(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】コンテンツ選定装置、コンテンツ選定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 16/907 20190101AFI20231212BHJP
G16H 40/20 20180101ALI20231212BHJP
【FI】
G06F16/907
G16H40/20
(21)【出願番号】P 2022073946
(22)【出願日】2022-04-28
(62)【分割の表示】P 2017235398の分割
【原出願日】2017-12-07
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】村田 哲史
【審査官】齊藤 貴孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-135051(JP,A)
【文献】特開2007-172124(JP,A)
【文献】特開2000-123098(JP,A)
【文献】特開平11-345385(JP,A)
【文献】特開2007-052212(JP,A)
【文献】特表2015-529877(JP,A)
【文献】特開2009-224967(JP,A)
【文献】特表2016-525375(JP,A)
【文献】特表2013-511222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00-16/958
G16H 40/00-40/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
救急要請の対象とされた患者の状態を示す情報を取得する取得手段と、
前記患者の所在位置及び救急車の出動状況に基づいて、前記救急車が前記患者の前記所在位置へ到着する時間を推定する到着時間推定手段と、
前記患者の状態及び前記時間に基づいて、前記救急要請を行った通報者に送信すべきコンテンツの候補を選定する選定手段と、
選定された前記コンテンツの候補を
ディスプレイに出力する出力手段と、
を備え
、
前記選定手段は、前記患者の状態に基づいてコンテンツ毎に優先度を設定し、
前記出力手段は、前記優先度に応じた順番で前記コンテンツの候補を前記ディスプレイに出力する、
コンテンツ選定装置。
【請求項2】
前記ディスプレイに表示された前記コンテンツの候補の中からコンテンツを選択する要求を受け付ける手段を備え、
前記出力手段は、前記コンテンツが選択されたことに応じて、選択された前記コンテンツの送信履歴を前記ディスプレイに表示する
請求項1に記載のコンテンツ選定装置。
【請求項3】
前記選定手段は、前記患者の状態を示す情報から抽出されるキーワードと、コンテンツの候補に付与されたタグとに基づいて前記コンテンツの候補を出力する、
請求項1
又は2に記載のコンテンツ選定装置。
【請求項4】
前記患者に対する複数の前記救急要請の有無を判定する同報判定手段を備え、
前記選定手段は、前記患者の状態及び複数の前記救急要請の有無に基づいて、前記コンテンツの候補を選定する、
請求項1
乃至3のいずれか一項に記載のコンテンツ選定装置。
【請求項5】
前記選定手段は、複数の前記救急要請があると判断された場合に、前記通報者の各々に異なるコンテンツが送信されるように前記コンテンツの候補を選定する、
請求項
4に記載のコンテンツ選定装置。
【請求項6】
前記選定手段は、前記救急車が前記所在位置へ到着する前記時間が所定の基準を満たす場合に、前記時間に応じて必要となる処置に関連する前記コンテンツを、前記コンテンツの候補として選定する、
請求項1乃至
5のいずれか一項に記載のコンテンツ選定装置。
【請求項7】
前記通報者の心理状態を特定する心理状態特定手段を備え、
前記選定手段は、前記患者の状態及び前記心理状態に基づいて、前記コンテンツの候補を選定する、
請求項1から
6のいずれか一項に記載のコンテンツ選定装置。
【請求項8】
前記選定手段は、前記心理状態に基づいて、前記通報者が実行可能な処置に関する前記コンテンツを、前記コンテンツの候補を選定する、
請求項
7に記載のコンテンツ選定装置。
【請求項9】
コンピュータが、
救急要請の対象とされた患者の状態を示す情報を取得し、
前記患者の所在位置及び救急車の出動状況に基づいて、前記救急車が前記患者の前記所在位置へ到着する時間を推定し、
前記患者の状態及び前記時間に基づいて、前記救急要請を行った通報者に送信すべきコンテンツの候補を選定し、
選定された前記コンテンツの候補を
ディスプレイに出力
し、
前記患者の状態に基づいてコンテンツ毎に優先度を設定し、
前記優先度に応じた順番で前記コンテンツの候補を前記ディスプレイに出力する、
コンテンツ選定方法。
【請求項10】
コンピュータに、
救急要請の対象とされた患者の状態を示す情報を取得する処理と、
前記患者の所在位置及び救急車の出動状況に基づいて、前記救急車が前記患者の前記所在位置へ到着する時間を推定する処理と、
前記患者の状態及び前記時間に基づいて、前記救急要請を行った通報者に送信すべきコンテンツの候補を選定する処理と、
選定された前記コンテンツの候補を
ディスプレイに出力する処理と、
を実行させ
、
前記選定する処理は、前記患者の状態に基づいてコンテンツ毎に優先度を設定し、
前記出力する処理は、前記優先度に応じた順番で前記コンテンツの候補を前記ディスプレイに出力する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテンツ選定装置、コンテンツ選定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
救急車の出動が要請される事態が発生した場合には、救急隊が現場に到着するまでの間においても、当該要請の原因となった患者に対して適切な処置が施されることが好ましい。そのため、このような場合には、救急指令センターの司令員や救急隊の隊員が、救急車の出動を要請した通報者に対して、電話を介して、口頭にて応急手当や心肺蘇生等の指示を行う場合がある。
【0003】
また、特許文献1には、救急車などの到着までにかなりの時間を要する現場で、事故や災害にあった被災者への応急処置に関する情報を容易に入手できるようにする応急処置対応システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
救急車の出動が要請される場合において、患者の予後を改善するためには、応急手当や心肺蘇生を含む応急処置が適切に行われることが好ましい。一方で、通報者は、一般に、これらの処置に不慣れな場合がある。すなわち、患者に対して上述した応急処置が確実に行われるために、特許文献1に記載の技術に対して、通報者に対して適切な情報を提供可能にする技術が望まれている。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、通報者に対して適切な情報を提供可能にするコンテンツ選定装置等を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様におけるコンテンツ選定装置は、救急要請の対象とされた患者の状態を示す情報を取得する取得手段と、患者の状態に基づいて、救急要請を行った通報者に送信すべきコンテンツの候補を選定する選定手段と、選定されたコンテンツの候補を出力する出力手段と、を備える。
【0008】
本発明の一態様におけるコンテンツ選定方法は、救急要請の対象とされた患者の状態を示す情報を取得し、患者の状態に基づいて、救急要請を行った通報者に送信すべきコンテンツの候補を選定し、選定されたコンテンツの候補を出力する。
【0009】
本発明の一態様におけるプログラムは、コンピュータに、救急要請の対象とされた患者の状態を示す情報を取得する処理と、患者の状態に基づいて、救急要請を行った通報者に送信すべきコンテンツの候補を選定する処理と、選定されたコンテンツの候補を出力する処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、通報者に対して適切な情報を提供可能にするコンテンツ選定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態におけるコンテンツ選定装置の構成を示す図である。
【
図2】コンテンツ選定装置が消防指令システムの一要素として動作する場合の例を示す図である。
【
図3】コンテンツ選定装置の選定部によって選定されるコンテンツ及びその条件タグの一覧を示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態におけるコンテンツ選定装置が学習済モデルを備える場合の構成を示す図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態におけるコンテンツ選定装置が学習済モデル及び学習部を備える場合の構成を示す図である。
【
図6】消防指令システムにおいてコンテンツ選定装置による出力が表示される場合における画面の例を示す図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態におけるコンテンツ選定装置の動作を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の第2の実施形態におけるコンテンツ選定装置の構成を示す図である。
【
図9】本発明の第3の実施形態におけるコンテンツ選定装置の構成を示す図である。
【
図10】本発明の第4の実施形態におけるコンテンツ選定装置の構成を示す図である。
【
図11】本発明の実施形態におけるコンテンツ選定装置及び消防指令システムを実現する情報処理装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の各実施形態について、添付の図面を参照して説明する。本発明の各実施形態において、各装置又はシステムの各構成要素は、機能単位のブロックを示している。各装置又はシステムの各構成要素の一部又は全部は、例えば
図11に示すような情報処理装置500とプログラムとの任意の組み合わせにより実現される。情報処理装置500は、一例として、以下のような構成を含む。
【0013】
・CPU(Central Processing Unit)501
・ROM(Read Only Memory)502
・RAM(Random Access Memory)503
・RAM503にロードされるプログラム504
・プログラム504を格納する記憶装置505
・記録媒体506の読み書きを行うドライブ装置507
・通信ネットワーク509と接続する通信インターフェース508
・データの入出力を行う入出力インターフェース510
・各構成要素を接続するバス511
各実施形態における各装置の各構成要素は、これらの機能を実現するプログラム504をCPU501が取得して実行することで実現される。各装置の各構成要素の機能を実現するプログラム504は、例えば、予め記憶装置505やRAM503に格納されており、必要に応じてCPU501が読み出す。なお、プログラム504は、通信ネットワーク509を介してCPU501に供給されてもよいし、予め記録媒体506に格納されており、ドライブ装置507が当該プログラムを読み出してCPU501に供給してもよい。
【0014】
各装置の実現方法には、様々な変形例がある。例えば、各装置は、構成要素毎にそれぞれ別個の情報処理装置500とプログラムとの任意の組み合わせにより実現されてもよい。また、各装置が備える複数の構成要素が、一つの情報処理装置500とプログラムとの任意の組み合わせにより実現されてもよい。
【0015】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態におけるコンテンツ選定装置を示す図である。
【0016】
図1に示すとおり、本発明の第1の実施形態におけるコンテンツ選定装置100は、取得部110と、選定部120と、出力部130とを有する。取得部110は、救急要請の対象とされた患者の状態を示す情報を取得する。選定部120は、患者の状態に基づいて、救急要請を行った通報者に送信すべきコンテンツの候補を選定する。出力部130は、選定されたコンテンツの候補を出力する。
【0017】
また、コンテンツ選定装置100には、
図1に示すように、コンテンツ格納部121が接続されてもよい。コンテンツ格納部121は、通報者に送信すべきコンテンツを格納する。コンテンツ格納部121は、例えば任意の記憶手段によって実現される。なお、コンテンツ選定装置100は、例えば、コンテンツ格納部121に格納されたコンテンツの他に、通信ネットワークを介して接続された外部の記憶装置に格納されたコンテンツを、送信すべきコンテンツの候補として選定してもよい。
【0018】
本実施形態を含む以下の各実施形態に示すコンテンツ選定装置は、消防指令システムの一要素として用いられることが主に想定される。すなわち、コンテンツ選定装置は、消防指令システムと併せて用いられる。また、コンテンツ選定装置は、消防指令システムと一体に構築され、患者の状態や救急車の出動状況といった各種の情報を共有しつつ動作してもよい。
【0019】
消防指令システムは、自治体に設けられた消防指令センターのように、消防隊や救急隊の運用を指令する施設に配置される。以下の例において、消防指令システムは、消防隊や救急隊の運用を指令するために必要となる機構を備えると想定する。消防隊や救急隊の運用を指令するために必要となる機構としては、例えば、消防車や救急車の出動要請の受付、消防車や救急車の出動の指令、消防車や救急車の出動状況の把握を行うための機構が含まれる。
【0020】
図2に示す例を用いて、消防指令システムの一要素としてコンテンツ選定装置100が動作する場合における一つの動作例の概要を説明する。
【0021】
まず、
図2の(1)に示すように、救急車の出動を求める要請(以下、「救急要請」とする)が行われる場合を想定する。
【0022】
救急要請が行われると、消防指令センターにおいては、司令員は、消防指令システム10を介して、救急要請を行った通報者から必要な情報を収集する。そして、司令員は、収集した情報に応じて、救急車の出動を指示する。また、
図2の(2)に示すように、消防指令システムは、救急要請を行った通報者の電話番号を取得する。
【0023】
この場合に、コンテンツ選定装置100は、救急要請に応じて、当該救急要請の対象とされた患者の情報を、消防指令システム10を介して取得する。そして、コンテンツ選定装置100は、患者の状態に基づいて、通報者に対して送信すべきコンテンツの候補を選定する。
【0024】
以下の各実施形態において、コンテンツは、救急要請の対象とされた患者に対して行うべき処置を表す情報である。コンテンツの形式は、例えば任意のフォーマットの画像や動画の形式であるが、特に限定されない。コンテンツには、文字情報が含まれてもよい。また、以下の各実施形態において、救急要請の対象とされた患者の様々な状態に応じた複数のコンテンツが予め用意されていることを想定する。
【0025】
そして、コンテンツ選定装置100によって選定されるコンテンツは、主に、個々の救急要請の対象とされた患者の各々の状態に応じて、当該患者に対して具体的に行うべき処置に関するコンテンツである。コンテンツの候補が選定されると、コンテンツ選定装置100は、例えば、消防指令システム10が備えるディスプレイ等へ当該コンテンツの候補を出力する。
【0026】
コンテンツの候補が消防指令システムのディスプレイへ表示されると、
図2の(3)に示すように、司令員は、コンテンツの候補のうち、適切と思われるコンテンツを決定する。そして、司令員は、コンテンツを通報者へ送信する旨を指示する。決定されたコンテンツは、例えば
図2の(4)に示すように、SMS(Short Message Service)-GW(Gateway)12に対して、通報者の電話番号と併せて送信される。そして、SMS-GW12は、
図2の(5)に示すように、SMSの送信要求を行う。すなわち、
図2の(6)に示すように、コンテンツ(又はコンテンツのURL(Uniform Resource Locator)等、コンテンツを指定する識別子)は、一般的な通信網を介して通報者が所有する通報者端末21へ送信される。
【0027】
救急要請を行った通報者へコンテンツが送信されることにより、通報者は、救急要請の対象とされた患者に対して、止血や気道確保、心肺蘇生といった処置を正確に行うことが可能となる。この結果として、患者の予後、すなわち、患者の生存率や後遺症の有無等の改善が期待される。
【0028】
次に、コンテンツ選定装置100の各構成要素について説明する。
【0029】
取得部110は、上述のように、救急要請の対象とされた患者の状態を示す情報を取得する。
【0030】
取得部110は、一例として、通報者が通報し、消防指令システムが受け付けた患者の状態を示す情報を取得する。消防指令システムが受け付けた情報には、例えば、消防指令センターの司令員が通報者から聞き取って消防指令システムに対して入力した文字情報を含む情報や、通報者からの通報を音声認識することで得られた情報が含まれる。また、消防指令システムが受け付けた情報には、通報者が撮影した現場写真や動画であってもよい。消防指令システムが受け付けた通報者からの情報は、これらに限られず、患者の状態を示す情報であれば他の情報であってもよい。すなわち、取得部110は、一般的な救急要請において、司令員が通報者から収集する、患者の状態に関連する情報を取得する。
【0031】
患者の状態を示す情報には、例えば患者の年齢や性別、既往歴、患者の症状や患部、患者の所在位置、又は救急要請に至った原因が含まれる。ただし、取得部110が取得する情報はこれらに限られず、患者の状態を示す情報であれば特に限定されない。また、取得部110が取得する情報の形式は特に限られない。取得部110が取得する情報の形式は、例えば、文字情報であってもよいし、画像情報であってもよい。
【0032】
また、患者の所在位置は、救急要請の対象とされた患者が所在する場所やその周囲の状況を示す情報である。患者の所在位置は、患者が在宅中である場合には、患者の住所で表されてもよい。また、患者が外出中に救急要請に至った場合には、患者の所在位置は、患者の近傍に存在する施設や、患者が居る道路等で表されてもよい。患者の所在位置は、緯度及び経度で特定されてもよい。患者の所在位置には、車道に倒れている、椅子に横たわっているといったように、所在位置における具体的な患者の状態を示す情報等が含まれてもよい。
【0033】
救急要請に至った原因は、患者に救急要請が必要となった要因となる事象等を示す。救急要請に至った要因となる事象には、例えば、事故又は急病の区別が含まれる。また、当該事象が事故である場合には、事故の種類等が含まれる。
【0034】
また、取得部110は、患者に対して過去に救急要請が行われ、当該患者が救急車によって搬送された場合には、当該患者が搬送された際の記録を取得してもよい。この場合には、取得部110は、患者が搬送された際の記録として、消防指令システムに蓄積された搬送記録のデータを取得してもよい。
【0035】
取得部110は、更に、消防指令システムが受け付けた通報者からの情報に限らず、他の手段で得られた患者の状態を示す情報を取得してもよい。
【0036】
選定部120は、取得部110によって取得された情報にて示される患者の状態に基づいて、救急要請を行った通報者に対して送信すべきコンテンツの候補を選定する。
【0037】
コンテンツの候補は、上述のように、例えば、コンテンツ格納部121に予め格納される。この場合に、コンテンツ格納部121は、通報者に対して送信すべきコンテンツの候補となる複数のコンテンツに関するデータベースを格納する。
【0038】
図3は、データベースに格納されるコンテンツの一覧の例を示す。コンテンツの各々には、当該コンテンツの種類や条件タグが付されている。また、コンテンツの各々には、コンテンツを識別するID(Identifier)が付与されている。
【0039】
コンテンツの種類は、例えば当該コンテンツが、静止画の画像であるか、又は動画であるかのように、コンテンツの形式を表す。コンテンツの種類は、
図3の「付近AED(Automated External Defibrillator)案内」に付されているように、AED等の設備の所在を示す地図であってもよい。コンテンツの種類は、上述した例に限られず、他の種類のコンテンツであってもよい。
【0040】
条件タグは、コンテンツの各々を配信すべき条件を示す。条件タグは、コンテンツの各々に対して、救急要請の対象となる患者の状態に応じて定められる。
【0041】
図3に示す例では、条件タグは、救急要請が必要となった原因となる事故の種別、患者の条件、当該患者の症状、症状が生じている患部、上述した事故が発生した場所、患者の年齢や性別、既往歴に応じて定められている。また、
図3に示す要因とは異なる他の要因に応じて条件タグが定められてもよい。
【0042】
以下、
図3に示す例において、条件タグの各々の項目を説明する。事故種別の項目は、救急要請の原因となった事象との関連を示すタグである。事故種別としては、交通事故、火災事故、患者が心肺停止状態にあることを示す救急CPA(Cardio-pulmonary Arrest)、水難事故、急病が含まれる。
図3において、例えば、IDが「0001」のコンテンツは、交通事故が生じたことによって救急要請がなされている場合に送信すべきコンテンツの候補の一つである。
【0043】
また、症状1又は症状2の項目は、救急要請の対象とされた患者の症状との関連を示すタグである。症状には、出欠、意識不明、火傷、呼吸困難、心肺停止、外傷があること、発作、溺れていることが含まれる。コンテンツが複数の症状に対応しうる場合には、2つ又はそれ以上の症状に関するタグがコンテンツに付与されてもよい。
図3において、例えばIDが「0001」のコンテンツは、患者の症状として、「出血」又は「外傷あり」の場合に送信すべきコンテンツの候補であることを示す。
【0044】
また、患部1又は患部2の項目は、救急要請の対象とされた患者に生じている症状の部位との関連を示すタグである。患部には、例として、頭、手、足、全身が含まれる。特定の患部との関連が少ないコンテンツに対しては、本項目に対するタグは特に定められなくてもよい。
【0045】
発生場所の項目は、救急要請の対象とされた事象と関係する場所との関連を示すタグである。発生項目としては、道路や、GPS(Global Positioning System)にて位置情報が取得可能であることを示す「GPS取得」等が含まれる。発生場所に関係なく送信することができるコンテンツに対しては、本項目に対するタグは特に定められなくてもよい。
【0046】
年齢又は性別の項目は、救急要請の対象とされた患者の年齢又は性別との関連を示すタグである。これらの項目に対する条件タグは、例えば、コンテンツが特定の年齢層又は性別の患者を対象とする場合に付与される。また、既往歴の項目は、救急要請の対象とされた患者の既往歴との関連を示すタグである。この項目に対する条件タグは、例えば、コンテンツが既往歴を有する患者を対象の一つとする場合に付与される。
【0047】
なお、
図3に示すように、各々のコンテンツに付与される条件タグの数は特に限定されない。コンテンツの各々においては、全ての項目に対して条件タグが付与されなくてもよい。つまり、コンテンツの各々に対して、当該コンテンツと関連する条件タグが付与されればよい。
【0048】
また、条件タグは
図3に示す例に限られない。つまり、
図3に示す例に対して、異なる条件タグの項目が含まれてもよい。更に、各々の条件タグの項目について、
図3に示す例とは異なる条件タグが付与されてもよい。
【0049】
図3に示す形式でコンテンツが用意されている場合には、選定部120は、取得部110によって取得された患者の状態を示す情報と、コンテンツに付与された条件タグとに基づいて、送信すべきコンテンツの候補を選定する。
【0050】
一例として、選定部120は、取得部110によって取得された情報に応じて定められたキーワードと条件タグとに基づいて、送信すべきコンテンツの候補を選定する。
【0051】
この場合に、選定部120は、まず、取得部110によって取得された患者の状態を示す情報から、キーワードを抽出する。キーワードは、例えば、条件タグ等に応じて定められた語句が、取得部110によって取得された情報に含まれるか否かを検索することによって抽出される。または、司令員が指定したキーワードを取得部110が取得し、取得したキーワードを選定部120が用いてコンテンツの候補を選定してもよい。そして、選定部120は、抽出されたキーワードと、コンテンツに対して設定された条件タグと対比することで、コンテンツの候補を選定する。
【0052】
また、司令員が通報者へ質問する内容がフォーマット化されている場合等には、選定部120は、当該フォーマットの回答として取得された内容に応じてコンテンツの候補を選定してもよい。この他に、選定部120は、救急要請の対象とされた患者の過去の搬送記録等に基づいてコンテンツの候補を選定してもよい。この場合には、上述した条件タグの「既往歴」の項目が適宜参照される。
【0053】
更に、選定部120は、機械学習の手法を用いてコンテンツの候補を選定してもよい。例えば、選定部120は、救急要請の際に通報者から得られた情報に対してコンテンツの候補を出力する学習済モデルを用いてコンテンツの候補を選定してもよい。
図4は、選定部120が学習済モデル122を有し、学習済モデル122を用いてコンテンツの候補を選定する場合におけるコンテンツ選定装置100の構成の例を示す図である。
【0054】
学習済モデル122は、過去の救急要請の事例に基づいて生成される。一例として、学習済モデル122は、救急要請の際に通報者から得られた情報と、当該救急要請の対象とされた患者に対して行われた処置に関連するコンテンツとの関係を教師データとして学習することによって生成される。また、学習済モデル122の生成に際して、患者に対して行われた処置であったか適切か否かの結果が用いられてもよい。
【0055】
過去の救急要請の事例としては、例えば、救急要請に応じて患者が搬送された場合に救急隊員によって作成される搬送記録が用いられる。ただし、学習済モデル122が作成される場合に用いられる教師データは特に制限されず、この他のデータが用いられてもよい。
【0056】
また、
図5に示すように、コンテンツ選定装置100は、学習部123を備えてもよい。学習部123は、救急要請の際に通報者から得られた情報と、当該救急要請の対象とされた患者の状態から適切と想定されるコンテンツとの関係に基づいて、学習済モデル122を生成する。学習部123は、救急要請が行われ、搬送記録が作成される度に、当該救急要請及び搬送記録を用いて学習してもよい。なお、学習部123として、任意の機械学習のための機構が用いられる。
【0057】
コンテンツの候補が選定される際に、上述したいずれの方法が用いられる場合においても、選定部120は、複数のコンテンツの候補を選定してもよい。選定部120は、例えば、患者に対して複数の処置が必要であると判断される場合や、患者の状態に合致する複数のコンテンツが用意されている場合には、複数のコンテンツの候補を選定する。
【0058】
複数のコンテンツの候補が選定される場合には、選定部120は、候補となる複数のコンテンツの候補に対して優先度を設定してもよい。
【0059】
優先度は、一例として、患者の状態に対するコンテンツの合致の程度、すなわち、患者の状態に対してコンテンツが合致するか否かの程度に基づいて設定される。より詳しくは、患者の状態に対するコンテンツの合致の程度は、例えば、患者の状態を示す情報から抽出されたキーワードに合致するコンテンツ毎の条件タグの数に応じて定められる。また、患者の状態に対するコンテンツの合致の程度は、患者の状態を示す情報とコンテンツとの関係に対して、任意の基準によって定められたスコアに基づいて定められてもよい。
【0060】
また、選定部120は、患者に対して必要となる処置の緊急性に基づいて優先度を設定してもよい。すなわち、患者に対して複数の処置が必要であると想定される場合に、選定部120は、緊急性の高い処置に関連するコンテンツから順に高い優先度を設定する。
【0061】
更に、取得部110が通報者の年齢や性別等の通報者の属性に関する情報を取得した場合において、選定部120は、これらの情報にも基づいて、送信すべきコンテンツの候補を選定してもよい。つまり、選定部120は、通報者の属性に応じて、通報者が実行可能な処置に関するコンテンツが送信されるように、送信すべきコンテンツの候補を選定する。
【0062】
優先度が設定される場合においては、上述した基準とは異なる基準によって優先度が設定されてもよい。また、優先度の形式は特に限られない。優先度は、例えば、選定された複数のコンテンツの候補の各々に対して与えられた何らかの点数の形で表されてもよいし、複数のコンテンツの候補の各々に順序付けすることで表されてもよい。
【0063】
出力部130は、選定部120によって選定されたコンテンツの候補を出力する。
【0064】
出力部130は、コンテンツの候補を、消防指令システムが備えるディスプレイに出力する。すなわち、消防指令システムにおいては、例えば司令員の指示等に応じて、出力部130による出力結果を表す画面が表示される。
【0065】
図6は、出力部130による出力結果が消防指令システムのディスプレイに表示される場合における画面の一例を示す。
図6に示す画面の例において、「事案情報」の欄は、救急要請に関して司令員が通報者等から収集した情報である。すなわち、取得部110によって取得される可能性がある情報である。
【0066】
「通報者名」及び「通報者TEL(telephone)」の項目は、それぞれ、通報者の氏名及び通報者が通報に用いた電話の電話番号を示す。これらの情報は、消防指令システムが発信地表示システム等を介して取得した情報でもよいし、司令員が通報者から口頭にて収集し、司令員が消防指令システムに入力した情報でもよい。
【0067】
「通報内容」の項目は、消防指令センターの司令員が通報者から取得した情報を示す。
図6に示す例では、通報内容として、患者が普通自動車と横断歩道で接触したこと、患者が心肺停止状態にあること、患者にCPR(Cardio-pulmonary Resuscitation:心肺蘇生法)が必要であることが示されている。
【0068】
「救急車 到着予定残り時間」の項目は、救急車が患者の所在位置へ到着するまでの時間を示す。「出動救急車両」の項目は、救急要請に応じて出動する救急車を特定する情報を示す。これらの項目には、例えば、消防指令システムが有する情報が適宜表示される。
【0069】
また、「災害種別」の項目は、救急要請の対象とされた事象の種類を示す。「災害区分」の項目は、「災害種別」の項目にて示される災害の具体的な内容を示す。これらの情報は、司令員が通報者から聞き取って取得した情報であってもよいし、司令員が取得した患者の状態に関する情報に基づいて、消防指令システムが決定した情報であってもよい。
【0070】
なお、これらの項目に含まれる情報は、取得部110によって取得されてもよい。また、これらの項目に含まれる情報は、選定部120がコンテンツの候補を選定する際に用いられてもよい。例えば、選定部120は、「災害区分」の項目と、コンテンツ格納部121に格納されたコンテンツに付与された条件タグとの対比を行うことでコンテンツの候補を選定してもよい。
【0071】
「搬送者情報」の各項目は、救急要請の対象とされている患者の情報を示す。
図6に示す例では、搬送者情報として、患者の氏名、年齢、性別、既往歴が示されている。これらの情報は、司令員が通報者から取得した情報であってもよいし、消防指令システムに格納される過去の救急要請の履歴から得られた情報であってもよい。
【0072】
出力部130によって出力されるコンテンツの候補は、
図6に示す画面の「SMS送信コンテンツ」の欄に表示される。
図6に示す画面の例において、「分類」欄は、コンテンツの候補の各々に対する分類を示す。「コンテンツ選択」の欄は、分類欄の各々に含まれるコンテンツの候補を示す。
【0073】
図6に示す例では、出力部130によって出力されるコンテンツの候補は、
図6に示す画面の「分類」欄において「自動絞込み」が選択された場合に「コンテンツ選択」欄に表示される。
図6に示す画面の例では、「分類」欄の内容を司令員が適宜選択することにより、救急要請の原因となった事象に応じて、司令員が自身でコンテンツの候補を選択可能な形式にて表示されている。
【0074】
選定部120によって複数のコンテンツの候補が選定されている場合には、「コンテンツ選択」の欄には、複数のコンテンツの候補が表示される。この場合には、複数のコンテンツの候補は、例えば上述した優先度に応じた順番で表示されてもよいし、その他の順番で表示されてもよい。複数のコンテンツの候補が表示される順番は、
図6に示す画面を参照する司令員によって変更可能であってもよい。
【0075】
消防指令センターの司令員は、例えば、
図6に示す画面に表示された複数のコンテンツの候補から、いずれかを送信すべきコンテンツとして選択する。なお、司令員は、
図6に示す画面に表示された複数のコンテンツの候補のうち、2つ以上のコンテンツを送信すべきコンテンツとして選択してもよい。
【0076】
また、
図6の「SMS送受信履歴」の欄には、司令員が選択したコンテンツのプレビュー画面や、当該コンテンツの送信履歴等が表示される。
【0077】
消防指令センターの司令員によって決定されたコンテンツは、SMS(Short Message Service)を利用して通報者へ送信される。上述のように、消防指令システムにおいては、一般に、通報者の電話番号が取得される。そのため、SMSを介してコンテンツを送信することで、通報者に対する確実なコンテンツの送信が可能となる。ただし、SMS以外の通信手段を介して、司令員によって決定されたコンテンツが通報者に送信されてもよい。通報者がコンテンツを閲覧可能であれば、通信手段は特に限定されない。
【0078】
また、通報者に対しては、コンテンツ自体が送信されてもよいし、任意のウェブサイトに蓄積されたコンテンツのURLが送信されてもよい。例えば、コンテンツが画像又は動画である場合には、通報者に対しては、画像又は動画のファイル自体が送信されてもよいし、当該画像又は動画が置かれている場所のURLが送信されてもよい。すなわち、通報者がコンテンツを閲覧可能であれば、通報者に対して送信される情報の形式は限定されない。
【0079】
続いて、
図7に示すフローチャートを参照して、本実施形態におけるコンテンツ選定装置100の動作を説明する。
【0080】
取得部110は、救急要請の対象とされた患者の状態を示す情報を取得する(ステップS101)。
【0081】
次に、選定部120は、ステップS101において取得された情報によって示される患者の状態に基づいて、救急要請を行った通報者に送信すべきコンテンツの候補を選定する(ステップS102)。
【0082】
出力部130は、ステップS102において選定されたコンテンツの候補を、例えば消防指令システムのディスプレイに出力する。上述のように、選定されたコンテンツの候補は、例えば消防指令システムのディスプレイに
図6に示すような形式で表示される。
【0083】
以上のとおり、本実施形態におけるコンテンツ選定装置100においては、取得部110が取得した情報にて示される患者の状態に基づいて、選定部120が通報者に送信すべきコンテンツの候補を選定する。選定したコンテンツの候補は、出力部130を介して消防指令システムのディスプレイ等に表示される。消防指令センターの司令員は、通報者に対して、患者の状態に応じたコンテンツを送信することが可能となる。
【0084】
救急要請がなされた場合において、患者の予後を改善するためには、救急車が到着するまでの期間に、患者に対して何らかの応急手当が行われることが好ましい。そのためには、通報者に対して適切な情報、つまり、患者の状態に適合し、かつ、当該情報を参照することによって通報者が実際に応急手当を行うことが可能になるような情報が提供されることが好ましい。
【0085】
コンテンツ選定装置100は、患者の状態に応じたコンテンツの候補を選定して出力する。そして、消防指令センターの司令員等により、患者の状態に応じて選定されたコンテンツが通報者へ送信される。また、通報者へ送信されるコンテンツの種類は特に限定されない。すなわち、画像や動画、地図等のコンテンツが含まれる。
【0086】
画像や動画等の情報は、司令員からの音声のみの情報と比較して、通報者の理解が容易であると考えられる。つまり、通報者は、画像や動画等の情報を参照することで、患者に行うべき応急手当の具体的な内容に容易に把握することできると考えられる。そのため、コンテンツ選定装置100によって選定されるこれらの情報は、音声のみの情報と比較すると適切な情報といえる。
【0087】
したがって、本実施形態におけるコンテンツ選定装置100は、通報者に対して適切な情報を提供可能にする。
【0088】
(第2の実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。
図8は、本発明の第2の実施形態におけるコンテンツ選定装置を示す図である。
【0089】
図8に示すように、本発明の第2の実施形態におけるコンテンツ選定装置200は、取得部110と、選定部220と、同報判定部224と、出力部130とを備える。また、コンテンツ選定装置200には、コンテンツ格納部121が接続されてもよい。
【0090】
取得部110及び出力部130は、上述した第1の実施形態において同じ符号が付された要素と同様の要素である。同報判定部224は、患者に対する複数の救急要請の有無を判定する。選定部220は、救急要請の対象とされた患者の状態及び複数の救急要請の有無に基づいて、救急要請を行った通報者に送信すべきコンテンツの候補を選定する。
【0091】
すなわち、コンテンツ選定装置200は、同報判定部224を備える点、及び、選定部220が複数の救急要請の有無にも基づいてコンテンツの候補を選定する点が、第1の実施形態におけるコンテンツ選定装置100と異なる。
【0092】
なお、選定部220は、第1の実施形態における選定部120と同様に、学習済モデル122を備えてもよい。選定部220が学習済モデル122を備える場合には、コンテンツ選定装置200は、学習部123を備えてもよい。
【0093】
例えば交通事故等の場合においては、同一の患者に対して複数の救急要請がなされる場合がある。この場合には、複数の通報者が存在することとなる。そのため、同一の患者に対して複数の救急要請がなされる場合には、患者の状態に加えて、救急要請を行った通報者の数に応じて、通報者の各々に対して送信されるコンテンツが選定されることが好ましい場合がある。
【0094】
そこで、本実施形態においては、コンテンツ選定装置200は、患者の状態に限らず、複数の通報者からの救急要請の有無にも基づいて、コンテンツの候補を選定する。なお、本実施形態及び以降の各実施形態においては、同一の患者に対する複数の救急要請を同報と称する。
【0095】
次に、本実施形態におけるコンテンツ選定装置200の要素について説明する。なお、第1の実施形態と同様の要素については、説明を適宜省略する。
【0096】
同報判定部224は、同一の患者に対する複数の救急要請の有無を判定する。すなわち、同報判定部224は、ある患者に対する同報の有無を判定する。また、同報があると判定された場合には、同報判定部224は、通報者の数も併せて特定してもよい。
【0097】
同報判定部224が同報の有無を判定する際に用いられる手法は、特に制限されない。一例として、消防指令システムが同報判定機能を備える場合には、同報判定部224は、当該機能による判定結果を取得してもよい。この場合には、消防指令システムが備える同報判定機能によって判定された同報の有無に関する判定結果が、同報判定部224による同報の有無の判定結果となる。
【0098】
また、同報判定部224は、通報者の所在地、通報者の電話番号、救急要請の対象とされた患者の状態等に基づいて、適宜同報の有無を判定してもよい。例えば、同報判定部224は、互いに近接した場所に居る複数の通報者から類似した状態の患者に対する救急要請がなされた場合に、同報があると判定してもよい。
【0099】
選定部220は、取得部110によって取得された患者の状態を示す情報、及び、同報判定部224によって判定された複数の救急要請の有無に基づいて、救急要請を行った通報者に送信すべきコンテンツの候補を選定する。
【0100】
例えば、選定部220は、同報があると判定された場合に、通報者の人数、年齢や性別、患者の状態、年齢や性別、救急要請が必要となった要因となる事故の種別等に基づいて、通報者の各々に対して送信すべきコンテンツの候補を選定する。この場合の具体的な一例として、選定部220は、同報があると判定された場合に、複数の通報者の各々に対して異なるコンテンツが送信されるようにコンテンツの候補を選定する。
【0101】
救急要請がなされている場合において、患者の状態によっては、複数の処置が行われることが好ましい場合がある。例えば、交通事故が発生した場合において、患者が心肺停止の状態にあり、かつ、出血がある場合には、心肺蘇生法と止血との双方の処置が行われることが好ましいと想定される。また、この場合には、患者の安全な場所への移動や、AEDの用意等の処置が更に必要となることも想定される。
【0102】
このような場合において、同報がある、すなわち複数の通報者が存在する場合には、複数の通報者に対してそれぞれ異なるコンテンツが送信されることで、複数の通報者によってこれらの複数の処置が行われる可能性が高まることが考えられる。
【0103】
そこで、上述のように、患者に対して複数の処置が必要であると想定される場合において、選定部220は、複数の通報者の各々に対して異なるコンテンツが送信されるようにコンテンツの候補を選定する。例えば、上述の交通事故の例においては、選定部220は、ある通報者に対しては、
図3に示す「止血法」のコンテンツのいずれかを、別の通報者に対しては、「心肺蘇生」のコンテンツのいずれかを、更に別の通報者が存在する場合には、当該通報者に対して「患者一時移動」のコンテンツの候補を選定する。
【0104】
また、選定部220は、同報があると判定された場合であっても、複数の通報者の全てに対して同じコンテンツが送信されるようにコンテンツの候補を選定してもよい。
【0105】
救急要請の対象とされた患者の状態によっては、必要となる処置が限られている場合がある。また、患者に対して複数の処置が必要である場合においても、当該複数の処置には、必要性又は緊急性の高い処置が含まれる場合がある。 これらの場合においては、必要性の高い処置が確実に行われるようにコンテンツが送信されることが好ましいと考えられる。そこで、これらの場合において、選定部220は、複数の通報者の各々に対して同じコンテンツが送信されるようにコンテンツの候補を選定する。
【0106】
なお、選定部220が複数の通報者の各々に対して異なるコンテンツが送信されるようにコンテンツの候補を選定する場合において、同じコンテンツが複数の通報者に送信されるようにコンテンツが選定されてもよい。例えば、選定部220は、複数の通報者の各々に対するコンテンツの候補のうち、緊急性の高い処置に関連するコンテンツに関しては、複数の通報者に送信されるようにコンテンツの候補を選定してもよい。このようにすることで、緊急性の高い処置が患者に対して行われる可能性が高まることが考えられる。
【0107】
また、別の一例として、選定部220は、同報があると判定された場合に、通報者の年齢や性別等の通報者の属性に応じて、通報者の各々に対して送信すべきコンテンツの候補を選定してもよい。なお、通報者の属性は、通報者の年齢や性別等のように、患者に対する処置の実行に影響を及ぼしうる通報者の特徴を示す。
【0108】
通報者に対して送信されるコンテンツに関連する処置には、相応の体力を要する処置や、複数の手順を要する処置が含まれる場合がある。そのため、通報者の年齢や性別等を含む通報者の属性によっては、患者に対して処置を行うことが困難な場合も想定される。
【0109】
そこで、選定部220は、通報者の属性に応じて、コンテンツに対応する処置の実行に適していると想定される通報者に当該コンテンツが送信されるように、複数の通報者の各々に対して送信されるコンテンツの候補を選定する。
【0110】
例えば、患者の状態に応じて複数のコンテンツの候補があり、当該複数のコンテンツの候補に関連する処置に体力を要する処置が含まれる場合が想定される。また、若い男性は、一般的な傾向として、女性や高齢者と比較して体力があると考えられる。そこで、選定部220は、例えば若い男性と高齢者とが通報者に含まれる場合には、当体力を要する処置に関連するコンテンツが若い男性の通報者に送信されるように、複数の通報者の各々に対して送信されるコンテンツの候補を選定する。
【0111】
また、選定部220は、同報があると判定された場合において、通報者の属性に応じて、複数の通報者の全てに対して同じコンテンツが送信されるようにコンテンツの候補を選定してもよい。
【0112】
通報者の属性によっては、複数の通報者のいずれもが、患者の状態に適した処置を行うことが困難である場合も想定される。そこで、このような場合には、選定部220は、全ての通報者に対して、緊急性の高い処置に関連する同じコンテンツが送信されるようにコンテンツの候補を選定してもよい。
【0113】
また、
図3に示すようなコンテンツの一覧において、同報があると判定される場合に併せて送信すべき旨のフラグが設定されていてもよい。このようなフラグが設定されている場合には、選定部220は、フラグを適宜参照して、通報者の各々に対して送信すべきコンテンツの候補を選定する。
【0114】
なお、コンテンツ選定装置200は、上述した選定部220の動作の他は、
図7のフローチャートに示すコンテンツ選定装置100の動作と同様に動作する。すなわち、選定部220が、取得部110が取得した患者の状態を示す情報及び同報判定部224が判定した結果に基づいてコンテンツの候補を選定する他は、コンテンツ選定装置200は、コンテンツ選定装置100と同様に動作する。
【0115】
以上のとおり、本実施形態におけるコンテンツ選定装置200は、第1の実施形態におけるコンテンツ選定装置100と比較して、同報判定部224を更に備える。すなわち、コンテンツ選定装置200は、患者の状態を示す情報に加えて、同報の有無にも基づいて、通報者に送信すべきコンテンツの候補を選定する。
【0116】
そして、同報があると判定された場合には、患者の状態等に応じて、複数の通報者の各々に対して送信すべきコンテンツの候補が選定される。このようにコンテンツの候補が選定されることで、複数の通報者の協力により、救急要請の対象とされた患者に対して適切な処置が施される可能性が高まることが想定される。
【0117】
したがって、コンテンツ選定装置200は、複数の救急要請がある場合に、通報者に対してより適切な情報を提供可能にする。
【0118】
(第3の実施形態)
続いて、本発明の第3の実施形態について説明する。
図9は、本発明の第3の実施形態におけるコンテンツ選定装置を示す図である。
【0119】
図9に示すように、本発明の第3の実施形態におけるコンテンツ選定装置300は、取得部110と、選定部320と、到着時間推定部325と、出力部130とを備える。また、コンテンツ選定装置200には、コンテンツ格納部121が接続されてもよい。
【0120】
取得部110及び出力部130は、上述した各実施形態において同じ符号が付された要素と同様の要素である。到着時間推定部325は、患者の所在位置及び救急車の出動状況に基づいて、救急車が患者の所在位置へ到着する時間を判定する。選定部320は、救急要請の対象とされた患者の状態及び救急車が患者の所在位置へ到着する時間に基づいて、コンテンツの候補を選定する。
【0121】
すなわち、コンテンツ選定装置300は、到着時間推定部325を備える点、及び、救急車が到着するまでの時間にも基づいて選定部320がコンテンツの候補を選定する点が、第1の実施形態におけるコンテンツ選定装置100と異なる。
【0122】
なお、選定部320は、第1の実施形態における選定部120と同様に、学習済モデル122を備えてもよい。選定部320が学習済モデル122を備える場合には、コンテンツ選定装置300は、学習部123を備えてもよい。
【0123】
また、本実施形態におけるコンテンツ選定装置300の構成は、第2の実施形態におけるコンテンツ選定装置200の構成と互いに組み合わせて用いられてもよい。すなわち、コンテンツ選定装置300は、同報判定部224を備えてもよい。この場合に、選定部320は、上述した選定部220の動作を併せて行ってもよい。
【0124】
救急車が患者の所在位置へ到着するまでの時間は、例えば、消防署等の救急車が配備されている施設から患者の所在位置までの距離や、道路の渋滞を含む道路状況、救急車の出動状況等に応じて異なる。そのため、救急要請の対象とされた患者の状態によっては、救急車が患者の所在位置へ到着するまでの時間に応じて患者に対して行われるべき処置が異なる場合が想定される。すなわち、救急車が患者の所在位置へ到着するまでの時間に応じて送信されるコンテンツが選定されることが好ましい場合がある。
【0125】
そこで、本実施形態においては、コンテンツ選定装置300は、患者の状態に限らず、救急車が到着するまでの時間にも基づいて、コンテンツの候補を選定する。
【0126】
次に、本実施形態におけるコンテンツ選定装置300の要素について説明する。なお、第1の実施形態と同様の要素については、説明を適宜省略する。また、以下の説明において、救急車が患者の所在位置へ到着するまでの時間を到着時間と称する場合がある。
【0127】
到着時間推定部325は、上述のように、患者の所在位置及び救急車の出動状況に基づいて、救急車が患者の所在位置へ到着する時間を推定する。到着時間推定部325によって推定される到着時間は、救急車が患者の所在位置へ到着する時刻でもよいし、推定が行われる時点から救急車が患者の所在位置に到着するまでの所要時間でもよい。また、到着時間として、救急車が患者の所在位置へ到着する特定の時刻又は救急車が患者の所在位置に到着するまでの特定の所要時間が推定されてもよいし、時刻の範囲又は所要時間の範囲が推定されてもよい。
【0128】
到着時間推定部325が到着時間を推定するために用いる機構は、特に制限されない。例えば、一般的な消防指令システムは、救急車が患者の所在位置へ到着する時間を予想する機構を備える場合がある。このような場合には、到着時間推定部325は、消防指令システムが予想した当釈時間を用いてもよい。すなわち、消防指令システムが予測した到着時間が、到着時間推定部325による到着時間の推定結果とされる。
【0129】
また、到着時間推定部325は、救急車の所在地から患者の所在位置までの距離や、渋滞の有無といった道路状況を含む救急車の出動状況等に基づき、例えば過去の実績、任意の予測モデル等に応じて到着時間を推定してもよい。
【0130】
選定部320は、取得部110によって取得された患者の状態を示す情報、及び、到着時間推定部325によって推定された救急車が患者の所在位置へ到着する時間に基づいて、通報者に送信すべきコンテンツの候補を選定する。
【0131】
救急車が患者の所在位置へ到着するまでの時間は、例えば、救急車の所在地から患者の所在位置までの距離や、救急車の出動状況等に応じて異なる。そして、救急車が患者の所在位置へ到着するまでの時間によって、患者に対する処置を行うべきか否かの判断が変わり得る場合がある。
【0132】
一例として、交通事故が発生し、道路上に患者が倒れている場合を想定する。この場合に、
図3に示す「患者一時移動」とのコンテンツに対応する処置、すなわち、患者を安全な場所へ移動させる処置は、新たな事故の発生といった二次災害を防ぐ観点からは行われることが望ましい。一方、患者の状態の観点においては、患者を移動させることによって、患者の状態が悪化する可能性がある。
【0133】
そのため、この例において、救急車の到着に長い時間を要する場合には、二次災害が発生する可能性が高まることから、患者を移動させる処置が行われることが好ましいと考えられる。これに対して、救急車の到着までに多くの時間を要さない場合には、二次災害が発生する可能性は相対的に小さいことから、患者の状態を悪化させないために、当該処置を行わないことが好ましいと考えられる。
【0134】
別の例として、
図3に示す「付近AED案内」とのコンテンツに対応する処置、すなわち、患者にAEDを使用するためにAEDを用意する処置は、救急車の到着時間に応じて必要性が異なることが想定される。
【0135】
例えば、AEDが患者の所在位置の近くに設置されており、かつ、救急車の到着に長い時間を要する場合には、AEDを用いた応急処置が行われることが好ましいと考えられる。この場合には、通報者に対して「付近AED案内」のコンテンツを送信し、通報者にAEDの用意を促すことが好ましいと考えられる。
【0136】
一方、AEDの設置箇所が遠く、AEDの用意に時間を要する場合や、救急車の到着までに多くの時間を要さない場合には、AEDが使用可能になる前に救急車が到達することが考えられる。つまり、AEDが使用可能になる前に救急隊員による処置が行われる可能性が高いことが想定される。この場合には、AEDを用意する必要性は相対的に低いと考えられる。
【0137】
そこで、上述のように、救急車の到着時間に応じてコンテンツに関連する処置の必要性が変化する場合には、選定部320は、救急車の到着時間に応じて、送信すべきコンテンツの候補として選定されるコンテンツを変化させる。なお、選定部320が救急車の到着時間に応じて選定するコンテンツの候補を変化させる場合に、到着時間に関する基準は、コンテンツに対応する処置を行う際に必要となる時間等に応じて、例えばコンテンツ毎に適宜定められればよい。
【0138】
選定部320は、救急車が患者の所在位置へ到着する時間、すなわち救急車の到着時間に応じて、選定するコンテンツの候補を変化させる。つまり、選定部320は、到着時間に適したコンテンツが送信されるように、通報者に送信すべきコンテンツの候補を選定する。
【0139】
選定部320は、救急車の到着時間が予め定めた基準を満たす場合に、当該到着時間に応じて必要となる処置に関連するコンテンツを、送信すべきコンテンツの候補として選定する。選定部320は、例えば、救急車の到着時間が予め定めた基準と比較して長い場合に、当該到着時間に応じて必要となる処置に関連するコンテンツを、送信すべきコンテンツの候補として選定する。選定部320は、例えば、上述の「患者一時移動」のコンテンツのように、救急車の到着時間が予め定めた時間と比較して長い場合に必要となる処置に関連するコンテンツをこのような手順にて選定する。
【0140】
また、選定部320は、救急車が患者の所在地へ到着するまでの時間と、コンテンツに関連する処置の実行に要する時間とを対比して、送信すべきコンテンツの候補として選定してもよい。つまり、選定部320は、救急車が患者の所在地へ到着するまでの時間が、あるコンテンツに関連する処置の実行に要する時間と比較して長い場合に、当該コンテンツを送信すべきコンテンツの候補として選定する。選定部320は、「付近AED案内」のコンテンツのように、救急車が患者の所在地へ到着するまでの時間が、コンテンツに関連する処置の実行に必要な時間よりも長い場合に、当該処置に関連するコンテンツをこのような手順にて選定する。
【0141】
コンテンツと到着時間との関係は、一例として、上述した条件タグによって表される。例えば、コンテンツの送信に適した救急車の到着時間又は到着時間の範囲が、コンテンツの各々に対して条件タグとして付与される。この場合に、選定部320は、例えば、到着時間推定部325が推定した到着時間と、当該条件タグに付与された到着時間又は到着時間の範囲を対比することで、送信すべきコンテンツの候補を選定する。ただし、コンテンツと到着時間との関係は、その他の形式にて表されてもよい。選定部320は、上述の方法とは異なる方法を用いて、救急車の到着時間に応じて、送信すべきコンテンツの候補を選定してもよい。
【0142】
また、到着時刻に関係なく行われることが好ましい処置に関連するコンテンツが用意されている場合には、選定部320は、推定された到着時間に関係なく、当該コンテンツを送信すべきコンテンツの候補として選定してもよい。
【0143】
更に、コンテンツ選定装置300が同報判定部224を備える場合には、選定部320は、到着時間に応じて、通報者の各々に対して送信すべきコンテンツの候補を選定してもよい。
【0144】
例えば、救急車の到着に長い時間を要する場合には、患者に対して多くの処置が行われることが好ましい想定される。そこで、選定部320は、複数の通報者の各々に対して異なるコンテンツが送信されるように送信すべきコンテンツの候補を選定してもよい。また、選定部320は、救急車の到着に多くの時間を要さない場合には、患者に対して多くの処置は必要ない場合が多いと想定されることから、複数の通報者の各々に対して同じコンテンツが送信されるように送信すべきコンテンツの候補を選定してもよい。
【0145】
なお、コンテンツ選定装置300は、上述した選定部320の動作の他は、
図7のフローチャートに示すコンテンツ選定装置100の動作と同様に動作する。つまり、選定部320が、取得部110が取得した患者の状態を示す情報及び到着時間推定部325が推定した結果に基づいてコンテンツの候補を選定する他は、コンテンツ選定装置300は、コンテンツ選定装置100と同様に動作する。
【0146】
以上のとおり、本実施形態におけるコンテンツ選定装置300は、第1の実施形態におけるコンテンツ選定装置100と比較して、到着時間推定部325を更に備える。すなわち、コンテンツ選定装置300は、患者の状態を示す情報に加えて、救急車の到着時間にも基づいて、通報者に送信すべきコンテンツの候補を選定する。より詳しくは、コンテンツ選定装置300は、救急車の到着時間に応じて、患者に対して適した処置が行われるように、選定するコンテンツの候補を変化させる。
【0147】
このようにコンテンツの候補が選定されることで、救急車の到着時間に応じて必要となる処置が施される可能性が高まることが想定される。したがって、コンテンツ選定装置300は、通報者に対して、救急車の到着時間に応じたより適切な情報を提供可能にする。
【0148】
(第4の実施形態)
続いて、本発明の第4の実施形態について説明する。
図10は、本発明の第4の実施形態におけるコンテンツ選定装置を示す図である。
【0149】
図10に示すように、本発明の第3の実施形態におけるコンテンツ選定装置400は、取得部110と、選定部420と、心理状態特定部426と、出力部130とを備える。また、コンテンツ選定装置200には、コンテンツ格納部121が接続されてもよい。
【0150】
取得部110及び出力部130は、上述した各実施形態における同じ符号が付された要素と同様の要素である。心理状態特定部426は、通報者の心理状態を特定する。選定部420は、救急要請の対象とされた患者の状態を示す情報及び心理状態に基づいて、コンテンツの候補を選定する。
【0151】
すなわち、コンテンツ選定装置400は、心理状態特定部426を備える点、及び、通報者の心理状態にも基づいてコンテンツの候補を選定する点が、第1の実施形態におけるコンテンツ選定装置100と異なる。
【0152】
なお、選定部420は、第1の実施形態における選定部120と同様に、学習済モデル122を備えてもよい。選定部420が学習済モデル122を備える場合には、コンテンツ選定装置400は、学習部123を備えてもよい。
【0153】
また、本実施形態におけるコンテンツ選定装置400の構成は、第2の実施形態におけるコンテンツ選定装置200又は第3の実施形態におけるコンテンツ選定装置300の構成の一方又は両方と、互いに組み合わせて用いられてもよい。つまり、コンテンツ選定装置400は、同報判定部224又は到着時間推定部325の一方又は両方を備えてもよい。これらの場合に、選定部420は、必要に応じて、上述した選定部220又は選定部320の一方又は両方の動作を併せて行ってもよい。
【0154】
救急要請が行われる場合には、その直前に、事故や、患者の突然の体調の変化といった事象が生じている場合が多いと想定される。そのために、通報者の心理状態は、通常の落ち着いた心理状態とは異なる場合がある。すなわち、通報者は、焦っていたり、慌てていたりといったように、動揺した心理状態にある場合が想定される。
【0155】
そして、通報者が動揺した心理状態にある場合には、コンテンツの送信により患者に対して何らかの処置を行うことを通報者に促しても、当該処置が適切に行われない可能性も想定される。つまり、通報者が動揺した心理状態にあることによって、当該処置を行うこと自体が困難又は不可能である可能性や、誤った手順にて当該処置を行う可能性があることが想定される。したがって、通報者に対して何らかの処置を促すために送信されるコンテンツの候補を選定する場合には、通報者の心理状態を考慮することが好ましいと考えられる。
【0156】
そこで、本実施形態においては、コンテンツ選定装置400は、患者の状態に限らず、通報者の心理状態にも基づいて、コンテンツの候補を選定する。
【0157】
次に、本実施形態におけるコンテンツ選定装置400の要素について説明する。なお、第1の実施形態と同様の要素については、説明を適宜省略する。
【0158】
心理状態特定部426は、上述のように、通報者の心理状態を特定する。本実施形態において、心理状態特定部426が心理状態を特定するための手法は、特に限られない。また、コンテンツ選定装置400が同報判定部224を備え、同報判定部224が、同報があると判定する場合には、心理状態特定部426は、複数の通報者の各々について心理状態を特定してもよい。
【0159】
一例として、心理状態特定部426は、司令員によって判断された通報者の心理状態を受け付ける機構であってもよい。例えば、司令員は、通報者からの救急要請に応対する際に、通報者の口調や声調を通じて通報者の心理状態を推定する場合がある。そのため、心理状態特定部426は、司令員によって判断された通報者の心理状態を受け付けることで、通報者の心理状態を特定する。
【0160】
心理状態特定部426は、例えば、消防指令システムに設けられた任意の種類の入力手段を介して、司令員によって判断された通報者の心理状態を受け付ける。また、心理状態特定部426は、その他の手段を介して、通報者の司令員によって判断された通報者の心理状態を受け付けてもよい。
【0161】
別の例として、心理状態特定部426は、取得部110が取得した情報等に基づいて通報者の心理状態を特定する機構であってもよい。この場合に、心理状態は、例えば、通報者の口調や声調等に基づいて特定される。ただし、心理状態特定部426は、通報者による救急要請の内容等、他の情報に基づいて通報者の心理状態を特定してもよい。テレビ電話又はビデオ通話等によって救急要請が行われる場合には、心理状態特定部426は、通報者の表情や挙動に基づいて、通報者の心理状態が特定されてもよい。
【0162】
また、通報者の性別や年齢等を含む通報者の属性に基づいて通報者の心理状態が特定されてもよい。例えば、通報者が、動揺した心理状態にあることが多い属性に属する場合には、心理状態特定部426は、通報者が、動揺した心理状態にある可能性があるとして心理状態を特定してもよい。また、この場合には、心理状態特定部426は、通報者が動揺した心理状態にあると判断するための基準を変化させて心理状態を特定してもよい。
【0163】
また、心理状態特定部426は、心理状態を判定するための機構として、心理状態を判断するための公知の技術を適宜用いてもよい。
【0164】
更に、心理状態特定部426は、司令員による心理状態の判定結果と、心理状態を判定する機構による心理状態の判定結果とを組み合わせて用いて心理状態を特定してもよい。
【0165】
なお、心理状態特定部426によって特定される通報者の心理状態は、任意の形式にて表される。例えば、通報者の心理状態は、例えば、落ち着いた心理状態にあるか又は動揺した心理状態にある、との二段階の形式にて表されてもよい。また、通報者の心理状態は、動揺の程度が複数の段階で表されてもよいし、数値にて表されてもよい。更には、通報者の心理状態は、動揺している可能性があるといったように、可能性として特定されてもよい。
【0166】
選定部420は、心理状態特定部426によって特定された心理状態に応じて、選定するコンテンツの候補を変化させる。
【0167】
上述のように、焦っている又は慌てているといったように、通報者が動揺した心理状態にある場合には、複雑な処置の実行が不可能又は困難である可能性があり得る。そこで、選定部420は、心理状態特定部426によって特定された通報者の心理状態に応じて、選定するコンテンツの候補を変化させる。つまり、選定部420は、通報者の心理状態に適したコンテンツの候補を選定する。
【0168】
一例として、同じ処置に関連する複数のコンテンツが用意されている場合に、選定部420は、通報者の心理状態に応じたコンテンツを、通報者に送信すべきコンテンツとして選定する。例えば、選定部420は、通報者が動揺した心理状態にある場合は、より単純な構成のコンテンツを、送信すべきコンテンツの候補として選定する。また、通報者が落ち着いた正常な心理状態にある場合には、選定部420は、より詳細な構成のコンテンツを、送信すべきコンテンツの候補として選定する。
【0169】
単純な構成のコンテンツは、例えば、患者に対する処置の要点を主に示すコンテンツである。また、コンテンツが画像や動画である場合には、画像の主要な部位が大きく表示されるようなコンテンツが単純な構成のコンテンツに含まれる。
コンテンツに文字情報が含まれる場合には、例えば、簡潔な表現で処置が説明される。すなわち、単純な構成のコンテンツは、通報者による直観的な理解のしやすさが重視されたコンテンツである。
【0170】
また、この場合において、詳細な構成のコンテンツは、例えば、患者に対する処理の大部分又は全てを示すコンテンツである。また、コンテンツに文字情報が含まれる場合においては、文章等にて処置の詳細な説明が併せて行われてもよい。
すなわち、詳細な構成のコンテンツは、説明の詳細さが重視されたコンテンツである。
【0171】
また、患者の状態に対して複数の処置に関連するコンテンツが選定可能である場合には、選定部420は、通報者の心理状態に応じて選定されるコンテンツの候補の数を変化させてもよい。
【0172】
例えば、選定部420は、通報者が動揺した心理状態にあると特定されている場合には、落ち着いた正常な心理状態にある場合と特定されている場合比較して、少ない数のコンテンツの候補を選定する。又は、選定部420は、患者の状態に応じて、緊急性が高いコンテンツに限定してコンテンツの候補を選定する。
【0173】
上述の2つの例のようにコンテンツが選定されることで、通報者が動揺している場合においても、患者の状態に応じて少なくとも必要とされる処置が確実に患者に対して行われることが期待される。また、通報者が通常の落ち着いた心理状態にある場合には、患者の状態に応じて必要とされる処置うち、できるだけ多くの処理が、望ましい手順で適切に患者に対して行われることが期待される。
【0174】
なお、同じ処置に関連する複数のコンテンツが用意されており、かつ、複数の処置に関連するコンテンツが選定可能である場合には、選定部420は、上記の動作を組み合わせて行うことによりコンテンツの候補を選定してもよい。つまり、選定部420は、通報者が動揺した心理状態にあると特定されている場合には、単純な構成の少数のコンテンツを、送信すべきコンテンツの候補として選定する。
【0175】
また、選定部420は、通報者が動揺した心理状態にあると特定されている場合において、動揺の程度が特定されている場合には、特定された動揺の程度に応じて、当該通報者に対して送信すべきコンテンツの候補を選定してもよい。
【0176】
更に、通報者を落ち着かせるためのコンテンツが用意されている場合には、選定部420は、動揺した心理状態にあると特定された通報者に対して、通報者を落ち着かせるためのコンテンツを、送信すべきコンテンツとして選定してもよい。
【0177】
また、コンテンツ選定装置400が同報判定部224を備える場合には、選定部420は、複数の通報者の各々に対して、それぞれの心理状態に応じて送信すべきコンテンツの候補を選定してもよい。
【0178】
この場合に、選定部420は、例えば、通常の落ち着いた心理状態にあると特定された通報者に限ってコンテンツが送信されるように、複数の通報者の各々に対して送信されるべきコンテンツの候補を選定してもよい。すなわち、選定部420は、動揺した心理状態にある通報者に対してはコンテンツが送信されないように、複数の通報者の各々に対して送信すべきコンテンツの候補を選定してもよい。
【0179】
また、この場合には、選定部420は、通常の落ち着いた心理状態にある通報者に対しては、詳細な構成のコンテンツや、緊急性の高い処置に関連するコンテンツが送信されるようにコンテンツの候補を選定してもよい。選定部420は、この場合に、動揺した心理状態にある通報者に対しては、単純な構成のコンテンツや、緊急性の低い処置に関連するコンテンツが送信されるように、コンテンツの候補を選定してもよい。
【0180】
通報者の性別や年齢等を含む通報者の属性によって心理状態の傾向が異なる場合には、選定部420は、通報者の属性に応じて、通報者に対して送信すべきコンテンツの候補を選定してもよい。
【0181】
例えば、正常な心理状態にある可能性が高い属性の通報者に対しては、選定部420は、詳細な構成のコンテンツや緊急性の高い処置に関連するコンテンツが送信されるようにコンテンツの候補を選定する。また、動揺した心理状態にある可能性が高い属性の通報者に対しては、選定部420は、単純な構成のコンテンツや緊急性の低い処置に関連するコンテンツが送信されるようにコンテンツの候補を選定する。
【0182】
なお、コンテンツ選定装置400は、上述した選定部420の動作の他は、
図7のフローチャートに示すコンテンツ選定装置100の動作と同様に動作する。すなわち、選定部420が、患者の状態を示す情報及び心理状態特定部426が特定した通報者の心理状態に基づいてコンテンツの候補を選定する他は、コンテンツ選定装置400は、コンテンツ選定装置100と同様に動作する。
【0183】
以上のとおり、本実施形態におけるコンテンツ選定装置400は、第1の実施形態におけるコンテンツ選定装置100と比較して、心理状態特定部426を更に備える。すなわち、コンテンツ選定装置400は、患者の状態を示す情報に加えて、通報者の心理状態にも基づいて、通報者に送信すべきコンテンツの候補を選定する。より詳しくは、コンテンツ選定装置400は、通報者の心理状態に応じて、患者に対して適した処置が行われるように、選定するコンテンツの候補を変化させる。
【0184】
このようにコンテンツの候補が選定されることで、救急要請の対象とされた患者に対して実行可能な処置が施される可能性が高まることが想定される。したがって、コンテンツ選定装置400は、通報者に対して、当該通報者の心理状態に応じたより適切な情報を提供可能にする。
【0185】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、各実施形態における構成は、本発明のスコープを逸脱しない限りにおいて、互いに組み合わせることが可能である。
【0186】
この発明の一部又は全部は、以下の付記のようにも表されるが、以下に限られない。
【0187】
(付記1)
救急要請の対象とされた患者の状態を示す情報を取得する取得手段と、
前記患者の状態に基づいて、前記救急要請を行った通報者に送信すべきコンテンツの候補を選定する選定手段と、
選定された前記コンテンツの候補を出力する出力手段と、
を備えるコンテンツ選定装置。
【0188】
(付記2)
前記選定手段は、前記患者の状態を示す情報から抽出されるキーワードと、コンテンツの候補に付与されたタグとに基づいて前記コンテンツの候補を出力する、
付記1に記載のコンテンツ選定装置。
【0189】
(付記3)
前記選定手段は、前記患者の状態と、前記患者の状態に関連する前記コンテンツとの関係を学習した学習済モデルを用いて前記コンテンツの候補を選定する、
付記1又は2に記載のコンテンツ選定装置。
【0190】
(付記4)
前記選定手段は、複数の前記コンテンツの各々に対して優先度を付与して前記コンテンツの候補として選定し、
前記出力手段は、前記優先度に応じて、複数の前記コンテンツの候補を出力する、
付記1から3のいずれか一項に記載のコンテンツ選定装置。
【0191】
(付記5)
前記患者に対する複数の前記救急要請の有無を判定する同報判定手段を備え、
前記選定手段は、前記患者の状態及び前記複数の救急要請の有無に基づいて、前記コンテンツの候補を選定する、
付記1から4のいずれか一項に記載のコンテンツ選定装置。
【0192】
(付記6)
前記選定手段は、前記複数の救急要請があると判断された場合に、前記通報者の各々に異なるコンテンツが送信されるように前記コンテンツの候補を選定する、
付記5に記載のコンテンツ選定装置。
【0193】
(付記7)
前記選定手段は、前記複数の救急要請があると判断された場合に、前記通報者の各々に同じコンテンツが送信されるように前記コンテンツの候補を選定する、
付記5に記載のコンテンツ選定装置。
【0194】
(付記8)
前記患者の所在位置及び救急車の出動状況に基づいて、前記救急車が前記患者の前記所在位置へ到着する時間を推定する到着時間推定手段を備え、
前記選定手段は、前記患者の状態及び前記時間に基づいて、前記コンテンツの候補を選定する、
付記1から7のいずれか一項に記載のコンテンツ選定装置。
【0195】
(付記9)
前記選定手段は、前記救急車が前記所在位置へ到着する時間が所定の基準を満たす場合に、前記時間に応じて必要となる処置に関連する前記コンテンツを、前記コンテンツの候補として選定する、
付記8に記載のコンテンツ選定装置。
【0196】
(付記10)
前記選定手段は、前記救急車が前記所在位置へ到着するまでの時間と、前記コンテンツに関連する処置の実行に要する時間とを対比することにより、前記コンテンツの候補を選定する、
付記8に記載のコンテンツ選定装置。
【0197】
(付記11)
前記通報者の心理状態を特定する心理状態特定手段を備え、
前記選定手段は、前記患者の状態及び前記心理状態に基づいて、前記コンテンツの候補を選定する、
付記1から10のいずれか一項に記載のコンテンツ選定装置。
【0198】
(付記12)
前記心理状態特定手段は、前記通報者の年齢又は性別を少なくとも含む前記通報者の属性に基づいて、前記通報者の心理状態を特定する、
付記11に記載のコンテンツ選定装置。
【0199】
(付記13)
前記選定手段は、前記心理状態に基づいて、前記通報者が実行可能な処置に関する前記コンテンツを、前記コンテンツの候補を選定する、
付記11又は12のいずれか一項に記載のコンテンツ選定装置。
【0200】
(付記14)
前記心理状態特定手段は、前記通報者が通常の心理状態にあるか又は動揺した心理状態にあるかを特定する、
付記11から13のいずれか一項に記載のコンテンツ選定装置。
【0201】
(付記15)
前記選定手段は、前記通報者の前記心理状態が動揺した心理状態にある場合に、通常の心理状態にある前記通報者に対し送信すべきコンテンツと比較して単純な構成の前記コンテンツを、前記コンテンツの候補として選定する、
付記14に記載のコンテンツ選定装置。
【0202】
(付記16)
前記選定手段は、前記通報者が動揺した心理状態にある場合に、通常の心理状態にある前記通報者に対し送信すべきコンテンツの数と比較して少ない数の前記コンテンツを、前記コンテンツの候補として選定する、
付記14又は15に記載のコンテンツ選定装置。
【0203】
(付記17)
前記選定手段は、複数の前記通報者の各々の前記心理状態に応じて、複数の前記通報者の各々に対して送信すべき前記コンテンツの候補を選定する、
付記11から15のいずれか一項に記載のコンテンツ選定装置。
【0204】
(付記18)
救急要請の対象とされた患者の状態を示す情報を取得し、
前記患者の状態に基づいて、前記救急要請を行った通報者に送信すべきコンテンツの候補を選定し、
選定された前記コンテンツの候補を出力する、
コンテンツ選定方法。
【0205】
(付記19)
コンピュータに、
救急要請の対象とされた患者の状態を示す情報を取得する処理と、
前記患者の状態に基づいて、前記救急要請を行った通報者に送信すべきコンテンツの候補を選定する処理と、
選定された前記コンテンツの候補を出力する処理と、
を実行させるプログラム。
【符号の説明】
【0206】
100 コンテンツ選定装置
110 取得部
120 選定部
130 出力部
121 コンテンツ格納部
122 学習済モデル
123 学習部
224 同報判定部
325 到着時間推定部
426 心理状態特定部