(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/64 20180101AFI20231212BHJP
F24F 11/32 20180101ALI20231212BHJP
F24F 11/72 20180101ALI20231212BHJP
F24F 11/80 20180101ALI20231212BHJP
F24D 15/00 20220101ALI20231212BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20231212BHJP
A61B 5/01 20060101ALI20231212BHJP
F24F 120/10 20180101ALN20231212BHJP
【FI】
F24F11/64
F24F11/32
F24F11/72
F24F11/80
F24D15/00 B
A61B5/11 110
A61B5/01 350
F24F120:10
(21)【出願番号】P 2022187422
(22)【出願日】2022-11-24
(62)【分割の表示】P 2018098929の分割
【原出願日】2018-05-23
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白川 奈穗
(72)【発明者】
【氏名】古橋 拓也
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特許第7305925(JP,B2)
【文献】特開2002-022240(JP,A)
【文献】特開2007-283038(JP,A)
【文献】特開2015-114014(JP,A)
【文献】特開2016-176637(JP,A)
【文献】特開2016-208408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00 - 11/89
F24D 15/00
A61B 5/11
A61B 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱衣室の空気調和を行う脱衣室空調機と、
人に関する物理量を検出する検出手段と、
前記脱衣室空調機を制御する制御手段と、
を備え、
前記検出手段は、少なくとも、基準時点から入浴後に人が脱衣室にいる時点までの前記物理量の変化量を検出し、
前記制御手段は、前記検出手段が検出した前記変化量に基づいて、湯冷めおよびのぼせの少なくとも一方を抑制するように前記脱衣室空調機を制御し、
浴槽が設置された浴室には使用者の足元に冷水または温水を選択的に放水する放水手段が設けられ、
前記検出手段は、浴室にいる人の足元の温度を検出し、
前記放水手段は、前記検出手段によって検出された浴室にいる人の足元の温度が閾値以上の場合には冷水を放水し、前記検出手段によって検出された浴室にいる人の足元の温度が閾値以下の場合には温水を放水する空調システム。
【請求項2】
前記検出手段は、皮膚温度、心拍数および呼吸数の少なくとも1つを検出する請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記検出手段は、単位時間当たりの前記変化量を検出し、
前記制御手段は、前記単位時間当たりの前記変化量に基づいて前記脱衣室空調機を制御する請求項1
または請求項2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記制御手段には、状態判定手段および空調制御手段が含まれ、
前記状態判定手段は、前記検出手段が検出した前記変化量に基づいて、脱衣室にいる人の状態を判定し、
前記空調制御手段は、前記状態判定手段の判定結果に基づいて前記脱衣室空調機を制御する請求項1から請求項
3の何れか1項に記載の空調システム。
【請求項5】
前記物理量には、少なくとも第1物理量が含まれ、当該第1物理量は、皮膚温度、心拍数および呼吸数の何れかであり、
前記変化量は、入浴後に人が脱衣室にいる時点での前記第1物理量から当該人が浴室にいた時点での前記第1物理量を減じた値であり、
前記制御手段は、前記変化量が閾値以上の正の値である場合、前記脱衣室空調機に冷房運転および送風運転の少なくとも一方を行わせる請求項1から請求項
4の何れか1項に記載の空調システム。
【請求項6】
前記物理量には、少なくとも第1物理量が含まれ、当該第1物理量は、皮膚温度、心拍数および呼吸数の何れかであり、
前記変化量は、入浴後に人が脱衣室にいる時点での前記第1物理量から当該人が浴室にいた時点での前記第1物理量を減じた値であり、
前記制御手段は、前記変化量が閾値以下の負の値である場合、前記脱衣室空調機に暖房運転を行わせる請求項1から請求項
4の何れか1項に記載の空調システム。
【請求項7】
前記検出手段は、脱衣室にいる人の足元の温度を検出し、
前記制御手段は、前記検出手段によって検出された脱衣室にいる人の足元の温度が閾値以下である場合、前記脱衣室空調機に、脱衣室の床付近へ温風を送風させる請求項1から請求項
4の何れか1項に記載の空調システム。
【請求項8】
前記検出手段は、脱衣室にいる人に関する物理量を検出する第1検出部と、浴室にいる人に関する物理量を検出する第2検出部と、を有する請求項1から請求項
4の何れか1項に記載の空調システム。
【請求項9】
前記検出手段は、脱衣室にいる人に関する物理量を検出する第1検出部と、浴室にいる人に関する物理量を検出する第2検出部と、居間にいる人に関する物理量を検出する第3検出部と、を有する請求項1から請求項
4の何れか1項に記載の空調システム。
【請求項10】
前記制御手段は、居間に設置された空気調和装置を前記脱衣室空調機に連動させる請求項1から請求項
9の何れか1項に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、浴室システムが記載されている。特許文献1に記載されたこの浴室システムは、入浴者の頭部に向けて送風可能な浴室乾燥機と、浴槽内の入浴者の状態に関係するパラメータを検出する入浴状態センサと、を備える。特許文献1に記載の技術において、浴室乾燥機は、入浴状態センサの出力に基づいて、入浴中の入浴者の頭部を冷却するように送風を行う。これにより、入浴中における入浴者ののぼせが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術のように入浴中の入浴者の頭部が冷却されたとしても、入浴者の深部体温の上昇を十分に抑制することは難しい。このため、特許文献1に記載の技術において、使用者は、入浴中は快適に感じたものの、入浴後にのぼせてしまうことがある。また、入浴後にのぼせてしまった人は、汗冷えによって結果的に湯冷めをしてしまうこともある。また、特許文献1に記載の技術では、入浴者が十分に温まっていなかった場合における湯冷めを抑制することもできない。すなわち、上記の特許文献1に開示された従来技術においては、入浴後における湯冷めおよびのぼせのどちらも抑制することができず、入浴後における使用者の快適性が損なわれてしまう。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものである。本発明の目的は、入浴後における湯冷めおよびのぼせの少なくとも一方を抑制することで、入浴後における使用者の快適性をより高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る空調システムは、脱衣室の空気調和を行う脱衣室空調機と、人に関する物理量を検出する検出手段と、脱衣室空調機を制御する制御手段と、を備える。検出手段は、少なくとも、基準時点から入浴後に人が脱衣室にいる時点までの上記の物理量の変化量を検出する。制御手段は、検出手段が検出した上記の変化量に基づいて、湯冷めおよびのぼせの少なくとも一方を抑制するように脱衣室空調機を制御する。浴槽が設置された浴室には使用者の足元に冷水または温水を選択的に放水する放水手段が設けられ、検出手段は、浴室にいる人の足元の温度を検出し、放水手段は、検出手段によって検出された浴室にいる人の足元の温度が閾値以上の場合には冷水を放水し、検出手段によって検出された浴室にいる人の足元の温度が閾値以下の場合には温水を放水する。
【発明の効果】
【0007】
発明に係る空調システムによれば、入浴後における湯冷めおよびのぼせの少なくとも一方を抑制することができる。これにより、入浴後における使用者の快適性がより高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1の空調システムを構成する各要素の配置の一例を示す模式図である。
【
図2】実施の形態1の空調システムの制御系統の一例を示す機能ブロック図である。
【
図3】実施の形態1の制御ユニットの機能を実現する構成の一例を示す図である。
【
図4】判定部による判定および制御部による制御の実施例を示す図である。
【
図5】深部体温推定値と湯温と入浴時間との関係の一例を示す図である。
【
図6】実施の形態1の空調システムの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照して、本発明を実施するための形態について説明する。各図における同一の符号は、同一の部分または相当する部分を示す。また、本開示では、重複する説明については、適宜に簡略化または省略する。なお、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において、以下の各実施の形態によって開示される構成のあらゆる変形およびあらゆる組み合わせを含み得るものである。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1の空調システムを構成する各要素の配置の一例を示す模式図である。また、
図2は、実施の形態1の空調システムの制御系統の一例を示す機能ブロック図である。なお、本開示の主旨を明確かつ簡潔に示すため、
図1においては、
図2に記載された構成要素の一部の図示を省略している。また、
図2においては、
図1に記載された構成要素の一部の図示を省略している。
【0011】
本実施の形態の空調システムは、
図1および
図2に示すように、脱衣室100に設置された脱衣室空調機110を備える。脱衣室空調機110は、脱衣室100の空気調和を行う空気調和装置である。脱衣室空調機110は、例えば、ヒートポンプユニットまたは電気式の加熱温水器等を用いて、空気の温度を調節する。脱衣室空調機110は、温風を吹き出す暖房運転、冷風を吹き出す冷房運転および常温の風を吹き出す送風運転等を実行可能である。
【0012】
図1に示すように、脱衣室空調機110には、生体センサ111が設けられている。生体センサ111は、人に関する物理量を非接触で検出することができるセンサである。生体センサ111は、例えば、超音波、マイクロ波および赤外線の少なくとも1つを利用することで、人に関する物理量を非接触で検出する。
【0013】
脱衣室空調機110に設けられた生体センサ111は、脱衣室100にいる人に関する物理量を検出する。本実施の形態の生体センサ111は、脱衣室100にいる人に関する物理量を検出する第1検出部の一例である。なお、この第1検出部の一例である生体センサ111は、脱衣室空調機110とは別の場所に設けられていてもよい。例えば、生体センサ111は、脱衣室100の壁等に設置されていてもよい。また、生体センサ111は、脱衣室空調機110に外付けされていてもよいし、脱衣室空調機110に内蔵されていてもよい。第1検出部の一例である生体センサ111は、脱衣室100にいる人に関する物理量を検出可能であればよい。
【0014】
生体センサ111が検出する「人に関する物理量」とは、脱衣室100にいる使用者の状態に関係するパラメータを意味している。生体センサ111は、脱衣室100にいる使用者の状態を判定するためのパラメータを検出するものである。例えば、生体センサ111は、例えば、皮膚温度、心拍数、呼吸数および血圧の少なくとも1つを検出する。換言すると、生体センサ111が検出する物理量には、一例として、皮膚温度、心拍数、呼吸数および血圧の少なくとも1つが含まれている。
【0015】
生体センサ111は、例えば赤外線センサをアレイ状に配置させたサーモパイルを含む。サーモパイルは、マトリクス状に表面温度を検出することができる。サーモパイルを含む生体センサ111は、人の位置および人の動きを推定するためのパラメータを検出することができる。また、例えば、マイクロ波を利用した生体センサ111は、心拍数および呼吸数の推定値を検出することができる。
【0016】
脱衣室空調機110に設けられた生体センサ111は、当該脱衣室空調機110と通信を行う。一例として、脱衣室空調機110に内蔵された制御装置は、生体センサ111の検出結果に基づいて、脱衣室空調機110の動作を制御する。
【0017】
また、
図1および
図2に示すように、本実施の形態の空調システムは、一例として、浴室200に設置された浴室空調機210を更に備えている。浴室200は、使用者が入浴を行う部屋である。浴室200には、浴槽220が設置されている。浴室空調機210は、この浴室200の空気調和を行う装置である。浴室空調機210は、例えば、
図1に示すように、浴槽220の上方に配置されている。
【0018】
本実施の形態において、浴室空調機210には、生体センサ211が設けられている。この生体センサ211は、脱衣室空調機110に設けられた生体センサ111と同様、人に関する物理量を非接触で検出することができるセンサである。
【0019】
浴室空調機210に設けられた生体センサ211は、浴室200にいる人に関する物理量を検出する。本実施の形態の生体センサ211は、浴室にいる人に関する物理量を検出する第2検出部の一例である。なお、第2検出部の一例である生体センサ211は、浴室空調機210とは別の場所に設けられていてもよい。例えば、生体センサ211は、浴室200の壁等に設置されていてもよい。また、生体センサ211は、浴室空調機210に外付けされていてもよいし、浴室空調機210に内蔵されていてもよい。第2検出部の一例である生体センサ211は、浴室200にいる人に関する物理量を検出可能であればよい。
【0020】
生体センサ211が検出する「人に関する物理量」とは、浴室200にいる使用者の状態に関係するパラメータを意味している。生体センサ211は、浴室にいる使用者の状態を判定するためのパラメータを検出するものである。生体センサ211は、例えば、浴槽220内の入浴者の状態を判定するためのパラメータを検出する。また、生体センサ211は、例えば、浴槽220から出た入浴直後のタイミングにおける使用者の状態を判定するためのパラメータを検出する。生体センサ211は、生体センサ111と同様、例えば、皮膚温度、心拍数、呼吸数および血圧の少なくとも1つを検出する。
【0021】
浴室空調機210に設けられた生体センサ211は、当該浴室空調機210と通信を行う。一例として、浴室空調機210に内蔵された制御装置は、生体センサ211の検出結果に基づいて、浴室空調機210の動作を制御する。
【0022】
上記の浴室空調機210には、例えば、浴室200の乾燥を行う浴室乾燥装置等が該当する。浴室空調機210は、例えば、
図1に示すように、浴室200の天井部分に設置される。浴室空調機210は、温風を吹き出す暖房運転および常温の風を吹き出す送風運転等を実行可能である。また、浴室空調機210は、浴室200の内部から外部への排気を行う機能を有している。浴室空調機210は、例えば、送風を行うためのファン212と、浴室200へ風を吹き出すための吹出口213と、上記の排気を行うための排気口214を、を有している。なお、浴室空調機210は、例えば、冷風を吹き出す機能を有していてもよい。
【0023】
浴室200に設置された浴槽220には、例えば、
図1に示すように、追い焚き配管222を介して、給湯装置221が接続されている。給湯装置221は、湯を供給する装置である。給湯装置221は、例えば、ヒートポンプユニットまたは電気式温水器等を有している。追い焚き配管222は、浴槽220内の水を、当該浴槽220と給湯装置221とに循環させるための配管である。追い焚き配管222には、例えば、図示しないポンプが設けられている。このポンプが駆動することで、浴槽220内と、追い焚き配管222内と、給湯装置221内とを、水が循環する。
【0024】
給湯装置221は、追い焚き222を介して浴槽220から当該給湯装置221へ導かれた水を、加熱する。給湯装置221は、水を、使用者によって設定された設定温度になるように加熱する。給湯装置221は、加熱した水を、追い焚き222を介して、浴槽220へ供給する。なお、給湯装置221は、浴槽220から当該給湯装置221へ導かれた水を、加熱した後に一度貯留してもよい。給湯装置221は、当該給湯装置221に貯留された高温の水、すなわち湯を浴槽220へ供給してもよい。給湯装置221は、即湯式の装置であってもよいし、貯湯式の装置であってもよい。
【0025】
また、浴室200には、例えば、操作装置400が設けられている。この操作装置400は、使用者が給湯装置221を操作するためのものである。一例として、操作装置400は、浴室200の壁に取り付けられている。なお、操作装置400は、浴室200の壁から着脱自在な無線通信端末等であってもよい。
【0026】
浴室200に設けられた操作装置400は、無線または有線によって、給湯装置221と接続されている。一例として、この操作装置400は、給湯装置221と互いに通信を行う。操作装置400は、例えば、給湯装置221の状態を表示する液晶画面等の表示部と、給湯装置221を操作するためのボタン等の操作部と、を有している。
【0027】
浴室200に設けられた操作装置400は、浴室空調機210を操作するための構成部品および機能を有していてもよい。すなわち、使用者は、操作装置400によって浴室空調機210を操作してもよい。一例として、浴室200に設けられた操作装置400は、浴室空調機210と相互に通信を行ってもよい。なお、使用者が浴室空調機210を操作するための装置は、操作装置400とは別に設けられていてもよい。
【0028】
図1に示すように、本実施の形態において、脱衣室100は、浴室200に隣接している。浴室200での入浴を終えた使用者は、当該浴室200を出て脱衣室100へ移動する。脱衣室100にいる人に関する物理量を検出可能に構成された生体センサ111は、浴室200を出て脱衣室100へ移動した使用者の状態に関係するパラメータを検出することができる。生体センサ111は、入浴後の使用者の状態を判定するためのパラメータを検出する。また、生体センサ111は、浴室200に入る前、すなわち入浴前の使用者の状態に関係するパラメータを検出することもできる。
【0029】
本実施の形態の空調システムは、入浴後の使用者の状態の判定を、上記の生体センサ111が検出したパラメータおよび上記の生体センサ211が検出したパラメータの少なくとも一方に基づいて実行する機能を有するシステムである。本実施の形態の空調システムを構成する脱衣室空調機110は、入浴後の使用者の状態の判定結果に基づいて制御される。入浴後の使用者の状態の判定および判定結果に基づく脱衣室空調機110の制御についてのより詳細な説明は、後述する。
【0030】
また、本実施の形態の空調システムは、一例として、
図1および
図2に示すように、居間300に設置された居間空調機310を更に備えている。居間300は、例えば、
図1に示すように、他の部屋または廊下等を介して、脱衣室100につながっている。居間空調機310は、居間300の空気調和を行う空気調和装置である。居間空調機310は、脱衣室空調機110と同様、温風を吹き出す暖房運転、冷風を吹き出す冷房運転および常温の風を吹き出す送風運転等を実行可能である。
【0031】
図1に示すように、居間空調機310には、生体センサ311が設けられている。生体センサ311は、生体センサ111および生体センサ211と同様、人に関する物理量を非接触で検出することができるセンサである。
【0032】
居間空調機310に設けられた生体センサ311は、居間300にいる人に関する物理量を検出する。本実施の形態の生体センサ311は、居間300にいる人に関する物理量を検出する第3検出部の一例である。なお、第3検出部の一例である生体センサ311は、居間空調機310とは別の場所に設けられていてもよい。例えば、生体センサ311は、居間300の壁等に設置されていてもよい。また、生体センサ311は、居間空調機310に外付けされていてもよいし、居間空調機310に内蔵されていてもよい。第3検出部の一例である生体センサ311は、居間300にいる人に関する物理量を検出可能であればよい。
【0033】
生体センサ311が検出する「人に関する物理量」とは、居間300にいる使用者の状態に関係するパラメータを意味している。生体センサ311は、居間にいる使用者の状態を判定するためのパラメータを検出するものである。生体センサ311は、生体センサ111および生体センサ211と同様、例えば、皮膚温度、心拍数、呼吸数および血圧の少なくとも1つを検出する。
【0034】
上記したように、生体センサ311は、居間300にいる使用者の状態に関係するパラメータを検出する。生体センサ311は、脱衣室100および浴室200に入る前、すなわち入浴前の使用者の状態に関係するパラメータを検出することができる。また、生体センサ311は、脱衣室100および浴室200を出た後、すなわち入浴後の使用者の状態に関係するパラメータを検出することもできる。
【0035】
居間空調機310に設けられた生体センサ311は、当該居間空調機310と通信を行う。一例として、居間空調機310に内蔵された制御装置は、生体センサ311の検出結果に基づいて、居間空調機310の動作を制御する。
【0036】
また、居間300には、例えば、操作装置400が設けられている。一例として、この操作装置400は、居間300の壁に取り付けられている。この操作装置400は、居間300の壁から着脱自在な無線通信端末等であってもよい。居間300に設けられた操作装置400は、無線または有線によって、給湯装置221と接続されている。使用者は、居間300に設けられた操作装置400によって、居間300にいながら給湯装置221を操作することができる。
【0037】
居間300に設けられた操作装置400は、居間空調機310を操作するための構成部品および機能を有していてもよい。また、居間300に設けられた操作装置400は、脱衣室空調機110を操作するための構成部品および機能を有していてもよい。一例として、居間300に設けられた操作装置400は、居間空調機310および脱衣室空調機110と相互に通信を行ってもよい。使用者は、操作装置400によって居間空調機310および脱衣室空調機110を操作してもよい。
【0038】
なお、使用者が居間空調機310を操作するための装置は、操作装置400とは別に設けられていてもよい。同様に、使用者が脱衣室空調機110を操作するための装置は、操作装置400とは別に設けられていてもよい。脱衣室空調機110を操作するための装置は、例えば、脱衣室100に設けられてもよい。また、浴室空調機210、居間空調機310および給湯装置は、脱衣室100に設けられたこの装置によって操作されるように構成されてもよい。
【0039】
上記のように構成された本実施の形態の空調システムの動作は、制御ユニット500によって制御される。
図1においては、制御ユニット500の図示を省略している。制御ユニット500は、少なくとも、脱衣室空調機110を制御する機能を有している。制御ユニット500は、
図2に示すように、脱衣室空調機110に接続される。また、一例として、制御ユニット500は、浴室空調機210および居間空調機310にも接続される。本実施の形態において、制御ユニット500は、浴室空調機210および居間空調機310を制御する機能を有している。
【0040】
一例として、制御ユニット500は、脱衣室空調機110を介して、生体センサ111が検出したパラメータの情報を取得する。また、制御ユニット500は、浴室空調機210を介して、生体センサ211が検出したパラメータの情報を取得する。制御ユニット500は、居間空調機310を介して、生体センサ311が検出したパラメータの情報を取得する。
【0041】
なお、制御ユニット500は、脱衣室空調機110を介さずに生体センサ111に接続していてもよい。制御ユニット500は、生体センサ111が検出したパラメータの情報を、当該生体センサ111から直接的に取得してもよい。同様に、制御ユニット500は、浴室空調機210を介さずに生体センサ211に接続していてもよい。制御ユニット500は、生体センサ211が検出したパラメータの情報を、当該生体センサ211から直接的に取得してもよい。また、制御ユニット500は、居間空調機310を介さずに生体センサ311に接続していてもよい。制御ユニット500は、生体センサ311が検出したパラメータの情報を、当該生体センサ311から直接的に取得してもよい。
【0042】
本実施の形態において、制御ユニット500は、生体センサ111が検出したパラメータ、生体センサ211が検出したパラメータおよび生体センサ311が検出したパラメータに応じた動作を行う。
【0043】
一例として、制御ユニット500は、
図2に示すように、演算部501および記憶部502を有する。演算部501は、各種の演算を行う機能を有するものである。記憶部502は各種の情報を記憶する機能を有するものである。記憶部502には、例えば、演算部501が各種の演算を行うためのアルゴリズムが、プログラムとして記憶される。
【0044】
また、記憶部502には、生体センサ111が検出したパラメータ、生体センサ211が検出したパラメータおよび生体センサ311が検出したパラメータの情報が記憶される。本実施の形態において、演算部501は、生体センサ111が検出したパラメータ、生体センサ211が検出したパラメータおよび生体センサ311が検出したパラメータから、各種の演算を行う。
【0045】
本実施の形態において、演算部501は、少なくとも、人に関する物理量の変化量を算出する機能を有している。より具体的には、演算部501は、ある特定の基準時点から入浴後に脱衣室100に人がいる時点までの、当該人に関する物理量の変化量を算出する。なお、以下の説明においては、記載を簡潔にするため、上記した「人に関する物理量の変化量」を、単に「変化量」とも称することがある。
【0046】
上記の変化量は、入浴後の使用者の状態に関係するパラメータである。すなわち、演算部501は、入浴後の使用者の状態に関係するパラメータを算出する。一例として、演算部501は、浴室200で入浴をしている時点での人に関する物理量と、入浴後に脱衣室100に移動した時点での人に関する物理量と、の差を変化量として算出する。
【0047】
また、演算部501は、単位時間当たりの人に関する物理量の差を、変化量として算出する機能を有していてもよい。記憶部502は、各時点での単位時間当たりの上記の変化量が記憶されてもよい。一例として、演算部501は、人が浴室200で入浴をしている時点から入浴後に当該人が脱衣室100にいる時点までにおける、当該人に関する物理量の単位時間当たりの差を算出する。
【0048】
また、演算部501は、単位時間当たりにおける人に関する物理量の「変化率」を算出する機能を有していてもよい。本開示においては、「人に関する物理量の差」、「人に関する物理量の差の絶対値」、「単位時間当たりの人に関する物理量の差」、「単位時間当たりの人に関する物理量の差の絶対値」、「単位時間当たりにおける人に関する物理量の変化率」等をまとめて、「変化量」と総称している。
【0049】
なお、演算部501は、入浴後に使用者が脱衣室100にいる間のうちの一定期間における単位時間当たりの変化量を算出してもよい。換言すると、演算部501は、入浴後に使用者が脱衣室100にいる第1の時点から当該使用者が脱衣室100にいる第2の時点までの変化量を算出してもよい。すなわち、本開示における「基準時点」とは、浴室200に使用者がいる時点に限られないということである。この基準時点は、入浴前に脱衣室100に使用者がいる時点でもよい。また、基準時点は、入浴前に使用者が居間300にいる時点でもよい。
【0050】
また、演算部501によって算出される上記の変化量は、実測値でなくてもよい。換言すると、演算部501によって算出される上記の変化量は、推定値であってもよい。例えば、演算部501は、生体センサ111が検出したパラメータを用いずに、生体センサ211が検出したパラメータと生体センサ311が検出したパラメータとに基づいて、上記の変化量を算出してもよい。
【0051】
上記のように、演算部501は、ある特定の基準時点から入浴後に脱衣室100に人がいる時点までの、当該人に関する物理量の変化量を算出する。演算部501は、生体センサ111が検出したパラメータ、生体センサ211が検出したパラメータおよび生体センサ311が検出したパラメータから、各種の演算を行う。本実施の形態における、生体センサ111、生体センサ211、生体センサ311および演算部501は、基準時点から入浴後に脱衣室にいる時点までの人に関する物理量の変化量、を検出する検出手段の一例である。なお、人に関する物理量の変化量を算出する機能は、生体センサ111、生体センサ211および生体センサ311が有していてもよい。換言すると、本開示における検出手段は、生体センサ111と生体センサ211と生体センサ311とによって構成されていてもよい。
【0052】
また、制御ユニット500は、一例として、
図2に示すように、判定部503および制御部504を有している。判定部503は、例えば、演算部501の算出結果、生体センサ111から取得した情報、生体センサ211から取得した情報、生体センサ311から取得した情報等に基づいて各種の判定を行う機能を有している。また、制御部504は、例えば、脱衣室空調機110、浴室空調機210および居間空調機310を制御する機能を有している。
【0053】
判定部503は、少なくとも、演算部501によって算出された変化量に基づいて、入浴後に脱衣室100にいる使用者の状態を判定する機能を有している。なお、判定部503は、浴室200にいる使用者の状態を判定する機能および居間300にいる使用者の状態を判定する機能を有していてもよい。
【0054】
制御部504は、少なくとも、判定部503の判定結果に基づいて脱衣室空調機110を制御する機能を有している。制御部504は、判定部503の判定結果に基づいて浴室空調機210を制御する機能を有していてもよい。制御部504は、判定部503の判定結果に基づいて居間空調機310を制御する機能を有していてもよい。
【0055】
上記の判定部503は、検出手段が検出した変化量に基づいて、脱衣室にいる人の状態を判定する状態判定手段の一例である。上記の制御部504は、状態判定手段の判定結果に基づいて脱衣室空調機110を制御する空調制御手段の一例である。また、判定部503および制御部504は、検出手段が検出した変化量に基づいて、湯冷めおよびのぼせの少なくとも一方を抑制するように脱衣室空調機110を制御する制御手段の一例を構成している。判定部503による判定および制御部504による制御の具体例については、後述する。
【0056】
また、制御ユニット500は、使用者の位置、体位、各部屋における在室状況を判定する機能を有していてもよい。例えば、記憶部502には、生体センサ111と生体センサ211と生体センサ311とによって検出された人に関する物理量の情報が、時系列として記憶されてもよい。判定部503は、記憶部502に時系列として記憶された人に関する物理量の情報に基づいて、使用者の位置、体位、各部屋における在室状況を判定してもよい。
【0057】
また、本実施の形態において、制御ユニット500は、
図2に示すように、一例として、給湯装置221および操作装置400に接続されている。制御ユニット500は、例えば、給湯装置221から、当該給湯装置221の設定値の情報を取得する。この設定値には、例えば、給湯装置221が供給する湯温および給湯装置221から浴槽220へ供給される湯量等が含まれる。また、制御ユニット500は、例えば、操作装置400から、使用者による当該操作装置400の操作に応じた信号を受信する。制御ユニット500は、この信号に基づいて動作する。
【0058】
制御ユニット500に接続された給湯装置221は、浴室200内の使用者の足元へ冷水または温水を選択的に流すことができるように構成される。給湯装置221は、例えば、使用者の足元が十分に温まっていない場合には、当該足元へ温水を流す。また、給湯装置221は、例えば、使用者がのぼせてしまう可能性がある場合には、当該使用者の足元へ冷水を流す。給湯装置221の動作は、制御ユニット500によって制御される。本実施の形態における給湯装置221は、浴室200に設けられた放水手段の一例である。なお、放水手段は、給湯装置221とは別の機器であってもよい。例えば、放水手段は、給湯装置221には接続されていない蛇口等から構成されていてもよい。
【0059】
また、制御ユニット500に接続された操作装置400は、使用者に対して報知を行うことができるように構成される。一例として、操作装置400は、音声報知を行うためのスピーカーまたはブザーを備える。本実施の形態の空調システムは、使用者の状態が異常でないかを判定する機能を有している。この判定は、例えば、判定部503によって行われる。この判定の具体例については、後述する。操作装置400は、使用者の状態が異常であると判定部503が判定した場合に、音声報知を行う。操作装置400による音声報知は、制御ユニット500によって制御される。本実施の形態における操作装置400は、報知手段の一例である。なお、報知手段は、操作装置400とは別の機器であってもよい。例えば、報知手段は、脱衣室空調機110、浴室空調機210および居間空調機310に設けられたブザー等から構成されていてもよい。
【0060】
図3は、実施の形態1の制御ユニット500の機能を実現する構成の一例を示す図である。制御ユニット500の演算部501、記憶部502、判定部503および制御部504の機能は、例えば、処理回路により実現される。処理回路は、専用ハードウェア600であってもよい。処理回路は、プロセッサ601およびメモリ602を備えていてもよい。処理回路の一部が専用ハードウェア600として形成され、且つ、当該処理回路は更にプロセッサ601およびメモリ602を備えていてもよい。
図3に示す例において、処理回路の一部は専用ハードウェア600として形成されている。また、
図3に示す例において、処理回路は、専用ハードウェア600に加えて、プロセッサ601およびメモリ602を更に備えている。
【0061】
一部が少なくとも1つの専用ハードウェア600である処理回路には、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらを組み合わせたものが該当する。
【0062】
処理回路が少なくとも1つのプロセッサ601および少なくとも1つのメモリ602を備える場合、制御ユニット500の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。
【0063】
ソフトウェアおよびファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ602に格納される。プロセッサ601は、メモリ602に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。プロセッサ601は、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータあるいはDSPともいう。メモリ602には、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリー、EPROMおよびEEPROM等の不揮発性または揮発性の半導体メモリ、または磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスクおよびDVD等が該当する。
【0064】
このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、制御ユニット500の各機能を実現することができる。
【0065】
なお、
図1は、あくまで、空調システムを構成する各要素の配置の一例を示しているものである。上記の実施の形態の説明においても変形例について言及しているように、本開示に係る空調システムの各構成要素の配置は、
図1に示すものに限定されない。例えば、居間300は、脱衣室100に隣接していてもよい。本開示に係る空調システムは、脱衣室空調機110と浴室空調機210と居間空調機310とのうち、少なくとも脱衣室空調機110を備えていればよい。
【0066】
同様に、
図2は、あくまで、空調システムの制御系統の一例を示しているものである。本開示に係る空調システムの制御系統の構成は、
図2に示すものに限定されるものではない。空調システムの構成は、制御ユニット500のような単一の装置により動作が制御される構成に限定されるものではない。空調システムは、複数の装置が連携することにより動作が制御されるように構成されてもよい。
【0067】
図2に示す一例において、制御ユニット500は、脱衣室空調機110、浴室空調機210、給湯装置221および居間空調機310の外部に設けられている。制御ユニット500の機能は、例えば、脱衣室空調機110、浴室空調機210、給湯装置221および居間空調機310の少なくとも1つに備えられていてもよい。
【0068】
また、脱衣室空調機110、浴室空調機210、給湯装置221および居間空調機310は、有線または無線に接続されていてもよい。脱衣室空調機110、浴室空調機210、給湯装置221および居間空調機310は、相互に通信をして連携してもよい。制御ユニット500の機能は、例えば、脱衣室空調機110に内蔵された制御装置、浴室空調機210に内蔵された制御装置、給湯装置221に内蔵された制御装置および居間空調機310に内蔵された制御装置が連携することによって実現されてもよい。
【0069】
次に、判定部503による判定および制御部504による制御について、より詳細に説明する。上記したように、判定部503および制御部504は、湯冷めおよびのぼせの少なくとも一方を抑制するように脱衣室空調機110を制御する制御手段の一例を構成している。判定部503は、入浴後に脱衣室にいる使用者の状態を判定する。より具体的には、判定部503は、入浴後に脱衣室にいる使用者の状態が、のぼせる可能性がある状態なのか、湯冷めする可能性がある状態なのか、を判定する。判定部503は、例えば、記憶部502にプログラムとして記憶された特定のアルゴリズムに基づいて、上記の判定を行う。
【0070】
制御部504は、入浴後に脱衣室にいる使用者の状態がのぼせる可能性がある状態であると判定部503によって判定されると、のぼせを抑制するように脱衣室空調機110を動作させる。また、制御部504は、入浴後に脱衣室にいる使用者の状態が湯冷めする可能性がある状態であると判定部503によって判定されると、湯冷めを抑制するように脱衣室空調機110を動作させる。制御部504は、例えば、記憶部502にプログラムとして記憶された特定のアルゴリズムに基づいて、脱衣室空調機110を制御する。
【0071】
図4は、判定部503による判定および制御部504による制御の実施例を示す図である。
図4に示される実施例において、判定部503は、使用者の状態が第1状態であるか第2状態であるか第3状態であるか判定する。第1状態および第2状態は、入浴によって温まりすぎた使用者が入浴後にのぼせてしまう可能性がある状態である。また、第2状態は、使用者の全身のうち、当該全身の末端部位である足元部分が冷えてしまっている状態である。第3状態は、入浴によって十分に温まらなかった使用者が入浴後に湯冷めしてしまう可能性がある状態である。
【0072】
一例として、入浴後に脱衣室にいる使用者の状態の判定は、
図4に示すように、移動前後における物理量の差に基づいて行われる。この「物理量」とは、皮膚温度、心拍数および呼吸数の何れかを意味している。皮膚温度、心拍数および呼吸数のこの何れかは、第1物理量の一例である。「移動前後における物理量の差」とは、入浴直後の時点で浴室200内にいる人に関する物理量と、当該人が当該浴室200を出て脱衣室100へ移動した時点での当該人に関する物理量と、の差を意味している。すなわち、「移動前後における物理量の差」とは、浴室200から脱衣室100への移動前後における人に関する物理量の差、を意味している。なお、以下の説明では、記載を簡潔するため、この「移動前後における物理量の差」を、単に「物理量の差」とも称することがある。
【0073】
上記の物理量の差は、具体的には、入浴後に使用者が脱衣室100にいる時点で生体センサ111が検出した物理量から、使用者が浴室200にいる入浴直後の時点で生体センサ211が検出した物理量を減じることで算出される。
【0074】
判定部503は、上記の物理量の差が閾値以上の正の値である場合には、
図4に示すように、使用者の状態が第1状態または第2の状態であると判定する。この閾値は、予め設定される。上記の物理量の差が閾値以上の正の値である場合とは、浴室200から脱衣室100への移動前後において上記の物理量が予め設定された基準に比べて大きく上昇した場合を意味している。
【0075】
浴室200から脱衣室100への移動前後において上記の物理量が予め設定された基準に比べて大きく上昇した場合とは、具体的には、浴室200から脱衣室100へ移動した使用者の皮膚温度、心拍数および呼吸数等が急激に上昇した場合である。この場合においては、使用者が入浴後にのぼせてしまうことが想定される。
【0076】
使用者の状態が第1状態または第2状態であると判定部503によって判定された場合、制御部504は、脱衣室空調機110に冷房運転または送風運転を行わせる。脱衣室空調機110は、冷房運転または送風運転によって、脱衣室100にいる入浴後の使用者の体温を下げる。これにより、使用者ののぼせが抑制される。また、のぼせた場合における急激な発汗が抑制されることで、汗冷えよる湯冷めも防止される。また、急激な体温変化による立ちくらみも抑制される。
【0077】
また、物理量の差が閾値以上の正の値であり、且つ脱衣室100にいる使用者の足元の温度が予め設定された閾値以下である場合、判定部503は、第2の状態であると判定する。脱衣室100にいる使用者の足元の温度は、生体センサ111によって検出される。
【0078】
使用者の状態が第2状態であると判定部503によって判定された場合、制御部504は、脱衣室空調機110に、脱衣室100の床付近へ温風を送風させる。これにより、使用者の足元の冷えが改善される。このとき、使用者の足元は冷えているため、当該足元への送風は避けることが好ましい。使用者の状態が第2状態であると判定部503によって判定された場合、脱衣室空調機110は、一例として、使用者の足元には風を直接あてない風よけ運転を行う。
【0079】
判定部503は、上記の物理量の差が閾値以下の負の値である場合には、
図4に示すように、使用者の状態が第3状態であると判定する。この閾値は、予め設定される。上記の物理量の差が閾値以下の負の値である場合とは、浴室200から脱衣室100への移動前後において上記の物理量が予め設定された基準に比べて大きく下降した場合を意味している。
【0080】
浴室200から脱衣室100への移動前後において上記の物理量が予め設定された基準に比べて大きく下降した場合とは、具体的には、浴室200から脱衣室100へ移動した使用者の皮膚温度、心拍数および呼吸数等が急激に下降した場合である。この場合においては、使用者が入浴によって十分に温まらなかった可能性が高い。すなわち、使用者が入浴後に湯冷めしてしまうことが想定される。
【0081】
使用者の状態が第3状態であると判定部503によって判定された場合、制御部504は、脱衣室空調機110に暖房運転を行わせる。脱衣室空調機110は、暖房運転によって、脱衣室100にいる入浴後の使用者の体温の低下を抑制する。脱衣室空調機110による暖房運転は、例えば、使用者の皮膚温度、心拍数および呼吸数等が予め設定された基準値になった時点で終了する。なお、脱衣室空調機110による暖房運転は、使用者に風が直接当たらない風よけ運転であることが好ましい。これにより、使用者が感じる寒さが抑制される。
【0082】
なお、判定部503による判定は、「物理量の差」ではなく、「単位時間当たりの物理量の変化率」によって行われてもよい。例えば、判定部503は、単位時間当たりの物理量の変化率が閾値以上である場合には、使用者の状態が第1状態または第2の状態であると判定してもよい。判定部503は、単位時間当たりの物理量の変化率が閾値以下である場合には、使用者の状態が第3状態であると判定してもよい。なお、判定部503は、物理量の単位時間当たりの物理量の変化率との組み合わせに応じて、使用者の状態を判定してもよい。
【0083】
また、制御部504は、
図4に示すように、居間空調機310を脱衣室空調機110と同様に制御してもよい。換言すると、制御部504は、居間空調機310を脱衣室空調機110に連動させてもよい。これにより、入浴後に脱衣室100を通過して居間300に入った使用者の湯冷めおよびのぼせが防止される。
【0084】
なお、
図4は、あくまで本開示に係る空調システムの動作の一例を示すものである。本開示に係る空調システムの動作は、
図4に示す例に限られない。例えば、生体センサ111、生体センサ211および生体センサ311が検出する物理量が血圧である場合には、
図4に示す例とは異なる判定および制御が実行される。生体センサ111、生体センサ211および生体センサ311は、上記した第1物理量とは異なる物理量を検出してもよい。
【0085】
本開示において、脱衣室100にいる使用者の状態の判定は、基準時点から入浴後に使用者が脱衣室100にいる時点までの物理量の変化量に基づいて行われていればよい。この変化量は、上述したように、入浴後の使用者の状態に関係するパラメータである。また、上述したように、「基準時点」とは、浴室200に使用者がいる時点に限られない。基準時点は、任意の時点として設定され得る。判定部503が使用者の状態の判定を行うためのアルゴリズムは、生体センサ111、生体センサ211および生体センサ311が検出する物理量の種類および上記の基準時点等に基づいて、設定される。また、生体センサ111、生体センサ211および生体センサ311は、例えば、複数種類の物理量を検出してもよい。生体センサ111、生体センサ211および生体センサ311は、上記した第1物理量に加えて、更に別の物理量を検出してもよい。
【0086】
また、脱衣室100にいる使用者の状態の判定は、例えば、当該使用者の深部体温の推定値に基づいて行われてもよい。
図5は、深部体温推定値と湯温と入浴時間との関係の一例を示す図である。なお、
図5はあくまで一例を示すものである。深部体温推定値と湯温と入浴時間との関係は、個人差および浴室200の環境の差の影響を受ける。
【0087】
一般的に、使用者が入浴した湯音が高いほど、当該使用者の深部体温はより短時間で高くなる。
図5に示す例においては、使用者が41℃の湯で10分以下の入浴をした場合、当該使用者の深部体温の推定値は37.5℃以下であると算出される。深部体温の推定値の算出は、例えば、演算部501によって行われる。また、深部体温の推定値を算出するための
図5に示すようなデータベースは、例えば、記憶部502に予め記憶される。
【0088】
演算部501は、例えば、給湯装置221の設定値である湯温と湯量とに基づいて、深部体温の推定値を算出する。演算部501は、実際に浴槽220に貯められた湯の実測値に基づいて、深部体温の推定値を算出してもよい。浴槽220には、一例として、当該浴槽220に貯められた湯の温度および量を測るセンサ等が設けられてもよい。また、入浴時間は、例えば、生体センサ211が検出したパラメータに基づいて、演算部501によって算出される。
【0089】
一例として、判定部503は、深部体温の推定値が予め設定された閾値以上である場合には、使用者の状態が上記の第1状態または第2の状態であると判定する。すなわち、判定部503は、深部体温の推定値が予め設定された閾値以上である場合には、使用者の状態はのぼせる可能性がある状態であると判定する。また、判定部503は、一例として、深部体温の推定値が予め設定された閾値以下である場合には、使用者の状態が上記の第3状態であると判定する。すなわち、判定部503は、深部体温の推定値が予め設定された閾値以下である場合には、使用者の状態は湯冷めする可能性がある状態であると判定する。
【0090】
次に、
図1および
図2に示すように構成された空調システムの動作例を、フローチャートを参照して説明する。
図6は、実施の形態1の空調システムの動作例を示すフローチャートである。なお、
図6は、あくまで、空調システムの動作の一例を示すものである。本開示に係る空調システムの動作は、
図6に示すものに限定されない。
【0091】
図6に示すフローチャートは、開始時点において使用者が居間300にいることを前提としたものである。まず、使用者が居間300にいる時点において、生体センサ311によって当該使用者の物理量が検出される。生体センサ311によって検出された物理量は、平常時のパラメータとして、記憶部502に記憶される。本実施の形態の空調システムは、このようにして、平常時の使用者のパラメータを取得する(ステップS101)。
【0092】
上記のステップS101の後、使用者が居間300を出て脱衣室100に入室したか否かの判定が行われる(ステップS102)。S102の判定は、例えば、生体センサ311および生体センサ111が検出した物理量に基づいて、判定部503が行う。ステップS101およびステップS102は、
図6に示すように、使用者が居間300を出て脱衣室100に入室するまで継続される。
【0093】
使用者が脱衣室100に入室すると、生体センサ111によって当該使用者の物理量が検出される。生体センサ111によって検出された物理量は、脱衣室100での使用者のパラメータとして、記憶部502に記憶される。演算部501は、脱衣室100での使用者のパラメータと平常時の使用者のパラメータとの差を算出する(ステップS103)。
【0094】
ステップS103で上記の差が算出されると、この差が予め設定された規定の範囲にあるか否かを判定する。この判定は、異常が発生しているか否かの判定である。例えば、脱衣室100にいる使用者の体調が急変した場合などにおいて、上記の差は予め設定された規定の範囲を外れる。本実施の形態の空調システムは、このようにして、異常が発生しているかいないかの判定を行う(ステップS104)。ステップS104の判定は、例えば、判定部503によって行われる。ステップS104において、異常が発生していると判定した場合、報知手段の一例である操作装置400によって報知が行われる(ステップS104a)。
【0095】
ステップS104において異常が発生していないと判定された場合、使用者が脱衣室100を出て浴室200に入室したか否かの判定が行われる(ステップS105)。S102の判定は、例えば、生体センサ111および生体センサ211が検出した物理量に基づいて、判定部503が行う。ステップS103からステップS105は、
図6に示すように、使用者が脱衣室100を出て浴室200に入室するまで継続される。
【0096】
使用者が浴室200に入室すると、当該使用者が浴槽220に入ったか否かの判定が行われる(ステップS106)。ステップS106の判定は、例えば、生体センサ211が検出した物理量に基づいて、判定部503が行う。ステップS106の判定は、使用者が浴槽220に入るまで、すなわち、使用者が入浴を開始するまで行われる。
【0097】
使用者が入浴を開始すると、生体センサ211によって当該使用者の物理量が検出される。生体センサ211によって検出された物理量は、入浴時の使用者のパラメータとして、記憶部502に記憶される。演算部501は、入浴時の使用者のパラメータと平常時の使用者のパラメータとの差を算出する(ステップS107)。
【0098】
ステップS107で上記の差が算出されると、ステップS104と同様に、この差が予め設定された規定の範囲にあるか否かの判定が行われる。この判定は、異常が発生しているか否かの判定である(ステップS108)。ステップS108の判定は、例えば、判定部503によって行われる。ステップS108において、異常が発生していると判定された場合、報知手段の一例である操作装置400によって報知が行われる(ステップS108a)。
【0099】
ステップS108において異常が発生していないと判定された場合、使用者が浴槽220から出たか否かの判定が行われる(ステップS109)。S109の判定は、例えば、生体センサ211が検出した物理量に基づいて、判定部503が行う。ステップS106の判定は、使用者が浴槽220を出るまで、すなわち、使用者が出浴するまで行われる。
【0100】
使用者が浴槽220を出ると、浴室200内における当該使用者の状態の判定が行われる(ステップS110)。ステップS110の判定は、例えば、生体センサ211が検出した物理量に基づいて、判定部503が行う。
【0101】
判定部503は、例えば、浴室内200にいる使用者の皮膚温度、心拍数および呼吸数が予め設定された閾値より高い場合、当該使用者の状態はのぼせている状態であると判定する。判定部503は、例えば、浴室内200にいる使用者の皮膚温度、心拍数および呼吸数が予め設定された閾値より低い場合、当該使用者の状態は湯冷めする可能性のある状態であると判定する。
【0102】
浴室200にいる使用者の状態がのぼせている状態であると判定された場合には、制御部504は、例えば、浴室空調機210に送風運転を行わせる。これにより、使用者ののぼせが抑制される。また、浴室200にいる使用者の状態が湯冷めする可能性があると判定された場合には、制御部504は、例えば、浴室空調機210に暖房運転を行わせる。この暖房運転は、風よけ運転であることが好ましい。これにより、使用者の湯冷めが抑制される。上記のように、本実施の形態において、浴室空調機210は、浴室200にいる使用者の状態に応じて制御される(ステップS111)。
【0103】
なお、上記のステップS111においては、放水手段の一例である給湯装置221による放水が行われてもよい。例えば、生体センサ211は、出浴した使用者の足元の温度を検出してもよい。給湯装置221は、使用者の足元の温度が予め設定された閾値以上である場合には、冷水を放水する。これにより、使用者ののぼせがより効果的に抑制される。また、給湯装置221は、使用者の足元の温度が予め設定された閾値以下である場合には、温水を放水する。これにより、使用者の足元の冷えが抑制される。
【0104】
上記のステップS111の後、ステップS104およびステップS108と同様に、異常が発生しているか否かの判定が行われる(ステップS112)。ステップS112の判定は、例えば、生体センサ211が検出した物理量および予め設定されたアルゴリズム等に基づいて、判定部503が行う。例えば、判定部503は、入浴中の使用者の物理量の単位時間当たりの変化率が予め設定された閾値以上であった場合には、異常が発生していると判定する。ステップS112において、異常が発生していると判定された場合、報知手段の一例である操作装置400によって報知が行われる(ステップS112a)。
【0105】
ステップS112において異常が発生していないと判定された場合、使用者が浴室200から退出したか否かの判定が行われる(ステップS113)。ステップS113の判定は、例えば、生体センサ211および生体センサ111が検出した物理量に基づいて、判定部503が行う。ステップS110からステップS113は、
図6に示すように、使用者が浴室200を退出するまで行われる。
【0106】
使用者が浴室200を退出して、脱衣室100に入ると、当該使用者の状態の判定が行われる(ステップS114)。また、ステップS114における判定結果に基づいて、脱衣室空調機110が制御される(ステップS115)。ステップS114の判定およびステップS115の制御は、一例として、
図4に示したように行われる。これにより、入浴後における使用者の湯冷めおよびのぼせが防止される。
【0107】
なお、本開示に係る空調システムは、必ずしも、湯冷めとのぼせとの両方を抑制するものでなくともよい。本開示に係る空調システムは、入浴後の湯冷めとのぼせとの少なくとも一方を抑制可能に構成されていればよい。ステップS115において、脱衣室空調機110は、入浴後の湯冷めとのぼせとの少なくとも一方を抑制するように動作すればよい。
【0108】
上記のステップS115の後、ステップS112と同様に、異常が発生しているか否かの判定が行われる(ステップS116)。ステップS116の判定は、例えば、生体センサ111が検出した物理量および予め設定されたアルゴリズム等に基づいて、判定部503が行う。ステップS116において、異常が発生していると判定された場合、報知手段の一例である操作装置400によって報知が行われる(ステップS116a)。
【0109】
ステップS116において異常が発生していないと判定された場合、使用者が居間300に入室したか否かの判定が行われる(ステップS117)。ステップS117の判定は、例えば、生体センサ111および生体センサ311が検出した物理量に基づいて、判定部503が行う。ステップS114からステップS117は、
図6に示すように、使用者が居間300に入室するまで行われる。
【0110】
使用者が居間300に入室すると、居間300内における当該使用者の状態の判定が行われる(ステップS118)。ステップS118の判定は、例えば、生体センサ311が検出した物理量に基づいて、判定部503が行う。ステップS118の判定は、一例として、ステップS110と同様に行われる。このステップS118の判定結果に基づいて、居間空調機310が制御される(ステップS119)。なお、ステップS119において、居間空調機310は、
図4に示したように、脱衣室空調機110に連動するように制御されてもよい。
【0111】
上記のステップS119の後、ステップS112およびステップS116と同様に、異常が発生しているか否かの判定が行われる(ステップS120)。ステップS120の判定は、例えば、生体センサ311が検出した物理量および予め設定されたアルゴリズム等に基づいて、判定部503が行う。ステップS120において、異常が発生していると判定された場合、報知手段の一例である操作装置400によって報知が行われる(ステップS120a)。
【0112】
以上に示したように、本実施の形態の空調システムによれば、入浴後における湯冷めおよびのぼせの少なくとも一方を抑制することができる。また、使用者の異常を検出し、この異常を報知することもできる。
【符号の説明】
【0113】
100 脱衣室、 110 脱衣室空調機、 111 生体センサ、 200 浴室、 210 浴室空調機、 211 生体センサ、 212 ファン、 220 浴槽、 221 給湯装置、 222 追い焚き配管、 300 居間、 310 居間空調機、 311 生体センサ、 400 操作装置、 500 制御ユニット、 501 演算部、 502 記憶部、 503 判定部、 504 制御部、 600 専用ハードウェア、 601 プロセッサ、 602 メモリ