IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士通株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-情報処理プログラム、装置、及び方法 図1
  • 特許-情報処理プログラム、装置、及び方法 図2
  • 特許-情報処理プログラム、装置、及び方法 図3
  • 特許-情報処理プログラム、装置、及び方法 図4
  • 特許-情報処理プログラム、装置、及び方法 図5
  • 特許-情報処理プログラム、装置、及び方法 図6
  • 特許-情報処理プログラム、装置、及び方法 図7
  • 特許-情報処理プログラム、装置、及び方法 図8
  • 特許-情報処理プログラム、装置、及び方法 図9
  • 特許-情報処理プログラム、装置、及び方法 図10
  • 特許-情報処理プログラム、装置、及び方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】情報処理プログラム、装置、及び方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20231212BHJP
   G06T 7/20 20170101ALI20231212BHJP
   G06T 7/70 20170101ALI20231212BHJP
   G06T 7/246 20170101ALI20231212BHJP
   A63B 71/06 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H04N7/18 K
H04N7/18 U
G06T7/20 300Z
G06T7/70 A
G06T7/246
A63B71/06 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022502703
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2020007998
(87)【国際公開番号】W WO2021171470
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 公治
【審査官】秦野 孝一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/092933(WO,A1)
【文献】特開2018-189924(JP,A)
【文献】特開2013-235534(JP,A)
【文献】国際公開第2016/098415(WO,A1)
【文献】特開2019-033869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
G06T 7/00-7/90
A63B 71/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スケートリンクを含む会場内に設けられたマイクで集音された音信号、及び前記スケートリンクで競技する競技者を撮影した映像を取得し、
前記音信号に基づく氷の音の消失と復帰に応じて、前記競技者が行ったジャンプの離氷時刻及び着氷時刻を推定し、
前記音信号の時刻情報と前記映像の時刻情報とを同期させ、前記映像において、前記離氷時刻に対応するフレームとして、前記離氷時刻と同期する時刻情報のフレームの所定数前のフレームを特定し、前記着氷時刻に対応するフレームとして、前記着氷時刻と同期する時刻情報のフレームの所定数後のフレームを特定し、前記離氷時刻に対応するフレームから前記着氷時刻に対応するフレームまでをジャンプの区間として特定し、
少なくとも前記離氷時刻に対応するフレームについての前記所定数を、前記競技者と前記マイクとの距離の最大値及び音速とに基づいて算出される、前記映像に対する前記音信号の遅延時間をフレーム数に換算した数とする
ことを含む処理をコンピュータに実行させるための情報処理プログラム。
【請求項2】
前記コンピュータに、さらに、
前記映像に基づき、前記競技者及び前記競技者が装着する装着物の所定部位の3次元位置を特定し、
前記ジャンプの区間に含まれるフレームの各々から、前記離氷時刻及び前記着氷時刻の各々における前記所定部位の位置に基づく基準線に対する前記所定部位の角度を算出する
処理を実行させる請求項1に記載の情報処理プログラム。
【請求項3】
前記着氷時刻に対応するフレームから算出された前記角度と、前記着氷時刻に対応するフレームの1つ前のフレームから算出された前記角度とに基づいて、前記着氷時刻における前記所定部位の角度を算出する請求項2に記載の情報処理プログラム。
【請求項4】
前記ジャンプの区間に対応する前記所定部位の3次元位置に基づいて、踏切速度、ジャンプの高さ、飛距離、及び回転速度の少なくとも1つを算出する請求項2又は請求項3に記載の情報処理プログラム。
【請求項5】
前記所定部位は、前記競技者が装着するスケートシューズのブレードの向きを特定可能な部位である請求項2~請求項4のいずれか1項に記載の情報処理プログラム。
【請求項6】
前記マイクは、前記スケートリンクの氷中に設けられる請求項1~請求項のいずれか1項に記載の情報処理プログラム。
【請求項7】
前記音信号に含まれる所定の周波数成分を除去した後の音信号に基づいて、前記離氷時刻及び前記着氷時刻を推定する請求項1~請求項のいずれか1項に記載の情報処理プログラム。
【請求項8】
スケートリンクに設けられたマイクで集音された音信号、及び前記スケートリンクで競技する競技者を撮影した映像を取得する取得部と、
前記音信号のレベルが予め定めた閾値以下となる区間に基づいて、前記競技者が行ったジャンプの離氷時刻及び着氷時刻を推定する推定部と、
前記音信号の時刻情報と前記映像の時刻情報とを同期させ、前記映像において、前記離氷時刻に対応するフレームとして、前記離氷時刻と同期する時刻情報のフレームの所定数前のフレームを特定し、前記着氷時刻に対応するフレームとして、前記着氷時刻と同期する時刻情報のフレームの所定数後のフレームを特定し、前記離氷時刻に対応するフレームから前記着氷時刻に対応するフレームまでをジャンプの区間として特定する特定部と、を含み、
少なくとも前記離氷時刻に対応するフレームについての前記所定数を、前記競技者と前記マイクとの距離の最大値及び音速とに基づいて算出される、前記映像に対する前記音信号の遅延時間をフレーム数に換算した数とする
報処理装置。
【請求項9】
スケートリンクに設けられたマイクで集音された音信号、及び前記スケートリンクで競技する競技者を撮影した映像を取得し、
前記音信号のレベルが予め定めた閾値以下となる区間に基づいて、前記競技者が行ったジャンプの離氷時刻及び着氷時刻を推定し、
前記音信号の時刻情報と前記映像の時刻情報とを同期させ、前記映像において、前記離氷時刻に対応するフレームとして、前記離氷時刻と同期する時刻情報のフレームの所定数前のフレームを特定し、前記着氷時刻に対応するフレームとして、前記着氷時刻と同期する時刻情報のフレームの所定数後のフレームを特定し、前記離氷時刻に対応するフレームから前記着氷時刻に対応するフレームまでをジャンプの区間として特定し、
少なくとも前記離氷時刻に対応するフレームについての前記所定数を、前記競技者と前記マイクとの距離の最大値及び音速とに基づいて算出される、前記映像に対する前記音信号の遅延時間をフレーム数に換算した数とする
ことを含む処理をコンピュータが実行するための情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、情報処理プログラム、情報処理装置、及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スポーツの競技中の映像から、所定のシーンを切り出すことが行われている。所定のシーンは、例えば、ゴルフ、野球、テニス等におけるボールに対するインパクトの瞬間を含むシーン、体操競技等における跳躍や着地を含むシーン等である。
【0003】
上記のようなシーン切り出しに関する技術として、例えば、被写体の連続するモーションの中から決定的瞬間を特定して画像として抽出する情報処理装置が提案されている。この装置は、ユーザ又はユーザに接触するオブジェクトに装着されたセンサからのセンサデータ、及びセンサデータに対応する時刻情報を受信する。また、この装置は、センサデータ及び時刻情報に基づいて、ユーザ又はオブジェクトに所定のモーションパターンが発生した時刻を特定する。そして、この装置は、特定した時刻に応じて、所定の時間間隔で撮影されたユーザ又はオブジェクトを含む一連の画像から1又は複数の画像を選択する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-82817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
切り出し対象のシーンとして、フィギュアスケートのジャンプの区間を想定する。フィギュアスケートにおいては、競技者、又は競技者が装着するウェアやシューズにセンサを取り付ける等の少しの変化が、ジャンプ等の精度に影響を与えてしまう場合がある。そのため、従来技術を適用して、フィギュアスケートにおけるジャンプの開始から終了までの区間を特定することは困難である。
【0006】
一つの側面として、開示の技術は、フィギュアスケートにおけるジャンプの開始から終了までの区間を特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの態様として、開示の技術は、スケートリンクを含む会場内に設けられたマイクで集音された音信号、及び前記スケートリンクで競技する競技者を撮影した映像を取得する。また、開示の技術は、前記音信号に基づく氷の音の消失と復帰に応じて、前記競技者が行ったジャンプの離氷時刻及び着氷時刻を推定する。そして、開示の技術は、前記音信号の時刻情報と前記映像の時刻情報とを同期させ、前記映像において、前記離氷時刻に対応するフレームから前記着氷時刻に対応するフレームまでをジャンプの区間として特定する。
【発明の効果】
【0008】
一つの側面として、フィギュアスケートにおけるジャンプの開始から終了までの区間を特定することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る情報作成システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態に係る情報処理装置の機能ブロックである。
図3】離氷時刻及び着氷時刻の推定を説明するための図である。
図4】ジャンプの区間の特定を説明するための図である。
図5】映像に対する音信号の遅延時間を説明するための図である。
図6】所定部位としてブレードの先端及び終端の位置を算出することを説明するための図である。
図7】基準線及び回転角度を説明するための図である。
図8】ジャンプの区間に含まれるフレームの各々から算出された回転角度θを示す図である。
図9図8の破線枠で示す部分の拡大図である。
図10】情報処理装置として機能するコンピュータの概略構成を示すブロック図である。
図11】本実施形態における情報処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、開示の技術に係る実施形態の一例を説明する。以下の実施形態では、情報処理装置により特定されるジャンプの区間の映像に関する情報を作成する情報作成システムについて説明する。
【0011】
まず、本実施形態に係る情報作成システムの概要について説明する。図1に示すように、情報作成システム100は、情報処理装置10と、マイク20と、複数のカメラ22とを含む。情報作成システム100は、マイク20から出力される音信号、及びカメラ22から出力される映像に対して情報処理を行い、ジャンプの着氷時のブレードの回転角度等の情報を算出して出力する。
【0012】
マイク20は、スケートリンク30の氷中に設置される。例えば、スケートリンク30を設営時において、氷を張る際にスケートリンク30内に埋め込むことで、マイク20を氷中に設置することができる。マイク20は、競技会場の音声を集音し、音信号を出力する。マイク20が氷中に設置されていることにより、マイク20で集音される音信号に含まれる音成分は、歓声や音楽等を示す音成分が抑制され、スケートリンク30表面(氷)とスケートシューズのブレードとの摩擦音を示す音成分が支配的になる。出力される音信号の各サンプリング点には時刻情報が対応付いている。
【0013】
複数のカメラ22の各々は、スケートリンク30上の競技者32及び競技者32が装着する装着物の所定部位の3次元位置をステレオカメラ方式により計測可能な位置にそれぞれ取り付けられる。各カメラ22は、所定のフレームレート(例えば、30fps、60fps等)で撮影した映像を出力する。出力される映像は、複数のフレームを含んでおり、各フレームには時刻情報が対応付いている。なお、ToF(Time-of-Flight)方式の1台のカメラを用いてもよい。
【0014】
情報処理装置10は、機能的には、図2に示すように、取得部12と、推定部14と、特定部16と、算出部18とを含む。
【0015】
取得部12は、マイク20から出力された音信号、及び複数のカメラ22の各々から出力された映像を取得する。取得部12は、取得した音信号を推定部14へ受け渡し、取得した映像を特定部16へ受け渡す。
【0016】
推定部14は、音信号に基づく氷の音の消失と復帰とに応じて、競技者が行ったジャンプの離氷時刻及び着氷時刻を推定する。例えば、推定部14は、音信号のレベルが予め定めた閾値以下となる区間に基づいて、競技者が行ったジャンプの離氷時刻及び着氷時刻を推定する。これは、ジャンプ開始の離氷時には、ブレードと氷との摩擦音が消失し、着氷時に摩擦音が復帰することを利用したものである。閾値としては、概ね音信号が消失したと見做せる値を定めておけばよい。具体的には、図3に示すように、推定部14は、音信号が閾値TH以下となった時刻を離氷時刻tAとして推定する。また、推定部14は、閾値TH以となっていた音信号が再び閾値THを超えた時刻を着氷時刻tBとして推定する。
【0017】
なお、推定部14は、音信号に含まれる所定の周波数成分を除去した後の音信号に基づいて、ジャンプの離氷時刻tA及び着氷時刻tBを推定してもよい。所定の周波数成分としては、例えば、歓声や音楽等、ブレードと氷との摩擦音以外の音に相当する周波数成分とすることができる。上述のように、マイク20が氷中に設置されている場合には、歓声や音楽等、ブレードと氷との摩擦音以外の音は抑制されている。ただし、ブレードと氷との摩擦音以外の音に相当する周波数成分を除去することにより、より高精度にジャンプの離氷時刻tA及び着氷時刻tBを推定することができる。なお、マイク20が氷中ではない会場内に設置されている場合、音信号には歓声や音楽等も多く含まれることになるため、所定の周波数成分を除去することが有効となる。推定部14は、推定したジャンプの離氷時刻tA及び着氷時刻tBを特定部16へ受け渡す。
【0018】
特定部16は、音信号の時刻情報と映像の時刻情報とを同期させ、取得部12から受け渡された映像において、ジャンプの離氷時刻tAに対応するフレームから着氷時刻tBに対応するフレームまでをジャンプの区間として特定する。
【0019】
具体的には、図4に示すように、特定部16は、離氷時刻tAと同期する時刻情報のフレーム(以下、「離氷フレームmA」という)の所定数前のフレームを、離氷時刻tAに対応する開始フレームmSとして特定する。また、特定部16は、着氷時刻tBと同期する時刻情報のフレーム(以下、「着氷フレームmB」という)の所定数後のフレームを、着氷時刻tBに対応する終了フレームmEとして特定する。離氷フレームmA~着氷クレームmBの前後のフレームを含めるのは、離氷から着氷までが確実に含まれるように、開始フレームmS及び終了フレームmEを特定するためである。図4に示すように、所定数は、例えば1とすることができる。
【0020】
また、特定部16は、所定数を、競技者32とマイク20との距離に応じた、映像に対する音信号の遅延時間をフレーム数に換算した数としてもよい。図5に示すように、競技者32とマイク20との距離がX[m]の場合、氷中の音速3230[m/s]を用いて、遅延時間は、X÷3230となる。ここでは、厳密な距離Xを用いる必要はなく、例えば、マイク20の位置からスケートリンク30の端までの距離の最大値をXとすることができる。例えば、X=30mとした場合、遅延時間は、30÷3230=9.28[ms]である。映像のフレームレートが30fps又は60fpsの場合、上記図4の例と同様に、所定数を1とし、120fpsの場合、所定数を2とすればよい。
【0021】
なお、特定部16は、開始フレームmSを特定する際には、遅延時間に基づく所定数を用い、終了フレームmEを特定する際には、所定数として1を用いるようにしてもよい。
【0022】
特定部16は、取得部12から受け渡された映像から、開始フレームmSから終了フレームmEまでの区間を、ジャンプの区間として抽出して、算出部18へ受け渡す。
【0023】
算出部18は、特定部16から受け渡されたジャンプの区間に含まれるフレームの各々を3次元解析し、競技者32及び競技者32が装着する装着物の所定部位の3次元位置(x,y,z)を算出する。所定部位は、図6に示すように、競技者32が装着するスケートシューズのブレードの先端34及び終端36を含む。また、所定部位は、競技者32の各関節、頭部、及び目、鼻、口等の顔の部位を含んでもよい。なお、各フレームから、これらの所定部位を認識する手法は、所定部位の形状を用いた認識方法や、人体骨格モデルを用いた認識方法等、既存の手法を用いることができる。
【0024】
また、情報作成システム100が3台以上のカメラ22を備えている場合、複数のカメラ22の各々で撮影された映像のうち、3次元位置の算出に適した角度で競技者32を撮影した2つの映像を用いて、所定部位の3次元位置を算出すればよい。
【0025】
算出部18は、ジャンプの区間に含まれるフレームの各々から算出したブレードの先端34及び終端36の位置を用いて、カメラ22の撮影方向を基準としたブレードの絶対確度を算出する。例えば、算出部18は、カメラ22の撮影方向、又は撮影方向に垂直な線と、ブレードの先端34と終端36とを結ぶ線とのなす角度を、ブレードの絶対角度として算出することができる。なお、複数のカメラ22のうち、いずれかのカメラ22をメインのカメラとして定めておき、メインのカメラ22の撮影方向を基準に、ブレードの絶対確度を算出すればよい。また、算出部18は、ブレードの絶対角度を、ジャンプの回転不足を判定するための基準線に対する角度(以下、「回転角度θ」という)に変換する。
【0026】
具体的には、算出部18は、離氷時刻tA及び着氷時刻tBの各々におけるブレードの先端34の位置に基づいて基準線を特定する。より具体的には、図7に示すように、算出部18は、離氷フレームmAから算出されたブレードの先端34の位置を離氷点Aとして特定する。また、算出部18は、着氷フレームmBから算出されたブレードの先端34の位置を着氷点Bとして特定する。そして、算出部18は、離氷点A及び着氷点Bを通る直線を基準線とし、カメラ22の撮影方向に垂直な線と基準線との角度差を、ブレードの絶対角度から差し引いて、ブレードの回転角度θを算出する。図8に、ジャンプの区間に含まれるフレームの各々から算出された回転角度θを示す。
【0027】
算出部18は、着氷時における、映像に対する音信号の遅延時間Δtを算出する。上述したように、遅延時間は、距離X[m]÷3230[m/s](氷中の音速)である。ここでは、距離Xを、マイク20の位置と、着氷点Bとの距離とする。
【0028】
算出部18は、終了フレームmEから算出した回転角度θ(mE)と、終了フレームmEの1つ前のフレームmE-1から算出した回転角度θ(mE-1)とに基づいて、着氷時のブレードの回転角度を算出する。
【0029】
図9を参照して、具体的に説明する。図9は、図8の破線枠で示す部分の拡大図である。音信号に基づいて推定した着氷時刻tBに、算出した遅延時間Δtを考慮した補正後の着氷時刻tB-Δtは、フレームmE-1~フレームmEまでの1フレーム分の時間内に含まれる。なお、ここでは、遅延時間Δtは、1フレーム分の時間と比較して微小な時間である。算出部18は、ジャンプ中の回転速度はほぼ一定であると仮定し、フレームmE-1~フレームmE間の回転角度を、回転角度θ(mE-1)及び回転角度θ(mE)を用いて線形補完する。そして、算出部18は、補正後の着氷時刻tB-Δtに対応する回転角度を、着氷時の回転角度θ(tB-Δt)として算出する。
【0030】
また、算出部18は、ジャンプの区間に対応する所定部位の3次元位置に基づいて、他の情報を算出することもできる。例えば、算出部18は、所定部位として腰の位置を算出し、ジャンプの区間に含まれる各フレームから算出された腰の位置の最小値と最大値との差をジャンプの高さとして算出することができる。また、算出部18は、離氷点Aから着氷点Bまでの距離をジャンプの飛距離として算出することができる。また、算出部18は、離氷時刻tAから着氷時刻tBまでの時間と、ジャンプの区間における回転角度の変化とから、回転速度を算出することができる。また、算出部18は、開始フレームmSから所定フレームまでの時間と、その間における所定部位の位置の変化量とから、踏切速度を算出することができる。
【0031】
算出部18は、着氷時の回転角度θ(tB-Δt)、及びその他算出した情報を出力する。着氷時の回転角度θ(tB-Δt)は、ジャンプの回転不足等の判定に用いることができる。また、出力された情報を、テレビ放送等の画面に表示するスタッツとして用いることもできる。
【0032】
情報処理装置10は、例えば図10に示すコンピュータ40で実現することができる。コンピュータ40は、CPU(Central Processing Unit)41と、一時記憶領域としてのメモリ42と、不揮発性の記憶部43とを備える。また、コンピュータ40は、入力部、表示部等の入出力装置44と、記憶媒体49に対するデータの読み込み及び書き込みを制御するR/W(Read/Write)部45とを備える。また、コンピュータ40は、インターネット等のネットワークに接続される通信I/F(Interface)46を備える。CPU41、メモリ42、記憶部43、入出力装置44、R/W部45、及び通信I/F46は、バス47を介して互いに接続される。
【0033】
記憶部43は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等によって実現できる。記憶媒体としての記憶部43には、コンピュータ40を、情報処理装置10として機能させるための情報処理プログラム50が記憶される。情報処理プログラム50は、取得プロセス52と、推定プロセス54と、特定プロセス56と、算出プロセス58とを有する。
【0034】
CPU41は、情報処理プログラム50を記憶部43から読み出してメモリ42に展開し、情報処理プログラム50が有するプロセスを順次実行する。CPU41は、取得プロセス52を実行することで、図2に示す取得部12として動作する。また、CPU41は、推定プロセス54を実行することで、図2に示す推定部14として動作する。また、CPU41は、特定プロセス56を実行することで、図2に示す特定部16として動作する。また、CPU41は、算出プロセス58を実行することで、図2に示す算出部18として動作する。これにより、情報処理プログラム50を実行したコンピュータ40が、情報処理装置10として機能することになる。なお、プログラムを実行するCPU41はハードウェアである。
【0035】
なお、情報処理プログラム50により実現される機能は、例えば半導体集積回路、より詳しくはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等で実現することも可能である。
【0036】
次に、本実施形態に係る情報作成システム100の作用について説明する。情報処理装置10に、マイク20から出力された音信号、及び複数のカメラ22の各々で撮影された映像が入力されると、情報処理装置10において、図11に示す情報処理ルーチンが実行される。なお、情報処理ルーチンは、開示の技術の情報処理方法の一例である。
【0037】
ステップS12で、取得部12が、情報処理装置10に入力された音信号及び映像を取得する。取得部12は、取得した音信号を推定部14へ受け渡し、取得した映像を特定部16へ受け渡す。
【0038】
次に、ステップS14で、推定部14が、音信号が閾値TH以下となった時刻を離氷時刻tAとして推定し、閾値TH以となっていた音信号が再び閾値THを超えた時刻を着氷時刻tBとして推定する。推定部14は、推定したジャンプの離氷時刻tA及び着氷時刻tBを特定部16へ受け渡す。
【0039】
次に、ステップS16で、特定部16が、離氷時刻tAと同期する時刻情報の離氷フレームmAの所定数(例えば、1フレーム)前のフレームを、離氷時刻tAに対応する開始フレームmSとして特定する。また、特定部16が、着氷時刻tBと同期する時刻情報の着氷フレームmBの所定数(例えば、1フレーム)後のフレームを、着氷時刻tBに対応する終了フレームmEとして特定する。特定部16は、取得部12から受け渡された映像から、開始フレームmSから終了フレームmEまでの区間を、ジャンプの区間として抽出して、算出部18へ受け渡す。
【0040】
次に、ステップS18で、算出部18が、特定部16から受け渡されたジャンプの区間に含まれるフレームの各々を3次元解析し、ブレードの先端34及び終端36を含む所定部位の3次元位置(x,y,z)を算出する。そして、算出部18が、カメラ22の撮影方向に垂直な線と、ブレードの先端34と終端36とを結ぶ線とのなす角度を、ブレードの絶対角度として算出する。
【0041】
次に、ステップS20で、算出部18が、離氷フレームmAから算出されたブレードの先端34の位置を離氷点Aとして特定し、着氷フレームmBから算出されたブレードの先端34の位置を着氷点Bとして特定する。そして、算出部18は、離氷点A及び着氷点Bを通る直線を基準線とし、カメラ22の撮影方向に垂直な線と基準線との角度差を、ブレードの絶対角度から差し引いて、ブレードの回転角度θを算出する。
【0042】
次に、ステップS22で、算出部18が、マイク20の位置と、着氷点Bとの距離Xを算出し、着氷時における、映像に対する音信号の遅延時間Δtを、Δt=距離X[m]÷3230[m/s](氷中の音速)として算出する。
【0043】
次に、ステップS24で、算出部18が、フレームmE-1~フレームmE間の回転角度を、回転角度θ(mE-1)及びθ(mE)を用いて線形補完し、補正後の着氷時刻tB-Δtに対応する回転角度を、着氷時の回転角度θ(tB-Δt)として算出する。また、算出部18は、ジャンプの区間に対応する所定部位の3次元位置に基づいて、他の情報を算出してもよい。算出部18は、算出した着氷時の回転角度θ(tB-Δt)、及び算出した他の情報を出力し、情報処理ルーチンは終了する。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係る情報作成システムによれば、情報処理装置が、スケートリンクに設けられたマイクで集音された音信号、及びスケートリンクで競技する競技者を撮影した映像を取得する。そして、情報処理装置は、音信号のレベルが予め定めた閾値以下となる区間に基づいて、競技者が行ったジャンプの離氷時刻及び着氷時刻を推定する。さらに、情報処理装置は、音信号の時刻情報と映像の時刻情報とを同期させ、映像において、離氷時刻に対応するフレームから着氷時刻に対応するフレームまでをジャンプの区間として特定する。これにより、競技者にセンサ等を取り付けることなく、フィギュアスケートにおけるジャンプの開始から終了までの区間を特定することができる。
【0045】
また、映像の画像解析のみでジャンプの開始及び終了を特定する場合に比べ、音信号を用いて、より精度の高い離着氷の時刻を推定することができ、推定した時刻により、精度良くジャンプの区間を特定することができる。
【0046】
また、ジャンプの回転不足の判定においては、着氷時のブレードの角度が用いられる。これを映像のみで判定しようとすると、フレームレート30fpsの場合、1フレームの間に60°程度回転してしまうため、正確な判定を行うことができない。本実施形態では、音信号を用いて推定した着氷の時刻を用いて、1フレーム分の時間単位の時刻より細かい時刻における回転角度を算出することができるため、回転不足の判定を精度良く支援することができる。
【0047】
なお、上記実施形態では、情報処理プログラムが記憶部に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。開示の技術に係るプログラムは、CD-ROM、DVD-ROM、USBメモリ等の記憶媒体に記憶された形態で提供することも可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 情報処理装置
12 取得部
14 推定部
16 特定部
18 算出部
20 マイク
22 カメラ
30 スケートリンク
32 競技者
34 ブレードの先端
36 ブレードの終端
40 コンピュータ
41 CPU
42 メモリ
43 記憶部
49 記憶媒体
50 情報処理プログラム
100 情報作成システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11