側の面に溶接等による図示しない接合部で接合されており、その車両幅方向内側の端部が載置部114Bの車両下方側の面に溶接等による図示しない接合部で接合されている。
【0104】
また、取付片部114Cには、
図9に示されるように、車両前後方向に離間する複数箇所にフロントサイドメンバ18の前部18Aから車両幅方向内側に突出した軸部としての「スタッドボルト124」が当該スタッドボルト124の軸方向に挿通された「被挿通部120」が設けられている。
【0105】
この被挿通部120は、車両幅方向から見て取付片部114Cの車両上下方向中央部から取付片部114Cの車両下方側の端部に達するスリット状とされている。そして、被挿通部120の車両上方側の端部にスタッドボルト124が挿通された状態で、スタッドボルト124に車両幅方向内側からナット125が締結されることで、取付部112がフロントサイドメンバ18に取り付けられている。
【0106】
ここで、本実施形態では、取付片部114Cに被挿通部120と隣接して「ヒューズ部126、128」及びスリット部130が設けられている点に特徴がある。
【0107】
詳しくは、被挿通部120は、その車両上方側の端部において、その周縁部における車両前方側の一部が開放されている。そして、被挿通部120の車両上方側の端部における車両前方側には、被挿通部120と連続して車両前後方向に延びるスリット部130が設けられている。このスリット部130は、そのシート上下方向の長さ(幅)がスタッドボルト124を挿通可能な長さに設定されている。
【0108】
ヒューズ部126、128は、被挿通部120とスリット部130との境界部分に車両上下方向に一対となって設けられていると共に、被挿通部120の周縁部の一部を構成している。そして、車両上方側のヒューズ部126は、車両幅方向から見て、車両上方側から車両下方側に向かうにしたがって縮幅された略三角形状とされている。一方、車両下方側のヒューズ部128は、車両幅方向から見て、車両下方側からシート上方側に向かうにしたがって縮幅された略三角形状とされている。
【0109】
そして、ヒューズ部126、128は、スタッドボルト124から所定値以上の大きさの車両前方側への荷重F1が作用すると、塑性変形するようになっており、スタッドボルト124と被挿通部120との車両前後方向の相対変位が許容されるようになっている。
【0110】
上記構成の本実施形態によれば、取付部50がサスペンションタワー40に取り付けられている構成による作用並びに効果を除き、上述した第1実施形態と同様の作用並びに効果を奏する。また、本実施形態では、一対のフロントサイドメンバ18間に取付部112が車両幅方向に架け渡されている。つまり、バンパR/F20、一対のフロントサイドメンバ18及び取付部112でラーメン構造が構成された状態となっている。
【0111】
このため、フロントサイドメンバ18が車両前方側からの衝突荷重F2によって潰れ変形するときに、取付部112でフロントサイドメンバ18同士の車両幅方向の相対変位が抑制される。その結果、フロントサイドメンバ18が潰れ変形するときにフロントサイドメンバ18が車両幅方向に折れ変形することを抑制して、フロントサイドメンバ18を軸圧縮変形させることができる。したがって、電力分配部44を安定した状態で支持しつつ、フロントサイドメンバ18の衝撃吸収性能を確保することができる。
【0112】
また、本実施形態では、一対のフロントサイドメンバ18のそれぞれに車両幅方向内側に突出したスタッドボルト124が設けられており、スタッドボルト124には、電力分配部44が取り付けられた取付部112が取り付けられている。
【0113】
ところで、フロントサイドメンバ18が車両前方側からの衝突荷重F2によって潰れ変形するときに、フロントサイドメンバ18における取付部112の取付箇所では、フロントサイドメンバ18が潰れ変形しにくくなることが考えられる。
【0114】
ここで、本実施形態では、取付部112に被挿通部120が設けられており、被挿通部120にはフロントサイドメンバ18に設けられたスタッドボルト124が挿通されている。また、取付部112には、被挿通部120と隣接してヒューズ部126、128が設けられている。そして、取付部112に所定値以上の車両後方側への荷重F1が作用すると、ヒューズ部126、128がスタッドボルト124から荷重を受けて塑性変形し、スタッドボルト124と被挿通部120との車両前後方向の相対変位が許容され、ひいてはフロントサイドメンバ18と取付部112との相対変位が許容される。
【0115】
このため、フロントサイドメンバ18が車両前方側からの衝突荷重F2によって潰れ変形するときに、当該潰れ変形がスタッドボルト124が設けられている箇所まで達しても、取付部112は車両後方側に変位し、取付部112が当該潰れ変形に対する抵抗となることを抑制することができる。したがって、電力分配部44を安定した状態で支持しつつ、フロントサイドメンバ18の車両前方側からの衝突荷重F2に対する潰れ代を確保することができる。
【0116】
また、本実施形態では、被挿通部120が車両上下方向に延びるスリット状とされている。このため、電力分配部44、水加熱ヒータ46及び取付部112を含んで構成されたサブアッセンブリを車体14に取り付けるときに、被挿通部120及びスタッドボルト124を当該サブアッセンブリのガイドとして用いることができる。
【0117】
<第3実施形態>
以下、
図10を用いて、本発明に係る車両用パワーユニット構造の第3実施形態について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一構成部分については同一番号を付してその説明を省略する。
【0118】
本実施形態に係るパワーユニット140は、基本的に第1実施形態に係るパワーユニット10と同様の構成とされているものの、車両26の仕様によって水加熱ヒータ46を備えていない点に第1の特徴がある。また、電力分配部44が「取付部142」で車両幅方向右側のフロントサイドメンバ18に片持ち状態で取り付けられている点に第2の特徴がある。
【0119】
具体的には、取付部142は、本体部144と、補強板部146とを備えている。本体部144は、載置部96Aと同様の構成とされた載置部144Aと、取付片部144Bとを備えている。
【0120】
取付片部144Bは、それぞれ板厚方向を車両幅方向とされると共に車両上下方向及び車両前後方向に延びる板状とされており、図示しない取付部材や溶接等による接合部によってフロントサイドメンバ18に固定されている。なお、上述した第2実施形態のように、取付片部144Bに被挿通部120、スリット部130及びヒューズ部126、128を設けると共に、フロントサイドメンバ18に設けられたスタッドボルト124を用いて取付片部144Bをフロントサイドメンバ18に取り付ける構成としてもよい。
【0121】
一方、補強板部146は、取付片部144Bの車両下方側の端部から載置部144Aの中央部に向かって延びる板状とされている。この補強板部146は、その車両幅方向外側の端部が取付片部144Bの車両幅方向内側の面に溶接等による図示しない接合部で接合されており、その車両幅方向内側の端部が載置部144Aの車両下方側の面に溶接等による図示しない接合部で接合されている。
【0122】
上記構成の本実施形態によれば、取付部50がサスペンションタワー40に取り付けられている構成及び水加熱ヒータ46による作用並びに効果を除き、上述した第1実施形態と同様の作用並びに効果を奏する。また、本実施形態では、車両26の仕様に応じてパワーユニットルーム12内の構成を簡略化することができる。
【0123】
<第4実施形態>
以下、
図11を用いて、本発明に係る車両用パワーユニット構造の第4実施形態について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一構成部分については同一番号を付してその説明を省略する。
【0124】
本実施形態に係るパワーユニット160は、基本的に第1実施形態に係るパワーユニット10と同様の構成とされているものの、第3実施形態と同様に車両26の仕様によって水加熱ヒータ46を備えていない点に第1の特徴がある。また、電力分配部44が「取付部162」を介してモータ42に取り付けられている点に第2の特徴がある。
【0125】
具体的には、取付部162は、載置部96Aと同様の構成とされた載置板部164と、支持板部166、168と、補強板部170とを含んで構成されている。
【0126】
支持板部166は、載置板部164の車両幅方向内側の端部の車両下方側に配置されており、その板厚方向を車両幅方向とされて車両上下方向に延びている。この支持板部166は、その車両上方側の端部が載置板部164に溶接等による図示しない接合部で接合されており、その車両下方側の端部が図示しない取付部材等でモータ42に取り付けられている。
【0127】
一方、支持板部168は、載置板部164の中央部の車両下方側に配置されており、その板厚方向を車両幅方向とされて車両上下方向に延びている。この支持板部168は、その車両上方側の端部が載置板部164に溶接等による図示しない接合部で接合されており、その車両下方側の端部が図示しない取付部材等でモータ42に取り付けられている。
【0128】
そして、補強板部170は、支持板部168の車両下方側の端部から載置板部164の車両幅方向外側の端部まで延びると共に、支持板部168及び載置板部164に溶接等による図示しない接合部で接合されている。
【0129】
上記構成の本実施形態によれば、取付部50がサスペンションタワー40に取り付けられている構成及び水加熱ヒータ46による作用並びに効果を除き、上述した第1実施形態と同様の作用並びに効果を奏する。また、本実施形態では、上述した第3実施形態と同様に、車両26の仕様に応じてパワーユニットルーム12内の構成を簡略化することができる。さらに、本実施形態では、モータ42、インバータ48及び電力分配部44をサブアッセンブリ化して、これらをパワーユニットルーム12内に配置するときの工数を低減することができる。
【0130】
<上記実施形態の補足説明>
(1) 上述した実施形態では、充電ポート64が車両26の車両幅方向右側に配置されていたが、車両26の仕様等に応じて、充電ポート64は車両26の車両幅方向左側に配置されていてもよい。また、充電ポート64が車両幅方向左側に配置される場合には、電力分配部44がインバータ48の車両上方側に配置されていてもよい。
【0131】
(2) また、上述した実施形態では、電力分配部44が車両幅方向から見てインバータ48と重なる位置に配置されていたが、これに限らない。すなわち、車両26の仕様等に応じて、電力分配部44が車両前後方向から見てインバータ48と重なる位置に配置されていてもよい。さらに、車両26の仕様等に応じてモータ42の小型化が可能である場合には、モータ42と電力分配部44とを車両上下方向から見てこれらが重ならないように配置する構成も採り得る。
【0132】
(3) 加えて、上述した実施形態では、パワーユニットが車体前部16に配置されていたが、これに限らない。例えば、車両26の仕様等に応じて、モータ84及びインバータ78が車体後部の一部を構成するサスペンションメンバで支持されると共に、電力分配部44、水加熱ヒータ46及び取付部50が車体後部の一部を構成するサスペンションタワーに支持される構成とされていてもよい。
【符号の説明】
【0133】
12 パワーユニットルーム
18 フロントサイドメンバ(車体構成部材)
26 車両
28 車両側部
40 サスペンションタワー(車体構成部材)
42 モータ
44 電力分配部
46 水加熱ヒータ
48 DC/ACインバータ(電力変換部)
50 取付部
56 駆動輪
64 充電ポート(接続部)
66 ワイヤーハーネス(側部側ワイヤーハーネス)
68 フェンダー部
70 ワイヤーハーネス(パワーユニット側ワイヤーハーネス)
74 メインバッテリ(電源)
78 DC/ACインバータ(電力変換部)
88 コネクタ(モータ側コネクタ)
94 コネクタ(電力分配部側コネクタ)
112 取付部
120 被挿通部
124 スタッドボルト(軸部)
126 ヒューズ部
128 ヒューズ部
142 取付部
162 取付部