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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 31/00 20060101AFI20231212BHJP
   G01N 33/18 20060101ALI20231212BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20231212BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20231212BHJP
   G01N 30/74 20060101ALI20231212BHJP
   B01J 20/285 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
G01N31/00 D
G01N33/18 B
G01N30/88 C
G01N30/26 A
G01N30/74 E
G01N30/74 F
B01J20/285
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022536438
(86)(22)【出願日】2021-07-15
(86)【国際出願番号】 JP2021026574
(87)【国際公開番号】W WO2022014666
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-01-04
(31)【優先権主張番号】P 2020122726
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 章雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴之
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-178902(JP,A)
【文献】川崎伸之 ほか,TOC検出器付サイズ排除クロマトグラフィーを用いた霞ヶ浦中DOCの分子量分布の検討,日本陸水学会 第72回大会 講演要旨集,セッションID:3C5,日本,日本陸水学会,2007年09月,P1
【文献】山村 寛,サイズ排除クロマトグラフ-有機物分析のための新しい検出器-,SCIENTIFIC INSTRUMENT NEWS,日本,株式会社日立ハイテクノロジーズ,2019年09月,Vol.62 No.2,P5479-5485
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/00 -31/22
G01N 33/00 -33/46
G01N 30/00 -30/96
B01J 20/285
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系試料を検査するための検査装置であって、
前記水系試料を流す第1流路と、
リン酸溶離液を流す第2流路と、
前記水系試料に含有される物質群を大きさに応じて分離する分離装置と、
前記分離装置で大きさに応じて分離した各物質を酸化させ、各物質に含まれる有機炭素を測定する測定部とを備え、
前記分離装置は、
サイズ排除クロマトグラフィー用のカラムと、
前記第1流路に流す移動相に前記水系試料を導入する導入部と、を含み、
前記第2流路は、前記カラムと前記導入部との間の前記第1流路に接続され、前記導入部から前記カラムに至る間の前記水系試料に前記リン酸溶離液を合流させる、検査装置。
【請求項2】
前記分離装置は、
前記導入部の下流に設けられ、移動相に溶媒を混合する第1ミキサをさらに備え、
前記第1ミキサは、
前記第2流路が接続され、
前記水系試料を導入した移動相に前記第2流路からの前記リン酸溶離液を混合させる、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記分離装置は、
前記導入部の上流に設けられ、移動相に溶媒を混合する第2ミキサをさらに備える、請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記導入部で導入する前記水系試料は、オートサンプラから供給される、請求項1に記載の検査装置。
【請求項5】
前記分離装置から前記測定部に至る流路の間に、紫外可視分光光度計および分光蛍光高度計のうちの少なくとも一方をさらに備えた、請求項1に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系試料を検査するための検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水系試料を検査するために、水中のDOM(Dissolved organic matter:溶存有機物)の量を検査することが行われる。このDOMの量を特定するために、検査の一つの指標として、TOC(Total Organic Carbon:全有機体炭素)量が使用されている。TOC量は、有機物(有機炭素)を酸化させて二酸化炭素を発生させ、発生した二酸化炭素をNDIR(Nondispersive infrared:非分散型赤外線)式センサーなどを用いて測定することで得られる。
【0003】
有機炭素を酸化させる方法としては、触媒を用いて燃焼する方法、紫外線を用いる方法、および二段階で酸化する方法などが知られている(特許文献1)。
【0004】
近年の研究で、DOMの分子サイズによって分解のしやすさが異なることが分かってきた。非特許文献1には、DOMの分子量分布を得るために、SEC(Size-exclusion chromatography:サイズ排除クロマトグラフィー)と、TOC検出器とを組み合わせた検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-178902号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】川崎伸之,松重一夫,今井章雄,小松一弘,大岸史和,矢幡雅人,三上博久,後藤武、「TOC検出器付サイズ排除クロマトグラフィーを用いた霞ヶ浦中DOCの分子量分布の検討」、日本陸水学会第72回大会・講演要旨集、セッションID:3C5、2007年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1に開示された検査装置は、SECとTOC検出器とを組み合わせることで、紫外可視分光光度計または蛍光光度計などでは検出できない有機炭素も検出できる。
【0008】
非特許文献1に開示された検査装置では、DOMの分子量分布を得るためにSECを用いているが、当該SECに水系試料を導入する際には溶離液を添加した移動相に水系試料を導入する必要がある。この場合、溶離液と水系試料とのイオン強度が大きく異なるため、水系試料のイオン強度を溶離液のイオン強度と同等となるようにあらかじめ調整している。
【0009】
しかし、水系試料のイオン強度をあらかじめ調整しておくと、時間の経過とともに水系試料の高分子濃度が低下する問題があった。また、水系試料の高分子濃度が時間の経過とともに低下するためオートサンプラなどの水系試料をセットしてから測定までの時間が長くなる装置構成を採用することができない問題があった。
【0010】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、事前の水系試料のイオン強度調整を必要としない装置を提供することを一の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明のある局面に従う検査装置は、水系試料を検査するための検査装置である。検査装置は、水系試料を流す第1流路と、リン酸溶離液を流す第2流路と、水系試料に含有される物質群を大きさに応じて分離する分離装置と、分離装置で大きさに応じて分離した物質各物質を酸化させ、各物質に含まれる有機炭素を測定する測定部とを備える。分離装置は、サイズ排除クロマトグラフィー用のカラムと、第1流路に流す移動相に水系試料を導入する導入部と、を含む。第2流路は、カラムと導入部との間の第1流路に接続され、導入部からカラムに至る間の水系試料にリン酸溶離液を合流させる。
【発明の効果】
【0012】
上記の検査装置によれば、第2流路がカラムと導入部との間に接続され、導入部からカラムに至る間の水系試料にリン酸溶離液を合流させるので、事前の水系試料のイオン強度調整を必要とせず、水系試料の高分子濃度の変化を抑制して正確な各物質に含まれる有機炭素を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態の検査装置1の構成を模式的に示す図である。
図2】分離装置100および前処理部220の構成を模式的に示す図である。
図3】酸化部の構成を模式的に示す図である。
図4】変形例にかかる検査装置1aの構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0015】
[検査装置1の構成]
図1は、実施の形態の検査装置1の構成を模式的に示す図である。検査装置1は、水系試料2を検査するための装置である。図1を参照して、検査装置1は、分離装置100とTOC装置200(測定部)とを備える。検査装置1は、分離装置100によって水系試料2中の物質を大きさに応じて分離し、大きさに応じた順で分離装置100から溶出される各物質を酸化させ、各物質に含まれる有機炭素の量(TOC量)をTOC装置200によって測定する。これにより、検査装置1は、大きさの異なる水系試料2中の溶存有機物ごとにTOC量を測定する。
【0016】
分離装置100は、測定対象である水系試料2に含有される物質群を大きさに応じて分離する。分離装置100は、典型的には、SECにより水系試料2に含有される物質群を大きさに応じて分離する。分離装置100は、サンプル注入部110(導入部)およびカラム120を備える。
【0017】
サンプル注入部110は、溶離液を流す流路F内に水系試料2を注入する。溶離液は、典型的には、リン酸緩衝液を用いることができる。使用する溶離液は、カラム120の種類ならびにTOC装置200およびTOCの測定への影響を考慮して選択される。
【0018】
サンプル注入部110から流路F内に注入された水系試料2中の物質は、カラム120を通過することで、分子サイズごとに分離する。より具体的には、分子サイズの大きな(一般には分子量の大きな)物質から順次、カラム120より溶出され、TOC装置200に送られる。
【0019】
TOC装置200は、カラム120からの溶出液(分離された物質と溶離液との混合液)に含まれるTOC量を測定する。TOC装置200は、分離された物質に含まれる無機炭素を除去するための前処理部220と、無機炭素を除去した後の物質に含まれる全炭素量(すなわち、TOC量)を、測定するための測定部240とを備える。
【0020】
前処理部220は、カラム120からの溶出液を酸性にすることで水系試料2中の無機炭素を二酸化炭素に転化させて除去する。前処理部220は、溶出液を酸性にするための試薬を流路内に添加する添加部222と、二酸化炭素を脱気するための脱気部224とを含む。
【0021】
添加部222は、TOC装置200の入り口に設けられている。添加部222によって添加される試薬は、たとえば、リン酸、硫酸などである。添加部222は、ポンプPにより試薬を流路Fに送る。
【0022】
脱気部224は、添加部222の下流に設けられている。脱気部224は、典型的には、デガッサであり、添加部222で試薬を添加したことで発生した無機炭素由来の二酸化炭素を脱気する。脱気部224で脱気された後の溶出液(水系試料2と溶離液との混合液)は、測定部240に送られる。
【0023】
測定部240は、無機炭素を除去した後の水系試料2中の有機炭素を酸化させて二酸化炭素にし、発生した二酸化炭素を測定することでTOC量を測定する。
【0024】
測定部240は、無機炭素を除去した後の水系試料2中の有機炭素を酸化させる酸化部242と、有機炭素を酸化させることで発生した二酸化炭素(気体)と液体とを分離するための気液分離部244と、分離させて得られた二酸化炭素を測定するためのCO2検出器246とを備える。
【0025】
酸化部242は、湿式UV酸化方式により有機炭素を酸化させる。より具体的には、酸化部242は、無機炭素を除去した後の水系試料2(溶出液)に酸化剤を添加した後、紫外線を照射することで有機炭素を酸化させる。酸化部242の構成については、図2を参照して後述する。なお、酸化部242は、TOC量が所定量より低い場合には酸化剤を添加しなくてもよい。
【0026】
気液分離部244は、液体と気体とを分離し、液体を廃液として外部に排出し、気体をCO2検出器246に送る。気液分離部244によって分離された気体には、有機炭素を酸化させることで発生した二酸化炭素が少なくとも含まれる。
【0027】
CO2検出器246は、気液分離部244から送られた気体中の二酸化炭素濃度を測定する。CO2検出器246は、典型的には、非分散性赤外線ガス検出器(NDIR検出器)である。なお、CO2検出器246は、NDIR検出器に限られず、二酸化炭素濃度を測定可能な検出器であれば、他の検出器であってもよい。
【0028】
[分離装置100および前処理部220の構成]
図2は、分離装置100および前処理部220の構成を模式的に示す図である。本実施の形態において、溶離液は、純水とリン酸緩衝溶液とを別々のポンプで送液し、流路F内で混合させることで生成される。
【0029】
分離装置100は、水を送液する第1溶媒送液部130と、リン酸緩衝液(リン酸溶離液)を送液する第2溶媒送液部140とを備える。ここで、第1溶媒送液部130からカラム120に送液する水が、移動相としてカラム120に流れる。第1溶媒送液部130からカラム120に至る流路(第1流路)の途中にサンプル注入部110が設けられており、サンプル注入部110で注入した水系試料2を第1溶媒送液部130から送液する水でカラム120に流している。
【0030】
第2溶媒送液部140は、リン酸緩衝液を流す流路(第2流路)を介して第1溶媒送液部130からカラム120に至る流路(第1流路)に接続される。第1溶媒送液部130からカラム120に至る流路(第1流路)には、サンプル注入部110より下流に設けられるピークミキサ111(第1ミキサ)と、サンプル注入部110より上流に設けられるLCミキサ112(第2ミキサ)とを有している。第2溶媒送液部140は、LCミキサ112ではなくピークミキサ111で接続し、サンプル注入部110により水系試料2が注入された水(溶媒,移動相)に対してリン酸緩衝液を合流させる。
【0031】
第2溶媒送液部140は、LCミキサ112で接続し、水系試料2が注入される前の水に対してリン酸緩衝液を合流させることも可能である。しかし、水系試料2が注入される前の水に対してリン酸緩衝液を合流させる場合、リン酸緩衝液と水系試料とのイオン強度が大きく異なるため、水系試料のイオン強度を溶離液のイオン強度と同等となるようにあらかじめ調整する必要がある。
【0032】
しかし、水系試料2のイオン強度をあらかじめ調整するためにリン酸を添加しておくと、時間の経過とともに水系試料2の高分子濃度が低下する。水系試料2の高分子濃度の低下は、イオン強度を調整するためにリン酸を添加したことにより、水系試料2の高分子が沈殿したものと考えられる。また、水系試料2の高分子濃度が時間の経過とともに低下するためオートサンプラなどの水系試料2をセットしてから測定までの時間が長くなる装置構成を採用することができない。
【0033】
そこで、本実施の形態に係る検査装置1では、第2溶媒送液部140をLCミキサ112ではなくピークミキサ111に接続し、サンプル注入部110により水系試料2が注入された水に対してリン酸緩衝液を合流させる。つまり、検査装置1では、サンプル注入部110からカラム120に至る間の水系試料2にリン酸緩衝液を合流させる。ここで、サンプル注入部110からカラム120に至る間とは、サンプル注入部110からカラム120に至る流路のいずれかの位置であればよい。検査装置1では、サンプル注入部110からカラム120に至る間の水系試料2にリン酸緩衝液を合流させることで、事前の水系試料2のイオン強度調整を必要とせず、水系試料2の高分子濃度の変化を抑制して正確なTOC量を測定することができる。検査装置1では、サンプル注入部110にオートサンプラ113を接続している。これにより、検査装置1は、複数の水系試料2をセットし、自動で各々の水系試料2のTOC量を測定することができる。もちろん、検査装置1は、サンプル注入部110にオートサンプラ113を接続せず、各々の水系試料2をサンプル注入部110から注入してもよい。
【0034】
第1溶媒送液部130および第2溶媒送液部140は、それぞれ、溶媒中に溶存する気体を脱気する前処理部として第1脱気部132および第2脱気部142を備える。
【0035】
無機炭素由来の二酸化炭素を除去するための脱気部224は、容器225と、容器225内に配置されたチューブ226と、容器225内の圧力を下げる真空ポンプ227とを備える。
【0036】
チューブ226は、水系試料2が流れる流路Fに接続されている。チューブ226は、ガス透過チューブであって、液体が透過しない一方、気体が透過する素材で構成されている。チューブ226は、典型的には、非晶質テフロン(登録商標)樹脂素材のガス透過チューブ、ポリテトラフルオロエチレン素材の中空糸膜などであるが、これに限定されるものではない。
【0037】
真空ポンプ227によって容器225内を減圧すると、流路F内の気体がチューブ226の外に移動し、無機炭素由来の二酸化炭素が水系試料2から除去される。なお、チューブ226を内部に配置した容器225の温度を高く維持することができれば、二酸化炭素の脱気効率を上げることができる。そのため、容器225の温度を保温する保温部を設けることが望ましい。
【0038】
検査装置1は、カラムオーブン60をさらに備える。カラムオーブン60は、カラム120の温度を調節する。また、無機炭素由来の二酸化炭素を除去するための脱気部224の容器225は、カラムオーブン60内に配置されている。すなわち、カラムオーブン60により、カラム120および容器225の温度が調節される。つまり、カラムオーブン60は、カラム120の温度を調節するだけでなく、容器225の温度を保温する保温部でもある。
【0039】
なお、図2に示す例では、カラムオーブン60によりカラム120および容器225の温度を調節する例を示したが、カラム120および容器225の温度を維持できる装置であれば他の装置で代用してもよい。
【0040】
[酸化部242の構成]
図3は、酸化部242の構成を模式的に示す図である。酸化部242は、添加部422と、照射部424とを備える。添加部422は、酸化部242の入り口に設けられている。照射部424は、添加部422の下流に設けられている。
【0041】
添加部422は、無機炭素を除去した後の水系試料2(溶出液)に酸化剤を添加する。酸化剤は、たとえば、過硫酸ナトリウムなどである。添加部422は、ポンプPにより酸化剤を流路Fに送る。
【0042】
照射部424は、流路Fを流れる水系試料2(溶出液)に紫外線を照射するUVランプ426を含む。照射部424の構成については、円柱形状のUVランプと、UVランプからの紫外線を受けるらせん状の流路を含む。
【0043】
添加部422と照射部424との間の流路Fには、流入部500が設けられている。流入部500は、炭素を含まない気体を、流路F内に流量を制御して流入させる。炭素を含まない気体は、たとえば、窒素、ヘリウム、酸素などである。本実施の形態においては、炭素を含まない気体は、窒素である。
【0044】
流入部500は、窒素供給源520とマスフローコントローラ540とを備える。窒素供給源520から流路Fに窒素ガスが供給される。マスフローコントローラ540は、流路Fに供給される窒素ガスの流量を制御する。
【0045】
より具体的には、マスフローコントローラ540は、窒素供給源520から流路Fに供給される窒素ガスの流量が一定となるように、窒素ガスの流量を制御する。
【0046】
[変形例にかかる検査装置1a]
図4は、変形例にかかる検査装置1aの構成を模式的に示す図である。上記実施の形態において、検査装置1は、測定装置として、TOC装置200だけを備えている。なお、検査装置1は、TOC装置200に加えて他の測定装置を備えていてもよい。変形例にかかる検査装置1aは、TOC装置200に加えて、紫外可視分光光度計12および蛍光光度計14をさらに備える点で上記実施の形態に示した検査装置1と異なる。
【0047】
紫外可視分光光度計12および蛍光光度計14は、分離装置100とTOC装置200との間の流路F上に設けられている。より具体的には、紫外可視分光光度計12および蛍光光度計14は、カラム120から添加部222に至る経路の間に設けられている。
【0048】
TOC装置200においては、水系試料に対して化学的処理を加えることで有機炭素由来の二酸化炭素を測定してTOC量を測定する。一方、紫外可視分光光度計12および蛍光光度計14においては、水系試料に対して物理的・化学的な処理を加えず、物質の組成・形状・機能を変化させることなく水系試料を測定することができる。
【0049】
そのため、紫外可視分光光度計12、蛍光光度計14、TOC装置200の順に配置することで、一つの流路上に各計測装置を配置することができ、分離装置100から溶出された溶出液を各測定装置に分岐させる必要がない。そのため、各測定装置で用いる水系試料の液量を減らす必要がなく、測定精度を維持できる。
【0050】
なお、変形例にかかる検査装置1aは、紫外可視分光光度計12および蛍光光度計14を備えるとした。なお、検査装置は、TOC装置200に加えて、紫外可視分光光度計12および蛍光光度計14のうちの一方を備える構成であってもよい。
【0051】
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0052】
(第1項)一態様に係る検査装置(1,1a)は、水系試料(2)を検査するための検査装置であって、水系試料を流す第1流路と、リン酸溶離液を流す第2流路と、水系試料に含有される物質群を大きさに応じて分離する分離装置(100)と、分離装置で大きさに応じて分離した物質各物質を酸化させ、各物質に含まれる有機炭素を測定する測定部(200)とを備え、分離装置は、サイズ排除クロマトグラフィー用のカラム(120)と、第1流路に流す移動相に水系試料を導入する導入部(110)と、を含み、第2流路は、カラムと導入部との間の第1流路に接続され、導入部からカラムに至る間の水系試料にリン酸溶離液を合流させる。
【0053】
第1項に記載の検査装置によれば、第2流路がカラムと導入部との間に接続され、導入部からカラムに至る間の水系試料にリン酸溶離液を合流させるので、事前の水系試料のイオン強度調整を必要とせず、水系試料の高分子濃度の変化を抑制して正確なTOC量を測定することができる。
【0054】
(第2項)第1項に記載の検査装置によれば、分離装置は、導入部の下流に設けられ、移動相に溶媒を混合する第1ミキサ(111)をさらに備え、第1ミキサは、第2流路が接続され、水系試料を導入した移動相に第2流路からのリン酸溶離液を混合させる。
【0055】
第2項に記載の検査装置によれば、第1ミキサで水系試料を導入した移動相に第2流路からのリン酸溶離液を混合させることができ、水系試料の高分子濃度の変化を抑制して正確なTOC量を測定することができる。
【0056】
(第3項)第2項に記載の検査装置によれば、分離装置は、導入部の上流に設けられ、移動相に溶媒を混合する第2ミキサ(112)をさらに備える。
【0057】
第3項に記載の検査装置によれば、第2ミキサで水系試料を導入する前の移動相に溶媒を混合させることができる。
【0058】
(第4項)第1項~第3項のうちいずれか1項に記載の検査装置によれば、導入部で導入する前記水系試料は、オートサンプラ(113)から供給される、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の検査装置。
【0059】
第4項に記載の検査装置によれば、複数の水系試料をセットし、自動で各々の水系試料のTOC量を測定することができる。
【0060】
(第5項)第1項~第4項のうちいずれか1項に記載の検査装置によれば、分離装置からTOC装置に至る流路の間に、紫外可視分光光度計(12)および分光蛍光高度計(14)のうちの少なくとも一方をさらに備えた。
【0061】
第5項に記載の検査装置によれば、カラムから溶出された水系試料を各測定装置に分岐させることなく、各測定装置での測定を行うことができる。カラムから溶出された水系試料を各測定装置に分岐させる必要がないため、各測定装置で用いる水系試料の液量を保つことができ、その結果、測定精度を維持できる。
【0062】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
1,1a 検査装置、2 水系試料、12 紫外可視分光光度計、14 蛍光光度計、60 カラムオーブン、100 分離装置、110 サンプル注入部、120 カラム、130 第1溶媒送液部、132 第1脱気部、140 第2溶媒送液部、142 第2脱気部、200 TOC装置、220 前処理部、222 添加部、224 脱気部、225 容器、226 チューブ、227 真空ポンプ、240 測定部、242 酸化部、244 気液分離部、246 CO2検出器、F 流路、M ミキサ、P ポンプ。
図1
図2
図3
図4