(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】駆動装置、および、これを用いた電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20231212BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2022068080
(22)【出願日】2022-04-18
(62)【分割の表示】P 2018139309の分割
【原出願日】2018-07-25
【審査請求日】2022-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 宏康
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-36244(JP,A)
【文献】特開2009-247066(JP,A)
【文献】特開2011-176999(JP,A)
【文献】特開2016-36245(JP,A)
【文献】特開2017-189033(JP,A)
【文献】特許第7067339(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42- 7/98
B62D 5/00- 5/32
H02P 21/00-27/18
H02K 11/00-11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の巻線組(180、280)が共通のハウジング(830)に設けられるモータ(80)と、
前記巻線組ごとに設けられる複数の駆動回路部(120、220)が実装される基板(30、31、32)と、
前記基板に実装され、前記基板のグランドパターンと、前記ハウジングとを電気的に接続する機電接続コンデンサ(142~144、242~244)と、
を備え、
前記基板において、前記ハウジングと電気的に接続されるハウジング接続パターン(156、157、256、257)は、前記基板の他の配線パターンとは切り離されており、前記機電接続コンデンサは、前記ハウジング接続パターンと、前記基板のグランドパターンとを接続し、
前記ハウジング接続パターンは、前記ハウジングと直接的に面接触している駆動装置。
【請求項2】
複数の前記駆動回路部は、前記ハウジングの軸方向の一方の端部に固定される1枚の前記基板(30)に実装される請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
複数の巻線組(180、280)が共通のハウジング(830)に設けられるモータ(80)と、
前記巻線組ごとに設けられる複数の駆動回路部(120、220)が実装される基板(30、31、32)と、
前記基板に実装され、前記基板のグランドパターンと、前記ハウジングとを電気的に接続する機電接続コンデンサ(142~144、242~244)と、
を備え、
前記基板において、前記ハウジングと電気的に接続されるハウジング接続パターン(194、196、294、296)は、前記基板の他の配線パターンとは切り離されており、前記機電接続コンデンサは、前記ハウジング接続パターンと、前記基板のグランドパターンとを接続し、
前記ハウジング接続パターンは、前記ハウジングと同電位であるヒートシンク(63)と直接的に面接触している駆動装置。
【請求項4】
複数の前記駆動回路部は、前記駆動回路部ごとにモジュール化されたパワーモジュール(160、260)により構成され、前記ヒートシンクに放熱可能に設けられており、
前記基板(31、32)は、前記パワーモジュールおよび前記ヒートシンクを挟んで両側に設けられる請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記ハウジング接続パターンは、表面レジスト層から露出しており、環状部分から前記基板の内側に向いて突出するコンデンサ接続部が設けられている請求項1~
4のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記駆動回路部は、それぞれ別途の電源およびグランドに接続されており、それぞれの前記巻線組に対応する前記駆動回路部、電源およびグランドの組み合わせを系統としたとき、
前記基板に実装され、系統ごとのグランドを電気的に接続する系統間グランド接続コンデンサ(41、411、412)をさらに備える請求項1~
5のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の駆動装置(1)と、
前記モータの駆動を伝達する動力伝達部材(89)と、
を備え、
前記モータは、車両(99)の操舵に要するトルクを出力する電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置、および、これを用いた電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータとECUが一体に形成される駆動装置が知られている。例えば特許文献1では、モータケースおよびフレーム部材を電源グランドラインと接続することで、ノイズをノーマルモードノイズとしてバッテリ側に回収している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、2系統でグランドを共用している。ここで、ECU側において、系統間でグランドを分離する場合、特許文献1のように、モータケースと電源グランドラインとを接続した場合、ノイズが系統間で行き来する虞がある。本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、外部へのノイズの伝搬を低減可能である駆動装置、および、これを用いた電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の参考態様による駆動装置は、モータ(80)と、基板(30、31、32)と、系統間グランド接続コンデンサ(41、411、412)を備える。モータは、複数の巻線組(180、280)が共通のハウジング(830)に設けられる。基板には、それぞれ別途の電源(199、299)およびグランドに接続され、巻線組ごとに設けられる複数の駆動回路部(120、220)が実装される。
【0006】
それぞれの巻線組に対応する駆動回路部、電源およびグランドの組み合わせを系統とする。系統間接続コンデンサは、基板に実装され、系統ごとのグランドを電気的に接続する。これにより、他系統に伝搬したノイズを自系統に帰還させる経路が形成されるので、外部へのノイズの伝搬を低減することができる。
【0007】
本発明による駆動装置は、モータ(80)と、基板(30、31、32)と、機電接続コンデンサ(142~144、242~244)と、を備える。モータは、複数の巻線組(180、280)が共通のハウジング(830)に設けられる。基板には、巻線組ごとに設けられる複数の駆動回路部(120、220)が実装される。
【0008】
機電接続コンデンサは、基板に実装され、基板のグランドパターンと、ハウジングとを電気的に接続する。基板において、ハウジングと電気的に接続されるハウジング接続パターン(156、157、194、196、256、257、294、296)は、基板の他の配線パターンとは切り離されている。機電接続コンデンサは、ハウジング接続パターンと、基板のグランドパターンとを接続する。第1の態様では、ハウジング接続パターンは、ハウジングと直接的に面接触している。第2の態様では、ハウジング接続パターンは、ハウジングと同電位であるヒートシンク(63)と直接的に面接触しているこれにより、モータ側に伝搬したノイズを駆動回路部側に帰還させる経路が形成されるので、外部へのノイズの伝搬を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態によるステアリングシステムを示す概略構成図である。
【
図2】第1実施形態による駆動装置を示す断面図である。
【
図4】第1実施形態による駆動装置を示す回路図である。
【
図5】第1実施形態による基板のモータ面側を示す平面図である。
【
図6】第1実施形態による基板のカバー面側を示す平面図である。
【
図7】第1実施形態によるノイズ伝搬経路を説明する模式的な回路図である。
【
図8】第1実施形態による基板上でのノイズ伝搬経路を説明する説明図である。
【
図9】第1実施形態によるノイズ伝搬経路を説明する模式的な断面図である。
【
図10】第2実施形態による駆動装置を示す断面図である。
【
図11】第2実施形態による制御基板上でのノイズ伝搬経路を説明する説明図である。
【
図12】第2実施形態によるパワー基板上でのノイズ伝搬経路を説明する説明図である。
【
図13】参考例によるノイズ伝搬経路を説明する模式的な回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明による駆動装置、および、これを用いた電動パワーステアリング装置を図面に基づいて説明する。複数の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0011】
図1に示すように、第1実施形態による駆動装置1は、モータ80と、ECU10と、を備え、車両のステアリング操作を補助するための電動パワーステアリング装置8に適用される。
図1は、電動パワーステアリング装置8を備えるステアリングシステム90の全体構成を示すものである。ステアリングシステム90は、操舵部材であるステアリングホイール91、ステアリングシャフト92、ピニオンギア96、ラック軸97、車輪98、および、電動パワーステアリング装置8等を備える。
【0012】
ステアリングホイール91は、ステアリングシャフト92と接続される。ステアリングシャフト92には、操舵トルクを検出するトルクセンサ94が設けられる。トルクセンサ94は、系統毎に設けられる2つのトルク検出部941、942を有する。トルク検出部941、942の検出値は、対応するマイコン170、270に出力される。ステアリングシャフト92の先端には、ピニオンギア96が設けられる。ピニオンギア96は、ラック軸97に噛み合っている。ラック軸97の両端には、タイロッド等を介して一対の車輪98が連結される。
【0013】
運転者がステアリングホイール91を回転させると、ステアリングホイール91に接続されたステアリングシャフト92が回転する。ステアリングシャフト92の回転運動は、ピニオンギア96によってラック軸97の直線運動に変換される。一対の車輪98は、ラック軸97の変位量に応じた角度に操舵される。
【0014】
電動パワーステアリング装置8は、駆動装置1、ならびに、モータ80の回転を減速してステアリングシャフト92に伝える動力伝達部としての減速ギア89等を備える。本実施形態の電動パワーステアリング装置8は、所謂「コラムアシストタイプ」であるが、モータ80の回転をラック軸97に伝える所謂「ラックアシストタイプ」等としてもよい。本実施形態では、ステアリングシャフト92が「駆動対象」に対応する。
【0015】
図2~
図4に示すように、モータ80は、3相ブラシレスモータである。モータ80は、操舵に要するトルクの一部または全部を出力するものであって、バッテリ199、299から電力が供給されることにより駆動され、減速ギア89を正逆回転させる。
【0016】
モータ80は、巻線組としての第1モータ巻線180および第2モータ巻線280を有する。モータ巻線180、280は、電気的特性が同等であり、共通のステータ840に、互いに電気角を30[deg]ずらしてキャンセル巻きされる。これに応じて、モータ巻線180、280には、位相φが30[deg]ずれた相電流が通電されるように制御される。通電位相差を最適化することで、出力トルクが向上する。また、6次のトルクリプルを低減することができる。さらにまた、位相差通電により、電流が平均化されるため、騒音、振動のキャンセルメリットを最大化することができる。また、発熱についても平均化されるため、各センサの検出値やトルク等、温度依存の系統間誤差を低減可能であるとともに、通電可能な電流量を平均化できる。
【0017】
以下、第1モータ巻線180の通電制御に係る構成の組み合わせを第1系統L1、第2モータ巻線280の通電制御に係る構成の組み合わせを第2系統L2とする。第1系統L1の構成を主に100番台で付番し、第2系統L2の構成を主に200番台で付番し、系統L1、L2にて実質的に同様の構成には下2桁が同じとなるように付番し、適宜説明を省略する。また、図中等適宜、第1系統L1に係る構成に添え字の「1」、第2系統L2に係る構成に添え字の「2」を付す。
【0018】
図2および
図3に示すように、駆動装置1は、モータ80の軸方向の一方側にECU10が一体的に設けられており、いわゆる「機電一体型」である。ECU10は、モータ80の出力軸とは反対側において、シャフト870の軸Axに対して同軸に配置されている。ECU10は、モータ80の出力軸側に設けられていてもよい。機電一体型とすることで、搭載スペースに制約のある車両において、ECU10とモータ80とを効率的に配置することができる。以下適宜、単に「軸方向」、「径方向」という場合、モータ80における軸方向、径方向を意味するものとする。
【0019】
モータ80は、ステータ840、ロータ860、および、これらを収容するハウジング830等を備える。ステータ840は、ハウジング830に固定されており、モータ巻線180、280が巻回される。ロータ860は、ステータ840の径方向内側に設けられ、ステータ840に対して相対回転可能に設けられる。
【0020】
シャフト870は、ロータ860に嵌入され、ロータ860と一体に回転する。シャフト870は、軸受835、836により、ハウジング830に回転可能に支持される。シャフト870のECU10側の端部は、ハウジング830からECU10側に突出する。シャフト870のECU10側の端部には、検出対象としてのマグネット875が設けられる。
【0021】
ハウジング830は、筒状のケース834、ケース834の一端に設けられるリアフレームエンド837、および、ケース834の他端に設けられるフロントフレームエンド838を有する。リアフレームエンド837には、リード線挿通孔839が形成される。リード線挿通孔839には、モータ巻線180、280の各相と接続されるリード線185、285が挿通される。リード線185、285は、リード線挿通孔839からECU10側に取り出される。リード線185、285は、それぞれモータ線接続部186、286(
図5および
図6参照。)に挿通され、はんだ等により基板30に接続される。
【0022】
ECU10は、基板30、および、基板30に実装される各種電子部品を有する。基板30は、基板接続部155、255に挿通されるボルト159、259(
図9参照)にて、リアフレームエンド837のモータ80とは反対側の面に固定される。ボルト159、259は、導電材料にて形成されている。基板30のモータ80側の面をモータ面301、モータ80とは反対側の面をカバー面302とする。カバー460は、略有底筒状に形成され、リアフレームエンド837の径方向外側に嵌まり合う。カバー460は、基板30を覆うように設けられ、外部の衝撃からECU10を保護したり、ECU10内への埃や水等の侵入を防止したりする。カバー460の側面には、開口461が設けられる。
【0023】
コネクタ35は、ベース部351、および、コネクタ部355を有し、側面視略L字状に形成される。ベース部351は、ボルト等により基板30に固定され、コネクタ端子36が設けられる側と反対側の端部が、カバー460の開口461から径方向外側に取り出される。開口461は、ベース部351の外壁に設けられるフランジ352の外側に嵌まり合う。
【0024】
コネクタ部355は、カバー460の外側にて、ベース部351から、軸方向におけるモータ80側に設けられる。コネクタ部355の間口は軸方向側に開口し、図示しないハーネス等を挿抜可能に設けられる。コネクタ部355は、第1系統L1側に接続される第1コネクタ部と、第2系統L2側に接続される第2コネクタ部とに分割される。
【0025】
コネクタ端子36は、ベース部351の径方向内側から突出する。コネクタ端子36には、第1電源端子、第1グランド端子、第1信号端子、第2電源端子、第2グランド端子、および、第2信号端子が含まれる。第1電源端子、第1グランド端子、第1信号端子、第2電源端子、第2グランド端子、および、第2信号端子は、基板30のモータ面301側から、それぞれ、第1電源端子接続部151、第1グランド端子接続部152、第1信号端子接続部153、第2電源端子接続部251、第2グランド端子接続部252、第2信号端子接続部253に挿入されて、電気的に接続される(
図5および
図6参照)。
図5および
図6では信号端子数が各系統で6ずつであるが、任意の端子数であってよい。
【0026】
図4に駆動装置1の回路構成を示す。ECU10は、第1モータ巻線180に対応して設けられる第1インバータ120、第1モータリレー127~129、第1電源リレー131、132、第1コンデンサ134および第1コイル135、ならびに、第2モータ巻線280に対応して設けられる第2インバータ220、第2モータリレー227~229、第2電源リレー231、232、第2コンデンサ234および第2コイル235を有する。本実施形態では、インバータ120、220を構成するスイッチング素子121~126、221~226、モータリレー127~129、227~229、電源リレー131、132、231、232、コンデンサ134、234およびコイル135、235は、1枚の基板30に実装されているが、複数の基板に分けて実装してもよい。
【0027】
第1系統L1の第1インバータ120等には、第1バッテリ199から電力が供給され、第2系統L2の第2インバータ220等には、第2バッテリ299から電力が供給される。本実施形態では、グランドについても第1系統L1と第2系統L2とで分離している。また、第1モータ巻線180の通電は、第1マイコン170により制御され、第2モータ巻線280の通電は、第2マイコン270により制御される。すなわち本実施形態では、第1系統L1と第2系統L2とが独立して設けられる完全冗長構成をなしている。
【0028】
第1インバータ120は、3相インバータであって、第1スイッチング素子121~126がブリッジ接続されている。スイッチング素子121~123が高電位側に接続され、スイッチング素子124~126が低電位側に接続される。対になるU相のスイッチング素子121、124の接続点は第1U相コイル181の一端に接続され、対になるV相のスイッチング素子122、125の接続点は第1V相コイル182の一端に接続され、対になるW相のスイッチング素子123、126の接続点は第1W相コイル183の一端に接続される。コイル181~183の他端は結線される。スイッチング素子124~126の低電位側には、コイル181~183の電流を検出する電流検出素子であるシャント抵抗137~139が設けられる。
【0029】
第2インバータ220は、3相インバータであって、第2スイッチング素子221~226がブリッジ接続されている。スイッチング素子221~223が高電位側に接続され、スイッチング素子224~226が低電位側に接続される。対になるU相のスイッチング素子221、224の接続点は第2U相コイル281の一端に接続され、対になるV相のスイッチング素子222、225の接続点は第1V相コイル282の一端に接続され、対になるW相のスイッチング素子223、226の接続点は第1W相コイル283の一端に接続される。コイル281~283の他端は結線される。スイッチング素子224~226の低電位側には、コイル281~283の電流を検出する電流検出素子であるシャント抵抗237~239が設けられる。
【0030】
第1モータリレー127~129は、第1インバータ120と第1モータ巻線180との間に設けられ、第1インバータ120と第1モータ巻線180とを断接可能に設けられる。U相のモータリレー127はスイッチング素子121、124の接続点とU相コイル181との間に設けられ、V相のモータリレー128はスイッチング素子122、125の接続点とV相コイル182との間に設けられ、W相のモータリレー129はスイッチング素子123、126の接続点とW相コイル183との間に設けられる。
【0031】
第2モータリレー227~229は、第2インバータ220と第2モータ巻線280との間に設けられ、第2インバータ220と第2モータ巻線280とを断接可能に設けられる。U相のモータリレー227はスイッチング素子221、224の接続点とU相コイル281との間に設けられ、V相のモータリレー228はスイッチング素子222、225の接続点とV相コイル282との間に設けられ、W相のモータリレー229はスイッチング素子223、226の接続点とW相コイル283との間に設けられる。
【0032】
第1電源リレー131、132は、寄生ダイオードの向きが逆向きとなるように直列接続され、第1バッテリ199と第1インバータ120との間に設けられる。第2電源リレー231、232は、寄生ダイオードの向きが逆向きとなるように直列接続され、第2バッテリ299と第2インバータ220との間に設けられる。寄生ダイオードの向きが逆向きとなるように接続することで、バッテリ199、299が誤って逆向きに接続された場合に逆向きの電流が流れるのを防ぎ、ECU10を保護する。
【0033】
本実施形態では、スイッチング素子121~126、221~226、モータリレー127~129、227~229、および、電源リレー131、132、231、232は、いずれもMOSFETであるが、IGBTやサイリスタ等であってもよい。また、電源リレー131、132、231、232がメカリレーであってもよい。
【0034】
第1スイッチング素子121~126、第1モータリレー127~129および第1電源リレー131、132は、第1マイコン170からの制御信号に基づいてプリドライバ176から出力される駆動信号により、オンオフ作動が制御される。第2スイッチング素子221~226、第2モータリレー227~229および第2電源リレー231、232は、第2マイコン270からの制御信号に基づいてプリドライバ276から出力される駆動信号により、オンオフ作動が制御される。なお、煩雑になることを避けるため、
図4中において、モータリレーおよび電源リレーへの制御線を省略した。
【0035】
第1コンデンサ134は第1インバータ120と並列に接続され、第2コンデンサ234は第2インバータ220と並列に接続される。コンデンサ134、234は、例えばアルミ電解コンデンサである。第1コイル135は第1バッテリ199と第1電源リレー131との間に設けられ、第2コイル235は第2バッテリ299と第2電源リレー231との間に設けられる。
【0036】
第1コンデンサ134および第1コイル135、ならびに、第2コンデンサ234および第2コイル235は、フィルタ回路を構成し、バッテリ199、299を共用する他の装置から伝わるノイズを低減するとともに、駆動装置1からバッテリ199、299を共用する他の装置に伝わるノイズを低減する。また、コンデンサ134、234は、電荷を蓄えることで、インバータ120、220への電力供給を補助する。
【0037】
系統間グランド接続コンデンサ41は、第1系統グランドG1と、第2系統のグランドG2とを接続する。第1機電接続コンデンサ142は、第1系統グランドG1と、モータ80のハウジング830とを接続する。第2機電接続コンデンサ242は、第2系統グランドG2と、ハウジング830とを接続する。コンデンサ41、142、242は、例えばチップコンデンサである。
【0038】
基板30のモータ面301を
図5、カバー面302を
図6に示す。説明のため、カバー面302の配置を反転し、いずれも紙面左側が第1系統L1、右側が第2系統L2となるように記載した。
図8も同様である。
【0039】
図5に示すように、基板30のモータ面301には、スイッチング素子121~126、221~226、モータリレー128~129、電源リレー131、132、231、232、統合IC175、275、および、回転角センサ29が実装される。統合IC175にはプリドライバ176が含まれ、統合IC275にはプリドライバ276が含まれる。
【0040】
図6に示すように、基板30のカバー面302には、コンデンサ134、234、コイル135、235、系統間グランド接続コンデンサ41、機電接続コンデンサ142、242、および、マイコン170、270が実装される。
【0041】
図5および
図6に示すように、基板30は、スリット305にて電気的に2つに分離され、一方の領域のモータ面301およびカバー面302に第1系統L1に係る部品が実装され、他方の領域のモータ面301およびカバー面302に第2系統L2に係る部品が実装される。回転角センサ29はモータ面301においてスリット305を跨いで実装される。系統間グランド接続コンデンサ41はカバー面302においてスリット305を跨いで実装され、第1系統グランドG1と第2系統グランドG2とを接続する。
【0042】
モータ面301側において、基板接続部155、255の外縁には、ハウジング接続パターン156、256が、表面レジスト層から円環状に露出する。また、カバー面302側において、基板接続部155、255の外縁には、ハウジング接続パターン157、257が表面レジスト層から露出する。ハウジング接続パターン157、257は、円環部からコンデンサ接続部がインバータ120、220を向く方向に突出する形状に、表面レジスト層から露出する。
【0043】
同一箇所に形成されるパターン156、157は、基板接続部155の内周面に形成されるスルーホールランドで電気的に接続されており、同電位である。同様に、同一箇所に形成されるパターン256、257は、基板接続部255の内周面に形成されるスルーホールランドで接続されており、同電位である。
【0044】
ハウジング接続パターン156、157、256、257は、ボルト159、259にてハウジング830と電気的に接続される。この意味で、ボルト159、259は、基板30のハウジング接続パターン156、157、256、257とハウジング830とを電気的に接続する機電接続部材と捉えることができる。なお、ハウジング接続パターン156、157、256、257とハウジング830とは、ボルト159、259以外の部材にて電気的に接続してもよい。
【0045】
ハウジング接続パターン156、157、256、256は、ハウジング830と電気的に接続されており、同電位である。また、ハウジング接続パターン156、157、256、256の外縁には、全周に亘ってスリットが形成されており、基板30上の他の配線パターンとは電気的に接続されていない、いわゆる「浮き島」の状態となっている。
【0046】
第1機電接続コンデンサ142は、第1系統L1のグランドパターンと、ハウジング接続パターン157とを接続する。すなわち、第1系統グランドG1は、第1機電接続コンデンサ142を経由して、ハウジング830と電気的に接続される。第2機電接続コンデンサ242は、第2系統L2のグランドパターンと、ハウジング接続パターン257とを接続する。すなわち、第2系統グランドG2は、第2機電接続コンデンサ242を経由して、ハウジング830と電気的に接続される。ハウジング830は、車両グランドと接続されている。すなわち、コンデンサ41、142、242は、いずれもグランド間を接続するコンデンサである。また、系統間グランド接続コンデンサ41は、系統L1、L2のパワー系回路のグランド間を接続している、とも言える。
【0047】
本実施形態では、駆動装置1が電動パワーステアリング装置8に適用されており、大電流が通電されるため、スイッチングノイズやリンギングノイズが発生する。このようなノイズNの発生源は、主にECU10の回路内であり、発生したノイズNがコネクタ35およびモータ80を経由して車両側へ伝搬する虞がある。例えば、参考例として、コネクタ35から外部へノイズが伝搬しないようにフィルタを設ける場合、フィルタ定数の変更や、追加素子が必要となり、体格が大型化、コストアップとなる。
【0048】
そこで、ボルト159、259を用いて基板30のグランドとハウジング830とを電気的に接続し、モータ80側からECU10側へのノイズ帰還経路を形成することで、ノイズNをノイズ源に帰還させるようにし、車両99側へのノイズ伝搬を防いでいる。
【0049】
ところで、本実施形態では、基板30上において、スリット305により、コネクタ端子36を含めて、第1系統L1と第2系統L2とが分離されている。一方、モータ80のハウジング830は、共用されている。そのため、例えば
図13に示す参考例のように、系統間グランド接続コンデンサ41がない場合、一点鎖線の矢印AN1に示すように、第1インバータ120で発生したノイズNの一部は、系統内にてECU10側に帰還するが、破線の矢印AN3に示すように、ノイズNの一部は、ハウジング830を経由して第2系統L2側に回り込み、モータ80の浮遊容量Cs、第2系統グランドG2およびコネクタ35(
図13では省略。)を経由して、車両99側に伝搬する虞がある。第2インバータ220で発生したノイズも同様、第1系統グランドG1およびコネクタ35を経由して、車両99側に伝搬する虞がある。以下、ノイズの帰還経路は、第1系統L1に係る構成と第2系統L2で係る構成とを読み替えれば、系統L1、L2で同様であるので、以下、第1系統L1で発生したノイズの帰還経路を中心に説明する。
【0050】
図7に示すように、本実施形態では、機電接続コンデンサ142、242にて各系統のグランドG1、G2とモータ80のハウジング830とを接続するとともに、系統間グランド接続コンデンサ41にてグランドG1、G2を接続している。これにより、第1系統L1にて発生し、モータ80にて第2系統L2側に伝搬したノイズは、矢印AN2で示すように、機電接続コンデンサ242および系統間グランド接続コンデンサ41を経由して、第1系統L1のノイズ源に帰還する。なお、
図7および
図13では、太線で示す箇所が、グランドG1、G2の電位になっている。また、フィルタ回路を構成するコンデンサ134、234およびコイル135、235をまとめて「フィルタ」と記載した。
【0051】
駆動装置1におけるノイズ帰還経路を
図8および
図9に示す。
図8では、煩雑になることを避けるため、一部の構成および符号を省略した。
図9は、説明のための模式的な断面図であって、実際の配置とは一致していない。
図8では、ECU10内部での代表的なノイズ伝搬経路を実線の矢印AE、モータ80側での代表的なノイズ伝搬経路を破線の矢印AMで示す。後述の
図11および
図12も同様とする。
図9では、駆動装置1での代表的なノイズ伝搬経路を一点鎖線の矢印ANで示す。
【0052】
図8および
図9に示すように、第1インバータ120で発生したノイズは、リード線185、モータ巻線180およびモータ80の浮遊容量を経由してハウジング830に伝搬する。ここで、ハウジング830を経由して第2系統L2側に伝搬したノイズは、ボルト259、機電接続コンデンサ242、基板30の配線パターンおよび系統間グランド接続コンデンサ41を経由して、基板30上にてノイズ源の第1系統L1側に帰還する。
【0053】
系統間グランド接続コンデンサ41、および、機電接続コンデンサ142、242は、発生するノイズに応じ、任意の個数を設ければよい。系統間グランド接続コンデンサ41は、ハウジング接続パターン156、256と低インピーダンスで繋げる箇所に設けることが好ましい。
図8に示すように、系統間グランド接続コンデンサ41は、第2系統L2の領域に設けられる一方の基板接続部255と、第1系統L1の駆動回路領域Rd1との間に設けられる。駆動回路領域Rd1は、スイッチング素子121~126およびモータリレー127~129が実装される領域であって、カバー面302では、各素子が実装される投影領域である。
【0054】
また、コンデンサ41、142、242は、基板30とハウジング830との接続箇所から、ノイズ源となる素子(例えばスイッチング素子121~126、221~226)へ至る最短経路となる箇所に設けることが好ましい。ここで、「最短経路」とは、必ずしも最短距離である必要はなく、例えばマイコン等、ノイズを回避したい部材を避けた上で最短となるような経路であってもよい。
【0055】
また、
図9に示すように、ハウジング接続パターン156、256は、面接触にてハウジング830と電気的に接続される。これにより、ノイズ帰還経路のインピーダンスが低減されるので、ノイズ性能を向上可能である。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の駆動装置1は、モータ80と、基板30と、少なくとも1つの系統間グランド接続コンデンサ41と、を備える。モータ80は、モータ巻線180、280が共通のハウジング830に設けられている。基板30は、複数のインバータ120、220が実装される。本実施形態では、インバータ120、220を構成するスイッチング素子121~126、221~226が1枚の基板30に表面実装されている。インバータ120、220は、それぞれ別途のバッテリ199、299およびグランドに接続される。詳細には、第1インバータ120は第1バッテリ199および第1系統グランドG1に接続され、第2インバータ220が第2バッテリ299および第2系統グランドG2に接続される。本実施形態では、モータ巻線180、280が「巻線組」に対応し、インバータ120、220が「駆動回路部」に対応し、バッテリ199、299が「電源」に対応する。
【0057】
それぞれのモータ巻線180、280に対応するインバータ120、220、バッテリ199、299、および、グランドの組み合わせを系統する。系統間グランド接続コンデンサ41は、基板30に実装され、系統毎のグランドG1、G2を電気的に接続する。これにより、モータ巻線180、280等を経由して他系統側に伝搬したノイズを、基板30上にて、自系統に帰還させる経路を形成することができる。したがって、車両99等、駆動装置1の外部へのノイズの伝搬を低減することができる。
【0058】
基板30には、配線パターンを系統毎に分離するスリット305が形成される。系統間グランド接続コンデンサ41は、スリット305を跨いで実装される。これにより、各系統が基板30上にて電気的に分離されている場合であっても、系統ごとのグランドを適切に接続することができる。
【0059】
系統間グランド接続コンデンサ41は、基板30とハウジング830とを接続する基板接続部155、255と、当該基板接続部155、255が設けられる領域に対応する系統とは異なる系統のインバータ220、120が設けられる領域との間に設けられる。具体的には、系統間グランド接続コンデンサ41は、第2系統L2側に設けられる基板接続部255と、第1インバータ120が実装される駆動回路領域Rd1との間に設けられる。また、系統間グランド接続コンデンサ41は、第1系統L1側に設けられる基板接続部155と、第2インバータ220が実装される駆動回路領域との間に設けられる。なお、
図8では、駆動回路領域Rd1に、モータリレー127~129が実装される領域を含んでいるが、モータリレー127~129が実装される領域を除いてもよい。これにより、他系統側に伝搬したノイズを、低インピーダンスの経路により適切に自系統側に帰還させることができる。
【0060】
駆動装置1は、機電接続コンデンサ142、242は、基板30における系統毎のグランドと、ハウジング接続パターン156、157、256、257とを接続する。ハウジング接続パターン156、157、256、257は、基板30の他の配線パターンとは切り離されており、ハウジング830と電気的に接続される。これにより、モータ80側に伝搬したノイズを、インバータ120、220を含むECU10側に帰還させる低インピーダンスの経路を形成することができる。
【0061】
本実施形態の駆動装置1は、モータ80と、基板30と、機電接続コンデンサ142、242と、を備える。モータ80は、複数のモータ巻線180、280が共通のハウジング830に設けられる。基板30は、モータ巻線180、280ごとに設けられる複数のインバータ120、220が実装される。
【0062】
機電接続コンデンサ142、242は、基板30に実装され、基板30のグランドパターンと、ハウジング830とを電気的に接続する。基板30において、ハウジング830と電気的に接続されるハウジング接続パターン156、157、256、257は、基板30の他のパターンとは切り離されており、機電接続コンデンサ142、242は、ハウジング接続パターン156、157、256、257と、基板30のグランドパターンとを接続する。これにより、モータ80側に伝搬したノイズを、インバータ120、220を含むECU10側に帰還させる低インピーダンスの経路を形成することができる。したがって、車両99等、駆動装置1の外部へのノイズの伝搬を低減することができる。
【0063】
インバータ120、220は、それぞれ別途のバッテリ199、299およびグランドに接続されている。駆動装置1は、少なくとも1つの系統間グランド接続コンデンサ41をさらに備える。系統間グランド接続コンデンサ41は、基板30に実装され、系統ごとのグランドを電気的に接続する。これにより、モータ巻線180、280等を経由して他系統側に伝搬したノイズを、基板30上にて、自系統に帰還させる経路を形成することができる。
【0064】
複数のインバータ120、220は、ハウジング830の軸方向の一方の端部に固定される1枚の基板30に実装される。これにより、駆動装置1を小型化可能である。
【0065】
電動パワーステアリング装置8は、駆動装置1と、動力伝達部材としての減速ギア89と、を備える。モータ80は、車両99の操舵に要するトルクを出力する。電動パワーステアリング装置8では、駆動装置1に大電流が通電されるため、比較的大きなスイッチングノイズやリンギングノイズが発生しやすい。本実施形態の駆動装置1は、発生したノイズをノイズ源に帰還させる経路が形成されているので、減速ギア89やコネクタ35等を経由して、ノイズが車両99側へ伝搬されるのを防ぐことができる。
【0066】
(第2実施形態)
第2実施形態を
図10~
図12に示す。本実施形態のECU11は、制御基板31、パワー基板32、ヒートシンク63、および、パワーモジュール160、260等を備える。
図10に示すように、カバー465は、略有底筒状に形成され、リアフレームエンド837の径方向外側に嵌まり合う。カバー465は、基板31、32、および、パワーモジュール160、260を覆うように設けられる。カバー465の底部には、開口466が設けられる。
【0067】
コネクタ65は、ベース部651、および、コネクタ部652を有する。ベース部651は、ボルト等によりカバー465に固定される。コネクタ部652は、カバー465の開口466から軸方向側に取り出される。コネクタ部652の間口は、軸方向側に開口し、モータ80とは反対側から図示しないハーネスを挿抜可能に設けられる。本実施形態のコネクタ部652は、第1コネクタ部165および第2コネクタ部265に分割されている。第1コネクタ部165には第1系統L1に接続される第1コネクタ端子166が設けられ、第2コネクタ部265には第2系統L2に接続される第2コネクタ端子266が設けられる。第1コネクタ端子166には、第1電源端子、第1グランド端子および第1信号端子が含まれ、第2コネクタ端子266には、第2電源端子、第2グランド端子および第2信号端子が含まれる。
【0068】
制御基板31は、略矩形に形成され、基板接続部193、293(
図11参照。)に挿通されるボルト319にて、ヒートシンク63のモータ80側の面に固定される。パワー基板32は、略矩形に形成され、基板接続部195、295(
図12参照。)に挿通されるボルト329にて、ヒートシンク63のモータ80と反対側の面に固定される。ヒートシンク63は、リアフレームエンド837に固定され、ハウジング830と同電位である。ヒートシンク63とリアフレームエンド837とは、一体であってもよいし、別体であってもよい。ヒートシンク63は、例えばアルミ等の熱伝導性のよい金属にて形成され、側面にパワーモジュール160、260が放熱可能に設けられる。すなわち本実施形態では、パワーモジュール160、260は、モータ80の軸方向に沿って、縦配置されている。
【0069】
第1パワーモジュール160は、第1インバータ120を構成するスイッチング素子121~126およびモータリレー127~129を有する。第2パワーモジュール260は、第2インバータ220を構成するスイッチング素子121~126およびモータリレー227~229を有する。パワーモジュール160、260の制御基板31側には、制御基板31と接続される制御端子161、261が設けられる。パワーモジュール160、260のパワー基板32側には、パワー基板32と接続されるパワー端子162、262、および、リード線185、285と接続されるモータ端子163、263が設けられる。モータ端子163、263は、ヒートシンク63と反対方向に折り曲げられ、リード線185、285と接続される。
【0070】
図11に制御基板31、
図12にパワー基板32を示す。
図11および
図12は、いずれも軸方向の同一側から見た図であって、主にノイズ伝搬経路を説明すべく、煩雑になることを避けるため、系統間グランド接続コンデンサ411、412および機電接続コンデンサ143、144、243、244以外の実装部品の記載を省略した。制御基板31には、マイコン170、270および統合IC175、275が実装される。パワー基板32には、電源リレー131、132、231、232、コンデンサ134、234、コイル135、235が実装される。また、制御基板31には系統間グランド接続コンデンサ411および機電接続コンデンサ143、243が実装され、パワー基板32には系統間グランド接続コンデンサ421および機電接続コンデンサ144、244が実装される。ECU11の電気的構成は、第1実施形態のECU10と同様である。
【0071】
図11に示すように、制御基板31には、制御端子接続部191、291、信号端子接続部153、253、および、基板接続部193、293が形成される。第1制御端子接続部191は、第1パワーモジュール160が配置される側の辺に沿って形成される。第1制御端子接続部191には、第1パワーモジュール160の制御端子161が挿入され、はんだ等により電気的に接続される。第2制御端子接続部291は、第2パワーモジュール260が配置される側の辺に沿って形成される。第2制御端子接続部291には、第2パワーモジュール260の制御端子261が挿入され、はんだ等により電気的に接続される。
【0072】
信号端子接続部153、253は、制御基板31の短辺側に、制御基板31の中心に対して対称に形成される。基板接続部193、293は、制御基板31の中心に対して対称に、角部に比較的近い箇所に形成される。
【0073】
スリット315は、一方の領域に第1系統L1に係る第1制御端子接続部191、第1信号端子接続部153および第1基板接続部193が含まれ、他方の領域に第2系統L2に係る第2制御端子接続部291、第2信号端子接続部253および第2基板接続部293が含まれるように、制御基板31を電気的に2つに分離する。系統間グランド接続コンデンサ411は、スリット315を跨いで実装され、第1系統グランドG1と第2系統グランドG2とを接続する。
【0074】
基板接続部193、293の外縁には、ハウジング接続パターン194、294が形成される。ハウジング接続パターン194、294は、円環部からコンデンサ接続部が制御基板31の中心方向に突出した形状に、表面レジスト層から露出する。ハウジング接続パターン194、294は、ボルト319(
図10参照。)により、ヒートシンク63と電気的に接続される。すなわち、ハウジング接続パターン194、294は、ハウジング830と同電位である。また、ハウジング接続パターン194、294の外縁には、全周に亘ってスリットが形成されており、制御基板31において、他の配線パターンとは接続されていない、いわゆる「浮き島」の状態となっている。
【0075】
第1機電接続コンデンサ143は、制御基板31に実装され、第1系統L1のグランドパターンと、ハウジング接続パターン194とを接続する。第2機電接続コンデンサ243は、制御基板31に実装され、第2系統L2のグランドパターンと、ハウジング接続パターン294とを接続する。
【0076】
図12に示すように、パワー基板32には、パワー端子接続部192、292、電源端子接続部151、251、グランド端子接続部152、252、および、基板接続部195、295が形成される。第1パワー端子接続部192は、第1パワーモジュール160が配置される側の辺に沿って形成される。第1パワー端子接続部192には、第1パワーモジュール160のパワー端子162が挿入され、はんだ等により電気的に接続される。第2パワー端子接続部292は、第2パワーモジュール260が配置される側の辺に沿って形成される。第2パワー端子接続部292には、第2パワーモジュール260のパワー端子262が挿入され、はんだ等により電気的に接続される。
【0077】
第1電源端子接続部151および第1グランド端子接続部152は、パワー基板32の短辺側に横並びに配置される。第2電源端子接続部251および第2グランド端子接続部252は、パワー基板32の短辺側に横並びに配置される。端子接続部151、152と、端子接続部251、252とは、パワー基板32の中心に対して対称に配置される。基板接続部195、295は、パワー基板32の中心に対して対称に、角部に比較的近い箇所に形成される。
【0078】
スリット325は、一方の領域に第1系統L1に係る第1パワー端子接続部192、第1電源端子接続部151、第1グランド端子接続部152および第1基板接続部195が含まれ、他方の領域に第2系統L2に係る第2パワー端子接続部292、第2電源端子接続部251、第2グランド端子接続部252および第2基板接続部295が含まれるように、パワー基板32を電気的に2つに分離する。系統間グランド接続コンデンサ412は、スリット325を跨いで実装され、第1系統グランドG1と第2系統グランドG2とを接続する。
【0079】
基板接続部195、295の外縁には、ハウジング接続パターン196、296が形成される。ハウジング接続パターン196、296は、円環部からコンデンサ接続部が制御基板31の中心方向に突出した形状に、表面レジスト層から露出する。ハウジング接続パターン196、296は、ボルト329により、ヒートシンク63と電気的に接続される。すなわち、ハウジング接続パターン196、296は、ハウジング830と同電位である。また、ハウジング接続パターン196、296の外縁には、全周に亘ってスリットが形成されており、パワー基板32において、他の配線パターンとは接続されていない、いわゆる「浮き島」の状態となっている。
【0080】
第1機電接続コンデンサ144は、パワー基板32に実装され、第1系統L1のグランドパターンと、ハウジング接続パターン196とを接続する。第2機電接続コンデンサ244は、パワー基板32に実装され、第2系統L2のグランドパターンと、ハウジング接続パターン296とを接続する。
【0081】
第1インバータ120で発生したノイズは、モータ端子163、263、リード線185、285およびモータ巻線180を経由して、ハウジング830に伝搬する。ここで、ハウジング830等を経由して第2系統L2側に伝搬したノイズは、機電接続部材であるボルト319、329、機電接続コンデンサ243、244、基板31、32の配線パターンおよび系統間グランド接続コンデンサ411、412を経由して、基板31、32上にてノイズ源の第1系統L1に帰還する。これにより、モータ80にて他系統に伝搬したノイズは、系統間グランド接続コンデンサ41を経由して、自系統のノイズ源に帰還する。
【0082】
本実施形態では、複数のインバータ120、220は、系統ごとにモジュール化されたパワーモジュール160、260により構成され、ハウジング830と同電位のヒートシンク63に放熱可能に設けられている。制御基板31およびパワー基板32は、パワーモジュール160、260およびヒートシンク63を挟んで両側に設けられる。機電接続コンデンサ143、144、243、244は、ハウジング接続パターン194、196、294、296とヒートシンク63とを電気的に接続する。
【0083】
ヒートシンク63はハウジング830と接続されており、同電位であるので、ハウジング接続パターン194、196、294、296とヒートシンク63とを電気的に接続することで、モータ80側に伝搬したノイズをECU10側に帰還させる経路を形成することができる。特に本実施形態では、基板31、32とヒートシンク63とが、ハウジング接続パターン194、196、294、296にて面接触しているので、低インピーダンスの経路にてノイズをECU10側に帰還させることができる。また上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0084】
なお、第1実施形態のように、インバータ120、220を構成するスイッチング素子121~126、221~226が表面実装されている場合に限らず、本実施形態のように、縦配置されたパワーモジュール160、260が基板31、32に接続されている場合も、「駆動回路部が基板に実装されている」という概念に含まれるものとする。
【0085】
(他の実施形態)
上記実施形態では、系統間グランド接続コンデンサおよび機電接続コンデンサが実装される。他の実施形態では、系統間グランド接続コンデンサおよび機電接続コンデンサの一方を省略してもよい。系統間グランド接続コンデンサおよび機電接続コンデンサの数や実装箇所は、上記実施形態とは異なっていてもよく、ノイズ性能や他の電子部品の配置等に応じ、適宜設定可能である。例えば第1実施形態では、系統間グランド接続コンデンサおよび機電接続コンデンサは、カバー面側に実装されているが、少なくとも一部をモータ面側に実装してもよいし、両面に実装してもよい。また、上記実施形態では、基板に系統間を分離するスリットが形成されている。他の実施形態では、基板にスリットが形成されていなくてもよい。
【0086】
上記実施形態では、電源コネクタと制御コネクタとが一体となっているが、電源コネクタと制御コネクタとを分けてもよい。上記実施形態では、電源およびグランドが、系統毎に別途に設けられている。他の実施形態では、電源およびグランドを、複数の系統で共用してもよい。同様に、マイコンや統合IC等の構成を、複数の系統で共用してもよい。
【0087】
上記実施形態では、駆動装置は、巻線組および駆動回路部が2つずつ設けられており、2系統にて構成される。他の実施形態では、系統数は3以上であってもよい。上記実施形態では、インバータが駆動回路部に対応するものとして説明した。他の実施形態では、ノイズ発生源がマイコンや統合ICであれば、マイコンや統合ICを「駆動回路部」と見なしてもよい。
【0088】
上記実施形態では、モータは三相ブラシレスモータである。他の実施形態では、モータ部は、三相ブラシレスモータに限らず、どのようなモータであってもよい。また、モータ部は、モータ(電動機)に限らず、発電機であってもよいし、電動機および発電機の機能を併せ持つ所謂モータジェネレータであってもよい。
【0089】
上記実施形態では、駆動装置は、電動パワーステアリング装置に適用される。他の実施形態では、駆動装置を電動パワーステアリング装置以外の装置に適用してもよい。以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0090】
1・・・駆動装置
8・・・電動パワーステアリング装置
30、31、32・・・基板
80・・・モータ
120、220・・・インバータ(駆動回路部)
180、280・・・モータ巻線(巻線組)
41、411、412・・・系統間グランド接続コンデンサ
142~144、242~244・・・機電接続コンデンサ
830・・・ハウジング