(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】スタッカクレーン
(51)【国際特許分類】
B65G 1/04 20060101AFI20231212BHJP
B65G 1/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B65G1/04 501
B65G1/00 511Z
(21)【出願番号】P 2022541109
(86)(22)【出願日】2021-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2021004889
(87)【国際公開番号】W WO2022030035
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2020131899
(32)【優先日】2020-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】藤木 淳一
【審査官】宮部 菜苗
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-226909(JP,A)
【文献】特開2006-122286(JP,A)
【文献】実開昭62-136921(JP,U)
【文献】国際公開第2011/074312(WO,A1)
【文献】特開平10-118208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/04
B65G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の棚から物品を取り出して搬送するスタッカクレーンであって、
走行装置と、
前記走行装置に設けられたマストと、
前記マストに沿って昇降する昇降台と、
前記昇降台上に前記物品を移載する移載装置と、
難燃性又は不燃性の材料からなり、前記昇降台の物品載置面に向かって移動するように切り離し可能に支持されているカバーと、
前記カバーを通常時に保持しており、前記カバーを切り離し可能なロック装置と、
物品火災発生後に物品が前記物品載置面に置かれると、前記ロック装置に前記カバーを切り離させるコントローラと、を備えたスタッカクレーン。
【請求項2】
前記カバーは、前記物品より大きく、前記物品を覆うことができるサイズを有する、請求項1に記載のスタッカクレーン。
【請求項3】
前記物品は、上面に開口部を有する容器であり、
前記カバーは少なくとも前記容器の前記開口部を塞ぐことができる形状である、請求項1に記載のスタッカクレーン。
【請求項4】
物品が前記物品載置面に置かれたことを検出するセン
サを、さらに備えている、請求項1に記載のスタッカクレーン。
【請求項5】
前記カバーは、自重により前記物品載置面へ向かって移動可能である、請求項4に記載のスタッカクレーン。
【請求項6】
前記カバーを前記物品載置面へ向かって付勢する弾性部材をさらに備えている、請求項4に記載のスタッカクレーン。
【請求項7】
前記カバーを通常時に保持しており、前記カバーを切り離し可能なロック装置と、
物品火災発生後に物品が前記物品載置面に置かれたことを検出するセンサと、
前記センサからの情報に応じて前記ロック装置に前記カバーを切り離させるコントローラと、をさらに備えている、請求項2に記載のスタッカクレーン。
【請求項8】
前記カバーは、自重により前記物品載置面へ向かって移動可能である、請求項7に記載のスタッカクレーン。
【請求項9】
前記カバーを前記物品載置面へ向かって付勢する弾性部材をさらに備えている、請求項7に記載のスタッカクレーン。
【請求項10】
前記カバーを上下方向に移動可能に支持するガイドをさらに備えている、請求項1に記載のスタッカクレーン。
【請求項11】
前記カバーを上下方向に移動可能に支持するガイドをさらに備えている、請求項2に記載のスタッカクレーン。
【請求項12】
前記カバーの内側面に設けられ高温によって発泡する発泡消火剤をさらに備えている、請求項1に記載のスタッカクレーン。
【請求項13】
前記カバーの内側面に設けられ高温によって発泡する発泡消火剤をさらに備えている、請求項2に記載のスタッカクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタッカクレーンに関し、特に、火災抑制機能を有するスタッカクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動倉庫は、複数のラックを有している。各ラックは、並列に並んで配置されており、延伸方向及び上下方向に並んだ複数の棚を有している。
自動倉庫は、ラックの棚に荷物を下ろす又はラックの棚から荷物を積み込むための搬送装置として、スタッカクレーンを有している。スタッカクレーンは、レールに沿って走行する走行装置と、移載装置と、移載装置を上下方向に移動させる昇降装置とを有している。レールの一部はラックの側方に並んで配置されており、スタッカクレーンは、ラックの側方において目的の棚の近傍に移載装置を配置して、その状態で荷物を移載する。
【0003】
従来では、二次電池製造工程に設置されるスタッカクレーンは、二次電池の電池セルの火災対策として各種防火機能を搭載している。
例えば、スタッカクレーンは、消火装置、延焼防止装置を有している。消火装置は、例えば、ラックに収納されている二次電池の初期消火を行う。延焼防止装置は、シャッタからなり、昇降台に載せられた二次電池を覆うことで、荷物搬送中に電池セルの飛散防止、延焼防止を実現する。最後に、スタッカクレーンは、シャッタで覆われた荷物を水没槽まで搬送して、荷物を水没槽に投入する。
【0004】
なお、出火した物品が保管される間口をふさいで消火し、消火後に水槽まで搬送する技術が知られている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の技術では、シャッタは構造が複雑であって部品点数が増加するので、構造上のスペースやコストが増加する。
また、シャッタ内で火勢が強まった場合、センサ類への影響やシャッタの動作不具合が生じる可能性がある。シャッタを開けなくなれば、荷物を水没槽に投入できなくなる。
【0007】
本発明の目的は、スタッカクレーンにおいて、防火機構を簡素化し、駆動部品を減らすことで信頼性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0009】
本発明の一見地に係るスタッカクレーンは、複数の棚から物品を取り出して搬送するものであって、走行装置と、マストと、昇降台と、移載装置と、カバーとを備えている。
マストは走行装置に設けられている。
昇降台は、マストに沿って昇降する。
移載装置は、昇降台上に物品を移載する。
カバーは、難燃性又は不燃性の材料からなり、昇降台の物品載置面に向かって移動するように切り離し可能に支持されている。
【0010】
このスタッカクレーンでは、棚において物品に火災が生じると、例えば初期消火後に、スタッカクレーンの移載装置が、物品を昇降台の物品載置面に載置する。続いて、カバーを切り離して移動させることで、カバーが物品を覆う。その後、スタッカクレーンは、例えば、物品を水没槽まで搬送し、カバーと共に物品を水没槽に投入する。
なお、カバー切り離しと物品の搬送開始とは、先後反対でもよい。
なお、カバーによって物品を覆う作業の後に物品とカバーを搬送する先は、他の消火施設であってもよい。
【0011】
上記のようにカバーが設けられていることで、初期消火した物品を例えば水没槽へ搬送する際に、火炎の飛散や延焼を防止できる。また、昇降台上のセンサ等もカバーによって保護される。
特に、カバーは難燃性又は不燃性の材料からなるので、昇降台上で物品から再出火した場合でも、延焼を防止できる。
【0012】
特に、カバーは切り離しができれば十分であるので、簡易な構造になり、駆動部品を減らすことで信頼性が高くなっている。
特に、カバーは例えば保持部から切り離されているので、物品を例えば水没槽へ投入する際にカバーも一緒に投入できる。つまり、物品を水没槽に投入する際にカバーを元の位置に戻す等の操作が不要である。
【0013】
カバーは物品より大きく、物品を覆うことができるサイズを有していてもよい。カバーは、例えば、物品の外形に近い箱型の蓋である。
このスタッカクレーンでは、カバーは物品を覆うことができるので、確実に延焼や火炎の飛散を防止できる。
【0014】
物品は、上面に開口部を有する容器であってもよい。カバーは少なくとも容器の開口部を塞ぐことができる形状であってもよい。なお、「塞ぐ」とは開口部の一部又は全部を上側から覆っている状態である。
このスタッカクレーンでは、物品の上面の開口部を覆うことで、カバーのサイズを最小限にとどめることができる。
【0015】
スタッカクレーンは、
カバーを通常時に保持しており、カバーを切り離し可能なロック装置と、
物品火災発生後に物品が物品載置面に置かれたことを検出するセンサと、
センサからの検出情報に応じてカバーを切り離させるコントローラと、
をさらに備えていてもよい。
このスタッカクレーンでは、カバー切り離し動作は、ロック装置の保持を解除するだけで実行される。
【0016】
カバーは、自重により物品載置面へ向かって移動可能であってもよい。
このスタッカクレーンでは、カバーを駆動する駆動部品を減らすことができ、そのため信頼性が向上する。
【0017】
スタッカクレーンは、カバーを物品載置面へ向かって付勢する弾性部材をさらに備えていてもよい。
このスタッカクレーンでは、弾性部材によって、カバーを押し出すことで素早く、確実に移動させることができる。
【0018】
スタッカクレーンは、カバーを上下方向に移動可能に支持するガイドをさらに備えていてもよい。
このスタッカクレーンでは、ガイドがあることにより通常時にカバーが不必要に揺れることを防止でき、切り離し時はカバーを物品載置面上の狙った位置に落下させることができる。
【0019】
スタッカクレーンは、カバーの内側面に設けられ高温によって発泡する発泡消火剤をさらに備えていてもよい。
このスタッカクレーンでは、カバーが物品を覆ってから高温状態が維持又は再開されたなら、発泡消火剤が発泡してカバー内を充填することで、消火を行う。
なお、発泡消火剤とは、例えば、化学発泡剤、物理発泡剤、発泡性マイクロカプセルである。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るスタッカクレーンでは、防火機構が簡素化され、駆動部品を減らすことで信頼性が高くなっている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態が採用された自動倉庫の概略平面図。
【
図6】昇降台の模式的正面図(カバー切り離し前)。
【
図9】スタッカクレーンの制御構成を示すブロック図。
【
図11】昇降台の模式的正面図(カバー切り離し後)。
【
図12】第2実施形態の昇降台の模式的正面図(カバー切り離し前)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1.第1実施形態
(1)自動倉庫全体
図1及び
図2を用いて、本発明に係る一実施形態としての自動倉庫1を説明する。
図1は、第1実施形態が採用された自動倉庫の概略平面図である。
図2は、自動倉庫の概略側面図である。
なお、以下の説明で用いる「X方向」はスタッカクレーン3の走行方向であり、「Y方向」は移載装置による物品の移載方向であり、「Z方向」は移載装置の昇降方向である。X方向、Y方向及びZ方向は互いに直交している。
【0023】
自動倉庫1は、主に、ラック2と、スタッカクレーン3とから構成されている。
【0024】
(2)ラック
ラック2は、第1ラック2A及び第2ラック2Bを有している。第1ラック2A及び第2ラック2Bは、
図1のX方向に延びるスタッカクレーン通路にあるレール4を挟むようにY方向に並んで配置されている。第1ラック2A及び第2ラック2Bは、X方向とZ方向に並んだ複数の棚6から構成されている。
【0025】
図3を用いて、棚6を説明する。
図3は、棚及びケースの正面図である。棚6は、左右一対の荷物支承部材6aを有している。各棚6には、図から明らかなように、ケース7(後述)を載置可能である。左右一対の荷物支承部材6a間は、後述のスライドフォーク15の上下方向の移動を許容するフォーク通過間隙6bとなっている。
【0026】
図4及び
図5を用いて、ケース7を説明する。
図4は、ケースの斜視図である。
図5は、ケース及び二次電池の断面図である。
ケース7は、上面に開口部7aを有する容器である。具体的には、ケース7は、仕切りによって区画された複数のスペースを有しており、各スペースには二次電池8が収納される。なお、以下の説明では、単に「ケース7」と記載する場合は、二次電池8を収納した状態を含む。
【0027】
ラックの各棚6に又は複数棚6ごとに所定の間隔及び個数の火災検知器9(
図9)が設けられている。火災検知器9は、システムコントローラ53(後述)に接続されている。なお、火災検知器9は公知技術であって、種類は特に限定されない。
【0028】
自動倉庫1は、
図1に示すように、水没槽10を有している。水没槽10は、火災が発生したケース7を水没させるための水槽である。水没槽10は、ラック2のX方向片側に設けられている。
水没槽10にはリフタ(図示せず)が設けられており、ケース7がリフタに受け渡されると、リフタが下降し、これによりケース7が水中に沈められる。
【0029】
(3)スタッカクレーンの機構
図2を用いて、スタッカクレーン3を説明する。
スタッカクレーン3は、レール4に沿って、X方向に移動可能に案内されている。スタッカクレーン3は、走行台車12と、走行台車12の上部のX方向両側に設けられた一対のマスト13と、マスト13に昇降自在に装着された昇降台14と、昇降台14に設けられケース7を移載するためのスライドフォーク15とを有している。
【0030】
走行台車12には、レール4の上面を走行面とする車輪(図示せず)が設けられている。走行台車12は、さらに、車輪(図示せず)を回転させるための走行モータ(図示せず)や減速機(図示せず)を有している。
【0031】
昇降台14は、マスト13にガイドされる一対のガイド部材25と、ガイド部材25同士間を延びる支持台26とを有している。
【0032】
スタッカクレーン3は、昇降台14を昇降させる昇降機構27(
図9)を有している。昇降機構27は、昇降台14を駆動させるためのベルト(図示せず)、昇降用プーリ(図示せず)、昇降用プーリを駆動するための昇降モータ(図示せず)を有している。
【0033】
昇降台14の支持台26には、スライドフォーク15が設けられている。スライドフォーク15は、Y方向両側でかつ水平方向に進出可能である。スライドフォーク15は、移載モータ(図示せず)に対して減速機やベルトを介して接続されている。
スライドフォーク15は、昇降台14にあるケース7を棚6に移載したり、棚6にあるケース7を昇降台14に移載したりできる。ケース7は、
図6に示すように、昇降台14にあるときにはスライドフォーク15の上面(物品載置面の一例)に載っている。
【0034】
スタッカクレーン3は、
図6及び
図9に示すように、消火装置31を有している。消火装置31は、ラック2内の火災を初期消火する装置である。消火装置31は、昇降台14に設けられている。
消火装置31は、例えば、消火剤として炭酸ガスが充填された炭酸ガスボンベ(図示せず)と、消火ホース(図示せず)と、消火ノズル33とを有している。そして、棚6に収納されているケース7に発煙や火災が発生した場合には、火災検知器9により火災が検出され、その検出情報に基づいて、消火装置31による消火処理が行われる。
【0035】
(4)火災抑制装置
スタッカクレーンは、火災抑制装置41を有している。
図6~
図8を用いて、火災抑制装置41を説明する。
図6は、昇降台の模式的正面図(カバー切り離し前)である。
図7は、昇降台の模式的平面図である。
図8は、ロック装置の模式的正面図である。
火災抑制装置41は、初期消火が行われたケース7が昇降台14内で再出火するのを抑える装置である。火災抑制装置41は、昇降台14に設けられている。
火災抑制装置41は、カバー43と、カバー43を切り離し可能に保持するロック装置45とを有している。カバー43は、昇降台14内においてスライドフォーク15の上方に配置されている。カバー43は、切り離されると、スライドフォーク15に向かって下方に移動する。
【0036】
具体的には、カバー43はケース7より大きく、ケース7を覆うことができるサイズを有している。より具体的には、カバー43は、ケース7の外形に近く、つまり平面部43aと側面部43bからなる平面視矩形の箱状である。
また、カバー43は、難燃性又は不燃性の材料からなる。例えば、カバー43は、鉄板、不燃ボード、不燃シートのいずれかであってもよく、他の材料からなる構造に不燃ボード又は不燃シートが貼られたものでもよい。
【0037】
ロック装置45は、カバー43を通常時に保持しており、ケース7が昇降台14に移載された後に上記保持を解除することでカバー43を切り離す。
カバー43は、自重によりスライドフォーク15へ向かって移動する。つまり、カバー43によるケース7を覆う動作は、ロック装置45の保持を解除するだけで実行される。
【0038】
図8を用いて、ロック装置45の詳細構成を説明する。
図8は、火災抑制装置の模式的正面図である。
ロック装置45は、
図8に示すように、カバー43の上面に装着された磁性体61と、その上方に配置された電磁石63と、通電装置65とを有している。通電装置65から電磁石63への通電がONされていると、電磁石63が磁性体61を磁力により固定保持している。したがって、カバー43は、
図6に示すように、スライドフォーク15及びケース7の上方に離れた位置に維持されている。
電磁石63への通電がOFFされると、電磁石63の磁力が消滅して、磁性体61が電磁石63から離れる。それにより、カバー43は落下する。カバー43は鉛直方向への落下を続けた後に、最終的に、
図11に示すように、スライドフォーク15に衝突する。つまり、カバー43の側面部43bの下面が、スライドフォーク15の上に載った状態になる。このとき、カバー43の平面部43aの下面がケース7の上面に当接していても、離れていてもよい。なお、
図11は、昇降台の模式的正面図(カバー切り離し後)である。
【0039】
このスタッカクレーン3では、カバー43を駆動する駆動部品を減らすことができ、そのため信頼性が向上する。
【0040】
火災抑制装置41は、カバー43を上下方向に移動可能に支持するガイド47をさらに備えている。ガイド47があることにより通常時にカバー43が不必要に揺れることを防止でき、切り離し時はカバー43を狙った位置に落下させることができる。
具体的には、ガイド47は、上方から延びて、カバー43の四隅を鉛直方向に支持する部材である。ガイド47は、
図6の通常時にはカバー43の上側部分を支持している。したがって、通常時にはカバー43の揺動が抑えられている。ガイド47は、
図11のカバー落下時にはカバー43の上部から離れている。したがって、ケース7及びカバー43が移動する際に、ガイド47がそれら部材に干渉することがない。
【0041】
(5)スタッカクレーンの制御構成
図9を用いて、スタッカクレーン3の制御構成を説明する。
図9は、スタッカクレーンの制御構成を示すブロック図である。
スタッカクレーン3は、クレーンコントローラ51を有している。クレーンコントローラ51は、自動倉庫1全体を制御するシステムコントローラ53と通信可能である。
クレーンコントローラ51は、プロセッサ(例えば、CPU)と、記憶装置(例えば、ROM、RAM、HDD、SSDなど)と、各種インターフェース(例えば、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、通信インターフェースなど)を有するコンピュータシステムである。クレーンコントローラ51は、記憶部(記憶装置の記憶領域の一部又は全部に対応)に保存されたプログラムを実行することで、各種制御動作を行う。
【0042】
クレーンコントローラ51は、単一のプロセッサで構成されていてもよいが、各制御のために独立した複数のプロセッサから構成されていてもよい。
クレーンコントローラ51の各要素の機能は、一部又は全てが、制御部を構成するコンピュータシステムにて実行可能なプログラムとして実現されてもよい。その他、制御部の各要素の機能の一部は、カスタムICにより構成されていてもよい。
【0043】
クレーンコントローラ51には、走行台車12、昇降機構27、及びスライドフォーク15が接続されており、クレーンコントローラ51はこれら装置を制御可能である。
クレーンコントローラ51には、消火装置31及び火災抑制装置41が接続されており、クレーンコントローラ51はこれら装置を制御可能である。
クレーンコントローラ51には、さらに、荷存在検出センサ(図示せず)、荷はみセンサ55といった各種センサが接続されている。
クレーンコントローラ51には、図示しないが、ケース7の大きさ、形状及び位置を検出するセンサ、各装置の状態を検出するためのセンサ及びスイッチ、並びに情報入力装置が接続されている。
【0044】
(6)消火動作
図10を用いて、スタッカクレーン3がケース7を消火する動作を説明する。
図10は、消火制御動作を示すフローチャートである。
以下に説明する制御フローチャートは例示であって、各ステップは必要に応じて省略及び入れ替え可能である。また、複数のステップが同時に実行されたり、一部又は全てが重なって実行されたりしてもよい。
さらに、制御フローチャートの各ブロックは、単一の制御動作とは限らず、複数のブロックで表現される複数の制御動作に置き換えることができる。
なお、各装置の動作は、制御部から各装置への指令の結果であり、これらはソフトウェア・アプリケーションの各ステップによって表現される。
【0045】
ステップS1では、ラック2内で火災が発生したか否かが判断される。具体的には、システムコントローラ53が、火災検知器9からの検出信号によって、上記判断を実行する。このとき、いずれの棚6のケース7で火災が発生したかも検出される。
ステップS2では、スタッカクレーン3により棚6内での初期(一次)消火活動が行われる。具体的には、システムコントローラ53は火災検知器9による火災感知の信号を受信すると、スタッカクレーン3のクレーンコントローラ51にその旨を通知する。そして、スタッカクレーン3は、昇降台14を当該棚6の前に移動し、消火ノズル33から炭酸ガスをケース7に向けて噴射して消火を行う。
【0046】
ステップS3では、スタッカクレーン3のスライドフォーク15が、ケース7を昇降台14の内部に移載する。これにより、ケース7は、
図6に示すように、スライドフォーク15の上面(物品載置面の一例)に置かれる。このとき、スライドフォーク15が原点まで移動したか、ケース7がスライドフォーク15の上に載っているか等が確認される。また、各種センサ(例えば、荷はみセンサ55)が無効に設定される。
【0047】
ステップS4では、カバー43を切り離して落下させる。この結果、
図11に示すように、カバー43がケース7を覆う。このとき、例えば荷はみセンサ55はカバー43の外側にあるので、これ以降はケース7での火炎や高温状態から保護される。
【0048】
ステップS5では、スタッカクレーン3は、ケース7を水没槽10まで搬送し、カバー43と共にケース7を水没槽10に投入する。なお、搬送時には、カバー43によって、ケース7での火炎の広がりが抑えられている。
なお、カバー43の切り離し(ステップS4)とケース7の搬送(ステップS5)の開始とは、先後反対でもよい。
【0049】
(7)実施形態の効果
上記のようにカバー43が設けられていることで、初期消火したケース7を例えば水没槽10へ搬送する際に、ケース7の飛散や延焼を防止できる。また、昇降台14上の荷はみセンサ55(昇降台14に設けられた各種センサの一例)などもカバー43によって保護される。
カバー43は難燃性又は不燃性の材料からなるので、昇降台14上でケース7から再出火した場合でも、延焼を防止できる。
【0050】
カバー43は切り離しができれば十分であるので、簡易な構造になり、駆動部品を減らすことで信頼性が高くなっている。
カバー43は例えばロック装置45から切り離されているので、ケース7を例えば水没槽10へ投入する際にカバー43も一緒に投入できる。つまり、ケース7を水没槽10に投入する際にカバー43を元の位置に戻す等の操作が不要である。
【0051】
2.第2実施形態
第1実施形態ではカバーは切り離された後に自重によって移動したが、カバーは物品載置面側に移動しさえすればよいので、移動方法は特に限定されない。カバーは例えば他の部材によって付勢力を与えられてもよい。
図12を用いて、そのような実施例を第2実施形態として説明する。
図12は、第2実施形態の昇降台の模式的正面図(カバー切り離し前)である。なお、第2実施形態は基本的な構成及び動作が第1実施形態と同じであるので、異なる点のみを説明する。
【0052】
図12に示すように、昇降台14は、カバー43をスライドフォーク15の上面へ向かって付勢する弾性部材71を有している。弾性部材71は、圧縮バネである。また、弾性部材71は、コイルバネ、板バネ、その他のバネでもよい。弾性部材71は、ゴムや他の弾性部材でもよい。
カバー切り離し時には、弾性部材71によって、カバー43を下方に押し出すことで素早く、確実に移動させることができる。
【0053】
3.第3実施形態
第1実施形態ではカバーの少なくとも内側面は不燃性又は難燃性材料であったが、消火に貢献する他の材料が内側面に塗布されていてもよい。
図13を用いて、そのような実施例を第3実施形態として説明する。
図13は、第3実施形態のカバーの模式的正面図である。
【0054】
図13に示すように、カバー43の内側面には、高温によって発泡する発泡消火剤73が設けられている。
この実施形態では、カバー43がケース7を覆ってから高温状態が維持又は再開されたなら、発泡消火剤73が発泡膨張してカバー43内を充填することで、消火を行う。
なお、発泡消火剤とは、例えば、化学発泡剤、物理発泡剤、発泡性マイクロカプセルである。
発泡消火剤73は、カバーの平面部43a及び側面部43bの一方のみに設けられていてもよい。
【0055】
4.実施形態の共通事項
上記第1~第3実施形態は、下記の構成及び機能を共通に有している。
スタッカクレーン(例えば、スタッカクレーン3)は、複数の棚(例えば、棚6)から物品(例えば、ケース7)を取り出して搬送するものであって、走行装置と、マストと、昇降台と、移載装置と、カバーとを備えている。
マスト(例えば、マスト13)は走行装置(例えば、走行台車12)に設けられている。
昇降台(例えば、昇降台14)は、マストに沿って昇降する。
移載装置(例えば、スライドフォーク15)は、昇降台上に物品を移載する。
カバー(例えば、カバー43)は、難燃性又は不燃性の材料からなり、昇降台の物品載置面(例えば、スライドフォーク15の上面)に向かって移動するように切り離し可能に支持されている。
【0056】
このスタッカクレーンでは、棚において物品が燃えると、例えば初期消火後に、スタッカクレーンの移載装置が、物品を昇降台の物品載置面に載置する。続いて、カバーを切り離して移動させることで、カバーが物品を覆う。その後、スタッカクレーンは、例えば、物品を水没槽(例えば、水没槽10)まで搬送し、カバーと共に物品を水没槽に投入する。
【0057】
5.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【0058】
(1)ロック装置の変形例
ロック装置は、カバーを切り離すことができればよいので、具体的な構造は限定されない。
ロック装置は、カバーの上面にフランジを設けて、その下部を移動可能部材によって支持する機構でもよい。移動可能部材を側方又は斜め下方に移動させることで、カバーを落下させることができる。
ロック装置は、カバーの上面に穴付き部材をも設けそれにピンを通して保持する機構でもよい。ピンを抜くことでピンと穴付き部材の係合を解除して、カバーを落下させることができる。
ロック装置は、カバーの上面にリングを設け、それにフックを引っ掛けて保持する機構でもよい。フックを回転することでリングとフックの係合を解除して、カバーを落下させることができる。
【0059】
(2)カバーの変形例
カバーは火炎の広がりを抑えることができればよいので、形状は特に限定されない。
カバーは物品と共に移載可能であればよいので、落下時に昇降台の物品載置面には当接しなくてもよい。つまり、カバーはケースの上のみに当接してもよい。
カバーは少なくとも容器の開口部を塞ぐことができる形状であればよいので、カバーのサイズを最小限にとどめることができる。カバーはケースの開口部の少なくとも一部を覆っており、それにより火炎が外部に広がりにくくなっていればよい。第1実施形態ではカバーはケース上部及び側部を覆っているが、上部のみを覆っていてもよいし、上部及び側部の一部のみを覆っていてもよい。
カバーは容器の開口部を密封していてもよいし、開口部から離れて配置されていてもよい。
カバーは箱形状に限定されない。例えば、カバーは、平板状であってもよい。
【0060】
(3)移載装置の変形例
昇降台の支持台に設けられる物品移載装置は、スライドフォークに限定されない。
移載装置は、リア又はフロントのフック式でもよい。具体的には、Y方向両側でかつ水平方向に進出可能なアームにフックを設け、ケースにフックを引掛けることにより、昇降台と棚の間でケースを移載してもよい。このとき、カバーはケースの上部のみを覆う形状であれば、アームと干渉しない。
【0061】
(4)物品載置面の変形例
物品載置面は、昇降台において、移載装置によって物品が置かれる場所である。物品載置面は、物品が昇降台と共に移動可能になればそれでよいので、スライドフォークの上面に限定されない。例えば、昇降台に設けられた底面であってもよい。
【0062】
(5)ガイドの変形例
ガイドは四辺を支持してもよい。
ガイドは、コロ等の回転部材を有していてもよい。
ガイドは省略されてもよい。
【0063】
(6)棚の変形例
二次電池を収納する棚は、電池充放電設備の一部であってもよい。二次電池の充電及び放電を行う電気装置を処理装置とし、複数の二次電池を収容した電池容器を物品として、この電池容器を電気装置に対して物品搬送装置にて受け渡し及び受け取りを行うように構成することが記載されている。充放電設備では、ケース7に収容された複数の二次電池8に対する充電、エイジング、放電などの各工程が行われる。
棚自体に、例えばスプリンクラーのような消火装置が設けられていてもよい。
【0064】
(7)消火装置の変形例
スタッカクレーンの消火装置は省略されてもよい。
消火装置は、スタッカクレーンのマストに設けられていてもよい。
消火剤としては、高発泡の泡状の消火剤、粉末状の消火剤であってもよい。
【0065】
(8)水没槽の変形例
消火装置及びカバーによる消火によって火災を鎮火できれば、物品を水没槽まで搬送しないようにしてもよい。
水没槽の構成は特に限定されない。
水没槽の代わりに、他の消火施設に搬送してもよい。他の消火装置は、例えば、水等の消火剤を物品に噴射する消火設備である。
【0066】
(9)物品の変形例
電池収納ケースの構成や形状は特に限定されない。
物品は二次電池やケース以外のものであってもよい。
【0067】
(10)消火作業の変形例
第1実施形態では一連の消火動作は自動で行われていたが、これら動作は自動ではなくてもよい。すなわち、火災検出、初期消火、カバーの切り離し、二次消火のいずれか又は全てを作業員の動作に基づいて行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、火災抑制機能を有するスタッカクレーンに広く適用できる。
【符号の説明】
【0069】
1 :自動倉庫
2 :ラック
2A :第1ラック
2B :第2ラック
3 :スタッカクレーン
4 :レール
6 :棚
6a :荷物支承部材
6b :フォーク通過間隙
7 :ケース
7a :開口部
8 :二次電池
9 :火災検知器
10 :水没槽
12 :走行台車
13 :マスト
14 :昇降台
15 :スライドフォーク
25 :ガイド部材
26 :支持台
27 :昇降機構
30 :物品
31 :消火装置
33 :消火ノズル
41 :火災抑制装置
43 :カバー
43a :平面部
43b :側面部
45 :ロック装置
47 :ガイド
51 :クレーンコントローラ
53 :システムコントローラ
55 :荷はみセンサ
61 :磁性体
63 :電磁石