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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/28 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
H02K3/28 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022530387
(86)(22)【出願日】2020-06-09
(86)【国際出願番号】 JP2020022630
(87)【国際公開番号】W WO2021250766
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】越前 雅之
(72)【発明者】
【氏名】篠田 征吾
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-062629(JP,A)
【文献】特開2015-192553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のヨークから径方向に沿って突出して周方向に配置された複数の磁極によって多相巻線を提供する回転電機(1)において、
同相の前記磁極を提供する2つの単コイル(51)の間に延在している渡り線(54)は、周方向に隣接する2つの前記磁極の間の極間隙間(PG)において、軸方向の一端(20a)と他端(20b)との間に延在している極間渡り線(58、59)、および、前記他端において周方向に延在している端部渡り線(57)を少なくとも含んでおり、
周方向に隣接する2つの前記磁極の間に、前記磁極と同じ前記径方向へ突出して位置づけられた、位置決め部材(725、A46、B46)が配置されており、
前記極間渡り線は、すべての前記極間隙間において前記位置決め部材を迂回するようにして配置されている回転電機。
【請求項2】
前記位置決め部材は、磁性材料製の疑似ティース(725)である請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記位置決め部材は、樹脂材料製の突起(A46、B46)である請求項1または請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記位置決め部材は、前記極間渡り線を保持する溝(B47、B48)を備える請求項1から請求項3のいずれかに記載の回転電機。
【請求項5】
前記回転電機の固定子は、
前記位置決め部材を有する複数の第1極間隙間と、
前記位置決め部材を備えない複数の第2極間隙間とを有しており、
前記極間渡り線は、
前記第1極間隙間においては、前記位置決め部材を迂回するように、および、
前記第2極間隙間においては、そこに前記位置決め部材が仮想的に存在するかのようにして配置されている請求項1から請求項4のいずれかに記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ステータコイルの渡り線の配置を開示する。渡り線は、ステータのインシュレータに沿って積層的に配置される。先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-236181号公報
【発明の概要】
【0004】
軸方向における長さが短い回転電機が求められることがある。上述の観点において、または言及されていない他の観点において、回転電機にはさらなる改良が求められている。
【0005】
開示されるひとつの目的は、小型の回転電機を提供することである。
【0006】
開示される他のひとつの目的は、製造が容易な回転電機を提供することである。
【0007】
開示されるさらに他のひとつの目的は、軸方向長さが短い回転電機を提供することである。
【0008】
環状のヨークから径方向に沿って突出して周方向に配置された複数の磁極によって多相巻線を提供する回転電機(1)において、同相の磁極を提供する2つの単コイル(51)の間に延在している渡り線(54)は、周方向に隣接する2つの磁極の間の極間隙間(PG)において、軸方向の一端(20a)と他端(20b)との間に延在している極間渡り線(58、59)、および、他端において周方向に延在している端部渡り線(57)を少なくとも含んでおり、周方向に隣接する2つの磁極の間に、磁極と同じ径方向へ突出して位置づけられた、位置決め部材(725、A46、B46)が配置されており、極間渡り線は、すべての極間隙間において位置決め部材を迂回するようにして配置されている。
【0009】
開示される回転電機によると、同相における2つの単コイルの間に延在する渡り線は、その一部に極間渡り線を含む。極間渡り線は、周方向に隣接する2つの磁極の間の極間隙間において、軸方向の一端と他端との間に延在している。極間渡り線は、渡り線の一部を提供するから、端部渡り線の長さが抑制される。この結果、異相の端部渡り線の重なりが抑制され、小型の回転電機が提供される。
【0010】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る回転電機を示す平面図である。
図2図1のII-II線における断面図である。
図3】導電部材の接続部を示す断面図である。
図4】固定子の巻線図である。
図5】第2実施形態に係る回転電機を示す平面図である。
図6】回転電機を示す斜視図である。
図7図5のVII-VII線における断面図である。
図8】固定子を示す斜視図である。
図9】端子台を除く固定子を示す平面図である。
図10図9の矢印Xにおける側面図である。
図11図9の矢印XIにおける側面図である。
図12図9のXII-XII線における断面図である。
図13】固定子の巻線図である。
図14】第3実施形態に係る固定子の巻線図である。
図15】第4実施形態に係る固定子の巻線図である。
図16】第5実施形態に係る固定子の斜視図である。
図17】第5実施形態に係る固定子の巻線図である。
図18】第6実施形態に係る固定子の斜視図である。
図19】第6実施形態に係る固定子の巻線図である。
図20】第7実施形態に係る固定子の平面図である。
図21】固定子の部分拡大平面図である。
図22】固定子の斜視図である。
図23】固定子の部分拡大斜視図である。
図24】固定子の断面図である。
図25】固定子の部分拡大断面図である。
図26】固定子の部分拡大断面図である。
図27】固定子の部分拡大平面図である。
図28】固定子の部分拡大斜視図である。
図29】固定子の部分拡大断面図である。
図30】第8実施形態に係る固定子の部分拡大平面図である。
図31】固定子の部分拡大斜視図である。
図32】固定子の部分拡大断面図である。
図33】固定子の部分拡大平面図である。
図34】固定子の部分拡大斜視図である。
図35】固定子の部分拡大断面図である。
図36】第9実施形態に係る固定子の部分拡大平面図である。
図37】固定子の部分拡大斜視図である。
図38】固定子の部分拡大断面図である。
図39】固定子の部分拡大平面図である。
図40】固定子の部分拡大斜視図である。
図41】固定子の部分拡大断面図である。
図42】第10実施形態に係る固定子の部分拡大平面図である。
図43】固定子の部分拡大斜視図である。
図44】固定子の部分拡大断面図である。
図45】第11実施形態に係る固定子の部分拡大平面図である。
図46】固定子の部分拡大斜視図である。
図47】固定子の部分拡大断面図である。
図48】第12実施形態に係る固定子の部分拡大平面図である。
図49】固定子の部分拡大斜視図である。
図50】固定子の部分拡大断面図である。
図51】第13実施形態に係る回転電機を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号、または百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分および/または関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0013】
第1実施形態
図1および図2は、回転電機1を示す。図1および図2において、回転電機1は、径方向に関してやや誇張して図示されている。破線は、省略、または隠れ線を示している。回転電機1は、回転軸AX周りを回転するように構成されている。以下の説明において、回転軸AXが延びる方向は軸方向、回転軸AX周りは周方向、回転軸AXを中心とする放射方向は径方向と呼ばれる。
【0014】
図1において、回転電機1は、回転体2と連結されている。回転体2は、回転軸AX周りを回転するように構成されている。回転体2は、回転軸、または変速機の入出力端である。回転電機1は、ハウジング3の中に収容されている。ハウジング3は、回転電機1のための固定部を提供する。
【0015】
回転電機1は、回転子10と、固定子20とを有する。回転電機1は、インナロータ型である。回転子10と固定子20とは、それらの間にエアギャップAGを形成するように配置されている。回転子10は、回転体2の径方向外側に配置されている。固定子20は回転子10のさらに径方向外側に配置されている。
【0016】
回転子10は、回転子コア11と、複数の回転子磁極12とを有する。回転子コア11は、環状の磁性体である。回転子コア11は、回転体2と回転方向に関して連結されている。複数の回転子磁極12は、永久磁石によって提供されている。複数の回転子磁極12は、回転子コア11の外周面に等間隔に配置されている。この結果、回転子10は、永久磁石回転子を提供する。
【0017】
固定子20は、固定子コア30と、固定子コア30に装着されたインシュレータ40と、インシュレータ40に装着されたコイル50とを有する。固定子20は、複数の固定子磁極を提供する。この実施形態では、固定子20は、18個の固定子磁極を提供する。図中には、固定子磁極21、固定子磁極22、固定子磁極23が例示されている。これら3つの固定子磁極21、22、23のそれぞれは、対応する相巻線を含む。ひとつの固定子磁極は、ひとつのティース31と、ひとつのボビン41と、ひとつの単コイル51とを有している。
【0018】
これら複数の固定子磁極は、周方向に隣接する2つの固定子磁極の間に極間隙間PGを区画形成している。極間隙間PGは、周方向隙間とも、コイル間隙間とも呼ばれる。複数の極間隙間PGは、周方向に関して互いに等しい所定の幅を有している。複数の極間隙間PGは、周方向に沿って等間隔に配置されている。極間隙間PGは、後述する接続部を配置することを許容する大きさをもつ。極間隙間PGは、接続部を形成し、配置するための製造作業を実施することを許容する大きさをもつ。極間隙間PGの大きさは、後述する接続部とコイル50との間に回転電機1として必要な電気絶縁性を確保することを可能とする。
【0019】
固定子コア30は、例えば、電磁鋼板の積層体である。固定子コア30は、複数のティース31を有する。固定子コア30は、ヨーク32を有する。ヨーク32は、環状の磁性体である。ヨーク32は、複数のティース31を磁気的に、かつ、機械的に連結している。複数のティース31は、ヨーク32の内周面に等間隔に配置されている。複数のティース31と環状のヨーク32とは、連続体である。
【0020】
インシュレータ40は、電気絶縁性の樹脂製である。インシュレータ40は、樹脂成形体である。インシュレータ40は、軸方向に関して分割された複数の分割体を有する。複数の分割体は、固定子コア30に対して装着されて、インシュレータ40を提供する。インシュレータ40は、複数のティース31のための複数のボビン41を提供する。ひとつのティース31に、ひとつのボビン41が形成されている。ボビン41は、コイル50のための巻胴を提供する。ひとつのボビン41は、ひとつのティース31の径方向外側に位置する筒部42を有する。ひとつのボビン41は、ティース31の基端における基端フランジ43と、ティース31の先端における先端フランジ44とを提供する。言い換えると、筒部42と、基端フランジ43と、先端フランジ44とは、ひとつのボビン41を提供している。
【0021】
コイル50は、固定子巻線を提供する。コイル50は、多相巻線を提供する。この実施形態では、コイル50は、三相巻線を提供する。コイル50と固定子コア30との間には、インシュレータ40が配置されている。コイル50は、複数のティース31の径方向外側に配置されている。コイル50は、複数の単コイル51を備える。ひとつの単コイル51は、ひとつのティース31の径方向外側に配置されている。複数の単コイル51は、素線をボビン41に巻くことによって形成されている。素線は、銅製または銅合金製の単線である。素線は、巻線作業を可能とする可撓性をもつ。
【0022】
固定子磁極21は、三相巻線のうちのひとつの相巻線、例えば、U相巻線を提供する。固定子磁極22は、三相巻線のうちの他のひとつの相巻線、例えば、V相巻線を提供する。固定子磁極23は、三相巻線のうちの残るひとつの相巻線、例えば、W相巻線を提供する。
【0023】
固定子20は、少なくともひとつの導電部材60を備える。固定子20は、複数の導電部材60を有している。導電部材60は、バスバーとも呼ばれる。導電部材60は、コイル50を形成するための素線とは異なる断面形状を有する。素線は、丸断面であり、導電部材60は、長方形または正方形の矩形断面である。導電部材60は、可撓性を有している。導電部材60の可撓性は、素線の可撓性よりも低い。導電部材60は、素線よりも、硬く変形しにくい。よって、導電部材60は、コイル50のための素線を、単コイル51から電気的に引き出すための導電性の部材である。
【0024】
複数の導電部材60は、電力端部材61、62、63と、中性点部材64とを含む。電力端部材61、62、63は、三相巻線としての出力端子または入力端子を提供する。回転電機1が発電機として機能する場合、電力端部材61、62、63は、出力端子を提供する。回転電機1が電動機として機能する場合、電力端部材61、62、63は、入力端子を提供する。この実施形態では、電力端部材61、62、63は、電気コネクタの端子を提供する。中性点部材64は、三相巻線としての中性点接続を提供する。
【0025】
ひとつの導電部材60は、少なくともひとつの接続部65、66、67、68、69を有する。導電部材60は、接続部65、66、67、68、69において、少なくともひとつのコイル端52と電気的にかつ機械的に接続されている。コイル端52は、コイル50の端部である。固定子20は、複数のコイル端52を有している。コイル50が三相巻線を提供する場合、固定子20は、例えば、6個のコイル端52を有する。
【0026】
複数の電力端部材61、62、63のそれぞれは、互いに隣り合う3つの極間隙間PGにそれぞれが配置された複数の接続部65、66、67を有する。電力端部材61は、第1の極間隙間PGに配置された接続部65を有する。電力端部材62は、第2の極間隙間PGに配置された接続部66を有する。電力端部材63は、第3の極間隙間PGに配置された接続部67を有する。第1-第3の極間隙間PGは、互いに隣り合って配置されている。複数の接続部65、66、67のそれぞれは、最小単位の数のコイル端52と接続されている。最小単位は、コイル50における並列数である。この実施形態では、最小単位は、1である。コイル50が2つの並列コイルによって提供される場合、最小単位は、2である。
【0027】
中性点部材64は、互いに隣り合う複数の極間隙間PGにそれぞれが配置された複数の接続部68、69を有する。図示の例では、中性点部材64は、互いに隣り合う2つの極間隙間PGにそれぞれが配置された2つの接続部68、69を有する。接続部68は、最小単位の数のコイル端52と接続されている。接続部69は、最小単位の2倍の数のコイル端52と接続されている。
【0028】
複数の接続部65、66、67、68、69は、互いに隣り合う複数の極間隙間PGに分散的に配置されている。複数の接続部65、66、67、68、69は、互いに隣り合う複数の極間隙間PGに、1対1の関係で配置されている。この実施形態では、ひとつの極間隙間PGにひとつの接続部が配置されている。この結果、互いに隣り合う5個の極間隙間PGに、5個の接続部65、66、67、68、69が配置されている。
【0029】
接続部65、66、67、68、69は、極間隙間PGの中に位置づけられている。接続部65、66、67、68、69は、軸方向に関して極間隙間PGの中に位置づけられている。導電部材60の一部は、極間隙間PGから軸方向に延びだすことがある。しかし、接続部65、66、67、68、69は、その全体が極間隙間PGの中に配置されている。接続部65、66、67、68、69は、径方向に関して極間隙間PGの中に位置づけられている。導電部材60の一部は、極間隙間PGから径方向に延びだすことがある。しかし、接続部65、66、67、68、69は、その全体が極間隙間PGの中に配置されている。
【0030】
複数の磁極は、周方向に沿って延びるヨーク32から径方向に沿って突出している。複数の導電部材60は、周方向延在部60aと、径方向延在部60bとを有している。周方向延在部60aは、ヨーク32に沿って周方向に延びている。径方向延在部60bは、周方向延在部から径方向に延びており、先端が極間隙間PGに到達している。この径方向延在部60bの先端に、接続部65、66、67、68、69が形成されている。例えば、電力端部材61、63は、周方向延在部60aと、径方向延在部60bとを有する。電力端部材62は、径方向延在部60bだけで構成されている。電力端部材61、62、63は、極間隙間PGに向けて延び出す接続部のための径方向延在部と、外部回路との接続のために延び出す外部接続のための径方向延在部とを有している。中性点部材64は、周方向延在部60aと、2つの径方向延在部60bとを有している。
【0031】
固定子20は、端子台80を備える。端子台80は、電気絶縁性の樹脂製である。端子台80は、複数の導電部材60を支持している。端子台80は、複数の電力端部材61、62、63を支持している。複数の電力端部材61、62、63は、端子台80にインサート成形されている。端子台80は、本体部81と、コネクタ部82とを有する。本体部81は、固定子20に沿って弧状に延びている。コネクタ部82は、本体部81より径方向外側に位置しており、本体部81から径方向外側に向けて延び出している。コネクタ部82は、外部回路のコネクタと接続される。コネクタ部82は、電力端部材61、62、63と外部回路との接続を提供する。外部回路は、回転電機1のための制御回路を提供する。端子台80は、固定子20に固定されている。具体的には、端子台80は、インシュレータ40に固定されている。中性点部材64は、インシュレータ40に支持されている。
【0032】
図2は、図1のII-II線における断面を図示している。図中には、複数の導電部材60のうち、電力端部材61の位置が、複数の固定子磁極との相対的な位置関係によって例示されている。複数の導電部材60は、図示されるひとつと同様に配置されている。図中には、渡り線54が例示されている。なお、渡り線54の配置、および数は、あくまで例示である。複数の渡り線54の配置、および数は、後述の巻線図によって示されている。
【0033】
複数の磁極21、22、23は、ボビン41としてのインシュレータ40を含んでいる。回転電機1の軸方向におけるインシュレータ40の高さTH40は、固定子20の高さを規定している。言い換えると、インシュレータ40の高さTH40は、回転電機1の高さを規定している。複数の導電部材60は、軸方向におけるインシュレータ40の高さTH40の中に配置されている。
【0034】
コイル50は、複数の単コイル51の間にわたって延びる渡り線54を有する。渡り線54は、ひとつの相巻線に属する複数の単コイル51を連続した素線によって接続している。言い換えると、渡り線54は、同相の複数の固定子磁極を連続線によって接続している。三相巻線の場合、例えば、1番-4番-7番・・・といった同相に属する複数の単コイル51が接続される。渡り線54は、インシュレータ40に沿って敷設されている。渡り線54は、少なくとも部分的に、基端フランジ43の径方向外側を経由している。渡り線54は、少なくとも部分的に、端子台80が配置された軸方向端部とは反対の軸方向端部を経由している。
【0035】
電力端部材61は、外部接続のためのコネクタ部82において径方向に沿って延びている。電力端部材61は、基端フランジ43の径方向外側において、周方向に沿って延びている。電力端部材61は、第1の極間隙間PGの径方向外側において、角部を有している。電力端部材61は、第1の極間隙間PGの径方向外側において、基端フランジ43を径方向に横切るように延びている。電力端部材61は、第1の極間隙間PGの中において、軸方向に沿って延びている。接続部65は、第1の極間隙間PGの中に位置づけられている。接続部65は、軸方向に関して極間隙間PGのほぼ中央に位置している。接続部65は、径方向に関して極間隙間PGのほぼ中央に位置している。
【0036】
端子台80は、基端フランジ43より径方向外側に位置している。端子台80は、回転電機1の軸方向両端のうち、一方の軸方向端部にのみ配置されている。コネクタ部82は、基端フランジ43より径方向外側に位置している。コネクタ部82は、ハウジング3の外部に露出している。コネクタ部82は、ハウジング3の外において、径方向外側に向けて開口している。コネクタ部82は、径方向に沿って操作される外部回部のコネクタを径方向外側から受け入れることにより、電力端部材61を介した電気的な接続を形成する。
【0037】
図3は、図2における接続部の拡大図である。複数の導電部材60、すなわち、複数の電力端部材61、62、63、および中性点部材64は、それらが提供する接続部65、66、67、68、69において、相似の形状を有している。導電部材60は、径方向延在部60bの中に、曲がり部60cと、接合部60dとを有する。曲がり部60cは、固定子20の軸方向端面から、インシュレータ40の表面に沿って延び、さらに極間隙間PGに延び出すクランク型である。導電部材60とコイル端52との接続は、ヒュージングによって提供されている。ヒュージングによる接続を提供する接合部60dは、コイル端52を包むように曲げられた導電部材60によって提供されている。導電部材60とコイル端52と、ヒュージング加工によって電気的かつ機械的に接続されている。
【0038】
図4は、回転電機1におけるコイル50の回路を示す巻線図である。回転電機1は、周方向に配置された複数の磁極によって多相巻線を提供する。コイル50は、固定子20の内側から見た状態として図示されている。図中において、繰り返しであるスロットS7-S15の範囲は省略されている。コイル50は、複数の相巻線を有する。コイル50は、U相巻線50u、V相巻線50v、およびW相巻線50wを有する。コイル50は、U相巻線50uの単コイル51と、V相巻線50vの単コイル51と、W相巻線50wの単コイル51とを交互に形成するように巻かれている。この実施形態では、18個の磁極が形成され、それら複数の磁極の間に18個のスロットS1-S18が形成されている。スロットS1-S18は、極間隙間PGに対応する。固定子20は、軸方向に関して一端20aと、他端20bとを有する。一端20aは、導電部材60が配置される端部である。他端20bは、端部渡り線57を配置するための端部である。
【0039】
コイル50は、所定の最初の磁極から巻き始められる。コイル50は、最初の磁極における単コイル51を巻き終えると、渡り線54を経由して、同相の次の磁極に移行し、この磁極に巻かれる。よって、渡り線54は、同相の磁極を提供する2つの単コイル51の間に延在している。渡り線54は、ジャンパ線とも呼ばれる。コイル50は、複数の磁極に対して順に巻かれる。以下の説明では、最初の磁極を1番と呼ぶ。この巻線工程に起因して、ひとつの磁極のひとつの単コイル51における巻始め部55と、巻終わり部56とを特定することができる。渡り線54は、端部渡り線57と、極間渡り線58と、極間渡り線59とを有する。
【0040】
端部渡り線57は、回転電機1、すなわち固定子20の他端20bに配置されている。言い換えると、端部渡り線57は、導電部材60が配置された端部(一端20a)とは反対側の端部(他端20b)に配置されている。端部渡り線57は、他端20bにおいて周方向に延在している。端部渡り線57は、周方向に沿って、少なくとも2つの単コイル51とひとつのスロットとにわたる長さにわたって延在している。
【0041】
極間渡り線58は、巻終わり部56と端部渡り線57との間に配置されている。極間渡り線58は、巻線工程において端部渡り線57の前に位置することから、前渡り線とも呼ばれる。極間渡り線58は、周方向に離れている異なる相の2つの単コイル51の間の極間隙間PGを、軸方向の一端20aと他端20bとの間で連結している。極間渡り線58は、周方向に隣接する2つの磁極の間の極間隙間PGにおいて、軸方向の一端20aと他端20bとの間に延在している。
【0042】
極間渡り線59は、端部渡り線57と巻始め部55との間に配置されている。極間渡り線59は、巻線工程において端部渡り線57の後に位置することから、後渡り線とも呼ばれる。極間渡り線59は、周方向に離れている異なる相の2つの単コイル51の間の極間隙間PGを、軸方向の一端20aと他端20bとの間で連結している。極間渡り線59は、周方向に隣接する2つの磁極の間の極間隙間PGにおいて、軸方向の一端20aと他端20bとの間に延在している。
【0043】
図示、および説明では、端部渡り線57、巻始め部55、巻終わり部56、極間渡り線58、および極間渡り線59は、a、b・・・といった識別符号を付して識別されている。a、b・・・といった識別符号は、巻線工程の繰り返しに対応する。例えば、U相巻線50uは、最初の巻始め部55aから巻かれ、最後の巻終わり部56fで終端する。以下、U相巻線50uを詳細に説明する。V相巻線50v、およびW相巻線50wは、同様の形状を有する。
【0044】
U相巻線50uは、巻始め部55aから、1番の磁極に巻かれ、巻終わり部56aで1番の磁極から離れる。この実施形態では、単コイル51は、時計回り方向に巻かれている。これに代えて、単コイル51は、反時計周り方向に巻かれていてもよい。この実施形態では、巻線工程は、1番の磁極から右方向へ進められる。これに代えて、巻線工程は、1番の磁極から左方向へ進められてもよい。
【0045】
単コイル51は、磁極において径方向へ数層に積層された素線を有する。単コイル51における層数は、2層以上であり、10層以下である。望ましい形態では、単コイル51は、2層以上、7層以下である。この実施形態では、単コイル51は、2層以上、5層以下である。具体的には、単コイル51は、3層である。この層数は、基端フランジ43および先端フランジ44の高さを規定する。この結果、層数は、インシュレータ40の高さTH40を規定し、結果的に、回転電機1の高さを規定する。単コイル51における層数は、整列巻き、または乱巻きでも2層以上である。巻線図は、単コイル51を模式的に図示しており、ターン数および層数は捨象されている。単コイル51は、固定子20の内側、すなわち内周面に配置されている。
【0046】
U相巻線50uは、巻終わり部56aから、極間渡り線58aを経由して、端部渡り線57aに到達する。巻始め部55aは、一端20aに配置されている。端部渡り線57aは、他端20b、すなわち導電部材60とは反対の端部に配置されている。固定子20の軸方向の一端20aに複数の導電部材60が集中的に配置されており、固定子20の軸方向の他端20bに複数の端部渡り線57が集中的に配置されている。これにより、固定子20の両端を有効に利用することができる。
【0047】
U相巻線50uは、巻終わり部56aから極間渡り線58aに移行することにより連続している。極間渡り線58aは、一端20aから他端20bへ延在している。極間渡り線58aは、スロットS2内において軸方向に延在している。極間渡り線58aは、スロットS2内において周方向に延在している。よって、極間渡り線58aは、スロットS2内において斜めに延在している。極間渡り線58aは、固定子20の内側に配置されている。極間渡り線58aは、極間隙間PG内に配置されている。極間渡り線58aは、1番の磁極における単コイル51の一部としても不完全に機能する。
【0048】
U相巻線50uは、極間渡り線58aから端部渡り線57aに移行することにより連続している。端部渡り線57aは、周方向に延在している。端部渡り線57aは、固定子20の周方向に沿って延在するように配置されている。端部渡り線57aは、基端フランジ43に沿って配置されている。端部渡り線57aは、固定子20の外側に配置されている。このとき、基端フランジ43は、端部渡り線57aを保持するストッパとして機能する。同時に、基端フランジ43の周方向端部は、極間渡り線58aと端部渡り線57aとの境界を規定する。
【0049】
U相巻線50uは、端部渡り線57aから極間渡り線59aに移行することにより連続している。極間渡り線59aは、他端20bから一端20aへ延在している。極間渡り線59aは、スロットS4内において軸方向に延在している。極間渡り線59aは、スロットS4内において周方向に延在している。よって、極間渡り線59aは、スロットS4内において斜めに延在している。極間渡り線59aは、固定子20の内側に配置されている。極間渡り線59aは、4番の磁極における単コイル51の一部としても不完全に機能する。
【0050】
U相巻線50uは、極間渡り線59aから巻始め部55bに移行することにより連続している。U相巻線50uは、巻始め部55、単コイル51、巻終わり部56、極間渡り線58、端部渡り線57、極間渡り線59を順に経由する基本サイクルを繰り返し、最後の単コイルに到達する。最後の単コイルでは、U相巻線50uは、極間渡り線59eから巻始め部55fへ移行することにより連続している。U相巻線50uは、16番の磁極に巻かれ、巻終わり部56fにおいて終端している。巻終わり部56fは、中性点部材64と接続されている。
【0051】
U相巻線50uは、1番、4番、7番、10番、13番、16番の磁極を提供する。V相巻線50v、およびW相巻線50wは、U相巻線50uと同じ形状を有する。よって、V相巻線50vは、2番、5番、8番、11番、14番、17番の磁極を提供する。W相巻線50wは、3番、6番、9番、12番、15番、18番の磁極を提供する。
【0052】
複数の相巻線50u、50v、50wは、複数の2種類の極間渡り線58、59を提供する。これら極間渡り線58、59は、(1)いずれか1本だけがスロット内を斜行するように、(2)両方がスロット内で交差するように、または、(3)どちらもスロット内にないように、配置されている。
【0053】
(1)スロットS2には、U相巻線50uの極間渡り線58だけが配置されている。スロットS3には、V相巻線50vの極間渡り線58だけが配置されている。スロットS17には、V相巻線50vの極間渡り線59だけが配置されている。スロットS18には、W相巻線50wの極間渡り線59だけが配置されている。これらの巻始めおよび巻終わりの4つのスロットには、極間渡り線58または極間渡り線59が1本だけ、斜行して配置されている。これらスロットS2、S3、S17、S18は、両端スロットとも呼ばれ、極間渡り線58または極間渡り線59の1本が配置されている。
【0054】
(2)スロットS4には、W相巻線50wの極間渡り線58と、U相巻線50uの極間渡り線59とが配置されている。2つの極間渡り線58、59は、スロットS4内、すなわち極間隙間PGにおいて交差している。スロットS5には、U相巻線50uの極間渡り線58と、V相巻線50vの極間渡り線59とが配置されている。2つの極間渡り線58、59は、スロットS5内、すなわち極間隙間PGにおいて交差している。スロットS6には、V相巻線50vの極間渡り線58と、W相巻線50wの極間渡り線59とが配置されている。2つの極間渡り線58、59は、スロットS6内、すなわち極間隙間PGにおいて交差している。これらスロットS4、S5、S6番に見られる交差配置は、巻線工程の繰り返し工程によって、異なる相巻線の2本の極間渡り線58、59が配置されるスロットS7、S8、S9、S10、S11、S12、S13、S14、S15、S16においても見られる。2本の極間渡り線58、59は、極間隙間PGの軸方向の中央で交差している。2本の極間渡り線58、59は、極間隙間PGの周方向の中央で交差している。これらスロットS4-S16は、中間スロットとも呼ばれ、極間渡り線58および極間渡り線59の2本が交差するように配置されている。
【0055】
(3)スロットS1には、極間渡り線58も、極間渡り線59も配置されていない。スロットS1は、境界スロットとも呼ばれ、極間渡り線が配置されない。
【0056】
端部渡り線57は、他端20bに配置されている。端部渡り線57は、基端フランジ43に沿って配置されている。端部渡り線57は、基端フランジ43の径方向外側に配置されている。端部渡り線57は、径方向および軸方向に関して互いに重なって配置されている。この実施形態では、異相の端部渡り線57は、他端20bにおいて、軸方向に積層されている。他端20bに配置されている端部渡り線57は、周方向におけるすべての位置において、2本以下である。図中において、記号*1、*2は、その位置における端部渡り線57の数を示す。固定子20の軸方向端部(他端20b)において、複数の端部渡り線57は、(1)1本だけが延在するように、(2)2本が重なって延在するように、または、(3)ゼロとなるように、配置されている。
【0057】
(1)2番の磁極の基端フランジ43に沿って位置する端部渡り線57は、1本である。17番の磁極の基端フランジ43に沿って位置する端部渡り線57は、1本である。スロットS3の軸方向に位置する端部渡り線57は、1本である。V相巻線50vの極間渡り線58がスロットS3内に配置されているからである。スロットS4の軸方向に位置する端部渡り線57は、1本である。2本の極間渡り線58、59がスロットS4内に配置されているからである。スロットS5の軸方向に位置する端部渡り線57は、1本である。2本の極間渡り線58、59がスロットS5内に配置されているからである。スロットS3、S4、S5の端部にみられる1本の端部渡り線57の存在は、スロットS6、S7、S8、S9、S10、S11、S12、S13、S14、S15、S16、S17においても繰り返されている。
【0058】
(2)3番の磁極の基端フランジ43に沿って位置する端部渡り線57は、2本である。4番の磁極の基端フランジ43に沿って位置する端部渡り線57は、2本である。5番の磁極の基端フランジ43に沿って位置する端部渡り線57は、2本である。3番、4番、5番の磁極の基端フランジ43にみられる複数の端部渡り線57の存在は、6番、7番、8番、9番、10番、11番、12番、13番、14番、15番、16番の磁極の基端フランジ43においても繰り返されている。
【0059】
(3)スロットS1の軸方向に位置する端部渡り線57は、ない(0本である)。1番の磁極の基端フランジ43に沿って位置する端部渡り線57は、ない。18番の磁極の基端フランジ43に沿って位置する端部渡り線57は、ない。境界スロットS1および両端の磁極の他端20bは、渡り線を要しないからである。スロットS2の軸方向に位置する端部渡り線57は、ない。渡り線として機能する極間渡り線58がスロットS2内に配置されているからである。スロットS18の軸方向に位置する端部渡り線57は、ない。渡り線として機能する極間渡り線59がスロットS18内に配置されているからである。
【0060】
この実施形態では、渡り線54は、ひとつの極間渡り線58、ひとつの極間渡り線59、および、ひとつの端部渡り線57を含んでいる。ひとつの極間渡り線58は、同相の2つの単コイル51のうち、一方の単コイル51の巻終わり部56から延在する。ひとつの極間渡り線59は、同相の2つの単コイル51のうち、他方の単コイル51の巻始め部55から延在する。渡り線54は、ひとつの極間渡り線58、端部渡り線57、および、ひとつの極間渡り線59を、この順序で有している。多相巻線を形成する複数の相巻線50u、50v、50wは、それぞれが極間渡り線58、59を有する。この結果、いくつかの極間隙間PGにおいて、異相の極間渡り線58、59が交差している。複数の磁極の間に形成された複数のスロットS1-S18は、極間渡り線58、59がないひとつのスロットS1を含んでいる。複数のスロットS1-S18は、ひとつの極間渡り線58またはひとつの極間渡り線59が配置された複数のスロットS2、S3、S17、S18を含んでいる。複数のスロットS1-S18は、2つの極間渡り線58、59が交差して配置された複数のスロットS4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11、S12、S13、S14、S15、S16を含んでいる。端部渡り線57は、固定子20の径方向における内外面のうち、単コイル51が配置される面とは反対の面に配置されている。言い換えると、磁極は、基端フランジ43を備えており、端部渡り線57と極間渡り線58、59とは、回転電機1の径方向に関して基端フランジ43の両側に配置されている。
【0061】
回転電機の製造方法は、回転子10を組み立てる工程と、固定子20を組み立てる工程とを含む。固定子20を組み立てる工程は、固定子コア30を組み立てる工程と、固定子コア30にインシュレータ40を装着する工程と、コイル50を巻く工程と、複数の接続部65、66、67、68、69を形成する工程とを含む。コイル50を巻く工程は、巻線機を使用することによって、コイル50を形成するように、インシュレータ40付きの固定子コア30に、素線を巻きつける。この工程は、ひとつの巻線ノズルによって順に、または、複数の巻線ノズルによって並列的に実施することができる。
【0062】
コイル50を巻く工程は、一端20aから巻き始めて最初の単コイル51を巻く。この工程は、端部渡り線57を他端20bに配置しながら、進められる。繰り返し工程では、他端20bから単コイル51を巻き始めて、次々と単コイル51を巻き進める。しかも、この工程は、極間渡り線58と極間渡り線59との両方をスロット内に配置しながら、次々と単コイル51を巻き進める。この工程は、一端20aにおいて、最後の単コイル51を巻き終える。
【0063】
複数の接続部65、66、67、68、69を形成する工程は、複数のコイル端52を複数の導電部材60に接続する。この工程では、導電部材60とコイル端52とが電気的に接続される。この工程は、導電部材60を極間隙間PGに配置した後に、導電部材60に接するようにコイル端52を配置し、このコイル端52を包み込むように接合部60dを曲げ、ヒュージング加工することによって実行することができる。代替的に、この工程は、極間隙間PGの外において、導電部材60に接するようにコイル端52を配置し、このコイル端52を包み込むように接合部60dを曲げ、ヒュージング加工した後に、導電部材60を極間隙間PGに配置することによって実行してもよい。
【0064】
さらに、回転電機の製造方法は、複数の導電部材60を固定する工程を含む。この工程は、複数の接続部を形成する工程の前、または後に実行することができる。この実施形態では、端子台80によって複数の電力端部材61、62、63が、固定子20の規定の位置に位置づけられ、固定される。
【0065】
以上に述べた実施形態によると、少なくともひとつの極間渡り線58または極間渡り線59を備えることにより、極間渡り線58または極間渡り線59が配置されたスロット(極間隙間PG)の軸方向の端部における端部渡り線57の数を抑制することができる。当該スロット(極間隙間PG)の軸方向の端部に配置されるべき端部渡り線57が、極間渡り線58、59によって提供されるからである。特に、2つの異なる相巻線の極間渡り線58と極間渡り線59とをスロット(極間隙間PG)内において交差させることにより、極間渡り線58および極間渡り線59が配置されたスロット(極間隙間PG)の軸方向の端部における端部渡り線57の数を、相数-2に抑制することができる。三相巻線の場合、極間渡り線58および極間渡り線59が交差して配置されたスロット(極間隙間PG)の軸方向の端部における端部渡り線57の数を、1本に抑制することができる。この結果、小型の回転電機1が提供される。
【0066】
以上に述べた実施形態によると、複数のコイル端52のための接続部65、66、67、68、69を極間隙間PGに配置することができる。このため、コイル端52のための接続部65、66、67、68、69における軸方向の小型化が図られる。この実施形態によると、接続部65、66、67、68、69を容易に製造することができる。この実施形態によると、軸方向長さが短い回転電機が提供される。
【0067】
第2実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、回転電機1は、中性点部材64と、弧状の端子台80とを備える。これに代えて、この実施形態では、回転電機1は、複数端子型の中性点部材264と、円環状の端子台280とを備える。この実施形態では、上記実施形態の要素と対応する要素には、同じ符号を付す。同じ符号で示された要素の説明は、上記実施形態の説明を参照することができる。この実施形態では、回転電機1は、20極の回転子10と、15極の固定子20とを備える。
【0068】
図5図12、特に図9に図示されるように、中性点部材264は、3つの接続部68、69、270を有する。中性点部材264は、三相巻線のための3端子を提供する。接続部68は、三相巻線の第1相の巻線のコイル端と中性点部材64との電気的な接続を提供する。接続部69は、三相巻線の第2相の巻線のコイル端と中性点部材64との電気的な接続を提供する。接続部70は、三相巻線の第3相の巻線のコイル端と中性点部材64との電気的な接続を提供する。
【0069】
複数の接続部65、66、67、68、69、270は、互いに隣り合う複数の極間隙間PGに分散的に配置されている。複数の接続部65、66、67、68、69、270は、互いに隣り合う複数の極間隙間PGに、1対1の関係で配置されている。この実施形態では、ひとつの極間隙間PGにひとつの接続部が配置されている。この結果、互いに隣り合う6個の極間隙間PGに、6個の接続部65、66、67、68、69、270が配置されている。中性点部材264は、櫛歯型、またはピッチフォーク型と呼びうる形状である。中性点部材264は、固定子コア30のヨーク32に沿って周方向に延びる弧状部分と、弧状部分から接続部として径方向内側へ延び出す径方向部分とを有する。径方向部分は、周方向に沿って等間隔に配置されている。
【0070】
この実施形態でも、複数の導電部材60は、周方向延在部60aと、径方向延在部60bとを有している。例えば、電力端部材61、63は、周方向延在部60aと、径方向延在部60bとを有する。電力端部材62は、径方向延在部60bだけで構成されている。中性点部材264は、周方向延在部60aと、3つの径方向延在部60bとを有している。
【0071】
上記実施形態では、端子台80は、複数の電力端部材61、62、63だけを支持している。端子台80は、中性点部材64を支持していない。これに代えて、端子台280は、複数の導電部材60のすべてを支持している。端子台280は、複数の電力端部材61、62、63と、中性点部材264との両方を支持している。これら複数の導電部材60は、端子台280にインサート成形されている。
【0072】
図5図12、特に図5図6図7図8に図示されるように、端子台280は、円環状である。端子台280は、ヨーク32に沿って周方向に延びている。端子台280は、基端フランジ43より径方向外側に配置されている。この実施形態でも、端子台280は、本体部281と、コネクタ部82とを提供する。本体部281は、円環状である。コネクタ部82は、円環状の本体部281の一部に位置づけられている。
【0073】
図10図11に図示されるように、インシュレータ40は、突起245を有する。インシュレータ40は、複数の突起245を有する。突起245は、基端フランジ43の軸方向先端部の径方向外側面から径方向外側へさらに突出している。突起245は、複数の渡り線54を基端フランジ43に沿って位置づけ、保持するためのストッパとして機能する。複数の渡り線54の配置、および数は、後述の巻線図によって示されている。
【0074】
図13において、中性点部材264は、複数の相巻線50u、50v、50wを接続している。コイル50は、上記実施形態と同じである。
【0075】
この実施形態でも、極間渡り線58および極間渡り線59が交差して配置されたスロット(極間隙間PG)の軸方向の端部における端部渡り線57の数を、抑制することができる。この結果、小型の回転電機1が提供される。この実施形態でも、複数のコイル端52のための接続部65、66、67、68、69、270を極間隙間PGに配置することができる。このため、複数のコイル端52のための接続部65、66、67、68、69、270における軸方向の小型化が図られる。この実施形態によると、接続部65、66、67、68、69、270を容易に製造することができる。この実施形態によると、軸方向長さが短い回転電機が提供される。
【0076】
第3実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、回転電機1は、極間渡り線58および極間渡り線59の両方を備える。これに代えて、この実施形態では、回転電機1は、極間渡り線58のみを備える。
【0077】
図14において、回転電機1は、コイル350を備える。コイル350は、極間渡り線58のみを複数のスロット内に有している。この結果、極間渡り線58が配置されたスロットの軸方向端部において、端部渡り線57の数が抑制される。端部渡り線57は、2本以下に抑制される。
【0078】
この実施形態では、渡り線54は、同相の2つの単コイル51のうち、一方の単コイル51の巻終わり部56から延在するひとつの極間渡り線58、および、端部渡り線57のみからなる。この実施形態でも、小型の回転電機1が提供される。
【0079】
第4実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、回転電機1は、少なくとも極間渡り線58を備える。これに代えて、この実施形態では、回転電機1は、極間渡り線59のみを備える。
【0080】
図15において、回転電機1は、コイル450を備える。コイル450は、極間渡り線59のみを複数のスロット内に有している。この結果、極間渡り線59が配置されたスロットの軸方向端部において、端部渡り線57の数が抑制される。端部渡り線57は、2本以下に抑制される。
【0081】
この実施形態では、渡り線54は、同相の2つの単コイル51のうち、他方の単コイル51の巻始め部55から延在するひとつの極間渡り線59、および、端部渡り線57のみからなる。この実施形態でも、小型の回転電機1が提供される。
【0082】
第5実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、回転電機1は、基端フランジ43の径方向外側に端部渡り線57を配置している。これに加えて、この実施形態では、基端フランジ43は、端部渡り線57を配置するための複数の連通部548、549を提供する。この実施形態では、固定子20は、15個の磁極を提供する。
【0083】
図16において、固定子20は、固定子コア30とインシュレータ40とコイル50とを有する。図中には、固定子20における端部渡り線57、極間渡り線58、および極間渡り線59が図示されている。なお、理解を助け、図が煩雑となることを避けるために、コイル50は模式化され、部分的にだけ隠れ線(破線)で図示されている。インシュレータ40は、基端フランジ43と先端フランジ44とを有している。基端フランジ43および先端フランジ44は、単コイル51の範囲を規定する。さらに、基端フランジ43は、コイル50の素線の位置を規定するための複数の連通部を有している。複数の連通部は、径方向に関してスリット上の開口部を提供する。複数の連通部は、素線を配置することを可能とする。複数の連通部は、端部渡り線57の両端に位置して端部渡り線57の周方向範囲を規定している。コイル50は、複数の相巻線50u、50v、50wを有している。コイル50は、図の中央部に図示された3つの磁極から巻き進められる。
【0084】
基端フランジ43は、一端20aにおいては、磁極毎に設けられている。基端フランジ43は、他端20bにおいては、複数の連通部を提供するための第1フランジ片546と、第2フランジ片547とを有する。第1フランジ片546は、磁極の径方向外側に位置しており、軸方向に突出している。第1フランジ片546は、磁極フランジとも呼ばれる。第2フランジ片547は、スロットS1-S15の径方向外側に位置しており、軸方向に突出している。第2フランジ片547は、突起245を有する。第2フランジ片547は、スロットフランジとも呼ばれる。第1フランジ片546と、第2フランジ片547とは、周方向に沿って交互に設けられている。第1フランジ片546と第2フランジ片547との間には、第1連通部548と第2連通部549とが交互に区画形成されている。巻線工程の進行方向に関して、第1フランジ片546の前側に第1連通部548が位置し、第1フランジ片546の後側に第2連通部549が位置している。言い換えると、第2フランジ片547の前側に第2連通部549が位置し、第2フランジ片547の後側に第1連通部548が位置している。
【0085】
第1連通部548と第2連通部549とは、端部渡り線57の両端にそれぞれ位置している。第1連通部548は、極間渡り線58と端部渡り線57との間に位置しており、それらの境界を規定している。第1連通部548は、極間渡り線58の終端に位置している。第1連通部548は、端部渡り線57の始端に位置している。第1連通部548は、素線を固定子20の内側から外側へ引き出す出口連通部でもある。第2連通部549は、端部渡り線57と極間渡り線59との間に位置しており、それらの境界を規定している。第2連通部549は、極間渡り線59の始端に位置している。第2連通部549は、端部渡り線57の終端に位置している。第2連通部549は、素線を固定子20の外側から内側へ引き込む入口連通部でもある。この実施形態では、スロットの中において2つの極間渡り線58、59が配置されている。スロットフランジでもある第2フランジ片547の前側に位置する第2連通部549は、素線を固定子20の外側から内側へ引き込む入口を提供する。スロットフランジでもある第2フランジ片547の後側に位置する第1連通部548は、素線を固定子20の内側から外側へ引き出す出口を提供する。回転電機1が極間渡り線58と極間渡り線59との両方を備える場合、第1連通部548と第2連通部549とは両方が利用される。回転電機1が極間渡り線58、または、極間渡り線59を備える場合、第1連通部548、または、第2連通部549だけが利用される。例えば、回転電機1が極間渡り線58だけを備える場合、第1連通部548だけが入口および出口として利用される。例えば、回転電機1が極間渡り線59だけを備える場合、第2連通部549だけが入口および出口として利用される。
【0086】
U相巻線50uを代表例として説明する。U相巻線50uは、最初の磁極に巻始め部55aから巻き始められ、巻終わり部56aから極間渡り線58aに移行することにより連続している。極間渡り線58aは、第1連通部548から基端フランジ43の径方向外側に引き出され、端部渡り線57aに移行することにより連続している。端部渡り線57aは、第2連通部549から基端フランジ43の径方向内側に引き込まれ、極間渡り線59aに移行することにより連続している。複数の相巻線50u、50v、50wは、相似形である。よって、いくつかのスロット内では、ひとつの相巻線の極間渡り線58と、他の相巻線の極間渡り線59とが交差している。例えば、スロットS4では、W相巻線50wの極間渡り線58とU相巻線50uの極間渡り線59とが交差している。この実施形態では、15極の磁極が提供されるから、コイル50は、a、b、c、d、eの識別子で特定される要素を備える。例えば、7番の磁極と10番の磁極との間には、極間渡り線58cと、端部渡り線57cと、極間渡り線59cとが配置されている。端部渡り線57cは、出口としての第1連通部548から入口としての第2連通部549まで延在している。
【0087】
図17において、ひとつの相巻線は、極間渡り線58と、端部渡り線57と、極間渡り線59との両側に単コイル51を位置づけている。コイル50は、固定子20の内側から見た状態として図示されている。このため、ひとつのスロットの中では、異なる2つの相巻線の極間渡り線58と極間渡り線59とが交差している。この結果、基端フランジ43の外側では、端部渡り線57の数が抑制され、小型の回転電機1が提供されている。
【0088】
第6実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、回転電機1は、極間渡り線58と極間渡り線59との両方を備える。これに加えて、この実施形態では、回転電機1は、極間渡り線58だけを備える。
【0089】
図18において、固定子20は、第5実施形態で説明したインシュレータ40と、コイル350とを備える。コイル350は、極間渡り線58だけを備える。この実施形態では、第1連通部548だけが入口および出口として利用されている。例えば、U相巻線50uは、ひとつの第1連通部548から引き出され、別の第1連通部548から引き込まれる。この構成では、極間渡り線58だけでコイル50が形成されるから、端部渡り線57がやや長くなる。例えば、端部渡り線57cは、10番の磁極の直前の第1連通部548まで延在している。
【0090】
図19において、コイル350は、極間渡り線58だけを備える。なお、コイル350に代えて、極間渡り線59だけを備えるコイル450を備えてもよい。この実施形態でも、小型の回転電機1が提供されている。
【0091】
第7実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。先行する実施形態では、極間渡り線58、および、極間渡り線59の少なくとも一方が、スロット内に斜めに配置されている。これに代えて、極間渡り線58、または、極間渡り線59は、多様な配置によって提供することができる。
【0092】
以下の説明において、回転電機1は、軸方向AD、径方向RD、および、周方向CDによって表現されている。多相巻線のひとつの相に属する要素は、g、h、iの識別子を付して説明される場合がある。多相巻線の他のひとつの相に属する要素は、j、k、L、mの識別子を付して説明される場合がある。多相巻線のさらに他のひとつの相に属する要素は、p、q、r、sの識別子を付して説明される場合がある。固定子20は、単コイル51g、51q、51k、51h、51r、51L、51i、51s、および、51mを、この順序で備えている。同様に、極間渡り線58は、極間渡り線58g、または、極間渡り線58kによって代表的に説明されている。同様に、極間渡り線59は、極間渡り線59p、または、極間渡り線59gによって代表的に説明されている。
【0093】
この実施形態でも、複数の渡り線54のそれぞれは、端部渡り線57、極間渡り線58、および、極間渡り線59を有する。この実施形態では、端部渡り線57と、極間渡り線58、59との間に、極間渡り線58、59の一部によって、端部渡り線57と極間渡り線58、59との遷移部分(第2部分758g2、第1部分758p1)が提供される。
【0094】
図20、および、図22において、固定子20は、複数の疑似ティース725を備える。疑似ティース725は、周方向に隣接する2つの磁極の間に位置づけられている。疑似ティース725は、極間渡り線58、または、極間渡り線59の位置を規定するための位置決め部材を提供する。固定子20は、3つの疑似ティース725を備える。疑似ティース725は、隣接する2つのティース31の間に位置づけられている。3つの疑似ティース725は、機械角度において互いに72°離れている。3つの疑似ティース725は、電気角度において互いに720°(360°×整数倍)離れている。疑似ティース725は、回転子10に観測されるトルク変動を望ましい波形に調節することを可能とする。固定子20は、疑似ティース725を有する複数の第1スロットSaと、疑似ティース725を備えない複数の第2スロットSbとを有している。疑似ティース725の軸方向先端面の周方向幅は、第1スロットSaの周方向幅の1/3以下を占めている。極間渡り線58、および、極間渡り線59は、第1スロットSaにおいて、疑似ティース725を迂回して配置されている。
【0095】
図21は、図20の矢印XXI部分の拡大図である。図23は、図22の矢印XXIII部分の拡大図である。疑似ティース725は、磁性材料を含む。疑似ティース725は、主として、固定子コア30から連続する材料によって提供されている磁性コア部分によって提供されている。疑似ティース725は、インシュレータ740aを含む。インシュレータ740aは、インシュレータ40から連続する材料によって提供されている。よって、インシュレータ740aは、疑似ティース725における電気的な絶縁性を提供する。極間渡り線58、59は、疑似ティース725に掛けられて配置されている。疑似ティース725は、極間渡り線58、59の位置を規定するための位置決め部材を提供している。
【0096】
第1スロットSaにおいて、極間渡り線58gは、第1スロットSaに位置づけられた極間渡り線758によって提供されている。単コイル51gは、巻終わり部56gを有する。巻終わり部56gは、単コイル51gの先端部位、すなわち径方向内側部位に配置されている。極間渡り線58gは、単コイル51gの巻終わり部56gから、単コイル51gと疑似ティース725との間のスロット空間を斜めに横切るように配置されている。極間渡り線58gは、巻終わり部56gから、周方向、径方向、かつ、軸方向に延在している。極間渡り線58gは、空中を経由している。極間渡り線58gは、疑似ティース725の軸方向端面に乗り上げるように配置されている。さらに、極間渡り線58gは、固定子コア30の軸方向端面を経由して、基端フランジ43qの軸方向端部、すなわち軸方向外側に到達するように配置されている。この結果、極間渡り線58gは、端部渡り線57gにつながっている。
【0097】
極間渡り線58gは、第1部分758g1と、第2部分758g2とを有する。第1部分758g1は、単コイル51gと疑似ティース725との間の部分スロットSa1の中に斜めに配置されている。第2部分758g2は、疑似ティース725と単コイル51qとの間の部分スロットSa2の軸方向外側に配置されている。第1部分758g1の軸方向変位量、および、径方向変位量は、第2部分758g2のそれらより大きい。第2部分758g2は、固定子20の軸方向端面に位置しているから、端部渡り線57gの一部として分類されてもよい。この場合、極間渡り線58gは、第1部分758g1だけによって提供される。第2部分758g2は、端部渡り線57gと、極間渡り線58gとしての第1部分758g1との間に位置づけられた遷移部分とも呼ばれる。
【0098】
第1スロットSaにおいて、極間渡り線59pは、第1スロットSaに位置づけられた極間渡り線759によって提供されている。基端フランジ43gの軸方向端部、すなわち軸方向外側に、端部渡り線57pが配置されている。極間渡り線59pは、端部渡り線57pから、疑似ティース725の軸方向端面を経由するように配置されている。さらに、極間渡り線59pは、疑似ティース725の軸方向端面から、第1スロットSa内の空間を斜めに横切るように配置されている。単コイル51qは、巻始め部55qを有する。巻始め部55qは、単コイル51qの基端部位、すなわち径方向外側部位に配置されている。極間渡り線59pは、疑似ティース725の軸方向端面から巻始め部55qに向けて、周方向、かつ、軸方向に延在している。極間渡り線59pは、空中を経由している。極間渡り線59pは、疑似ティース725の軸方向端面から巻始め部55qに到達するように配置されている。この結果、極間渡り線59pは、単コイル51qの巻始め部55qにつながっている。
【0099】
極間渡り線58gと、極間渡り線59pとは、疑似ティース725の上において交差している。周方向に隣接する2つの単コイル51g、51qのうち、一方の単コイル51gから延びる極間渡り線58gと、他方の単コイル51qから延びる極間渡り線59pとは、極間隙間PGにおいて交差している。極間渡り線59pは、第1部分759p1と、第2部分759p2とを有する。第1部分759p1は、単コイル51gと疑似ティース725との間の部分スロットSa1の軸方向外側に配置されている。第2部分759p2は、疑似ティース725と単コイル51qとの間の部分スロットSa2の中に斜めに配置されている。第2部分759p2の軸方向変位量は、第1部分759p1のそれより大きい。第1部分759p1は、固定子20の軸方向端面に位置しているから、端部渡り線57pの一部として分類されてもよい。この場合、極間渡り線58pは、第2部分759p2だけによって提供される。第1部分759p1は、端部渡り線57pと、極間渡り線59pとしての第2部分759p2との間に位置づけられた遷移部分とも呼ばれる。
【0100】
図24は、図20のXXIV-XXIV線における断面を示している。図25は、図24の矢印XXV部分の拡大図である。図25において、疑似ティース725の軸方向両方の端面の上には、インシュレータ740a、740bがそれぞれ配置されている。疑似ティース725の軸方向両方の端面の上には、ひとつの相のための端部渡り線57jと、他のひとつの相のための極間渡り線58gと、さらに他のひとつの相のための極間渡り線59pとが位置づけられている。極間渡り線58gと、極間渡り線59pとは、端部渡り線57jよりも径方向へずれて配置されている。疑似ティース725の上において、端部渡り線57j、極間渡り線58g、および、極間渡り線59pは、径方向に並ぶように位置づけられている。疑似ティース725の軸方向において、端部渡り線57j、極間渡り線58g、および、極間渡り線59pは、単コイル51gの軸方向におけるコイルエンド高さの範囲内に配置されている。
【0101】
図26は、図24の矢印XXVI部分の拡大図である。図26において、単コイル51mの断面が図示されている。単コイル51mのための基端フランジ43mの径方向外側には、端部渡り線57iと、端部渡り線57sとが配置されている。端部渡り線57iは、単コイル51iと、図示されない同相の単コイルとを接続している。端部渡り線57sは、単コイル51sと、図示されない同相の単コイルとを接続している。基端フランジ43mは、2本の端部渡り線57i、57sを保持するための保持部材を提供している。磁極の径方向外側、すなわち、基端フランジ43mの径方向外側においても、端部渡り線57iと、端部渡り線57sとは、単コイル51gの軸方向におけるコイルエンド高さの範囲内に配置されている。
【0102】
極間渡り線58gの第1部分758g1は、極間隙間PGにおいて、固定子20の軸方向の一端20aと他端20bとの間に延在している。第1部分758g1は、少なくとも周方向に、かつ、軸方向に斜めに延びている。これにより、インシュレータ40の径方向外側において軸方向、または、径方向に積層される渡り線54の数が抑制される。極間渡り線59pの第2部分759p2は、極間隙間PGにおいて、固定子20の軸方向の一端20aと他端20bとの間に延在している。第2部分759p2は、少なくとも周方向に、かつ、軸方向に斜めに延びている。これにより、インシュレータ40の径方向外側において軸方向、または、径方向に積層される渡り線54の数が抑制される。極間渡り線58gと極間渡り線59pとは、基端フランジ43g、43qよりも径方向内側の極間隙間PGにおいて交差している。このため、第1スロットSaの角度範囲においては、渡り線54が径方向に分散している。これにより、インシュレータ40の径方向外側において軸方向、または、径方向に積層される渡り線54の数が抑制される。インシュレータ40の径方向外側において軸方向、または、径方向に積層される渡り線54の数は、2本に抑制されている。
【0103】
図27は、図20の矢印XXVII部分の拡大図である。図28は、図22の矢印XXVIII部分の拡大図である。第2スロットSbにおいて、極間渡り線58kは、第2スロットSbに位置づけられた極間渡り線758によって提供されている。図27、および、図28に図示された極間渡り線58k、第1部分758k1、第2部分758k2は、図21、および、図23に図示される極間渡り線58g、第1部分758g1、第2部分758g2とそれぞれ同じ形状を有している。第2スロットSbにおいて、極間渡り線59gは、第2スロットSbに位置づけられた極間渡り線759によって提供されている。図27、および、図28に図示される極間渡り線59g、第1部分759g1、第2部分759g2は、図21、および、図23に図示される極間渡り線59p、第1部分759p1、第2部分759p2と同じ形状を有している。極間渡り線58kと、極間渡り線59gとは、第2スロットSbにおける軸方向端部の空間(極間隙間PG)において交差している。極間渡り線58k、および、極間渡り線59gは、そこに疑似ティース725が仮想的に存在するかのように、蛇行しており、配置されている。
【0104】
図29は、図27の矢印XXIX部分の拡大図である。図29は、疑似ティース725がない第2スロットSbにおける断面を示している。第2スロットSbにおいて、ひとつの相のための端部渡り線57qと、他のひとつの相のための極間渡り線58kと、さらに他のひとつの相のための極間渡り線59gとが位置づけられている。極間渡り線58kと、極間渡り線59gとは、端部渡り線57qよりも径方向へずれて配置されている。端部渡り線57q、極間渡り線58k、および、極間渡り線59gは、径方向に並ぶように位置づけられている。第2スロットSbの周方向中間部において、端部渡り線57q、極間渡り線58k、および、極間渡り線59gは、単コイル51kのコイルエンド高さの範囲内に配置されている。
【0105】
図28に戻り、極間渡り線58kの第1部分758k1は、極間隙間PGにおいて、固定子20の軸方向の一端20aと他端20bとの間に延在している。第1部分758k1は、少なくとも周方向に、かつ、軸方向に斜めに延びている。これにより、インシュレータ40の径方向外側において軸方向、または、径方向に積層される渡り線54の数が抑制される。極間渡り線59gの第2部分759g2は、極間隙間PGにおいて、固定子20の軸方向の一端20aと他端20bとの間に延在している。第2部分759g2は、少なくとも周方向に、かつ、軸方向に斜めに延びている。これにより、インシュレータ40の径方向外側において軸方向、または、径方向に積層される渡り線54の数が抑制される。極間渡り線58kと極間渡り線59gとは、基端フランジ43k、43hよりも径方向内側の極間隙間PGにおいて交差している。このため、第1スロットSaの角度範囲においては、渡り線54が径方向に分散している。これにより、インシュレータ40の径方向外側において軸方向、または、径方向に積層される渡り線54の数が抑制される。インシュレータ40の径方向外側において軸方向、または、径方向に積層される渡り線54の数は、2本に抑制されている。
【0106】
この実施形態でも、極間渡り線を備えることにより、渡り線を配置するための容積が抑制される。図示の例では、スロットSa、Sbの周方向角度範囲において、渡り線の積層数が抑制される。渡り線が、固定子20の径方向に積層される場合には、固定子20の径方向サイズが抑制される。渡り線が、固定子20の軸方向に積層される場合には、固定子20の軸方向サイズが抑制される。さらに、渡り線は、複数の単コイルのコイルエンドの範囲内、すなわち、単コイルの軸方向高さの範囲内に位置づけられる。これにより、固定子20の軸方向高さが抑制される。
【0107】
第8実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。先行する実施形態では、固定子20の軸方向片側に極間渡り線58、59が配置されている。言い換えると、疑似ティース725の軸方向片側を経由するように極間渡り線58、59が配置されている。これに代えて、この実施形態では、極間渡り線58、59は、固定子20の軸方向両側に分散的に配置されている。
【0108】
図30図31図32は、図21図23図25にそれぞれ相当する図である。これらの図において、極間渡り線58gと、極間渡り線59pとは、固定子20の軸方向両側に沿って延びる部分を備えるように配置されている。極間渡り線58gと、極間渡り線59pとは、疑似ティース725の軸方向における両方の端部に配置されている。第1スロットSaにおいて、極間渡り線58gは、第1スロットSaに位置づけられた極間渡り線858によって提供されている。極間渡り線759は、疑似ティース725の一端に配置されており、極間渡り線858は、疑似ティース725の反対側である他端に配置されている。極間渡り線58gは、疑似ティース725の他端側に配置された第1部分858g1を有する。第1部分858g1は、単コイル51gと疑似ティース725との間における部分スロットSa1において、固定子20の端面上に斜めに配置されている。第1部分858g1は、遷移部分を提供する。極間渡り線58gは、疑似ティース725と単コイル51qとの間を斜めに延びる第2部分858g2を有する。一方の単コイル51gから延びる極間渡り線58gの第2部分858g2と、他方の単コイル51qから延びる極間渡り線59pの第2部分759p2とは、部分スロットSa2において交差している。第2部分858g2は、交差部分を提供している。
【0109】
極間渡り線58gの第2部分858g2は、極間隙間PGにおいて、固定子20の軸方向の一端20aと他端20bとの間に延在している。第2部分858g2は、少なくとも周方向に、かつ、軸方向に斜めに延びている。これにより、インシュレータ40の径方向外側において軸方向、または、径方向に積層される渡り線54の数が抑制される。極間渡り線59pの第2部分759p2は、極間隙間PGにおいて、固定子20の軸方向の一端20aと他端20bとの間に延在している。第2部分759p2は、少なくとも周方向に、かつ、軸方向に斜めに延びている。これにより、インシュレータ40の径方向外側において軸方向、または、径方向に積層される渡り線54の数が抑制される。極間渡り線58gと極間渡り線59pとは、基端フランジ43g、43qよりも径方向内側の極間隙間PGにおいて交差している。この実施形態では、極間渡り線58gと極間渡り線59pとは、部分スロットSa2において交差している。このため、第1スロットSaの角度範囲においては、渡り線54が径方向に分散している。これにより、インシュレータ40の径方向外側において軸方向、または、径方向に積層される渡り線54の数が抑制される。インシュレータ40の径方向外側において軸方向、または、径方向に積層される渡り線54の数は、2本に抑制されている。
【0110】
図33図34図35は、図27図28図29にそれぞれ相当する図である。これらの図において、極間渡り線58kと、極間渡り線59gとは、疑似ティース725なしで、固定子20の軸方向における両方の端部に配置されている。極間渡り線58kと、極間渡り線59gとは、第2スロットSbにおいて、空間を蛇行するように配置されている。言い換えると、極間渡り線58kと、極間渡り線59gとは、直線的な最短経路に配置されていない。極間渡り線58kと、極間渡り線59gとは、クランク状に配置されているともいえる。
【0111】
図34に戻り、極間渡り線58kの第2部分858k2は、極間隙間PGにおいて、固定子20の軸方向の一端20aと他端20bとの間に延在している。第2部分858k2は、少なくとも周方向に、かつ、軸方向に斜めに延びている。これにより、インシュレータ40の径方向外側において軸方向、または、径方向に積層される渡り線54の数が抑制される。極間渡り線59gの第2部分759g2は、極間隙間PGにおいて、固定子20の軸方向の一端20aと他端20bとの間に延在している。第2部分759g2は、少なくとも周方向に、かつ、軸方向に斜めに延びている。これにより、インシュレータ40の径方向外側において軸方向、または、径方向に積層される渡り線54の数が抑制される。極間渡り線58kと極間渡り線59gとは、基端フランジ43k、43hよりも径方向内側の極間隙間PGにおいて交差している。このため、第1スロットSaの角度範囲においては、渡り線54が径方向に分散している。これにより、インシュレータ40の径方向外側において軸方向、または、径方向に積層される渡り線54の数が抑制される。インシュレータ40の径方向外側において軸方向、または、径方向に積層される渡り線54の数は、2本に抑制されている。
【0112】
この実施形態では、極間渡り線58gと極間渡り線59pとは、部分スロットSa2において交差している。これに代えて、極間渡り線58gと極間渡り線59pとは、部分スロットSa2において交差してもよい。
【0113】
この実施形態によると、疑似ティース725の軸方向両側に、極間渡り線58、59が分散的に配置される。これにより、複数の渡り線が分散することによる有利な効果が得られる。例えば、複数の渡り線の間における物理的な相互作用が抑制される。例えば、電気的な容量成分、電気的な誘導成分が抑制される場合がある。また、熱的な放熱が促進される場合がある。この実施形態でも、先行する実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0114】
第9実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。先行する実施形態、特に、第7実施形態では、単コイル51の巻終わり部56は、単コイル51の先端部位、すなわち径方向内側部位に配置されている。これに代えて、この実施形態では、巻終わり部56は、単コイル51の基端部位、すなわち径方向外側部位に配置されている。
【0115】
図36図37図38は、図21図23図25にそれぞれ相当する図である。これらの図において、単コイル51g、51qの巻終わり部56g、56qは、単コイル51g、51qの基端部位に配置されている。第1スロットSaにおいて、極間渡り線58gは、第1スロットSaに位置づけられた極間渡り線958によって提供されている。極間渡り線58gの第1部分958g1は、部分スロットSa1の中において斜めに配置されている。第1部分958g1は、ヨーク32の内面に沿って配置されている。第2部分958g2は、遷移部分でもある。極間渡り線58gと、極間渡り線59pとは、疑似ティース725の軸方向において、軸方向に積層されて交差している。
【0116】
図39図40図41は、図27図28図29にそれぞれ相当する図である。これらの図において、極間渡り線58kと、極間渡り線59gとは、疑似ティース725なしで、第2スロットSbの中に配置されている。極間渡り線58kと、極間渡り線59gとは、極間隙間PGの中間部において、軸方向に積層されて交差している。
【0117】
この実施形態によると、巻終わり部56の位置に制約されることなく、極間渡り線58を配置することができる。同様に、巻始め部55の位置に制約されることなく、極間渡り線59が配置されてもよい。この実施形態でも、先行する実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0118】
第10実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。先行する実施形態では、疑似ティース725を迂回するように、あるいは、そこに疑似ティース725が仮想的に存在するかのように、極間渡り線58、59が配置されている。これに代えて、この実施形態は、疑似ティース725に代わる部材を備える。
【0119】
図42図43図44は、図27図28図29にそれぞれ相当する図である。図44は、図42のXLIV-XLIV線における断面を示す。これらの図において、インシュレータ40は、第2スロットSb内に突起A46を有する。突起A46は、樹脂材料を含む。突起A46は、疑似ティース725に代わって極間渡り線58、59を位置決めする位置決め部材でもある。突起A46の周方向幅は、第2スロットSbの周方向幅より小さい。突起A46の周方向両側には、部分スロットSb1、Sb2が形成されている。突起A46の径方向長さは、固定子20の磁極面より低い。突起A46は、第2スロットSbの周方向の中間部に配置されている。突起A46は、第2スロットSbの周方向のいずれか一方に片寄っていてもよい。突起A46の軸方向高さは、インシュレータ40の軸方向寸法の約1/3である。これに代えて、突起A46の軸方向高さは、インシュレータ40の軸方向寸法に等しい場合がある。突起A46の軸方向高さは、極間渡り線58、59を位置決めするための強度が得られるように設定することができる。
【0120】
極間渡り線58kは、極間渡り線758によって提供されている。極間渡り線59gは、極間渡り線759によって提供されている。極間渡り線58k、59gは、突起A46に掛けられることによって図示される形状に曲げられている。極間渡り線58k、59gは、疑似ティース725に代わる突起A46によって案内されている。この観点から、疑似ティース725、および、突起A46は、極間渡り線58、59を規定の配置位置に案内する案内部材を提供している。この結果、先行する実施形態と同様の極間渡り線が提供される。
【0121】
第11実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。先行する実施形態では、疑似ティース725、および、突起A46は、極間渡り線58、59が掛けられるだけの位置決め部材を提供している。これに代えて、この実施形態は、極間渡り線58、59をより確実に保持するための溝を備える。
【0122】
図45図46図47は、図27図28図29にそれぞれ相当する図である。図47は、図45のXLVII-XLVII線における断面を示す。これらの図において、インシュレータ40は、第2スロットSb内に突起B46を有する。突起B46は、先行する実施形態の突起A46と同程度のサイズを有している。突起B46は、極間渡り線59gを受け入れている溝B47を有する。突起B46は、極間渡り線58kを受け入れている溝B48を有する。溝B47は、突起B46の軸方向の一方端面に配置されている。溝B48は、突起B46の軸方向の他方端面に配置されている。溝B47と、溝B48とは、突起B46の反対面に配置されている。溝B47、B48は、極間渡り線59g、58kを保持している。
【0123】
溝B47は、少なくとも径方向に関して極間渡り線59gを拘束している。溝B47は、極間渡り線59gを拘束しながら受け入れる比較的小さい溝である。極間渡り線59gは、溝B47に向けて、軸方向に沿って圧入されている。溝B47は、周方向、または、接線方向に長手方向を有している。溝B47は、突起B46の弾性によって極間渡り線59gを拘束するスナップフィット溝とも呼ばれる。この結果、溝B47は、周方向、または、接線方向においても、極間渡り線59gを拘束している。溝B47の軸方向深さは、極間渡り線59gの半径以上である。溝B47は、極間渡り線59gを遊動可能な状態で、緩く受け入れる比較的大きい溝によって提供されてもよい。溝B47の軸方向深さは、極間渡り線59gの半径未満でもよい。
【0124】
溝B48は、少なくとも径方向に関して極間渡り線58kを拘束している。溝B48は、極間渡り線58kを拘束しながら受け入れる比較的小さい溝である。極間渡り線58kは、溝B48に向けて、軸方向に沿って圧入されている。溝B48は、周方向、または、接線方向に長手方向を有している。溝B48は、突起B46の弾性によって極間渡り線58kを拘束するスナップフィット溝とも呼ばれる。この結果、溝B48は、周方向、または、接線方向においても、極間渡り線58kを拘束している。溝B48の軸方向深さは、極間渡り線59kの半径以上である。溝B48は、極間渡り線58kを遊動可能な状態で、緩く受け入れる比較的大きい溝によって提供されてもよい。溝B48の軸方向深さは、極間渡り線59kの半径未満でもよい。
【0125】
固定子の製造方法において、そこに配置される極間渡り線を拘束し、保持することにより、巻線工程における極間渡り線の形状安定性を向上するために貢献する。巻線工程において、ひとつの単コイル51kが巻かれた後に、極間渡り線58kは、溝B48に収容され、保持される。これにより、単コイル51の巻きが緩くほぐれる事態が抑制される。巻線工程において、端部渡り線57gが配置された後に、極間渡り線59gは、溝B47に収容され、保持される。これにより、端部渡り線57が緩くほぐれる事態が抑制される。結果的に、溝B47、および、溝B48は、コイル50の形状安定性を向上させる。また、溝B47、および、溝B48は、巻線工程の進行を促進する。
【0126】
極間渡り線58kは、極間渡り線B58によって提供されている。極間渡り線B58の中間部分は、突起B46に拘束されている。これにより、極間渡り線B58は、Z状、または、S状に蛇行するように配置されている。極間渡り線59gは、極間渡り線B59によって提供されている。極間渡り線B59の中間部分は、突起B46に拘束されている。これにより、極間渡り線B59は、Z状、または、S状に蛇行するように配置されている。
【0127】
この実施形態では、固定子20は、溝B47と、溝B48との両方を備える。これに代えて、固定子20は、溝B47と、溝B48とのいずれか一方だけを備えてもよい。この実施形態では、インシュレータ40から延びだす樹脂製の突起B46に、溝B47、または、溝B48が配置されている。これに代えて、疑似ティース725におけるインシュレータ740a、740bに溝B47、または、溝B48を設けてもよい。この実施形態でも、先行する実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0128】
第12実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。先行する実施形態に示されるように、第11実施形態においても、単コイル51の巻終わり部56の位置は多様に変更可能である。
【0129】
図48図49図50は、図27図28図29にそれぞれ相当する図である。図50は、図48のL-L線における断面を示す。これらの図において、単コイル51kの巻終わり部56kは、径方向外側部位に位置づけられている。極間渡り線58kは、極間渡り線C58によって提供されている。極間渡り線C58は、固定子コア30の内面に沿って配置されている。この実施形態でも、先行する実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0130】
第13実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。先行する実施形態では、複数の回転子磁極12は、等間隔に配置されている。これに代えて、複数の回転子磁極12に含まれる一部の磁極は、等間隔位置から、わずかにずれて配置されていてもよい。この実施形態が開示する回転子10は、先行する実施形態の回転子として利用可能である。
【0131】
図51において、複数の回転子磁極12の多くは、等間隔に配置されている。例えば、互いに隣接する3つの磁極12a、12b、12cは、互いに間隔G1だけ離れている(G1=G1)。複数の回転子磁極12は、周方向にずれて配置された、ひとつ、または、複数の回転子磁極12を備える。周方向にずれて配置された回転子磁極12は、ずれ磁極とも呼ばれる。例えば、互いに隣接する2つの磁極12d、12eは、間隔G2だけ離れている。互いに隣接する2つの磁極12e、12fは、間隔G3だけ離れている。間隔G2と、間隔G3とは、等しくない(G2≠G3)。間隔G2と間隔G3とは、G2<G3、または、G2>G3である。これにより、磁極12eは、進角方向、または、遅角方向にずれる。磁極12eは、ずれ磁極を提供する。ずれ量は、図示困難な微小量である。回転子10は、ひとつのずれ磁極、または、複数のずれ磁極を備えることができる。例えば、回転子10は、3つのずれ磁極を備える場合がある。ずれ磁極は、回転子10に観測されるトルク変動を望ましい波形に調節することを可能とする。
【0132】
他の実施形態
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0133】
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
【0134】
上記実施形態では、回転電機1は、インナロータ型である。これに代えて、回転電機1は、アウタロータ型でもよい。上記実施形態では、回転電機1は、電動機を提供する。これに代えて、回転電機1は、発電機、または発電電動機を提供してもよい。また、回転電機1は、サーボモータ、ステップモータなどと呼ばれる多様な用途に利用可能である。
【0135】
上記実施形態では、固定子コア30は、複数のティース31とヨーク32とが連続した鋼板で提供されている。これに代えて、固定子コア30は、いわゆる多分割コアによって提供されてもよい。この場合、固定子コア30は、複数の部分コアの連結体によって提供される。ひとつの部分コアは、例えば、ひとつの部分環状の部分ヨークと、ひとつのティースとの連続体によって提供される。
【0136】
上記実施形態では、複数の導電部材60は、端子台80、280にインサート成形されている。これに代えて、複数の導電部材60は、端子台80、280に、圧入固定されてもよい。また、複数の導電部材60は、端子台80、280なしで、インシュレータ40に支持、または固定されてもよい。例えば、複数の導電部材60は、インシュレータ40に直接的にスナップフィットによって固定されてもよい。かかる構成においても、接続部65、66、67、68、69、270が、極間隙間PGに配置されるから、回転電機1のコイル端52における体格が小型化される。上記実施形態では、コネクタ部82は、ハウジング3の外において、径方向外側に向けて開口している。これに代えて、コネクタ部82は、ハウジング3の外において、軸方向に向けて開口していてもよい。この場合、コネクタ部82は、軸方向に沿って操作される外部回部のコネクタを軸方向のいずれかの方向から受け入れることにより電気的な接続を形成する。
【0137】
上記実施形態では、コイル50は、スター結線である。これに代えて、コイル50は、デルタ結線でもよい。この場合、ひとつの導電部材60と少なくとも2つのコイル端52との接続部が、極間隙間PGに配置される。さらに、上記実施形態では、ひとつの相巻線は、1本の素線によって提供されている。これに代えて、ひとつの相巻線は、複数の素線の並列回路として提供されてもよい。この場合、ひとつの単コイル51は、複数の素線の並列回路によって提供される。例えば、2本の素線によってひとつの単コイル51が提供される場合、スター結線では、ひとつの電力端子を提供する導電部材60と2つのコイル端52との接続部が、極間隙間PGに配置される。例えば、2本の導線によってひとつの単コイル51が提供される場合、デルタ結線では、ひとつの電力端子を提供する導電部材60と4つのコイル端52との接続部が、極間隙間PGに配置される。
【0138】
上記実施形態では、導電部材60は、バスバーである。これに代えて、導電部材60は、端子のための電極、リード線、基板上の導体箔でもよい。これらにおいても、接続部が極間隙間PGに配置されることによって小型化が図られる。上記実施形態では、コイル50は、銅製または銅合金製である。これに代えて、コイル50は、アルミニウム製またはアルミニウム合金製でもよい。上記実施形態では、導電部材とコイル端52との接続は、ヒュージングによって提供されている。これに代えて、導電部材とコイル端52との接続は、熱かしめ、溶接、はんだ付けなどによって提供されてもよい。
【0139】
上記実施形態では、導電部材60は、電力端として径方向に沿って延びるコネクタ端子を有している。これに代えて、導電部材60は、軸方向に沿って延びてもよい。この場合にも、接続部が極間隙間PGに配置されることにより、軸方向における小型化が図られる。上記実施形態では、複数の電力端部材61、62、63は、コネクタ端子を提供している。これに代えて、電力端部材61、62、63は、圧着端子、はんだ端子などを提供してもよい。
【0140】
上記実施形態では、極間隙間PGは、空洞である。これに代えて、極間隙間PGは、導電部材60を配置した後に、樹脂部材によって埋められてもよい。また、極間隙間PGに配置された導電部材60は、薄い樹脂材料によってコーティングされていてもよい。どの構成においても、導電部材60の一部である接続部が極間隙間PGに配置されることによって、小型の回転電機1が提供される。
【0141】
上記実施形態では、巻始めの複数のコイル端を電力端とし、巻き終わりの複数のコイル端を中性点としている。これに代えて、巻き終わりの複数のコイル端を電力端とし、巻始めの複数のコイル端を中性点としてもよい。さらに、導電部材60を用いることなく、コイル端を電力端、または中性点としてもよい。例えば、巻始めまたは巻き終わりの複数のコイル端を長く引出して電力端としてもよい。例えば、巻始めまたは巻き終わりの複数のコイル端を互いに直接的に接合して中性点としてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
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