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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】コイル装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20231212BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20231212BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H01F17/00 B
H01F17/04 A
H05K3/18 A
H05K3/18 G
H05K3/18 J
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022556167
(86)(22)【出願日】2021-10-01
(86)【国際出願番号】 JP2021036417
(87)【国際公開番号】W WO2023053442
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川口 雅史
(72)【発明者】
【氏名】酒井 将一郎
(72)【発明者】
【氏名】野口 航
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/147993(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/007858(WO,A1)
【文献】特開2021-013004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00
H01F 17/04
H05K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのプリント配線板を備え、
前記少なくとも1つのプリント配線板は、第1主面及び第2主面を含むベースフィルムと、前記第1主面上において渦巻き状に巻回されている第1配線部により構成されている第1導電パターンとを有し、
隣り合う前記第1配線部の間の平均距離は、3μm以上15μm以下であり、
隣り合う前記第1配線部の間の平均距離は、前記第1配線部の一方端と他方端との間で等間隔に配置されている10点の測定点の各々において測定された隣り合う前記第1配線部の高さ方向における中央部の間の距離の合計を10で除した値であり、
前記第1配線部の長さは、150mm以上1000mm以下であ
前記第1配線部は、前記第1主面上に配置されている第1シード層と、前記第1シード層上に配置されている第1電解めっき層と、前記第1シード層及び前記第1電解めっき層を覆っている第2電解めっき層とを有する、コイル装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つのプリント配線板は、前記第2主面上において渦巻き状に巻回されている第2配線部により構成されている第2導電パターンをさらに有し、
前記第2配線部の長さは、150mm以上1000mm以下である、請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記第1シード層は、前記第1主面上に配置されているスパッタ層と、前記スパッタ層上に配置されている無電解めっき層とを含み、
前記スパッタ層は、前記第1電解めっき層と異なる材料により形成されており、
前記無電解めっき層は、前記第1電解めっき層と同一材料により形成されている、請求項に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記第1シード層は、前記第1電解めっき層と同一材料により形成されている1つの層である、請求項に記載のコイル装置。
【請求項5】
前記1つの層は、スパッタ層である、請求項に記載のコイル装置。
【請求項6】
前記第1配線部の高さを前記第1配線部の幅で除した値は0.15以上5以下である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のコイル装置。
【請求項7】
平面視における前記第1導電パターンの幅及び長さは、それぞれ10mm以下及び15mm以下である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のコイル装置。
【請求項8】
前記第1配線部の高さを隣り合う前記第1配線部の間の平均距離で除した値は、2以上25以下である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のコイル装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つのプリント配線板は、前記ベースフィルムの厚さ方向において重ねて配置されている複数のプリント配線板である、請求項1に記載のコイル装置。
【請求項10】
前記複数のプリント配線板のうちの少なくとも1つは、前記第2主面上において渦巻き状に巻回されている第2配線部により構成されている第2導電パターンをさらに有し、
前記第2配線部の長さは、150mm以上1000mm以下である、請求項9に記載のコイル装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つのプリント配線板は、前記ベースフィルムの厚さ方向において重ねて配置されている複数のプリント配線板であり、
前記複数のプリント配線板の各々は、前記第2主面上において巻回されており、かつ前記第1配線部に電気的に接続されている第2配線部により構成されている第2導電パターンをさらに有し、
隣り合う前記第2配線部の間の平均距離は、3μm以上15μm以下であり、
隣り合う前記第2配線部の間の平均距離は、前記第2配線部の一方端と他方端との間で等間隔に配置されている10点の測定点の各々において測定された隣り合う前記第2配線部の高さ方向における中央部の間の距離の合計を10で除した値であり、
前記複数のプリント配線板のうちの1つである第1プリント配線板の前記第1配線部は前記ベースフィルムの厚さ方向において前記第1プリント配線板に隣り合う前記複数のプリント配線板のうちの他の1つである第2プリント配線板の前記第2配線部に電気的に接続されており、
前記第1配線部の長さ及び前記第2配線部の長さを前記複数のプリント配線板について合計した値は、300mm以上2000mm以下であ
前記第2配線部は、前記第2主面上に配置されている第2シード層と、前記第2シード層上に配置されている第3電解めっき層と、前記第2シード層及び前記第3電解めっき層を覆っている第4電解めっき層とを有する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のコイル装置。
【請求項12】
複数のプリント配線板を備え、
前記複数のプリント配線板の各々は、第1主面及び第2主面を含むベースフィルムと、前記第1主面上において巻回されている第1配線部により構成されている第1導電パターンと、前記第2主面上において渦巻き状に巻回されており、かつ前記第1配線部に電気的に接続されている第2配線部により構成されている第2導電パターンとを有し、
前記複数のプリント配線板は、前記ベースフィルムの厚さ方向において重ねて配置されており、
前記複数のプリント配線板のうちの1つである第1プリント配線板の前記第1配線部は前記ベースフィルムの厚さ方向において前記第1プリント配線板に隣り合う前記複数のプリント配線板のうちの他の1つの前記第2配線部に電気的に接続されており、
隣り合う前記第1配線部の間の平均距離及び隣り合う前記第2配線部の間の平均距離は3μm以上15μm以下であり、
隣り合う前記第1配線部の間の平均距離は、前記第1配線部の一方端と他方端との間で等間隔に配置されている10点の測定点の各々において測定された隣り合う前記第1配線部の高さ方向における中央部の間の距離の合計を10で除した値であり、
隣り合う前記第2配線部の間の平均距離は、前記第2配線部の一方端と他方端との間で等間隔に配置されている10点の測定点の各々において測定された隣り合う前記第2配線部の高さ方向における中央部の間の距離の合計を10で除した値であり、
前記第1配線部の長さ及び前記第2配線部の長さを前記複数のプリント配線板について合計した値は、300mm以上2000mm以下であ
前記第1配線部は、前記第1主面上に配置されている第1シード層と、前記第1シード層上に配置されている第1電解めっき層と、前記第1シード層及び前記第1電解めっき層を覆っている第2電解めっき層とを有し、
前記第2配線部は、前記第2主面上に配置されている第2シード層と、前記第2シード層上に配置されている第3電解めっき層と、前記第2シード層及び前記第3電解めっき層を覆っている第4電解めっき層とを有する、コイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2016-9854号公報(特許文献1)には、コイル装置が記載されている。特許文献1に記載のコイル装置は、プリント配線板を有している。プリント配線板は、ベースフィルムと、導電パターンとを有している。導電パターンは、ベースフィルムの主面上において渦巻き状に巻回されていることにより、コイルを構成している。
【0003】
また、国際公開第2018/211733号(特許文献2)には、プリント配線板が記載されている。特許文献2に記載のプリント配線板は、ベースフィルムと、導電パターンとを有している。導電パターンは、ベースフィルムの主面上に配置されており、コイルを構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-9854号公報
【文献】国際公開第2018/211733号
【発明の概要】
【0005】
本開示のコイル装置は、少なくとも1つのプリント配線板を備えている。少なくとも1つのプリント配線板は、第1主面及び第2主面を含むベースフィルムと、第1主面上において渦巻き状に巻回されている第1配線部により構成されている第1導電パターンとを有する。隣り合う第1配線部の間の平均距離は、3μm以上15μm以下である。第1配線部の長さは、150mm以上1000mm以下である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、コイル装置100の分解斜視図である。
図2図2は、プリント配線板10の平面図である。
図3図3は、プリント配線板10の底面図である。
図4図4は、図2のIV-IVにおける断面図である。
図5図5は、プリント配線板10の製造方法を示す工程図である。
図6図6は、スパッタリング工程S211後におけるベースフィルム20の断面図である。
図7図7は、無電解めっき工程S212におけるベースフィルム20の断面図である。
図8図8は、レジスト形成工程S22後におけるベースフィルム20の断面図である。
図9図9は、第1電解めっき工程S23後におけるベースフィルム20の断面図である。
図10図10は、レジスト除去工程S24後におけるベースフィルム20の断面図である。
図11図11は、シード層除去工程S25後におけるベースフィルム20の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
特許文献1に記載のコイル装置及び特許文献2に記載のプリント配線板は、コイルを構成している配線部の巻き数を増加させつつコイルを小型化することに改善の余地がある。
【0008】
本開示は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本開示は、コイルを構成している配線部の巻き数を増加させつつコイルを小型化することが可能なコイル装置を提供するものである。
【0009】
[本開示の効果]
本開示のコイル装置によると、コイルを構成している配線部の巻き数を増加させつつコイルを小型化することが可能である。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
まず、本開示の実施形態を列挙して説明する。
【0011】
(1)本開示の一実施形態に係るコイル装置は、少なくとも1つのプリント配線板を備える。少なくとも1つのプリント配線板は、第1主面及び第2主面を含むベースフィルムと、第1主面上において渦巻き状に巻回されている第1配線部により構成されている第1導電パターンとを有している。隣り合う第1配線部の間の平均距離は、3μm以上15μm以下である。第1配線部の長さは、150mm以上1000mm以下である。
【0012】
上記(1)のコイル装置によると、コイルを構成している配線部の巻き数を増加させつつコイルを小型化することが可能である。
【0013】
(2)上記(1)のコイル装置では、少なくとも1つのプリント配線板が、第2主面上において渦巻き状に巻回されている第2配線部により構成されている第2導電パターンをさらに有していてもよい。第2配線部の長さは、150mm以上1000mm以下であってもよい。
【0014】
(3)上記(1)又は(2)のコイル装置では、第1配線部が、第1主面上に配置されているシード層と、シード層上に配置されている第1電解めっき層と、シード層及び第1電解めっき層を覆っている第2電解めっき層とを有していてもよい。
【0015】
(4)上記(3)のコイル装置では、シード層が、第1主面上に配置されているスパッタ層と、スパッタ層上に配置されている無電解めっき層とを含んでいてもよい。スパッタ層は、第1電解めっき層と異なる材料により形成されていてもよい。無電解めっき層は、第1電解めっき層と同一材料により形成されていてもよい。
【0016】
(5)上記(3)のコイル装置では、シード層が、第1電解めっき層と同一材料により形成されている1つの層であってもよい。
【0017】
(6)上記(5)のコイル装置では、1つの層が、スパッタ層であってもよい。
(7)上記(1)から(6)のコイル装置では、第1配線部の高さを第1配線部の幅で除した値が、0.15以上5以下であってもよい。
【0018】
(8)上記(1)から(7)のコイル装置では、平面視における第1導電パターンの幅及び長さが、それぞれ10mm以下及び15mm以下であってもよい。
【0019】
(9)上記(1)から(8)のコイル装置では、第1配線部の高さを隣り合う第1配線部の間の平均距離で除した値が、2以上25以下であってもよい。
【0020】
(10)上記(1)のコイル装置では、少なくとも1つのプリント配線板が、ベースフィルムの厚さ方向において重ねて配置されている複数のプリント配線板であってもよい。
【0021】
(11)上記(10)のコイル装置では、複数のプリント配線板のうちの少なくとも1つが、第2主面上において渦巻き状に巻回されている第2配線部により構成されている第2導電パターンをさらに有していてもよい。第2配線部の長さは、150mm以上1000mm以下であってもよい。
【0022】
(12)上記(1)から(9)のコイル装置では、少なくとも1つのプリント配線板がベースフィルムの厚さ方向において重ねて配置されている複数のプリント配線板であってもよい。複数のプリント配線板の各々は、第2主面上において巻回されており、かつ第1配線部に電気的に接続されている第2配線部により構成されている第2導電パターンをさらに有していてもよい。隣り合う第2配線部の間の平均距離は、3μm以上15μm以下であってもよい。複数のプリント配線板のうちの1つである第1プリント配線板の第1配線部は、ベースフィルムの厚さ方向において第1プリント配線板に隣り合う複数のプリント配線板のうちの他の1つである第2プリント配線板の第2配線部に電気的に接続されていてもよい。第1配線部の長さ及び第2配線部の長さを複数のプリント配線板について合計した値は、300mm以上2000mm以下であってもよい。
【0023】
(13)本開示の他の実施形態に係るコイル装置は、複数のプリント配線板を備える。複数のプリント配線板の各々は、第1主面及び第2主面を含むベースフィルムと、第1主面上において巻回されている第1配線部により構成されている第1導電パターンと、第2主面上において渦巻き状に巻回されており、かつ、第1配線部に電気的に接続されている第2配線部により構成されている第2導電パターンとを有している。複数のプリント配線板は、ベースフィルムの厚さ方向において重ねて配置されている。複数のプリント配線板のうちの1つである第1プリント配線板の第1配線部は、ベースフィルムの厚さ方向において第1プリント配線板に隣り合う複数のプリント配線板のうちの他の1つである第2プリント配線板の第2配線部に電気的に接続されていてもよい。隣り合う第1配線部の間の平均距離及び隣り合う第2配線部の間の平均距離は、3μm以上15μm以下である。第1配線部の長さ及び第2配線部の長さを複数のプリント配線板について合計した値は、300mm以上2000mm以下である。
【0024】
上記(13)のコイル装置によると、コイルを構成している配線部の巻き数を増加させつつコイルを小型化することが可能である。
【0025】
[本開示の実施態様の詳細]
本開示の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面では、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さない。
【0026】
(実施形態に係るコイル装置の構成)
実施形態に係るコイル装置(以下「コイル装置100」とする)の構成を説明する。
【0027】
図1は、コイル装置100の分解斜視図である。図1に示されるように、コイル装置100は、複数のプリント配線板10を有している。図1の例では、コイル装置100は、3つのプリント配線板10を有している。但し、コイル装置100が有しているプリント配線板10の数は、1つであってもよい。
【0028】
図2は、プリント配線板10の平面図である。図3は、プリント配線板10の底面図である。図4は、図2のIV-IVにおける断面図である。図2図3及び図4に示されるように、プリント配線板10は、ベースフィルム20と、第1配線部30と、第2配線部40とを有している。
【0029】
ベースフィルム20は、第1主面20aと、第2主面20bとを有している。第2主面20bは、第1主面20aの反対面である。第1主面20aから第2主面20bに向かう方向を、ベースフィルム20の厚さ方向ということがある。ベースフィルム20は、可撓性のある絶縁性材料により形成されている。すなわち、プリント配線板10は、フレキシブルプリント配線板である。ベースフィルム20を構成している材料の具体例としては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート及びフッ素樹脂が挙げられる。
【0030】
第1配線部30は、第1主面20a上に配置されている。第1配線部30は、平面視において(第1主面20aに直交する方向から見て)、渦巻き状に巻回されている。平面視において渦巻き状に巻回されている第1配線部30は、コイルとして機能する第1導電パターン50を構成している。第1導電パターン50の外形は、例えば、平面視において長円形状である。
【0031】
平面視における第1導電パターン50の幅及び長さを、それぞれ幅WC1及び長さLC1とする。長さLC1は、幅WC1よりも大きい。幅WC1及び長さLC1は、例えば、それぞれ10mm以下及び15mm以下である。幅WC1及び長さLC1は、例えば、1mm以上である。
【0032】
隣り合っている第1配線部30の間の平均距離を、距離DIS1とする。距離DIS1は、3μm以上15μm以下である。第1配線部30の高さを、高さH1とする。高さH1は、例えば15μm以上75μm以下である。第1配線部30の幅を、幅W1とする。幅W1は、例えば、15μm以上100μm以下である。第1配線部30のアスペクト比は、高さH1を幅W1で除した値である。第1配線部30のアスペクト比は、例えば0.15以上5以下である。高さH1を距離DIS1で除した値は、例えば、2以上25以下である。高さH1を距離DIS1で除した値は、好ましくは3以上20以下である。高さH1を距離DIS1で除した値は、さらに好ましくは4以上20以下である。
【0033】
なお、距離DIS1は、以下の方法により測定される。第1に、渦巻き状に巻回されている第1配線部30の一方端と他方端との間に等間隔で10点の測定点を設定する。第2に、当該測定点ごとに隣り合っている第1配線部30の間の距離を第1配線部30の高さ方向における中央部において測定し、それらの測定値の合計を算出する。第3に、当該合計を10で除することにより、距離DIS1が得られる。
【0034】
第1配線部30は、シード層31と、第1電解めっき層32と、第2電解めっき層33とを有している。シード層31は、第1主面20a上に配置されている。第1電解めっき層32は、シード層31上に配置されている。第2電解めっき層33は、シード層31及び第1電解めっき層32を覆っている。すなわち、第2電解めっき層33は、シード層31及び第1電解めっき層32の側面上並びに第1電解めっき層32の上面上に配置されている。
【0035】
シード層31は、例えば、第1層31aと、第2層31bとを有している。第1層31aは、第1主面20a上に配置されている。第1層31aは、例えば、スパッタ層(スパッタリングにより形成されている層)である。第1層31aは、例えば、ニッケル-クロム合金により形成されている。第2層31bは、第1層31a上に配置されている。第2層31bは、例えば、無電解めっき層(無電解めっきにより形成されている層)である。第2層31bは、例えば、銅により形成されている。
【0036】
第1電解めっき層32は、電解めっきにより形成されている層である。第1電解めっき層32は、例えば、銅により形成されている。すなわち、第1層31aは第1電解めっき層32と異なる材料により形成されており、第2層31bは第1電解めっき層32と同一の材料により形成されている。第2電解めっき層33は、電解めっきにより形成されている層である。第2電解めっき層33は、例えば、銅により形成されている。
【0037】
第1層31a及び第2層31bは、例えば銅により形成されていてもよい。すなわち、シード層31は、第1電解めっき層32と同一材料により形成されていてもよい。この場合、第1層31aは、スパッタリングにより形成されているナノ銅層であってもよい。シード層31は、第2層31bを有していなくてもよい。すなわち、シード層31は、第1電解めっき層32と同一材料により形成されている1つの層であってもよい。
【0038】
第2配線部40は、第2主面20b上に配置されている。第2配線部40は、平面視において(第2主面20bに直交する方向から見て)、渦巻き状に巻回されている。平面視において渦巻き状に巻回されている第2配線部40は、コイルとして機能する第2導電パターン60を構成している。第2導電パターン60の外形は、例えば、平面視において長円形状である。
【0039】
平面視における第2導電パターン60の幅及び長さを、それぞれ幅WC2及び長さLC2とする。長さLC2は、幅WC2よりも大きい。幅WC2及び長さLC2は、例えば、それぞれ10mm以下及び15mm以下である。幅WC2及び長さLC2は、例えば、1mm以上である。
【0040】
隣り合っている第2配線部40の間の平均距離を、距離DIS2とする。距離DIS2は、3μm以上15μm以下である。第2配線部40の高さを、高さH2とする。高さH2は、例えば15μm以上75μm以下である。第2配線部40の幅を、幅W2とする。幅W2は、例えば、15μm以上100μm以下である。第2配線部40のアスペクト比は、高さH2を幅W2で除した値である。第2配線部40のアスペクト比は、例えば0.15以上5以下である。高さH2を距離DIS2で除した値は、例えば、2以上25以下である。高さH2を距離DIS2で除した値は、好ましくは3以上20以下である。高さH2を距離DIS2で除した値は、さらに好ましくは4以上20以下である。
【0041】
なお、距離DIS2は、以下の方法により測定される。第1に、渦巻き状に巻回されている第2配線部40の一方端と他方端との間に等間隔で10点の測定点を設定する。第2に、当該測定点ごとに隣り合っている第2配線部40の間の距離を第2配線部40の高さ方向における中央部において測定し、それらの測定値の合計を算出する。第3に、当該合計を10で除することにより、距離DIS2が得られる。
【0042】
第2配線部40は、シード層41と、第1電解めっき層42と、第2電解めっき層43とを有している。シード層41は、第2主面20b上に配置されている。第1電解めっき層42は、シード層41上に配置されている。第2電解めっき層43は、シード層41及び第1電解めっき層42を覆っている。すなわち、第2電解めっき層43は、シード層41及び第1電解めっき層42の側面上並びに第1電解めっき層42の上面上に配置されている。
【0043】
シード層41は、例えば、第1層41aと、第2層41bとを有している。第1層41aは、第2主面20b上に配置されている。第1層41aは、例えばスパッタ層である。第1層41aは、例えばニッケル-クロム合金により形成されている。第2層41bは、第1層41a上に配置されている。第2層41bは、例えば無電解めっき層である。第2層41bは、例えば、銅により形成されている。
【0044】
第1電解めっき層42は、電解めっきにより形成されている層である。第1電解めっき層42は、例えば、銅により形成されている。すなわち、第1層41aは第1電解めっき層42と異なる材料により形成されており、第2層41bは第1電解めっき層42と同一の材料により形成されている。第2電解めっき層43は、電解めっきにより形成されている層である。第2電解めっき層43は、例えば、銅により形成されている。
【0045】
第1層41a及び第2層41bは、例えば銅により形成されていてもよい。すなわち、シード層41は、第1電解めっき層42と同一材料により形成されていてもよい。この場合、第1層41aは、スパッタリングにより形成されているナノ銅層であってもよい。シード層41は、第2層41bを有していなくてもよい。すなわち、シード層41は、第1電解めっき層42と同一材料により形成されている1つの層であってもよい。
【0046】
第1配線部30は、第1端部34と、第2端部35とを有している。第1端部34及び第2端部35は、第1配線部30の両端にある。第2配線部40は、第1端部44と、第2端部45とを有している。第1端部44及び第2端部45は、第2配線部40の両端にある。
【0047】
ベースフィルム20には、スルーホール20cが形成されている。スルーホール20cは、厚さ方向に沿ってベースフィルム20を貫通している。第2端部35は、スルーホール20cの周囲にある第1主面20a上にある。第2端部45は、スルーホール20cの周囲にある第2主面20b上にある。第2端部35及び第2端部45は、スルーホール20cの内壁面上にある導電体(図示せず)により電気的に接続されている。これにより、第1配線部30及び第2配線部40は、電気的に接続されている。
【0048】
第1配線部30の長さは、150mm以上1000mm以下である。第1配線部30の長さは、第1端部34と第2端部35との間にある第1配線部30の長さである。第2配線部40の長さは、150mm以上1000mm以下である。第2配線部40の長さは、第1端部44と第2端部45との間にある第2配線部40の長さである。
【0049】
複数のプリント配線板10は、ベースフィルム20の厚さ方向において重ねて配置されている。ベースフィルム20の厚さ方向において隣り合っている2つのプリント配線板10を、それぞれ、プリント配線板10a及びプリント配線板10bとする。プリント配線板10aの第1主面20aは、プリント配線板10bの第2主面20bと対向している。
【0050】
プリント配線板10aの第1端部34とプリント配線板10bの第1端部44とが電気的に接続されることにより、プリント配線板10aの第1導電パターン50(第1配線部30)とプリント配線板10bの第2導電パターン60(第2配線部40)が電気的に接続されている。ベースフィルム20の厚さ方向において最も外側にある2つのプリント配線板10を、それぞれプリント配線板10c及びプリント配線板10dとする。プリント配線板10cの第1端部34及びプリント配線板10dの第1端部44は、コイル装置100の外部接続端子になっている。
【0051】
第1配線部30の長さ及び第2配線部40の長さをコイル装置100に含まれる全てのプリント配線板10について合計した値は、例えば、300mm以上2000mm以下である。
【0052】
<プリント配線板10の製造方法>
プリント配線板10の製造方法を説明する。
【0053】
図5は、プリント配線板10の製造方法を示す工程図である。図5に示されるように、プリント配線板10の製造方法は、準備工程S1と、導電パターン形成工程S2とを有している。導電パターン形成工程S2は、準備工程S1の後に行われる。
【0054】
準備工程S1では、ベースフィルム20が準備される。準備工程S1において準備されるベースフィルム20の第1主面20a上には第1配線部30が形成されておらず、準備工程S1において準備されるベースフィルム20の第2主面20b上には第2配線部40が形成されていない。なお、準備工程S1において準備されるベースフィルム20は、個片化されていない。すなわち、導電パターン形成工程S2が行われることにより、複数のプリント配線板10が複数同時に形成されることになる。
【0055】
導電パターン形成工程S2は、例えば、セミアディティブ工法を用いて行われる。導電パターン形成工程S2は、シード層形成工程S21と、レジスト形成工程S22と、第1電解めっき工程S23と、レジスト除去工程S24と、シード層除去工程S25と、第2電解めっき工程S26とを有している。レジスト形成工程S22は、シード層形成工程S21の後に行われる。第1電解めっき工程S23は、レジスト形成工程S22の後に行われる。レジスト除去工程S24は、第1電解めっき工程S23の後に行われる。シード層除去工程S25は、レジスト除去工程S24の後に行われる。第2電解めっき工程S26は、シード層除去工程S25の後に行われる。
【0056】
シード層形成工程S21では、シード層31及びシード層41が形成される。シード層形成工程S21は、スパッタリング工程S211と、無電解めっき工程S212とを有している。無電解めっき工程S212は、スパッタリング工程S211の後に行われる。
【0057】
図6は、スパッタリング工程S211後におけるベースフィルム20の断面図である。図6に示されるように、スパッタリング工程S211では、スパッタリングが行われることにより、第1主面20a上に第1層31aが形成され、第2主面20b上に第1層41aが形成される。図7は、無電解めっき工程S212におけるベースフィルム20の断面図である。図7に示されるように、無電解めっき工程S212では、無電解めっきが行われることにより、第1層31a上に第2層31bが形成され、第1層41a上に第2層41bが形成される。
【0058】
図8は、レジスト形成工程S22後におけるベースフィルム20の断面図である。図8に示されるように、レジスト形成工程S22では、レジスト70が形成される。レジスト70は、シード層31上及びシード層41上に形成される。レジスト70は、感光性の有機材料をシード層31上及びシード層41上に塗布するとともに、塗布された感光性の有機材料を露光及び現像してパターンニングすることにより形成される。レジスト70の開口からは、シード層31及びシード層41が部分的に露出している。
【0059】
図9は、第1電解めっき工程S23後におけるベースフィルム20の断面図である。図9に示されるように、第1電解めっき工程S23では、第1電解めっき層32及び第1電解めっき層42が形成される。第1電解めっき層32は、ベースフィルム20がめっき液中に配置された状態でシード層31に通電して電解めっきを行うことにより、レジスト70から露出しているシード層31上に形成される。第1電解めっき層42は、ベースフィルム20がめっき液中に配置された状態でシード層41に通電して電解めっきを行うことにより、レジスト70から露出しているシード層41上に形成される。
【0060】
図10は、レジスト除去工程S24後におけるベースフィルム20の断面図である。図10に示されるように、レジスト除去工程S24では、レジスト70が、シード層31上及びシード層41上から剥離されて除去される。これにより、隣り合っている第1電解めっき層32の間からシード層31が露出し、隣り合っている第1電解めっき層42の間からシード層41が露出する。
【0061】
図11は、シード層除去工程S25後におけるベースフィルム20の断面図である。図11に示されるように、シード層除去工程S25では、隣り合っている第1電解めっき層32の間から露出しているシード層31及び隣り合っている第1電解めっき層42の間から露出しているシード層41が、エッチングにより除去される。
【0062】
エッチングは、隣り合っている第1電解めっき層32の間及び隣り合っている第1電解めっき層42の間にエッチング液を供給することにより行われる。エッチング液は、エッチング液中の反応種のエッチング対象近傍への拡散ではなくエッチング液中の反応種とエッチング対象との反応によりエッチングが律速されるように選択される。
【0063】
より具体的には、エッチング液には、第2層31b及び第2層41bを構成している材料(すなわち、銅)に対する溶解反応速度が1.0μm/分以下となるエッチング液が用いられる。そのようなエッチング液の具体例としては、硫酸過酸化水素水溶液又はペルオキソ二硫酸ナトリウム水溶液が挙げられる。なお、シード層除去工程S25に用いられるエッチング液の第2層31b及び第2層41bを構成している材料に対する溶解反応速度は、エッチング後に減少した銅の重量及びエッチング時間に基づいて測定される。
【0064】
なお、第2層31b及び第2層41bのエッチングが完了した後には、エッチング液の切り換えが行われる。切り換え後のエッチング液としては、第1層31a及び第1層41aを構成している材料(すなわち、ニッケル-クロム合金)に対する選択比が高いエッチング液が用いられる。そのため、エッチング液の切り換え後には、第1電解めっき層32及び第1電解めっき層42に対するエッチングは進行しにくい。
【0065】
第2電解めっき工程S26では、第2電解めっき層33及び第2電解めっき層43が形成される。第2電解めっき層33は、ベースフィルム20がめっき液中に配置された状態でシード層31及び第1電解めっき層32に通電して電解めっきを行うことにより、シード層31及び第1電解めっき層32を覆うように形成される。第2電解めっき層43は、ベースフィルム20がめっき液中に配置された状態でシード層41及び第1電解めっき層42に通電して電解めっきを行うことにより、シード層41及び第1電解めっき層42を覆うように形成される。第2電解めっき工程S26が行われた後にベースフィルム20が個片化されることにより、図2から図4に示される構造のプリント配線板10が複数形成される。
【0066】
(実施形態に係るコイル装置の効果)
コイル装置100の効果を説明する。
【0067】
コイルを構成している配線部の巻き数(配線部の長さ)を増加させつつコイルを小型化するためには、コイルを構成している配線部のパターン密度を改善すること、すなわち、隣り合う配線部の間の距離を短くする必要がある。従来、隣り合う配線部の間の距離を短くしようとすると、配線部がエッチングされ過ぎ、コイルの電気抵抗が大きくなる(すなわち、コイルを構成している配線部の長さを短くせざるを得ない)という問題があった。
【0068】
また、配線部の高さを大きくすることにより、配線部の電気抵抗を小さくすることができる。しかしながら、従来は、配線部の高さを大きくしようとすると配線部がエッチングされ過ぎてしまうため、配線部の電気抵抗を小さくするためには配線部の長さを短くせざるを得なかった。配線部の幅を大きくすることによっても配線部の電気抵抗を小さくすることができるが、この場合にはコイルが大型化してしまう。
【0069】
従来、シード層を構成している材料に対する溶解反応速度が大きいエッチング液(すなわち、エッチング液中の反応種のエッチング対象近傍への拡散がエッチングを律速するエッチング液)が用いられていた。隣り合う配線部の間の距離を短くする又は配線部の高さを大きくすると、エッチング液が隣り合う配線部の間に供給されにくくなる。その結果、上記のようなエッチング液を用いる場合、シード層に対するエッチングのばらつきが大きくなり、確実なシード層の除去を行うためにエッチング量が増加する。以上のような原因により、従来は、隣り合う配線部の間の距離を短くして配線部の巻き数(配線部の長さ)を増加させること及び配線部の高さを大きくすることができなかった。
【0070】
コイル装置100は、プリント配線板10を有している。プリント配線板10では、シード層除去工程S25において、第2層31b及び第2層41bを構成している材料に対する溶解反応速度が低いエッチング液が用いられる。その結果、シード層除去工程S25のエッチングがエッチング液中の反応種とエッチング対象との反応により律速されるようになり、隣り合う第1電解めっき層32の間及び隣り合う第1電解めっき層42の間にエッチング液が供給されにくくても、シード層31(第2層31b)及びシード層41(第2層41b)のエッチングにばらつきが生じにくい。
【0071】
そのため、コイル装置100によると、第1電解めっき層32及び第1電解めっき層42がエッチングされ過ぎることを防止することが可能であり、第1配線部30及び第2配線部40のパターン密度を改善することができる。また、コイル装置100によると、第1配線部30及び第2配線部40の高さが大きくなることに伴い、第1配線部30及び第2配線部40の高抵抗化を抑制できるため、第1配線部30及び第2配線部40の長さを確保することができる。
【0072】
また、コイル装置100では、第1配線部30及び第2配線部40のパターン密度が改善される結果、第1配線部30及び第2配線部40の長さを確保しながら第1導電パターン50及び第2導電パターン60を小型化することができる(より具体的には、幅WC1及び長さLC1をそれぞれ10mm以下及び15mm以下、幅WC2及び長さLC2をそれぞれ10mm以下及び15mm以下とすることができる)。
【0073】
コイル装置100において、高さH1を幅W1で除した値(高さH2を幅W2で除した値)が0.15以上5以下である場合、第1配線部30(第2配線部40)のアスペクト比が大きくなるため、隣り合っている第1配線部30(第2配線部40)のパターン密度を改善しながら、第1配線部30(第2配線部40)の電気抵抗をさらに低減することができる。
【0074】
コイル装置100において、高さH1を距離DIS1で除した値(高さH2を距離DIS2で除した値)が2以上25以下である場合、隣り合っている第1配線部30(第2配線部40)のパターン密度を改善しながら、第1配線部30(第2配線部40)の電気抵抗をさらに低減することができる。
【0075】
(実施例)
コイル装置100の効果を確認するため、コイル装置100のサンプルとしてサンプル1からサンプル11が準備された。サンプル1からサンプル11では、表1に示されるように、シード層除去工程S25で用いられるエッチング液、幅Wc1、長さLc1、第1配線部30の長さ、第2配線部40の長さ、第1配線部30の長さ及び第2配線部40の長さの和、幅W1、距離DIS1、高さH1、第1配線部30の巻き数及び第2配線部40の巻き数の和が変化された。幅Wc2、長さLc2、幅W2、距離DIS2、高さH2は、それぞれ、幅Wc1、長さLc1、幅W1、距離DIS1、高さH1と等しいため、表1においては記載が省略されている。なお、表1中のエッチング液の欄における「A」は、溶解速度が0.8μm/分のペルオキソ二硫酸ナトリウム水溶液が用いられたことを示している。また、表1中のエッチング液の欄における「B」は、溶解速度が1.5μm/分の塩化鉄水溶液が用いられたことを示している。
【0076】
【表1】
【0077】
サンプル1とサンプル6は、エッチング液が異なっている点を除き、同一の設計になっていた。サンプル3とサンプル7は、エッチング液が異なっている点を除き、同一の設計になっていた。サンプル1及びサンプル3では、距離DIS1(距離DIS2)の設計値と距離DIS1(距離DIS2)の実測値との間の差が小さかった。他方で、サンプル6及びサンプル7では、距離DIS1(距離DIS2)の設計値と距離DIS1(距離DIS2)の実測値との間の差が大きく、ショート不良が発生していた。この比較から、シード層除去工程S25において溶解速度が1.0μm/分となるエッチング液を用いることによりシード層(シード層31、シード層41)に対するエッチングのばらつきが抑制され、距離DIS1(距離DIS2)が小さくてもコイル装置100を製造可能であることが、明らかになった。
【0078】
サンプル2からサンプル4、サンプル8、サンプル9及びサンプル10では、第1配線部30の長さ及び第2配線部40の長さが900mmとされ、第1配線部30の長さ及び第2配線部40の長さの和が1800mmとされた。サンプル2からサンプル4では、距離DIS1(距離DIS2)が3μm以上15μm以下の範囲内にあった。サンプル8及びサンプル10では、距離DIS1(距離DIS2)が15μmを超えていた。サンプル9では、距離DIS1(距離DIS2)が3μm未満であった。
【0079】
サンプル2からサンプル4では、幅Wc1(幅Wc2)及び長さLc1(長さLc2)がそれぞれ10mm以下及び15mm以下の範囲内にあった。サンプル8及びサンプル10では、幅Wc1(幅Wc2)及び長さLc1(長さLc2)が、それぞれ10mm及び15mmを超えていた。サンプル2からサンプル4では、ショート不良が発生していなかった。サンプル9では、ショート不良が発生していた。この比較から、距離DIS1(距離DIS2)を3μm以上15μm以下とすることによりコイルを構成している配線部の巻き数を増加させつつコイルを小型化したコイル装置100が製造可能であることが、明らかになった。
【0080】
サンプル1からサンプル5では、距離DIS1(距離DIS2)が3μm以上15μm以下の範囲内にあった。また、サンプル1からサンプル5では、幅Wc1(幅Wc2)及び長さLc1(長さLc2)がそれぞれ10mm以下及び15mm以下の範囲内にあった。
【0081】
サンプル1からサンプル4では、第1配線部30の長さ及び第2配線部40の長さが150mm以上であり、第1配線部30の長さ及び第2配線部40の長さの和が300mm以上であった。他方で、サンプル5では、第1配線部30の長さ及び第2配線部40の長さが150mm未満であり、第1配線部30の長さ及び第2配線部40の長さの和が300mm未満であった。サンプル1からサンプル4では、第1配線部30の巻き数及び第2配線部40の巻き数の和が10以上になっており、サンプル5では第1配線部30の巻き数及び第2配線部40の巻き数の和が10未満になっていた。この比較から、第1配線部30の長さ及び第2配線部40の長さが150mm以上とし、第1配線部30の長さ及び第2配線部40の長さの和を300mm以上とすることによりコイルを構成している配線部の巻き数を増加させつつコイルの小型化が可能であることが、明らかになった。
【0082】
サンプル1からサンプル4及びサンプル11では、距離DIS1(距離DIS2)が3μm以上15μm以下の範囲内にあった。また、サンプル1からサンプル4及びサンプル11では、幅Wc1(幅Wc2)及び長さLc1(長さLc2)がそれぞれ10mm以下及び15mm以下の範囲内にあった。
【0083】
サンプル1からサンプル4では、第1配線部30の長さ及び第2配線部40の長さが1000mm以下であり、第1配線部30の長さ及び第2配線部40の長さの和が2000mm以下であった。他方で、サンプル11では、第1配線部30の長さ及び第2配線部40の長さが1000mmを超えており、第1配線部30の長さ及び第2配線部40の長さの和が2000mmを超えていた。サンプル1からサンプル4では電気抵抗値が30Ω以下であり、サンプル11では電気抵抗値が30Ωを超えていた。この比較から、第1配線部30の長さ及び第2配線部40の長さが1000mm以下とし、第1配線部30の長さ及び第2配線部40の長さの和を2000mm以下とすることによりコイル装置100の電気抵抗値を抑制できることが、明らかになった。
【0084】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0085】
100 コイル装置、10,10a,10b,10c,10d プリント配線板、20 ベースフィルム、20a 第1主面、20b 第2主面、20c スルーホール、30 第1配線部、31 シード層、31a 第1層、31b 第2層、32 第1電解めっき層、33 第2電解めっき層、34 第1端部、35 第2端部、40 第2配線部、41 シード層、41a 第1層、41b 第2層、42 第1電解めっき層、43 第2電解めっき層、44 第1端部、45 第2端部、50 第1導電パターン、60 第2導電パターン、70 レジスト、S1 準備工程、S2 導電パターン形成工程、S21 シード層形成工程、S22 レジスト形成工程、S23 第1電解めっき工程、S24 レジスト除去工程、S25 シード層除去工程、S26 第2電解めっき工程、S211 スパッタリング工程、S212 無電解めっき工程、DIS1,DIS2 距離、H1,H2 高さ、LC1,LC2 長さ、W1,W2,WC1,WC2 幅。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11