(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】自律移動ロボットの動作制御装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20231212BHJP
【FI】
G05D1/02 H
(21)【出願番号】P 2022580381
(86)(22)【出願日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2022014818
【審査請求日】2022-12-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100153176
【氏名又は名称】松井 重明
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【氏名又は名称】伊達 研郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 克希
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏治
(72)【発明者】
【氏名】成政 国郎
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/129309(WO,A1)
【文献】特開2019-000940(JP,A)
【文献】特開2008-149399(JP,A)
【文献】特開2006-134221(JP,A)
【文献】特開2020-119124(JP,A)
【文献】特開2021-064372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
停止又は減速して人物に
ゴミ捨て支援のサービスを提供する自律移動ロボットの動作制御装置であって、
前記人物が前記自律移動ロボットに対して
ゴミを捨てたいという要望
の度合いを、前記自律移動ロボットの周囲情報を用いて前記人物の挙動を分析することにより判断し、
前記自律移動ロボットの停止又は減速を決定する近接範囲を、前記度合いに応じて前記人物に対して設定する要望判断部と、
前記人物の位置が前記近接範囲内か否かを判断し、前記自律移動ロボットの停止又は減速を決定する動作決定部とを備え、
前記要望判断部は、複数の前記人物が前記
ゴミを捨てたいという要望
が有ると判断した場合、当該複数の人物のそれぞれの前記度合いに応じてそれぞれの人物に対して前記近接範囲を設定し、
前記動作決定部は、前記複数の人物のいずれかが当該人物に設定された前記近接範囲内にいると判断すると、前記自律移動ロボットの停止又は減速を決定する、
自律移動ロボットの動作制御装置。
【請求項2】
前記要望判断部が、前記
ゴミを捨てたいという要望が有る前記人物に対する前記近接範囲を、前記
ゴミを捨てたいという要望が無い前記人物に対する前記近接範囲よりも広く設定することを特徴とする請求項1に記載の自律移動ロボットの動作制御装置。
【請求項3】
前記自律移動ロボットの周囲の人流の分布を予測し、当該人流の分布の多さに応じて、前記人物の検出範囲若しくは前記近接範囲、又は、前記人物の検出範囲及び前記検出範囲を変更する人流分布予測部を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自律移動ロボットの動作制御装置。
【請求項4】
前記要望判断部が、前記近接範囲を、前記度合いに応じて3段階以上に設定することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずかの1項に記載の自律移動ロボットの動作制御装置。
【請求項5】
前記要望判断部が、前記度合いが強い前記人物に対する前記近接範囲を、前記度合いが弱い前記人物に対する前記近接範囲よりも広く設定することを特徴とする請求項4に記載の自律移動ロボットの動作制御装置。
【請求項6】
停止又は減速して人物に
ゴミ捨て支援のサービスを提供する自律移動ロボットの動作制御方法であって、
要望判断部が、前記人物が前記自律移動ロボットに対して
ゴミを捨てたいという要望の度合いを、前記自律移動ロボットの周囲情報を用いて前記人物の挙動を分析することにより判断し、
前記自律移動ロボットの停止又は減速を決定する近接範囲を、前記度合いに応じて前記人物に対して設定し、
動作決定部が、前記人物の位置が前記近接範囲内か否かを判断し、前記自律移動ロボットの停止又は減速を決定し、
前記要望判断部は、複数の前記人物が前記
ゴミを捨てたいという要望
が有ると判断した場合、当該複数の人物のそれぞれの前記度合いに応じてそれぞれの人物に対して前記近接範囲を設定し、
前記動作決定部は、前記複数の人物のいずれかが当該人物に設定された前記近接範囲内にいると判断すると、前記自律移動ロボットの停止又は減速を決定する自律移動ロボットの動作制御方法。
【請求項7】
前記要望判断部が、前記
ゴミを捨てたいという要望が有る前記人物に対する前記近接範囲を、前記
ゴミを捨てたいという要望が無い前記人物に対する前記近接範囲よりも広く設定することを特徴とする請求項6に記載の自律移動ロボットの動作制御方法。
【請求項8】
人流分布予測部が、前記自律移動ロボットの周囲の人流の分布を予測し、当該人流の分布の多さに応じて、前記人物の検出範囲若しくは前記近接範囲、又は、前記人物の検出範囲及び前記検出範囲を変更することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の自律移動ロボットの動作制御方法。
【請求項9】
前記要望判断部が、前記近接範囲を、前記度合いに応じて3段階以上に設定することを特徴とする請求項6から請求項8までのいずれかの1項に記載の自律移動ロボットの動作制御方法。
【請求項10】
前記要望判断部が、前記度合いが強い前記人物に対する前記近接範囲を、前記度合いが弱い前記人物に対する前記近接範囲よりも広く設定することを特徴とする請求項9に記載の自律移動ロボットの動作制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律移動ロボットの利便性を向上させることができる自律移動ロボットの動作制御装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エリア内を自律移動し、様々なサービスを提供する自律移動ロボット(以降、Autonomous Mobile Robot;AMRと称する)の活用が広まっている。例えば、AMRがゴミ箱を搭載し、エリア内に訪れた人のゴミ捨てを支援するAMRが知られている。
【0003】
AMRの従来技術として、検出した障害物が人か人でないかを判別する人判別手段を備え、人が存在すると判断された場合、人以外の単なる障害物に対する場合とは異なる走行速度(例えば、走行速度を落とす)でもって走行移動するAMRが開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では以下の問題がある。この従来技術では、人か人でないかの判断のみでAMRの走行速度を変更している。そのため、AMRは全ての人に対して同一の動作を行うので、AMRに対してサービスを要望する人(例えば、ゴミを捨てたいという要望がある人)に限定しての動作ができず、AMRの利便性が低下する。
【0006】
本開示の目的は、AMRに対してサービスを要望する人とそうでない人がエリア内に混在していても、利便性が低下することの無いAMRの動作制御装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る自律移動ロボットの動作制御装置は、
停止又は減速して人物にゴミ捨て支援のサービスを提供する自律移動ロボットの動作制御装置であって、
人物が自律移動ロボットに対してゴミを捨てたいという要望の度合いを、自律移動ロボットの周囲情報を用いて人物の挙動を分析することにより判断し、
自律移動ロボットの停止又は減速を決定する近接範囲を、度合いに応じて人物に対して設定する要望判断部と、
人物の位置が近接範囲内か否かを判断し、自律移動ロボットの減速又は停止を決定する動作決定部とを備え、
要望判断部は、複数の人物がゴミを捨てたいという要望が有ると判断した場合、複数の人物のそれぞれの度合いに応じてそれぞれの人物に対して近接範囲を設定し、
動作決定部は、複数の人物のいずれかが人物に設定された近接範囲内にいると判断すると、自律移動ロボットの停止又は減速を決定する。
【0008】
本開示に係る自律移動ロボットの動作制御方法は、
停止又は減速して人物にゴミ捨て支援のサービスを提供する自律移動ロボットの動作制御方法であって、
要望判断部が、人物が自律移動ロボットに対してゴミを捨てたいという要望の度合いを、自律移動ロボットの周囲情報を用いて人物の挙動を分析することにより判断し、
自律移動ロボットの停止又は減速を決定する近接範囲を、度合いに応じて人物に対して設定し、
動作決定部が、人物の位置が近接範囲内か否かを判断し、自律移動ロボットの減速又は停止を決定し、
要望判断部は、複数の人物がゴミを捨てたいという要望が有ると判断した場合、複数の人物のそれぞれの度合いに応じてそれぞれの人物に対して近接範囲を設定し、
動作決定部は、複数の人物のいずれかが人物に設定された近接範囲内にいると判断すると、自律移動ロボットの停止又は減速を決定する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、AMRに対してサービスを要望する人とそうでない人がエリア内に混在していても、AMRが不要なタイミングで動作変更することが無くなるので、利便性が低下することの無いAMRの動作制御装置及び方法を提供できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1におけるAMRの動作制御装置の全体構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】実施の形態1におけるAMRの動作制御装置が有するハードウェアの構成図である。
【
図3】実施の形態1におけるAMRの動作制御装置の動作を表すフローチャートである。
【
図4】実施の形態1における要望判断部の内部処理を表すフローチャートである。
【
図5】実施の形態1における動作決定部の内部処理を表すフローチャートである。
【
図6】実施の形態1におけるAMRの動作制御装置の具体的な動作の一例(その1)である。
【
図7】実施の形態1におけるAMRの動作制御装置の具体的な動作の一例(その2)である。
【
図8】実施の形態2におけるAMRの動作制御装置の全体構成を示す機能ブロック図である。
【
図9】実施の形態2におけるAMRの動作制御装置の動作を表すフローチャートである。
【
図10】実施の形態2におけるAMRの動作制御装置の具体的な動作の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態の説明及び図面において、同じ要素及び対応する要素には同じ符号を付している。同じ符号が付された要素の説明は、適宜に省略または簡略化する。以下の実施の形態では、「部」を「回路」、「工程」、「手順」または「処理」に適宜読み替えてもよい。
【0012】
実施の形態1.
<構成>
実施の形態1におけるAMRの動作制御装置について、
図1~
図7を用いて説明する。
【0013】
図1は、実施の形態1におけるAMRの動作制御装置の全体構成を示す機能ブロック図である。
図1において、AMR100は、入力部1と、制御部5と、動作制御装置200とを備える。動作制御装置200は、人物検出部2と、要望判断部3と、近接範囲設定データ4、動作決定部5、制御部6とを備える。
【0014】
本実施の形態では、AMR100がゴミ箱を搭載し、エリアに訪れた人のゴミ捨てを支援する例について説明する。エリアとは、例えば、観光地、テーマパーク、ショッピングモール、競技場、ホテル、工場などの施設である。エリアに訪れた人は、例えば、観光客、従業員、作業員などであり、「人物」と称する。以降、AMR100の一般的動作、構造、構成を説明する際、番号を省略して単に「AMR」と称する場合がある。
【0015】
AMR100は、人物にサービス(本実施の形態では、ゴミ捨ての支援)を提供するためにエリア内を自律して移動する。AMR100は、例えば、台車型ロボット、ドローン型ロボットなどである。AMR100は、ゴミ箱(図示せず)と、エリア内を走行又は飛行するための各種移動装置(図示せず)とを備える他、AMRの主要な構成を内蔵するための筐体を含む。各種移動装置は、例えば、モータ、エンジンなどの駆動装置、操舵機構、車輪、回転翼などの被駆動装置、電池、燃料などの動力源など、である。
【0016】
AMR100は、AMR100の自己情報及びAMR100の周囲情報を取得するための各種センサ(図示せず)を備える。各種センサは、例えば、カメラ、赤外線センサなどのイメージセンサ、GNSS(Global Navigation Satellite System)、IMU(Inertial Measurement Unit)などの測位センサ、マイクロホン、振動ピックアップなどの音響センサ、超音波センサ、ミリ波レーダ、LiDAR(Light Detection and Ranging)などの測距センサ、無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)などの無線通信装置など、である。
【0017】
入力部1は、AMR100に備えられた各種センサを用いて、AMR100の自己情報及びAMR100の周囲情報を取得する。AMR100の自己情報は、例えば、自己位置(緯度・経度、高度、スタート地点からの相対座標、など)、移動速度、動力源の残量などである。AMR100の周囲情報は、例えば、AMR100の周囲をイメージセンサで撮影した映像データ、AMR100の周囲の音声をマイクロホンで収集した音声データ、AMR100周囲をミリ波レーダ、LiDARなどでセンシングしたセンシングデータ、Bluetooth(登録商標)などによる周囲の端末との通信データなどである。
なお、AMR100の自己情報及びAMR100の周囲情報を取得するための各種センサは、AMR100に備えられたものでなくても良い。例えば、映像データに関しては、入力部1が、監視カメラのようなAMR100の外部に装着されたデバイスのデータを取得しても良い。AMR100の外部に装着されたデバイスは、AMRに備えられた各種センサの検出範囲外の人物を検出することができ、AMRの行動範囲を広げることができる。
【0018】
人物検出部2は、入力部1から得られるAMR100の周囲情報を用いて、所定の検出範囲内でAMR100の周囲の人物を検出する。検出された人物は、人物情報として出力される。所定の検出範囲とは、すなわち人物の検出範囲である。例えば、人物の検出範囲は、AMR100を取り囲んだ所定の領域であるが、これに限らない。例えば、人物の検出範囲は、AMR100の周囲に点在する所定の領域であってもよく、各種センサの検出性能により定められてもよい。なお、人物の検出範囲の広さ(あるいは、狭さ)は、AMR100からの距離で設定されてもよい。この場合、距離はAMR100を中心(原点)とする相対値で定義できるので、AMR100の自己情報(例えば、自己位置)を用いなくても検出範囲を設定することができる。
【0019】
人物検出部2における人物の検出には、例えば、カメラの映像データを用いて画像認識を行う方法を用いることができる。また、人物の検出には、AMR100の周囲情報中の複数の情報を組み合わせる方法を用いても良い。例えば、センシングデータを用いて物体とその位置を検出し、音声データを用いてその位置からの発話音声を取得できれば、物体を人物として検出してもよい。なお、人物検出部2は、人物以外の障害物(例えば、他のAMR、施設構造物など、AMRの移動の妨げとなる物体)を検出してもよい。
【0020】
続いて、人物検出部2は、検出した人物と、AMR100の周囲情報とを紐づける。例えば、検出した各人物に一意なIDを付与し、その人物を含む範囲内の映像データ、音声データ、センシングデータなど、人物に関連する部分のAMR100の周囲情報を人物のIDに紐づける。なお、人物検出部2は、人物以外の障害物についても、AMR100の周囲情報と紐づけて保持してもよい。人物のIDは、人物情報に含めることができる。
【0021】
また、人物検出部2は、人物の身体的特徴(例えば、身長、体格、性別、年齢など)を推定してもよい。例えば、人物の身体的特徴は、入力部1から取得できるAMR100の周囲情報の映像データを画像認識することで、推定することができる。推定された人物の身体的特徴は、人物のIDと共に人物情報に含めることができる。
【0022】
要望判断部3は、人物検出部2が検出した人物それぞれについて、AMR100の周囲情報(例えば、人物の映像データ)を用いて人物の挙動を分析する。そして、その分析結果から、AMR100に対するサービスの要望の有無を判断する。人物の挙動とは、人がある行動に移る際の予備的動作又は事前の行動であって、例えば、仕草、身振り、態度、視線移動、表情、言動など、である。また、AMR100に対するサービスの要望とは、言い換えれば、人物がAMRによるサービスを受けたいという要望であり、本実施の形態では、人物がAMR100に搭載されているゴミ箱にゴミを捨てたいという要望である。なお、人物以外の障害物については、AMR100に対するサービスの要望が無いものとして判断される。
【0023】
AMR100に対する要望の判断方法として、例えば、人物検出部2で人物情報IDに紐づけたAMR100の周囲情報を用いて、機械学習、ルールベース処理などによるパターン認識、あるいは分類方法を用いることが可能である。機械学習による判断方法としては、例えば、深層学習、強化学習、ニューラルネットワークで作成した学習済みモデルを用いることができる。なお、学習済みモデルの作成方法として、以下の方法が可能である。例えば、AMR100の周囲情報の映像データを用いて、ゴミを捨てたい要望が有る人の画像(例えば、ゴミを鞄から取り出す動作を行う人、ゴミを捨てるために周囲を見渡している人、など)を入力データとし、AMR100に対するサービスの要望の有無の状態に応じて正解ラベルを付与した学習データを用いて機械学習すればよい。なお、正解ラベルは、サービスの要望の有無以外に、サービスの要望の強さ(あるいは、弱さ)についても付与されてもよい。また、ルールベース処理では、上述のラベル付けを行った学習データを用いて、例えば、人手によりヒューリスティックに判断結果を分類してもよい。
以降、AMR100に対するサービスの要望を、単に「サービスの要望」と略する場合がある。
【0024】
続いて、要望判断部4は、サービスの要望の有無の判断結果に応じて近接範囲を設定する。近接範囲は、検出された人物それぞれに対して個別の値が設定される。ここで、近接範囲は、例えば、AMR100を取り囲んだ所定の領域であり、人物がその領域内に入った場合、AMRは動作を変更する。
【0025】
近接範囲は、AMRを取り囲んだ所定の領域に限らない。例えば、AMR100の周囲に点在する所定の領域であってもよく、各種センサの検出性能により定められてもよい。なお、近接範囲の広さ(あるいは、狭さ)は、AMR100からの距離で設定されてもよい。この場合、近接範囲は、AMR100を中心(原点)とする相対値で定義できるので、AMR100の自己情報(例えば、自己位置)を用いなくても近接範囲を設定することができる。なお、人物以外の障害物のそれぞれに対しても、個別の近接範囲が設定されてもよい。
【0026】
近接範囲は、人物の身体的特徴に応じて、個別の値が設定されてもよい。例えば、大人と子供とでは体格差があるため、近接範囲は異なることが望ましい。また、若年者と高齢者とでは歩行速度が違うため、近接範囲は異なることが望ましい。また、歩行者と車椅子の場合も近接範囲は異なることが望ましい。なお、人物の身体的特徴は、人物情報から取得することができる。
【0027】
近接範囲設定データ4は、要望判断部3が判断した結果に応じて設定された、近接範囲データを保持する。
【0028】
動作決定部5は、各人物のサービスの要望の有無の判断結果に応じて設定された近接範囲を用いて、各人物の位置が近接範囲内か否かを判断する。そして、その判断結果に基づいてAMR100の動作を決定する。そして、決定された動作に従って、AMR100の動作を制御するための制御信号が出力される。
【0029】
各人物の位置が近接範囲内か否かについては、入力部1から得られるAMR100の周囲情報から判断することができる。例えば、人物のIDに紐づいたAMR100の周囲情報の映像データに含まれる人物の画像情報を利用し、人物からAMR100までの距離を推定する方法を用いることができる。そして、推定された距離を用いて、各人物からAMR100までの距離が近接範囲内か否かを判断することができる。なお、AMR100の自己情報(例えば、自己位置の座標)とAMR100の周囲情報(例えば、センシングデータから得られる人物の位置の座標)とを併用して、各人物の位置が近接範囲か否かを判断されてもよい。
【0030】
制御部6は、動作決定部5が出力した制御信号に従って、AMR100の各種移動装置を制御する。例えば、制御信号に従って、AMR100の操舵機構やブレーキが制御されると共に、駆動装置の回転数などが制御され、AMR100がエリア内を自律移動する。
【0031】
<ハードウェア構成>
図1に示されるAMR100の動作制御装置200の各構成は、例えば、プロセッサを内蔵する情報処理装置であるコンピュータで実現可能である。
図2は、実施の形態1におけるAMR100の動作制御装置200が有するハードウェアの構成図である。
図2において、動作制御装置200は、プロセッサ300、揮発性記憶装置301、不揮発性記憶装置302、信号路303とで構成される。また、動作制御装置200の各構成には、入力装置304と制御装置305とが信号路303を介して接続されている。
【0032】
プロセッサ300を内蔵するコンピュータは、例えば、機器組み込み用途のマイクロコンピュータ、及びSoC(System on Chip)などである。あるいは、スマートフォン、タブレット型コンピュータなどの可搬型コンピュータでもよいし、パーソナルコンピュータ、サーバ型コンピュータなどの据え置き型コンピュータでもよい。
【0033】
プロセッサ300は、動作制御装置200の全体を制御する。例えば、プロセッサ300は、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)などである。プロセッサ300は、単一のプロセッサでもマルチプロセッサでもよい。また、動作制御装置200は、コンピュータ以外にASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの処理回路を有してもよい。処理回路は、単一回路又は複合回路でもよい。
【0034】
揮発性記憶装置301は、動作制御装置200の主記憶装置である。例えば、揮発性記憶装置301は、プロセッサ300の動作に必要なデータを保持する。例えば、揮発性記憶装置301は、RAM(Random Access Memory)である。
【0035】
不揮発性記憶装置302は、動作制御装置200の補助記憶装置である。例えば、不揮発性記憶装置302は、動作制御装置200の動作に必要な初期値データ、プログラム、エラーログなどを記憶する。また、不揮発性記憶装置302は、近接範囲設定データ4が記憶されてもよい。例えば、不揮発性記憶装置302は、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、又はSSD(Solid State Drive)である。
【0036】
信号路303は、
図2に記された各構成要素間でデータ送受信を行うための伝送路(バス)である。
【0037】
入力装置304は、入力部1の機能を有する、動作制御装置200の入力インタフェースである。例えば、入力装置304は、プロセッサ300にAMR100の自己情報及びAMR100の周囲情報を含むAMR100の制御に必要な情報と、AMR100の制御処理の実行命令とを入力するデバイスである。
【0038】
制御装置305は、制御部6の機能を有する、AMR100の移動・停止・方向転換などの動作を制御するデバイスである。例えば、制御装置305は、AMR100の各種移動装置である操舵機構やブレーキを制御すると共に、モータなどの駆動装置の回転数などを制御する。
【0039】
プロセッサ300は、作業用メモリとして揮発性記憶装置301(例えば、RAM)を使用し、不揮発性記憶装置302(例えば、ROM)から、信号路303を通じて読み出されたコンピュータ・プログラム(すなわち、動作制御プログラム)に従って動作する。なお、動作制御プログラムは、入力装置304を通じ、動作制御装置200の外部から供給されてもよい。また、動作制御プログラムは、コンピュータで読み取り可能な不揮発性記憶媒体(例えば、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フラッシュメモリ、など)により配布されてもよい。
【0040】
なお、動作制御装置200は、AMR100の内部に搭載されていてもよいが、これに限らず、AMR100とは別の場所にあるコンピュータ等により構成されてもよい。この場合、AMR100の自己情報及びAMR100の周囲情報は、例えば、入力装置304に接続された通信網を介してデータ伝送を行い、上記コンピュータ上の動作制御装置200に入力されればよい。また、上記コンピュータ上の動作制御装置200で生成された制御情報は、AMR100の自己情報及びAMR100の周囲情報の場合と同様に、例えば、通信網を介してAMR100の制御装置305へ送出されればよい。なお、通信網は、有線あるいは無線のネットワークであり、例えば、LAN(Local Area Network)などの専用線、インターネットなどである。
【0041】
<処理動作>
次に、実施の形態1における、AMRの動作制御装置の動作について説明する。
図3は、実施の形態1における、AMRの動作制御装置の動作を表すフローチャートである。
【0042】
ステップST1において、入力部1が、AMR100の自己情報及びAMR100の周囲情報を取得する(ステップST1)。
【0043】
ステップST2において、人物検出部2が、ステップST1で取得したAMR100の周囲情報を用いて、所定の検出範囲内に存在する人物及び人物以外の障害物の検出を行う(ステップST2)。なお、以降の説明では、人物以外の障害物は、サービスの要望が無い人物に含まれることとする。
【0044】
ステップST3において、人物検出部2が、ステップST2で人物を1人以上検出したか否かに応じて、処理の分岐を行う。人物を1人以上検出した場合(ステップST3のYes)、ステップST4に移行し、その人物がサービスの要望を有するか否かを判断する。続いて、ステップST5に移行し、その人物の位置が近接範囲内か否かを判断し、AMR100の動作を決定する。一方、1人も検出しなかった場合(ステップST3のNo)、AMR100の周囲に人物が存在しないため、AMR100は停止あるいは減速の必要が無いと判断し、ステップST6に移行し、適宜エリア内の巡回を継続する。
【0045】
ステップST4において、要望判断部3が、ステップST2で検出した各人物について、AMR100の周囲情報を用いて人物の挙動を分析する。そして、その分析結果から、サービスの要望の有無の判断を行い、サービスの要望の有無に応じて、各人物に対して個別の近接範囲を設定する(ステップST4)。
【0046】
ここで、ステップST4における詳細な処理内容を説明する。
図4は、要望判断部3の内部処理を表すフローチャートである。
【0047】
まず、ステップST401において、検出した人物の中からサービスの要望の有無の判断処理が完了していない人物を1人選択する(ステップST401)。
【0048】
次にステップST402において、ステップST401で選択した人物に対し、その人物の挙動を分析し、その分析結果から、サービスの要望の有無を判断する(ステップST402)。サービスの要望の有無の判断方法として、例えば、ステップST2で取得した人物のIDに紐づくAMR100の周囲情報を参照し、機械学習による学習済みモデルを用いた判断方法、ルールベースの判断方法、又は機械学習とルールベースとを組み合わせた判断方法を用いサービスの要望の有無(例えば、AMRのゴミ箱にゴミを捨てたい、という要望の有無)を判断する。
【0049】
ここで、サービスの要望の有無の判断方法として、例えば、映像データを用いた画像認識方法により、人物の挙動を分析する方法を用いることができる。具体的には、例えば、ゴミを保持している、鞄からゴミを取り出そうとしている等の行動、AMR100に対して手を振る等のジェスチャ、AMR100を見つめるなどの視線移動など、人物がゴミを捨てる意図のある仕草を行っていることを認識し判断する。
【0050】
また、サービスの要望の有無の判断方法として、例えば、音声データを用いた音声認識方法により、人物の挙動を分析する方法を用いることができる。具体的には、例えば、「止まって」「ゴミ箱はどこ」等と、AMR100に対して停止を促す発話、あるいは、ゴミ箱を探すような発話などを認識した場合、発話した人物がゴミを捨てたいという要望があると判断する。
【0051】
また、サービスの要望の有無の判断方法として、例えば、測距センサから得られるセンシングデータを利用して、人物の挙動を分析する方法を用いることができる。具体的には、例えば、人物とAMR100との相対速度が一定以上の速度、かつ、人物がAMR100に向かって来ている(距離が近づいている)場合は、その人物がゴミを捨てたいという要望があると判断する。
【0052】
また、サービスの要望の有無の判断方法として、例えば、人物が携帯する端末(例えば、スマートフォン、タブレット端末、など)を用い、人物の要望が直接入力されてもよい。この場合、人物が携帯する端末への入力行為が、人物の挙動と見なすことができる。具体的には、エリアに訪れている人が、携帯する端末に導入されたアプリケーションソフトウェアを用いて、事前にAMR100にゴミを捨てたいという要望を入力していれば、その人物にゴミを捨てたいという要望があると判断する。
【0053】
なお、上記したサービスの要望の有無の判断方法は一例であり、サービスの要望の有無の判断方法はこの限りではない。更に、サービスの要望の有無を、複数の判断方法を組み合わせることにより、総合的に判断してもよい。
【0054】
ステップST402において、人物にサービスの要望が有ると判断した場合(ステップST402のYes)、続くステップST403でその人物の近接範囲を、サービスの要望が有る場合として設定する(ステップST403)。一方、サービスの要望が無いと判断した場合(ステップST402のNo)、ステップST404でその人物の近接範囲を、サービスの要望が無い場合として設定する(ステップST404)。
【0055】
近接範囲は、近接範囲設定データ4を参照し、事前に設定した値に設定される。また、近接範囲は、サービスの要望が有る場合の方が、サービスの要望が無い場合よりも遠い距離が設定される。具体的には、例えば、サービスの要望が有る場合の近接範囲が5(m)、サービスの要望が無い場合の近接範囲が3(m)とすることができる。
【0056】
次にステップST405において、ステップST401で選択した人物については、サービスの要望の有無の判断処理を完了とする(ステップST405)。
【0057】
次にステップST406において、ステップST2で検出した各人物の中で、サービスの要望の有無の判断が未完の人物がまだ存在するか確認する(ステップST406)。未完の人物が存在する場合(ステップST406のYes)、再びステップST401に戻り、ステップST401からステップST405を順次実行する。未完の人物が存在しない場合(ステップST406のNo)、
図4のフローチャートにおける要望判断部3の処理ステップST4を終了する(END)。
【0058】
図3の全体フローチャートに戻る。
ステップST5において、動作決定部5が、ステップST4で得られた各人物のサービスの要望の有無の判断結果に応じて設定された近接範囲を用いて、各人物の位置が近接範囲内か否かの判断結果に基づき、AMR100の動作を決定する(ステップST5)。以降、近接範囲内か否かの判断を、「近接判断」と略する。
【0059】
ここで、ステップST5における詳細な処理内容を説明する。
図5は、動作決定部5の内部処理を表すフローチャートである。
【0060】
まず、ステップST501において、検出した人物の中から近接判断が完了していない人物を1人選択する(ステップST501)。
【0061】
次にステップST502において、ステップST501で選択した人物に対し、ステップST4で設定された近接範囲と、ステップST2で人物のIDに紐づけたAMR100の周囲情報とを参照し、人物の位置が近接範囲内か否かを判断する。言い換えれば、人物からAMR100までの距離が近接範囲内か否かを判断する。
【0062】
ここで、人物からAMR100までの距離が近接範囲内か否かの判断方法として、例えば、測距センサから得られるセンシングデータを利用し、人物との距離を直接計測する方法を用いることができる。
【0063】
また、人物からAMR100までの距離が近接範囲内か否かの判断方法として、例えば、人物が持つ携帯端末とのBluetooth(登録商標)による通信機能を用い、その電波強度を測定する方法を用いることができる。
【0064】
また、人物からAMR100までの距離が近接範囲内か否かの判断方法として、例えば、人物が持つ携帯端末のGPS(Global Positioning System)情報を利用し、AMR100の自己情報から得られるAMR100の現在位置との相対座標により距離を計算することができる。
【0065】
また、人物からAMR100までの距離が近接範囲内か否かの判断方法として、例えば、カメラの映像データに含まれる人物の画像情報を利用し、人物との距離を推定する方法を用いることができる。
【0066】
上記した人物からAMR100までの距離の判断方法は一例であり、人物からAMR100までの距離の判断方法はこの限りではない。更に、人物からAMR100までの距離は、複数の距離の判断方法を組み合わせることにより総合的に判断してもよい。
【0067】
ステップST502において、人物の位置が近接範囲内であると判断した場合(ステップST502のYes)、ステップST503へ移行し、AMR100の移動を停止または減速する制御を行う(ステップST503)。以降、近接判断が未完の人物が存在したとしても停止や減速を行うことに変わりはないため、ステップST5における動作決定部5の処理は終了する(END)。
【0068】
一方、ステップST502において、人物は近接範囲内ではないと判断した場合(ステップST502のNo)、ステップST504へ移行し、ステップST501で選択した人物については近接判断を完了する(ステップST504)。
【0069】
次にステップST505において、ステップST2で検出した各人物の中で、近接判断が未完の人物がまだ存在するか確認する。未完の人物が存在する場合(ステップST505のYes)、再びステップST501に戻り、ステップST501からステップST504までの各処理を順次実施する。未完の人物が存在しない場合(ステップST505のNo)、AMR100の周囲に人物を検出したものの、近接範囲内には一人も存在しないケースであるため、ステップST506へ移行し、AMR100を通常の速度での移動を再開する。以上で、ステップST5における動作決定部5の処理を終了する(END)。
【0070】
図3の全体フローチャートに戻る。
ステップST6において、制御部6が、ステップST5の動作決定部5により生成された制御信号に基づき、AMR100の制御を行う(ステップST6)。ステップST6の処理を終了(END)した後、全体フローチャートの最初(START)に戻り、ステップST1からステップST6までの各処理を継続する。
【0071】
図6及び
図7に、実施の形態1における、AMRの動作制御装置の具体的な動作の一例を示す。説明を簡単にするために、
図6及び
図7の例ではAMRは1台とし、人物は3名とする。
図6(a)において、AMR100aはエリア内を巡回している。ゴミを捨てたいという要望が無い人物M1(以降、人物M1)は、AMR100aの近くを歩いている。ゴミを捨てたいという要望が有る人物M2a(以降、人物M2a)、及びゴミを捨てたいという要望が有る人物M2b(以降、人物M2b)は、それぞれ、ゴミとして瓶を保持し、ゴミ箱を探しながらAMR100aの近くを歩いている。
【0072】
図6(b)において、AMR100aから近い側の近接範囲E1は、AMR100aを中心とした半径d
1(m)の円内の領域である。AMR100aから遠い側の近接範囲E2は、同様にAMR100aを中心とした半径d
2(m)の円内の領域である。近接範囲E2は、近接範囲E1より広い領域(すなわち、半径d
2>半径d
2)である。近接範囲E1及び近接範囲E2の値(すなわち、AMR100aからの距離)は、それぞれ近接範囲設定データ4にあらかじめ記憶されている。人物の検出範囲E3は、AMR100aを中心とした半径d
3(m)の円内の領域である。人物の検出範囲E3は、近接範囲E2より広い領域(すなわち、半径d
3>半径d
2)であり、所定の定数値として設定されている。
【0073】
近接範囲E1は、サービスの要望が無い場合の近接範囲である。また、近接範囲E1は、全ての人物の安全のための近接範囲でもある。近接範囲E2は、サービスの要望が有る場合の近接範囲である。近接範囲E2は、AMRから人物までの距離が近すぎず、人物が早いタイミングで容易にゴミ捨てが可能な距離に設定される。いずれも、近接領域の内側に対象となる人物が進入すると、AMR100aは停止または減速を行う。
【0074】
図6(a)の説明に戻る。AMR100aの各種センサで取得されたAMR100aの周囲情報から、人物の検出範囲E3内に存在する、人物M1、人物M2a、及び人物M2bがそれぞれ検出される。
【0075】
続いて、AMR100情報に含まれる映像データから、人物M1は、サービスの要望が無い(ゴミを捨てたいという要望が無い)人物と判断される。一方、人物M2a及び人物M2bは、サービスの要望が有る(ゴミを捨てたいという要望が有る)人物と判断される。したがって、人物M1に対しては、近接範囲E1が設定され、人物M2a及び人物M2bに対しては、近接範囲E2が設定される。
【0076】
図7に移行する。
図7(c)に示すように、AMR100aが移動することで、人物M1が近接範囲E2の領域内に進入した場合を考える。人物M1には近接範囲E1が設定されているため、人物M1が近接範囲E2に進入しても、AMR100aは停止または減速をせず、人物M1の前を通り過ぎる。なお、人物M1が、近い側の近接範囲E1に進入すると、AMR100aは停止または減速する。これは、全ての人物に対する安全のための制御である。
【0077】
続いて、
図7(d)に示すように、AMR100aが人物M1の前を通り過ぎた後、人物M2a及びM2bが、近接範囲E2の領域内に進入した場合を考える。人物M2a及び人物M2bには近接範囲E2が設定されていることから、AMR100aは、人物M2aあるいは人物M2bが近接範囲E2に進入した段階で停止または減速する。
【0078】
上記のように、ゴミを捨てたいという要望が有る人物に対する近接範囲を、ゴミを捨てたいという要望が無い人物に対する近接範囲よりも広く設定しているので、AMR100aは、人物M2a及び人物M2bに対しては、AMRとの距離が遠い段階(すなわち、早いタイミング)で停止または減速を行うことができる。よって、人物M2a及び人物M2bは、AMR100aのゴミ箱に容易にゴミを捨てることが可能となる。
【0079】
なお、AMR100aは、人物M2aに向かって移動しないので、人物M2aは、自分のところにAMR100aが移動してくるまで待たされることもない。一方、人物M2bは、ゴミ捨てのために(人物M2aに向かって移動したAMR100aの所まで)余計に移動する必要も無い。つまり、AMRが、ゴミを捨てたいという要望が有る人物を複数検出しても、AMRの利便性は低下しない。
【0080】
一方、AMR100aは、人物M1に対しては、安全のために停止や減速をしなければならない範囲にその人物が入らない限り、移動状態を維持する。すなわち、AMR100aは、人物M1に対して不要な停止または減速を行わない。
【0081】
以上、AMR100aは、AMR100aに対するサービスの要望が有る人物が近づくタイミングでのみ停止や減速でき、必要のないタイミングで不要な停止や減速をしてしまうことがない。よって、AMR100aは、過剰なサービスを提供することが無いだけでなく、ゴミを捨てたいという要望が有る他の人物M2a及び人物M2bに対してサービスをより早く提供できる。つまり、エリアに訪れた人の全てに対して、AMRの利便性が向上する。
【0082】
上記したように、実施の形態1では、ゴミを捨てたいという要望が有る人物に対する近接範囲を、ゴミを捨てたいという要望が無い人物に対する近接範囲よりも広く設定するようにした。
よって、AMRに対してサービスを要望する人とそうでない人がエリア内に混在していても、AMRが不要なタイミングで動作変更することが無くなるので、利便性が低下することの無いAMRの動作制御装置及び方法を提供できる。
【0083】
実施の形態2.
本発明を実施するための実施の形態2について説明する。
図8は本発明の実施の形態2におけるAMRの動作制御装置の全体構成を示す機能ブロック図である。
【0084】
図8において、
図1と異なる構成は、地図・施設データ7、人流分布予測部8である。その他の構成については、
図1と同様であるので説明を省略する。
【0085】
地図・施設データ7は、AMR100が移動するエリアの地図情報、及び施設情報を保持する。地図・施設データ7に、施設の時間情報(例えば、開園・閉園時間、イベントの開催時間、など)が含まれてもよい。
【0086】
人流分布予測部8は、入力部1が取得したAMR100の自己位置を参照し、AMR100の現在の移動場所と時間とを取得する。そして、地図・施設データ7を参照し、現在の移動場所と時間の人流の分布を予測する。ここで、人流の分布は、例えば、人物の混雑度、人物の移動方向などを含む、人物の流れに関する情報である。
【0087】
AMRが移動する場所が屋内の場合、例えば、施設内の人物の動線にあたる部分、あるいは、人気のある施設の付近の場合、それ以外の施設の場合と比べて人流が多くなる傾向にある。また、AMRが移動する場所が屋外の場合、人物は、屋根がある場所を好んで移動する可能性が高く、このような場所も、それ以外の場所と比べて人流が多くなる傾向にある。また、特定の時間帯(例えば、朝の開園時間、昼食の時間帯、夕刻の帰宅時間、イベントの開催時間、休日、など)でも、その時間帯以外と比べて人流が多くなる傾向にある。
【0088】
人流分布予測部8は、AMRの移動場所又は時間帯が、通常の場合と比較して、上述のような人流の分布が多い場合と予測した場合、人物検出部2に、AMR周囲の人物の検出範囲を変更するように通知する。また、制御部5に、人物の位置が近接範囲内か否かの判断のための近接範囲を変更するように通知する。ここで、通常の場合とは、上述のような人流の分布の多い場所又は時間帯に当たらない場合である。
【0089】
AMR周囲の人物の検出範囲を変更する方法として、例えば、人流の分布が多い場合では、エリア内の全ての人物の安全が確保できる条件の下、人物の検出範囲を狭めることができる。例えば、人流の分布が多い場合の人物の検出範囲は、通常の場合の人物の検出範囲の70%の大きさである。なお、検出範囲の大きさは、エリア内の人物の密度に応じて適宜設定することができる。
これにより、人物の過検出を防止でき、より高精度なAMRに対するサービスの要望判断、ならびにAMRの移動制御が可能となる。
【0090】
また、人物の位置が近接範囲内か否かの判断のための近接範囲を変更する方法として、例えば、人流の分布が通常の場合と比較して多い場所では、エリア内の全ての人物の安全が確保できる条件の下、近接範囲を人流の分布が通常の場合よりも狭めることができる。なお、近接範囲の変更は、サービスの要望が有る人物の近接範囲と、サービスの要望が無い人物の近接範囲の両方を変更してもよいし、片方の近接範囲だけ変更してもよい。例えば、人流の分布が多い場合の近接範囲は、通常の場合の近接範囲の70%の大きさである。なお、近接範囲の大きさは、エリア内の人物の密度に応じて適宜設定することができる。
これにより、人流の分布が多い場所において、人物がAMRに近づくたびの不要な停止又は減速を抑制でき、より高精度なAMRに対するサービスの要望判断、ならびにAMRの移動制御が可能となる。
【0091】
図9は、実施の形態2における動作制御装置の動作を表すフローチャート図である。
図3の実施の形態1のフローチャート図と比較して、ステップST7の処理が追加されている。その他は、実施の形態1と同様であるので、ステップST7の動作に関連しない処理の説明は省略する。
【0092】
ステップST1において、入力部1が、AMR100の自己情報、及びAMR100の周囲情報を取得する(ステップST1)。
【0093】
ステップST7において、人流分布予測部8が、ステップST1で取得したAMR100の自己位置と、地図・施設データ7とを参照し、AMR100が現在移動している場所と時間の人流の分布を予測する(ステップST7)。
そして、人流分布予測部8が、AMR100が現在移動している場所が、人の分布の多い場所であると判断した場合、ステップST3での人物の検出範囲、ステップST5での近接範囲を、人流の分布が通常の場合よりも狭く設定する(ステップST7)。
【0094】
人流の分布の予測方法として、例えば、地図情報、施設の構造に関する情報、時間帯に基づく情報などを用いることができる。地図情報は、例えば、AMR100の移動している場所が施設内の動線である、人気施設の付近などである。施設の構造に関する情報は、例えば、屋根がある、道幅が広い(あるいは、狭い)、などである。時間帯に基づく情報は、例えば、朝の開園時間、昼食の時間帯、夕刻の帰宅時間、イベントの開催時間など、である。AMR100の移動している場所又は移動している時間が、これらの条件に合致する場合、人流の分布が通常よりも大きい場所であると予測する。
【0095】
図10に、実施の形態2における、AMRの動作制御装置の具体的な動作の一例を示す。
図10の例ではAMRは1台とし、人物は5名とする。AMR周辺は、人流の分布が多い場所として説明する。
図10(a)は、人流の分布により人物の検出範囲及び近接範囲の制御が行われない場合の例である。
図10(b)は、本実施の形態2による、人流の分布により人物の検出範囲及び近接範囲の制御が行われる場合の例である。
【0096】
図10(a)(b)それぞれにおいて、AMR100bはエリア内を巡回している。ゴミを捨てる意図の無い人物M3a~M3c(以降、人物M3a、人物M3b、人物M3c)は、AMR100bの近くを歩いている。ゴミを捨てる意図の有る人物M4a~M4b(以降、人物M4a、人物M4b)は、ゴミとして瓶を保持し、ゴミ箱を探しながらAMR100bの近くを歩いている。
【0097】
図10(a)では、近接範囲E4a、近接範囲E5a、及び人物の検出範囲E6aは、それぞれ人流の分布が通常の場合に設定されている。人物M4a及び人物M4bは、人物の検出範囲E6a内であり、それぞれサービスの要望が有る人物として検出されている。また、人物M3a、人物M3b及び人物M3cも、人物の検出範囲E6a内であり、それぞれサービスの要望が無い人物として検出されている。
人物M3a及び人物M3bは、近接範囲E3a内に進入しており、AMR100bは、安全のために停止又は減速を行う。そのため、AMR100bはその場に留まり続けてしまい、人物M4a及び人物M4bの元へ速やかに移動することができない。その結果、AMR100bがエリア内をスムーズに巡回することができなくなる。更に、人物M3cに対しては、近接範囲E3a内には進入していないものの、不必要なサービスの要望の判断処理が為されるため、動作制御装置200の処理負荷が増大する。
【0098】
一方、
図10(b)では、人流分布予測部8が、AMR100bの移動している場所が人流の多い場所として予測する。そして、近接範囲E4b、近接範囲E5b、及び人物の検出範囲E6bが、全ての人物の安全が確保できる範囲内で狭く設定される。
これにより、
図10(a)と同じ位置に居た人物M3a及び人物M3bに対して、AMR100bは停止又は減速を行わなくなる。そのため、AMR100bが人物M4a及び人物M4bの元へ速やかに移動することができる。その結果、AMR100bがエリア内をスムーズに巡回することができる。また、人物M3cは、人物の検出範囲E6bの範囲外となるため、不必要なサービスの要望の判断処理が為されず、動作制御装置200の処理負荷が増大しない。
【0099】
上記したように、実施の形態2では、AMRの周囲の人流の分布が通常の場合よりも多い場合、人物の検出範囲と近接範囲とを通常の場合よりも狭くするようにした。
よって、サービスの要望が無い人物の過検出を抑制できるので、AMRがその場に留まり続けてしまうことが防止できる。その結果、AMRが更に効率的にエリア内を巡回できるので、AMRの利便性を更に向上させることができる。
【0100】
本実施の形態2では、人流分布予測部8は、地図・施設データ7を用いて人流の分布を予測したが、これに限らない。例えば、人流の分布の予測方法として、AMR100の周囲情報に含まれるカメラの映像データを用いて人物の混雑度を予測してもよい。その他、同様の機能・効果が得られる構成であれば、その構成を用いてもよい。
【0101】
本実施の形態2では、人流の分布が多い場合には、人物の検出範囲及び近接範囲を通常の場合よりも狭くするようにしたが、これに限らない。例えば、人流の分布が通常の場合より少ない場合には、人物の検出範囲及び近接範囲が、通常の場合よりも更に広く設定されてもよい。また、人物の検出範囲及び近接範囲は同時に変更される必要は無い。例えば、人物の検出範囲のみ変更されてもよいし、近接範囲のみ変更されてもよい。
AMRの周囲の人流の分布が通常の場合よりも少ない場合、人物の検出範囲と近接範囲とを通常の場合よりも広くすることで、AMRは、より遠くの人物に対して早いタイミングでサービスを提供することができる。よって、AMRの利便性を更に向上させることができる。
【0102】
上記した実施の形態のそれぞれにおいて、説明を簡略化するため、人物の検出範囲ならびに近接範囲を表す領域を円形としたが、これに限らない。例えば、人物の検出範囲ならびに近接範囲を表す領域は、楕円形状であってもよいし、四角形などの多角形であってもよい。又は、人物の検出範囲ならびに近接範囲を表す領域は、AMRの概形を模った多角形でもよい。更に、人物の検出範囲ならびに近接範囲を表す領域は、平面である必要はなく、球体、多面体など三次元形状(立体形状)でもよい。
【0103】
また、上記した実施の形態のそれぞれにおいて、説明を簡略化するため、人物の検出範囲ならびに近接範囲を表す領域について、AMRを中心とする同心円としたが、これに限らない。例えば、人物の検出範囲ならびに近接範囲を表す領域は、AMRの進行方向を同心円の場合よりも広くし、AMRの後方を同心円の場合よりも狭くするような非対称の領域であってもよい。
【0104】
また、上記した実施の形態のそれぞれにおいて、要望判断部3は、サービスの要望の有り/無しの2値で判断を行っていたが、これに限らない。例えば、サービスの要望は、2値ではなく、サービスの要望の度合い(例えば、今直ぐにでもゴミを捨てたい、ゴミ箱が見つかったらゴミを捨ててもよい、などのサービスの要望の強弱)などの連続値として算出されても良い。例えば、サービスの要望の度合いは、人物の挙動の大きさから判断されてもよい。例えば、カメラの映像データ中の人物の動きが大きい場合にはサービスの要望の度合いが強いと判断し、人物の動きが小さい場合にはサービスの要望の度合いが弱いと判断する。また、サービスの要望の度合いは、サービスの要望の確かさ(確率)であってもよい。
【0105】
具体的には、要望判断部3が人物の挙動を分析した結果として、サービスの要望が強い場合(例えば、今直ぐにでもゴミを捨てたいので、人物は周囲を頻繁に見渡しているなど、人物の挙動が大きい)と、サービスの要望の度合いが弱い場合(例えば、ゴミ箱がみつかったらゴミを捨ててもよい程度の意識であり、人物はAMRに視線を少し合わせるなど、人物の挙動が小さい)との間で、サービスの要望の度合いの連続値を生成し、サービスの要望の度合いが強くなるにつれてAMRの移動速度を遅くさせてもよい。
AMRの動作制御を、人物のAMRに対するサービスの要望の度合いに応じて細分化することで、人物のAMRに対するサービスの要望に更に適応したAMRの動作制御が可能となる。
【0106】
また、上記した実施の形態のそれぞれにおいて、近接範囲は、サービスの要望の有り/無しの2段階としたが、これに限らない。例えば、近接範囲は、3段階以上の多段階で設定されてもよい。例えば、サービスの要望が有る場合において、サービスの要望が強い場合と、サービスの要望が弱い場合とで細分化し、サービスの要望が強い場合の近接範囲が、サービスの要望が弱い場合の近接範囲よりも広く設定されてもよい。あるいは、近接範囲は、サービスの要望の度合いに比例した連続値で設定されてもよい。
近接範囲を、人物のAMRに対するサービスの要望の度合いに応じて細分化することで、人物のAMRに対するサービスに更に適応したAMRの動作制御が可能となる。
【0107】
また、上記した実施の形態のそれぞれにおいて、AMRにゴミ箱を搭載したゴミ箱型AMRについて説明したが、本開示に係るAMRの動作制御装置は、ゴミ箱型AMRに限定しない。例えば、自動販売機を搭載したAMRに対しても本発明を適用することができる。この場合、AMRに対するサービスの要望は、例えば、自動販売機を利用したい(自動販売機で商品を購入したい)などである。また、人物の挙動は、例えば、財布を取り出す、などである。そして、AMRの動作制御装置が、商品を購入したい人物か否かを判断し、商品を購入したい人物に対しては近接範囲を広く設定する。よって、AMRは早めのタイミングで停止又は減速することができるので、商品を購入したい人物は早いタイミングで商品を購入することが可能となる。
【0108】
また、サイネージを搭載したAMRにも本発明を適用することができる。この場合、AMRに対するサービスの要望は、例えば、サイネージに表示されたコンテンツを見たい(サイネージ内の情報を取得したい)などである。また、人物の挙動は、例えば、AMRと歩調を合わせる、眼鏡を取り出す、などである。そして、AMRの動作制御装置が、サイネージ内の情報を取得したい人物か否かを判断し、サイネージ内の情報を取得したい人物に対しては近接範囲を広く設定する。よって、AMRは早めのタイミングで停止又は減速することができるので、サイネージ内の情報を取得したい人物は、早いタイミングでサイネージ内の情報を取得することが可能となる。
【0109】
更に、工場内作業における部品運搬用AMRにも本発明を適用することができる。この場合、AMRに対するサービスの要望は、例えば、AMRに搭載された部品を取り出したい、などである。また、人物の挙動は、例えば、AMRが搭載する部品を作業者がピッキングする動作、作業者が部品に視線を移動する、などである。そして、AMRの動作制御装置が、部品を取り出したい人物か否かを判断し、部品を取り出したい人物に対しては近接範囲を広く設定する。よって、AMRは早めのタイミングで停止又は減速することができるので、部品を取り出したい人物は、早いタイミングでAMRに搭載された部品を取り出すことが可能となる。
【0110】
以上のように、AMRが人物へのサービスを提供するための機能を有しており、その機能を活用するためにはAMRが停止や減速を行う必要性が高いという状況であれば、本発明のAMRの動作制御装置を適用できる。よって、様々な用途において、利便性を向上させたAMRの動作制御装置及び方法を提供することができる。
【0111】
本開示のAMRの動作制御装置では、AMRが必要のないタイミングで不要な停止や減速をしてしまうことがない。また、AMRが人物に向かって都度移動することもない。よって、本開示のAMRの動作制御装置は、AMRの移動距離及び発進・停止の頻度を少なくすることができ、AMRのランニングコスト(電力、燃料、整備費用など)を削減することができる。
【0112】
本開示のAMRの動作制御装置では、人物の挙動を分析することによりAMRに対するサービスの要望が判断される。つまり、人物の表面上の違い(例えば、着衣、名札、などの違い)によりサービスの要望の有無が判断されない。よって、本開示のAMRの動作制御装置は、工場などエリア内の人物が同じ服装であっても、あるいは、運動施設などエリア内の人物がグループ別に異なる服装であっても、エリア内の全ての人物のサービスの要望の有無を正しく判断可能である。
【0113】
上記以外にも、本開示はその開示の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0114】
1 入力部、2 人物検出部、3 要望判断部、4 近接範囲設定データ、5 動作決定部、6 制御部、7 地図・施設データ、8 人流分布予測部、
100、100a、100b 自律移動ロボット、
200 動作制御装置、
300 プロセッサ、301 揮発性記憶装置、302 不揮発性記憶装置、303 入出力装置、304 信号路。
【要約】
自律移動ロボット(AMR)がエリア内を巡回し、AMRに対してサービスを要望する人とそうでない人がエリア内に混在していても、利便性が低下することの無いAMRの動作制御装置及び方法を提供する。
人物にサービスを提供するための自律移動ロボットの動作制御装置であって、
人物の自律移動ロボットに対するサービスの要望の度合いを、自律移動ロボットの周囲情報を用いて人物の挙動を分析することにより判断し、
人物に対する自律移動ロボットの近接範囲を、サービスの要望の度合いに応じて設定する要望判断部と、
人物の位置が近接範囲内か否かを判断し、自律移動ロボットの停止又は減速を決定する動作決定部とを備える。