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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】樹脂成形金型及び樹脂成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/20 20060101AFI20231212BHJP
   B29C 43/36 20060101ALI20231212BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B29C33/20
B29C43/36
B29C43/34
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022573878
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(86)【国際出願番号】 JP2021000493
(87)【国際公開番号】W WO2022149263
(87)【国際公開日】2022-07-14
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 康介
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-047516(JP,A)
【文献】特開平02-127017(JP,A)
【文献】特開2015-009539(JP,A)
【文献】特開2019-151030(JP,A)
【文献】特開2016-215498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00 - 33/76
B29C 43/00 - 43/58
B29C 70/00 - 70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金型と、
前記第1金型に対向配置された第2金型と、
前記第2金型の表面をスライド可能に構成され、且つ、前記第1金型及び前記第2金型による樹脂のプレス方向とは異なる方向を向いた面を含む押圧面を有する、スライド機構と、
前記スライド機構の押圧面と、前記押圧面及び前記第2金型の隙間と、を少なくとも覆うように形成された第1ラバー部材と、
を備え
前記スライド機構及び前記第1ラバー部材は、互いに嵌合する嵌合形状を有する、
樹脂成形金型。
【請求項2】
前記樹脂の形状を規定するキャビティ空間は、前記第1金型と、前記第1ラバー部材と、によって囲まれている、
請求項1に記載の樹脂成形金型。
【請求項3】
前記樹脂の形状を規定するキャビティ空間は、前記第1金型、前記第2金型、及び、前記第1ラバー部材によって囲まれている、
請求項1に記載の樹脂成形金型。
【請求項4】
前記第1ラバー部材は、前記第2金型の表面の一部をさらに覆うように形成され、
前記樹脂の形状を規定するキャビティ空間は、前記第1金型と、前記第1ラバー部材と、によって囲まれている、
請求項1に記載の樹脂成形金型。
【請求項5】
前記第1金型の表面を覆うように形成された第2ラバー部材をさらに備え、
前記樹脂の形状を規定するキャビティ空間は、前記第1ラバー部材と、前記第2ラバー部材と、によって囲まれている、
請求項1に記載の樹脂成形金型。
【請求項6】
前記第1金型及び前記スライド機構は、それぞれ、前記第1金型及び前記第2金型による前記樹脂のプレス方向に対して所定の角度を有し、且つ、前記樹脂のプレス時に互いに摺動するように形成された、傾斜面を有する、
請求項1~の何れか一項に記載の樹脂成形金型。
【請求項7】
前記スライド機構をスライドさせる動力部をさらに備えた、
請求項1~の何れか一項に記載の樹脂成形金型。
【請求項8】
脱型時に前記スライド機構をプレス前の位置に戻す戻り機構を備えた、
請求項1~の何れか一項に記載の樹脂成形金型。
【請求項9】
前記第2金型及び前記スライド機構は、前記スライド機構のスライド方向を規定するガイド構造を有する、
請求項1~の何れか一項に記載の樹脂成形金型。
【請求項10】
第1金型と、前記第1金型に対向配置された第2金型と、前記第2金型の表面をスライド可能に構成され、且つ、前記第1金型及び前記第2金型による樹脂のプレス方向とは異なる方向を向いた面を含む押圧面を有する、スライド機構と、前記スライド機構の押圧面と、前記押圧面及び前記第2金型の隙間と、を少なくとも覆うように形成された第1ラバー部材と、を備え、前記スライド機構及び前記第1ラバー部材は、互いに嵌合する嵌合形状を有する、樹脂成形金型を用いた樹脂成形方法であって、
前記第1金型と前記第2金型が開いた状態で、樹脂を投入し、
前記第1金型を前記第2金型に向けてプレスし、
前記第1金型の面と前記第1ラバー部材の面とによって前記樹脂を保圧し、
前記樹脂を冷却することによって硬化させ、
脱型する、
樹脂成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形金型及び樹脂成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリプレグ等のCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)材料の高速サイクルによる成形には、例えばPCM(PrePreg Compressin Molding)等のプレス成形技術が用いられている。プレス成形では、型可動方向からの荷重によって材料(樹脂)を圧縮するが、型可動方向に垂直な方向、例えば、型可動方向が鉛直方向である場合における材料の立壁部(材料の側面部分)には、金型からの圧力が十分に伝わらないため、樹脂枯れやボイド等が発生する可能性がある。
【0003】
このような課題に対する解決策は、例えば、特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【0004】
特許文献1には、下型にシリコーンを用いることによって樹脂の立壁部に圧力を加える技術が開示されている。また、特許文献2には、スライドコアを用いることによって樹脂の立壁部に圧力を加える技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-151030号公報
【文献】特開2016-83781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように下型にシリコーンを用いた場合でも、樹脂の立壁部に加わる圧力は、当該樹脂の底面部に加わる圧力よりも小さくなってしまうため、依然として樹脂枯れやボイド等が発生する可能性がある。また、特許文献2のようにスライドコアを用いた場合、スライドコアと下型との隙間部分に樹脂が漏れてしまい、バリ等が発生する可能性がある。即ち、関連技術では、品質の高い樹脂成形を行うことができない、という課題があった。
【0007】
本開示は、以上の背景に鑑みなされたものであり、ラバー部材及びスライド機構を用いることによって、品質の高い樹脂成形を行うことが可能な樹脂成形金型及び樹脂成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示にかかる樹脂成形金型は、第1金型と、前記第1金型に対向配置された第2金型と、前記第2金型の表面をスライド可能に構成され、且つ、前記第1金型及び前記第2金型による樹脂のプレス方向とは異なる方向を向いた面を含む押圧面を有する、スライド機構と、前記スライド機構の押圧面と、前記押圧面及び前記第2金型の隙間と、を少なくとも覆うように形成された第1ラバー部材と、を備える。この樹脂成形金型は、ラバー部材及びスライド機構を用いることによって、樹脂の立壁部を十分に大きな圧力でプレスすることができるため、樹脂枯れやボイド等が発生するのを防ぐことができるとともに、スライド機構の押圧面と下型との隙間をラバー部材で覆うことによって、バリ等が発生するのを防ぐことができる。つまり、この樹脂成形金型は、品質の高い樹脂成形を行うことができる。
【0009】
前記樹脂の形状を規定するキャビティ空間は、前記第1金型と、前記第1ラバー部材と、によって囲まれていてもよい。
【0010】
前記樹脂の形状を規定するキャビティ空間は、前記第1金型、前記第2金型、及び、前記第1ラバー部材によって囲まれていてもよい。
【0011】
前記第1ラバー部材は、前記第2金型の表面の一部をさらに覆うように形成され、前記樹脂の形状を規定するキャビティ空間は、前記第1金型と、前記第1ラバー部材と、によって囲まれていてもよい。
【0012】
前記第1金型の表面を覆うように形成された第2ラバー部材をさらに備え、前記樹脂の形状を規定するキャビティ空間は、前記第1ラバー部材と、前記第2ラバー部材と、によって囲まれていてもよい。
【0013】
前記スライド機構及び前記第1ラバー部材は、互いに嵌合する嵌合形状を有することが好ましい。
【0014】
前記第1金型及び前記スライド機構は、それぞれ、前記第1金型及び前記第2金型による前記樹脂のプレス方向に対して所定の角度を有し、且つ、前記樹脂のプレス時に互いに摺動するように形成された、傾斜面を有することが好ましい。
【0015】
前記スライド機構をスライドさせる動力部をさらに備えてもよい。
【0016】
脱型時に前記スライド機構をプレス前の位置に戻す戻り機構を備えることが好ましい。
【0017】
前記第2金型及び前記スライド機構は、前記スライド機構のスライド方向を規定するガイド構造を有することが好ましい。
【0018】
本開示にかかる樹脂成形方法は、第1金型と、前記第1金型に対向配置された第2金型と、前記第2金型の表面をスライド可能に構成され、且つ、前記第1金型及び前記第2金型による樹脂のプレス方向とは異なる方向を向いた面を含む押圧面を有する、スライド機構と、前記スライド機構の押圧面と、前記押圧面及び前記第2金型の隙間と、を少なくとも覆うように形成された第1ラバー部材と、を備えた、樹脂成形金型を用いた樹脂成形方法であって、前記第1金型と前記第2金型が開いた状態で、樹脂を投入し、前記第1金型を前記第2金型に向けてプレスし、前記第1金型の面と前記第1ラバー部材の面とによって前記樹脂を保圧し、前記樹脂を冷却することによって硬化させ、脱型する。この樹脂成形方法は、ラバー部材及びスライド機構を用いることによって、樹脂の立壁部を十分に大きな圧力でプレスすることができるため、樹脂枯れやボイド等が発生するのを防ぐことができるとともに、スライド機構の押圧面と下型との隙間をラバー部材で覆うことによって、バリ等が発生するのを防ぐことができる。つまり、この樹脂成形方法は、品質の高い樹脂成形を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示により、ラバー部材及びスライド機構を用いることによって、品質の高い樹脂成形を行うことが可能な樹脂成形金型及び樹脂成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施の形態1にかかるプレス前の樹脂成形金型の一例を示す概略断面図である。
図2】実施の形態1にかかるプレス時の樹脂成形金型の一例を示す概略断面図である。
図3】実施の形態1にかかる樹脂成形方法の一例を示すフローチャートである。
図4】実施の形態1にかかる樹脂成形金型により成形された樹脂の成形品の例を示す図である。
図5】実施の形態1にかかる樹脂成形金型により成形された樹脂の成形品の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0022】
<実施の形態1>
図1及び図2は、実施の形態1にかかる樹脂成形金型の一例を示す概略断面図である。なお、図1には樹脂成形金型のプレス前の状態が示されており、図2には樹脂成形金型のプレス時の状態が示されている。
【0023】
図1及び図2に示すように、樹脂成形金型100は、上型(第1金型)101と、下型(第2金型)102と、スライド機構103と、ラバー部材104と、を備える。樹脂成形金型100は、プリプレグ等のCFRP材料(以下、単に樹脂と称す)の成形に用いられる。
【0024】
上型101及び下型102は、成形する樹脂200の形状に対応する鋳型である。上型101及び下型102の開閉によって、樹脂200の成形や硬化した樹脂200の取り出しが行われる。下型102は、鉛直方向(y軸方向)において上型101よりも下側(y軸マイナス方向側)に位置し、成形される樹脂200を受ける。上型101は、鉛直方向下向き(y軸マイナス方向)に移動することにより、上型101及び下型102の間に投入された樹脂200をプレスする。
【0025】
スライド機構103は、下型102の表面に沿ってスライド可能に構成されている。本実施の形態では、スライド機構103が、上型101及び下型102による樹脂200のプレス方向に対して直角な方向、即ち、水平方向(x軸方向)にスライド可能に構成されている。
【0026】
また、スライド機構103は、下型102の表面に沿ってスライドすることにより、上型101及び下型102による樹脂200のプレス方向とは異なる方向に樹脂200をプレス可能に構成されている。本実施の形態では、スライド機構103が、下型102の表面に沿ってスライドすることによって、上型101及び下型102による樹脂200のプレス方向に対して直角な方向、即ち、水平方向に樹脂200をプレス可能に構成されている。それにより、スライド機構103は、十分な圧力で樹脂200の立壁部(樹脂200の側面部分)をプレスすることができる。
【0027】
より具体的には、スライド機構103は、台座1031と、押圧部1032と、を備える。台座1031は、下型102の表面に沿ってスライド可能に設置された板状の金属部材である。押圧部1032は、スライド機構103のスライド方向(x軸プラス方向)を向いた面103aを有する金属部材であって、台座1031上に固定されている。なお、台座1031と押圧部1032とは一体形成されていてもよい。スライド機構103は、下型102の表面に沿ってスライドすることにより、面103aを含む押圧面を用いて、樹脂200の立壁部をプレスする。
【0028】
なお、本実施の形態では、面103aがスライド機構103のスライド方向(x軸プラス方向)を向いている場合を例に説明しているが、これに限られない。面103aは、樹脂200の立壁部をプレス可能であるならば、成形品の形状に合わせて任意の方向を向いていてよい。ただし、面103aの向きがスライド機構103のスライド方向に近いほど、樹脂200の立壁部に対して効率良く圧力を加えることができる。
【0029】
また、本実施の形態では、押圧部1032の面103aだけでなく、台座1031の表面の一部103bも、樹脂200をプレスする押圧面として用いられている。但し、台座1031の表面は後述するキャビティ空間105側に露出していなくてもよい。その場合、スライド機構103では、押圧部1032の面103aのみが樹脂200をプレスする押圧面として用いられる。
【0030】
ラバー部材104は、エラストマーとも呼ばれ、例えばシリコーン材によって構成されている。ただし、ラバー部材104は、シリコーン材が用いられる場合に限られず、弾性力を有する高分子材料が用いられていればよい。本実施の形態では、ラバー部材104がシリコーン材によって構成されている場合を例に説明する。なお、シリコーン材は、200度以上の耐熱性を有し、ショアA硬さ30~90の可とう性を有する。
【0031】
ここで、ラバー部材104は、スライド機構103の押圧面(面103a,103b)と、当該スライド機構103の押圧面及び下型102の隙間と、を少なくとも覆うように形成されている。
【0032】
したがって、本実施の形態では、樹脂200の形状を規定するキャビティ空間105が、上型101の表面(ツール面)と、スライド機構103の押圧面(面103a,103b)等を覆うラバー部材104と、によって囲まれることになる。樹脂200は、キャビティ空間105に投入され、保圧されることで、所定の形状に成形される。
【0033】
スライド機構103は、下型102の表面に沿ってスライドすることにより、ラバー部材104を介して、十分な圧力で樹脂200の立壁部をプレスすることができる。それにより、樹脂200の立壁部に樹脂枯れやボイド等が発生するのを防ぐことができる。また、スライド機構103の押圧面と下型102との隙間をラバー部材104で覆うことにより、当該隙間への樹脂漏れを防ぐことができる。それにより、成形品にバリ等が発生するのを防ぐことができる。
【0034】
なお、スライド機構103及びラバー部材104は、互いに嵌合する嵌合形状を有することが好ましい。本実施の形態では、スライド機構103の台座1031の表面には、凸形状の嵌合部103cが設けられ、ラバー部材104には、凸形状の嵌合部103cに対向するようにして凹形状の嵌合部104aが設けられている。嵌合部103cと嵌合部104aとを嵌合させることで、ラバー部材104をスライド機構103に固定させることができるとともに、必要に応じてラバー部材104をスライド機構103から容易に取り外すことができる。
【0035】
また、上型101及びスライド機構103は、それぞれ、上型101及び下型102による樹脂200のプレス方向に対して所定の角度を有する傾斜面を有することが好ましい。本実施の形態では、上型101には、傾斜面101aが設けられ、スライド機構103の押圧部1032には、傾斜面103dが設けられている。傾斜面101aと傾斜面103dとは、上型101がプレス方向(y軸マイナス方向)に移動することにより、接触し、摺動する。それにより、上型101の鉛直下向きの力が、スライド機構103の押圧面103aによる、樹脂200の立壁部(樹脂200の側面部分)をプレスするための水平方向(z軸プラス方向)の力に変換される。それにより、スライド機構103をスライドさせるための油圧等の動力源が不要となるため、コストを低減することができる。
【0036】
なお、傾斜面101a及び傾斜面103dには、低抵抗の摺動を実現するため、図1及び図2に示すように表面の摩擦係数の低いプレート111,112がそれぞれ取り付けられていてもよいし、潤滑油などが塗布されてもよい。
【0037】
また、上型101及びスライド機構103にそれぞれ傾斜面101a,103dを設ける代わりに、又は、それに加えて、スライド機構103をスライドさせる動力部が設けられてもよい。動力部は、サーボモータ、アクチュエータ等、動力によりスライド機構103をスライドさせることができるものであれば、いずれも適用できる。
【0038】
また、樹脂成形金型100は、スライド後のスライド機構103をスライド前(即ち、プレス前)のスライド機構103の位置に戻す、戻り機構を備えることが好ましい。戻り機構は、例えばバネ等であってもよいし、上述の動力部であってもよい。戻り機構を備えることにより、脱型時に樹脂200の取り出しが容易になる。
【0039】
さらに、下型102及びスライド機構103は、スライド機構103のスライド方向を規定するガイド構造を有することが好ましい。例えば、下型102の表面には、x軸方向に沿って溝が形成され、スライド機構103の台座1031の底面には、下型102の表面に形成された溝に嵌まるように、x軸方向に沿って溝が形成されている。それにより、スライド時の担ぎを防ぐことができる。
【0040】
(樹脂成形金型100を用いた樹脂成形方法)
続いて、図1及び図2に加えて、図3を用いて、樹脂成形金型100を用いた樹脂成形方法を説明する。図3は、樹脂成形金型100を用いた樹脂成形方法の一例を示すフローチャートである。
【0041】
まず、上型101、下型102及びスライド機構103が開いた状態で、樹脂成形金型100に樹脂200が投入される(ステップS301)。
【0042】
その後、上型101が降下する(ステップS302)。
【0043】
上型101の降下中に、上型101の傾斜面101a(より詳細にはプレート111)と、スライド機構103の傾斜面103d(より詳細にはプレート112)と、が当接する(ステップS303)。
【0044】
その後、上型101がさらに降下することにより、上型101の傾斜面101aと、スライド機構103の傾斜面103dと、が摺動する。それにより、スライド機構103は、水平方向にスライドする(ステップS304)。つまり、上型101の鉛直下向きの力が、スライド機構103の押圧面103aによる、樹脂200の立壁部をプレスするための水平方向の力に変換される。
【0045】
その後、樹脂200は、上型101の表面(ツール面)と、スライド機構103の押圧面等を覆うラバー部材104と、によって保圧される(ステップS305)。それにより、樹脂200は、上型101及びラバー部材104からなるキャビティ空間105によって規定された所定の形状に成形される。
【0046】
その後、所定の形状に成形された樹脂200は、冷却される(ステップS306)。それにより、所定の形状に成形された樹脂200は、キャビティ空間105によって規定された形状を維持した状態で、硬化する。
【0047】
その後、上型101が上昇することにより、型開きする。そして、成形された樹脂200は、脱型され、成形品となる(ステップS307)。
【0048】
このように、本実施の形態に係る樹脂成形金型100は、ラバー部材及びスライド機構を用いることにより、樹脂の立壁部を十分に大きな圧力でプレスすることができるため、樹脂枯れやボイド等が発生するのを防ぐことができる。また、本実施の形態に係る樹脂成形金型100は、スライド機構の押圧面と下型との隙間をラバー部材で覆うことにより、バリ等が発生するのを防ぐことができる。つまり、本実施の形態に係る樹脂成形金型100は、品質の高い樹脂成形を行うことができる。
【0049】
図4は、実際に樹脂成形金型100によって成形された樹脂200の成形品の例を示す図である。また、図5は、実際に樹脂成形金型100によって成形された樹脂200の成形品の断面を示す図である。
【0050】
図4に示すように、樹脂成形金型100によって成形された成形品では、下型102とスライド機構103との隙間部分に対応する部分において、無視できない程度の大きなバリは発生しなかった。また、図5に示すように、樹脂成形金型100によって成形された成形品では、立壁部にも十分な圧力が加わっていたため、無視できない程度の大きなボイドは発生しなかった。
【0051】
本実施の形態では、スライド機構103が、下型102の表面に沿ってスライド可能に構成された場合を例に説明したが、これに限られない。例えば、スライド機構103は、下型102の表面に固定された部材の表面をスライド可能に構成されていてもよい。ここで、下型102の表面に固定された部材の表面は、下型102の表面の一部と言うことができる。
【0052】
また、本実施の形態では、スライド機構103が、下型102の表面に沿ってスライド可能に構成された場合を例に説明したが、これに限られない。例えば、スライド機構103は、上型101の表面又は上型101の表面に固定された部材の表面をスライド可能に構成されていてもよい。ここで、上型101の表面に固定された部材の表面は、上型101の表面の一部と言うことができる。
【0053】
また、本実施の形態では、下型102が固定された金型(固定金型)であって、上型101が移動可能に構成された金型(移動金型)である場合を例に説明したが、これに限られない。上型101が固定金型であって、下型102が移動金型であってもよい。
【0054】
また、本実施の形態では、キャビティ空間105が、上型101の表面と、スライド機構103の押圧面(面103a,103b)等を覆うラバー部材104と、によって囲まれている場合を例に説明したが、これに限られない。キャビティ空間105は、上型101の表面、及び、スライド機構103の押圧面を覆うラバー部材104に加えて、下型102の表面の一部によって形成されてもよい。
【0055】
さらに、上型101の表面には、第1のラバー部材であるラバー部材104に連なるようにして、又は、ラバー部材104とは別に、第2のラバー部材がさらに設けられてもよい。即ち、キャビティ空間105は、全面がラバー部材によって覆われていてもよい。ただし、ラバー部材を、キャビティ空間105の全面ではなく一部(例えば、スライド機構103の押圧面、及び、当該押圧面及び下型102の隙間)のみに用いることにより、コストを低減することができる。
【0056】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上記実施の形態では、上型と下型のみで説明しているが、さらに分割した型を有するようにしてもよい。例えば、側面用に分割された型を備えるようにしてもよい。また、上型や下型が複数の分割されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0057】
100 樹脂成形金型
101 上型
101a 傾斜面
102 下型
103 スライド機構
103a 面
103b 面
103c 嵌合部
103d 傾斜面
104 ラバー部材
104a 嵌合部
105 キャビティ空間
111 プレート
112 プレート
200 樹脂
1031 台座
1032 押圧部
図1
図2
図3
図4
図5