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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】測位装置、測位方法及び測位プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/47 20100101AFI20231212BHJP
   G01S 19/19 20100101ALN20231212BHJP
【FI】
G01S19/47
G01S19/19
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022174211
(22)【出願日】2022-10-31
(62)【分割の表示】P 2018115115の分割
【原出願日】2018-06-18
(65)【公開番号】P2022189953
(43)【公開日】2022-12-22
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 量平
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-206010(JP,A)
【文献】特開2017-106842(JP,A)
【文献】特開2000-055678(JP,A)
【文献】特開2016-180626(JP,A)
【文献】特開2016-114515(JP,A)
【文献】特開2000-321069(JP,A)
【文献】特開2000-346663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00-5/14
G01S 19/00-19/55
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自装置の現在位置を逐次測位する測位手段と、
自装置の進行方向を逐次導出する第1の導出手段と、
前記第1の導出手段とは異なる方法で自装置の進行方向を逐次導出する第2の導出手段と、
前記第1の導出手段によって導出された進行方向と前記第2の導出手段によって導出された進行方向とを用いて、次の進行方向を予測する予測手段と、
前記予測手段によって予測された前記次の進行方向に基づいて、前記測位手段によって測位された現在位置を修正する第1の修正手段と、
を備え、
前記予測手段は、前記第1の導出手段によって導出された進行方向を、前記第2の導出手段によって導出された進行方向を用いて修正し、前回の進行方向と、前記修正された進行方向と、を所定の割合で混合した方位を前記次の進行方向の予測方位として出力することを特徴とする測位装置。
【請求項2】
前記前回の進行方向は、前回測位された最終的な進行方向であることを特徴とする請求項1に記載の測位装置。
【請求項3】
前記前回の進行方向と前記修正された進行方向との混合割合は、1:4であることを特徴とする請求項1又は2に記載の測位装置。
【請求項4】
前記第1の導出手段は、ジャイロセンサにより逐次検出される鉛直軸回りの角速度に基づいて、自装置の進行方向を逐次導出することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の測位装置。
【請求項5】
前記予測手段は、前記測位手段から出力される速度データに基づいて、ユーザによる走行が開始されたか否かを判定し、走行が開始されたと判定した場合、走行が開始された時間を示す信号を出力し、
前記走行が開始された時間を示す信号に基づいて、前記走行が開始された時間に対応する方位データを前記第2の導出手段から取得し、
前記取得した方位データを用いて前記第1の導出手段によって導出された進行方向を修正することを特徴とする請求項4に記載の測位装置。
【請求項6】
前記予測手段は、前記走行が開始された時間に対応する方位データと、前記第1の導出手段によって導出された角速度データとに基づいて、前記角速度の値を積分し、前記積分された角速度の積分値を用いて記第1の導出手段によって導出された進行方向を修正することを特徴とする請求項5に記載の測位装置。
【請求項7】
ユーザが走行する際の経路のカーブ度合いに応じて、前記第1の修正手段によって修正された現在位置を更に修正する第2の修正手段を備えることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の測位装置。
【請求項8】
前記予測手段によって予測された進行方向であり、且つ、所定の時間間隔を空けて得られる各進行方向に基づいて、前記経路のカーブ度合いを算出する第2の算出手段と、
前記第2の算出手段によって算出された前記カーブ度合いに基づいて、混合比を決定する決定手段と、を備え、
前記第2の修正手段は、前記決定手段によって決定された混合比に基づいて、前記第1の修正手段によって修正された現在位置に対応する位置座標と、修正される前の現在位置に対応する位置座標とを混合することによって、前記第1の修正手段によって修正された現在位置を更に修正することを特徴とする請求項7に記載の測位装置。
【請求項9】
前記第1の修正手段により修正された現在位置を出力する出力手段を備えることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の測位装置。
【請求項10】
測位装置を用いた測位方法であって、
自装置の現在位置を逐次測位する測位工程と、
自装置の進行方向を逐次導出する第1の導出工程と、
前記第1の導出工程とは異なる方法で自装置の進行方向を逐次導出する第2の導出工程と、
前記第1の導出工程によって導出された進行方向と前記第2の導出工程によって導出された進行方向とを用いて、次の進行方向を予測する予測工程と、
前記予測工程によって予測された前記次の進行方向に基づいて、前記測位工程によって測位された現在位置を修正する修正工程と、
を含み、
前記予測工程は、前記第1の導出工程によって導出された進行方向を、前記第2の導出工程によって導出された進行方向を用いて修正し、前回の進行方向と、前記修正された進行方向と、を所定の割合で混合した方位を前記次の進行方向の予測方位として出力する工程を含むことを特徴とする測位方法。
【請求項11】
測位装置のコンピュータを、
自装置の現在位置を逐次測位する測位手段、
自装置の進行方向を逐次導出する第1の導出手段、
前記第1の導出手段とは異なる方法で自装置の進行方向を逐次導出する第2の導出手段、
前記第1の導出手段によって導出された進行方向と前記第2の導出手段によって導出された進行方向とを用いて、次の進行方向を予測する予測手段、
前記予測手段によって予測された前記次の進行方向に基づいて、前記測位手段によって測位された現在位置を修正する修正手段、
として機能させ、
前記予測手段は、前記第1の導出手段によって導出された進行方向を、前記第2の導出手段によって導出された進行方向を用いて修正し、前回の進行方向と、前記修正された進行方向と、を所定の割合で混合した方位を前記次の進行方向の予測方位として出力することを特徴とする測位プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位装置、測位方法及び測位プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザ等の移動位置を示す軌跡の概要を高速にプロット表示することのできるナビゲーション装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-193466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているナビゲーション装置では、GPS(Global Positioning System)モジュールにより測位を行っているため電波状況の影響を大きく受ける。特に、当該ナビゲーション装置をユーザが身に着けて使用する場合、アンテナの向きが最適方向から大きく異なった状態で継続使用されることもあり、これに周囲の建築物の影響が加わると大きな位置誤差を生じることとなり、正確な測位を行い難い。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、正確な測位を行うことができる測位装置、測位方法及び測位プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る測位装置は、
自装置の現在位置を逐次測位する測位手段と、
自装置の進行方向を逐次導出する第1の導出手段と、
前記第1の導出手段とは異なる方法で自装置の進行方向を逐次導出する第2の導出手段と、
前記第1の導出手段によって導出された進行方向と前記第2の導出手段によって導出された進行方向とを用いて、次の進行方向を予測する予測手段と、
前記予測手段によって予測された前記次の進行方向に基づいて、前記測位手段によって測位された現在位置を修正する第1の修正手段と、
を備え、
前記予測手段は、前記第1の導出手段によって導出された進行方向を、前記第2の導出手段によって導出された進行方向を用いて修正し、前回の進行方向と、前記修正された進行方向と、を所定の割合で混合した方位を前記次の進行方向の予測方位として出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、正確な測位を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】走行軌跡表示システムの全体構成を示す概念図である。
図2】測位装置の機能構成を示すブロック図である。
図3】ジャイロ方位修正処理を行うロジック回路の構成を示すブロック図である。
図4】(a)はローパスフィルタに掛けられた後の鉛直軸回りの角速度を示すグラフであり、(b)は積分器によって積分された角速度の積分値(角度)を示すグラフであり、(c)はランニング1周期ごとにホールドした角度(角速度の積分値)を示すグラフである。
図5】GNSS位置修正処理を行うロジック回路の構成を示すブロック図である。
図6】(a)及び(b)は、予測方位の求め方を示す説明図である。
図7】(a)及び(b)は、軌跡作成及び表示装置に出力される最終的な現在位置の求め方を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明に係る実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明は、図示例に限定されるものではない。
【0010】
まず、図1を参照して、本実施の形態の全体構成を説明する。図1は、本実施の形態の走行軌跡表示システム1を示す概念図である。
【0011】
図1に示すように、走行軌跡表示システム1は、測位装置10と、軌跡作成及び表示装置20とを備える。
【0012】
測位装置10は、当該装置を装着したユーザの動きや位置を逐次検知可能な各種のセンサが内蔵された装置である。測位装置10は、例えば、ランニング時にユーザの腰に装着され、当該ランニング時に取得されるセンシング情報に基づいて逐次、測位を実行する装置である。また、測位装置10は、測位実行した測位結果を軌跡作成及び表示装置20に出力する。
【0013】
軌跡作成及び表示装置20は、ランニング時にユーザが携帯可能な装置であり、測位装置10から得た測位結果を元に走行軌跡を示す軌跡情報を作成し、走行軌跡を表示する。この軌跡作成及び表示装置20としては、例えば、スマートフォンや、腕時計型表示器等のウェアラブル端末等が挙げられる。
【0014】
次に、図2を参照して、測位装置10の内部の機能構成を説明する。図2は、測位装置10の機能構成を示すブロック図である。
【0015】
図2に示すように、測位装置10は、制御部11と、記憶部12と、GNSS計測部13と、角速度計測部14と、加速度計側部15と、軸補正部16と、信号処理部17と、送信部18とを備える。
【0016】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。制御部11のCPUは、記憶部12に記憶されているシステムプログラムや各種処理プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行し、測位装置10各部の動作を制御する。
【0017】
記憶部12は、不揮発性の半導体メモリやハードディスク等により構成される。記憶部12は、制御部11で実行される各種プログラムやプログラムにより処理の実行に必要なパラメータを記憶する。また、記憶部12は、信号処理部17による処理結果等のデータを記憶する。
【0018】
GNSS計測部(測位手段、第2の導出手段)13は、測位装置10の現在位置(緯度、経度、高度)や、方位、速度等を計測する部分であり、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機が用いられる。GNSS計測部13は、所定時間(例えば、1秒)ごとに、測位装置10の現在位置、方位、速度等を示すGNSSデータを信号処理部17に出力する。
【0019】
角速度計測部(第1の導出手段)14は、測位装置10の角速度を計測する部分であり、ジャイロセンサが用いられる。角速度計測部14は、互いに直交する3軸方向を中心とする角速度を所定のサンプリング周期(例えば、200Hz)で検出する。そして、角速度計測部14は、検出された各軸を中心とする角速度に対応する角速度データを軸補正部16に出力する。
【0020】
加速度計側部15は、測位装置10の加速度を計測する部分であり、加速度センサが用いられる。加速度計側部15は、互いに直交する3軸方向の加速度を所定のサンプリング周期(例えば、200Hz)で検出する。そして、加速度計側部15は、検出された各軸の加速度に対応する加速度データを軸補正部16に出力する。
【0021】
軸補正部16は、角速度計測部14及び加速度計側部15より入力された各データ、すなわちセンサ座標系を基準とする各データをランニング動作に対して普遍なワールド座標系を基準とするデータに変換する。そして、軸補正部16は、変換されたワールド座標系を基準とするデータを信号処理部17に出力する。なお、センサ座標系からワールド座標系へのデータの変換方法は、公知であるため詳しい説明は省略する。
【0022】
信号処理部(予測手段、第1の修正手段、第1の算出手段、第2の修正手段、第2の算出手段、決定手段、出力手段)17は、軸補正部16でセンサ座標系からワールド座標系へ変換された鉛直軸回りの角速度データを、GNSS計測部13で計測された方位データ(GNSS方位データ)を用いて修正するジャイロ方位修正処理(後述)を行う。
また、信号処理部17は、上記のジャイロ方位修正処理によって修正された角速度データに基づいて、測位装置10の次の進行方向を予測し、GNSS計測部13で計測された位置データ(GNSS位置データ)を当該予測された次の進行方向に基づいて修正するGNSS位置修正処理(後述)を行う。
なお、信号処理部17は、所定のロジック回路から構成されているが、当該構成は一例であってこれに限られるものではない。例えば、信号処理部17は、その処理の内容に応じてロジック回路と制御部11の両方で分担して当該処理を実行するようにしても良い。
【0023】
送信部18は、測位装置10で測位実行した測位結果を軌跡作成及び表示装置20に送信する部分であり、例えば、USB端子などの有線式の通信部や、Bluetooth(登録商標)などの無線規格を採用した送信部である。
【0024】
次に、図3及び図4を参照して、信号処理部17で実行されるジャイロ方位修正処理を説明する。図3は、ジャイロ方位修正処理を行うロジック回路の構成を示すブロック図である。図4(a)は、ローパスフィルタ(LPF)103に掛けられた後の鉛直軸回りの角速度を示すグラフである。図4(b)は、積分器104によって積分された角速度の積分値(角度)を示すグラフである。図4(c)は、ランニング1周期ごとにホールドした角度(角速度の積分値)を示すグラフである。
【0025】
図3に示すように、まず、走行検出部101は、GNSS計測部13から1秒ごとに出力される速度データ(GNSS速度データ)に基づいて、ユーザによる走行が開始されたか否かを判定する。具体的には、走行検出部101は、例えば、GNSS速度データの値が2秒連続して6km/hを超えた場合、走行が開始されたと判定し、走行が開始された時間を示す信号を出力する。
【0026】
次いで、走行開始方位検出部102は、GNSS計測部13から1秒ごとに出力される方位データ(GNSS方位データ)、及び、走行検出部101から出力された信号に基づいて、走行が開始された時間に対応するGNSS方位データを取得して、当該GNSS方位データを出力する。
【0027】
次いで、積分器104は、走行開始方位検出部102から出力されたGNSS方位データに基づいて、当該GNSSデータの値を積分初期値としてセットする。そして、積分器104は、ローパスフィルタ(LPF)103に掛けられた後の鉛直軸回りの角速度データ(図4(a)参照)に基づいて、角速度の値を積分していく。一方、0越え検出部105は、ローパスフィルタ(LPF)103に掛けられた後の鉛直軸回りの角速度データ(図4(a)参照)に基づいて、鉛直軸回りの角速度が負から正へと転ずる各タイミングをランニング1周期ごとの開始点として検出し、当該開始点を示すデータを出力する。
ここで、鉛直軸回りの角速度データは、軸補正部16でセンサ座標系からワールド座標系へ変換された角速度データである。
【0028】
ローパスフィルタ103は、ユーザの足が地面に着地したときの衝撃等によるノイズは除去するが、方向転換による成分は除去されない程度のカットオフ周波数(例えば、1Hz)に設定されたフィルタである。
【0029】
保持器106は、積分器104によって積分された角速度の積分値(角度)を示すデータ(図4(b)参照)、及び、0越え検出部105によって検出されたランニング1周期ごとの開始点を示すデータに基づいて、ランニング1周期ごとにホールドした角度(角速度の積分値)を示すデータ(図4(c)参照)を出力する。そして、ランニング1周期ごとにホールドした角度を示すデータとGNSS方位データとに基づいて、当該ランニング1周期ごとにホールドした角度とGNSS方位との誤差が算出される。そして、ローパスフィルタ107によって、当該誤差がフィルタリング(カットオフ数十秒程度)され、フィルタリングされた誤差がランニング1周期ごとにホールドした角度にフィードバックされ修正されることにより、ジャイロ方位を示すデータが出力されることとなる。
上述した処理は、ジャイロセンサの角速度から計算したジャイロ方位は環境の影響を受けない(場所毎の誤差は少ない)が、ジャイロオフセットの蓄積誤差が生じる、一方、GNSS方位は周辺の建物等によって場所毎の誤差を生じることはあるが蓄積誤差は生じない、という特徴を利用し、ジャイロ方位を長周期(数十秒程度)GNSS方位にロックさせることで正確な方位を得るものである。
【0030】
次に、図5図7を参照して、信号処理部17で実行されるGNSS位置修正処理を説明する。図5は、GNSS位置修正処理を行うロジック回路の構成を示すブロック図である。図6(a)及び(b)は、予測方位の求め方を示す説明図である。図7(a)及び(b)は、軌跡作成及び表示装置20に出力される測位結果である最終的な現在位置の求め方を示す説明図である。
【0031】
図5及び図6に示すように、まず、第1混合部111は、前回(1秒前)の走行方位dr1(=dr2)と、上述のジャイロ方位修正処理により得られたジャイロ方位dr3とを所定の割合(例えば、1:4の割合)で混合した方位を予測方位dr4(図6(a)及び(b)参照)として出力する。ここで、走行方位dr2は、前回(1秒前)の走行方位dr1を延長したものである。
【0032】
次いで、ベクトル更新部112は、図5及び図7(a)に示すように、第1混合部111から出力された予測方位dr4上において、後述する比較部113により採用された速度分進めた位置を次の位置座標P2として出力する。
【0033】
比較部113は、図5及び図7(a)に示すように、次のGNSS座標ベクトルdr5を予測方位dr4上に射影したGNSS更新ベクトルdr6の速度成分と予測速度との比率を算出する。そして、当該予測速度に対するGNSS更新ベクトルdr6の速度成分の比率の値が所定の範囲(e.g.0.8~1.5)内にある場合、比較部113は、GNSS更新ベクトルdr6の速度成分を速度として採用する。一方、当該予測速度に対するGNSS更新ベクトルdr6の速度成分の比率の値が所定の範囲の上限値を超える場合、当該上限値に対応する速度成分を速度として採用し、また、当該比率の値が所定の範囲の下限値を下回る場合、当該下限値に対応する速度成分を速度として採用する。
このように、採用する速度を予測速度により制限をかけるのは、例えば、高架下をくぐるときなどは、GNSS位置座標が高架手前では押し戻され、高架通過後は一気に跳んでしまうといった不具合を抑制するためである。
ここで、予測速度は、ユーザの走行状態を示すピッチとストライドを用いて算出される。ストライドは、過去の走行距離をピッチで割ることにより算出されたものである。
【0034】
第2混合部115は、図5及び図7(b)に示すように、混合比作成部114で作成された混合比に基づいて、元のGNSS位置座標P1を混合することにより、次の位置座標P2を修正し、更新されたGNSS位置座標(最終座標)P3を出力する。ここで、最終座標として更新されたGNSS位置座標が軌跡作成及び表示装置20に逐次出力されることによって、軌跡作成及び表示装置20において走行軌跡が作成されることとなる。
【0035】
混合比作成部114は、所定の時間間隔を空けて得られるジャイロ方位同士の差に基づいて、ユーザが走行する際の経路のカーブ度合いを判定することで混合比を決定する。
具体的には、混合比作成部114は、例えば、カーブの入りと出の角度差(ジャイロ推定)が20度未満の場合、元のGNSS位置座標P1の混合比を0.1とする。このように、カーブ度合いが低い場合、予測方位に基づく次の位置座標P2の重みを高めることで経路のうねりを抑制している。
また、混合比作成部114は、カーブの入りと出の角度差が20度以上60度未満の場合、当該角度差に応じて、元のGNSS位置座標P1の混合比を0.1~1の間で調整する。
また、混合比作成部114は、カーブの入りと出の角度差が60度以上の場合、元のGNSS位置座標P1の混合比を1とする。このように、カーブ度合いが高い場合、元のGNSS位置座標P1の重みを高めることで位置ずれを抑制している。
なお、上記の角度差と混合比は一例であり、適宜変更可能である。
【0036】
以上のように、本実施形態によれば、測位装置10は、GNSS計測部13によって、自装置の現在位置を逐次測位し、角速度計測部14によって、自装置の進行方向を逐次導出し、GNSS計測部13によって、自装置の進行方向を逐次導出し、角速度計測部14によって導出された進行方向を、GNSS計測部13によって導出された進行方向を用いて修正し、修正された進行方向に基づいて、次の進行方向を予測し、予測された次の進行方向(予測方位dr4)に基づいて、測位された現在位置を修正し、最終的な測位結果としたこととなる。
このため、測位装置10によれば、GNSS計測部13によって導出された進行方向と、角速度計測部14によって導出された進行方向とを併用することにより、例えば、市街地のようなマルチパスの多い場所でも正確な測位結果が得られる。
【0037】
また、本実施形態によれば、測位装置10は、GNSS計測部13によって測位された現在位置と当該現在位置の測位の直前に測位された現在位置とを結ぶベクトル(次のGNSS座標ベクトルdr5)を、予測方位dr4に射影することにより、当該現在位置を修正したので、滑らかな軌跡を作成するための測位結果を得ることができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、測位装置10は、ユーザの走行状態から予測される予測速度に対するベクトル(GNSS更新ベクトルdr6)の速度成分の比率を算出し、当該比率の値が所定の範囲内にある場合、次の進行方向(予測方位dr4)に当該ベクトルの速度成分だけ進めた位置P2を修正後の現在位置としたこととなる。
このため、測位装置10によれば、次の位置P2を求める際に予測速度を用いて制限をかけることによって、より滑らかな軌跡を作成するための測位結果を得ることができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、測位装置10は、上記比率の値が所定の範囲の上限値を超える場合、次の進行方向(予測方位dr4)に当該上限値に対応する速度成分だけ進めた位置P2を修正後の現在位置とし、当該比率の値が所定の範囲の下限値を下回る場合、前記次の進行方向に当該下限値に対応する速度成分だけ進めた位置P2を修正後の現在位置としたこととなる。
このため、測位装置10によれば、次の位置P2を求める際に予測速度を用いて制限をかけることによって、より滑らかな軌跡を作成するための測位結果を得ることができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、測位装置10は、ユーザが走行する際の経路のカーブ度合いに応じて、修正された現在位置P2を更に修正するので、より正確な測位結果を得ることができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、測位装置10は、ユーザが走行する際の経路のカーブ度合いを算出し、算出されたカーブ度合いに基づいて、混合比を決定し、決定された混合比に基づいて、修正された現在位置P2に対応する位置座標と、修正される前の現在位置P1に対応する位置座標とを混合することによって、修正された現在位置P2を更に修正したこととなる。
このため、測位装置10によれば、カーブ度合いが低い場合、例えば、予測方位dr4に基づく次の位置座標P2の重みを高めることで経路のうねりを抑制することができる。一方、カーブ度合いが高い場合、元のGNSS位置座標P1の重みを高めることで位置ずれを抑制することができる。
【0042】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0043】
例えば、更新されたGNSS位置座標(最終座標)は、制御部11の制御下において、信号処理部17から出力されるごとに、送信部18を介して、軌跡作成及び表示装置20に送信される場合に限定されるものではない。かかる場合の他に、例えば、制御部11の制御下において、更新されたGNSS位置座標(最終座標)を記憶部12に逐次記憶しておき、ランニングの終了後に、記憶部12に記憶されている更新されたGNSS位置座標(最終座標)を読み出して、送信部18を介して、軌跡作成及び表示装置20に送信するようにしてもよい。
【0044】
また、本実施形態においては、測位装置10で逐次、測位を実行し、測位実行した測位結果を軌跡作成及び表示装置20に出力し、軌跡作成及び表示装置20において、測位装置10から得た測位結果を元に走行軌跡を示す軌跡情報を作成し、走行軌跡を表示したが、測位装置10において測位実行と軌跡情報の作成を行い、作成した軌跡情報を出力するようにしてもよい。
【0045】
また、本実施形態においては、角速度計測部14によって導出された進行方向を、GNSS計測部13によって導出された進行方向を用いて修正し、修正された進行方向に基づいて、次の進行方向を予測したが、GNSS計測部13によって導出された進行方向を、角速度計測部14によって導出された進行方向を用いて修正し、修正された進行方向に基づいて、次の進行方向を予測してもよい。
言い換えれば、角速度計測部14によって導出された進行方向とGNSS計測部13によって導出された進行方向とから、次の進行方向を予測してもよい。
【0046】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲をその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0047】
〔付記〕
<請求項1>
自装置の現在位置を逐次測位する測位手段と、
自装置の進行方向を逐次導出する第1の導出手段と、
前記第1の導出手段とは異なる方法で自装置の進行方向を逐次導出する第2の導出手段と、
前記第1の導出手段によって導出された進行方向と前記第2の導出手段によって導出された進行方向とを用いて、次の進行方向を予測する予測手段と、
前記予測手段によって予測された前記次の進行方向に基づいて、前記測位手段によって測位された現在位置を修正する第1の修正手段と、
を備えることを特徴とする測位装置。
<請求項2>
前記予測手段は、前記第1の導出手段によって導出された進行方向を、前記第2の導出手段によって導出された進行方向を用いて修正し、修正された進行方向に基づいて、次の進行方向を予測することを特徴とする請求項1に記載の測位装置。
<請求項3>
前記予測手段は、前記修正された進行方向に基づいて現在の進行方向を修正することにより、次の進行方向を予測することを特徴とする請求項1に記載の測位装置。
<請求項4>
前記第1の導出手段は、ジャイロセンサにより逐次検出される鉛直軸回りの角速度に基づいて、自装置の進行方向を逐次導出することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の測位装置。
<請求項5>
前記測位手段は、衛星測位システムにより自装置の現在位置を逐次測位し、
前記第2の導出手段は、前記測位手段により逐次測位される現在位置に基づいて、自装置の進行方向を逐次導出することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の測位装置。
<請求項6>
前記第1の修正手段は、前記測位手段によって測位された現在位置と当該現在位置の測位の直前に測位された現在位置とを結ぶベクトルを、前記予測手段によって予測された前記次の進行方向に射影することにより、当該現在位置を修正することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の測位装置。
<請求項7>
ユーザの走行状態から予測される予測速度に対する前記ベクトルの速度成分の比率を算出する第1の算出手段を備え、
前記第1の修正手段は、前記第1の算出手段によって算出された前記比率の値が所定の範囲内にある場合、前記次の進行方向に前記ベクトルの速度成分だけ進めた位置を修正後の現在位置とすることを特徴とする請求項6に記載の測位装置。
<請求項8>
前記第1の修正手段は、前記第1の算出手段によって算出された前記比率の値が所定の範囲の上限値を超える場合、前記次の進行方向に当該上限値に対応する速度成分だけ進めた位置を修正後の現在位置とし、当該比率の値が所定の範囲の下限値を下回る場合、前記次の進行方向に当該下限値に対応する速度成分だけ進めた位置を修正後の現在位置とすることを特徴とする請求項7に記載の測位装置。
<請求項9>
ユーザが走行する際の経路のカーブ度合いに応じて、前記第1の修正手段によって修正された現在位置を更に修正する第2の修正手段を備えることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の測位装置。
<請求項10>
前記予測手段によって予測された進行方向であり、且つ、所定の時間間隔を空けて得られる各進行方向に基づいて、前記経路のカーブ度合いを算出する第2の算出手段と、
前記第2の算出手段によって算出された前記カーブ度合いに基づいて、混合比を決定する決定手段と、を備え、
前記第2の修正手段は、前記決定手段によって決定された混合比に基づいて、前記第1の修正手段によって修正された現在位置に対応する位置座標と、修正される前の現在位置に対応する位置座標とを混合することによって、前記第1の修正手段によって修正された現在位置を更に修正することを特徴とする請求項9に記載の測位装置。
<請求項11>
前記第1の修正手段により修正された現在位置を出力する出力手段を備えることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の測位装置。
<請求項12>
測位装置を用いた測位方法であって、
自装置の現在位置を逐次測位する測位工程と、
自装置の進行方向を逐次導出する第1の導出工程と、
前記第1の導出工程とは異なる方法で自装置の進行方向を逐次導出する第2の導出工程と、
前記第1の導出工程によって導出された進行方向と前記第2の導出工程によって導出された進行方向とを用いて、次の進行方向を予測する予測工程と、
前記予測工程によって予測された前記次の進行方向に基づいて、前記測位工程によって測位された現在位置を修正する修正工程と、
を含むことを特徴とする測位方法。
<請求項13>
測位装置のコンピュータを、
自装置の現在位置を逐次測位する測位手段、
自装置の進行方向を逐次導出する第1の導出手段、
前記第1の導出手段とは異なる方法で自装置の進行方向を逐次導出する第2の導出手段、 前記第1の導出手段によって導出された進行方向と前記第2の導出手段によって導出された進行方向とを用いて、次の進行方向を予測する予測手段、
前記予測手段によって予測された前記次の進行方向に基づいて、前記測位手段によって測位された現在位置を修正する修正手段、
として機能させることを特徴とする測位プログラム。
【符号の説明】
【0048】
1 走行軌跡表示システム
10 測位装置
11 制御部
12 記憶部
13 GNSS計測部(測位手段、第2の導出手段)
14 角速度計測部(第1の導出手段)
15 加速度計測部
16 軸補正部
17 信号処理部(予測手段、第1の修正手段、第1の算出手段、第2の修正手段、第2の算出手段、決定手段、出力手段)
18 送信部
20 軌跡作成及び表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7