(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 9/12 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
G01L9/12
(21)【出願番号】P 2022510449
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2021011508
(87)【国際公開番号】W WO2021193469
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2020057334
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】辻 大喜
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0241944(US,A1)
【文献】特表2014-511775(JP,A)
【文献】国際公開第2015/076158(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0140725(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00-23/32
G01L27/00-27/02
H01L29/84
B81B 1/00- 7/04
B81C 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子基板と、
外側表面と、前記外側表面に対して反対側の面である内側表面とを備え、ダイアフラム部を含むメンブレンと、
前記素子基板に設けられ、前記メンブレンの前記内側表面における、前記ダイアフラム部外側の部分を支持する側壁部材と、
前記側壁部材に囲まれた状態で前記素子基板上に設けられ、前記メンブレンの内側表面に対して間隔をあけて対向し、前記ダイアフラム部との間に静電容量を形成する固定電極と、を含む検出素子を有し、
前記メンブレンの外側表面における、前記メンブレンの厚さ方向視で、前記ダイアフラム部の中心と側壁部材との間に、第1の凹部が設けられ
、
前記素子基板の表面における前記側壁部材と接触している部分に、第1の溝が設けられている、センサ。
【請求項2】
前記第1の凹部が、前記厚さ方向視で前記側壁部材に沿って、前記ダイアフラム部に設けられている、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記第1の凹部が、前記厚さ方向視で前記側壁部材に沿って連続的に延在する直線状である、請求項2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記第1の凹部が、前記側壁部材によって支持されている前記メンブレンの部分内まで延在する、請求項3に記載のセンサ。
【請求項5】
前記第1の凹部は複数であり、前記厚さ方向視で前記メンブレンの中心を囲む、請求項1から4のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項6】
前記第1の凹部は複数であり、前記厚さ方向視で前記メンブレンの中心を対称の中心とする点対称に設けられている、請求項1から5のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項7】
2つの前記第1の凹部が、前記厚さ方向視で前記メンブレンの中心を挟んで互いに平行である、請求項5または6に記載のセンサ。
【請求項8】
前記メンブレンの外側表面であって、前記厚さ方向視で前記メンブレンにおける前記側壁部材と重なっている部分に、第2の凹部が設けられており、
前記第2の凹部は、前記厚さ方向視で前記第1の溝の少なくとも一部と重なっている、請求項
1から7のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項9】
前記側壁部材に第2の溝が設けられており、
前記第2の溝は、前記厚さ方向視で前記第1の溝の少なくとも一部と重なっているとともに、第2の凹部の少なくとも一部と重なっている、請求項
8に記載のセンサ。
【請求項10】
前記検出素子が搭載されるパッケージ基板と、
前記パッケージ基板上に設けられ、前記検出素子を覆う樹脂パッケージと、を有し、
前記樹脂パッケージが露出穴を備え、前記検出素子の一部が前記露出穴において外部に露出している、請求項1から
9のいずれか一項に記載のセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力などの力を検出するセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、素子基板と、素子基板上に設けられた固定電極と、固定電極に対して間隔をあけて対向配置されたダイアフラム部を含むメンブレンと、を備える検出素子を有する、静電容量型圧力センサが開示されている。メンブレンの外側表面の中央部分には凹部が設けられている。これにより、素子基板が曲げ変形したときに、固定電極とダイアフラム部の内側表面とが実質的に平行になるように、メンブレンが曲げ変形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された静電容量型圧力センサの場合、メンブレンの平面方向の圧縮応力または引っ張り応力が検出素子に加わると、すなわちメンブレンが平面応力状態になると、ダイアフラム部を含むメンブレンの変形剛性が減少または増加し、その結果としてセンサの検出感度が変化する。このように、平面応力状態になって変形剛性が増減することは、ストレス・スティフニング効果と呼ばれている。
【0005】
そこで、本発明は、圧力などの力を検出するセンサにおいて、メンブレンが平面応力状態になって生じる検出感度の変化を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的課題を解決するために、本発明の一態様によれば、
素子基板と、
外側表面と、前記外側表面に対して反対側の面である内側表面とを備え、ダイアフラム部を含むメンブレンと、
前記素子基板に設けられ、前記メンブレンの前記内側表面における、前記ダイアフラム部外側の部分を支持する側壁部材と、
前記側壁部材に囲まれた状態で前記素子基板上に設けられ、前記メンブレンの内側表面に対して間隔をあけて対向し、前記ダイアフラム部との間に静電容量を形成する固定電極と、を含む検出素子を有し、
前記メンブレンの外側表面における、前記メンブレンの厚さ方向視で、前記ダイアフラム部の中心と側壁部材との間に、第1の凹部が設けられている、センサが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、圧力などの力を検出するセンサにおいて、メンブレンが平面応力状態になって生じる検出感度の変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本発明の実施の形態1に係るセンサの
図1のA-A線に沿った断面図
【
図3】本発明の実施の形態1に係るセンサの
図1のB-B線に沿った断面図
【
図5】本発明の実施の形態1に係るセンサにおける検出素子の分解斜視図
【
図6A】比較例に係るセンサにおける検出素子の自然状態の断面図
【
図6B】比較例に係るセンサにおける検出素子の引っ張り応力が加わった状態の断面図
【
図6C】比較例に係るセンサにおける検出素子の圧縮応力が加わった状態の断面図
【
図7A】実施例に係るセンサにおける検出素子の自然状態の断面図
【
図7B】実施例に係るセンサにおける検出素子の引っ張り応力が加わった状態の断面図
【
図7C】実施例に係るセンサにおける検出素子の圧縮応力が加わった状態の断面図
【
図8】本発明の実施の形態2に係るセンサにおける検出素子の上面図
【
図9】本発明の実施の形態2に係るセンサにおける検出素子の
図8のC-C線に沿った断面図
【
図10】本発明の実施の形態3に係るセンサにおける検出素子の上面図
【
図11】本発明の実施の形態4に係るセンサにおける検出素子の上面図
【
図12】本発明の実施の形態5に係るセンサにおける検出素子の上面図
【
図13】本発明の実施の形態6に係るセンサにおける検出素子の上面図
【
図14】本発明の実施の形態7に係るセンサにおける検出素子の上面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様のセンサは、素子基板と、外側表面と、前記外側表面に対して反対側の面である内側表面とを備え、ダイアフラム部を含むメンブレンと、前記素子基板に設けられ、前記メンブレンの前記内側表面における、前記ダイアフラム部外側の部分を支持する側壁部材と、前記側壁部材に囲まれた状態で前記素子基板上に設けられ、前記メンブレンの内側表面に対して間隔をあけて対向し、前記ダイアフラム部との間に静電容量を形成する固定電極と、を含む検出素子を有し、前記メンブレンの外側表面における、前記メンブレンの厚さ方向視で、前記ダイアフラム部の中心と側壁部材との間に、第1の凹部が設けられている。
【0010】
このような態様によれば、圧力などの力を検出するセンサにおいて、メンブレンが平面応力状態になって生じる検出感度の変化を抑制することができる。
【0011】
例えば、前記第1の凹部が、前記厚さ方向視で前記側壁部材に沿って、前記ダイアフラム部に設けられてもよい。
【0012】
例えば、前記第1の凹部が、前記厚さ方向視で前記側壁部材に沿って連続的に延在する直線状であってもよい。
【0013】
例えば、前記第1の凹部が、前記側壁部材によって支持されている前記メンブレンの部分内まで延在してもよい。
【0014】
例えば、前記第1の凹部は複数であり、前記厚さ方向視で前記メンブレンの中心を囲んでもよい。
【0015】
例えば、前記第1の凹部は複数であり、前記厚さ方向視で前記メンブレンの中心を対称の中心とする点対称に設けられてもよい。
【0016】
例えば、2つの前記第1の凹部が、前記厚さ方向視で前記メンブレンの中心を挟んで互いに平行であってもよい。
【0017】
例えば、前記素子基板の表面における前記側壁部材と接触している部分に、第1の溝が設けられてもよい。
【0018】
例えば、前記メンブレンの外側表面であって、前記厚さ方向視で前記メンブレンにおける前記側壁部材と重なっている部分に、第2の凹部が設けられてもよく、この場合、前記第2の凹部は、前記厚さ方向視で前記第1の溝の少なくとも一部と重なっている。
【0019】
例えば、前記側壁部材に第2の溝が設けられてもよく、この場合、前記第2の溝は、前記厚さ方向視で前記第1の溝の少なくとも一部と重なっているとともに、第2の凹部の少なくとも一部と重なっている。
【0020】
例えば、前記検出素子が搭載されるパッケージ基板と、前記パッケージ基板上に設けられ、前記検出素子を覆う樹脂パッケージと、を有し、前記樹脂パッケージが露出穴を備え、前記検出素子の一部が前記露出穴において外部に露出してもよい。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るセンサの斜視図である。
図2は、本発明の実施の形態1に係るセンサの
図1のA-A線に沿った断面図である。
図3は、本発明の実施の形態1に係るセンサの
図1のB-B線に沿った断面図である。
図4は、本発明の実施の形態1に係るセンサの上面図である。なお、図に示すX-Y-Z直交座標系は本発明の理解を容易にするためのものであって、発明を限定するものではない。
【0023】
図1~
図4に示すように、センサ10は、検出素子12と、パッケージ基板14と、樹脂パッケージ16とを有する。センサ10は静電容量型圧力センサであり、検出素子12によって圧力を検出することができる。検出素子12は、パッケージ基板14に搭載されている。樹脂パッケージ16は、パッケージ基板14上に設けられており、露出穴16aを備えている。検出素子12の一部が露出穴16aにおいて外部に露出した状態で、検出素子12は樹脂パッケージ16によって覆われている。
【0024】
図5は、本発明の実施の形態1に係るセンサにおける検出素子の分解斜視図である。
【0025】
図5に示すように、検出素子12は、素子基板20と、メンブレン22と、側壁部材24と、固定電極26とを有する。
【0026】
素子基板20は、例えばシリコン基板であって、パッケージ基板14と電気的に接続される端子(図示せず)を備える。
【0027】
メンブレン22は、可撓性を有し、例えば厚さが3.9μmの薄板状の部材である。メンブレン22は、導電性を有する。また、メンブレン22は、外側表面22aと、内側表面22bとを備える。外側表面22aは、検出対象の圧力が作用する面である。内側表面22bは、外側表面22aに対して反対側の面である。メンブレン22は、ダイアフラム部22cを含む。ダイアフラム部22cは、その中央部分に圧力を受けてたわみ変形する。
【0028】
側壁部材24は、素子基板20上に設けられた、枠状の部材である。壁部材24は、メンブレン22の厚さ方向視で矩形状である。なお、メンブレン22の厚さ方向は、図に示すX-Y-Z直交座標系のZ軸方向である。このため、メンブレン22の厚さ方向視とは、Z軸方向視である。側壁部材24は、絶縁性を有する。また、側壁部材24は、メンブレン22を支持する。具体的には、側壁部材24は、メンブレン22の内側表面22bにおけるダイアフラム部22c外側の部分を支持する。これにより、ダイアフラム部22cは、メンブレン22の厚さ方向にたわみ変形することができる。言い換えると、メンブレン22における側壁部材24によって支持されていない部分が、ダイアフラム部22cである。
【0029】
固定電極26は、素子基板20上に設けられ、側壁部材24によって囲まれている。固定電極26は、例えば、導電性ポリシリコンから作製されている。また、固定電極26は、メンブレン22の内側表面22bに対して間隔をあけて対向している。固定電極26とダイアフラム部22cとの間に、静電容量が形成されている。
【0030】
図1~
図3に示すように、メンブレン22の外側表面22aの一部、すなわちダイアフラム部22cは、樹脂パッケージ16の露出穴16aにおいて外部に露出している。これにより、ダイアフラム部22cに圧力が作用する。
【0031】
外部に露出しているメンブレン22の外側表面22aの一部に圧力が作用すると、その圧力の大きさに応じてダイアフラム部22cが、固定電極26側に凸にたわみ変形する。それにより、ダイアフラム部22cと固定電極26との間の距離が変化し、ダイアフラム部22cと固定電極26との間の静電容量の絶対値が変化する。この静電容量の絶対値の変化に基づいて、メンブレン22の外側表面22aに作用する圧力の大きさを検出することができる。
【0032】
また、本実施の形態1においては、
図5に示すように、複数の凹部22dがメンブレン22の外側表面22aに設けられている。凹部22dは、第1の凹部である。具体的には、
図4に示すように、メンブレン22の厚さ方向視で、ダイアフラム部22cの中心Cと側壁部材24との間に、凹部22dが設けられている。本実施の形態1では、凹部22dは、例えば幅が12μmであって、深さが0.8μmの直線状の溝である。凹部22dの深さは、メンブレン22の剛性の低下を抑制するために、メンブレン22の厚さの半分以下、好ましくは、25%以下がよい。また、凹部22dは、メンブレン22の厚さ方向視で側壁部材24に沿って連続的に延在するように、ダイアフラム部22cに設けられている。さらに、凹部22dは、メンブレン22の厚さ方向視で、ダイアフラム部22cの長手方向に延びている。ダイアフラム部22cの長手方向は、図に示すX-Y-Z直交座標系のX軸方向である。本実施の形態1では、凹部22dは、メンブレン22の中心Cを囲み、また、中心Cを対称の中心とする点対称に設けられている。すなわち、本実施の形態1では、中心Cを挟むように、またその中心Cから等しい距離で互いに平行に、2つの凹部22dが設けられている。
【0033】
なお、本実施の形態1では、凹部22dは、ダイアフラム部22cの外部、すなわち側壁部材24によって支持されているメンブレン22の部分内まで延在している。これにより、メンブレン22が側壁部材24に対して所望の位置からずれて設けられても、凹部22dは、メンブレン22の厚さ方向視で、メンブレン22における側壁部材24によって囲われた領域内、すなわちダイアフラム部22c内に位置する。
【0034】
凹部22dは、メンブレン22が平面応力状態になって生じる検出感度の変化を抑制するために設けられている。具体的には、
図1~
図3に示すように、樹脂パッケージ16自体の熱膨張または熱収縮、樹脂パッケージ16に作用する外力などにより、メンブレン22の平面方向の圧縮応力または引っ張り応力が検出素子12に加わる。なお、メンブレン22の平面方向は、図に示すX-Y-Z直交座標系のX軸方向およびY軸方向である。それにより、メンブレン22が平面応力状態になる。メンブレン22の平面応力状態について、図を参照しながら説明する。
【0035】
図6Aは、比較例に係るセンサにおける検出素子の自然状態の断面図を示す。
図6Bは、比較例に係るセンサにおける検出素子の引っ張り応力が加わった状態の断面図を示す。
図6Cは、比較例に係るセンサにおける検出素子の圧縮応力が加わった状態の断面図を示す。
図7Aは、実施例に係るセンサにおける検出素子の自然状態の断面図を示す。
図7Bは、実施例に係るセンサにおける検出素子の引っ張り応力が加わった状態の断面図を示す。
図7Cは、実施例に係るセンサにおける検出素子の圧縮応力が加わった状態の断面図を示す。ここで、自然状態とは、メンブレンの平面方向の圧縮応力または引っ張り応力が検出素子に加わっていない状態、すなわち、メンブレンが平面応力状態ではない状態である。
【0036】
図6A~
図6Cに示すように、比較例に係るセンサにおける検出素子112では、メンブレン122の外側表面122aに凹部が設けられていない。
【0037】
図6Aでは、自然状態において、圧力Pがメンブレン122の外側表面122aに作用していないときのダイアフラム部122cを一点鎖線で示し、圧力Pがメンブレン122の外側表面122aに作用したときのダイアフラム部122cを実線で示している。
図6Aに示すように、自然状態において、圧力Pがメンブレン122の外側表面122aに作用していないときのダイアフラム部122cは、実質的に平坦である。また、
図6Aに示すように、自然状態において、圧力Pがメンブレン122の外側表面122aに作用したときのダイアフラム部122cは、固定電極126側に凸にたわみ変形している。その結果、ダイアフラム部122cと固定電極126との間の距離Δdnが圧力Pに対応する長さになる。
【0038】
図6Bでは、メンブレン122の平面方向の引っ張り応力Ftが検出素子112に加わっている状態、すなわち、引っ張り応力Ftによってメンブレン122が平面応力状態である状態において、圧力Pがメンブレン122の外側表面122aに作用していないときのダイアフラム部122cを二点鎖線で示し、圧力Pがメンブレン122の外側表面122aに作用したときのダイアフラム部122cを実線で示している。
図6Bに示すように、引っ張り応力Ftによってメンブレン122が平面応力状態である状態において、圧力Pがメンブレン122の外側表面122aに作用していないときのダイアフラム部122cは、実質的に平坦である。
【0039】
図6Bに示すように、引っ張り応力Ftによってメンブレン122が平面応力状態である状態において、圧力Pがメンブレン122の外側表面122aに作用したときのダイアフラム部122cは、固定電極126側に凸にたわみ変形している。しかし、ダイアフラム部122cの変形量は、
図6Aに示す自然状態における場合に比べて小さい。その結果、同一の圧力Pがメンブレン122に作用しているにもかかわらず、ダイアフラム部122cと固定電極126との間の距離Δdtは、
図6Aに示す自然状態における距離Δdnに比べて大きくなる。
【0040】
すなわち、メンブレン122の平面方向の引っ張り応力Ftが検出素子112に加わっている場合、メンブレン122は、その厚さ方向の変形剛性が自然状態に比べて増加し、厚さ方向に変形しにくい状態になっている。
【0041】
図6Cでは、メンブレン122の平面方向の圧縮応力Fcが検出素子112に加わっている状態、すなわち、圧縮応力Fcによってメンブレン122が平面応力状態である状態において、圧力Pがメンブレン122の外側表面122aに作用していないときのダイアフラム部122cを二点鎖線で示し、圧力Pがメンブレン122の外側表面122aに作用したときのダイアフラム部122cを実線で示している。
図6Cに示すように、圧縮応力Fcによってメンブレン122が平面応力状態である状態において、圧力Pがメンブレン122の外側表面122aに作用していないときのダイアフラム部122cは、実質的に平坦である。
【0042】
図6Cに示すように、圧縮応力Fcによってメンブレン122が平面応力状態である状態において、圧力Pがメンブレン122の外側表面122aに作用したときのダイアフラム部122cは、固定電極126側に凸にたわみ変形している。しかし、ダイアフラム部122cの変形量は、
図6Aに示す自然状態における場合に比べて大きい。その結果、同一の圧力Pがメンブレン122に作用しているにもかかわらず、ダイアフラム部122cと固定電極126との間の距離Δdcは、
図6Aに示す自然状態における距離Δdnに比べて小さくなる。
【0043】
すなわち、メンブレン122の平面方向の圧縮応力Fcが検出素子112に加わっている場合、メンブレン122は、その厚さ方向の変形剛性が自然状態に比べて減少し、厚さ方向に変形しやすい状態になっている。
【0044】
このように、メンブレン122の平面方向に引っ張り応力または圧縮応力がメンブレン122に加わることにより、すなわちメンブレン122が平面応力状態になることにより、そのメンブレン122の厚さ方向の変形剛性が増減する現象は、ストレス・スティフニング効果と呼ばれている。
【0045】
図6A~
図6Cに示すように、比較例に係るセンサにおける検出素子112では、同一の圧力Pがメンブレン122に作用しているにもかかわらず、自然状態であるか、メンブレン122が平面応力状態であるかの違いにより、ダイアフラム部122cと固定電極126との間の距離が異なる。また、メンブレン122が平面応力状態であっても、引っ張り応力か圧縮応力かの違い、すなわち、メンブレン122に発生する応力の向きの違いにより、ダイアフラム部122cと固定電極126との間の距離が異なる。このように、比較例に係るセンサにおける検出素子112では、メンブレン122が平面応力状態になると、自然状態に比べて検出感度が変化する。
【0046】
本実施の形態1では、複数の凹部22dがダイアフラム部22cに設けられているため、メンブレン22が平面応力状態になっても検出感度の変化が抑制される。
図7A~
図7Cを用いて説明する。
【0047】
図7Aでは、自然状態において、圧力Pがメンブレン22の外側表面22aに作用していないときのダイアフラム部22cを一点鎖線で示し、圧力Pがメンブレン22の外側表面22aに作用したときのダイアフラム部22cを実線で示している。
図7Aに示すように、自然状態において、圧力Pがメンブレン22の外側表面22aに作用していないときのダイアフラム部22cは、実質的に平坦である。また、
図7Aに示すように、自然状態において、圧力Pがメンブレン22の外側表面22aに作用したときのダイアフラム部22cは、固定電極26側に凸にたわみ変形している。その結果、ダイアフラム部22cと固定電極26との間の距離Δdnが圧力Pに対応する長さになる。
【0048】
図7Bでは、メンブレン22の平面方向の引っ張り応力Ftが検出素子112に加わっている状態、すなわち、引っ張り応力Ftによってメンブレン22が平面応力状態である状態において、圧力Pがメンブレン122の外側表面122aに作用していないときのダイアフラム部122cを二点鎖線で示し、圧力Pがメンブレン122の外側表面122aに作用したときのダイアフラム部122cを実線で示している。
図7Bに示すように、引っ張り応力Ftによってメンブレン22が平面応力状態である状態において、圧力Pがメンブレン22の外側表面22aに作用していないときのダイアフラム部22cは、ごくわずかに、固定電極26側に凸にたわみ変形している。このたわみ変形は、メンブレン22の外側表面22aにおける引っ張り応力の分布と、内側表面22bにおける引っ張り応力の分布とが異なることによる。
【0049】
具体的には、複数の凹部22dに挟まれた外側表面22aの領域に発生する引っ張り応力は、その領域に対して反対側の内側表面22bの領域に発生する引っ張り応力に比べて小さい。そのために、内側表面22bの領域の方が、外側表面22aの領域に比べて大きく伸びる方向にひずむ。その結果、ダイアフラム部22cは、内側表面22bが凸状になるように、わずかにたわみ変形する。
【0050】
このように、ダイアフラム部22cが、内側表面22bが凸状になるように、わずかにたわみ変形することにより、ダイアフラム部22cと固定電極26との間の静電容量の絶対値が増加する。また、ダイアフラム部22cが固定電極26側に凸にたわみ変形しやすくなる。
【0051】
図7Bに示すように引っ張り応力Ftによってメンブレン22が平面応力状態である状態において、圧力Pがメンブレン22の外側表面22aに作用したときのダイアフラム部22cは、
図7Aに示す自然状態における場合と同様に、固定電極26側に凸にたわみ変形している。ダイアフラム部22cの変形量は、
図7Aに示す自然状態における場合とほぼ同じである。このように、凹部22dの断面形状、幅、深さなどが適切であれば、同一の圧力Pがメンブレン22に作用している場合における、ダイアフラム部22cと固定電極26との間の距離Δdtは、
図7Aに示す自然状態における距離Δdnと実質的に等しくなる。
【0052】
図7Cでは、メンブレン22の平面方向の圧縮応力Fcが検出素子112に加わっている状態、すなわち、圧縮応力Fcによってメンブレン22が平面応力状態である状態において、圧力Pがメンブレン22の外側表面22aに作用していないときのダイアフラム部22cを二点鎖線で示し、圧力Pがメンブレン22の外側表面22aに作用したときのダイアフラム部22cを実線で示している。
図6Cに示すように、圧縮応力Fcによってメンブレン22が平面応力状態である状態において、圧力Pがメンブレン22の外側表面22aに作用していないときのダイアフラム部22cは、ごくわずかに、固定電極26側とは反対側、すなわち、外部側に凸にたわみ変形している。このたわみ変形は、メンブレン22の外側表面22aにおける圧縮応力の分布と、内側表面22bにおける圧縮応力の分布とが異なることによる。
【0053】
具体的には、複数の凹部22dに挟まれた外側表面22aの領域に発生する圧縮応力は、その領域に対して反対側の内側表面22bの領域に発生する圧縮応力に比べて小さい。そのために、内側表面22bの領域の方が、外側表面22aの領域に比べて大きく縮む方向にひずむ。その結果、ダイアフラム部22cは、内側表面22bが凹状になるように、わずかにたわみ変形する。
【0054】
このように、ダイアフラム部22cが、内側表面22bが凹状になるように、わずかにたわみ変形することにより、ダイアフラム部22cと固定電極26との間の静電容量の絶対値が減少する。また、ダイアフラム部22cが固定電極26側に凸にたわみ変形しにくくなる。
【0055】
図7Cに示すように圧縮応力Fcによってメンブレン22が平面応力状態である状態において、圧力Pがメンブレン22の外側表面22aに作用したときのダイアフラム部22cは、
図7Aに示す自然状態における場合と同様に、固定電極26側に凸にたわみ変形している。ダイアフラム部22cの変形量は、
図7Aに示す自然状態における場合とほぼ同じである。このように、凹部22dの断面形状、幅、深さなどが適切であれば、同一の圧力Pがメンブレン22に作用している場合における、ダイアフラム部22cと固定電極26との間の距離Δdcは、
図7Aに示す自然状態における距離Δdnと実質的に等しくなる。
【0056】
図7A~
図7Cに示すように、凹部22dがメンブレン22の外側表面22aに設けられていることにより、自然状態であるか、メンブレン22が平面応力状態であるかの違いにかかわらず、また、メンブレン22が平面応力状態であっても、引っ張り応力か圧縮応力かの違い、すなわち、メンブレン22に発生する応力の向きの違いに関係なく、同一の圧力Pがメンブレン22に作用すれば、ダイアフラム部22cと固定電極26との間の距離が実質的に等しくなる。すなわち、本実施の形態1に係るセンサ10における検出素子12では、メンブレン22が平面応力状態になっても、自然状態に比べて検出感度が変化することがほとんどなく、検出感度の変化を抑制することができる。
【0057】
なお、副次的な効果として、凹部22dがメンブレン22の外側表面22aに設けられていることにより、ダイアフラム部22cが局所的に薄くなり、ダイアフラム部22cが変形しやすい。その結果、検出感度が高くなり、センサ10から出力される信号に含まれるノイズが低減する。
【0058】
以上のような本実施の形態1によれば、圧力を検出するセンサ10において、メンブレン22が平面応力状態になって生じる検出感度の変化を抑制することができる。
【0059】
(実施の形態2)
本実施の形態2は、上述の実施の形態1の改良形態である。したがって、上述の実施の形態1と異なる点を中心にして、本実施の形態2に係るセンサを説明する。
【0060】
図8は、本発明の実施の形態2に係るセンサにおける検出素子の上面図である。
図9は、本発明の実施の形態2に係るセンサにおける検出素子の
図8のC-C線に沿った断面図である。
【0061】
図8および
図9に示すように、本実施の形態2に係るセンサにおける検出素子212では、複数の溝220aが素子基板220に設けられている。溝220aは、素子基板220の表面における側壁部材224と接触している部分に、固定電極226を囲んで設けられている。溝220aは、第1の溝である。
【0062】
また、本実施の形態2では、複数の凹部222dに加えて、複数の凹部222eが、メンブレン222の外側表面222aに設けられている。凹部222dは第1の凹部であり、凹部222eは第2の凹部である。
【0063】
具体的には、
図8に示すように、メンブレン222におけるダイアフラム部222cの周囲の部分、すなわち、メンブレン222の厚さ方向視で、メンブレン222における側壁部材224と重なっている部分に、凹部222eが設けられている。なお、メンブレン222の厚さ方向は、図に示すX-Y-Z直交座標系のZ軸方向である。このため、メンブレン222の厚さ方向視とは、Z軸方向視である。さらには、メンブレン222の厚さ方向視で、凹部222eは、溝220aの少なくとも一部と重なっている。
【0064】
さらに、
図9に示すように、本実施の形態2では、複数の溝224aが側壁部材224に設けられている。溝224aは、メンブレン222の厚さ方向において、側壁部材224を貫通している。溝224aは、メンブレン222の厚さ方向視で、溝220aの少なくとも一部と重なっているとともに、凹部222eの少なくとも一部と重なっている。溝224aは、第2の溝である。
【0065】
図8に示すように、溝220a、凹部222e、溝224aは、メンブレン222の厚さ方向視で、ダイアフラム部222cを囲んでいる。そのため、溝220a、凹部222e、溝224aは、メンブレン222の平面方向の圧縮応力または引っ張り応力が検出素子12に加わったとき、応力を吸収してダイアフラム部222cに伝わる力を低減する、ダンパーとして機能する。その結果、ダイアフラム部222cに発生する応力が低減され、メンブレン222が平面応力状態になっても検出感度の変化がより抑制される。なお、メンブレン222の平面方向は、図に示すX-Y-Z直交座標系のX軸方向およびY軸方向である。
【0066】
なお、ダイアフラム部222cに発生する応力をさらに低減するために、素子基板220を厚くしてもよい。これにより、素子基板220は、平面方向の圧縮応力または引っ張り応力に対する剛性を備えることができる。その結果として、ダイアフラム部222cに発生する応力がさらに低減される。
【0067】
また、溝220a、凹部222e、溝224aは、メンブレン222の厚さ方向視で、環状であってもよい。すなわち、溝220a、凹部222e、溝224aは、メンブレン222の厚さ方向視で、ダイアフラム部222cの外側の位置に設けられていれば、その個数や形状は問わない。
【0068】
以上のような本実施の形態2によれば、上述の実施の形態1と同様に、圧力を検出するセンサにおいて、メンブレン222が平面応力状態になって生じる検出感度の変化を抑制することができる。
【0069】
以上、複数の実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明の実施の形態はこれらに限らない。
【0070】
例えば、上述の実施の形態1では、
図4に示すように、メンブレン22の中心Cから等しい距離で互いに平行に、2つの凹部22dが設けられている。しかしながら、本発明の実施の形態はこれに限らない。メンブレンに設けられる凹部は、様々な形態が可能である。
【0071】
図10は、本発明の実施の形態3に係るセンサにおける検出素子の上面図である。
図11は、本発明の実施の形態4に係るセンサにおける検出素子の上面図である。
図12は、本発明の実施の形態5に係るセンサにおける検出素子の上面図である。
図13は、本発明の実施の形態6に係るセンサにおける検出素子の上面図である。
図14は、本発明の実施の形態7に係るセンサにおける検出素子の上面図である。
【0072】
図10に示すように、本発明の実施の形態3に係るセンサにおける検出素子312では、2つの凹部322dと、2つの凹部322fとが、メンブレン322の外側表面322aに設けられている。具体的には、
図10に示すように、メンブレン322の厚さ方向視で、ダイアフラム部322cの中心Cと側壁部材324との間に、凹部322d、322fが設けられている。凹部322d、322fは、メンブレン322の厚さ方向視で側壁部材324に沿って、ダイアフラム部322cに設けられている。凹部322d、322fは、メンブレン322の中心Cを囲んでいる。凹部322d、322fは、第1の凹部である。
【0073】
凹部322dは、メンブレン322の厚さ方向視で、ダイアフラム部322cの長手方向に延びている。ダイアフラム部322cの長手方向は、図に示すX-Y-Z直交座標系のX軸方向である。凹部322dは、ダイアフラム部322cの外部、すなわち側壁部材324によって支持されているメンブレン322の部分まで延在している。凹部322dは、中心Cを対称の中心とする点対称に設けられている。すなわち、中心Cから等しい距離で互いに平行に、2つの凹部322dが設けられている。
【0074】
凹部322fは、メンブレン322の厚さ方向視で、ダイアフラム部322cの短手方向に延びている。ダイアフラム部322cの短手方向は、図に示すX-Y-Z直交座標系のY軸方向である。凹部322fは、中心Cを対称の中心とする点対称に設けられている。すなわち、中心Cから等しい距離で互いに平行に、2つの凹部322fが設けられている。
【0075】
図11に示すように、本発明の実施の形態4に係るセンサにおける検出素子412では、2つの凹部422dがメンブレン422の外側表面422aに設けられている。凹部422dは、その全体がダイアフラム部422c内に位置する。
【0076】
図12に示すように、本発明の実施の形態5に係るセンサにおける検出素子512では、2つの凹部522dと、2つの凹部522fとが、メンブレン522の外側表面522aに設けられている。具体的には、
図12に示すように、メンブレン522の厚さ方向視で、ダイアフラム部522cの中心Cと側壁部材524との間に、凹部522d、522fが設けられている。凹部522d、522fは、メンブレン522の厚さ方向視で側壁部材524に沿って、ダイアフラム部522cに設けられている。凹部522d、522fは、メンブレン522の中心Cを囲んでいる。凹部522d、522fは、第1の凹部である。凹部322d、322fは、その全体がダイアフラム部522c内に位置する。
【0077】
凹部522dは、メンブレン522の厚さ方向視で、ダイアフラム部522cの長手方向に延びている。ダイアフラム部322cの長手方向は、図に示すX-Y-Z直交座標系のX軸方向である。凹部322dは、中心Cを対称の中心とする点対称に設けられている。すなわち、中心Cから等しい距離で互いに平行に、2つの凹部322dが設けられている。
【0078】
凹部522fは、メンブレン522の厚さ方向視で、ダイアフラム部522cの短手方向に延びている。ダイアフラム部522cの短手方向は、図に示すX-Y-Z直交座標系のY軸方向である。凹部522fは、中心Cを対称の中心とする点対称に設けられている。すなわち、中心Cから等しい距離で互いに平行に、2つの凹部322fが設けられている。
【0079】
図13に示すように、本発明の実施の形態6に係るセンサにおける検出素子612では、4つの凹部622dと、2つの凹部622fとが、メンブレン622の外側表面622aに設けられている。具体的には、
図13に示すように、メンブレン622の厚さ方向視で、ダイアフラム部622cの中心Cと側壁部材624との間に、凹部622d、622fが設けられている。凹部622d、622fは、メンブレン622の厚さ方向視で側壁部材624に沿って、ダイアフラム部622cに設けられている。凹部622d、622fは、メンブレン622の中心Cを囲んでいる。凹部622d、622fは、第1の凹部である。凹部622d、622fは、その全体がダイアフラム部622c内に位置する。
【0080】
凹部622dは、メンブレン622の厚さ方向視で、ダイアフラム部622cの長手方向に延びている。ダイアフラム部622cの長手方向は、図に示すX-Y-Z直交座標系のX軸方向である。凹部622dは、中心Cを対称の中心とする点対称に設けられている。すなわち、中心Cから等しい距離で互いに平行に、4つの凹部622dが設けられている。
【0081】
凹部622fは、メンブレン622の厚さ方向視で、ダイアフラム部622cの短手方向に延びている。ダイアフラム部622cの短手方向は、図に示すX-Y-Z直交座標系のY軸方向である。凹部622fは、中心Cを対称の中心とする点対称に設けられている。すなわち、中心Cから等しい距離で互いに平行に、2つの凹部622fが設けられている。
【0082】
図14に示すように、本発明の実施の形態7に係るセンサにおける検出素子712では、凹部722dが、メンブレン722の外側表面722aに設けられている。具体的には、
図14に示すように、メンブレン722の厚さ方向視で、ダイアフラム部722cの中心Cと側壁部材724との間に、凹部722dが設けられている。凹部722dは、メンブレン722の厚さ方向視で側壁部材724に沿って、ダイアフラム部722cに設けられている。凹部722dは、メンブレン722の厚さ方向視で環状であり、メンブレン722の中心Cを囲んでいる。凹部722dは、第1の凹部である。凹部722dは、その全体がダイアフラム部722c内に位置する。
【0083】
すなわち、本発明に係る実施の形態においては、メンブレンの厚さ方向視で、ダイアフラム部の中心と側壁部材との間であって、メンブレンの外側表面に第1の凹部が設けられている。
【0084】
また、好ましくは、第1の凹部は、ダイアフラム部の中心側ではなく、側壁部材側、すなわちメンブレンの厚さ方向視で側壁部材に沿って設けられている。これにより、メンブレンが平面応力状態になって生じる検出感度の変化を、効率的に抑制することができる。これと異なり、中心側に第1の凹部が配置される場合、平面応力状態のメンブレンにおいて、ダイアフラム部の外側表面における応力分布と内側表面における応力分布の違いが小さくなり、第1の凹部の効果が低減する。
【0085】
さらに、好ましくは、第1の凹部は複数あって、その複数の第1の凹部が、メンブレン厚さ方向視で、メンブレンの中心を囲むように設けられる。これにより、ダイアフラム部は、その中心対称な形状にたわみ変形することができる。
【0086】
さらにまた、好ましくは、第1の凹部は複数あって、その複数の第1の凹部が、メンブレンの厚さ方向視で、メンブレンの中心を対称の中心とする点対称に設けられる。これにより、ダイアフラム部は、より中心対称な形状にたわみ変形することができる。
【0087】
加えて、例えば、上述の実施の形態1の場合、センサ10は、静電容量型の圧力センサである。しかしながら、本発明の実施の形態はこれに限らない。例えば、センサは、メンブレンが圧力を受けて変形することによってその電気抵抗が変化する、ピエゾ抵抗型圧力センサであってもよい。また、センサは、圧力を検出するものに限らず、メンブレンに印加された振動や力をメンブレンの変形量によって検出するセンサ、例えば差圧センサ、フォースセンサなどであってもよい。
【0088】
加えてまた、上述の実施の形態1の場合、
図1に示すように、検出素子12は樹脂パッケージ16に覆われている。しかしながら、本発明の実施の形態はこれに限らない。本発明に係るセンサは、検出素子に対してそのメンブレンの平面方向に引っ張り応力または圧縮応力が作用しうる構造を備えるセンサであればよい。
【0089】
すなわち、本発明の実施の形態に係るセンサは、広義には、素子基板と、外側表面と、前記外側表面に対して反対側の面である内側表面とを備え、ダイアフラム部を含むメンブレンと、前記素子基板に設けられ、前記メンブレンの前記内側表面における、前記ダイアフラム部外側の部分を支持する側壁部材と、を含む検出素子を有し、前記メンブレンの外側表面における、前記メンブレンの厚さ方向視で、前記ダイアフラム部の中心と側壁部材との間に、第1の凹部が設けられているものである。
【0090】
以上、複数の実施の形態を挙げて本発明を説明したが、ある実施の形態に対して少なくとも1つの別の実施の形態を全体としてまたは部分的に組み合わせて本発明に係るさらなる実施の形態とすることが可能であることは、当業者にとって明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、圧力などを検出するセンサに適用可能である。