(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】電解コンデンサ及び電解コンデンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 9/048 20060101AFI20231212BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20231212BHJP
H01G 9/00 20060101ALI20231212BHJP
H01G 9/052 20060101ALI20231212BHJP
H01G 9/15 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H01G9/048 F
H01G4/30 201F
H01G9/00 290E
H01G9/048 H
H01G9/052 505
H01G9/15
(21)【出願番号】P 2022514400
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2021012584
(87)【国際公開番号】W WO2021205894
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2020071311
(32)【優先日】2020-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】田中 泰央
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/087692(WO,A1)
【文献】特開2018-082008(JP,A)
【文献】国際公開第2014/188833(WO,A1)
【文献】特開平09-270360(JP,A)
【文献】特開2006-128283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/048
H01G 4/30
H01G 9/00
H01G 9/052
H01G 9/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に多孔質部を有する陽極と、前記多孔質部の表面上に設けられた誘電体層と、前記誘電体層を介して前記陽極に対向する陰極とを含むコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子の周囲を封止する封止樹脂と、を有し、かつ、長さ方向に相対する第1端面及び第2端面と、前記長さ方向に直交する幅方向に相対する第1側面及び第2側面と、を有する樹脂成形体と、
前記樹脂成形体の前記第1端面から露出した前記陽極に接続され、前記第1端面上に設けられた第1外部電極と、
前記樹脂成形体の前記第2端面から露出した前記陰極に接続され、前記第2端面から前記第1側面の一部にわたって延在した第2外部電極と、を備え、
前記コンデンサ素子は、前記封止樹脂、前記第1外部電極、及び、前記第2外部電極で覆われており、
前記第2外部電極は、前記樹脂成形体の前記第1側面上に設けられた第1電極部分を有し、
前記第1電極部分は、前記樹脂成形体の前記第1側面に接する位置で、前記長さ方向において最も前記樹脂成形体の前記第1端面側に位置する第1電極端部を有し、
前記長さ方向及び前記幅方向に直交する厚み方向から見たとき、前記コンデンサ素子と前記第1電極部分とが前記幅方向に対向する領域には、前記コンデンサ素子と前記第1電極部分との前記幅方向における距離が前記コンデンサ素子と前記第1電極端部との前記幅方向における距離よりも短い第1領域が存在する、ことを特徴とする電解コンデンサ。
【請求項2】
前記コンデンサ素子と前記第1電極部分とが前記幅方向に対向する領域には、前記長さ方向において、前記樹脂成形体の前記第2端面側に位置する前記第1領域と、前記樹脂成形体の前記第2端面とは反対側に位置しつつ、前記第1領域に隣接し、かつ、前記第1電極端部を含む第2領域と、が存在し、
前記第1領域において、前記コンデンサ素子と前記第1電極部分との前記幅方向における距離は、前記長さ方向に沿って一定であり、
前記第2領域において、前記コンデンサ素子と前記第1電極部分との前記幅方向における距離は、前記長さ方向に沿って一定である、請求項1に記載の電解コンデンサ。
【請求項3】
前記コンデンサ素子と前記第1電極部分とが前記幅方向に対向する領域において、前記コンデンサ素子と前記第1電極部分との前記幅方向における距離は、前記長さ方向に沿って前記樹脂成形体の前記第2端面に向かうにつれて小さくなる、請求項1に記載の電解コンデンサ。
【請求項4】
前記陰極は、前記第1領域において、前記樹脂成形体の前記第1側面でも前記第2外部電極に接続されている、請求項1~3のいずれかに記載の電解コンデンサ。
【請求項5】
前記第2外部電極は、更に、前記樹脂成形体の前記第2端面から前記第2側面の一部にわたって延在し、かつ、前記樹脂成形体の前記第2側面上に設けられた第2電極部分を有し、
前記第2電極部分は、前記樹脂成形体の前記第2側面に接する位置で、前記長さ方向において最も前記樹脂成形体の前記第1端面側に位置する第2電極端部を有し、
前記厚み方向から見たとき、前記コンデンサ素子と前記第2電極部分とが前記幅方向に対向する領域には、前記コンデンサ素子と前記第2電極部分との前記幅方向における距離が前記コンデンサ素子と前記第2電極端部との前記幅方向における距離よりも短い第3領域が存在する、請求項1~4のいずれかに記載の電解コンデンサ。
【請求項6】
前記コンデンサ素子と前記第2電極部分とが前記幅方向に対向する領域には、前記長さ方向において、前記樹脂成形体の前記第2端面側に位置する前記第3領域と、前記樹脂成形体の前記第2端面とは反対側に位置しつつ、前記第3領域に隣接し、かつ、前記第2電極端部を含む第4領域と、が存在し、
前記第3領域において、前記コンデンサ素子と前記第2電極部分との前記幅方向における距離は、前記長さ方向に沿って一定であり、
前記第4領域において、前記コンデンサ素子と前記第2電極部分との前記幅方向における距離は、前記長さ方向に沿って一定である、請求項5に記載の電解コンデンサ。
【請求項7】
前記コンデンサ素子と前記第2電極部分とが前記幅方向に対向する領域において、前記コンデンサ素子と前記第2電極部分との前記幅方向における距離は、前記長さ方向に沿って前記樹脂成形体の前記第2端面に向かうにつれて小さくなる、請求項5に記載の電解コンデンサ。
【請求項8】
前記陰極は、前記第3領域において、前記樹脂成形体の前記第2側面でも前記第2外部電極に接続されている、請求項5~7のいずれかに記載の電解コンデンサ。
【請求項9】
前記コンデンサ素子と前記第2外部電極とが前記幅方向に対向する領域での前記コンデンサ素子の前記幅方向における最大長さは、前記コンデンサ素子と前記第2外部電極とが前記幅方向に対向しない領域での前記コンデンサ素子の前記幅方向における最大長さよりも大きい、請求項1~8のいずれかに記載の電解コンデンサ。
【請求項10】
前記厚み方向から見たとき、前記陰極の外縁は、前記陽極の外縁に沿っている、請求項1~9のいずれかに記載の電解コンデンサ。
【請求項11】
前記第2外部電極は、導電成分と樹脂成分とを含む樹脂電極層を有する、請求項1~10のいずれかに記載の電解コンデンサ。
【請求項12】
前記陰極は、前記樹脂電極層を有する、請求項11に記載の電解コンデンサ。
【請求項13】
表面に多孔質部を有する陽極と、前記多孔質部の表面上に設けられた誘電体層と、前記誘電体層を介して前記陽極に対向する陰極とを含むコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子の周囲を封止する封止樹脂と、を有し、かつ、長さ方向に相対する第1端面及び第2端面と、前記長さ方向に直交する幅方向に相対する第1側面及び第2側面と、を有する樹脂成形体を形成する、樹脂成形体形成工程と、
前記樹脂成形体の前記第1端面上に、前記第1端面から露出した前記陽極に接続された第1外部電極を形成する、第1外部電極形成工程と、
前記樹脂成形体の前記第2端面から前記第1側面の一部にわたって延在するように、前記第2端面から露出した前記陰極に接続された第2外部電極を形成する、第2外部電極形成工程と、を備え、
前記樹脂成形体形成工程では、前記長さ方向に延びる主部から前記幅方向に第1突出部が突出した形状を有し、かつ、表面に前記多孔質部を有する前記陽極に対して、前記多孔質部の表面上に前記誘電体層と前記陰極とを順に形成し、
前記第2外部電極形成工程では、前記長さ方向及び前記幅方向に直交する厚み方向から見たとき、前記第1突出部に対応する前記コンデンサ素子の突出部に前記幅方向に対向する第1電極部分を、前記樹脂成形体の前記第1側面に接する位置で、前記長さ方向において最も前記樹脂成形体の前記第1端面側に位置する第1電極端部を有するように、前記樹脂成形体の前記第1側面上に形成しつつ、前記コンデンサ素子と前記第1電極部分とが前記幅方向に対向する領域に、前記コンデンサ素子と前記第1電極部分との前記幅方向における距離が、前記コンデンサ素子と前記第1電極端部との前記幅方向における距離よりも短い領域が存在するように、前記第2外部電極を形成する、ことを特徴とする電解コンデンサの製造方法。
【請求項14】
前記樹脂成形体形成工程では、前記主部から前記幅方向で前記第1突出部とは反対側に第2突出部も突出した形状を有する前記陽極を形成し、
前記第2外部電極形成工程では、前記厚み方向から見たとき、前記第2突出部に対応する前記コンデンサ素子の突出部に前記幅方向に対向する第2電極部分を、前記樹脂成形体の前記第2側面に接する位置で、前記長さ方向において最も前記樹脂成形体の前記第1端面側に位置する第2電極端部を有するように、前記樹脂成形体の前記第2側面上に形成しつつ、前記コンデンサ素子と前記第2電極部分とが前記幅方向に対向する領域に、前記コンデンサ素子と前記第2電極部分との前記幅方向における距離が、前記コンデンサ素子と前記第2電極端部との前記幅方向における距離よりも短い領域が存在するように、前記第2外部電極を形成する、請求項13に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項15】
前記第2外部電極形成工程では、浸漬塗布法、スクリーン印刷法、転写法、インクジェット印刷法、ディスペンス法、スプレーコート法、刷毛塗り法、ドロップキャスト法、静電塗装法、めっき法、及び、スパッタ法からなる群より選択される少なくとも1種の方法により、前記第2外部電極を形成する、請求項13又は14に記載の電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサ及び電解コンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体電解コンデンサ等の電解コンデンサは、例えば、弁作用金属からなる陽極の表面に誘電体層を形成した後、誘電体層を介して陽極に対向するように陰極を形成することにより作製される。
【0003】
例えば、特許文献1には、陽極部と陰極部とを有する平板状のコンデンサ素子と、陽極部を載置する陽極端子と、陰極部を載置する陰極端子と、陰極部の側面に沿って設けられ陰極端子に固定された陰極連結体とを備えた固体電解コンデンサであって、陽極部は、陰極部の側面の延長線より突出した陽極部を有したものであり、絶縁体部が突出した陽極部の陰極部側に接して形成され、絶縁体部は陽極部と陰極部とを結ぶ線と平行線上で陰極連結体の端部と対峙された、固体電解コンデンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固体電解コンデンサ等の電解コンデンサでは、酸素、水分等からコンデンサ素子を保護して信頼性を確保するため、通常、コンデンサ素子の周囲が封止樹脂で封止されている。信頼性を確保する観点からは封止樹脂を厚くすることが求められるが、所定の大きさの電解コンデンサにおいて封止樹脂を厚くすると、コンデンサ素子の有効領域を小さくする必要があるため、静電容量を大きくすることができない。つまり、従来の電解コンデンサでは、信頼性を確保しつつ大容量化を実現できない、という問題がある。このような問題は、電解コンデンサを小型化しようとする際に顕著となる。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、信頼性を確保しつつ大容量化を実現可能な電解コンデンサを提供することを目的とするものである。また、本発明は、上記電解コンデンサの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電解コンデンサは、表面に多孔質部を有する陽極と、上記多孔質部の表面上に設けられた誘電体層と、上記誘電体層を介して上記陽極に対向する陰極とを含むコンデンサ素子と、上記コンデンサ素子の周囲を封止する封止樹脂と、を有し、かつ、長さ方向に相対する第1端面及び第2端面と、上記長さ方向に直交する幅方向に相対する第1側面及び第2側面と、を有する樹脂成形体と、上記樹脂成形体の上記第1端面から露出した上記陽極に接続され、上記第1端面上に設けられた第1外部電極と、上記樹脂成形体の上記第2端面から露出した上記陰極に接続され、上記第2端面から上記第1側面の一部にわたって延在した第2外部電極と、を備え、上記コンデンサ素子は、上記封止樹脂、上記第1外部電極、及び、上記第2外部電極で覆われており、上記第2外部電極は、上記樹脂成形体の上記第1側面上に設けられた第1電極部分を有し、上記第1電極部分は、上記樹脂成形体の上記第1側面に接する位置で、上記長さ方向において最も上記樹脂成形体の上記第1端面側に位置する第1電極端部を有し、上記長さ方向及び上記幅方向に直交する厚み方向から見たとき、上記コンデンサ素子と上記第1電極部分とが上記幅方向に対向する領域には、上記コンデンサ素子と上記第1電極部分との上記幅方向における距離が上記コンデンサ素子と上記第1電極端部との上記幅方向における距離よりも短い第1領域が存在する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の電解コンデンサの製造方法は、表面に多孔質部を有する陽極と、上記多孔質部の表面上に設けられた誘電体層と、上記誘電体層を介して上記陽極に対向する陰極とを含むコンデンサ素子と、上記コンデンサ素子の周囲を封止する封止樹脂と、を有し、かつ、長さ方向に相対する第1端面及び第2端面と、上記長さ方向に直交する幅方向に相対する第1側面及び第2側面と、を有する樹脂成形体を形成する、樹脂成形体形成工程と、上記樹脂成形体の上記第1端面上に、上記第1端面から露出した上記陽極に接続された第1外部電極を形成する、第1外部電極形成工程と、上記樹脂成形体の上記第2端面から上記第1側面の一部にわたって延在するように、上記第2端面から露出した上記陰極に接続された第2外部電極を形成する、第2外部電極形成工程と、を備え、上記樹脂成形体形成工程では、上記長さ方向に延びる主部から上記幅方向に第1突出部が突出した形状を有し、かつ、表面に上記多孔質部を有する上記陽極に対して、上記多孔質部の表面上に上記誘電体層と上記陰極とを順に形成し、上記第2外部電極形成工程では、上記長さ方向及び上記幅方向に直交する厚み方向から見たとき、上記第1突出部に対応する上記コンデンサ素子の突出部に上記幅方向に対向する第1電極部分を、上記樹脂成形体の上記第1側面に接する位置で、上記長さ方向において最も上記樹脂成形体の上記第1端面側に位置する第1電極端部を有するように、上記樹脂成形体の上記第1側面上に形成しつつ、上記コンデンサ素子と上記第1電極部分とが上記幅方向に対向する領域に、上記コンデンサ素子と上記第1電極部分との上記幅方向における距離が、上記コンデンサ素子と上記第1電極端部との上記幅方向における距離よりも短い領域が存在するように、上記第2外部電極を形成する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、信頼性を確保しつつ大容量化を実現可能な電解コンデンサを提供できる。また、本発明によれば、上記電解コンデンサの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態1の電解コンデンサを示す斜視模式図である。
【
図2】
図1中の線分A1-A2に対応する部分を示す断面模式図である。
【
図3】
図2中の線分B1-B2に対応する部分を示す断面模式図である。
【
図4】本発明の実施形態1の電解コンデンサの製造方法について、樹脂成形体形成工程の一例を示す平面模式図である。
【
図5】本発明の実施形態1の電解コンデンサの製造方法について、樹脂成形体形成工程の一例を示す平面模式図である。
【
図6】本発明の実施形態1の電解コンデンサの製造方法について、樹脂成形体形成工程の一例を示す平面模式図である。
【
図7】本発明の実施形態1の電解コンデンサの製造方法について、第1外部電極形成工程の一例を示す平面模式図である。
【
図8】本発明の実施形態1の電解コンデンサの製造方法について、第2外部電極形成工程の一例を示す平面模式図である。
【
図9】本発明の実施形態2の電解コンデンサを示す断面模式図である。
【
図10】本発明の実施形態3の電解コンデンサを示す断面模式図である。
【
図11】比較例1の固体電解コンデンサを示す断面模式図である。
【
図12】比較例2の固体電解コンデンサを示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の電解コンデンサと本発明の電解コンデンサの製造方法とについて説明する。なお、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更されてもよい。また、以下において記載する個々の好ましい構成を複数組み合わせたものもまた本発明である。
【0012】
以下に示す各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示す構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもない。実施形態2以降では、実施形態1と共通の事項についての記載は省略し、異なる点を主に説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態毎に逐次言及しない。以下の説明において、各実施形態を特に区別しない場合、単に「本発明の電解コンデンサ」と言う。
【0013】
[実施形態1]
本発明の電解コンデンサは、表面に多孔質部を有する陽極と、上記多孔質部の表面上に設けられた誘電体層と、上記誘電体層を介して上記陽極に対向する陰極とを含むコンデンサ素子と、上記コンデンサ素子の周囲を封止する封止樹脂と、を有し、かつ、長さ方向に相対する第1端面及び第2端面と、上記長さ方向に直交する幅方向に相対する第1側面及び第2側面と、を有する樹脂成形体と、上記樹脂成形体の上記第1端面から露出した上記陽極に接続され、上記第1端面上に設けられた第1外部電極と、上記樹脂成形体の上記第2端面から露出した上記陰極に接続され、上記第2端面から上記第1側面の一部にわたって延在した第2外部電極と、を備え、上記コンデンサ素子は、上記封止樹脂、上記第1外部電極、及び、上記第2外部電極で覆われており、上記第2外部電極は、上記樹脂成形体の上記第1側面上に設けられた第1電極部分を有し、上記第1電極部分は、上記樹脂成形体の上記第1側面に接する位置で、上記長さ方向において最も上記樹脂成形体の上記第1端面側に位置する第1電極端部を有し、上記長さ方向及び上記幅方向に直交する厚み方向から見たとき、上記コンデンサ素子と上記第1電極部分とが上記幅方向に対向する領域には、上記コンデンサ素子と上記第1電極部分との上記幅方向における距離が上記コンデンサ素子と上記第1電極端部との上記幅方向における距離よりも短い第1領域が存在する、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の電解コンデンサにおいて、上記コンデンサ素子と上記第1電極部分とが上記幅方向に対向する領域には、上記長さ方向において、上記樹脂成形体の上記第2端面側に位置する上記第1領域と、上記樹脂成形体の上記第2端面とは反対側に位置しつつ、上記第1領域に隣接し、かつ、上記第1電極端部を含む第2領域と、が存在していてもよく、上記第1領域において、上記コンデンサ素子と上記第1電極部分との上記幅方向における距離は、上記長さ方向に沿って一定であってもよく、上記第2領域において、上記コンデンサ素子と上記第1電極部分との上記幅方向における距離は、上記長さ方向に沿って一定であってもよい。また、本発明の電解コンデンサにおいて、上記第2外部電極は、更に、上記樹脂成形体の上記第2端面から上記第2側面の一部にわたって延在し、かつ、上記樹脂成形体の上記第2側面上に設けられた第2電極部分を有していてもよく、上記第2電極部分は、上記樹脂成形体の上記第2側面に接する位置で、上記長さ方向において最も上記樹脂成形体の上記第1端面側に位置する第2電極端部を有していてもよく、上記厚み方向から見たとき、上記コンデンサ素子と上記第2電極部分とが上記幅方向に対向する領域には、上記コンデンサ素子と上記第2電極部分との上記幅方向における距離が上記コンデンサ素子と上記第2電極端部との上記幅方向における距離よりも短い第3領域が存在していてもよい。また、本発明の電解コンデンサにおいて、上記コンデンサ素子と上記第2電極部分とが上記幅方向に対向する領域には、上記長さ方向において、上記樹脂成形体の上記第2端面側に位置する上記第3領域と、上記樹脂成形体の上記第2端面とは反対側に位置しつつ、上記第3領域に隣接し、かつ、上記第2電極端部を含む第4領域と、が存在していてもよく、上記第3領域において、上記コンデンサ素子と上記第2電極部分との上記幅方向における距離は、上記長さ方向に沿って一定であってもよく、上記第4領域において、上記コンデンサ素子と上記第2電極部分との上記幅方向における距離は、上記長さ方向に沿って一定であってもよい。このような例を、本発明の実施形態1の電解コンデンサとして以下に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態1の電解コンデンサを示す斜視模式図である。
図1に示すように、電解コンデンサ1aは、樹脂成形体9と、第1外部電極11と、第2外部電極13と、を有している。
【0016】
本明細書中、長さ方向、幅方向、及び、厚み方向を、
図1等に示すように、各々、矢印L、矢印W、及び、矢印Tで定められる方向とする。ここで、長さ方向Lと幅方向Wと厚み方向Tとは、互いに直交している。
【0017】
本明細書中、電解コンデンサにおいて、長さ方向L及び厚み方向Tに沿う面をLT面、長さ方向L及び幅方向Wに沿う面をLW面、幅方向W及び厚み方向Tに沿う面をWT面、と言う。
【0018】
樹脂成形体9は、略直方体状であり、長さ方向Lに相対する第1端面9a及び第2端面9b(ともに、WT面)と、厚み方向Tに相対する底面9c及び上面9d(ともに、LW面)と、幅方向Wに相対する第1側面9e及び第2側面9f(ともに、LT面)と、を有している。
【0019】
樹脂成形体9の第1端面9a及び第2端面9bは、長さ方向Lに厳密に直交している必要はない。また、樹脂成形体9の底面9c及び上面9dは、厚み方向Tに厳密に直交している必要はない。更に、樹脂成形体9の第1側面9e及び第2側面9fは、幅方向Wに厳密に直交している必要はない。
【0020】
第1外部電極11は、樹脂成形体9の第1端面9a上に設けられている。第1外部電極11は、樹脂成形体9の第1端面9aから、第1側面9e及び第2側面9fの少なくとも一方にわたって延在していることが好ましい。また、第1外部電極11は、樹脂成形体9の第1端面9aから、底面9c及び上面9dの少なくとも一方にわたって延在していることが好ましい。
【0021】
第2外部電極13は、樹脂成形体9の第2端面9b上に設けられている。第2外部電極13は、樹脂成形体9の第2端面9bから、第1側面9eにわたって延在している。第2外部電極13は、更に、樹脂成形体9の第2端面9bから、第2側面9fの一部にわたって延在していることが好ましい。つまり、第2外部電極13は、樹脂成形体9の第2端面9bから、第1側面9e及び第2側面9fの各一部にわたって延在していることが好ましい。また、第2外部電極13は、樹脂成形体9の第2端面9bから、底面9c及び上面9dの少なくとも一方にわたって延在していることが好ましい。
【0022】
図2は、
図1中の線分A1-A2に対応する部分を示す断面模式図である。
図2に示すように、樹脂成形体9は、複数のコンデンサ素子20と、複数のコンデンサ素子20の周囲を封止する封止樹脂8と、を有している。より具体的には、樹脂成形体9は、複数のコンデンサ素子20が厚み方向Tに積層された積層体30と、積層体30の周囲を封止する封止樹脂8と、を有している。積層体30において、コンデンサ素子20同士は、導電性接着剤を介して互いに接合されていてもよい。
【0023】
樹脂成形体9は、複数のコンデンサ素子20を有していることが好ましいが、1つのコンデンサ素子20を有していてもよい。
【0024】
コンデンサ素子20は、陽極3と、誘電体層5と、陰極7と、を含んでいる。
【0025】
陽極3は、弁作用金属基体3aを中心に有し、多孔質部3bを表面に有している。
【0026】
弁作用金属基体3aを構成する弁作用金属としては、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ジルコニウム、マグネシウム、ケイ素等の金属単体、又は、これらの金属の少なくとも1種を含有する合金等が挙げられる。中でも、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。
【0027】
弁作用金属基体3aの形状は、平板状であることが好ましく、箔状であることがより好ましい。
【0028】
多孔質部3bは、弁作用金属基体3aが塩酸等によりエッチング処理されたエッチング層であることが好ましい。
【0029】
エッチング処理前の弁作用金属基体3aの厚みは、好ましくは60μm以上であり、また、好ましくは180μm以下である。エッチング処理後の状態において、エッチングされていない弁作用金属基体3aの芯部の厚みは、好ましくは10μm以上であり、また、好ましくは70μm以下である。多孔質部3bの厚みは、電解コンデンサ1aに要求される耐電圧、静電容量等に合わせて設計されるが、
図2に示した断面において、弁作用金属基体3aの両側に設けられた多孔質部3bの合計厚みは、好ましくは10μm以上であり、また、好ましくは120μm以下である。なお、多孔質部3bは、弁作用金属基体3aの一方の主面上に設けられていてもよい。
【0030】
陽極3は、樹脂成形体9の第1端面9aから露出しており、第1外部電極11に接続されている。
【0031】
誘電体層5は、多孔質部3bの表面上に設けられている。
【0032】
誘電体層5は、上述した弁作用金属の酸化皮膜からなることが好ましい。例えば、弁作用金属基体3aがアルミニウム箔である場合、弁作用金属基体3aに対して、ホウ酸、リン酸、アジピン酸、又は、これらのナトリウム塩、アンモニウム塩等を含む水溶液中で陽極酸化処理を行うことにより、誘電体層5となる酸化皮膜が形成される。誘電体層5は多孔質部3bの表面に沿って形成されるため、結果的に、誘電体層5には細孔(凹部)が設けられることになる。
【0033】
誘電体層5の厚みは、電解コンデンサ1aに要求される耐電圧、静電容量等に合わせて設計されるが、好ましくは10nm以上であり、また、好ましくは100nm以下である。
【0034】
陰極7は、誘電体層5を介して陽極3に対向している。
【0035】
陰極7は、誘電体層5の表面上に設けられた固体電解質層7aを有している。陰極7は、固体電解質層7aの表面上に設けられた導電層7bを有していることが好ましい。電解コンデンサ1aは、陰極7の一部として固体電解質層7aを有しているため、固体電解コンデンサであると言える。
【0036】
なお、本発明の電解コンデンサは、固体電解質に代えて電解液を有する電解コンデンサであってもよいし、固体電解質及び電解液をともに有する電解コンデンサであってもよい。
【0037】
固体電解質層7aの構成材料としては、例えば、ピロール類、チオフェン類、アニリン類等を骨格とした導電性高分子等が挙げられる。チオフェン類を骨格とした導電性高分子としては、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)が挙げられ、ドーパントとなるポリスチレンスルホン酸(PSS)と複合化させたPEDOT:PSSであってもよい。
【0038】
固体電解質層7aは、例えば、3,4-エチレンジオキシチオフェン等のモノマーを含む処理液を用いて、誘電体層5の表面上にポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)等の重合膜を形成する方法、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)等のポリマーの分散液を誘電体層5の表面に塗工した後で乾燥させる方法、等により形成される。固体電解質層7aは、上述した処理液又は分散液を、浸漬塗布法、スクリーン印刷法、転写法、インクジェット印刷法、ディスペンス法、スプレーコート法等の方法で誘電体層5の表面に塗工することにより、所定の領域に形成される。なお、固体電解質層7aとして、誘電体層5の細孔(凹部)を充填する内層用の固体電解質層を形成した後、誘電体層5の全体を被覆する外層用の固体電解質層を形成することが好ましい。
【0039】
固体電解質層7aの厚みは、好ましくは2μm以上であり、また、好ましくは20μm以下である。
【0040】
導電層7bは、例えば、カーボンペースト、グラフェンペースト、又は、銀ペーストのような導電性ペーストを、浸漬塗布法、スクリーン印刷法、転写法、インクジェット印刷法、ディスペンス法、スプレーコート法等の方法で固体電解質層7aの表面に塗工することにより形成される。
【0041】
導電層7bは、上述したようにして形成される、カーボン層、グラフェン層、又は、銀層であることが好ましい。また、導電層7bは、カーボン層又はグラフェン層上に銀層が設けられた複合層であってもよいし、カーボンペースト又はグラフェンペーストと銀ペーストとが混合された混合層であってもよい。
【0042】
導電層7bの厚みは、好ましくは2μm以上であり、また、好ましくは20μm以下である。
【0043】
陰極7、ここでは、導電層7bは、樹脂成形体9の第2端面9bから露出しており、第2外部電極13に接続されている。つまり、導電層7bは、第2外部電極13側に陰極引き出し層等で別途引き出されておらず、第2外部電極13に直に接続されている。
【0044】
封止樹脂8は、少なくとも樹脂を含み、樹脂及びフィラーを含むことが好ましい。
【0045】
樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、液晶ポリマー等が好ましく用いられる。
【0046】
フィラーとしては、シリカ粒子、アルミナ粒子、金属粒子等が好ましく用いられる。
【0047】
封止樹脂8としては、固形エポキシ樹脂とフェノール樹脂とシリカ粒子とを含む材料が好ましく用いられる。
【0048】
樹脂成形体9の成形方法としては、固形の封止樹脂8を用いる場合、コンプレッションモールド、トランスファーモールド等の樹脂モールドが好ましく用いられ、コンプレッションモールドがより好ましく用いられる。また、液状の封止樹脂8を用いる場合、ディスペンス法、印刷法等の成形方法が好ましく用いられる。中でも、コンプレッションモールドにより積層体30の周囲を封止樹脂8で封止して、樹脂成形体9とすることが好ましい。
【0049】
樹脂成形体9では、角部に丸みが付けられていてもよい。樹脂成形体9の角部に丸みを付ける方法としては、例えば、バレル研磨等が用いられる。
【0050】
第1外部電極11は、樹脂成形体9の第1端面9aから露出した陽極3に接続されている。
【0051】
第2外部電極13は、樹脂成形体9の第2端面9bから露出した陰極7に接続されている。
【0052】
第1外部電極11及び第2外部電極13は、各々、浸漬塗布法、スクリーン印刷法、転写法、インクジェット印刷法、ディスペンス法、スプレーコート法、刷毛塗り法、ドロップキャスト法、静電塗装法、めっき法、及び、スパッタ法からなる群より選択される少なくとも1種の方法により形成されることが好ましい。
【0053】
第1外部電極11は、導電成分と樹脂成分とを含む樹脂電極層を有することが好ましい。第1外部電極11が樹脂成分を含むことにより、第1外部電極11と封止樹脂8との密着性が高まるため、信頼性が向上する。
【0054】
第2外部電極13は、導電成分と樹脂成分とを含む樹脂電極層を有することが好ましい。第2外部電極13が樹脂成分を含むことにより、第2外部電極13と封止樹脂8との密着性が高まるため、信頼性が向上する。
【0055】
導電成分は、銀、銅、ニッケル、錫等の金属単体、又は、これらの金属の少なくとも1種を含有する合金等を主成分として含むことが好ましい。
【0056】
樹脂成分は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等を主成分として含むことが好ましい。
【0057】
樹脂電極層は、例えば、浸漬塗布法、スクリーン印刷法、転写法、インクジェット印刷法、ディスペンス法、スプレーコート法、刷毛塗り法、ドロップキャスト法、静電塗装法等の方法により形成される。中でも、樹脂電極層は、スクリーン印刷法で導電性ペーストを塗工することにより形成された印刷樹脂電極層であることが好ましい。樹脂電極層が、スクリーン印刷法で導電性ペーストを塗工することにより形成される場合、浸漬塗布法で導電性ペーストを塗工することにより形成される場合と比較して、第1外部電極11及び第2外部電極13が平坦になりやすい。すなわち、第1外部電極11及び第2外部電極13の厚みが均一になりやすい。
【0058】
第2外部電極13が樹脂電極層を有する場合、陰極7は、樹脂電極層を有することが好ましい。より具体的には、陰極7は、樹脂電極層として、カーボン層、グラフェン層、銀層等の導電層7bを有することが好ましい。第2外部電極13及び陰極7がともに樹脂成分を含むことにより、第2外部電極13と陰極7との密着性が高まるため、信頼性が向上する。
【0059】
第1外部電極11及び第2外部電極13の少なくとも一方は、めっき法により形成される、いわゆるめっき層を有していてもよい。めっき層としては、例えば、亜鉛・銀・ニッケル層、銀・ニッケル層、ニッケル層、亜鉛・ニッケル・金層、ニッケル・金層、亜鉛・ニッケル・銅層、ニッケル・銅層等が挙げられる。これらのめっき層上には、例えば、銅めっき層と、ニッケルめっき層と、錫めっき層とが順に(あるいは、一部のめっき層を除いて)設けられることが好ましい。
【0060】
第1外部電極11及び第2外部電極13の少なくとも一方は、樹脂電極層及びめっき層をともに有していてもよい。例えば、第1外部電極11は、陽極3に接続された樹脂電極層と、樹脂電極層の陽極3とは反対側の表面上に設けられた外層めっき層と、を有していてもよい。また、第1外部電極11は、陽極3に接続された内層めっき層と、内層めっき層を覆うように設けられた樹脂電極層と、樹脂電極層の陽極3とは反対側の表面上に設けられた外層めっき層と、を有していてもよい。
【0061】
図3は、
図2中の線分B1-B2に対応する部分を示す断面模式図である。なお、
図3では、第2外部電極13の近傍領域におけるコンデンサ素子20の形状に着目するため、陽極3、誘電体層5、及び、陰極7を省略している。
【0062】
図3に示すように、第2外部電極13は、樹脂成形体9の第1側面9e上に設けられた第1電極部分14を有している。第1電極部分14は、樹脂成形体9の第1側面9eに接する位置で、長さ方向Lにおいて最も樹脂成形体9の第1端面9a側に位置する第1電極端部14aを有している。
【0063】
厚み方向Tから見たとき、コンデンサ素子20と第1電極部分14とが幅方向Wに対向する領域には、長さ方向Lにおいて、樹脂成形体9の第2端面9b側に位置する第1領域AR1と、樹脂成形体9の第2端面9bとは反対側に位置しつつ、第1領域AR1に隣接し、かつ、第1電極端部14aを含む第2領域AR2と、が存在している。
【0064】
第1領域AR1において、コンデンサ素子20と第1電極部分14との幅方向Wにおける距離W1は、コンデンサ素子20と第1電極端部14aとの幅方向Wにおける距離W2よりも短くなっている。電解コンデンサ1aに第1領域AR1が存在することにより、コンデンサ素子20が幅方向Wに突出部21aだけ大きくなる。よって、コンデンサ素子20の有効領域が大きくなるため、静電容量が大きくなる。一方、電解コンデンサ1aでは、コンデンサ素子20が、封止樹脂8、第1外部電極11、及び、第2外部電極13で覆われている。ここで、第1領域AR1では、コンデンサ素子20が幅方向Wに突出部21aだけ大きくなっている分、封止樹脂8の幅方向Wにおける長さが小さくなっているが、その封止樹脂8は第1電極部分14で覆われている。そのため、コンデンサ素子20が突出部21aだけ幅方向Wに大きくなっても、酸素、水分等からコンデンサ素子20が保護される。よって、電解コンデンサ1aに第1領域AR1が存在することにより、信頼性を確保しつつ大容量化を実現できる。
【0065】
第2外部電極13は、樹脂成形体9の第2側面9f上に設けられた第2電極部分15を有している。第2電極部分15は、樹脂成形体9の第2側面9fに接する位置で、長さ方向Lにおいて最も樹脂成形体9の第1端面9a側に位置する第2電極端部15aを有している。
【0066】
厚み方向Tから見たとき、コンデンサ素子20と第2電極部分15とが幅方向Wに対向する領域には、長さ方向Lにおいて、樹脂成形体9の第2端面9b側に位置する第3領域AR3と、樹脂成形体9の第2端面9bとは反対側に位置しつつ、第3領域AR3に隣接し、かつ、第2電極端部15aを含む第4領域AR4と、が存在している。
【0067】
第3領域AR3において、コンデンサ素子20と第2電極部分15との幅方向Wにおける距離W3は、コンデンサ素子20と第2電極端部15aとの幅方向Wにおける距離W4よりも短くなっている。電解コンデンサ1aに第3領域AR3が存在することにより、コンデンサ素子20が幅方向Wに突出部21bだけ大きくなる。よって、コンデンサ素子20の有効領域が大きくなるため、静電容量が大きくなる。ここで、第3領域AR3では、コンデンサ素子20が幅方向Wに突出部21bだけ大きくなっている分、封止樹脂8の幅方向Wにおける長さが小さくなっているが、その封止樹脂8は第2電極部分15で覆われている。そのため、コンデンサ素子20が突出部21bだけ幅方向Wに大きくなっても、酸素、水分等からコンデンサ素子20が保護される。よって、電解コンデンサ1aに第3領域AR3が存在することにより、信頼性を確保しつつ大容量化を実現できる。
【0068】
電解コンデンサ1aでは、第1領域AR1及び第3領域AR3が存在することから、信頼性を確保しつつ更なる大容量化を実現できる。このような作用効果は、電解コンデンサ1aが小型であっても同様に得られる。
【0069】
なお、第1領域AR1が存在する限り、第3領域AR3は存在していなくてもよい。この場合でも、上述したように、第1領域AR1の存在により、信頼性を確保しつつ大容量化を実現できる。
【0070】
電解コンデンサ1aでは、第1領域AR1において、コンデンサ素子20と第1電極部分14との幅方向Wにおける距離W1が、長さ方向Lに沿って一定である。第1領域AR1において、コンデンサ素子20と第1電極部分14との幅方向Wにおける距離W1は、ゼロよりも大きくなっている。つまり、コンデンサ素子20は、第1領域AR1において、樹脂成形体9の第1側面9eで、第2外部電極13、ここでは、第1電極部分14に接続されていない。
【0071】
電解コンデンサ1aでは、第2領域AR2において、コンデンサ素子20と第1電極部分14との幅方向Wにおける距離は、長さ方向Lに沿って一定、より具体的には、コンデンサ素子20と第1電極端部14aとの幅方向Wにおける距離W2と同じまま一定である。
【0072】
電解コンデンサ1aでは、第1領域AR1及び第2領域AR2が上述した態様であることから、コンデンサ素子20と第1電極部分14とが幅方向Wに対向する領域において、コンデンサ素子20の外形は、
図3に示すような階段状となる。
【0073】
電解コンデンサ1aでは、第3領域AR3において、コンデンサ素子20と第2電極部分15との幅方向Wにおける距離W3が、長さ方向Lに沿って一定である。第3領域AR3において、コンデンサ素子20と第2電極部分15との幅方向Wにおける距離W3は、ゼロよりも大きくなっている。つまり、コンデンサ素子20は、第3領域AR3において、樹脂成形体9の第2側面9fで、第2外部電極13、ここでは、第2電極部分15に接続されていない。
【0074】
電解コンデンサ1aでは、第4領域AR4において、コンデンサ素子20と第2電極部分15との幅方向Wにおける距離は、長さ方向Lに沿って一定、より具体的には、コンデンサ素子20と第2電極端部15aとの幅方向Wにおける距離W4と同じまま一定である。
【0075】
電解コンデンサ1aでは、第3領域AR3及び第4領域AR4が上述した態様であることから、コンデンサ素子20と第2電極部分15とが幅方向Wに対向する領域において、コンデンサ素子20の外形は、
図3に示すような階段状となる。
【0076】
信頼性及び大容量化の観点から、距離W1は距離W2に対して、好ましくは0%よりも大きく、50%以下である。また、距離W3は距離W4に対して、好ましくは0%よりも大きく、50%以下である。
【0077】
距離W1と距離W3とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、距離W2と距離W4とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0078】
厚み方向Tから見たとき、コンデンサ素子20は、第2外部電極13の近傍領域において、幅方向Wに突出部21a及び突出部21bだけ大きくなった形状を有している。突出部21a及び突出部21bにおいても、他の領域と同様に、陽極3の多孔質部3bの表面上に誘電体層5と陰極7とが順に設けられている。よって、厚み方向Tから見たとき、陰極7の外縁は、陽極3の外縁に沿っている。また、コンデンサ素子20と第2外部電極13とが幅方向Wに対向しない領域において、陽極3の幅方向Wにおける長さは、長さ方向Lに沿って一定である。
【0079】
コンデンサ素子20が上述した形状を有しているため、コンデンサ素子20と第2外部電極13とが幅方向Wに対向する領域でのコンデンサ素子20の幅方向Wにおける最大長さWaは、コンデンサ素子20と第2外部電極13とが幅方向Wに対向しない領域でのコンデンサ素子20の幅方向Wにおける最大長さWbよりも大きい。最大長さWaは、樹脂成形体9の第1側面9eと第2側面9fとの幅方向Wにおける距離、ここでは、第2端面9bの幅方向Wにおける長さと同じであることが好ましい。
【0080】
長さ方向Lにおいて、第2領域AR2の長さは第1領域AR1の長さに対して、好ましくは0%よりも大きく、50%以下である。また、長さ方向Lにおいて、第4領域AR4の長さは第3領域AR3の長さに対して、好ましくは0%よりも大きく、50%以下である。
【0081】
長さ方向Lにおいて、第1領域AR1の長さと第3領域AR3の長さとは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0082】
電解コンデンサ1aでは、第1領域AR1及び第2領域AR2が1つずつ存在しているが、第1領域AR1は複数存在していてもよいし、第2領域AR2は複数存在していてもよい。例えば、厚み方向Tから見たとき、コンデンサ素子20と第1電極部分14とが幅方向Wに対向する領域には、長さ方向Lにおいて、樹脂成形体9の第2端面9bに向かって順に、第2領域AR2、第1領域AR1、及び、第2領域AR2が存在していてもよいし、第2領域AR2、第1領域AR1、第2領域AR2、及び、第1領域AR1が存在していてもよい。
【0083】
電解コンデンサ1aでは、第3領域AR3及び第4領域AR4が1つずつ存在しているが、第3領域AR3は複数存在していてもよいし、第4領域AR4は複数存在していてもよい。例えば、厚み方向Tから見たとき、コンデンサ素子20と第2電極部分15とが幅方向Wに対向する領域には、長さ方向Lにおいて、樹脂成形体9の第2端面9bに向かって順に、第4領域AR4、第3領域AR3、及び、第4領域AR4が存在していてもよいし、第4領域AR4、第3領域AR3、第4領域AR4、及び、第3領域AR3が存在していてもよい。
【0084】
本発明の電解コンデンサの製造方法は、表面に多孔質部を有する陽極と、上記多孔質部の表面上に設けられた誘電体層と、上記誘電体層を介して上記陽極に対向する陰極とを含むコンデンサ素子と、上記コンデンサ素子の周囲を封止する封止樹脂と、を有し、かつ、長さ方向に相対する第1端面及び第2端面と、上記長さ方向に直交する幅方向に相対する第1側面及び第2側面と、を有する樹脂成形体を形成する、樹脂成形体形成工程と、上記樹脂成形体の上記第1端面上に、上記第1端面から露出した上記陽極に接続された第1外部電極を形成する、第1外部電極形成工程と、上記樹脂成形体の上記第2端面から上記第1側面の一部にわたって延在するように、上記第2端面から露出した上記陰極に接続された第2外部電極を形成する、第2外部電極形成工程と、を備え、上記樹脂成形体形成工程では、上記長さ方向に延びる主部から上記幅方向に第1突出部が突出した形状を有し、かつ、表面に上記多孔質部を有する上記陽極に対して、上記多孔質部の表面上に上記誘電体層と上記陰極とを順に形成し、上記第2外部電極形成工程では、上記長さ方向及び上記幅方向に直交する厚み方向から見たとき、上記第1突出部に対応する上記コンデンサ素子の突出部に上記幅方向に対向する第1電極部分を、上記樹脂成形体の上記第1側面に接する位置で、上記長さ方向において最も上記樹脂成形体の上記第1端面側に位置する第1電極端部を有するように、上記樹脂成形体の上記第1側面上に形成しつつ、上記コンデンサ素子と上記第1電極部分とが上記幅方向に対向する領域に、上記コンデンサ素子と上記第1電極部分との上記幅方向における距離が、上記コンデンサ素子と上記第1電極端部との上記幅方向における距離よりも短い領域が存在するように、上記第2外部電極を形成する、ことを特徴とする。
【0085】
本発明の電解コンデンサの製造方法において、上記樹脂成形体形成工程では、上記主部から上記幅方向で上記第1突出部とは反対側に第2突出部も突出した形状を有する上記陽極を形成してもよく、上記第2外部電極形成工程では、上記厚み方向から見たとき、上記第2突出部に対応する上記コンデンサ素子の突出部に上記幅方向に対向する第2電極部分を、上記樹脂成形体の上記第2側面に接する位置で、上記長さ方向において最も上記樹脂成形体の上記第1端面側に位置する第2電極端部を有するように、上記樹脂成形体の上記第2側面上に形成しつつ、上記コンデンサ素子と上記第2電極部分とが上記幅方向に対向する領域に、上記コンデンサ素子と上記第2電極部分との上記幅方向における距離が、上記コンデンサ素子と上記第2電極端部との上記幅方向における距離よりも短い領域が存在するように、上記第2外部電極を形成してもよい。このような例を、本発明の実施形態1の電解コンデンサの製造方法、すなわち、
図1、
図2、及び、
図3に示した電解コンデンサ1aの製造方法として以下に説明する。
【0086】
<樹脂成形体形成工程>
図4、
図5、及び、
図6は、本発明の実施形態1の電解コンデンサの製造方法について、樹脂成形体形成工程の一例を示す平面模式図である。
【0087】
まず、表面に多孔質部3bを有する弁作用金属基体3aを準備する。そして、弁作用金属基体3aを、例えば、レーザー加工、金型加工等で加工することにより、
図4に示すような、長さ方向Lに延びる主部51から幅方向Wに第1突出部52aが突出し、更に、幅方向Wで第1突出部52aとは反対側に第2突出部52bも突出した形状を有し、かつ、表面に多孔質部3bを有する陽極3を形成する。主部51の幅方向Wにおける長さは、長さ方向Lに沿って一定である。
【0088】
次に、陽極3に対して陽極酸化処理を行うことにより、陽極3の多孔質部3bの表面上と、陽極3の切断面上とに誘電体層5を形成する。そして、誘電体層5の表面上に、固体電解質層7aを浸漬塗布法等により形成する。更に、固体電解質層7aの表面上に、導電層7bを浸漬塗布法等により形成する。このように、陽極3の多孔質部3bの表面上に、誘電体層5と、固体電解質層7a及び導電層7bを有する陰極7とを順に形成することにより、
図5に示すようなコンデンサ素子20を形成する。厚み方向Tから見たとき、コンデンサ素子20は、第1突出部52aに対応する突出部21aと、第2突出部52bに対応する突出部21bと、を有している。また、厚み方向Tから見たとき、陰極7の外縁は、陽極3の外縁に沿っている。
【0089】
次に、複数のコンデンサ素子20を積層した後、コンプレッションモールド等でコンデンサ素子20の積層体の周囲を封止樹脂8で封止することにより、
図6に示すような樹脂成形体9を形成する。樹脂成形体9を形成する際、陽極3が第1端面9aから露出し、陰極7が第2端面9bから露出するように、封止樹脂8で封止する。
【0090】
本工程では、樹脂成形体9を形成する際、複数のコンデンサ素子20が積層されたコンデンサ素子20の積層体の周囲を封止樹脂8で封止しているが、1つのコンデンサ素子20の周囲を封止樹脂8で封止してもよい。
【0091】
<第1外部電極形成工程>
図7は、本発明の実施形態1の電解コンデンサの製造方法について、第1外部電極形成工程の一例を示す平面模式図である。
図7に示すように、樹脂成形体9の第1端面9a上に、第1端面9aから露出した陽極3に接続された第1外部電極11を形成する。ここでは、
図1、
図2、及び、
図3に示すように、第1外部電極11を、樹脂成形体9の第1端面9aから、底面9c、上面9d、第1側面9e、及び、第2側面9fの各一部にわたって延在するように形成する。
【0092】
本工程では、浸漬塗布法、スクリーン印刷法、転写法、インクジェット印刷法、ディスペンス法、スプレーコート法、刷毛塗り法、ドロップキャスト法、静電塗装法、めっき法、及び、スパッタ法からなる群より選択される少なくとも1種の方法により、第1外部電極11を形成することが好ましい。この際、浸漬塗布法、スクリーン印刷法、転写法、インクジェット印刷法、ディスペンス法、スプレーコート法、刷毛塗り法、ドロップキャスト法、又は、静電塗装法により、導電成分と樹脂成分とを含む導電性ペーストを用いて、第1外部電極11、より具体的には、第1外部電極11としての樹脂電極層を形成することが好ましい。
【0093】
<第2外部電極形成工程>
図8は、本発明の実施形態1の電解コンデンサの製造方法について、第2外部電極形成工程の一例を示す平面模式図である。
図8に示すように、樹脂成形体9の第2端面9bから第1側面9eの一部にわたって延在するように、第2端面9bから露出した陰極7に接続された第2外部電極13を形成する。ここでは、
図1、
図2、及び、
図3に示すように、第2外部電極13を、樹脂成形体9の第2端面9bから、底面9c、上面9d、第1側面9e、及び、第2側面9fの各一部にわたって延在するように形成する。
【0094】
本工程では、第2外部電極13を形成する際、厚み方向Tから見たとき、第1突出部52aに対応するコンデンサ素子20の突出部21aに幅方向Wに対向する第1電極部分14を、樹脂成形体9の第1側面9e上に形成する。第1電極部分14は、樹脂成形体9の第1側面9eに接する位置で、長さ方向Lにおいて最も樹脂成形体9の第1端面9a側に位置する第1電極端部14aを有している。このように第1電極部分14を形成しつつ、コンデンサ素子20と第1電極部分14とが幅方向Wに対向する領域に、コンデンサ素子20と第1電極部分14との幅方向Wにおける距離W1が、コンデンサ素子20と第1電極端部14aとの幅方向Wにおける距離W2よりも短い領域、ここでは、第1領域AR1が存在するように、第2外部電極13を形成する。第1領域AR1において、コンデンサ素子20と第1電極部分14との幅方向Wにおける距離W1は、長さ方向Lに沿って一定である。
【0095】
また、コンデンサ素子20と第1電極部分14とが幅方向Wに対向する領域には、長さ方向Lにおいて、樹脂成形体9の第2端面9b側に位置する第1領域AR1に加えて、樹脂成形体9の第2端面9bとは反対側に位置しつつ、第1領域AR1に隣接し、かつ、第1電極端部14aを含む第2領域AR2が存在している。第2領域AR2において、コンデンサ素子20と第1電極部分14との幅方向Wにおける距離は、長さ方向Lに沿って一定、より具体的には、コンデンサ素子20と第1電極端部14aとの幅方向Wにおける距離W2と同じまま一定である。
【0096】
本工程では、第2外部電極13を形成する際、厚み方向Tから見たとき、第2突出部52bに対応するコンデンサ素子20の突出部21bに幅方向Wに対向する第2電極部分15を、樹脂成形体9の第2側面9f上に形成する。第2電極部分15は、樹脂成形体9の第2側面9fに接する位置で、長さ方向Lにおいて最も樹脂成形体9の第1端面9a側に位置する第2電極端部15aを有している。このように第2電極部分15を形成しつつ、コンデンサ素子20と第2電極部分15とが幅方向Wに対向する領域に、コンデンサ素子20と第2電極部分15との幅方向Wにおける距離W3が、コンデンサ素子20と第2電極端部15aとの幅方向Wにおける距離W4よりも短い領域、ここでは、第3領域AR3が存在するように、第2外部電極13を形成する。第3領域AR3において、コンデンサ素子20と第2電極部分15との幅方向Wにおける距離W3は、長さ方向Lに沿って一定である。
【0097】
また、コンデンサ素子20と第2電極部分15とが幅方向Wに対向する領域には、長さ方向Lにおいて、樹脂成形体9の第2端面9b側に位置する第3領域AR3に加えて、樹脂成形体9の第2端面9bとは反対側に位置しつつ、第3領域AR3に隣接し、かつ、第2電極端部15aを含む第4領域AR4が存在している。第4領域AR4において、コンデンサ素子20と第2電極部分15との幅方向Wにおける距離は、長さ方向Lに沿って一定、より具体的には、コンデンサ素子20と第2電極端部15aとの幅方向Wにおける距離W4と同じまま一定である。
【0098】
本工程では、浸漬塗布法、スクリーン印刷法、転写法、インクジェット印刷法、ディスペンス法、スプレーコート法、刷毛塗り法、ドロップキャスト法、静電塗装法、めっき法、及び、スパッタ法からなる群より選択される少なくとも1種の方法により、第2外部電極13を形成することが好ましい。この際、浸漬塗布法、スクリーン印刷法、転写法、インクジェット印刷法、ディスペンス法、スプレーコート法、刷毛塗り法、ドロップキャスト法、又は、静電塗装法により、導電成分と樹脂成分とを含む導電性ペーストを用いて、第2外部電極13、より具体的には、第2外部電極13としての樹脂電極層を形成することが好ましい。
【0099】
第1外部電極形成工程と第2外部電極形成工程とは、異なるタイミングで行われてもよいし、同じタイミングで行われてもよい。両工程が異なるタイミングで行われる場合、これらの順序は特に限定されない。
【0100】
以上により、
図1、
図2、及び、
図3に示した電解コンデンサ1aが製造される。
【0101】
[実施形態2]
本発明の電解コンデンサにおいて、上記陰極は、上記第1領域において、上記樹脂成形体の上記第1側面でも上記第2外部電極に接続されていてもよい。また、本発明の電解コンデンサにおいて、上記陰極は、上記第3領域において、上記樹脂成形体の上記第2側面でも上記第2外部電極に接続されていてもよい。このような例を、本発明の実施形態2の電解コンデンサとして以下に説明する。本発明の実施形態2の電解コンデンサは、陰極と第2外部電極との接続態様以外、本発明の実施形態1の電解コンデンサと同様である。
【0102】
図9は、本発明の実施形態2の電解コンデンサを示す断面模式図である。
図9に示した電解コンデンサ1bでは、コンデンサ素子20が、第1領域AR1において、樹脂成形体9の第1側面9eで、第2外部電極13、ここでは、第1電極部分14に接続されている。つまり、第1領域AR1において、コンデンサ素子20と第1電極部分14との幅方向Wにおける距離W1がゼロとなっている。ここで、コンデンサ素子20では、樹脂成形体9の第1側面9eで陰極7が露出しているため、陰極7は、第1領域AR1において、樹脂成形体9の第1側面9eで第2外部電極13に接続されている。これにより、コンデンサ素子20の有効領域が大きくなるため、静電容量が大きくなる。また、コンデンサ素子20、ここでは、陰極7と第2外部電極13との接触面積の増加により密着性が高まるため、信頼性が向上する。
【0103】
また、コンデンサ素子20は、第3領域AR3において、樹脂成形体9の第2側面9fで、第2外部電極13、ここでは、第2電極部分15に接続されている。つまり、第3領域AR3において、コンデンサ素子20と第2電極部分15との幅方向Wにおける距離W3がゼロとなっている。ここで、コンデンサ素子20では、樹脂成形体9の第2側面9fで陰極7が露出しているため、陰極7は、第3領域AR3において、樹脂成形体9の第2側面9fで第2外部電極13に接続されている。これにより、コンデンサ素子20の有効領域が大きくなるため、静電容量が大きくなる。また、コンデンサ素子20、ここでは、陰極7と第2外部電極13との接触面積の増加により密着性が高まるため、信頼性が向上する。
【0104】
以上のことから、陰極7は、樹脂成形体9の第2端面9bに加えて、第1側面9e及び第2側面9fの両方でも第2外部電極13に接続されている。これにより、電解コンデンサ1bでは、電解コンデンサ1aと比較して、コンデンサ素子20の有効領域が大幅に大きくなるため、静電容量が大幅に大きくなる。
【0105】
なお、陰極7は、樹脂成形体9の第2端面9bに加えて、第1側面9e及び第2側面9fの一方でも第2外部電極13に接続されていてもよい。すなわち、陰極7は、樹脂成形体9の第2端面9b及び第1側面9eで第2外部電極13に接続されていてもよいし、樹脂成形体9の第2端面9b及び第2側面9fで第2外部電極13に接続されていてもよい。
【0106】
本発明の実施形態2の電解コンデンサの製造方法、すなわち、
図9に示した電解コンデンサ1bの製造方法は、樹脂成形体形成工程で樹脂成形体を形成する際、陽極が第1端面から露出し、陰極が第2端面に加えて第1側面及び第2側面の両方でも露出するように、封止樹脂で封止すること以外、本発明の実施形態1の電解コンデンサの製造方法と同様である。
【0107】
[実施形態3]
本発明の電解コンデンサにおいて、上記コンデンサ素子と上記第1電極部分とが上記幅方向に対向する領域において、上記コンデンサ素子と上記第1電極部分との上記幅方向における距離は、上記長さ方向に沿って上記樹脂成形体の上記第2端面に向かうにつれて小さくなっていてもよい。また、本発明の電解コンデンサにおいて、上記コンデンサ素子と上記第2電極部分とが上記幅方向に対向する領域において、上記コンデンサ素子と上記第2電極部分との上記幅方向における距離は、上記長さ方向に沿って上記樹脂成形体の上記第2端面に向かうにつれて小さくなっていてもよい。このような例を、本発明の実施形態3の電解コンデンサとして以下に説明する。本発明の実施形態3の電解コンデンサは、コンデンサ素子の形状以外、本発明の実施形態2の電解コンデンサと同様である。
【0108】
図10は、本発明の実施形態3の電解コンデンサを示す断面模式図である。
図10に示した電解コンデンサ1cでは、コンデンサ素子20と第1電極部分14とが幅方向Wに対向する領域において、コンデンサ素子20と第1電極部分14との幅方向Wにおける距離W1が、長さ方向Lに沿って樹脂成形体9の第2端面9bに向かうにつれて小さくなっている。つまり、コンデンサ素子20と第1電極部分14とが幅方向Wに対向する領域には、第1領域AR1のみが存在している。これにより、コンデンサ素子20の有効領域が大きくなるため、静電容量が大きくなる。
【0109】
コンデンサ素子20と第1電極部分14とが幅方向Wに対向する領域では、コンデンサ素子20と第1電極部分14との幅方向Wにおける距離W1が、長さ方向Lに沿って樹脂成形体9の第2端面9bに向かうにつれて小さくなっていればよい。このような態様には、コンデンサ素子20と第1電極部分14との幅方向Wにおける距離W1が、長さ方向Lに沿って樹脂成形体9の第2端面9bに向かうにつれて小さくなる過程で途中からゼロになる、
図10に示すような態様が含まれる。コンデンサ素子20と第1電極部分14との幅方向Wにおける距離W1がゼロになると、コンデンサ素子20、ここでは、陰極7が、樹脂成形体9の第2端面9bに加えて第1側面9eでも第2外部電極13に接続されることになる。この場合、コンデンサ素子20、ここでは、陰極7と第2外部電極13との接触面積の増加により密着性が高まるため、信頼性が向上する。
【0110】
なお、コンデンサ素子20と第1電極部分14との幅方向Wにおける距離W1は、長さ方向Lに沿って樹脂成形体9の第2端面9bに向かうにつれて小さくなり続けていてもよい。
【0111】
コンデンサ素子20と第1電極部分14との幅方向Wにおける距離W1は、長さ方向Lに沿って樹脂成形体9の第2端面9bに向かうにつれて、一次関数的に小さくなっていてもよい。この場合、第1領域AR1におけるコンデンサ素子20の外縁は、
図10に示すように、直線で構成される。
【0112】
コンデンサ素子20と第1電極部分14との幅方向Wにおける距離W1は、長さ方向Lに沿って樹脂成形体9の第2端面9bに向かうにつれて、指数関数的に小さくなっていてもよいし、対数関数的に小さくなっていてもよい。この場合、第1領域AR1におけるコンデンサ素子20の外縁は、曲線で構成される。また、第1領域AR1におけるコンデンサ素子20の外縁は、指数関数及び対数関数以外の特定の関数で表される曲線で構成されていてもよいし、特定の関数で表せない曲線で構成されていてもよい。
【0113】
また、コンデンサ素子20と第2電極部分15とが幅方向Wに対向する領域において、コンデンサ素子20と第2電極部分15との幅方向Wにおける距離W3が、長さ方向Lに沿って樹脂成形体9の第2端面9bに向かうにつれて小さくなっている。つまり、コンデンサ素子20と第2電極部分15とが幅方向Wに対向する領域には、第3領域AR3のみが存在している。これにより、コンデンサ素子20の有効領域が大きくなるため、静電容量が大きくなる。
【0114】
コンデンサ素子20と第2電極部分15とが幅方向Wに対向する領域では、コンデンサ素子20と第2電極部分15との幅方向Wにおける距離W3が、長さ方向Lに沿って樹脂成形体9の第2端面9bに向かうにつれて小さくなっていればよい。このような態様には、コンデンサ素子20と第2電極部分15との幅方向Wにおける距離W3が、長さ方向Lに沿って樹脂成形体9の第2端面9bに向かうにつれて小さくなる過程で途中からゼロになる、
図10に示すような態様が含まれる。コンデンサ素子20と第2電極部分15との幅方向Wにおける距離W3がゼロになると、コンデンサ素子20、ここでは、陰極7が、樹脂成形体9の第2端面9bに加えて第2側面9fでも第2外部電極13に接続されることになる。この場合、コンデンサ素子20、ここでは、陰極7と第2外部電極13との接触面積の増加により密着性が高まるため、信頼性が向上する。
【0115】
なお、コンデンサ素子20と第2電極部分15との幅方向Wにおける距離W3は、長さ方向Lに沿って樹脂成形体9の第2端面9bに向かうにつれて小さくなり続けていてもよい。
【0116】
コンデンサ素子20と第2電極部分15との幅方向Wにおける距離W3は、長さ方向Lに沿って樹脂成形体9の第2端面9bに向かうにつれて、一次関数的に小さくなっていてもよい。この場合、第3領域AR3におけるコンデンサ素子20の外縁は、
図10に示すように、直線で構成される。
【0117】
コンデンサ素子20と第2電極部分15との幅方向Wにおける距離W3は、長さ方向Lに沿って樹脂成形体9の第2端面9bに向かうにつれて、指数関数的に小さくなっていてもよいし、対数関数的に小さくなっていてもよい。この場合、第3領域AR3におけるコンデンサ素子20の外縁は、曲線で構成される。また、第3領域AR3におけるコンデンサ素子20の外縁は、指数関数及び対数関数以外の特定の関数で表される曲線で構成されていてもよいし、特定の関数で表せない曲線で構成されていてもよい。
【0118】
電解コンデンサ1cでは、コンデンサ素子20、ここでは、陰極7が、樹脂成形体9の第2端面9bに加えて、第1側面9e及び第2側面9fの両方でも第2外部電極13に接続されているが、第1側面9e及び第2側面9fの両方で第2外部電極13に接続されていなくてもよい。すなわち、陰極7は、電解コンデンサ1aと同様に、樹脂成形体9の第2端面9bのみで第2外部電極13に接続されていてもよいし、樹脂成形体9の第2端面9b及び第1側面9eで第2外部電極13に接続されていてもよいし、樹脂成形体9の第2端面9b及び第2側面9fで第2外部電極13に接続されていてもよい。
【0119】
本発明の実施形態3の電解コンデンサの製造方法、すなわち、
図10に示した電解コンデンサ1cの製造方法は、樹脂成形体形成工程において、第1突出部及び第2突出部の形状が、各々、
図10に示した突出部及び突出部の形状と同じになるように陽極を形成すること以外、本発明の実施形態2の電解コンデンサの製造方法と同様である。
【実施例】
【0120】
以下、本発明の電解コンデンサをより具体的に開示した実施例を示す。以下の実施例では、本発明の電解コンデンサとして固体電解コンデンサを示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0121】
[実施例1]
実施例1の固体電解コンデンサを、以下の方法で製造した。
【0122】
<樹脂成形体形成工程>
まず、弁作用金属基体としてのアルミニウム箔を中心に有し、多孔質部としてのエッチング層を表面に有するアルミニウム化成箔を準備した。次に、そのアルミニウム化成箔をレーザー加工で切断することにより、
図4に示した構成を有する陽極を形成した。
【0123】
次に、陽極をアジピン酸アンモニウム水溶液に浸漬して陽極酸化処理を行うことにより、陽極の切断面上に誘電体層を形成した。そして、得られた構造物をポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)の水分散体に浸漬した後、乾燥することにより、誘電体層の表面上に固体電解質層を形成した。更に、得られた構造物をカーボンペーストに浸漬した後、銀ペーストに浸漬することにより、固体電解質層の表面上に、カーボン層及び銀層が順に積層された導電層を形成した。これらにより、
図5に示した構成を有するコンデンサ素子を形成した。
【0124】
次に、複数のコンデンサ素子を積層した後、コンデンサ素子の積層体の周囲を、エポキシ樹脂及びシリカ粒子を含む封止樹脂で封止することにより、
図9に示した構成を有する樹脂成形体を形成した。
【0125】
<第1外部電極形成工程>
樹脂成形体を銀ペーストに浸漬することにより、第1外部電極を、樹脂成形体の第1端面から、底面、上面、第1側面、及び、第2側面の各一部にわたって延在するように形成した。
【0126】
<第2外部電極形成工程>
樹脂成形体を銀ペーストに浸漬することにより、第2外部電極を、樹脂成形体の第2端面から、底面、上面、第1側面、及び、第2側面の各一部にわたって延在するように形成した。この際、第2外部電極を、
図9に示した構成の第1電極部分及び第2電極部分を有するように形成した。
【0127】
以上により、
図9に示した構成を有する実施例1の固体電解コンデンサを製造した。
【0128】
[比較例1]
図11は、比較例1の固体電解コンデンサを示す断面模式図である。樹脂成形体形成工程において、陽極の幅方向における長さが長さ方向に沿って一定となるようにアルミニウム化成箔を切断したこと以外、実施例1の固体電解コンデンサと同様にして、比較例1の固体電解コンデンサを製造した。つまり、
図11に示すように、比較例1の固体電解コンデンサ101aでは、厚み方向Tから見たとき、コンデンサ素子20と第1電極部分14とが幅方向Wに対向する領域において、コンデンサ素子20と第1電極部分14との幅方向Wにおける距離W1が、長さ方向Lに沿って一定、より具体的には、コンデンサ素子20と第1電極端部14aとの幅方向Wにおける距離W2と同じまま一定であった。また、コンデンサ素子20と第2電極部分15とが幅方向Wに対向する領域において、コンデンサ素子20と第2電極部分15との幅方向Wにおける距離W3が、長さ方向Lに沿って一定、より具体的には、コンデンサ素子20と第2電極端部15aとの幅方向Wにおける距離W4と同じまま一定であった。
【0129】
[比較例2]
図12は、比較例2の固体電解コンデンサを示す断面模式図である。第1外部電極形成工程において第1外部電極を樹脂成形体の第1端面上のみに形成し、第2外部電極形成工程において第2外部電極を樹脂成形体の第2端面上のみに形成したこと以外、実施例1の固体電解コンデンサと同様にして、比較例2の固体電解コンデンサを製造した。つまり、
図12に示すように、比較例2の固体電解コンデンサ101bでは、コンデンサ素子20、ここでは、陰極7が樹脂成形体9の第1側面9e及び第2側面9fから露出していた。
【0130】
[評価]
実施例1、比較例1、及び、比較例2の固体電解コンデンサについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0131】
<静電容量>
各例の固体電解コンデンサについて、静電容量を測定した。
【0132】
<高温試験>
各例の固体電解コンデンサに対して、温度105℃の環境下で1000時間放置する高温試験を行った。そして、高温試験によるESR(等価直列抵抗)の変化を、「高温試験後でのESR」/「高温試験前でのESR」として測定した。
【0133】
<高湿試験>
各例の固体電解コンデンサに対して、温度60℃、湿度93%の環境下で1000時間放置する高湿試験を行った。そして、高湿試験によるESRの変化を、「高湿試験後でのESR」/「高湿試験前でのESR」として測定した。
【0134】
【0135】
表1に示すように、実施例1の固体電解コンデンサでは、比較例1の固体電解コンデンサと比較して、高温試験及び高湿試験の各試験によるESRの変化が同等であったものの、静電容量が大きくなった。
【0136】
表1に示すように、実施例1の固体電解コンデンサでは、比較例2の固体電解コンデンサと比較して、静電容量が同等であったものの、高温試験及び高湿試験の各試験によるESRの変化が小さかった。つまり、実施例1の固体電解コンデンサでは、高温環境及び高湿環境といった外部環境からの影響が抑制されつつ、陰極と第2外部電極との密着性が高いと言え、信頼性に優れていることが分かった。
【0137】
以上より、実施例1の固体電解コンデンサでは、信頼性を確保しつつ大容量化を実現できることが分かった。
【符号の説明】
【0138】
1a、1b、1c 電解コンデンサ
3 陽極
3a 弁作用金属基体
3b 多孔質部
5 誘電体層
7 陰極
7a 固体電解質層
7b 導電層
8 封止樹脂
9 樹脂成形体
9a 樹脂成形体の第1端面
9b 樹脂成形体の第2端面
9c 樹脂成形体の底面
9d 樹脂成形体の上面
9e 樹脂成形体の第1側面
9f 樹脂成形体の第2側面
11 第1外部電極
13 第2外部電極
14 第1電極部分
14a 第1電極端部
15 第2電極部分
15a 第2電極端部
20 コンデンサ素子
21a、21b 突出部
30 積層体
51 主部
52a 第1突出部
52b 第2突出部
101a、101b 固体電解コンデンサ
AR1 第1領域
AR2 第2領域
AR3 第3領域
AR4 第4領域
L 長さ方向
T 厚み方向
W 幅方向
W1 コンデンサ素子と第1電極部分との幅方向における距離
W2 コンデンサ素子と第1電極端部との幅方向における距離
W3 コンデンサ素子と第2電極部分との幅方向における距離
W4 コンデンサ素子と第2電極端部との幅方向における距離
Wa コンデンサ素子と第2外部電極とが幅方向に対向する領域でのコンデンサ素子の幅方向における最大長さ
Wb コンデンサ素子と第2外部電極とが幅方向に対向しない領域でのコンデンサ素子の幅方向における最大長さ