(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】電解コンデンサ及び電解コンデンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 9/048 20060101AFI20231212BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20231212BHJP
H01G 9/00 20060101ALI20231212BHJP
H01G 9/012 20060101ALI20231212BHJP
H01G 9/052 20060101ALI20231212BHJP
H01G 9/15 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H01G9/048 F
H01G4/30 201C
H01G9/00 290E
H01G9/012 303
H01G9/048 H
H01G9/052 509
H01G9/15
(21)【出願番号】P 2022514399
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2021012580
(87)【国際公開番号】W WO2021205893
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2020071310
(32)【優先日】2020-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】田中 泰央
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/087692(WO,A1)
【文献】特開2018-082008(JP,A)
【文献】国際公開第2014/188833(WO,A1)
【文献】特開平09-270360(JP,A)
【文献】特開2006-128283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/048
H01G 4/30
H01G 9/00
H01G 9/012
H01G 9/052
H01G 9/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に多孔質部を有する陽極と、前記多孔質部の表面上に設けられた誘電体層と、前記誘電体層を介して前記陽極に対向する陰極とを含むコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子の周囲を封止する封止樹脂と、を有し、かつ、長さ方向に相対する第1端面及び第2端面を有する樹脂成形体と、
前記樹脂成形体の前記第1端面から露出した前記陽極に接続され、前記第1端面上に設けられた第1外部電極と、
前記樹脂成形体の前記第2端面から露出した前記陰極に接続され、前記第2端面上に設けられた第2外部電極と、を備え、
前記長さ方向に直交する厚み方向から見たとき、前記陽極には、前記第1外部電極における前記樹脂成形体の前記第1端面上の部分に接続された第1外縁を含む第1陽極領域と、前記陽極の外縁のうちで前記長さ方向において最も前記第2外部電極側に位置する第2外縁を含む第2陽極領域とが存在し、
前記長さ方向及び前記厚み方向に直交する幅方向において、前記第1外縁の長さは、前記第2外縁の長さよりも大きい、ことを特徴とする電解コンデンサ。
【請求項2】
前記第1陽極領域と前記第2陽極領域とは、前記長さ方向において互いに接している、請求項1に記載の電解コンデンサ。
【請求項3】
前記第1陽極領域及び前記第2陽極領域の前記幅方向における長さは、各々、前記長さ方向に沿って一定である、請求項1又は2に記載の電解コンデンサ。
【請求項4】
前記樹脂成形体は、前記第1端面に交わる側面を更に有し、
前記第1外部電極は、前記樹脂成形体の前記第1端面から前記側面の一部にわたって延在し、
前記陽極は、前記第1陽極領域において、前記樹脂成形体の前記側面でも前記第1外部電極に接続されている、請求項1~3のいずれかに記載の電解コンデンサ。
【請求項5】
前記第1陽極領域における前記第1外縁の少なくとも一部を含む位置には、前記多孔質部の厚みが前記第2陽極領域における前記多孔質部の厚みよりも小さい第1領域が存在する、請求項1~4のいずれかに記載の電解コンデンサ。
【請求項6】
前記第1領域では、前記陽極の表面上に絶縁層が設けられている、請求項5に記載の電解コンデンサ。
【請求項7】
前記陽極は、前記第1陽極領域において、前記厚み方向に相対する第1陽極主面及び第2陽極主面を有し、
前記絶縁層は、前記第1領域において、前記陽極の前記第1陽極主面及び前記第2陽極主面の少なくとも一方上に設けられている、請求項6に記載の電解コンデンサ。
【請求項8】
前記陽極は、前記第1陽極領域において、前記第1陽極主面及び前記第2陽極主面に交わり、前記第2外部電極側に位置する第1陽極端面を更に有し、
前記絶縁層は、前記第1陽極領域において、前記陽極の前記第1陽極端面上にも設けられている、請求項7に記載の電解コンデンサ。
【請求項9】
表面に多孔質部を有する陽極と、前記多孔質部の表面上に設けられた誘電体層と、前記誘電体層を介して前記陽極に対向する陰極とを含むコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子の周囲を封止する封止樹脂と、を有し、かつ、長さ方向に相対する第1端面及び第2端面を有する樹脂成形体を形成する、樹脂成形体形成工程と、
前記樹脂成形体の前記第1端面上に、前記第1端面から露出した前記陽極に接続された第1外部電極を形成する、第1外部電極形成工程と、
前記樹脂成形体の前記第2端面上に、前記第2端面から露出した前記陰極に接続された第2外部電極を形成する、第2外部電極形成工程と、を備え、
前記樹脂成形体形成工程は、
幅方向に延びる幹部から前記幅方向に直交する長さ方向に短冊部が突出した形状を有し、かつ、表面に前記多孔質部を有する陽極用部材を形成する、陽極用部材形成工程と、
前記陽極用部材の前記多孔質部の表面上に前記誘電体層と前記陰極とを順に形成することにより、コンデンサ素子用部材を形成する、コンデンサ素子用部材形成工程と、
前記幹部の一部が残るように前記幅方向に沿う切断線で前記コンデンサ素子用部材を切断することにより、前記幅方向及び前記長さ方向に直交する厚み方向から見たときに、前記切断線に対応する第1外縁を含む第1陽極領域と、前記短冊部の外縁のうちで前記長さ方向において最も前記第1陽極領域とは反対側に位置する第2外縁を含む第2陽極領域とが存在し、かつ、前記幅方向において、前記第1外縁の長さが前記第2外縁の長さよりも大きい前記陽極と、前記誘電体層と、前記陰極とを含む前記コンデンサ素子を形成する、コンデンサ素子形成工程と、を含み、
前記第1外部電極形成工程では、前記樹脂成形体の前記第1端面から露出した前記陽極の前記第1外縁に接続された前記第1外部電極を形成する、ことを特徴とする電解コンデンサの製造方法。
【請求項10】
前記第1陽極領域は、切断後の前記幹部が存在する領域であり、
前記第2陽極領域は、前記短冊部が存在する領域である、請求項9に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項11】
前記第1陽極領域及び前記第2陽極領域の前記幅方向における長さは、各々、前記長さ方向に沿って一定である、請求項9又は10に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項12】
前記樹脂成形体形成工程は、前記コンデンサ素子用部材形成工程と前記コンデンサ素子形成工程との間に、前記コンデンサ素子用部材の周囲を前記封止樹脂で封止することにより、封止体を形成する、封止体形成工程を更に含む、請求項9~11のいずれかに記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項13】
前記樹脂成形体形成工程は、前記陽極用部材形成工程と前記コンデンサ素子用部材形成工程との間に、前記幹部に設けられた前記多孔質部の少なくとも一部を除去することにより、前記幹部に、前記多孔質部の厚みが前記短冊部における前記多孔質部の厚みよりも小さい第1領域を形成する、多孔質部除去工程を更に含む、請求項9~12のいずれかに記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項14】
前記樹脂成形体形成工程は、前記多孔質部除去工程と前記コンデンサ素子用部材形成工程との間に、前記第1領域における前記幹部の表面上に絶縁層を形成する、絶縁層形成工程を更に含む、請求項13に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項15】
前記絶縁層形成工程では、前記第1領域において、前記幹部の前記厚み方向に相対する第1陽極主面及び第2陽極主面の少なくとも一方上に前記絶縁層を形成する、請求項14に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項16】
前記絶縁層形成工程では、前記幹部において、前記第1陽極主面及び前記第2陽極主面に交わり、前記短冊部側に位置する第1陽極端面上にも前記絶縁層を形成する、請求項15に記載の電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサ及び電解コンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体電解コンデンサ等の電解コンデンサは、例えば、弁作用金属からなる陽極の表面に誘電体層を形成した後、誘電体層を介して陽極に対向するように陰極を形成することにより作製される。
【0003】
例えば、特許文献1には、芯部及び多孔質部を有するAl(アルミニウム)を含む陽極と、多孔質部の所定の表面に配置されたAl酸化物を含む誘電体層と、誘電体層表面に配置された固体電解質層を含む陰極と、を備えたコンデンサ素子と、陽極の端部が露出するように、コンデンサ素子を封止する外装部と、外装部の表面に配置され、陰極と電気的に接続された第1の外部電極と、外装部の表面に配置され、陽極の端部と接続された第2の外部電極と、を備えた固体電解コンデンサであって、陰極の配置されていない領域における多孔質部は、陰極の配置されている領域における多孔質部の厚みより、厚みが薄い箇所を有する、固体電解コンデンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固体電解コンデンサ等の電解コンデンサでは、通常、表面に多孔質部を有する陽極が用いられる。しかしながら、多孔質部と外部電極との密着性が低いため、熱応力による外部電極の剥離、外部から外部電極の剥離領域への水分浸入等が生じやすく、信頼性が低下しやすいという問題がある。
【0006】
これに対して、特許文献1に記載の固体電解コンデンサでは、特許文献1の
図1、
図2等に示されたように、第2の外部電極と接続された陽極の端部において多孔質部の厚みを薄くしている。しかしながら、このように多孔質部の厚みを薄くすると、陽極と第2の外部電極との接触面積が減少するため、信頼性を充分に高めることができない。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、陽極と外部電極との密着性が高く、信頼性に優れた電解コンデンサを提供することを目的とするものである。また、本発明は、上記電解コンデンサの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電解コンデンサは、表面に多孔質部を有する陽極と、上記多孔質部の表面上に設けられた誘電体層と、上記誘電体層を介して上記陽極に対向する陰極とを含むコンデンサ素子と、上記コンデンサ素子の周囲を封止する封止樹脂と、を有し、かつ、長さ方向に相対する第1端面及び第2端面を有する樹脂成形体と、上記樹脂成形体の上記第1端面から露出した上記陽極に接続され、上記第1端面上に設けられた第1外部電極と、上記樹脂成形体の上記第2端面から露出した上記陰極に接続され、上記第2端面上に設けられた第2外部電極と、を備え、上記長さ方向に直交する厚み方向から見たとき、上記陽極には、上記第1外部電極における上記樹脂成形体の上記第1端面上の部分に接続された第1外縁を含む第1陽極領域と、上記陽極の外縁のうちで上記長さ方向において最も上記第2外部電極側に位置する第2外縁を含む第2陽極領域とが存在し、上記長さ方向及び上記厚み方向に直交する幅方向において、上記第1外縁の長さは、上記第2外縁の長さよりも大きい、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の電解コンデンサの製造方法は、表面に多孔質部を有する陽極と、上記多孔質部の表面上に設けられた誘電体層と、上記誘電体層を介して上記陽極に対向する陰極とを含むコンデンサ素子と、上記コンデンサ素子の周囲を封止する封止樹脂と、を有し、かつ、長さ方向に相対する第1端面及び第2端面を有する樹脂成形体を形成する、樹脂成形体形成工程と、上記樹脂成形体の上記第1端面上に、上記第1端面から露出した上記陽極に接続された第1外部電極を形成する、第1外部電極形成工程と、上記樹脂成形体の上記第2端面上に、上記第2端面から露出した上記陰極に接続された第2外部電極を形成する、第2外部電極形成工程と、を備え、上記樹脂成形体形成工程は、幅方向に延びる幹部から上記幅方向に直交する長さ方向に短冊部が突出した形状を有し、かつ、表面に上記多孔質部を有する陽極用部材を形成する、陽極用部材形成工程と、上記陽極用部材の上記多孔質部の表面上に上記誘電体層と上記陰極とを順に形成することにより、コンデンサ素子用部材を形成する、コンデンサ素子用部材形成工程と、上記幹部の一部が残るように上記幅方向に沿う切断線で上記コンデンサ素子用部材を切断することにより、上記幅方向及び上記長さ方向に直交する厚み方向から見たときに、上記切断線に対応する第1外縁を含む第1陽極領域と、上記短冊部の外縁のうちで上記長さ方向において最も上記第1陽極領域とは反対側に位置する第2外縁を含む第2陽極領域とが存在し、かつ、上記幅方向において、上記第1外縁の長さが上記第2外縁の長さよりも大きい上記陽極と、上記誘電体層と、上記陰極とを含む上記コンデンサ素子を形成する、コンデンサ素子形成工程と、を含み、上記第1外部電極形成工程では、上記樹脂成形体の上記第1端面から露出した上記陽極の上記第1外縁に接続された上記第1外部電極を形成する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、陽極と外部電極との密着性が高く、信頼性に優れた電解コンデンサを提供できる。また、本発明によれば、上記電解コンデンサの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態1の電解コンデンサを示す斜視模式図である。
【
図2】
図1中の線分A1-A2に対応する部分を示す断面模式図である。
【
図3】
図2中の線分B1-B2に対応する部分を示す断面模式図である。
【
図4】陽極の形態について、
図3とは別の例を示す断面模式図である。
【
図5】陽極と第1外部電極との接続態様について、
図3とは別の例を示す断面模式図である。
【
図6】本発明の実施形態1の電解コンデンサの製造方法について、陽極用部材形成工程の一例を示す斜視模式図である。
【
図7】本発明の実施形態1の電解コンデンサの製造方法について、コンデンサ素子用部材形成工程の一例を示す斜視模式図である。
【
図8】本発明の実施形態1の電解コンデンサの製造方法について、封止体形成工程の一例を示す斜視模式図である。
【
図9】本発明の実施形態1の電解コンデンサの製造方法について、コンデンサ素子形成工程の一例を示す斜視模式図である。
【
図10】本発明の実施形態1の電解コンデンサの製造方法について、コンデンサ素子形成工程の一例を示す斜視模式図である。
【
図11】本発明の実施形態2の電解コンデンサを示す断面模式図である。
【
図12】
図11中の線分B3-B4に対応する部分を示す断面模式図である。
【
図13】本発明の実施形態2の電解コンデンサの製造方法について、多孔質部除去工程の一例を示す斜視模式図である。
【
図14】本発明の実施形態2の変形例1の電解コンデンサを示す断面模式図である。
【
図15】
図14中の線分B5-B6に対応する部分を示す断面模式図である。
【
図16】本発明の実施形態2の変形例1の電解コンデンサの製造方法について、絶縁層形成工程の一例を示す斜視模式図である。
【
図17】本発明の実施形態2の変形例2の電解コンデンサを示す断面模式図である。
【
図18】本発明の実施形態2の変形例2の電解コンデンサの製造方法について、絶縁層形成工程の一例を示す斜視模式図である。
【
図19】比較例1の固体電解コンデンサの製造方法について、コンデンサ素子形成工程を示す斜視模式図である。
【
図20】比較例2の固体電解コンデンサの製造方法について、陽極用部材形成工程後に多孔質部に絶縁性樹脂を充填した様子を示す斜視模式図である。
【
図21】比較例3の固体電解コンデンサの製造方法について、陽極用部材形成工程後に多孔質部の一部を除去した様子を示す斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の電解コンデンサと本発明の電解コンデンサの製造方法とについて説明する。なお、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更されてもよい。また、以下において記載する個々の好ましい構成を複数組み合わせたものもまた本発明である。
【0013】
以下に示す各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示す構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもない。実施形態2以降では、実施形態1と共通の事項についての記載は省略し、異なる点を主に説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態毎に逐次言及しない。以下の説明において、各実施形態を特に区別しない場合、単に「本発明の電解コンデンサ」と言う。
【0014】
[実施形態1]
本発明の電解コンデンサは、表面に多孔質部を有する陽極と、上記多孔質部の表面上に設けられた誘電体層と、上記誘電体層を介して上記陽極に対向する陰極とを含むコンデンサ素子と、上記コンデンサ素子の周囲を封止する封止樹脂と、を有し、かつ、長さ方向に相対する第1端面及び第2端面を有する樹脂成形体と、上記樹脂成形体の上記第1端面から露出した上記陽極に接続され、上記第1端面上に設けられた第1外部電極と、上記樹脂成形体の上記第2端面から露出した上記陰極に接続され、上記第2端面上に設けられた第2外部電極と、を備え、上記長さ方向に直交する厚み方向から見たとき、上記陽極には、上記第1外部電極における上記樹脂成形体の上記第1端面上の部分に接続された第1外縁を含む第1陽極領域と、上記陽極の外縁のうちで上記長さ方向において最も上記第2外部電極側に位置する第2外縁を含む第2陽極領域とが存在し、上記長さ方向及び上記厚み方向に直交する幅方向において、上記第1外縁の長さは、上記第2外縁の長さよりも大きい、ことを特徴とする。
【0015】
本発明の電解コンデンサにおいて、上記第1陽極領域と上記第2陽極領域とは、上記長さ方向において互いに接していてもよい。また、本発明の電解コンデンサにおいて、上記第1陽極領域及び上記第2陽極領域の上記幅方向における長さは、各々、上記長さ方向に沿って一定であってもよい。更に、本発明の電解コンデンサにおいて、上記樹脂成形体は、上記第1端面に交わる側面を更に有していてもよく、上記第1外部電極は、上記樹脂成形体の上記第1端面から上記側面の一部にわたって延在していてもよく、上記陽極は、上記第1陽極領域において、上記樹脂成形体の上記側面でも上記第1外部電極に接続されていてもよい。このような例を、本発明の実施形態1の電解コンデンサとして以下に説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態1の電解コンデンサを示す斜視模式図である。
図1に示すように、電解コンデンサ1aは、樹脂成形体9と、第1外部電極11と、第2外部電極13と、を有している。
【0017】
本明細書中、長さ方向、幅方向、及び、厚み方向を、
図1等に示すように、各々、矢印L、矢印W、及び、矢印Tで定められる方向とする。ここで、長さ方向Lと幅方向Wと厚み方向Tとは、互いに直交している。
【0018】
本明細書中、電解コンデンサにおいて、長さ方向L及び厚み方向Tに沿う面をLT面、長さ方向L及び幅方向Wに沿う面をLW面、幅方向W及び厚み方向Tに沿う面をWT面、と言う。
【0019】
樹脂成形体9は、略直方体状であり、長さ方向Lに相対する第1端面9a及び第2端面9b(ともに、WT面)と、厚み方向Tに相対する底面9c及び上面9d(ともに、LW面)と、幅方向Wに相対する第1側面9e及び第2側面9f(ともに、LT面)と、を有している。
【0020】
樹脂成形体9の第1端面9a及び第2端面9bは、長さ方向Lに厳密に直交している必要はない。また、樹脂成形体9の底面9c及び上面9dは、厚み方向Tに厳密に直交している必要はない。更に、樹脂成形体9の第1側面9e及び第2側面9fは、幅方向Wに厳密に直交している必要はない。
【0021】
第1外部電極11は、樹脂成形体9の第1端面9a上に設けられている。第1外部電極11は、樹脂成形体9の第1端面9aから、第1側面9e及び第2側面9fの少なくとも一方にわたって延在していることが好ましい。また、第1外部電極11は、樹脂成形体9の第1端面9aから、底面9c及び上面9dの少なくとも一方にわたって延在していることが好ましい。
【0022】
第2外部電極13は、樹脂成形体9の第2端面9b上に設けられている。第2外部電極13は、樹脂成形体9の第2端面9bから、第1側面9e及び第2側面9fの少なくとも一方にわたって延在していることが好ましい。また、第2外部電極13は、樹脂成形体9の第2端面9bから、底面9c及び上面9dの少なくとも一方にわたって延在していることが好ましい。
【0023】
図2は、
図1中の線分A1-A2に対応する部分を示す断面模式図である。
図2に示すように、樹脂成形体9は、複数のコンデンサ素子20と、複数のコンデンサ素子20の周囲を封止する封止樹脂8と、を有している。より具体的には、樹脂成形体9は、複数のコンデンサ素子20が厚み方向Tに積層された積層体30と、積層体30の周囲を封止する封止樹脂8と、を有している。積層体30において、コンデンサ素子20同士は、導電性接着剤を介して互いに接合されていてもよい。
【0024】
樹脂成形体9は、複数のコンデンサ素子20を有していることが好ましいが、1つのコンデンサ素子20を有していてもよい。
【0025】
コンデンサ素子20は、陽極3と、誘電体層5と、陰極7と、を含んでいる。
【0026】
陽極3は、弁作用金属基体3aを中心に有し、多孔質部3bを表面に有している。
【0027】
弁作用金属基体3aを構成する弁作用金属としては、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ジルコニウム、マグネシウム、ケイ素等の金属単体、又は、これらの金属の少なくとも1種を含有する合金等が挙げられる。中でも、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。
【0028】
弁作用金属基体3aの形状は、平板状であることが好ましく、箔状であることがより好ましい。
【0029】
多孔質部3bは、弁作用金属基体3aが塩酸等によりエッチング処理されたエッチング層であることが好ましい。
【0030】
エッチング処理前の弁作用金属基体3aの厚みは、好ましくは60μm以上であり、また、好ましくは180μm以下である。エッチング処理後の状態において、エッチングされていない弁作用金属基体3aの芯部の厚みは、好ましくは10μm以上であり、また、好ましくは70μm以下である。多孔質部3bの厚みは、電解コンデンサ1aに要求される耐電圧、静電容量等に合わせて設計されるが、
図2に示した断面において、弁作用金属基体3aの両側に設けられた多孔質部3bの合計厚みは、好ましくは10μm以上であり、また、好ましくは120μm以下である。なお、多孔質部3bは、弁作用金属基体3aの一方の主面上に設けられていてもよい。
【0031】
陽極3は、樹脂成形体9の第1端面9aから露出しており、第1外部電極11に接続されている。
【0032】
本発明の電解コンデンサの特徴部分である陽極の形態については、後述する。
【0033】
誘電体層5は、多孔質部3bの表面上に設けられている。
【0034】
誘電体層5は、上述した弁作用金属の酸化皮膜からなることが好ましい。例えば、弁作用金属基体3aがアルミニウム箔である場合、弁作用金属基体3aに対して、ホウ酸、リン酸、アジピン酸、又は、これらのナトリウム塩、アンモニウム塩等を含む水溶液中で陽極酸化処理を行うことにより、誘電体層5となる酸化皮膜が形成される。誘電体層5は多孔質部3bの表面に沿って形成されるため、結果的に、誘電体層5には細孔(凹部)が設けられることになる。
【0035】
誘電体層5の厚みは、電解コンデンサ1aに要求される耐電圧、静電容量等に合わせて設計されるが、好ましくは10nm以上であり、また、好ましくは100nm以下である。
【0036】
陰極7は、誘電体層5を介して陽極3に対向している。
【0037】
陰極7は、誘電体層5の表面上に設けられた固体電解質層7aを有している。陰極7は、固体電解質層7aの表面上に設けられた導電層7bを有していることが好ましい。電解コンデンサ1aは、陰極7の一部として固体電解質層7aを有しているため、固体電解コンデンサであると言える。
【0038】
なお、本発明の電解コンデンサは、固体電解質に代えて電解液を有する電解コンデンサであってもよいし、固体電解質及び電解液をともに有する電解コンデンサであってもよい。
【0039】
固体電解質層7aの構成材料としては、例えば、ピロール類、チオフェン類、アニリン類等を骨格とした導電性高分子等が挙げられる。チオフェン類を骨格とした導電性高分子としては、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)が挙げられ、ドーパントとなるポリスチレンスルホン酸(PSS)と複合化させたPEDOT:PSSであってもよい。
【0040】
固体電解質層7aは、例えば、3,4-エチレンジオキシチオフェン等のモノマーを含む処理液を用いて、誘電体層5の表面上にポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)等の重合膜を形成する方法、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)等のポリマーの分散液を誘電体層5の表面に塗工した後で乾燥させる方法、等により形成される。固体電解質層7aは、上述した処理液又は分散液を、浸漬塗布法、スクリーン印刷法、転写法、インクジェット印刷法、ディスペンス法、スプレーコート法等の方法で誘電体層5の表面に塗工することにより、所定の領域に形成される。なお、固体電解質層7aとして、誘電体層5の細孔(凹部)を充填する内層用の固体電解質層を形成した後、誘電体層5の全体を被覆する外層用の固体電解質層を形成することが好ましい。
【0041】
固体電解質層7aの厚みは、好ましくは2μm以上であり、また、好ましくは20μm以下である。
【0042】
導電層7bは、例えば、カーボンペースト、グラフェンペースト、又は、銀ペーストのような導電性ペーストを、浸漬塗布法、スクリーン印刷法、転写法、インクジェット印刷法、ディスペンス法、スプレーコート法等の方法で固体電解質層7aの表面に塗工することにより形成される。
【0043】
導電層7bは、上述したようにして形成される、カーボン層、グラフェン層、又は、銀層であることが好ましい。また、導電層7bは、カーボン層又はグラフェン層上に銀層が設けられた複合層であってもよいし、カーボンペースト又はグラフェンペーストと銀ペーストとが混合された混合層であってもよい。
【0044】
導電層7bの厚みは、好ましくは2μm以上であり、また、好ましくは20μm以下である。
【0045】
陰極7は、樹脂成形体9の第2端面9bから露出しており、第2外部電極13に接続されている。より具体的には、陰極7の導電層7bが樹脂成形体9の第2端面9bから露出しており、第2外部電極13に接続されている。
【0046】
陰極7は、導電層7bの表面上に設けられた陰極引き出し層を更に有していてもよい。この場合、陰極引き出し層が樹脂成形体9の第2端面9bから露出し、第2外部電極13に接続されていてもよい。
【0047】
陰極引き出し層は、例えば、金属箔、樹脂電極層等により構成される。
【0048】
封止樹脂8は、少なくとも樹脂を含み、樹脂及びフィラーを含むことが好ましい。
【0049】
樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、液晶ポリマー等が好ましく用いられる。
【0050】
フィラーとしては、シリカ粒子、アルミナ粒子、金属粒子等が好ましく用いられる。
【0051】
封止樹脂8としては、固形エポキシ樹脂とフェノール樹脂とシリカ粒子とを含む材料が好ましく用いられる。
【0052】
樹脂成形体9の成形方法としては、固形の封止樹脂8を用いる場合、コンプレッションモールド、トランスファーモールド等の樹脂モールドが好ましく用いられ、コンプレッションモールドがより好ましく用いられる。また、液状の封止樹脂8を用いる場合、ディスペンス法、印刷法等の成形方法が好ましく用いられる。中でも、コンプレッションモールドにより積層体30の周囲を封止樹脂8で封止して、樹脂成形体9とすることが好ましい。
【0053】
樹脂成形体9では、角部に丸みが付けられていてもよい。樹脂成形体9の角部に丸みを付ける方法としては、例えば、バレル研磨等が用いられる。
【0054】
第1外部電極11は、樹脂成形体9の第1端面9aから露出した陽極3に接続されている。
【0055】
第2外部電極13は、樹脂成形体9の第2端面9bから露出した陰極7に接続されている。
【0056】
第1外部電極11及び第2外部電極13は、各々、浸漬塗布法、スクリーン印刷法、転写法、インクジェット印刷法、ディスペンス法、スプレーコート法、刷毛塗り法、ドロップキャスト法、静電塗装法、めっき法、及び、スパッタ法からなる群より選択される少なくとも1種の方法により形成されることが好ましい。
【0057】
第1外部電極11は、導電成分と樹脂成分とを含む樹脂電極層を有することが好ましい。第1外部電極11が樹脂成分を含むことにより、第1外部電極11と封止樹脂8との密着性が高まるため、信頼性が向上する。
【0058】
第2外部電極13は、導電成分と樹脂成分とを含む樹脂電極層を有することが好ましい。第2外部電極13が樹脂成分を含むことにより、第2外部電極13と封止樹脂8との密着性が高まるため、信頼性が向上する。
【0059】
導電成分は、銀、銅、ニッケル、錫等の金属単体、又は、これらの金属の少なくとも1種を含有する合金等を主成分として含むことが好ましい。
【0060】
樹脂成分は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等を主成分として含むことが好ましい。
【0061】
樹脂電極層は、例えば、浸漬塗布法、スクリーン印刷法、転写法、インクジェット印刷法、ディスペンス法、スプレーコート法、刷毛塗り法、ドロップキャスト法、静電塗装法等の方法により形成される。中でも、樹脂電極層は、スクリーン印刷法で導電性ペーストを塗工することにより形成された印刷樹脂電極層であることが好ましい。樹脂電極層が、スクリーン印刷法で導電性ペーストを塗工することにより形成される場合、浸漬塗布法で導電性ペーストを塗工することにより形成される場合と比較して、第1外部電極11及び第2外部電極13が平坦になりやすい。すなわち、第1外部電極11及び第2外部電極13の厚みが均一になりやすい。
【0062】
第1外部電極11及び第2外部電極13の少なくとも一方は、めっき法により形成される、いわゆるめっき層を有していてもよい。めっき層としては、例えば、亜鉛・銀・ニッケル層、銀・ニッケル層、ニッケル層、亜鉛・ニッケル・金層、ニッケル・金層、亜鉛・ニッケル・銅層、ニッケル・銅層等が挙げられる。これらのめっき層上には、例えば、銅めっき層と、ニッケルめっき層と、錫めっき層とが順に(あるいは、一部のめっき層を除いて)設けられることが好ましい。
【0063】
第1外部電極11及び第2外部電極13の少なくとも一方は、樹脂電極層及びめっき層をともに有していてもよい。例えば、第1外部電極11は、陽極3に接続された樹脂電極層と、樹脂電極層の陽極3とは反対側の表面上に設けられた外層めっき層と、を有していてもよい。また、第1外部電極11は、陽極3に接続された内層めっき層と、内層めっき層を覆うように設けられた樹脂電極層と、樹脂電極層の陽極3とは反対側の表面上に設けられた外層めっき層と、を有していてもよい。
【0064】
以下では、本発明の電解コンデンサの特徴部分である陽極の形態について説明する。
【0065】
図3は、
図2中の線分B1-B2に対応する部分を示す断面模式図である。
【0066】
図3に示すように、厚み方向Tから見たとき、陽極3には、第1陽極領域AR1と第2陽極領域AR2とが存在している。
【0067】
第1陽極領域AR1は、第1外部電極11における樹脂成形体9の第1端面9a上の部分に接続された第1外縁3pを含んでいる。より具体的には、陽極3は、第1外縁3pにおいて樹脂成形体9の第1端面9aから露出しており、陽極3の第1外縁3pが第1外部電極11に接続されている。なお、第1外縁3pは、陽極3の外縁のうちで長さ方向Lにおいて最も第1外部電極11側に位置している、とも言える。
【0068】
第2陽極領域AR2は、陽極3の外縁のうちで長さ方向Lにおいて最も第2外部電極13側に位置する第2外縁3qを含んでいる。
【0069】
幅方向Wにおいて、第1外縁3pの長さWpは、第2外縁3qの長さWqよりも大きい。これにより、陽極3の幅方向Wにおける長さが、長さ方向Lに沿って、第2外縁3qの幅方向Wにおける長さWqと同じまま一定である場合と比較して、陽極3と第1外部電極11との接触面積が増加するため、陽極3と第1外部電極11との密着性が高まる。その結果、熱応力による第1外部電極11の剥離、外部から陽極3と第1外部電極11との界面への水分浸入等が抑制されるため、信頼性に優れた電解コンデンサ1aが実現される。
【0070】
電解コンデンサ1aでは、第1陽極領域AR1と第2陽極領域AR2とは、長さ方向Lにおいて互いに接している。より具体的には、第2陽極領域AR2は、第1陽極領域AR1から長さ方向Lに突出している。なお、第1陽極領域AR1と第2陽極領域AR2とは、長さ方向Lに互いに接していなくてもよい。
【0071】
電解コンデンサ1aでは、第1陽極領域AR1には、幅方向Wにおいて、第2陽極領域AR2の両側に突出する領域が存在している。なお、第1陽極領域AR1には、幅方向Wにおいて、第2陽極領域AR2の片側に突出する領域が存在していてもよい。第1陽極領域AR1において、第2陽極領域AR2から幅方向Wに突出する領域の第2外部電極13側に位置する端面は、
図3に示すように幅方向Wに平行であることが好ましいが、幅方向Wに平行でなくてもよい。
【0072】
電解コンデンサ1aでは、第1陽極領域AR1及び第2陽極領域AR2の幅方向Wにおける長さは、各々、長さ方向Lに沿って一定である。より具体的には、第1陽極領域AR1の幅方向Wにおける長さは、長さ方向Lに沿って、第1外縁3pの幅方向Wにおける長さWpと同じまま一定である。また、第2陽極領域AR2の幅方向Wにおける長さは、長さ方向Lに沿って、第2外縁3qの幅方向Wにおける長さWqと同じまま一定である。
【0073】
なお、第1陽極領域AR1及び第2陽極領域AR2の幅方向Wにおける長さは、各々、長さ方向Lに沿って一定でなくてもよい。
【0074】
図4は、陽極の形態について、
図3とは別の例を示す断面模式図である。
図4に示した電解コンデンサ1bのように、第1陽極領域AR1の幅方向Wにおける長さは、長さ方向Lに沿って第1外部電極11に向かうにつれて大きくなってもよい。また、第2陽極領域AR2の幅方向Wにおける長さは、長さ方向Lに沿って第2外部電極13に向かうにつれて小さくなってもよい。
【0075】
電解コンデンサ1aでは、陽極3は、第1陽極領域AR1において、樹脂成形体9の第1端面9aに加えて、第1側面9e及び第2側面9fの両方でも第1外部電極11に接続されている。これにより、陽極3と第1外部電極11との接触面積が大幅に増加するため、陽極3と第1外部電極11との密着性が充分に高まる。
【0076】
なお、陽極3は、第1陽極領域AR1において、樹脂成形体9の第1側面9e及び第2側面9fの両方で第1外部電極11に接続されていなくてもよい。
【0077】
図5は、陽極と第1外部電極との接続態様について、
図3とは別の例を示す断面模式図である。
図5に示した電解コンデンサ1cのように、陽極3は、第1陽極領域AR1において、樹脂成形体9の第1端面9aのみで第1外部電極11に接続されていてもよい。
【0078】
また、陽極3は、第1陽極領域AR1において、樹脂成形体9の第1端面9aに加えて、第1側面9e及び第2側面9fの一方でも第1外部電極11に接続されていてもよい。すなわち、陽極3は、第1陽極領域AR1において、樹脂成形体9の第1端面9a及び第1側面9eで第1外部電極11に接続されていてもよいし、樹脂成形体9の第1端面9a及び第2側面9fで第1外部電極11に接続されていてもよい。
【0079】
本発明の電解コンデンサの製造方法は、表面に多孔質部を有する陽極と、上記多孔質部の表面上に設けられた誘電体層と、上記誘電体層を介して上記陽極に対向する陰極とを含むコンデンサ素子と、上記コンデンサ素子の周囲を封止する封止樹脂と、を有し、かつ、長さ方向に相対する第1端面及び第2端面を有する樹脂成形体を形成する、樹脂成形体形成工程と、上記樹脂成形体の上記第1端面上に、上記第1端面から露出した上記陽極に接続された第1外部電極を形成する、第1外部電極形成工程と、上記樹脂成形体の上記第2端面上に、上記第2端面から露出した上記陰極に接続された第2外部電極を形成する、第2外部電極形成工程と、を備え、上記樹脂成形体形成工程は、幅方向に延びる幹部から上記幅方向に直交する長さ方向に短冊部が突出した形状を有し、かつ、表面に上記多孔質部を有する陽極用部材を形成する、陽極用部材形成工程と、上記陽極用部材の上記多孔質部の表面上に上記誘電体層と上記陰極とを順に形成することにより、コンデンサ素子用部材を形成する、コンデンサ素子用部材形成工程と、上記幹部の一部が残るように上記幅方向に沿う切断線で上記コンデンサ素子用部材を切断することにより、上記幅方向及び上記長さ方向に直交する厚み方向から見たときに、上記切断線に対応する第1外縁を含む第1陽極領域と、上記短冊部の外縁のうちで上記長さ方向において最も上記第1陽極領域とは反対側に位置する第2外縁を含む第2陽極領域とが存在し、かつ、上記幅方向において、上記第1外縁の長さが上記第2外縁の長さよりも大きい上記陽極と、上記誘電体層と、上記陰極とを含む上記コンデンサ素子を形成する、コンデンサ素子形成工程と、を含み、上記第1外部電極形成工程では、上記樹脂成形体の上記第1端面から露出した上記陽極の上記第1外縁に接続された上記第1外部電極を形成する、ことを特徴とする。
【0080】
本発明の電解コンデンサの製造方法において、上記第1陽極領域は、切断後の上記幹部が存在する領域であってもよく、上記第2陽極領域は、上記短冊部が存在する領域であってもよい。また、本発明の電解コンデンサの製造方法において、上記第1陽極領域及び上記第2陽極領域の上記幅方向における長さは、各々、上記長さ方向に沿って一定であってもよい。更に、本発明の電解コンデンサの製造方法において、上記樹脂成形体形成工程は、上記コンデンサ素子用部材形成工程と上記コンデンサ素子形成工程との間に、上記コンデンサ素子用部材の周囲を上記封止樹脂で封止することにより、封止体を形成する、封止体形成工程を更に含んでいてもよい。このような例を、本発明の実施形態1の電解コンデンサの製造方法、すなわち、
図1、
図2、及び、
図3に示した電解コンデンサ1aの製造方法として以下に説明する。
【0081】
<樹脂成形体形成工程>
樹脂成形体9を形成する樹脂成形体形成工程は、陽極用部材形成工程と、コンデンサ素子用部材形成工程と、封止体形成工程と、コンデンサ素子形成工程とで構成されている。各工程について、以下に説明する。
【0082】
(陽極用部材形成工程)
図6は、本発明の実施形態1の電解コンデンサの製造方法について、陽極用部材形成工程の一例を示す斜視模式図である。まず、表面に多孔質部3bを有する弁作用金属基体3aを準備する。次に、弁作用金属基体3aを、例えば、レーザー加工で切断することにより、
図6に示すような、幅方向Wに延びる幹部51から幅方向Wに直交する長さ方向Lに複数の短冊部52が突出した形状を有し、かつ、表面に多孔質部3bを有する陽極用部材50を形成する。
【0083】
本工程では、陽極用部材50の形状を、複数の短冊部52が幹部51から長さ方向Lに突出した形状としているが、1つの短冊部52が幹部51から長さ方向Lに突出した形状としてもよい。
【0084】
(コンデンサ素子用部材形成工程)
図7は、本発明の実施形態1の電解コンデンサの製造方法について、コンデンサ素子用部材形成工程の一例を示す斜視模式図である。まず、陽極用部材50に対して陽極酸化処理を行うことにより、陽極用部材50の多孔質部3bの表面上と、陽極用部材50の切断面上とに誘電体層5を形成する。次に、陽極用部材50の誘電体層5の表面上に、固体電解質層7aを浸漬塗布法等により形成する。更に、固体電解質層7aの表面上に、導電層7bを浸漬塗布法等により形成する。このように、陽極用部材50の多孔質部3bの表面上に、誘電体層5と、固体電解質層7a及び導電層7bを有する陰極7とを順に形成することにより、
図7に示すようなコンデンサ素子用部材60を形成する。
【0085】
(封止体形成工程)
図8は、本発明の実施形態1の電解コンデンサの製造方法について、封止体形成工程の一例を示す斜視模式図である。複数のコンデンサ素子用部材60を積層した後、コンプレッションモールド等でコンデンサ素子用部材60の積層体の周囲を封止樹脂8で封止することにより、
図8に示すような封止体70を形成する。
【0086】
封止体70を形成する際、封止体70の長さ方向Lにおける一方の端面に、陽極用部材50の短冊部52に対応して設けられた陰極7が露出するように、封止樹脂8で封止する。このように陰極7を封止体70の一方の端面から露出させる方法としては、例えば、露出させたい陰極7の一部をマスクで覆った状態で封止する方法、封止後に封止樹脂8を削ることにより陰極7を露出させる方法等が挙げられる。
【0087】
本工程では、封止体70を形成する際、複数のコンデンサ素子用部材60が積層されたコンデンサ素子用部材60の積層体の周囲を封止樹脂8で封止しているが、1つのコンデンサ素子用部材60の周囲を封止樹脂8で封止してもよい。
【0088】
(コンデンサ素子形成工程)
図9及び
図10は、本発明の実施形態1の電解コンデンサの製造方法について、コンデンサ素子形成工程の一例を示す斜視模式図である。
図9中の一点鎖線で示した各切断線で封止体70を切断することにより、
図10に示すような複数の樹脂成形体9に個片化する。得られた各樹脂成形体9は、
図2に示すように、陽極3と、誘電体層5と、陰極7とを含むコンデンサ素子20と、コンデンサ素子20の周囲を封止する封止樹脂8と、を有している。つまり、本工程により、コンデンサ素子20が形成されることになる。
【0089】
本工程では、封止体70を切断する際、
図9に示すように、幹部51の一部が残るように幅方向Wに沿う切断線Xでコンデンサ素子用部材60を切断する。このように切断することにより、幅方向W及び長さ方向Lに直交する厚み方向Tから見たときに、
図10に示すように、第1外縁3pを含む第1陽極領域AR1と、第2外縁3qを含む第2陽極領域AR2とが存在する陽極3が形成される。より具体的には、第1陽極領域AR1は切断後の幹部51が存在する領域であり、第2陽極領域AR2は短冊部52が存在する領域である。つまり、第1陽極領域AR1と第2陽極領域AR2とは、長さ方向Lにおいて互いに接している。
【0090】
第1外縁3pは、切断線Xに対応しており、樹脂成形体9の第1端面9aから露出している。第2外縁3qは、短冊部52の外縁のうちで長さ方向Lにおいて最も第1陽極領域AR1とは反対側に位置している。また、幅方向Wにおいて、第1外縁3pの長さWpは、第2外縁3qの長さWqよりも大きい。
【0091】
第1陽極領域AR1及び第2陽極領域AR2の幅方向Wにおける長さは、各々、長さ方向Lに沿って一定である。より具体的には、第1陽極領域AR1の幅方向Wにおける長さは、長さ方向Lに沿って、第1外縁3pの幅方向Wにおける長さWpと同じまま一定である。また、第2陽極領域AR2の幅方向Wにおける長さは、長さ方向Lに沿って、第2外縁3qの幅方向Wにおける長さWqと同じまま一定である。
【0092】
本実施形態では、コンデンサ素子用部材60の周囲を封止樹脂8で封止することにより封止体70を形成した後で、封止体70を切断しているが、コンデンサ素子用部材60を切断することによりコンデンサ素子20を形成した後で、コンデンサ素子20の周囲を封止樹脂8で封止してもよい。つまり、樹脂成形体形成工程は、コンデンサ素子形成工程の後に、コンデンサ素子の周囲を封止樹脂で封止することにより、封止体を形成する、封止体形成工程を含んでいてもよい。
【0093】
<第1外部電極形成工程>
樹脂成形体9の第1端面9a上に、第1端面9aから露出した陽極3の第1外縁3pに接続された第1外部電極11を形成する。ここでは、
図1、
図2、及び、
図3に示すように、第1外部電極11を、樹脂成形体9の第1端面9aから、底面9c、上面9d、第1側面9e、及び、第2側面9fの各一部にわたって延在するように形成する。
【0094】
本工程では、浸漬塗布法、スクリーン印刷法、転写法、インクジェット印刷法、ディスペンス法、スプレーコート法、刷毛塗り法、ドロップキャスト法、静電塗装法、めっき法、及び、スパッタ法からなる群より選択される少なくとも1種の方法により、第1外部電極11を形成することが好ましい。この際、浸漬塗布法、スクリーン印刷法、転写法、インクジェット印刷法、ディスペンス法、スプレーコート法、刷毛塗り法、ドロップキャスト法、又は、静電塗装法により、導電成分と樹脂成分とを含む導電性ペーストを用いて、第1外部電極11、より具体的には、第1外部電極11としての樹脂電極層を形成することが好ましい。
【0095】
<第2外部電極形成工程>
樹脂成形体9の第2端面9b上に、第2端面9bから露出した陰極7、ここでは、導電層7bに接続された第2外部電極13を形成する。ここでは、
図1、
図2、及び、
図3に示すように、第2外部電極13を、樹脂成形体9の第2端面9bから、底面9c、上面9d、第1側面9e、及び、第2側面9fの各一部にわたって延在するように形成する。
【0096】
本工程では、浸漬塗布法、スクリーン印刷法、転写法、インクジェット印刷法、ディスペンス法、スプレーコート法、刷毛塗り法、ドロップキャスト法、静電塗装法、めっき法、及び、スパッタ法からなる群より選択される少なくとも1種の方法により、第2外部電極13を形成することが好ましい。この際、浸漬塗布法、スクリーン印刷法、転写法、インクジェット印刷法、ディスペンス法、スプレーコート法、刷毛塗り法、ドロップキャスト法、又は、静電塗装法により、導電成分と樹脂成分とを含む導電性ペーストを用いて、第2外部電極13、より具体的には、第2外部電極13としての樹脂電極層を形成することが好ましい。
【0097】
第1外部電極形成工程と第2外部電極形成工程とは、異なるタイミングで行われてもよいし、同じタイミングで行われてもよい。両工程が異なるタイミングで行われる場合、これらの順序は特に限定されない。
【0098】
以上により、
図1、
図2、及び、
図3に示した電解コンデンサ1aが製造される。
【0099】
[実施形態2]
本発明の電解コンデンサにおいて、上記第1陽極領域における上記第1外縁の少なくとも一部を含む位置には、上記多孔質部の厚みが上記第2陽極領域における上記多孔質部の厚みよりも小さい第1領域が存在していてもよい。このような例を、本発明の実施形態2の電解コンデンサとして以下に説明する。本発明の実施形態2の電解コンデンサは、第1陽極領域における多孔質部の形態以外、本発明の実施形態1の電解コンデンサと同様である。
【0100】
図11は、本発明の実施形態2の電解コンデンサを示す断面模式図である。
図12は、
図11中の線分B3-B4に対応する部分を示す断面模式図である。
図11及び
図12に示した電解コンデンサ1dでは、第1陽極領域AR1における第1外縁3pの少なくとも一部を含む位置には、多孔質部3bの厚みが第2陽極領域AR2における多孔質部3bの厚みよりも小さい第1領域BR1が存在している。ここでは、一例として、多孔質部3bが存在しない第1領域BR1が、第1陽極領域AR1の全体にわたって存在している状態が示されている。電解コンデンサ1dの第1陽極領域AR1に第1領域BR1が存在することにより、第1外部電極11と接触する樹脂成形体9の第1端面9aにおいて、第1外部電極11との密着性が低くなりやすい多孔質部3bの露出領域が減少する代わりに、第1外部電極11との密着性が高くなりやすい封止樹脂8の露出領域が増加する。そのため、電解コンデンサ1dでは、電解コンデンサ1aと比較して、樹脂成形体9の第1端面9aと第1外部電極11との密着性が高まるため、信頼性が向上しやすい。
【0101】
第1領域BR1では、多孔質部3bの厚みが、弁作用金属基体3aの少なくとも一方の主面上で、第2陽極領域AR2における多孔質部3bの厚みよりも小さくなっていればよい。このような第1領域BR1の形態には、弁作用金属基体3aの少なくとも一方の主面上で多孔質部3bが存在しない形態と、弁作用金属基体3aの少なくとも一方の主面上で多孔質部3bが存在するものの、その厚みが第2陽極領域AR2における多孔質部3bの厚みよりも小さい形態と、が含まれる。第1領域BR1では、多孔質部3bの厚みが一定であってもよいし、多孔質部3bの厚みが異なる領域が存在していてもよい。また、弁作用金属基体3aの一方の主面上に設けられた多孔質部3bの厚みと、弁作用金属基体3aの他方の主面上に設けられた多孔質部3bの厚みとは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0102】
第1領域BR1は、第1陽極領域AR1における第1外縁3pの少なくとも一部を含む位置に存在していればよい。このような第1領域BR1の形態には、第1領域BR1が第1陽極領域AR1の全体にわたって存在している形態と、第1陽極領域AR1において、第1領域BR1と、多孔質部3bの厚みが第2陽極領域AR2における多孔質部3bの厚みと同じである第2領域とが共存している形態と、が含まれる。
【0103】
第1領域BR1は、1つのみ存在していてもよいし、複数存在していてもよい。第1領域BR1が複数存在する場合、少なくとも1つの第1領域BR1が第1陽極領域AR1における第1外縁3pの少なくとも一部を含む位置に存在している限り、他の第1領域BR1が第1陽極領域AR1における第1外縁3pを含まない位置に存在していてもよい。第1領域BR1が複数存在する場合、各第1領域BR1において、多孔質部3bの厚みは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0104】
本発明の電解コンデンサの製造方法において、上記樹脂成形体形成工程は、上記陽極用部材形成工程と上記コンデンサ素子用部材形成工程との間に、上記幹部に設けられた上記多孔質部の少なくとも一部を除去することにより、上記幹部に、上記多孔質部の厚みが上記短冊部における上記多孔質部の厚みよりも小さい第1領域を形成する、多孔質部除去工程を更に含んでいてもよい。このような例を、本発明の実施形態2の電解コンデンサの製造方法、すなわち、
図11及び
図12に示した電解コンデンサ1dの製造方法として以下に説明する。本発明の実施形態2の電解コンデンサの製造方法は、樹脂成形体形成工程が陽極用部材形成工程とコンデンサ素子用部材形成工程との間に以下の多孔質部除去工程を含むこと以外、本発明の実施形態1の電解コンデンサの製造方法と同様である。
【0105】
(多孔質部除去工程)
図13は、本発明の実施形態2の電解コンデンサの製造方法について、多孔質部除去工程の一例を示す斜視模式図である。陽極用部材形成工程で形成された陽極用部材50に対して、幹部51に設けられた多孔質部3bの少なくとも一部を、レーザー加工によるハーフカット等で除去する。これにより、
図13に示すように、幹部51に、多孔質部3bの厚みが短冊部52における多孔質部3bの厚みよりも小さい第1領域BR1を形成する。ここでは、一例として、幹部51の短冊部52側に位置し、幹部51と短冊部52との境界線を含む領域に設けられた多孔質部3bを完全に除去することにより、幹部51に、多孔質部3bが存在しない第1領域BR1を形成する様子が示されている。
【0106】
なお、後のコンデンサ素子形成工程では、
図9に示した切断線Xが第1領域BR1を通るように、封止体70を切断する。
【0107】
[実施形態2の変形例1]
本発明の実施形態2の電解コンデンサにおいて、上記第1領域では、上記陽極の表面上に絶縁層が設けられていてもよい。また、本発明の実施形態2の電解コンデンサにおいて、上記陽極は、上記第1陽極領域において、上記厚み方向に相対する第1陽極主面及び第2陽極主面を有していてもよく、上記絶縁層は、上記第1領域において、上記陽極の上記第1陽極主面及び上記第2陽極主面の少なくとも一方上に設けられていてもよい。このような例を、本発明の実施形態2の変形例1の電解コンデンサとして以下に説明する。本発明の実施形態2の変形例1の電解コンデンサは、第1領域に絶縁層が設けられていること以外、本発明の実施形態2の電解コンデンサと同様である。
【0108】
図14は、本発明の実施形態2の変形例1の電解コンデンサを示す断面模式図である。
図15は、
図14中の線分B5-B6に対応する部分を示す断面模式図である。
図14及び
図15に示した電解コンデンサ1eでは、絶縁層80が、第1領域BR1において、陽極3の第1陽極主面3s及び第2陽極主面3tの少なくとも一方上に設けられている。ここでは、一例として、絶縁層80が、第1領域BR1において、陽極3の第1陽極主面3s及び第2陽極主面3tの両方上に設けられている状態が示されている。絶縁層80は、第1領域BR1において、陽極3の第1陽極主面3s及び第2陽極主面3tの一方上に設けられていてもよい。
【0109】
陽極3の第1陽極主面3s及び第2陽極主面3tは、第1陽極領域AR1において、厚み方向Tに相対している。第1陽極主面3s及び第2陽極主面3tは、各々、陽極3の最表面を指す。例えば、電解コンデンサ1eのように、多孔質部3bが存在しない第1領域BR1では、弁作用金属基体3aの両方の主面が、各々、第1陽極主面3s及び第2陽極主面3tとなる。
【0110】
第1領域BR1に絶縁層80が設けられていることにより、第1外部電極11と接触する樹脂成形体9の第1端面9aにおいて、第1外部電極11との密着性が低くなりやすい多孔質部3bの露出領域が減少する代わりに、第1外部電極11との密着性が高くなりやすい絶縁層80の露出領域が増加する。そのため、電解コンデンサ1eでは、電解コンデンサ1aと比較して、樹脂成形体9の第1端面9aと第1外部電極11との密着性が高まるため、信頼性が向上しやすい。
【0111】
絶縁層80は、絶縁性樹脂を含むことが好ましい。
【0112】
絶縁性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等が好ましく用いられる。
【0113】
第1外部電極11との密着性の観点から、絶縁層80は、フィラーを含まないことが好ましい。
【0114】
絶縁層80の厚みは、第2陽極領域AR2における多孔質部3bの厚み以下であることが好ましい。陽極3の第1陽極主面3s上に設けられた絶縁層80の厚みと、陽極3の第2陽極主面3t上に設けられた絶縁層80の厚みとは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0115】
本発明の実施形態2の電解コンデンサの製造方法において、上記樹脂成形体形成工程は、上記多孔質部除去工程と上記コンデンサ素子用部材形成工程との間に、上記第1領域における上記幹部の表面上に絶縁層を形成する、絶縁層形成工程を更に含んでいてもよい。また、本発明の実施形態2の電解コンデンサの製造方法において、上記絶縁層形成工程では、上記第1領域において、上記幹部の上記厚み方向に相対する第1陽極主面及び第2陽極主面の少なくとも一方上に上記絶縁層を形成してもよい。このような例を、本発明の実施形態2の変形例1の電解コンデンサの製造方法、すなわち、
図14及び
図15に示した電解コンデンサ1eの製造方法として以下に説明する。本発明の実施形態2の変形例1の電解コンデンサの製造方法は、樹脂成形体形成工程が多孔質部除去工程とコンデンサ素子用部材形成工程との間に以下の絶縁層形成工程を含むこと以外、本発明の実施形態2の電解コンデンサの製造方法と同様である。
【0116】
(絶縁層形成工程)
図16は、本発明の実施形態2の変形例1の電解コンデンサの製造方法について、絶縁層形成工程の一例を示す斜視模式図である。多孔質部除去工程で形成された第1領域BR1において、
図16に示すように、幹部51の厚み方向Tに相対する第1陽極主面3s及び第2陽極主面3tの少なくとも一方上に、絶縁層80を転写法等により形成する。ここでは、一例として、第1領域BR1において、幹部51の第1陽極主面3s及び第2陽極主面3tの両方上に絶縁層80を形成する様子が示されている。
【0117】
[実施形態2の変形例2]
本発明の実施形態2の変形例1の電解コンデンサにおいて、上記陽極は、上記第1陽極領域において、上記第1陽極主面及び上記第2陽極主面に交わり、上記第2外部電極側に位置する第1陽極端面を更に有していてもよく、上記絶縁層は、上記第1陽極領域において、上記陽極の上記第1陽極端面上にも設けられていてもよい。このような例を、本発明の実施形態2の変形例2の電解コンデンサとして以下に説明する。本発明の実施形態2の変形例2の電解コンデンサは、陽極の第1陽極端面にも絶縁層が設けられていること以外、本発明の実施形態2の変形例1の電解コンデンサと同様である。
【0118】
図17は、本発明の実施形態2の変形例2の電解コンデンサを示す断面模式図である。
図17に示した電解コンデンサ1fでは、絶縁層80が、第1陽極領域AR1において、陽極3の第1陽極端面3u上にも設けられている。第1陽極端面3uは、第1陽極領域AR1において、第1陽極主面3s及び第2陽極主面3tに交わり、第2外部電極13側に位置している。
【0119】
第1陽極端面3uに絶縁層80が設けられていることにより、弁作用金属基体3aが第1陽極端面3uから露出することが防止される。そのため、後のコンデンサ素子用部材形成工程で陰極7を形成する際、第1陽極端面3uにおいて、弁作用金属基体3aと陰極7とが導通することが防止される。
【0120】
本発明の実施形態2の変形例1の電解コンデンサの製造方法において、上記絶縁層形成工程では、上記幹部において、上記第1陽極主面及び上記第2陽極主面に交わり、上記短冊部側に位置する第1陽極端面上にも上記絶縁層を形成してもよい。このような例を、本発明の実施形態2の変形例2の電解コンデンサの製造方法、すなわち、
図17に示した電解コンデンサ1fの製造方法として以下に説明する。本発明の実施形態2の変形例2の電解コンデンサの製造方法は、絶縁層形成工程において陽極の第1陽極端面にも絶縁層を形成すること以外、本発明の実施形態2の変形例1の電解コンデンサの製造方法と同様である。
【0121】
図18は、本発明の実施形態2の変形例2の電解コンデンサの製造方法について、絶縁層形成工程の一例を示す斜視模式図である。上述した絶縁層形成工程で、幹部51において、第1陽極主面3s及び第2陽極主面3tに交わり、短冊部52側に位置する第1陽極端面3u上にも、絶縁層80を転写法等により形成する。
【実施例】
【0122】
以下、本発明の電解コンデンサをより具体的に開示した実施例を示す。以下の実施例では、本発明の電解コンデンサとして固体電解コンデンサを示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0123】
[実施例1]
実施例1の固体電解コンデンサを、以下の方法で製造した。
【0124】
<樹脂成形体形成工程>
樹脂成形体形成工程において、以下のように、陽極用部材形成工程と、コンデンサ素子用部材形成工程と、封止体形成工程と、コンデンサ素子形成工程とを順に行った。
【0125】
(陽極用部材形成工程)
まず、弁作用金属基体としてのアルミニウム箔を中心に有し、多孔質部としてのエッチング層を表面に有するアルミニウム化成箔を準備した。次に、そのアルミニウム化成箔をレーザー加工で切断することにより、
図6に示した構成を有する陽極用部材を形成した。
【0126】
(コンデンサ素子用部材形成工程)
まず、陽極用部材をアジピン酸アンモニウム水溶液に浸漬して陽極酸化処理を行うことにより、陽極用部材の切断面上に誘電体層を形成した。次に、得られた構造物をポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)の水分散体に浸漬した後、乾燥することにより、誘電体層の表面上に固体電解質層を形成した。更に、得られた構造物をカーボンペーストに浸漬した後、銀ペーストに浸漬することにより、固体電解質層の表面上に、カーボン層及び銀層が順に積層された導電層を形成した。これらにより、
図7に示した構成を有するコンデンサ素子用部材を形成した。
【0127】
(封止体形成工程)
複数のコンデンサ素子用部材を積層した後、コンデンサ素子用部材の積層体の周囲を、エポキシ樹脂及びシリカ粒子を含む封止樹脂で封止することにより、
図8に示した構成を有する封止体を形成した。
【0128】
(コンデンサ素子形成工程)
図9中の一点鎖線で示した各切断線で封止体を切断することにより、
図10に示した構成、より具体的には、コンデンサ素子及び封止樹脂を有する複数の樹脂成形体に個片化した。
【0129】
<第1外部電極形成工程>
樹脂成形体を銀ペーストに浸漬することにより、第1外部電極を、樹脂成形体の第1端面から、底面、上面、第1側面、及び、第2側面の各一部にわたって延在するように形成した。
【0130】
<第2外部電極形成工程>
樹脂成形体を銀ペーストに浸漬することにより、第2外部電極を、樹脂成形体の第2端面から、底面、上面、第1側面、及び、第2側面の各一部にわたって延在するように形成した。
【0131】
以上により、
図1、
図2、及び、
図3に示した構成を有する実施例1の固体電解コンデンサを製造した。
【0132】
[実施例2]
陽極用部材形成工程とコンデンサ素子用部材形成工程との間で、以下のように、多孔質部除去工程と絶縁層形成工程とを順に行ったこと以外、実施例1の固体電解コンデンサと同様にして、実施例2の固体電解コンデンサを製造した。
【0133】
(多孔質部除去工程)
陽極用部材形成工程で形成された陽極用部材に対して、幹部の短冊部側に位置し、幹部と短冊部との境界線を含む領域に設けられた多孔質部を、レーザー加工によるハーフカットで完全に除去する。これにより、
図13に示すように、幹部に、多孔質部が存在しない第1領域を形成した。
【0134】
(絶縁層形成工程)
多孔質部除去工程で形成された第1領域において、絶縁性樹脂をローラー転写で転写することにより、
図16に示すように、幹部の第1陽極主面及び第2陽極主面の両方上に絶縁層を形成した。
【0135】
以上により、
図14及び
図15に示した構成を有する実施例2の固体電解コンデンサを製造した。
【0136】
[比較例1]
図19は、比較例1の固体電解コンデンサの製造方法について、コンデンサ素子形成工程を示す斜視模式図である。コンデンサ素子形成工程において、複数の樹脂成形体に個片化する際、
図19に示すように、幹部51が残らないように幹部51と短冊部52との境界線に対応する切断線Yでコンデンサ素子用部材60を切断したこと以外、実施例1の固体電解コンデンサと同様にして、比較例1の固体電解コンデンサを製造した。つまり、比較例1の固体電解コンデンサでは、幅方向において、陽極の第1外縁及び第2外縁の長さは互いに同じであった。
【0137】
[比較例2]
図20は、比較例2の固体電解コンデンサの製造方法について、陽極用部材形成工程後に多孔質部に絶縁性樹脂を充填した様子を示す斜視模式図である。陽極用部材形成工程とコンデンサ素子用部材形成工程との間で、
図20に示すように、短冊部52の幹部51側に位置し、短冊部52と幹部51との境界線を含む領域に設けられた多孔質部3bに、絶縁性樹脂をローラー転写で充填することにより、絶縁層180を形成したこと以外、比較例1の固体電解コンデンサと同様にして、比較例2の固体電解コンデンサを製造した。
【0138】
[比較例3]
図21は、比較例3の固体電解コンデンサの製造方法について、陽極用部材形成工程後に多孔質部の一部を除去した様子を示す斜視模式図である。陽極用部材形成工程とコンデンサ素子用部材形成工程との間で、
図21に示すように、短冊部52の幹部51側に位置し、短冊部52と幹部51との境界線を含む領域に設けられた多孔質部3bを、レーザー加工によるハーフカットで完全に除去したこと以外、比較例1の固体電解コンデンサと同様にして、比較例3の固体電解コンデンサを製造した。
【0139】
[評価]
実施例1、実施例2、比較例1、比較例2、及び、比較例3の固体電解コンデンサについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0140】
<高温試験>
各例の固体電解コンデンサに対して、温度105℃の環境下で1000時間放置する高温試験を行った。そして、高温試験によるESR(等価直列抵抗)の変化を、「高温試験後でのESR」/「高温試験前でのESR」として測定した。
【0141】
<高湿試験>
各例の固体電解コンデンサに対して、温度60℃、湿度93%の環境下で1000時間放置する高湿試験を行った。そして、高湿試験によるESRの変化を、「高湿試験後でのESR」/「高湿試験前でのESR」として測定した。
【0142】
【0143】
表1に示すように、実施例1及び実施例2の固体電解コンデンサでは、比較例1、比較例2、及び、比較例3の固体電解コンデンサと比較して、高温試験及び高湿試験の各試験によるESRの変化が小さかった。つまり、実施例1及び実施例2の固体電解コンデンサでは、高温環境及び高湿環境のいずれの環境下においても、陽極と第1外部電極との密着性が高いと言え、信頼性に優れていることが分かった。
【符号の説明】
【0144】
1a、1b、1c、1d、1e、1f 電解コンデンサ
3 陽極
3a 弁作用金属基体
3b 多孔質部
3p 第1外縁
3q 第2外縁
3s 第1陽極主面
3t 第2陽極主面
3u 第1陽極端面
5 誘電体層
7 陰極
7a 固体電解質層
7b 導電層
8 封止樹脂
9 樹脂成形体
9a 樹脂成形体の第1端面
9b 樹脂成形体の第2端面
9c 樹脂成形体の底面
9d 樹脂成形体の上面
9e 樹脂成形体の第1側面
9f 樹脂成形体の第2側面
11 第1外部電極
13 第2外部電極
20 コンデンサ素子
30 積層体
50 陽極用部材
51 幹部
52 短冊部
60 コンデンサ素子用部材
70 封止体
80、180 絶縁層
AR1 第1陽極領域
AR2 第2陽極領域
BR1 第1領域
L 長さ方向
T 厚み方向
W 幅方向
Wp 第1外縁の幅方向における長さ
Wq 第2外縁の幅方向における長さ
X、Y 切断線