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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】給水制御装置
(51)【国際特許分類】
   F22D 5/26 20060101AFI20231212BHJP
   F22D 11/00 20060101ALI20231212BHJP
   F22D 5/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
F22D5/26 Z
F22D11/00 L
F22D5/00 B
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022205245
(22)【出願日】2022-12-22
(62)【分割の表示】P 2019068178の分割
【原出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2023024646
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】秋永 草平
(72)【発明者】
【氏名】森 直樹
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-143484(JP,A)
【文献】特開2005-061478(JP,A)
【文献】特開2014-085081(JP,A)
【文献】特開2010-272342(JP,A)
【文献】国際公開第2017/149661(WO,A1)
【文献】特開平04-369350(JP,A)
【文献】特開2015-130825(JP,A)
【文献】米国特許第04249893(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22D 5/26
F22D 11/00
F22D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気を生成して負荷機器に供給するボイラと、
前記負荷機器において蒸気が凝縮して生じたドレンを大気に開放することなく回収するドレンタンクと、
前記ドレンタンクに回収された前記ドレンを前記ボイラに供給するドレン供給ラインと、
前記ボイラに補給水を供給する補給水供給ラインと、
前記ドレン供給ラインに配置され、前記ドレンタンクから前記ドレンを送出するドレン供給ポンプと、
前記ドレン供給ラインに配置され、前記ドレンの流れやすさを定める状態量を設定可能な流量調節機構と、
前記ドレンの流量を検出する流量検出部と、
を備えるボイラシステムの給水を制御する給水制御装置であって、
前記流量検出部により検出された流量が設定された流量目標値に近づくように前記流量調節機構の状態量をフィードバック制御する流量制御部を備え、
前記流量制御部は、前記ボイラに前記ドレン供給ラインから前記ドレンを供給せず、前記補給水供給ラインから補給水を供給する状態から、前記ドレン供給ラインから前記ドレンを供給し、前記補給水供給ラインから補給水を供給しない状態に切り替えられた場合に、前記流量調節機構の状態量を一定の値、又は運転圧力若しくは設定燃焼量が大きいほど前記ドレンが流れやすい値に設定された初期値に合わせてから前記フィードバック制御を開始する、給水制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラにより蒸気を生成して負荷機器に供給し、負荷機器で蒸気が凝縮して生成されるドレンをドレンタンクに回収してボイラに再供給するボイラシステムが利用されている。このようなボイラシステムにおいて熱効率を向上するために、例えば特許文献1に記載されるように、ドレンタンクを加圧状態とし、高温高圧のドレンを回収してボイラ装置に再供給するボイラシステムが提案されている。
【0003】
特許文献1に記載のボイラシステムは、ドレン供給ポンプ及びドレン流量調節弁を有し、ドレンタンクに収容されたドレンを複数のボイラを有するボイラ装置に供給するドレン供給ラインと、ボイラ装置に新水を供給する新水供給ラインと、を備える。特許文献1に記載のボイラシステムは、ドレン供給ラインからのドレンの供給を優先的に行い、ドレン供給ラインからのドレンの供給が不足した場合に新水供給ラインからの新水の供給を行う第1給水モードと、新水供給ラインのみから給水を行う第2給水モードと、の2つの運転モードを有する制御装置を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-146074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるように水位制御を行うボイラでは、負荷機器の蒸気消費量等に応じて燃焼量が設定され、燃焼量に応じて給水の流量が調節されることがある。この場合、ドレン供給ラインには流量センサが設けられ、流量センサの検出値が燃焼量に応じて定められる目標値になるよう、ドレン流量調節弁の開度をフィードバック制御する。
【0006】
このような構成を備えるボイラシステムにおいて、第2給水モードから第1給水モードに切り替えられた場合、ボイラに供給されるドレンの流量の目標値がステップ状に増大する。この場合、ドレンの流量がオーバーシュートして一時的に過大となり得る。負荷機器の蒸気消費量が大きいときなど、要求されるドレンの流量が比較的大きいときに第2給水モードから第1給水モードに切り替えると、ドレンの流量が過度に大きくなることによって、ドレン供給ポンプがキャビテーションを起こす可能性がある。一度ドレン供給ポンプがキャビテーションを起こすと、ドレンの流量が低下するため、フィードバック制御によりドレン流量調節弁の開度がさらに増大し、キャビテーションを解消することができなくなる場合がある。
【0007】
従って、本発明は、ドレン供給ポンプのキャビテーションの発生を抑制できる給水制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る給水制御装置は、蒸気を生成して負荷機器に供給するボイラと、前記負荷機器において蒸気が凝縮して生じたドレンを大気に開放することなく回収するドレンタンクと、前記ドレンタンクに回収された前記ドレンを前記ボイラに供給するドレン供給ラインと、前記ボイラに補給水を供給する補給水供給ラインと、前記ドレン供給ラインに配置され、前記ドレンタンクから前記ドレンを送出するドレン供給ポンプと、前記ドレン供給ラインに配置され、前記ドレンの流れやすさを定める状態量を設定可能な流量調節機構と、前記ドレンの流量を検出する流量検出部と、を備えるボイラシステムの給水を制御する給水制御装置であって、前記流量検出部により検出された流量が設定された流量目標値に近づくように前記流量調節機構の状態量をフィードバック制御する流量制御部を備え、前記流量制御部は、前記ボイラに前記ドレン供給ラインから前記ドレンを供給せず、前記補給水供給ラインから補給水を供給する状態から、前記ドレン供給ラインから前記ドレンを供給し、前記補給水供給ラインから補給水を供給しない状態に切り替えられた場合に、前記流量調節機構の状態量を設定された初期値に合わせてから前記フィードバック制御を開始する。
【0009】
本発明に係る給水制御装置において、前記流量目標値は、前記ボイラ内の水位が所定の上限以上となった場合にはゼロ又は最低流量に設定され、前記ボイラ内の水位が所定の下限以下となった場合には所定の値に設定されてもよい。
【0010】
本発明に係る給水制御装置において、前記目標値は、前記ボイラの水位を一定に保つよう連続的に変化してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ドレン供給ポンプのキャビテーションの発生を抑制できる給水制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態の給水制御装置を備えるボイラシステムの構成を示す図である。
図2】本発明の第2実施形態の給水制御装置を備えるボイラシステムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の給水制御装置の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る給水制御装置200を備えるボイラシステム1の構成を示す図である。
【0014】
ボイラシステム1は、ボイラ装置10と、ドレンタンク20と、オープンタンク30と、台数制御装置100と、本発明の一実施形態に係る給水制御装置200と、を備える。ボイラシステム1は、ボイラ装置10により蒸気を生成して蒸気を消費する(熱エネルギーを利用して蒸気を凝縮させる)負荷機器40に蒸気を供給する。
【0015】
また、ボイラシステム1は、これらの機器を接続し、蒸気又は水が流通する複数のラインを備える。具体的には、ボイラシステム1は、蒸気供給ラインL1、ドレン回収ラインL2、ドレン供給ラインL3、加圧蒸気ラインL4、フラッシュ蒸気ラインL5、タンク補給水供給ラインL6、及びボイラ補給水供給ラインL7を備える。
【0016】
さらに、ボイラシステム1は、ドレン回収ラインL2に設けられるスチームトラップ21及び逆止弁22と、ドレン供給ラインL3に配設されるドレン供給ポンプ31、ドレン流量調節弁32及びドレン流量センサ33と、加圧蒸気ラインL4に設けられる供給圧力調整弁41と、フラッシュ蒸気ラインL5に設けられる排出圧力調整弁51と、タンク補給水供給ラインL6に設けられるタンク給水ポンプ61及びタンク給水量調節弁62と、ボイラ補給水供給ラインL7に設けられる補給水供給ポンプ71と、を備える。
【0017】
ボイラ装置10は、複数のボイラ11と、これら複数のボイラ11で生成された蒸気が集合される蒸気ヘッダ12と、ボイラ11と蒸気ヘッダ12とを連結する連結管13と、を備える。
【0018】
複数のボイラ11は、ドレン供給ラインL3から供給されるドレン又はボイラ補給水供給ラインL7から供給される補給水を加熱することにより蒸気を生成する。それぞれのボイラ11は、例えば貫流ボイラ等によって構成することができる。複数のボイラ11は、協調して動作し、負荷機器40が消費する蒸気の量と略等しい量の蒸気を生成する。
【0019】
ボイラ11は、それぞれ台数制御装置100からの指示に従って燃焼状態を制御するローカル制御部15を有する。ローカル制御部15は、それぞれのボイラ11が必要とする給水量である流量目標値を給水制御装置200に指示する。具体的には、ローカル制御部15は、ボイラ11内の水位が所定の上限以上となった場合には流量目標値をゼロに設定して給水を停止するよう給水制御装置200に指示し、ボイラ11内の水位が所定の下限以下となった場合には流量目標値を所定の値に設定するよう給水制御装置200に指示するオンオフ制御を行うことができる。この場合、ボイラ11内の水位が所定の下限以下となった場合にローカル制御部15が指示する流量目標値は、燃焼量が大きいほど大きい値とすることが好ましい。また、ローカル制御部15は、例えばドレン供給ラインL3にボイラ11の燃焼排ガスによって給水を加熱するエコノマイザが設けられる場合には、ボイラ11内の水位が所定の上限以上となった場合に指示する流量目標値を完全にゼロとせず、エコノマイザ内で給水が沸騰することを防止することができる最低限度の値としてもよい。これにより、ボイラ11内の水位が所定の上限以上となった場合に、最低流量の給水を継続させることができ、エコノマイザ内における給水の沸騰を防止できる。
【0020】
蒸気ヘッダ12は、ボイラ11で生成された蒸気を貯留し、負荷機器40に供給することにより、蒸気の圧力変動を抑制する。連結管13は、ボイラ11で生成された蒸気を蒸気ヘッダ12に集める。蒸気ヘッダ12は、内部の蒸気の圧力を検出する圧力センサ16を有する。
【0021】
ドレンタンク20は、耐圧性を有する圧力容器により構成される。このドレンタンク20は、ボイラ11により生成された蒸気が負荷機器40で利用されることで凝縮して生じたドレンを高温高圧の状態で回収する。
【0022】
ドレンタンク20には、内部のドレンの水位を検出するドレン水位計25が配設される。ドレン水位計25は、筒状の本体と、この本体の内部に配置され、本体内の水位を検出する複数の電極棒と、を備える構成とすることができる。
【0023】
オープンタンク30は、大気に開放されている。このオープンタンク30は、ボイラ11に供給される補給水を貯留する。また、オープンタンク30には、ドレンタンク20においてドレンから発生したフラッシュ蒸気が供給される。
【0024】
蒸気供給ラインL1は、蒸気ヘッダ12と負荷機器40とを接続し、複数のボイラ11で生成された蒸気を負荷機器40に供給する。
【0025】
ドレン回収ラインL2は、負荷機器40において蒸気が凝縮して生じるドレンを大気に解放することなくドレンタンク20に回収する。ドレン回収ラインL2において、スチームトラップ21は、ドレンだけを通過させ、蒸気がドレンタンク20に流出することを防止する。逆止弁22は、ドレンが逆流することを防止する。
【0026】
ドレン供給ラインL3は、ドレンタンク20に回収されたドレンをボイラ装置10に供給する。ドレン供給ラインL3の上流側の端部は、ドレンタンク20の下部に接続される。ドレン供給ラインL3の下流側は、その端部が複数のボイラ11にそれぞれ接続されるよう複数に分岐している。
【0027】
ドレン供給ポンプ31は、ドレン供給ラインL3における分岐部分よりも上流側に配置され、ドレンタンク20から供給されたドレンを昇圧して複数のボイラ11に送出する。ドレン供給ポンプ31は、後述する給水制御装置200によって起動及び停止される。
【0028】
ドレン流量調節弁32は、対応するボイラ11に供給されるドレンの流れやすさを定める状態量である開度を設定可能な流量調節機構である。各ドレン流量調節弁32は、例えばモータバルブ等によって構成することができる。各ドレン流量調節弁32は、後で詳しく説明するように、給水制御装置200によって、対応するボイラ11の運転状態に応じて適切な量のドレンを供給できるよう個別に制御される。
【0029】
ドレン流量センサ33は、対応するボイラ11に供給されるドレンの流量を検出する流量検出部である。各ドレン流量センサ33は、例えば質量流量センサ、オリフィス流量センサ等、任意の流量計によって構成することができる。
【0030】
加圧蒸気ラインL4は、ボイラ装置10から直接ドレンタンク20に蒸気を供給する。加圧蒸気ラインL4に配設される供給圧力調整弁41は、ドレンタンク20に供給される蒸気の圧力を設定圧力に保つ。これにより、ドレンタンク20の圧力が設定圧力より低くなることが防止される。
【0031】
フラッシュ蒸気ラインL5は、ドレンタンク20の上部空間とオープンタンク30とを接続する。フラッシュ蒸気ラインL5は、ドレンタンク20の圧力が設定圧力よりも高くなると、排出圧力調整弁51が開いてドレンタンク20内の蒸気をオープンタンク30に排出する。これにより、ドレンタンク20の圧力が設定圧力より高くなることが防止される。
【0032】
タンク補給水供給ラインL6は、オープンタンク30とドレンタンク20とを接続し、オープンタンク30に貯留された水をドレンタンク20に供給する。タンク補給水供給ラインL6に配設されるタンク給水ポンプ61は、オープンタンク30に貯留された水を昇圧して複数のドレンタンク20に送出する。このタンク給水ポンプ61は給水制御装置200によって、ドレン水位計25が検出するドレンタンク20の水位を一定の範囲内に保持できるよう起動及び停止される。また、タンク補給水供給ラインL6に配設されるタンク給水量調節弁62は、ドレンタンク20の圧力に応じて補給水の流量を制限してタンク給水ポンプ61に背圧を付与する。具体的には、ドレンタンク20の圧力が設定圧力よりも低い場合には補給水の流量が小さくなるよう開度を小さくすることによって、タンク給水ポンプ61におけるキャビテーションを防止する。
【0033】
ボイラ補給水供給ラインL7は、オープンタンク30に貯留する補給水をボイラ装置10に供給する。ボイラ補給水供給ラインL7の上流側の端部は、オープンタンク30の下部に接続される。ボイラ補給水供給ラインL7の下流側は、その端部が複数のボイラ11にそれぞれ接続されるよう複数に分岐している。ドレン供給ラインL3からの給水が不足する場合に、ボイラ補給水供給ラインL7を通じて補給水がボイラ装置10に供給される。
【0034】
補給水供給ポンプ71は、ボイラ補給水供給ラインL7の下流側に、各ボイラ11に対応するようそれぞれ複数設けられる。
【0035】
補給水供給ポンプ71は、オープンタンク30から供給された補給水を昇圧して対応するボイラ11に送出する。補給水供給ポンプ71は、速度調節可能であり、例えばインバータ(周波数変換器)72によって駆動される電動ポンプ等によって構成することができる。インバータ72の出力周波数は、給水制御装置200によって制御される。
【0036】
台数制御装置100は、負荷機器40の蒸気使用量に合わせて各ボイラ11の燃焼状態(運転/停止、及び運転時の燃焼量を含む)を決定する。具体的には、台数制御装置100は、蒸気ヘッダ12の圧力センサ16の検出値を略一定に保持するために必要とされる蒸気生成量を算出し、ボイラ11の運転台数及び燃焼量を決定する。
【0037】
台数制御装置100は、台数制御装置100、例えばCPU、メモリ等を有するコンピュータ装置に適切なプログラムを導入することによって実現することができる。
【0038】
給水制御装置200は、例えばCPU、メモリ等を有するコンピュータ装置に適切なプログラムを導入することによって実現することができる。また、給水制御装置200は、台数制御装置100やローカル制御部15と一体と構成されてもよい。
【0039】
給水制御装置200は、ドレンタンク20及びオープンタンク30からボイラ装置10への給水を制御する。この給水制御装置200は、ドレン供給ラインL3による給水及びボイラ補給水供給ラインL7による給水のいずれか一方又は両方を選択する給水選択部210と、ドレン供給ラインL3を用いたボイラ装置10へのドレンの供給流量を制御するドレン流量制御部220と、ボイラ補給水供給ラインL7を用いたボイラ装置10への補給水の供給流量を制御する補給水流量制御部230と、を備える。給水制御装置200において、給水選択部210、ドレン流量制御部220及び補給水流量制御部230は、機能的に区別されるものであって、物理的構成及びプログラム構成において明確に区分できなくてもよい。
【0040】
給水選択部210は、ドレン供給ラインL3からの給水と、ボイラ補給水供給ラインL7からの給水との選択によって、ボイラ11への給水を行う。
【0041】
ドレン流量制御部220は、給水選択部210によりドレン供給ラインL3からの給水が選択された場合、ドレン流量センサ33により検出された流量が設定された流量目標値に近づくように対応するドレン流量調節弁32の開度をフィードバック制御する。また、ドレン流量制御部220は、ローカル制御部15から指示される給水量、ひいてはそれにより決定されるドレン流量目標値が変更された場合に各ドレン流量調節弁32の開度を予め設定された初期値に合わせてからフィードバック制御を開始する。
【0042】
ドレン流量制御部220は、ドレン流量目標値が変更された場合に、ドレン流量調節弁32の開度を運転条件に応じて設定される初期値に合致する開度としてからフィードバック制御を開始するので、フィードバック制御を開始する時点でのドレン流量センサ33の検出値のドレン流量目標値に対する偏差を小さくすることができる。ドレン流量制御部220は、ドレン流量調節弁32からの開度情報のフィードバックを確認してドレン流量調節弁32の開度が初期値と等しくなったことを確認してからフィードバック制御を開始してもよく、ドレン流量調節弁32に初期値を指示する信号を出力してからドレン流量調節弁32が動作するために必要な時間が経過したときにフィードバック制御を開始してもよい。
【0043】
つまり、ボイラシステム1において、一度ドレン供給ポンプ31にキャビテーションが発生すると、ドレンの流量が非常に小さくなるため、ドレン流量調節弁32の開度がさらに大きくなり、キャビテーションを解消できなくなるおそれがある。しかしながら、ドレン流量制御部220は、ドレン流量調節弁32の開度を予め設定される初期値に合わせてからフィードバック制御を開始するので、フィードバック制御開始時にドレン供給ポンプ31の流量がオーバーシュートして一時的に過大となることによるキャビテーションの発生を防止できる。これによって、ボイラシステム1は、ドレン供給ポンプ31のキャビテーションの発生を防止して、各ボイラ11を適切に運転することができる。
【0044】
各ドレン流量調節弁32の開度の初期値は、常に一定の値であってもよいが、予め定めた方法によって、対応するボイラ11の運転圧力(蒸気圧力)に応じて設定される値とすることが好ましい。具体的には、ボイラ11の運転圧力が大きいほどドレン流量調節弁32の開度を大きくすることが好ましい。ドレン供給ポンプ31に対する背圧として作用するボイラ11の運転圧力に応じて、ドレン流量調節弁32の開度の初期値を設定することによって、流量のオーバーシュートをより確実に抑制することができるので、ドレン供給ポンプ31のキャビテーションをより確実に防止することができる。各ドレン流量調節弁32の開度の初期値は、ボイラ11の運転圧力の関数として設定されてもよく、ボイラ11の運転圧力の区分に対応する値を定めた対応表を参照して設定されてもよい。
【0045】
また、各ドレン流量調節弁32の開度の初期値は、対応するボイラ11の設定燃焼量に応じて予め設定される値としてもよい。具体的には、ボイラ11の燃焼量が大きいほどドレン流量調節弁32の開度を大きくすることが好ましい。ボイラ11の設定燃焼量に応じてドレン流量調節弁32の開度の初期値を設定することによって、フィードバック制御開始時から制御が安定した状態に近い流量のドレンをボイラ11に供給することができる。このため、フィードバック制御開始直後に通常の制御によってローカル制御部15が流量目標値を変更した場合であっても、変更後のドレン流量目標値に対する実際のドレン流量の偏差が過大となることによる流量のオーバーシュートを抑制して、ドレン供給ポンプ31のキャビテーションを防止することができる。
【0046】
各ドレン流量調節弁32の開度の初期値は、ボイラ11の運転圧力及び設定燃焼量の一方のみに応じて設定されてもよいが、ボイラ11の運転圧力及び設定燃焼量の両方に応じて設定することが好ましい。この場合、各ドレン流量調節弁32の開度の初期値は、ボイラ11の運転圧力及び設定燃焼量の関数(2変数関数)として設定されてもよいが、ボイラ11の運転圧力の区分及び設定燃焼量に対応する値を定めた二次元の対応表を参照して設定されてもよい。
【0047】
ドレン流量制御部220は、ボイラ11にドレン供給ラインL3からドレンを供給せず、ボイラ11にボイラ補給水供給ラインL7から補給水を供給する状態から、ドレン供給ラインL3からドレンを供給し、ボイラ補給水供給ラインL7から補給水を供給しない状態に切り替えられた場合に、ドレン流量調節弁32の開度を初期値に設定してからフィードバック制御を開始することが好ましい。ドレン供給ラインL3のドレン流量目標値が比較的段差の大きいステップ状に変化する場合にはドレン供給ポンプ31のキャビテーションが特に発生しやすいため、このような場合にドレン流量調節弁32の開度を初期値に設定することによって、ドレン供給ポンプ31のキャビテーションを効果的に防止することができる。
【0048】
補給水流量制御部230は、給水選択部210によりボイラ補給水供給ラインL7からの給水が選択された場合、ボイラ補給水供給ラインL7から各ボイラ11への補給水の供給を制御する。
【0049】
以上のように、ボイラシステム1において、給水制御装置200のドレン流量制御部220は、ドレン流量目標値が変更された場合にドレン流量調節弁32の開度を予め設定された初期値に合わせてからフィードバック制御を開始するので、フィードバック制御を開始する時点でのドレン流量センサ33の検出値のドレン流量目標値に対する偏差を小さくして、フィードバック制御におけるオーバーシュートを抑制してドレン供給ポンプ31のキャビテーションを防止することができる。
【0050】
続いて、図2に、本発明の第2実施形態に係る給水制御装置200Aを備えるボイラシステム1Aの構成を示す。ボイラシステム1は、ボイラ装置10と、ドレンタンク20と、オープンタンク30と、台数制御装置100と、本発明の一実施形態に係る給水制御装置200Aと、を備える。ボイラシステム1Aは、ボイラ装置10により蒸気を生成して蒸気を消費する負荷機器40に蒸気を供給する。また、ボイラシステム1Aは、蒸気供給ラインL1、ドレン回収ラインL2、ドレン供給ラインL3A、加圧蒸気ラインL4、フラッシュ蒸気ラインL5、タンク補給水供給ラインL6、及びボイラ補給水供給ラインL7を備える。さらに、ボイラシステム1Aは、ドレン回収ラインL2に設けられるスチームトラップ21及び逆止弁22と、ドレン供給ラインL3Aに複数配設されるドレン供給ポンプ31A及びドレン流量センサ33と、加圧蒸気ラインL4に設けられる供給圧力調整弁41と、フラッシュ蒸気ラインL5に設けられる排出圧力調整弁51と、タンク補給水供給ラインL6に設けられるタンク給水ポンプ61及びタンク給水量調節弁62と、ボイラ補給水供給ラインL7に複数設けられる補給水供給ポンプ71と、を備える。図2のボイラシステム1Aにおいて、図1のボイラシステムと同じ構成要素には同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0051】
ドレン供給ラインL3Aは、ドレンタンク20に回収されたドレンをボイラ装置10に供給する。ドレン供給ラインL3Aの上流側の端部は、ドレンタンク20の下部に接続される。ドレン供給ラインL3の下流側は、その端部が複数のボイラ11にそれぞれ接続されるよう複数に分岐している。ドレン供給ポンプ31A及びドレン流量センサ33は、ドレン供給ラインL3における分岐部分よりも下流側に、それぞれのボイラ11に対応して配置される。
【0052】
ドレン供給ポンプ31Aは、速度調節可能であり、例えばインバータ(周波数変換器)36によって駆動される電動ポンプ等によって構成することができる。ドレン供給ポンプ31Aにおけるインバータ34の出力周波数は、ドレンの流れやすさを定める状態量である。つまり、インバータ34は、ドレン供給ラインL3Aに配置され、ドレンの流れやすさを定める状態量である出力周波数を設定可能な流量調節機構である。
【0053】
ドレン流量制御部220Aは、ドレン流量センサ33により検出された流量が設定された流量目標値に近づくように対応するドレン供給ポンプ31Aの速度(インバータ34の出力周波数)をフィードバック制御する。また、ドレン流量制御部220は、ローカル制御部15から指示される給水量により決定されるドレン流量目標値が変更された場合に各ドレン供給ポンプ31Aの速度を予め設定された初期値に合わせてからフィードバック制御を開始する。つまり、図2のボイラシステム1Aにおける給水制御装置200Aのドレン流量制御部220Aは、その制御対象を、図1のボイラシステム1における給水制御装置200のドレン流量制御部220におけるドレン流量調節弁32の開度からドレン供給ポンプ31Aの速度に変更したものであり、その制御内容は同様とすることができる。
【0054】
図2のボイラシステム1Aでは、給水制御装置200Aのドレン流量制御部220Aが、ドレン流量目標値が変更された場合にドレン供給ポンプ31Aの速度を予め設定された初期値に合わせてからフィードバック制御を開始するので、フィードバック制御を開始する時点でのドレン流量センサ33の検出値のドレン流量目標値に対する偏差を小さくして、フィードバック制御におけるオーバーシュートを抑制してドレン供給ポンプ31Aのキャビテーションを防止することができる。
【0055】
以上、本発明の給水制御装置の好ましい各実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0056】
例えば、第1実施形態及び第2実施形態では、ボイラシステム1,1Aは、3台のボイラ11を有するボイラ装置10を備える構成としたが、本発明の給水制御装置は、1台若しくは2台又は4台以上のボイラを有するボイラ装置を備えるボイラシステムにも適用することができる。
【0057】
また、第1実施形態における加圧蒸気ラインL4、フラッシュ蒸気ラインL5、タンク補給水供給ラインL6は、それぞれ任意の構成であって省略することができる。
【0058】
上述の実施形態において、流量目標値は、ボイラ11の水位が所定の上限以上となった場合のゼロ又は最低流量と、ボイラ11の水位が所定の下限以下となった場合の所定値の2つの値のいずれかとされたが、流量目標値は、ボイラ11の水位を一定に保つよう、例えば設定水位と実際の水位との偏差に基づくフィードバック制御等によって、連続的に変化してもよい。
【0059】
上述の実施形態において、給水選択部210は、ドレン供給ラインL3からのドレンの給水とボイラ補給水供給ラインL7からの補給水の給水とのいずれかを選択するが、給水選択部210は、ドレン供給ラインL3からのドレンの給水とボイラ補給水供給ラインL7からの補給水の給水とを同時に行ってもよい。この場合、給水選択部210は、ローカル制御部15から指示された各ボイラ11への給水量を、ドレン供給ラインL3のドレンの流量の目標値(ドレン流量目標値)とボイラ補給水供給ラインL7の補給水の流量の目標値(補給水流量目標値)とに振り分けるよう構成することができる。
【0060】
上述の実施形態において、ボイラ補給水供給ラインL7には、速度調節可能な補給水供給ポンプ71が配設されているが、ドレン供給ラインL3と同様に、ボイラ補給水供給ラインL7における分岐部分よりも上流側に補給水供給ポンプを配置し流量調節弁によって流量を制御する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1,1A ボイラシステム
10 ボイラ装置
11 ボイラ
20 ドレンタンク
30 オープンタンク
31,31A ドレン供給ポンプ
32 ドレン流量調節弁(流量調節機構)
33 ドレン流量センサ(流量検出部)
34 インバータ(流量調節機構)
40 負荷機器
200,200A 給水制御装置
210 給水選択部
220,220A ドレン流量制御部
230 補給水流量制御部
L1 蒸気供給ライン
L2 ドレン回収ライン
L3,L3A ドレン供給ライン
L7 ボイラ補給水供給ライン
図1
図2