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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】車両状態表示装置及び車両状態表示方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20231212BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20231212BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20231212BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20231212BHJP
【FI】
B60L3/00 S
B60K35/00 Z
B60L50/60
B60L58/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022517679
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(86)【国際出願番号】 JP2021016231
(87)【国際公開番号】W WO2021220921
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2020078922
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177460
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】冨田 祐一
(72)【発明者】
【氏名】上平 真
(72)【発明者】
【氏名】椎野 陽広
(72)【発明者】
【氏名】阿部 雅子
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-023810(JP,A)
【文献】特開2017-175864(JP,A)
【文献】特開2011-182563(JP,A)
【文献】特開2017-114315(JP,A)
【文献】特開2014-080148(JP,A)
【文献】特開2015-118789(JP,A)
【文献】特開2012-147592(JP,A)
【文献】特開2011-057116(JP,A)
【文献】特開2018-052330(JP,A)
【文献】特開2009-083671(JP,A)
【文献】特開2007-151209(JP,A)
【文献】特開2006-233760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動輪を駆動する駆動用モータと、前記駆動用モータで用いる電力を蓄積するバッテリとを備える車両の車両状態表示装置であって、
前記バッテリの充電率が第1の値以下となった際に前記車両の出力を制限する出力制限部と、
ディスプレイに前記バッテリの状態を表示するバッテリ状態表示部と、を備え、
前記バッテリ状態表示部は、記バッテリの充電率が記第1の値を超えており前記車両の出力制限が実施される可能性があることを示す第2の表示形態と、前記バッテリの充電率が前記第1の値以下であり前記車両が出力制限中であることを示す第3の表示形態とを切り替えて表示し、
前記バッテリ状態表示部は、インジケーター表示と出力制限表示とを並べて表示し、
前記インジケーター表示は、前記バッテリの現在の充電率と前記第1の値との差分を示し、前記第2の表示形態おいて、前記充電率の減少に伴い前記出力制限表示の遠い側から近い側へ示が変化し、
前記出力制限表示は、出力制限の実施の有無を示し、前記第3の表示形態の表示と前記第2の表示形態の表示とが異なる
ことを特徴とする車両状態表示装置。
【請求項2】
前記バッテリ状態表示部は、前記第2の表示形態の表示開始後に前記バッテリの充電率が前記第1の値よりも大きい第2の値を超えた場合には、表示を前記第2の表示形態から前記バッテリの充電率が前記第2の値を超えていることを示す第1の表示形態に切り替える、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両状態表示装置。
【請求項3】
前記出力制限部は、前記バッテリの温度が出力制限温度を超えた場合に前記車両の出力を制限し、
前記バッテリ状態表示部は、前記バッテリの充電率に関わらず前記第3の表示形態を表示する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両状態表示装置。
【請求項4】
前記第3の表示形態における前記出力制限表示は、前記第2の表示形態における前記出力制限表示よりも彩度の高い色調で表示される、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両状態表示装置。
【請求項5】
車両の駆動輪を駆動する駆動用モータと、前記駆動用モータで用いる電力を蓄積するバッテリとを備える車両の車両状態を表示する車両状態表示方法であって、
前記バッテリの充電率が第1の値以下となった際に前記車両の出力を制限する制限ステップと、
ディスプレイに前記バッテリの状態を表示する表示ステップと、
を備え、
前記表示ステップにおいて、記バッテリの充電率が記第1の値を超えており前記車両の出力制限が実施される可能性があることを示す第2の表示形態と、前記バッテリの充電率が前記第1の値以下であり前記車両が出力制限中であることを示す第3の表示形態とを切り替えて表示し、
前記ディスプレイにおいて、インジケーター表示と出力制限表示とが並べて表示され、
前記インジケーター表示は、前記バッテリの現在の充電率と前記第1の値との差分を示し、前記第2の表示形態おいて、前記充電率の減少に伴い前記出力制限表示の遠い側から近い側へ示が変化し、
前記出力制限表示は、出力制限の実施を示し、前記第3の表示形態の表示と前記第2の表示形態の表示とが異なる
ことを特徴とする車両状態表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の状態を表示する車両状態表示装置及び車両状態表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動力の少なくとも一部に電力を用いて走行する電動車両において、電力を蓄積するバッテリの充電率が小さくなった際に車両の出力を制限するとともに、出力制限が行われている旨をユーザに通知する技術が知られている。
例えば下記特許文献1は、バッテリと走行用モータとインバータと警告表示装置とを備え、バッテリの電力によって走行用モータを駆動して走行する電動自動車であって、走行用モータの要求電力またはバッテリの出力電力を制限し、警告表示装置の表示を入り切りする制御部を備え、制御部は、バッテリの残存容量(SOC:State Of Charge)が所定の容量よりも少ない場合には、走行用モータの要求電力を制限する要求電力制限手段と、バッテリの残存容量(SOC)が所定の容量を超える場合には、バッテリの出力特性に応じてバッテリの出力電力を制限する出力電圧制限手段と、走行用モータの要求電力の制限又はバッテリの出力制限が行われている場合に、制限状態を警告表示装置に表示する警告表示手段と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特許第5730588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の出力制限が開始されると、例えばアクセルペダルを踏みこんでも通常通りの加速ができないなど、運転フィーリングが通常時と大きく異なる。上述した関連技術では、バッテリの充電率が閾値より小さくなると出力制限が突然開始されることとなるため、ユーザを困惑させる可能性がある。また、関連技術では出力制限が予告なく開始されるため、ユーザが出力制限を回避するための運転動作を行いにくいという課題がある。
本開示は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、車両の出力制限に伴う不都合を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本開示にかかる車両状態表示装置は、車両の駆動輪を駆動する駆動用モータと、前記駆動用モータで用いる電力を蓄積するバッテリとを備える車両の車両状態表示装置であって、前記バッテリの充電率が第1の値以下となった際に前記車両の出力を制限する出力制限部と、ディスプレイに前記バッテリの状態を表示するバッテリ状態表示部と、を備え、前記バッテリ状態表示部は、前記バッテリの充電率が前記第1の値よりも大きい第2の値を超えていることを示す第1の表示形態と、前記バッテリの充電率が前記第2の値以下かつ前記第1の値を超えており前記車両の出力制限が実施される可能性があることを示す第2の表示形態と、前記バッテリの充電率が前記第1の値以下であり前記車両が出力制限中であることを示す第3の表示形態とを切り替えて表示する。
【0006】
また、本開示にかかる車両状態表示方法は、車両の駆動輪を駆動する駆動用モータと、前記駆動用モータで用いる電力を蓄積するバッテリとを備える車両の車両状態を表示する車両状態表示方法であって、前記バッテリの充電率が第1の値以下となった際に前記車両の出力を制限するステップと、ディスプレイに前記バッテリの状態を表示するステップと、を備え、前記表示ステップにおいて、前記バッテリの充電率が前記第1の値よりも大きい第2の値を超えていることを示す第1の表示形態と、前記バッテリの充電率が前記第2の値以下かつ前記第1の値を超えており前記車両の出力制限が実施される可能性があることを示す第2の表示形態と、前記バッテリの充電率が前記第1の値以下であり前記車両が出力制限中であることを示す第3の表示形態とを切り替えて表示する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、バッテリの充電率低下に伴う出力制限が開始される前に予告表示(第2の表示形態の表示)を行うので、出力制限が実施される可能性をユーザに報知することができ、ユーザの利便性を向上させる上で有利となる。また、予告表示を見たユーザが出力制限回避のための運転動作を積極的に行うことができるので、出力制限が実施される頻度を低減することができ、バッテリの劣化を防止する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態にかかる車両状態表示装置を搭載した車両の構成を示す図である。
図2図2は、ディスプレイの設置態様の一例を示す図である。
図3図3の(A)から(G)は、バッテリ状態表示部による表示の一例を示す図である。
図4図4は、バッテリ状態表示部による表示内容とバッテリの充電率との関係を示す図である。
図5図5は、車両状態表示装置による処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、本開示にかかる車両状態表示装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
図1は、実施の形態にかかる車両状態表示装置を搭載した車両の構成を示す図である。
車両12は、駆動輪を駆動する駆動用モータと、駆動用モータで用いる電力を蓄積するバッテリとを少なくとも備える電動車両である。本実施の形態では、車両状態表示装置が搭載される車両(電動車両)の一例として、エンジンとモータとを備えるハイブリッド車両を例にして説明する。
なお、車両状態表示装置が搭載される車両はハイブリッド車両に限らず、バッテリとモータのみを備えた電気自動車であってもよい。また、本実施の形態では、車両に搭載されたエンジンとして、ガソリンを燃料に用いるガソリンエンジンを例にして説明するが、軽油を燃料に用いるディーゼルエンジンを用いたディーゼルハイブリッド車両であってもよい。
【0010】
図1に示すように、車両12は、走行システム20と、発電システム30と、ECU70とを備えている。
走行システム20は、車両12の駆動機構であり、前輪21および後輪22と、駆動用モータ23と、インバータ24と、エンジン25と、駆動用モータ23の出力軸23Aの回転とエンジン25の出力軸25Aの回転とを前輪21に伝達する伝達機構26と、燃料タンク40と、バッテリ50とを備えている。
【0011】
前輪21および後輪22は、それぞれ車幅方向で対となった2つの車輪で構成されている。本実施の形態では、前輪21が駆動用モータ23およびエンジン25の駆動輪となっている。例えば前輪21および後輪22のそれぞれに対して駆動用モータ23(前輪駆動用モータおよび後輪駆動用モータ)を設けるようにしてもよい。
駆動用モータ23は、バッテリ50に蓄積された電力を用いて駆動し、出力軸23Aから回転力(トルク)を出力する。なお、駆動用モータ23は、車両12の減速時(アクセルペダルの戻し時など)に回生運転を行い回生発電することも可能である。回生発電により発生した電力はインバータ24を介してバッテリ50に供給され、バッテリ50を充電する。
【0012】
インバータ24は、バッテリ50の電力をユーザ(運転者)の要求に基づいて調整して駆動用モータ23に供給する。ユーザの要求とは、一例として、アクセルペダルやブレーキペダル、シフトレバー(図示なし)等の操作や車速センサによって計測された車速などであり、後述するECU70が算出する。ECU70は、算出したユーザからの要求の出力値に基づいてインバータ24を制御する。
【0013】
エンジン25は、燃料タンク40から供給される燃料を燃焼室内で燃焼することによって駆動する。本実施の形態では、エンジン25は、ガソリンを燃料とするレシプロエンジンである。エンジン25の駆動は、後述するECU70によって制御される。
【0014】
伝達機構26は、駆動用モータ23の出力軸23Aの回転を前輪21に伝達するとともに、エンジン25の出力軸25Aの回転を前輪21に伝達する。伝達機構26は、クラッチ装置27を備えている。クラッチ装置27は、一対のクラッチ板27A,27Bを互いに接触可能とさせ、かつ、接触状態を解除可能とする駆動部27Cを備えている。
【0015】
クラッチ板27Aは、エンジン25の出力軸25Aと一体に回転する。クラッチ板27Bは、駆動用モータ23の出力軸23Aと一体に回転する。駆動部27Cによってクラッチ板27A,27Bどうしが互いに接触すると、クラッチ板27A,27Bは互いに一体に回転する。このことによって、エンジン25の出力軸25Aの回転が前輪21に伝達される。駆動部27Cによってクラッチ板27A,27Bが互いに離れた状態になると、エンジン25の出力軸25Aの回転は前輪21に伝達されなくなる。駆動部27Cは、後述するECU70によって制御される。
【0016】
燃料タンク40は、エンジン25の動力源である燃料(本実施の形態ではガソリン)を貯留する。
バッテリ50は、駆動用モータ23の動力源である電力を蓄積する。バッテリ50の充電は、後述するジェネレータ31による発電、駆動用モータ23による回生発電、および車両12の車体に設けられた充電コネクタ(図示なし)を介した外部電源からの電力の供給等によって行うことができる。
バッテリ50にはBMU(Battery Management Unit)50Aが接続されている。BMU50Aは、バッテリ50の電圧や温度、入出力される電流等を検出し、充電率(SOC:State Of Charge)を含むバッテリ50の状態を検出する。BMU50Aは、バッテリ50の状態(充電率やバッテリ電圧、バッテリ温度等)をECU70に送信する。
【0017】
発電システム30は、バッテリ50を充電するための機構であり、エンジン25と、ジェネレータ31と、インバータ24とを備えている。
【0018】
ジェネレータ31の回転軸31Aには、第2の伝達機構32を介してエンジン25の出力軸25Aの回転が伝達される。ジェネレータ31は、ECU70の制御によって発電可能な状態になると、エンジン25の出力軸25Aの回転を受けて回転軸31Aが回転し、発電する。ジェネレータ31は、インバータ24に接続されており、ジェネレータ31が発電した交流電力はインバータ24によって直流電力に変換されてバッテリ50に充電される。
また、後述するシリーズ走行モードでは、ジェネレータ31が発電した交流電力がそのまま駆動用モータ23の駆動に用いられる。この場合、ジェネレータ31の発電電力はインバータ24で適宜周波数が変換された上で駆動用モータ23に供給される。
【0019】
ジェネレータ31は、エンジン25を始動する際の電動機(スタータ)としても機能する。ECU70は、エンジン25を始動するときは、インバータ24を制御してジェネレータ31を駆動する。ジェネレータ31が駆動することによって回転軸31Aが回転する。回転軸31Aは第2の伝達機構32を介してエンジン25の出力軸25Aに連結されているので、ジェネレータ31が駆動されて回転軸31Aが回転すると、エンジン25の出力軸25Aを回転することができる。
【0020】
ディスプレイ60は、車室内で運転中のユーザが視認可能な箇所に設けられ、各種の情報を表示する。ディスプレイ60は、例えば図2に示すように、車両12のインストゥルメントパネル62内に設けられている。また、後述するバッテリ状態表示部704は、ディスプレイ60の一部領域(図2中の点線枠内)を用いてバッテリ状態の表示を行うものとする。
なお、ディスプレイ60は、例えばヘッドアップディスプレイのように車両のフロントガラスを利用するものであってもよい。ディスプレイ60の表示内容は後述するECU70のバッテリ状態表示部704により制御される。
【0021】
ECU70は、車両12全体を制御する車両制御装置として機能するとともに、車両12の状態をディスプレイ60に表示させる車両状態表示装置10として機能する。
ECU70は、CPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成される。
ECU70は、上記CPUが上記制御プログラムを実行することにより、駆動制御部700、出力制限部702、バッテリ状態表示部704を実現する。
【0022】
駆動制御部700は、図示しない各種操作部を介して入力されるユーザからの設定やバッテリ50の充電率等に基づいて、車両12の各部、例えば駆動用モータ23、エンジン25、ジェネレータ31、クラッチ装置27の駆動部27C等を制御する。
駆動制御部700は、車両12の3つの走行モード、すなわちA.EV(Electric Vehicle)走行モード、B.シリーズ走行モード、C.パラレル走行モードの3種類を適宜切り替えて車両12を駆動する。
【0023】
以下、3つの走行モードについて説明する。
A.EV走行モード
エンジン25は停止し、駆動用モータ23の駆動力で車軸を回転させて走行するモードである。EV走行モードで駆動用モータ23に供給される電力は、バッテリ50に蓄積された蓄積電力のみである。
【0024】
B.シリーズ走行モード
エンジン25でジェネレータ31を駆動して発電しながら、駆動用モータ23の駆動力で車軸を回転させて走行するモードである。シリーズ走行モードで駆動用モータ23に供給される電力は、バッテリ50に蓄積された蓄積電力およびジェネレータ31で発電された発電電力となる。
シリーズ走行モードには、例えばEV走行モード中にバッテリ50の充電率が所定値(以下、「発電開始充電率」という)以下に低下した場合に移行する。すなわち、バッテリ50の充電率が発電開始充電率以下となった場合、ジェネレータ31による強制発電が実施される。また、EV走行モード中、低~中速時に要求出力が所定値以上となった場合(アクセルが踏み込まれた場合など)にも、バッテリ50からの電力に加えジェネレータ31で発電された電力を駆動用モータ23に供給するために、シリーズモードに移行する。
【0025】
C.パラレル走行モード
エンジン25の駆動力および駆動用モータ23の駆動力で車軸を回転させて走行するモードである。
特に、高速走行時等、エンジン25による車軸駆動の効率が高い場合にパラレル走行モードに移行する。車軸の駆動は主にエンジン25で行われ、加速時等に駆動用モータ23がアシストする。パラレル走行モード時にも、エンジン25の駆動力をジェネレータ31に伝達して発電を行う(すなわち、エンジン25の駆動力を走行と発電とに振り分ける)ことが可能である。
【0026】
出力制限部702は、バッテリ50の充電率が第1の値以下となった際に車両12の出力を制限する。例えば、急な勾配を有する坂道を走行するなどの高負荷状態において、車両の走行に必要な出力がエンジン25の最大出力を上回ると、エンジン25だけでは走行に必要な出力を賄えないため、当該出力がバッテリ50から補われる。すなわち、バッテリ50の放電が実施される。こうした高負荷状態が継続されると、バッテリ50の充電率が低下していき、最終的にはバッテリ50の劣化の要因となり得る過放電が生じる可能性がある。出力制限部702は、このような過放電を防止するため、車両の出力制限を実施する。
以下本実施の形態では、上記充電率の「第1の値」を「出力制限充電率」という。なお、本実施の形態では出力制限充電率<発電開始充電率であるものする。
【0027】
バッテリ状態表示部704は、ディスプレイ60にバッテリ50の状態を表示する。本実施の形態では、バッテリ状態表示部704は、主に車両12が出力制限状態にあるか否か、および出力制限が開始されるまでの充電率の猶予を表示する。
すなわち、バッテリ状態表示部704は、バッテリ50の充電率が上記第1の値(出力制限充電率)よりも大きい第2の値を超えていることを示す第1の表示形態と、バッテリ50の充電率が第2の充電率以下かつ第1の充電率を超えており車両12の出力制限が実施される可能性があること(前記車両の出力制限が実施されるまでの猶予)を示す第2の表示形態と、バッテリ50の充電率が第1の充電率以下であり車両12が出力制限中であることを示す第3の表示形態とを切り替えて表示する。
以下本実施の形態では、上記充電率の「第2の値」を「予告開始充電率」という。
【0028】
図3の(A)から(G)は、バッテリ状態表示部による表示の一例を示す図である。
予め、バッテリ50の充電率に対して出力制限充電率より大きい値の予告開始充電率が設定されている(予告開始充電率>出力制限充電率)。そして、バッテリ50の充電率が予告開始充電率を超えている間には(現在の充電率>予告開始充電率)、図3の(A)に示す通常表示(第1の表示形態)をディスプレイ60に表示する。本実施の形態では、通常表示は車両12の継続走行距離を表示するものとする。
【0029】
バッテリ50の充電率が予告開始充電率以下になると(現在の充電率≦予告開始充電率)、バッテリ状態表示部704は、図3の(B)から図3の(F)に示す予告表示(第2の表示形態)をディスプレイ60に表示する(通常表示を予告表示に切り替える)。
予告表示は、出力制限が開始される可能性がある旨を報知するメッセージ表示M(「まもなく出力制限が開始されます」)と、出力制限が開始されるまでの充電率の猶予を示すインジケーター表示Iを含んでいる。なお、左端の亀マークは、出力制限の実施の有無を示す出力制限表示Tであり、予告表示中(出力制限の非実施時)は例えば無彩色など、予告表示よりも目立たないように表示される。
【0030】
図3の例では、インジケーター表示Iは4つの領域に分割されており、各領域は有彩色または無彩色で表示される。有彩色で表示された領域の数が多いほど出力制限が開始されるまでの充電率の猶予(残存電力量)が大きく、有彩色で表示された領域の数が少ないほど出力制限が開始されるまでの充電率の猶予が小さいことを示す。
すなわち、第2の表示形態は、バッテリ50の現在の充電率と第1の値(出力制限充電率)との差分を示すインジケーター表示Iを含む。
なお、本実施の形態のようにインジケーター表示Iを複数の領域に分割するのではなく、例えば棒グラフの長さが連続的に変化するような表示態様であってもよい。また、インジケーター表示の分割数は4つに限らず、2以上の任意の数とすることができる。
【0031】
例えば、図3の(B)では4つの領域のすべてが有彩色で表示されており、出力制限が開始されるまでの猶予が相対的に大きいことを示す。車両12がそのままの状態(走行速度や登板、けん引の有無等)で走行を継続するとバッテリ50の充電率が下がっていき、図3の(C)(有彩色3、無彩色1)、図3の(D)(有彩色2、無彩色2)、図3の(E)(有彩色1、無彩色3)、図3の(F)(有彩色0、無彩色4)の順に表示が切り替わっていく。この時、出力制限表示Tから遠い側の有彩色領域から順に減少させていく(無彩色に切り替えていく)。これにより、出力制限が開始されるまでの猶予が徐々に小さくなっていくことを視覚的に表すことができる。
【0032】
本実施の形態では、例えばディスプレイ60の背景色を黒とし、インジケーター表示Iの有彩色として青、無彩色として灰色を採用する。また、予告表示中における出力制限表示Tは白とする。
【0033】
なお、予告表示中に例えばユーザが車両12を減速または停車させるなどの対策を講じることによりバッテリ50の充電率が回復すれば、バッテリ状態表示部704は、インジケーター表示Iの有彩色領域を増加させていき、バッテリ50の充電率が予告表示開始充電率を超えた場合には、通常表示に戻す。
すなわち、バッテリ状態表示部704は、第2の表示形態の表示開始後にバッテリ50の充電率が第2の値(予告開始充電率)を超えた場合には、表示を第1の表示形態に切り替える。
【0034】
そして、バッテリ50の充電率が出力制限充電率未満になると、出力制限部702による出力制限が開始され、バッテリ状態表示部704は、図3の(G)に示す出力制限表示(第3の表示形態)を表示する。
出力制限中における出力制限表示Tは、予告表示中における表示色である白から、有彩色、例えば橙色に切り替わる。
すなわち、第2の表示形態および第3の表示形態は、出力制限の実施の有無を示す出力制限表示Tを含み、第3の表示形態における出力制限表示Tは、第2の表示形態における出力制限表示Tよりも彩度の高い色調で表示される。
これにより、出力制限が開始されたことを視覚的に表すことができる。
【0035】
図4は、バッテリ状態表示部による表示内容とバッテリの充電率との関係を示す図である。
図4の例では、出力制限充電率を14.5%、予告開始充電率を20.0%としている。また、充電率0.5%刻みで予告表示のインジケーター表示Iを切り替えるものとしているので、図3の例よりも細かく表示が切り替わる。
バッテリ50の充電率が予告開始充電率である20.0%を超えている場合、バッテリ状態表示部704は、図3の(A)に例示する通常表示をディスプレイ60に表示する。
【0036】
バッテリ50の充電率が20.0%以下になると、バッテリ状態表示部704は、ディスプレイ60の表示を予告表示に変更する。図4の例では、インジケーター表示Iは充電率0.5%刻みにn個の領域に分割されており、充電率が0.5%変動するごとに有彩色の表示領域の数が変動する。
そして、バッテリ50の充電率が出力開始充電率である14.5%以下になると、バッテリ状態表示部704は、ディスプレイ60の表示を図3の(G)に例示する出力制限表示に変更する。
【0037】
なお、出力制限部702は、バッテリ50の温度(バッテリ温度)に基づいて出力制限を行ってもよい。具体的には、出力制限部702は、バッテリ50の温度が所定の出力制限温度を超えた場合に車両12の出力を制限する。これは、バッテリ50が高温になるとその出力性能が低下し、駆動力が不足するためである。また、バッテリ50を高温状態で長時間使用すると、バッテリ50自体やその周辺部品の故障につながる可能性があるためである。
バッテリ温度が原因で出力制限が実施された場合、バッテリ状態表示部704は、バッテリ50の充電率に関わらず出力制限表示(第3の表示形態)を表示する。
【0038】
また、バッテリ50への過剰な負荷を防止するために、例えばバッテリ温度に基づいて出力制限充電率や予告開始充電率を変化させるようにしてもよい。具体的には、例えばバッテリ温度が所定温度以上の場合には、バッテリ温度に比例して出力制限充電率や予告開始充電率を大きくし、より早いタイミングで出力制限や予告表示を開始させるようにしてもよい。
【0039】
図5は、車両状態表示装置による処理の手順を示すフローチャートである。
出力制限部702は、BMU50Aからバッテリ50の充電率および温度の情報を取得する(ステップS500)。
バッテリ50の温度が出力制限温度を超えている場合(ステップS502:Yes)、出力制限部702は、バッテリ50の充電率に関わらずその出力を制限し(ステップS514)、バッテリ状態表示部704は、ディスプレイ60に出力制限表示を表示する(ステップS516)。
一方、バッテリ50の温度が出力制限温度を超えていない場合(ステップS502:No)、バッテリ状態表示部704は、バッテリ50の充電率が予告開始充電率を超えているか否かを判断する(ステップS504)。
バッテリ50の充電率が予告開始充電率を超えている場合(ステップS504:Yes)、バッテリ状態表示部704は、ディスプレイ60に通常表示を表示する(ステップS506)。
また、バッテリ50の充電率が予告開始充電率を超えていない、すなわち予告開始充電率以下の場合(ステップS504:No)、バッテリ状態表示部704は、バッテリ50の充電率が出力制限充電率を超えているか否かを判断する(ステップS508)。
バッテリ50の充電率が出力制限充電率を超えている場合(ステップS508:Yes)、バッテリ状態表示部704は、充電率に基づいて予告表示のインジケーター表示Iの表示レベルを決定し(ステップS510)、ディスプレイ60に予告表示を表示する(ステップS512)。
また、バッテリ50の充電率が出力制限充電率を超えていない、すなわち出力制限充電率以下の場合(ステップS508:No)、出力制限部702は、バッテリ50の出力を制限し(ステップS514)、バッテリ状態表示部704は、ディスプレイ60に出力制限表示を表示する(ステップS516)。
【0040】
以上説明したように、実施の形態にかかる車両状態表示装置10によれば、バッテリ50の充電率低下に伴う出力制限が開始される前に予告表示を行うので、出力制限が実施される可能性をユーザに報知することができ、ユーザの利便性を向上させる上で有利となる。また、予告表示を見たユーザが出力制限回避のための運転動作を積極的に行うことができるので、出力制限が実施される頻度を低減することができ、車両12の劣化を防止する上で有利となる。
また、車両状態表示装置10において、予告表示にバッテリ50の現在の充電率と出力制限充電率との差分を示すインジケーター表示Iを含めるようにすれば、出力制限が実施されるまでの猶予をユーザが直感的に把握することができ、ユーザの利便性を更に向上させる上で有利となる。
また、車両状態表示装置10において、バッテリ50の温度に基づいて出力制限を実施すれば、過剰な負荷によるバッテリ50の劣化をより確実に防止することができる。
【0041】
本出願は、2020年4月28日出願の日本出願(特願2020-078922)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本開示の車両状態表示装置及び車両状態表示方法によれば、車両の出力制限に伴う不都合を軽減することができる。
【符号の説明】
【0043】
10 車両状態表示装置
12 車両
20 走行システム
23 駆動用モータ
25 エンジン
30 発電システム
31 ジェネレータ
40 燃料タンク
50 バッテリ
60 ディスプレイ
70 ECU
700 駆動制御部
702 出力制限部
704 バッテリ状態表示部
図1
図2
図3
図4
図5