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特許7400905自発光型表示体用の離型フィルム一体型封止材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】自発光型表示体用の離型フィルム一体型封止材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20231212BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20231212BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20231212BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20231212BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20231212BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20231212BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B27/36
B32B27/32 Z
B32B7/06
B32B3/30
H01L33/56
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022142053
(22)【出願日】2022-09-07
(62)【分割の表示】P 2018179292の分割
【原出願日】2018-09-25
(65)【公開番号】P2022173252
(43)【公開日】2022-11-18
【審査請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】續木 淳朗
【審査官】福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/013389(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
H01L 33/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自発光型表示体用の封止材であって、
封止フィルムと、離型フィルム、とが積層されてなる多層フィルムであり、
前記封止フィルムとの界面側の表面である剥離面の表面のJIS K 6768に準じた濡れ指数が、25Dyne以上40Dyne以下であり、
前記離型フィルムは、前記封止フィルムとの界面側の表面である剥離面の表面粗さ:Rzが、80nm以上500nm以下である、
離型フィルム一体型封止材。
【請求項2】
前記離型フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)の何れかをベース樹脂とする、
請求項1に記載の離型フィルム一体型封止材。
【請求項3】
前記離型フィルムが、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムであって、
該ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムは、前記封止フィルムとの界面側の表面である剥離面に、密着性及び離型性を調整するための表面加工処理が行われていない表面未処理ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムである、
請求項2に記載の離型フィルム一体型封止材。
【請求項4】
前記封止フィルムが、オレフィン系樹脂をベース樹脂とする、
請求項1から3の何れかに記載の離型フィルム一体型封止材。
【請求項5】
前記封止フィルムのベース樹脂が、密度0.870g/cm以上0.930g/cm以下のポリエチレン系樹脂である、
請求項4に記載の離型フィルム一体型封止材。
【請求項6】
下記の密着性試験によって測定した前記封止フィルムと前記離型フィルムとの界面における密着強度が、0.3N/15mm以上3.0N/15mm以下である、
請求項1から5の何れかに記載の離型フィルム一体型封止材。
密着性試験:15mm幅にカットした離型フィルム一体型封止材において、封止フィルムに密着している離型フィルムを、剥離試験機(テンシロン万能試験機 RTF-1150-H)にて垂直剥離(50mm/min)試験を行い、両フィルムの界面における密着強度を測定する。
【請求項7】
請求項1から6の何れかに記載の離型フィルム一体型封止材と、
複数の発光素子が配線基板に実装されてなる発光モジュールと、
が積層されてなる積層体を、
金属及び/又はガラスからなる加熱板に載置した状態で加熱圧着することによって一体化する、熱ラミネート工程を含んでなり、
前記加熱圧着を、前記積層体を構成する離型フィルム一体型封止材の前記離型フィルムを、他の離型フィルムを介さずに、前記加熱板に直接載置して行う、LEDモジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自発光型表示体用の封止材に関する。詳しくは、この封止材は、製膜時に予め離型フィルムが一体化されている離型フィルム一体型封止材であり、自発光型表示体用のLEDモジュールの品質安定性と生産性を向上させることができる封止材である。
【背景技術】
【0002】
各種の液晶式の表示装置に代わる次世代型の表示装置として、マイクロLEDテレビに代表される自発光型表示体の開発が進んでいる(特許文献1参照)。通常、これらの自発光型表示体は、LED素子等の発光素子が配線基板に実装されている発光モジュールの発光面側の表面に、発光素子を保護するための封止フィルムが積層されてなる自発光型表示体用のLEDモジュールに、更に、各種の光学フィルムや透明保護ガラス等の表示面パネルが積層されている構成である(特許文献2、3参照)。
【0003】
LEDモジュールを構成する自発光型表示体用の封止材には、例えば、LEDモジュール等の配線基板を構成するガラスエポキシ樹脂やガラス板等との密着性に優れるものであることが求められる。そのような密着性を有する封止フィルムの例として、特許文献2にはポリエチレンを含んでなる封止材、特許文献3には、ガラス密着性により優れる酸変性ポリエチレンを含んでなる封止材が開示されている。
【0004】
ところで、LEDモジュールは、発光モジュールと、封止フィルムと、が積層されてなる積層体を加熱板に載置した状態で加熱圧着して一体化する熱ラミネート工程により製造される。この工程において、優れた密着性を有する封止フィルムと上記の加熱板との間の上記工程終了後における必要十分な剥離性を確保するためには、上記の加熱圧着を行う際に、封止フィルムと、加熱板との間に、ポリエステル系樹脂等からなる各種の離型フィルムを介在させる必要があった。
【0005】
従来、このような離型フィルムとして、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレン4フッ化エチレン)等の高機能フッ素系樹脂や、或いは、PET(ポリエチレンテレフタラート)等のポリエステル系樹脂からなる各種の離型フィルムが用いられている(特許文献4参照)。
【0006】
ところが、これらの離型フィルムを介在させて、上記の熱ラミネート工程を行う際、加熱に伴う離型フィルム自体の変形、或いは、離型フィルムと封止フィルムの間の隙間への微細な異物の混入等により、製膜後の封止材表面の平滑性が損なわれてしまう場合があった。封止材表面の平滑性の損失は、自発光型表示体の光学特性や長期耐久性の低下を引き起こす原因となる。LEDモジュールの生産現場においては、このような離型フィルムの使用に伴う品質低下を回避する新たな技術的手段が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-14481号公報
【文献】特開2017-9725号公報
【文献】特開2014-148584号公報
【文献】特開2017-35382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであり、自発光型表示体の製造過程で行われる熱ラミネート工程において、離型フィルムを用いることに伴って発生する封止材表面の平滑性の損失と、それに起因する自発光型表示体の品質低下を回避することができる新たな技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、自発光型表示体用の封止材について、製膜時に予め離型フィルムが一体化されている離型フィルム一体型封止材とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に本発明は以下のものを提供する。
【0010】
(1) 自発光型表示体用の封止材であって、封止フィルムと、離型フィルム、とが積層されてなる多層フィルムであり、前記封止フィルムは、オレフィン系樹脂をベース樹脂とし、前記離型フィルムは、融点が220℃以上270℃以下であって、下記の密着性試験によって測定した前記封止フィルムと前記離型フィルムとの界面における密着強度が、0.3N/15mm以上3.0N/15mm以下である、離型フィルム一体型封止材。
密着性試験:15mm幅にカットした離型フィルム一体型封止材において、封止フィルムに密着している離型フィルムを、剥離試験機(テンシロン万能試験機 RTF-1150-H)にて垂直剥離(50mm/min)試験を行い、両フィルムの界面における密着強度を測定する。
【0011】
(1)の発明においては、自発光型表示体用の封止材を、封止フィルムと離型フィルムとが予め一体化されている多層フィルムとした。尚、2つのフィルムの間の密着強度の下限を、一体化されている多層フィルムとしての取扱い性を好ましい水準に維持することができる程度の強度以上であって、同上限を、良好な離型性を維持しうる強度以下に規定した。このような離型フィルム一体型封止材によれば、自発光型表示体の製造過程において行われる熱ラミネート工程時に、離型フィルムの使用に伴って発生していた封止材表面の平滑性の損失を回避することができる。
【0012】
(2) 前記離型フィルムは、前記封止フィルムとの界面側の表面である剥離面の表面のJIS K 6768に準じた濡れ指数が、25Dyne以上40Dyne以下である、(1)に記載の離型フィルム一体型封止材。
【0013】
(2)の発明においては、(1)に記載の離型フィルム一体型封止材において、離型フィルムと封止フィルムと一体化することを前提として、両層の界面側に配置される離型フィルム剥離面の濡れ指数を、従来の単体の離型フィルムとは異なる特定の範囲に調整した。これにより、(1)の発明におけるフィルム間の密着強度に係る上記の要件を満たす離型フィルム一体型封止材の品質安定性を容易に良好な水準に保持することができる。
【0014】
(3) 前記離型フィルムは、前記封止フィルムとの界面側の表面である剥離面の表面粗さ:Rzが、80nm以上500nm以下である、(1)又は(2)に記載の離型フィルム一体型封止材
【0015】
(3)の発明においては、(1)又は(2)に記載の離型フィルム一体型封止材において、離型フィルムと封止フィルムと一体化することを前提として、両層の界面側に配置される離型フィルムの剥離面の表面粗さ:Rzを80nm以上500nm以下の範囲に調整した。これにより、封止フィルムを構成する樹脂フィルムと離型フィルムを構成する樹脂フィルムとをロール・トゥ・ロール方式の生産設備において、積層一体化する工程において生じやすい、ロール間を走行するフィルムのシワや蛇行の発生を低減させることができる。
【0016】
(4) 前記離型フィルムが、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムであって、該ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムは、前記封止フィルムとの界面側の表面である剥離面に、密着性及び離型性を調整するための表面加工処理が行われていない表面未処理ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムである、(1)から(3)の何れかに記載の離型フィルム一体型封止材。
【0017】
(4)の発明においては、(1)から(3)の何れかに記載の離型フィルム一体型封止材の離型フィルムを、安価で入手容易でありながら耐熱性に優れる「表面未処理ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム」で構成した。これにより、(1)から(3)の何れかに記載の離型フィルム一体型封止材の品質安定性と経済性を極めて好ましい水準に維持することができる。
【0018】
(5) 前記封止フィルムのベース樹脂が、密度0.870g/cm以上0.930g/cm以下のポリエチレン系樹脂である、(1)から(4)の何れかに記載の離型フィルム一体型封止材。
【0019】
(5)の発明においては、(1)から(4)の何れかに記載の離型フィルム一体型封止材の封止フィルムを、特定の密度範囲にあるポリエチレン系樹脂で構成した。これにより、(1)から(4)の何れかに記載の離型フィルム一体型封止材の封止材としての本来の性能である、発光モジュールの封止性能、即ち、配線基板表面の微細な凹凸への樹脂の回り込み性能(モールディング性)、配線基板との密着性、及び、発光素子の衝撃からの保護性能を、特に好ましい水準にまで向上させることができる。
【0020】
(6) (1)から(5)に記載の離型フィルム一体型封止材と、複数の発光素子が配線基板に実装されてなる発光モジュールと、が積層されてなる積層体を、
金属及び/又はガラスからなる加熱板に載置した状態で加熱圧着することによって一体化する、熱ラミネート工程を含んでなり、前記加熱圧着を、前記積層体を構成する離型フィルム一体型封止材の前記離型フィルムを、他の離型フィルムを介さずに、前記加熱板に直接載置して行う、LEDモジュールの製造方法。
【0021】
(6) (6)の発明によれば、自発光型表示体の製造過程における熱ラミネート工程時の離型フィルムの使用に伴う品質低下と生産性の悪化を回避して、品質安定性に優れる自発光型表示体を優れた生産性の下で製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、自発光型表示体の製造過程で行われる熱ラミネート工程において、離型フィルムを用いることに伴って発生する封止材表面の平滑性の損失を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の離型フィルム一体型封止材を構成する封止フィルムが発光モジュールに積層されてなる自発光型表示体用のLEDモジュールを用いてなる自発光型表示体の画像表示面の平面図及びその部分拡大平面図である。
図2図1のA-A部分の断面を表した断面図である。
図3図1の自発光型表示体用のLEDモジュールを構成するLED素子の斜視図である。
図4】本発明の離型フィルム一体型封止材の層構成の一例を模式的に示す断面図である。
図5】本発明の離型フィルム一体型封止材を用いた自発光型表示体用のLEDモジュールの製造方法の説明に供する図面である。
図6図5の部分拡大図であり、ラミネータ-の加熱板に対する、封止フィルムの載置の態様の説明に供する図面である。
図7】本発明の離型フィルム一体型封止材の製造方法の説明に供する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<自発光型表示体>
先ず、本明細書における「自発光型表示体」とは、上記において例示したマイクロLEDテレビに代表される表示装置であり、文字・画像・動画等の視覚情報の表示装置である。この表示装置は、微少且つ多数の発光素子を配線基板上にマトリクス状に実装し、各発光素子をこれに接続された発光制御手段により選択的に発光させることにより、上記の視覚情報を、各発光素子の点滅により直接的に表示画面上に表示することができる表示装置である。尚、本発明の離型フィルム一体型封止材は、「自発光型表示体」の中でも、発光素子としてLED素子を用いるLED表示装置に特に好ましく用いることができる。
【0025】
[マイクロLED表示装置]
図1は、本発明の離型フィルム一体型封止材を用いて製造された自発光型表示体の一実施形態であるマイクロLED表示装置100の正面図、及び、その部分拡大図(100A)である。又、図2は、図1のA-A部分の断面を表した断面図であり、図1に示したマイクロLED表示装置100の層構成の説明に供する図面である。このマイクロLED表示装置100は、発光素子として、多数の微少サイズのLED素子10が、配線基板20に実装されてなる自発光型表示装置である。各々のLED素子10は、別途接合されるICチップ基板等の発光制御手段(図示せず)により、それぞれ個別にその発光が制御される。
【0026】
尚、本明細書における「微少サイズのLED素子」とは、具体的に、LED発光チップと、それを被覆する樹脂カバーとを含んだ発光素子全体のサイズについて、幅(W)及び奥行き(D)が、何れも300μm以下であり、高さ(H)が、200μm以下であるLED素子のことを言うものとする(図3参照)。
【0027】
又、この「微少サイズのLED素子」のサイズについては、幅及び奥行きが、何れも50μm以下であり、高さが、10μm以下であることが、より好ましい。尚、このサイズ範囲は、近年開発が進み、次世代型テレビの主流となることが期待されるマイクロLEDテレビに実装されるLED素子の標準的なサイズ範囲である。以下、本明細書においては、幅及び奥行きが、何れも50μm以下であり、高さが、10μm以下の微少サイズのLED素子が、数μm~数十μm程度のピッチで、数1000×数1000程度以上の個数でマトリクス状に配置されている自発光型表示体を「マイクロLED表示装置」と称する。
【0028】
そして、以下においては、「自発光型表示体」が「マイクロLED表示装置」である場合の実施形態を、本発明の様々な実施形態のうちの特に好ましい具体的な一例として取上げながら、本発明の詳細な説明を行う。但し、本発明の技術的範囲は「マイクロLED表示装置」のみへの適用に限定されるものではない。上述の定義による「自発光型表示体」全般にも適用可能な技術である。
【0029】
又、本明細書においては、発光素子が配線基板に実装されてなるモジュールを「発光モジュール」と総称する。マイクロLED表示装置100においては、多数のLED素子10が、配線基板20に実装されてなる発光モジュールに、封止フィルム111からなる離型フィルム一体型封止材1の本体(111)が、更に積層されてLEDモジュール30が構成されている。尚、離型フィルム一体型封止材1は、マイクロLED表示装置100に組込まれて一体化している段階では、離型フィルム121は除去されていて、封止フィルム111からなる本体として封止フィルムしての機能を発揮するが、このような状態にある封止フィルム111のことを、説明の必要に応じて離型フィルム一体型封止材の封止材本体111とも称する。離型フィルム一体型封止材の詳細については、後述する。
【0030】
そして、マイクロLED表示装置100においては、そして、各種の光学フィルムや透明保護ガラス等の表示面パネル2が更に、LEDモジュール30を構成する離型フィルム一体型封止材の封止材本体111の外表面(マイクロLED表示装置100における表示面側)に積層される。
【0031】
又、複数の自発光型表示体用の発光モジュールを、同一平面上においてマトリクス状に接合し、接合された発光モジュールに、上記と同様に、封止材本体111を積層することによって、大型の自発光型表示体用のLEDモジュール、更には、大型のマイクロLED表示装置を構成することもできる。
【0032】
(LEDモジュール)
LEDモジュール30を構成する配線基板20は、図2に示す通り、支持基板21の表面に、LED素子10と導通可能な形態で、例えば、銅等の金属やその他の導電性部材によって形成される配線部22が形成されてなる回路基板である。支持基板21は、電子回路の基板として従来公知のガラスエポキシ系基板やガラス基板等の硬質の基板を用いることが好ましい。
【0033】
LEDモジュール30においては、図2に示すように、LED素子10が、ハンダ層23を介して、配線部22の上に導電可能な態様で実装されている。
【0034】
LEDモジュール30のサイズについては、特段の限定はないが、対角線の長さが50インチ~200インチ程度のものが、一般的には、コストパフォーマンスの観点から好ましいものとされている。又、上述の通り、複数の自発光型表示体用のLEDモジュール30を、同一平面上においてマトリクス状に接合して、大型のマイクロLED表示装置100等の自発光型表示体の発光面を構成することができる。例えば、対角線の長さが6インチのLEDモジュール30を、縦横に100×100個接合し、対角線の長さが、600インチの大画面を備えるマイクロLEDテレビを構成することもできる。
【0035】
(LED素子)
LEDモジュール30を構成するLED素子10は、P型半導体とN型半導体が接合されたPN接合部での発光を利用した発光素子である。P型電極、N型電極を素子上面、下面に設けた構造と、素子片面にP型、N型電極の双方が設けられた構造が提案されている。何れの構造のLED素子10も、本発明のマイクロLED表示装置100に用いることができるが、特開2006-339551号公報に「チップ状電子部品」として開示されているLED素子のような微少サイズのLED素子を特に好ましく用いることができる。同文献に開示されているLED素子は、幅×奥行き×高さのサイズが、概ね25μm×15μm×2.5μmであるとされている。
【0036】
LED素子10は、LED発光チップ11と、それを被覆する樹脂カバー12とを含んでなるものであることが好ましい。又、この樹脂カバー12としては、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂等の有機絶縁材料が用いられ、これらのなかでも、エポキシ樹脂が特に好ましく用いられる。エポキシ樹脂によって形成される樹脂カバー12は、単にLED発光チップ11を物理的衝撃から保護するのみならず、LED発光チップ11を構成する半導体と空気との屈折率の差に起因する半導体内への光の全反射を抑制してLED素子10の発光効率を高める役割も果たすからである。離型フィルム一体型封止材1は、エポキシ樹脂との密着性についても優れるオレフィン系樹脂により形成されている点においても、マイクロLED表示装置100に搭載する封止材として好ましい。
【0037】
本発明の自発光型表示体においては、LED発光チップとそれを被覆する樹脂カバーとを含んでなるLED素子であって、幅と奥行きが、何れも300μm以下であり、高さが200μm以下のサイズのLED素子を好ましく用いることができる。この場合、このLED素子の配置間隔は、0.03mm以上100mm以下であることが好ましい。
【0038】
又、本発明の自発光型表示体においては、LED発光チップと、それを被覆する樹脂カバーと、を含んでなるLED素子であって、幅と奥行きが、何れも50μm以下であり、高さが10μm以下のサイズの極めて微少なサイズのLED素子を、より好ましく用いることができる。この場合、このLED素子の配置間隔は、0.03mm以上100mm以下であることが好ましい。このようなLED素子の実装態様は、具体的にはマイクロLEDテレビにおけるLED素子の標準的な実装態様でもある。
【0039】
[離型フィルム一体型封止材]
図4に示すように、自発光型表示体用の離型フィルム一体型封止材1は、封止フィルム111と、離型フィルム121とが積層されてなる多層フィルムである。封止フィルム111は、離型フィルム一体型封止材1の封止材本体111として、多数の微少サイズのLED素子が実装されているLEDモジュール30において、良好なモールディング性を発現しながら配線基板20及びLED素子10を被覆して積層されることにより、これらのLED素子10を外部の衝撃等から保護する封止機能を発揮する。一方、離型フィルム121は、熱ラミネート加工の終了時に、封止フィルム111をラミネータの加熱板等から滑らかに脱離させる機能を発揮する。
【0040】
自発光型表示体用の離型フィルム一体型封止材1においては、封止フィルム111と離型フィルム121とは、加熱圧着等によって所定強度の密着強度で接合されていればよい。このフィルム間の界面における密着強度が、一体化時のフィルム間の密着の維持と、良好な離型性を兼ね備え得る特定の範囲に調整されている。具体的に、下記の密着性試験によって測定した封止フィルム111と離型フィルム121との界面における密着強度が、0.3N/15mm以上3.0N/15mm以下であればよい。
(密着性試験)
「15mm幅にカットした離型フィルム一体型封止材において、封止フィルムに密着している離型フィルムを、剥離試験機(テンシロン万能試験機 RTF-1150-H)にて垂直剥離(50mm/min)試験を行い、各表面の密着強度を測定する。」
【0041】
封止フィルム111と離型フィルム121との界面における上記の密着強度が、0.3N/15mm未満であると、熱ラミネート加工終了時に封止フィルム111を離型フィルム121から「滑らかに脱離させることができる」点については問題はない。しかしながら、この場合、多層フィルムとしてラミネータ等に設置する前の段階で層間の剥離が発生しやすく、これによって取扱い性が低下する点において好ましくない。
【0042】
一方、上記密着強度が、3.0N/15mmを超えると、熱ラミネート加工終了時の剥離のし易さが低下して、封止フィルム111を離型フィルム121から「滑らかに脱離させること」が困難になる点において好ましくない。
【0043】
ここで、上述の「封止フィルム111を離型フィルム121から滑らかに脱離させることができる」とは、より具体的には、離型フィルム一体型封止材1が30mmφの円柱棒に巻き付ける折り曲げ試験によっては層間剥離しない程度の層間密着性を有するものである一方で、尚且つ、手作業によりごく容易に剥離することができる状態を意味する。
【0044】
(封止フィルム(封止材本体))
離型フィルム一体型封止材1を構成する封止フィルム(封止材本体)111は、オレフィン系樹脂をベース樹脂とする樹脂組成物により形成される。封止フィルム(封止材本体)111のベース樹脂としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)や、低密度ポリエチレン樹脂を用いることができる。中でも、密度0.870g/cm以上0.930g/cm以下のポリエチレン樹脂を特に好ましく用いることができる。尚、本明細書において「ベース樹脂」とは、当該ベース樹脂を含有してなる樹脂組成物において、当該樹脂組成物の樹脂成分中で含有量比の最も大きい樹脂のことを言うものとする。
【0045】
又、封止フィルム(封止材本体)111をポリエチレン樹脂で形成する場合、より詳細には、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、又は、メタロセン系直鎖低密度ポリエチレン(M-LLDPE)を好ましく用いることができる。中でも、シングルサイト触媒であるメタロセン触媒を用いて合成されるものであるM-LLDPEを特に好ましく用いることができる。M-LLDPEは、側鎖の分岐が少なく、コモノマーの分布が均一であるため、分子量分布が狭く、超低密度にすることが容易であることより、LEDモジュール30、及びマイクロLED表示装置100等の自発光型表示体において、ガラスエポキシ樹脂板やガラス板等からなる配線基板20に対する封止フィルム(封止材本体)111の密着性を、特に優れたものとすることができる。
【0046】
又、封止フィルム(封止材本体)111には、必要に応じてシラン成分を含有させることができる。これにより、上述の配線基板20との密着性をより好ましい水準に向上させることができる。
【0047】
尚、封止フィルム(封止材本体)111は、単層構成であってもよいが、同層が更に複数の異なる組成の樹脂組成物からなる層が積層されて形成されている多層構成とされていてもよい。例えば、封止フィルム(封止材本体)111を、相対的に密度が高く耐熱性に優れるポリエチレン系樹脂からなるコア層と、相対的に密度が低く密着性に優れるポリエチレン系樹脂からなりシート表面に露出するスキン層とによって構成し、例えば、スキン層のみに、上記のシラン成分を偏在させて密着層とすることにより、耐熱性と密着性のバランスに優れる封止フィルム(封止材本体)111とすることができる。
【0048】
封止フィルム(封止材本体)111に含有させる「シラン成分」の材料としては、シラン変性ポリエチレン樹脂を用いることができる。このシラン変性ポリエチレン樹脂は、主鎖となる直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)等に、エチレン性不飽和シラン化合物を側鎖としてグラフト重合してなるものである。このようなグラフト共重合体は、接着力に寄与するシラノール基の自由度が高くなる。これにより、封止フィルム(封止材本体)111のガラスエポキシ基板等の配線基板20に対する密着性と密着耐久性を向上させることができる。シラン変性ポリエチレン樹脂は、例えば、特開2003-46105号公報に記載されている方法で製造できる。
【0049】
封止フィルム(封止材本体)111の厚さは、50μm以上500μm以下であることが好ましい。但し、被覆対象のLED素子10が、高さが10μm以下の極めて微少なサイズのLED素子である場合、封止フィルム(封止材本体)111の厚さは、25μm以上100μm以下であることが好ましい。被覆対象のLED素子のサイズに応じて、封止フィルム(封止材本体)111の厚さが、それぞれ50μm以上、或いは、25μm以上であることにより、LED素子を外部からの衝撃から十分に保護することができる。一方、封止フィルム(封止材本体)111の厚さが、1000μm以下であると、熱ラミネート工程におけるモールディング性を発揮しやすい。具体的には、LED素子10を被覆した状態での熱ラミネート加工時に、封止フィルム(封止材本体)111を構成する樹脂が、LED素子10が実装されている配線基板20の表面の凹凸に十分に回り込んで隙間のない良好なラミネートを行いやすい。又、被覆する対象のLED素子が、高さが10μm以下である極めて微少なサイズのLED素子である場合、封止フィルム(封止材本体)111の厚さが100μm以下であると、一体化後の自発光型表示体において、封止フィルム111からなる封止材本体111の光線透過率を好ましい水準に維持し易い。
【0050】
(離型フィルム)
離型フィルム一体型封止材1を構成する離型フィルム121の融点は、220℃以上270℃以下であればよい。このために、離型フィルム121は、融点が220℃以上270℃以下の樹脂をベース樹脂とする樹脂組成物により形成することができる。このような観点から、離型フィルム121のベース樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等を、好ましく用いることができる。
【0051】
そして、離型フィルム121は、封止フィルム111との界面側の表面である剥離面122の表面のJIS K 6768に準じた濡れ指数が、25Dyne以上40Dyne以下とされていることを特徴とする。剥離面122の濡れ指数が、25Dyne以上であれば、多層フィルムとして一体化された状態で完成してから、商品として流通し、熱ラミネート加工処理が施されるまでの間に、離型フィルム一体型封止材1として求められる必要なフィルム間の密着性を確保することができる。一方で、剥離面122の濡れ指数が、40Dyne以下であれば、熱ラミネート加工処理後において離型フィルム121から封止フィルム111を滑らかに脱離させることができる程度の離型性を維持することができる。
【0052】
離型フィルム一体型封止材1の剥離面122の濡れ指数を、上記範囲内に調整するためには、離型フィルム121を構成する樹脂フィルムとして、少なくとも封止フィルム111との一体化時に剥離面122とする側の面には、密着性及び離型性を調整するための表面加工処理が行われていない「表面未処理ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム」を用いることが好ましい。「密着性及び離型性を調整するための表面加工処理」とは、例えば、密着性を向上させるコロナ処理や、或いは、剥離性を高めるための各種の表面コーティング処理等、その他同様の目的で行われる公知の各表面加工処理方法を全て含むものとする。
【0053】
尚、表面に一般的なコロナ処理が施されたポリエチレンテレフタレート(コロナ処理済みPET)の同処理面の濡れ指数は、上記上限値の40Dyneを超えて50Dyne程度である。又、上述の通り、従来、離型フィルムとして汎用的に用いられているフッ素系フィルムの表面の濡れ指数は、通常、上記下限値未満の20Dyne程度である。
【0054】
上述したように、従来は、熱ラミネーション加工時における封止フィルムのラミネータの加熱板等からの離型性は、別途に容易した単独の離型フィルムを上記の加熱板等の上に予め載置しておくことによって担保されていた。この場合に好ましく用いられていた離型フィルムとしては、例えば、シリコーン等の離型剤を塗布して離型性を向上させた、即ち、「離型性を調整するための表面加工処理」が施された離型フィルムが広く用いられていた。しかしながら、仮に、これらの離型性を高めた離型フィルムを、離型フィルム一体型封止材1の離型フィルム121として用いて、オレフィン系樹脂からなる封止フィルム111を形成する樹脂フィルムと製膜時に一体化した場合には、層間の密着性が不足して、多層フィルムを構成する積層体の端部から層間剥離が頻繁に発生することとなりやすい。これに対して、上述の「表面未処理ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム」を、離型フィルム121を構成する樹脂フィルムとして用いた場合には、このような層間剥離の発生は十分に防止し、尚且つ、必要な離型性は維持することができる。
【0055】
又、離型フィルム121の剥離面122は、その表面粗さ:Rz(JIS B 0601-2001)が、80nm以上であることが好ましい。表面粗さ:Rzが、80nm未満である場合、封止フィルム111を構成する樹脂フィルムと離型フィルム121を構成する樹脂フィルムをロール・トゥ・ロールの生産設備において一体化する際に、フィルムのシワや蛇行が発生しやすく、上記のような微少な賦型処理がされていることにより、これらの製造時の不具合を十分に防止することができる。尚、従来の単独の離型フィルムにおいて、離型性を高めるために行われる賦型処理は、通常、剥離面の表面粗さ:Rz(JIS B 0601-2001)が、500nmを超えるような加工であることが一般的であるが、離型フィルム一体型封止材1の剥離面122においては、その表面粗さ:Rzは、多層フィルムの必要な層間強度を維持するために最大でも500nm以下に止めることが好ましい。
【0056】
[自発光型表示体用の離型フィルム一体型封止材の製造方法]
本発明の離型フィルム一体型封止材は、各層を形成するための封止材組成物を、シート状に溶融形成する製膜工程及び、製膜された各シートを加熱圧着することによって積層一体化する積層工程を経ることにより製造することができる。この溶融成形は、通常の熱可塑性樹脂において通常用いられる成形法、即ち、射出成形、押出成形、中空成形、圧縮成形、回転成形等の各種成形法により行うことができる。これらの各工程は、例えば、図7に示すようなロール・トゥ・ロール方式の生産設備において、オンラインで連続的に行うことができる。
【0057】
図7は、離型フィルム一体型封止材1の製造方法の説明に供する図面であるが、上述の工程を、ロール・トゥ・ロール方式の生産設備50によって行う場合の実施態様の一例を模式的に示すものである。このロール・トゥ・ロール方式の生産設備50においては、Tダイス51より、封止フィルム111を形成する溶融樹脂が押し出され、ゴムロール541とエンボスロール542の間においてニップされることにより、封止フィルム111を構成するフィルム状の樹脂基材111aが成形される。その際、第1給紙ロール52から、離型フィルム121を構成するフィルム状の樹脂基材121aも、上記のゴムロール541とエンボスロール542の間に繰り出されて、両基材が圧着されることによって一体化される。又、この際、必要に応じて、第2給紙ロール53からも、その他の機能性フィルム131aが供給され、同様に一体化される。一体化された各基材は冷却ロール543を経て、一体化された積層体の状態として排紙ロール54に巻き取られる。
【0058】
本発明の離型フィルム一体型封止材1においては、離型フィルム121(離型フィルム121を構成するフィルム状の樹脂基材121a)の表面(剥離面)の表面粗さを、Rz80nm以上に保持することにより、封止フィルム111を構成する樹脂基材111aと離型フィルム121を構成する樹脂基材121aとの間の最小限の滑り性を維持して、ロール・トゥ・ロール方式の生産設備において、積層一体化する工程において生じやすい、ゴムロール541やエンボスロール542等のガイドロールのロール間を走行する際の微細なシワや蛇行の発生を低減させることができる。表面粗さが80nm未満であると、上記ガイドロールとフィルムの間の滑りが少なくなり蛇行等が発生した場合、シワが入りやすくなり、積層一体化する工程が困難になる場合がある。
【0059】
<自発光型表示体の製造方法>
[LEDモジュールの製造方法]
マイクロLED表示装置100を構成する自発光型表示体用のLEDモジュール30は、LED素子10が実装されている配線基板20と離型フィルム一体型封止材1とを、封止フィルム111側の表面が配線基板20を被覆する態様で積層し、この積層体をラミネータの加熱板に載置した状態で加熱圧着して一体化する熱ラミネート工程を経ることにより得ることができる。
【0060】
この熱ラミネート工程は、図5及び図6に示すように、上記の積層体を、離型フィルム一体型封止材1の離型フィルム121の側をラミネータ40の加熱板41に直接又は補助加熱板42を介して載置し、この状態において真空引きにより積層体抑え板43を積層体に圧着させることにより行うことができる。尚、補助加熱板42は、鉄板等からなる加熱板41の表面の平滑性の不足を補うために配置される補助部材であり、通常熱伝導性と表面平滑性を有する青板ガラス等のガラス板が用いられる。本明細書における「加熱板」には、加熱板41のみから構成されるもののみならず、加熱板41に補助加熱板42が積層されている場合には、これらの両者からなる積層体を「加熱板」とみなすものとする。
【0061】
この加熱板41(42)への上記積層体の載置は、詳しくは、離型フィルム一体型封止材1の離型フィルム121の露出面123を加熱板41(42)に直接載置して行う。尚、この際、通常は、LED素子10が実装されている配線基板20よりも幅広の離型フィルム一体型封止材1を用意して、封止フィルム111が一体化時にモジュールサイズと適合する適性なサイズとなるように、離型フィルム121はハーフカットされることとなるような態様で、封止フィルム111の不要な端部を切り落とす処理が行われる。
【0062】
このようにして熱ラミネート工程を経た、離型フィルム一体型封止材1の封止フィルム111は、同層を形成するオレフィン系の樹脂が、充分なモールディング性を発揮して、LED素子10が実装されている配線基板20と良好な密着強度で密着する。
【0063】
[自発光型表示体の製造方法]
上記製造方法により得ることができるLEDモジュール30に、更に、粘着貼合等により、表示面パネル2を積層一体化することにより、図2に示すマイクロLED表示装置100、或いは、同様の層構成からなる各種の自発光型表示体を製造することができる。
【実施例
【0064】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0065】
図7に示すような、ロール・トゥ・ロール方式の生産設備において、上述の製造方法により、本発明に係る離型フィルム一体型封止材の試験製造を行った。
【0066】
<実施例の離型フィルム一体型封止材の製造>
(封止フィルム)
下記の封止フィルム用樹脂組成物を、φ30mm押出し機、200mm幅のTダイを有するフィルム成形機を用いて、押出し温度210℃、引き取り速度1.1m/min、膜厚150μmで押出した。
【0067】
(封止フィルム用樹脂組成物)
下記のベース樹脂100質量部に対して、添加樹脂1(耐候剤マスターバッチ)を5質量部、添加樹脂2(シラン変性ポリエチレン樹脂)を20質量部の割合で混合し、実施例の離型フィルム一体型封止材の封止フィルムを成形するための封止材組成物とした。
ベース樹脂1
:密度0.901g/cm、融点93℃、190℃でのMFRが2.0g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(M-LLDPE)。
添加樹脂1(耐候剤マスターバッチ)
:密度0.919g/cm、190℃でのMFRが3.5g/10分の低密度ポリエチレン系樹脂100質量部に対して、KEMISTAB62(HALS):0.6質量部。KEMISORB12(UV吸収剤):3.5質量部。KEMISORB79(UV吸収剤):0.6質量部。
添加樹脂2(シラン変性ポリエチレン系樹脂)
:密度0.898g/cm、MFRが3.5g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂95質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン5質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.15質量部とを混合し、200℃で溶融、混練して得たシラン変性ポリエチレン系樹脂。この添加樹脂2の密度は、0.901g/cm、MFRは、1.0g/10分である。
【0068】
(離型フィルム)
下記の離型フィルム用の樹脂フィルムを、離型フィルムを構成する樹脂フィルムを、上記の通り溶融押出しされた封止フィルムと圧着することによって一体化した。
(離型フィルム用の樹脂フィルム)
融点260℃のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、厚さ50μm。尚、この樹脂フィルムの表面のJIS K 6768に準じて測定した濡れ指数は、30Dyneであった。
【0069】
<比較例の離型フィルム一体型封止材の製造>
離型フィルムを構成する樹脂フィルムとして、離型性を高める加工が施されている下記の汎用離型フィルムを用いた他は、実施例と同条件により、比較例の離型フィルム一体型封止材を製造した。
【0070】
(汎用離型フィルム)
融点260℃のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、厚さ50μm。但し、表面に、シリコーン離型処理加工が施されている「表面離型処理済みの樹脂フィルム」。尚、この樹脂フィルムの表面のJIS K 6768に準じて測定した濡れ指数は、18Dyneであった。
【0071】
<評価例1:フィルム間密着強度>
実施例と比較例それぞれの離型フィルム一体型封止材について、下記の「密着性試験」(上述の密着性試験と同条件)によって封止フィルムと離型フィルムとの界面における密着強度(N/15mm)を測定した。結果は表1に記す。
(密着性試験)
15mm幅にカットした離型フィルム一体型封止材において、封止フィルムに密着している離型フィルムを、剥離試験機(テンシロン万能試験機 RTF-1150-H)にて垂直剥離(50mm/min)試験を行い両フィルム間の界面における密着強度(N/15mm)を測定する。
【0072】
<評価例2:熱ラミネート前の取り扱い容易性>
実施例、比較例それぞれの離型フィルム一体型封止材について、熱ラミネート前の取り扱い容易性について、各封止材をラミネータ内に手作業で載置する作業を行い、その作業の過程での不要な層間剥離が起ったか否かを規準に熱ラミネート前の取り扱い容易性官能的に評価した。尚、作業は5人の作業者により別途に行い、評価基準は下記の通りとした。評価結果を「取扱い容易性」として表1に記す。
(評価基準)
A:上記手作業の過程で、封止フィルムと離型フィルムの間の剥離は何れの作業者による作業中にも発生しなかった。
B:上記手作業の過程で、封止フィルムと離型フィルムの間の剥離が、1人以下の作業者による作業中に発生した。
C:上記手作業の過程で、封止フィルムと離型フィルムの間の剥離が、2人以上の作業者による作業中に発生した。
【0073】
【表1】
【0074】
<評価例3:熱ラミネート後の剥離容易性>
尚、既存のラミネータによって、実施例の離型フィルム一体型封止材を用いたLEDモジュールの製造と、上記の封止フィルムを封止材として用い、尚且つ、上記の「汎用離型フィルム」を封止フィルムとは一体化せずに、単独の離型材として用いたLEDモジュールの製造とを、上述した[LEDモジュールの製造方法]によって、それぞれ試験的に行った。その結果、熱ラミネート加工後における、封止材の剥離性については、何れも全く問題なく、封止フィルム(封止材)を離型フィルム(離型材)から、「滑らかに離脱」させることができることが確認された。
【0075】
上記のLEDモジュールの試験製造の結果、及び、表1の試験及び評価結果より、本発明の離型フィルム一体型封止材は、自発光型表示体の製造過程で行われる熱ラミネート工程において、離型フィルムを用いることに伴って発生する封止材表面の平滑性の損失と、それに起因する自発光型表示体の品質低下を回避することができるものであることが分かる。
【符号の説明】
【0076】
1 離型フィルム一体型封止材
111 封止フィルム(封止材本体)
121 離型フィルム
122 剥離面
123 露出面
10 LED素子
11 LED発光チップ
12 樹脂カバー
20 配線基板
21 支持基板
22 配線部
23 ハンダ層
30 自発光型表示体用のLEDモジュール
40 ラミネータ
41 加熱板
42 加熱板(補助加熱板)
43 積層体抑え板
50 ロール・トゥ・ロール方式の生産設備
51 Tダイス
52 第1給紙ロール
53 第2給紙ロール
54 排紙ロール
541 ゴムロール
542 エンボスロール
543 冷却ロール
2 表示面パネル
100、100A、100B マイクロLED表示装置(自発光型表示体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7