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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】エレベータの制御装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/06 20060101AFI20231212BHJP
   B66B 7/00 20060101ALI20231212BHJP
   B66B 11/02 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B66B1/06 B
B66B7/00 F
B66B11/02 F
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023027367
(22)【出願日】2023-02-24
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 友宏
(72)【発明者】
【氏名】井上 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】玉置 亜由美
(72)【発明者】
【氏名】端 宏晃
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第114636220(CN,A)
【文献】特開平4-191249(JP,A)
【文献】特開2015-117080(JP,A)
【文献】特開平10-279200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00 - 1/52
B66B 7/00
B66B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかご内の温度を調整することが可能なエレベータに適用可能な制御装置であって、
前記乗りかご内の温度目標値を設定する温度設定処理部と、
前記温度目標値に基づいて前記乗りかご内の温度を制御する温度制御処理部と、
を備え、
前記乗りかごに対して停止予定階が複数対応付けられている場合、前記温度設定処理部は、位置と温度とを2つの座標軸とする2次元座標上にて前記温度目標値をグラフで表すことを考えたときに、そのグラフが、前記複数の停止予定階のうちの少なくとも2つの停止予定階を対象階として、それらの対象階に停止したときの前記乗りかごの位置と当該対象階の乗場の温度とで決まる全ての座標に対する近似線となるように、前記温度目標値を設定する、エレベータの制御装置。
【請求項2】
前記乗りかごに対して停止予定階が複数対応付けられているときに前記温度設定処理部が前記温度目標値を設定する場合、当該温度設定処理部は、前記グラフが、前記停止予定階のうちの前記乗りかごが次に停止する階及びその次に停止する階を前記対象階として、それらの対象階に停止したときの前記乗りかごの位置と当該対象階の乗場の温度とで決まる2つの座標に対する近似線となるように、前記温度目標値を設定する、請求項1に記載のエレベータの制御装置。
【請求項3】
前記温度設定処理部は、前記グラフが、前記対象階全ての乗場の温度についての近似値として求めた温度で一定となるように、前記温度目標値を設定する、請求項1又は2記載のエレベータの制御装置。
【請求項4】
前記温度設定処理部は、前記近似値として求めた前記温度が所定範囲から外れている場合には、前記グラフが、当該所定範囲の上限値又は下限値で一定となるように、前記温度目標値を設定する、請求項3に記載のエレベータの制御装置。
【請求項5】
前記乗りかごへの前記停止予定階の対応付けがなくなった場合、前記温度設定処理部は、その時点での前記温度目標値の値を用いて、前記グラフが当該値で一定となるように、前記温度目標値を設定し直す、請求項1又は2に記載のエレベータの制御装置。
【請求項6】
前記乗りかごへの前記停止予定階の対応付けがなくなった場合、前記温度設定処理部は、前記グラフが、過去に乗場呼びが行われた頻度が最も高い階の乗場の温度で一定となるように、又は、過去に乗場呼びが行われた頻度が高い幾つか階を対象階として、当該対象階の乗場の温度の平均値で一定となるように、前記温度目標値を設定し直す、請求項1又は2に記載のエレベータの制御装置。
【請求項7】
前記乗りかごに対して停止予定階が複数対応付けられているときに前記温度設定処理部が前記温度目標値を設定する場合、当該温度設定処理部は、前記グラフが、その時点での前記乗りかごの位置と当該乗りかご内の温度とで決まる座標を通り、且つ、その乗りかごの位置の変化に対して当該乗りかご内の温度を単調に増加又は減少させるグラフであって、更にそのグラフが、前記対象階に停止したときの前記乗りかごの位置と当該対象階の乗場の温度とで決まる全ての座標に対する近似線となるように、前記温度目標値を設定する、請求項1に記載のエレベータの制御装置。
【請求項8】
前記温度設定処理部は、前記対象階に停止したときの前記乗りかごの位置と当該対象階の乗場の温度とで決まる全ての座標を用いた回帰分析によって前記近似線を求める、請求項7に記載のエレベータの制御装置。
【請求項9】
前記温度設定処理部は、前記乗りかごに対して新たな停止予定階が対応付けられるごとに、当該新たな停止予定階を含めて前記温度目標値を設定し直す、請求項1、2、7、及び8の何れかに記載のエレベータの制御装置。
【請求項10】
前記停止予定階として、乗場呼びが行われた階だけが前記乗りかごに対応付けられている場合、前記温度設定処理部は、前記グラフが、当該停止予定階のうちの前記乗りかごが最初に停止する階を対象階として、その対象階に停止したときの前記乗りかごの位置と当該対象階の乗場の温度とで決まる座標を通るように、前記温度目標値を設定する、請求項1、2、7、及び8の何れかに記載のエレベータの制御装置。
【請求項11】
乗りかご内の温度を調整することが可能なエレベータに適用可能な制御装置であって、
前記乗りかご内の温度目標値を設定する温度設定処理部と、
前記温度目標値に基づいて前記乗りかご内の温度を制御する温度制御処理部と、
を備え、
前記乗りかごに対して停止予定階が複数対応付けられている場合、前記温度設定処理部は、走行時間と温度とを2つの座標軸とする2次元座標上にて前記温度目標値をグラフで表すことを考えたときに、そのグラフが、前記複数の停止予定階のうちの少なくとも2つの停止予定階を対象階として、それらの対象階に停止したときの前記乗りかごの走行時間と当該対象階の乗場の温度とで決まる全ての座標に対する近似線となるように、前記温度目標値を設定する、エレベータの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータにおいて乗りかご内の温度を調整する制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータにおいては、夏場などにおける乗りかご内の温度上昇を抑制するべく、換気装置によって乗りかご内を換気できるようにしたものが多く存在する。しかし、換気装置による換気だけでは、乗りかご内の温度を十分に低下させることができず、乗りかご内の利用者が、その乗りかご内の暑さを不快に感じることがあった。
【0003】
そこで、エレベータでの換気技術として、乗りかごが停止予定階に到着したときに、その階の乗場と乗りかごとの間で空気を循環させ、それによって乗りかご内の温度を乗場の温度に近づける技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、近年においては、冷暖房が可能な空調装置が乗りかご内に設けられたエレベータも普及しつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-279200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、乗場の温度は、利用者が不快を感じることのない適度な温度であるとは限らず、乗場との間で空気を循環させた場合には、乗りかご内の温度が、利用者に暑さや寒さといった不快感を与えてしまうような高い温度又は低い温度になってしまうおそれがある。
【0007】
また、乗りかご内に空調装置が設けられたエレベータであっても、空調装置の設定温度は、乗場の温度とは関係なく一定の温度に設定されることが殆どである。一方、乗場の温度は階ごとに異なっている場合が多いため、空調装置の設定温度が乗場の温度とは関係なく一定の温度に設定されていると、乗りかごのドアが開いたときに、乗りかご内の利用者が、乗場との温度差に起因した暑さや寒さといった不快感を受けることがある。
【0008】
そこで本発明の目的は、エレベータにおいて利用者が受け得る不快感を低減することが可能な制御技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る制御装置は、乗りかご内の温度を調整することが可能なエレベータに適用可能な制御装置であり、乗りかご内の温度目標値を設定する温度設定処理部と、当該温度目標値に基づいて乗りかご内の温度を制御する温度制御処理部と、を備える。そして、乗りかごに対して停止予定階が複数対応付けられている場合、温度設定処理部は、位置と温度とを2つの座標軸とする2次元座標上にて温度目標値をグラフで表すことを考えたときに、そのグラフが、乗りかごに対応付けられている複数の停止予定階のうちの少なくとも2つの停止予定階を対象階として、それらの対象階に停止したときの乗りかごの位置と当該対象階の乗場の温度とで決まる全ての座標に対する近似線となるように、温度目標値を設定する。
【0010】
上記制御装置によれば、温度設定処理部で設定された温度目標値に基づいて乗りかご内の温度を制御することにより、乗りかごが1つ目の対象階に到着したときには、当該乗りかご内の温度を、2つ目以降の対象階の乗場の温度を考慮して(具体的には、乗りかごが2つ目以降の対象階へ移動するときに、当該乗りかご内の温度を、その変化率を大きくすることなく、2つ目以降の各対象階の乗場の温度に近似させることができるように)、1つ目の対象階の乗場の温度に近似させることができる。よって、停止予定階ごとに乗りかご内の温度を乗場の温度に一致させる場合に比べて、乗りかご内の温度の変化を小さくすることができ、その結果として、当該乗りかご内の利用者が受け得る不快感を低減することができる。
【0011】
更に、対象階が、利用者が降車することになる階(当該利用者が登録した行先階)であり、当該対象階に乗りかごが到着したときには、乗りかご内の温度は、当該対象階の乗場の温度に近似することになる。よって、乗りかごから降車する利用者は、対象階の乗場との温度差に起因した暑さや寒さといった不快感を受けることなく、当該対象階へ降車することができる。また、対象階が、利用者が乗車することになる階(当該利用者が乗場呼びを行った階(乗車階))であり、当該対象階に乗りかごが到着したときにも、乗りかご内の温度は、当該対象階の乗場の温度に近似することになる。よって、乗場から乗車する利用者は、乗りかご内との温度差に起因した暑さや寒さといった不快感を受けることなく、当該乗りかごに乗車することができる。
【0012】
上記制御装置において、乗りかごに対して停止予定階が複数対応付けられているときに温度設定処理部が温度目標値を設定する場合、当該温度設定処理部は、2次元座標上でのグラフが、停止予定階のうちの乗りかごが次に停止する階及びその次に停止する階を対象階として、それらの対象階に停止したときの乗りかごの位置と当該対象階の乗場の温度とで決まる2つの座標に対する近似線となるように、温度目標値を設定してもよい。
【0013】
上記構成によれば、温度設定処理部で設定された温度目標値に基づいて乗りかご内の温度を制御することにより、乗りかごが1つ目の対象階(次に停止する階)に到着したときに、当該乗りかご内の温度を、2つ目の対象階(その次に停止する階)の乗場の温度を考慮して(具体的には、乗りかごが2つ目の対象階へ移動するときに、当該乗りかご内の温度を、その変化率を大きくすることなく2つ目の対象階の乗場の温度に近似させることができるように)、1つ目の対象階の乗場の温度に近似させることができる。よって、停止予定階ごとに乗りかご内の温度を乗場の温度に一致させる場合に比べて、乗りかご内の温度の変化を小さくすることができ、その結果として、当該乗りかご内の利用者が受け得る不快感を低減することができる。
【0014】
上記制御装置において、温度設定処理部は、2次元座標上でのグラフが、上記対象階全ての乗場の温度についての近似値として求めた温度で一定となるように、温度目標値を設定してもよい。
【0015】
空調装置で乗りかご内の冷暖房を行った場合には、乗りかご内の温度が空調装置の設定温度に到達するまでには時間を要することがある。一方、上記構成によれば、温度設定処理部で設定された温度目標値(一定の温度)を空調装置の設定温度にすることにより、上記のような温度変化のタイムラグ(設定温度を設定した時点から、乗りかご内の温度が設定温度に到達するまでのタイムラグ)を利用して、乗りかご内の温度を緩やかに変化させつつ、対象階への乗りかごの到着時には、乗りかご内の温度を、当該対象階の乗場の温度に近似させることが可能になる。
【0016】
上記制御装置において、温度設定処理部は、上記近似値として求めた温度が所定範囲から外れている場合には、2次元座標上でのグラフが、当該所定範囲の上限値又は下限値で一定となるように、温度目標値を設定してもよい。この構成によれば、温度目標値を、常に、利用者に不快感を与えることがない範囲内に設定することが可能になる。
【0017】
上記制御装置において、乗りかごへの停止予定階の対応付けがなくなった場合、温度設定処理部は、その時点での温度目標値の値を用いて、2次元座標上でのグラフが当該値で一定となるように、温度目標値を設定し直してもよい。この構成によれば、その温度目標値に基づいて乗りかご内の温度を制御することにより、新たな停止予定階が乗りかごに対応付けられるまでの間、当該乗りかご内の温度を、その乗りかごが最後の停止予定階に到着したときの温度で維持することができる。従って、乗りかごに新たな停止予定階が対応付けられたときに、空調装置を再起動して乗りかご内を暖め又は冷やし直す必要がなく、その結果として省エネルギを実現することが可能になる。
【0018】
上記制御装置において、乗りかごへの停止予定階の対応付けがなくなった場合、温度設定処理部は、2次元座標上でのグラフが、過去に乗場呼びが行われた頻度が最も高い階の乗場の温度で一定となるように、又は、過去に乗場呼びが行われた頻度が高い幾つか階を対象階として、当該対象階の乗場の温度の平均値で一定となるように、温度目標値を設定し直してもよい。この構成によれば、その温度目標値に基づいて乗りかご内の温度を制御することにより、新たな停止予定階が乗りかごに対応付けられるまでの間、当該乗りかご内の温度を、当該新たな停止予定階になる可能性が高い階の乗場の温度又はそれに近似した温度で維持することができる。従って、乗りかごに新たな停止予定階が対応付けられたときに、空調装置を再起動して乗りかご内を暖め又は冷やし直す必要がなく、その結果として省エネルギを実現することが可能になる。
【0019】
上記制御装置において、乗りかごに対して停止予定階が複数対応付けられているときに温度設定処理部が温度目標値を設定する場合、当該温度設定処理部は、2次元座標上でのグラフが、その時点での乗りかごの位置と当該乗りかご内の温度とで決まる座標を通り、且つ、その乗りかごの位置の変化に対して当該乗りかご内の温度を単調に増加又は減少させるグラフであって、更にそのグラフが、対象階に停止したときの乗りかごの位置と当該対象階の乗場の温度とで決まる全ての座標に対する近似線となるように、温度目標値を設定してもよい。
【0020】
上記構成によれば、温度設定処理部で設定された温度目標値に基づいて乗りかご内の温度を制御することにより、乗りかご内の温度を、温度目標値が設定された時点での温度から緩やかに変化させることができる。従って、乗りかご内の温度の変化によって当該乗りかご内の利用者が受け得る不快感を低減することができる。
【0021】
上記制御装置において、温度設定処理部は、対象階に停止したときの乗りかごの位置と当該対象階の乗場の温度とで決まる全ての座標を用いた回帰分析によって近似線を求めてもよい。このように回帰分析(最小二乗法など)を用いて近似線(回帰線)を求めることにより、温度目標値として、乗りかごの位置の変化に対して当該乗りかご内の温度を一方向(温度が高くなる方向、又は、温度が低くなる方向のどちらか一方)へ緩やかに変化させるものを設定することができる。
【0022】
上記制御装置において、温度設定処理部は、乗りかごに対して新たな停止予定階が対応付けられるごとに、当該新たな停止予定階を含めて温度目標値を設定し直してもよい。この構成によれば、途中で対応付けられた新たな停止予定階をも考慮して温度目標値を設定し直すことができるため、当該新たな停止予定階に乗りかごが到着したときに乗降する利用者に生じ得る不快感(乗りかご内と乗場との温度差に起因した暑さや寒さといった不快感)をも低減することができる。
【0023】
上記制御装置において、停止予定階として、乗場呼びが行われた階だけが乗りかごに対応付けられている場合、温度設定処理部は、2次元座標上でのグラフが、当該停止予定階のうちの乗りかごが最初に停止する階を対象階として、その対象階に停止したときの乗りかごの位置と当該対象階の乗場の温度とで決まる座標を通るように、温度目標値を設定してもよい。
【0024】
ここで、乗場呼びが行われた階だけが乗りかごに対応付けられている場合、その乗りかごは、上記対象階(最初に停止する階)に到着するまでは、利用者が乗車していない空の状態になる。従って、そのような空の状態においては、乗りかご内の温度を急激に(例えばステップ状に)変化させたとしても、利用者に不快感を与えることがない。そして、上記構成によれば、温度設定処理部で設定された温度目標値に基づいて乗りかご内の温度を制御することにより、空の状態から初めて利用者が乗車することになる対象階に乗りかごが到着したときには、乗りかご内の温度は、当該対象階の乗場の温度に一致する(又は近づく)ことになる。よって、対象階の乗場から乗車する利用者は、乗りかご内との温度差に起因した暑さや寒さといった不快感を受けることなく、当該乗りかごに乗車することができる。
【0025】
上述した制御装置において、乗りかごの位置を、当該乗りかごの走行時間に置き換えてもよい。そして、温度設定処理部は、乗りかごの走行時間に応じた当該乗りかご内の温度目標値を設定してもよい。この構成によれば、走行時間を用いることで乗りかごの加減速の影響などを考慮して温度目標値を設定することができるため、乗りかご内での温度の時間的なムラを低減することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、エレベータにおいて利用者が受け得る不快感を低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】エレベータの全体構成を例示した概念図である。
図2】(A)条件(1)が満たされた場合に設定される温度目標値Tm(P)の一例をグラフで示した概念図、及び(B)当該温度目標値Tm(P)の他の例をグラフで示した概念図である。
図3】(A)条件(2)が満たされた場合に設定される温度目標値Tm(P)の一例をグラフで示した概念図、及び(B)当該温度目標値Tm(P)の他の例をグラフで示した概念図である。
図4】(A)条件(3)が満たされた場合に設定される温度目標値Tm(P)の一例をグラフで示した概念図、及び(B)当該温度目標値Tm(P)の他の例をグラフで示した概念図である。
図5】第1変形例において条件(3)が満たされた場合に設定される温度目標値Tm(P)の一例をグラフで示した概念図である。
図6】第1変形例において条件(3)が満たされた場合に設定される温度目標値Tm(P)の他の例をグラフで示した概念図である。
図7】(A)第2変形例において条件(2H)が満たされた場合に設定される温度目標値Tm(P)の一例、及び(B)第2変形例において条件(3H)が満たされた場合に設定される温度目標値Tm(P)の一例、をそれぞれグラフで示した概念図である。
図8】(A)第2変形例において条件(2H)が満たされた場合に設定される温度目標値Tm(P)の他の例、及び(B)第2変形例において条件(3H)が満たされた場合に設定される温度目標値Tm(P)の他の例、をそれぞれグラフで示した概念図である。
図9】第2変形例の方法を用いた再設定の一例を説明するための概念図であり、図9(A)及び図9(B)には、再設定の前後における温度目標値Tm(P)がグラフで示されている。
図10】第3変形例において再設定された温度目標値Tm(P)の一例を示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[1]実施形態
[1-1]エレベータの全体構成
図1は、エレベータの全体構成を例示した概念図である。図1の例では、エレベータは、乗りかご1と、各階に設けられた乗場2と、エレベータ制御装置3と、を備えている。また、このエレベータは、乗りかご1内の温度Tを調整することが可能となるように構成されており、エレベータ制御装置3は、そのようなエレベータに適用可能な本発明の一実施形態を構成している。以下、各部の構成について具体的に説明する。
【0029】
<乗りかご>
乗りかご1には、空調装置11と、行先階ボタン12と、が設けられている。
【0030】
本実施形態では、空調装置11は、冷暖房が可能な空調装置である。そして、この空調装置11の設定温度Tkがエレベータ制御装置3によって制御されることにより、乗りかご1内の温度Tが調整される。
【0031】
行先階ボタン12は、乗りかご1に乗車した利用者が自身の行先階Fdを登録するためのボタンであり、行先階Fdごとに1つずつ設けられている。そして、乗りかご1内にて行先階ボタン12が押されるごとに、その行先階ボタン12に対応した行先階Fd(即ち、乗りかご1内にて登録された行先階Fd)が、停止予定階Fsとして乗りかご1に対応付けられていく。一方、当該停止予定階Fs(ここでは、登録された行先階Fd)のうちの乗りかご1の到着が完了したものは、当該乗りかご1との対応付けから消去されていく。このような停止予定階Fsについての乗りかご1との対応付け及び当該対応付けからの消去は、その乗りかご1を制御するエレベータ制御装置3によって管理される。
【0032】
<乗場>
各階の乗場2には、乗場呼びボタン21と、温度センサ22と、が設けられている。
【0033】
乗場呼びボタン21は、乗場2にて利用者が、その乗場2が設けられている階(乗車階Fe)まで乗りかご1を呼ぶためのボタンである。一例として、乗車階Feから上階と下階のどちらへ移動したいのかを利用者が選択できるように、上向き呼びボタンと下向き呼びボタン(但し、最下階では上向き呼びボタンのみ、また、最上階では下向き呼びボタンのみ)が、乗場呼びボタン21として設けられる。
【0034】
そして、上述した行先階Fdだけでなく、乗場呼びボタン21が押された階(即ち、乗場呼びが行われた階(乗車階Fe))も、停止予定階Fsとして乗りかご1に対応付けられていく。一方、当該停止予定階Fs(ここでは、乗場呼びが行われた階)のうちの乗りかご1の到着が完了したものは、当該乗りかご1との対応付けから消去されていく。このような停止予定階Fsについての乗りかご1との対応付け及び当該対応付けからの消去は、その乗りかご1を制御するエレベータ制御装置3によって管理される。
【0035】
温度センサ22は、乗場2の温度Tを測定するためのセンサである。ここで、乗場2の温度Tは、当該乗場2の環境(外気に通じているかどうかや乗場2の広さなど)、更にはその乗場2に設けられている空調装置の能力や設定温度などに依存する。このため、乗場2の温度Tは、階ごとに、更には時間帯ごとに異なっていることが多い。温度センサ22は、そのように階や時間帯ごとに変化する乗場2の温度Tを測定することができる。
【0036】
尚、温度センサ22は、乗りかご1内に設けられていてもよい。この場合、温度センサ22として例えば放射温度計を用いることにより、各階の乗場2の温度Tを、その階に乗りかご1が到着してドアが開かれたときに、当該乗りかご1内から温度センサ22によって測定することができ、そのときの測定で得た測定値は、過去のデータ(履歴)として用いることができる。具体的には、乗りかご1内の温度センサ22で測定された各階の乗場2の温度Tは、過去のデータ(履歴)として、以下で説明するエレベータ制御装置3の記憶部31に保存することができる。そして、後述する温度設定処理にて温度目標値Tm(P)を設定する際に、直近のデータや同時間帯のデータを、記憶部31から読み出して用いることができる。
【0037】
<エレベータ制御装置>
エレベータ制御装置3は、乗りかご1を制御する装置である。尚、エレベータにおいて乗りかご1が複数設けられている場合には、エレベータ制御装置3は、当該複数の乗りかご1に対して1つずつ設けられ、自身に対応する乗りかご1を制御する。
【0038】
本実施形態では、エレベータ制御装置3は、記憶部31と制御部32とを備えており、制御処理として、乗りかご1を各階へ移動させるための搬送処理と、乗りかご1内の温度目標値Tm(P)を設定する温度設定処理と、当該温度目標値Tm(P)に基づいて乗りかご1内の温度Tを制御する温度制御処理と、を実行する。
【0039】
記憶部31は、ROMやRAMなどの記憶デバイスで構成された部分であり、当該記憶部31には、制御処理に必要な情報が保存される。
【0040】
本実施形態では、制御処理に必要な情報の1つとして、乗りかご1に対応付けられた停止予定階Fs(登録された行先階Fd又は乗場呼びが行われた階(乗車階Fe))が、記憶部31に保存されていく。具体的には、行先階Fdの登録又は乗場呼びがあった場合に、その都度、登録された行先階Fd又は乗場呼びが行われた階(乗車階Fe)が停止予定階Fsとして記憶部31に保存されていく。その一方で、当該停止予定階Fsのうちの乗りかご1の到着が完了したものは、記憶部31から削除されていく。このように、記憶部31への停止予定階Fsの保存及び消去により、乗りかご1に対応付けられている停止予定階Fsがリアルタイムで管理される。
【0041】
また、記憶部31には、制御処理に必要な情報として、温度センサ22が取得した各階の乗場2の温度Tや、温度設定処理にて設定された温度目標値Tm(P)なども保存される。
【0042】
制御部32は、CPUなどの処理デバイスで構成された部分であり、搬送処理、温度設定処理、及び温度制御処理を実行する。
【0043】
搬送処理では、制御部32は、乗りかご1を、当該乗りかご1に対応付けられている停止予定階Fsへ順に移動させる。具体的には、制御部32は、パルスエンコーダ(不図示)の出力値に基づいて駆動モータ(不図示)を制御することにより、乗りかご1の位置Pや速度などを制御する。
【0044】
温度設定処理では、制御部32は、乗りかご1への停止予定階Fsの対応付けの状態がどのような条件を満たしているのかに応じて、条件ごとに異なった方法で温度目標値Tm(P)を設定する。尚、温度設定処理についての詳細な内容については後述する。
【0045】
温度制御処理は、搬送処理に並行して実行される。温度制御処理では、制御部32は、乗りかご1の移動に伴って変化する当該乗りかご1の位置Pに応じて、当該乗りかご1内の温度Tを、その位置Pでの温度目標値Tm(P)となるように制御する。具体的には、制御部32は、乗りかご1の位置Pに応じて、当該乗りかご1内に設けられている空調装置11の設定温度Tkを、その位置Pでの温度目標値Tm(P)となるように制御することができる。その一方で、空調装置11で乗りかご1内の冷暖房を行った場合、乗りかご1内の温度Tが空調装置11の設定温度Tkに到達するまでには時間を要することがある。そこで温度制御処理では、制御部32は、そのように温度変化のタイムラグ(設定温度Tkを設定した時点から、乗りかご1内の温度Tが設定温度Tkに到達するまでのタイムラグ)を考慮して、乗りかご1内の温度Tが温度目標値Tm(P)の変化に追従できるように、空調装置11の設定温度Tkを制御してもよい。
【0046】
上述した搬送処理、温度設定処理、及び温度制御処理は、処理ごとに、制御部32内に構築される処理部によって実行される。図1では、そのような処理部として、搬送処理部320、温度設定処理部321、及び温度制御処理部322が示されている。本実施形態では、当該処理部は、制御部32にプログラムを実行させることによってソフトウェアで構成される。そして、そのようなプログラムは、携帯可能な記憶媒体(例えば、フラッシュメモリ等)に読取可能な状態で保存され、当該記憶媒体から読み出されてインストールされたものがエレベータ制御装置3の記憶部31に保存されてもよいし、他のサーバなどにダウンロード可能に保存され、当該サーバからダウンロードされてインストールされたものが記憶部31に保存されてもよい。尚、上記の処理部は、エレベータ制御装置3内に回路を構築することによってハードウェアで構成されてもよい。
【0047】
[1-2]温度設定処理
温度設定処理では、制御部32は、乗りかご1への停止予定階Fsの対応付けの状態が、以下に示す条件(1)~(3)のうちのどの条件を満たしているのか(条件判断の結果)に応じて、条件ごとに異なった方法で温度目標値Tm(P)を設定する。
【0048】
<条件>
(1)乗場呼びが行われた階(乗車階Fe)だけが停止予定階Fsとして対応付けられている状態、
(2)停止予定階Fsとして行先階Fdだけが1つ対応付けられている状態、
(3)停止予定階Fsとして行先階Fdだけが複数対応付けられている状態。
【0049】
一例として、制御部32は、乗りかご1に停止予定階Fsが対応付けられている場合において、次のような方法で条件判断を行うことができる。制御部32は、先ず、乗りかご1に利用者が乗車しているか否かを判定する(ステップS101)。このときの判定には、乗りかご1内の荷重を測定するロードセルの出力値や、撮像センサで得られた乗りかご1内の画像データなどを用いることができる。そして、制御部32は、ステップS101にて「乗車していない(No)」と判定した場合には、その判定を以て、対応付けの状態として条件(1)が満たされていると判断する。
【0050】
一方、ステップS101にて制御部32が「乗車している(Yes)」と判定した場合には、対応付けの状態として、(X)乗りかご1内にて登録された行先階Fdだけが対応付けされている場合と、(Y)行先階Fdだけでなく乗場呼びが行われた階(乗車階Fe)も対応付けられている場合とが考えられる。本実施形態では、前者の(X)の場合だけについて考えることにする。後者の(Y)の場合については、後述の第2変形例にて詳細に説明する。
【0051】
ここで、乗りかご1に対応付けられている全ての停止予定階Fsを条件判断の対象にした場合には上記(Y)が満たされる場合であっても、停止予定階Fsの対応付けの状態が次のような状態である場合には、上記(X)が満たされていると考えて条件判断を行うことができる。具体的には、乗りかご1に対応付けられている全ての停止予定階Fsを当該乗りかご1が停止する順に並べたときに、乗場呼びが行われた階(乗車階Fe)のうちで乗りかご1が最初に停止することになる階(以下、「最初の乗車階Fe」と称す)が、行先階Fdのうちで乗りかご1が最後に停止することになる行先階Fd(行先階Fdが1つだけの場合には、当該1つだけの行先階Fd。以下、「最後の行先階Fd」と称す)と同じ階であるか、或いは、当該最後の行先階Fdよりも後の階である、といった場合を考える。このような場合、乗りかご1は、最後の行先階Fdに到着したときに、一旦、全ての利用者が降車した状態(換言すれば、利用者が乗車していない空の状態)になり、その後、同じ階又はその後の階において、当該乗りかご1に利用者が乗車してくることになる。従って、最後の行先階Fdまでの乗りかご1内の温度Tの変化は、当該最後の行先階Fdまで乗りかご1が移動する間における当該乗りかご1内の利用者だけに影響し得ることになる。従って、このような場合には、乗りかご1に対応付けられている停止予定階Fsから、乗場呼びが行われた階(乗車階Fe)を除くことにより、上記(X)が満たされていると考えて条件判断を行うことができる。そして、最後の行先階Fdへの乗りかご1の到着後、その階から乗りかご1が移動を開始する時点又はその直前の時点(例えば、戸閉が完了した時点)で、そのときに当該乗りかご1に対応付けられている停止予定階Fsを用いて条件判断を改めて行うことができる。
【0052】
制御部32は、ステップS101にて「乗車している(Yes)」と判定した場合には、停止予定階Fsとして乗りかご1に対応付けられている行先階Fdの数が1つだけであるか否かを判断する(ステップS102)。そして、制御部32は、ステップS102にて「1つだけである(Yes)」と判断した場合には、その判断を以て、対応付けの状態として条件(2)が満たされていると判断する。一方、制御部32は、ステップS102にて「1つだけでない(No)」と判断した場合には、その判断を以て、停止予定階Fsとして乗りかご1に複数の行先階Fdが対応付けられていると判断できるため、対応付けの状態として条件(3)が満たされていると判断する。
【0053】
以下では、条件ごとの温度目標値Tm(P)の設定方法について、位置Pと温度Tとを2つの座標軸とする2次元座標(以下、「P-T座標」と称す)上にて温度目標値Tm(P)をグラフで表すこと(図2(A)など参照)を考えたときに、そのグラフを、条件ごとにどのように設定するのかという観点から説明する。
【0054】
<条件(1)が満たされた場合>
図2(A)は、条件(1)が満たされた場合に設定される温度目標値Tm(P)の一例をグラフで示した概念図である。条件(1)が満たされた場合、制御部32は、P-T座標上でのグラフが、停止予定階Fs(ここでは、乗場呼びが行われた階(乗車階Fe))のうちの乗りかご1が最初に停止する階を対象階Fxとして、その対象階Fxに停止したときの乗りかご1の位置Px(P=Px)と当該対象階Fxの乗場2の温度Tx(T=Tx)とで決まる座標(Px、Tx)を通るように、温度目標値Tm(P)を設定する。このとき、制御部32は、P-T座標上でのグラフが示す温度Tが、現時点tc1での温度Tc1(その時点での乗りかご1の位置P=Pc1)から変化して温度Txに一致することとなるように、温度目標値Tm(P)を設定する。尚、図2(A)の例では、現時点の座標が二重丸で示され、乗場呼びが行われた階に対応する座標が白丸で示されている(以下、他の図においても同様)。
【0055】
ここで、現時点tc1は、制御部32が条件判断を行った時点であって、且つ、その条件判断の結果として条件(1)が「満たされている」と判断された時点である。具体例として次のような場合が想定される。乗りかご1に停止予定階Fsが全く対応付けられていない場合、その乗りかご1は、何れかの階で停止したままの待機状態になる。そして、例えば別の階で乗場呼びが行われた場合、乗りかご1は、乗場呼びが行われた階(乗車階Fe)への移動を開始する。従って、制御部32は、乗りかご1が移動を開始した時点で、その乗りかご1に対応付けられている乗車階Feを用いて条件判断を行うことができ、当該条件判断の結果として条件(1)が「満たされている」と判断できた場合には、そのときの時点を現時点tc1とすることができる。
【0056】
また、乗場呼びが行われた階(乗車階Fe)が乗りかご1に1つだけ対応付けられている場合には、その階が、上記対象階Fxとなる。一方、乗場呼びが行われた階(乗車階Fe)が乗りかご1に複数対応付けられている場合には、上記対象階Fxを次のように選択することができる。一例として、乗りかご1が上階へ移動する場合には、乗場呼びがあった複数の階のうちの、現時点tc1での乗りかご1の位置Pc1よりも上階であって且つ階数が最も小さいものを、上記対象階Fxとすることができる。それとは逆に、乗りかご1が上階へ移動する場合には、乗場呼びがあった複数の階のうちの、現時点tc1での乗りかご1の位置Pc1よりも下階であって且つ階数が最も大きいものを、上記対象階Fxとすることができる。他の例として、乗場呼びがあった複数の階のうちの、現時点tc1での乗りかご1の位置Pc1に最も近いものを、上記対象階Fxとすることができる。更なる他の例として、乗場呼びがあった複数の階を、乗りかご1の運行経路が最も短くなるように並べたときに、乗りかご1が最初に訪れることになる階を、上記対象階Fxとすることができる。
【0057】
そして図2(A)の例では、P-T座標上でのグラフが示す温度Tが、対象階Fxへの乗りかご1の到着前にステップ状に変化して当該対象階Fxの乗場2の温度Txに一致することとなるように、温度目標値Tm(P)が設定されている。
【0058】
尚、温度目標値Tm(P)は、上記対象階Fxに停止したときの乗りかご1の位置Px(P=Px)において、当該乗りかご1内の温度Tを対象階Fxの乗場2の温度Tx(T=Tx)に一致させる(又は近づける)ことができるものであれば、P-T座標上でのグラフがステップ状に変化するように設定されたものに限らず、当該グラフが別の形状(線形的な形状や曲線的な形状など)で変化するように設定されたものに適宜変更されてもよい。
【0059】
上記条件(1)が満たされた場合、乗りかご1は、上記対象階Fx(最初に停止する階)に到着するまでは、利用者が乗車していない空の状態になる。従って、そのような空の状態においては、乗りかご1内の温度Tを急激に(例えば図2(A)のようにステップ状に)変化させたとしても、利用者に不快感を与えることがない。そして、上述した温度目標値Tm(P)の設定によれば、当該温度目標値Tm(P)に基づいて温度制御処理を行うことにより、空の状態から初めて利用者が乗車することになる対象階Fxに乗りかご1が到着したときには、乗りかご1内の温度Tは、当該対象階Fxの乗場2の温度Txに一致する(又は近づく)ことになる。よって、対象階Fxの乗場2から乗車する利用者は、乗りかご1内との温度差に起因した暑さや寒さといった不快感を受けることなく、当該乗りかご1に乗車することができる。
【0060】
尚、上述したように、乗りかご1は、対象階Fxに到着するまでは空の状態になるため、対象階Fxに到着するまでの乗りかご1内の温度プロファイル(温度目標値Tm(P))は、対象階Fxへの到着時に乗りかご1内の温度Tを当該対象階Fxの乗場2の温度Txに一致させる(又は近づける)ことができるものであれば、どのようなものであっても、対象階Fxにて乗りかご1に乗車する利用者の不快感を低減できるものになる。
【0061】
従って、温度目標値Tm(P)は、P-T座標上において座標(Px、Tx)を通るように設定されたものであれば、現時点tc1での座標(Pc1、Tc1)を通るものに限らず、図2(B)に示されるように位置Pに対して温度Txで一定となるように設定されたものに適宜変更されてもよい。この場合、温度目標値Tm(P)は、Tm(P)=Txとなって位置Pに依存しなくなるため、温度設定処理では、制御部32は、温度目標値Tm(P)として、位置Pとは関係なく単に1つの温度Txを設定するだけで、P-T座標上でのグラフが温度T=Txで一定となるように温度目標値Tm(P)を設定したのと同じことを行ったことになる。
【0062】
また、温度目標値Tm(P)は、温度Txで一定となるように設定されたものに限らず、季節に応じたモード(夏場モードや冬場モードなど)ごとに、温度Txに所定温度を加算又は減算して得た値で一定となるように設定されたものに適宜変更されてもよい。更に、温度目標値Tm(P)として許容できる温度Tの範囲(具体的には、その温度Tであること自体が利用者に不快感を与えるといったことがない範囲。以下、この範囲を「所定範囲」と称す)を予め設定しておき、温度Txや、その温度Txに所定温度を加算又は減算して得た値が、上記の所定範囲から外れている場合には、温度目標値Tm(P)は、当該所定範囲の上限値又は下限値で一定となるように設定されてもよい。このような構成によれば、温度目標値Tm(P)を、常に、利用者に不快感を与えることがない範囲内に設定することが可能になる。
【0063】
<条件(2)が満たされた場合>
図3(A)は、条件(2)が満たされた場合に設定される温度目標値Tm(P)の一例をグラフで示した概念図である。条件(2)が満たされた場合、制御部32は、P-T座標上でのグラフが、停止予定階Fsである行先階Fdを対象階Fyとして、その対象階Fyに停止したときの乗りかご1の位置Py(P=Py)と当該対象階Fyの乗場2の温度Ty(T=Ty)とで決まる座標(Py、Ty)を通るように、温度目標値Tm(P)を設定する。このとき、制御部32は、P-T座標上でのグラフが示す温度Tが、現時点tc2での温度Tc2(その時点での乗りかご1の位置P=Pc2)から緩やかに変化して温度Tyに一致することとなるように、温度目標値Tm(P)を設定する。尚、図3(A)の例では、行先階Fdに対応する座標が黒丸で示されている(以下、他の図においても同様)。
【0064】
ここで、現時点tc2は、制御部32が条件判断を行った時点であって、且つ、その条件判断の結果として条件(2)が「満たされている」と判断された時点である。具体例として次のような場合が想定される。乗場呼びが行われた階(乗車階Fe)に乗りかご1が到着した場合、その階では、当該乗りかご1に乗車した利用者によって行先階Fdが登録される。そして、乗りかご1は、登録された行先階Fdへ向けて移動を開始する。また、登録された行先階Fdに乗りかご1が到着した場合には、その階で乗車してきた利用者によって新たな行先階Fdが登録されることがあり、また、そのような登録がなくても別の行先階Fdが停止予定階Fsとして残っていることがある。この場合、乗りかご1は、次の行先階Fdへ向けて再び移動を開始する。従って、制御部32は、乗りかご1が移動を開始する時点又はその直前の時点(例えば、戸閉が完了した時点)で、その乗りかご1に対応付けられている行先階Fdを用いて条件判断を行うことができ、当該条件判断の結果として条件(2)が「満たされている」と判断できた場合には、そのときの時点を現時点tc2とすることができる。
【0065】
そして図3(A)の例では、P-T座標上でのグラフが、現時点tc2の座標(Pc2、Tc2)から座標(Py、Ty)まで線形的に変化したグラフとなるように、温度目標値Tm(P)が設定されている。
【0066】
このような温度目標値Tm(P)の設定によれば、当該温度目標値Tm(P)に基づいて温度制御処理を行うことにより、乗りかご1内の温度Tを現時点tc2での温度Tc2から緩やかに変化させることができる。具体的には、空調装置11の設定温度Tkを、乗りかご1の位置Pに応じた温度目標値Tm(P)となるように変化させることにより、乗りかご1内の温度Tを現時点tc2での温度Tc2から緩やかに変化させることができる。このように乗りかご1内の温度Tを緩やかに変化させることにより、乗りかご1内の温度Tの変化によって当該乗りかご1内の利用者が受け得る不快感を低減することができる。また、利用者が降車することになる上記の対象階Fy(当該利用者が登録した行先階Fd)に乗りかご1が到着したときには、乗りかご1内の温度Tは、当該対象階Fyの乗場2の温度Tyに一致する(又は近づく)ことになる。よって、乗りかご1から降車する利用者は、対象階Fyの乗場2との温度差に起因した暑さや寒さといった不快感を受けることなく、当該対象階Fyへ降車することができる。
【0067】
尚、空調装置11で乗りかご1内の冷暖房を行った場合、乗りかご1内の温度Tが空調装置11の設定温度Tkに到達するまでには時間を要することがある。そこで、そのような温度変化のタイムラグ(設定温度Tkを設定した時点から、乗りかご1内の温度Tが設定温度Tkに到達するまでのタイムラグ)を利用して、乗りかご1内の温度Tを緩やかに変化させることもできる。
【0068】
具体例として、温度目標値Tm(P)は、P-T座標上において座標(Py、Ty)を通るように設定されたものであれば、現時点tc2での座標(Pc2、Tc2)を通るものに限らず、図3(B)に示されるように位置Pに対して温度Tyで一定となるように設定されたものに適宜変更されてもよい。この場合、温度目標値Tm(P)は、Tm(P)=Tyとなって位置Pに依存しなくなるため、温度設定処理では、制御部32は、温度目標値Tm(P)として、位置Pとは関係なく単に1つの温度Tyを設定するだけで、P-T座標上でのグラフが温度T=Tyで一定となるように温度目標値Tm(P)を設定したのと同じことを行ったことになる。そして、温度制御処理では、空調装置11の設定温度Tkを一定の温度Tyに設定することにより、上述した温度変化のタイムラグを利用して、乗りかご1内の温度Tを温度Tyまで緩やかに変化させることができる。
【0069】
また、温度目標値Tm(P)は、温度Tyで一定となるように設定されたものに限らず、季節に応じたモード(夏場モードや冬場モードなど)ごとに、温度Tyに所定温度を加算又は減算して得た値で一定となるように設定されたものに適宜変更されてもよい。更に、温度目標値Tm(P)として許容できる温度Tの範囲(上述した所定範囲)を予め設定しておき、温度Tyや、その温度Tyに所定温度を加算又は減算して得た値が、上記の所定範囲から外れている場合には、温度目標値Tm(P)は、当該所定範囲の上限値又は下限値で一定となるように設定されてもよい。このような構成によれば、温度目標値Tm(P)を、常に、利用者に不快感を与えることがない範囲内に設定することが可能になる。
【0070】
一方、上記条件(2)が満たされた場合であっても、行先階Fdへの移動中に、当該行先階Fdまでの途中の階において、乗りかご1がその階に停止できるようなタイミングで乗場呼びが行われることがある。この場合、その階に乗りかご1を到着させることができるが、上記温度目標値Tm(P)の設定のままで乗りかご1を到着させたのでは、乗りかご1内の温度Tと乗場2の温度Tとの間に、利用者に不快感を与えてしまうような差が生じるおそれがある。そこで、停止予定階Fsの対応付けの状態について、このような変化が発生した場合には、乗場呼びが行われた途中の階に停止した場合にも利用者が受け得る不快感を低減できるように、温度目標値Tm(P)を設定し直してもよい。尚、その場合の温度目標値Tm(P)の設定方法については、後述の第3変形例にて具体的に説明する。
【0071】
また、複数の利用者が乗りかご1に乗車した場合には、それらの利用者の行先階Fdは、同じであることもあれば、異なっていることもある。異なっていた場合には、階数が異なる複数の行先階Fdが乗りかご1内で登録され、当該複数の行先階Fdが、停止予定階Fsとして乗りかご1に対応付けられることになる。この場合、乗りかご1内の温度Tを、上記(2)が満たされた場合と同様、行先階Fdごとに当該行先階Fdの乗場2の温度Tに一致させたのでは、それに応じて乗りかご1内の温度Tが頻繁に変化するといった事態が起こり得る。そして、そのような高い頻度での温度Tの変化は、乗りかご1内の利用者に不快感を与えるおそれがある。そこで、そのような不快感を低減するべく、本実施形態では、以下のような処理が実行される。
【0072】
<条件(3)が満たされた場合>
図4(A)は、条件(3)が満たされた場合に設定される温度目標値Tm(P)の一例をグラフで示した概念図である。条件(3)が満たされた場合、制御部32は、P-T座標上でのグラフが、複数の停止予定階Fs(ここでは、乗りかご1内で登録された複数の行先階Fd)を対象階Fz(n)(nは、対象階Fzを区別するためのパラメータ。n=1、2、・・・)として、それらの対象階Fz(n)に停止したときの乗りかご1の位置Pz(n)と当該対象階Fz(n)の乗場2の温度Tz(n)(T=Tz(n))とで決まる全ての座標(Pz(n)、Tz(n))に対する近似線となるように、温度目標値Tm(P)を設定する。
【0073】
具体的には、制御部32は、P-T座標上でのグラフが、現時点tc3での乗りかご1の位置Pc3(P=Pc3)と当該乗りかご1内の温度Tc3(T=Tc3)とで決まる座標(Pc3、Tc3)を通り、且つ、その乗りかご1の位置Pの変化に対して当該乗りかご1内の温度Tを単調に増加又は減少させるグラフであって、更にそのグラフが、上述した全ての座標(Pz(n)、Tz(n))に対する近似線となるように、温度目標値Tm(P)を設定する。
【0074】
ここで、現時点tc3は、制御部32が条件判断を行った時点であって、且つ、その条件判断の結果として条件(3)が「満たされている」と判断された時点である。具体例として、上述した現時点tc2の説明の際に想定した場合と同様の場合が想定される。そして、制御部32は、乗りかご1が移動を開始する時点又はその直前の時点(例えば、戸閉が完了した時点)で、その乗りかご1に対応付けられている行先階Fdを用いて条件判断を行うことができ、当該条件判断の結果として条件(3)が「満たされている」と判断できた場合には、そのときの時点を現時点tc3とすることができる。
【0075】
尚、乗りかご1の停止中に行先階Fdが登録されて当該乗りかご1が移動を開始した後に、その乗りかご1内で行先階Fdが更に登録されることがあり得る。そこで、制御部32は、乗りかご1が移動を開始した時点(或いは戸閉が完了した時点)から所定時間の経過後に、温度目標値Tm(P)の設定を実行してもよい。ここで、所定時間は、乗りかご1内が混雑していて、或いは、行先階Fdの登録を失念していて、乗りかご1の停止中に行先階Fdを登録できなかった利用者が、後から行先階Fdを登録する場合に想定される経過時間(移動開始時点又は戸閉完了時点からの経過時間)である。また、制御部32は、後から行先階Fdが登録された場合、当該行先階Fdを含めて温度目標値Tm(P)を設定し直してもよい。尚、温度目標値Tm(P)の再設定の方法については、後述の第2変形例及び第3変形例にて具体的に説明する。
【0076】
そして本実施形態では、制御部32は、上述した全ての座標(Pz(n)、Tz(n))を用いた回帰分析により、現時点tc3の座標(Pc3、Tc3)を通る近似線(回帰線)を求める。そして、制御部32は、P-T座標上でのグラフそのものが当該近似線となるように、温度目標値Tm(P)を設定する。ここで、回帰分析には、最小二乗法などの分析方法を用いることができる。最小二乗法などの回帰分析を用いて近似線(回帰線)を求めることにより、温度目標値Tm(P)として、乗りかご1の位置Pの変化に対して当該乗りかご1内の温度Tを一方向(温度Tが高くなる方向、又は、温度Tが低くなる方向のどちらか一方)へ緩やかに変化させるものを設定することができる。
【0077】
そして図4(A)の例では、P-T座標上でのグラフが現時点tc3の座標(Pc3、Tc3)を通り、且つ、そのグラフが、3つの対象階Fz(n)についての全ての座標(Pz(n)、Tz(n))に対する回帰線となるように、温度目標値Tm(P)が設定されている。
【0078】
このような温度目標値Tm(P)の設定によれば、当該温度目標値Tm(P)に基づいて温度制御処理を行うことにより、乗りかご1内の温度Tを、現時点tc3での温度Tc3から緩やかに変化させることができる。従って、乗りかご1内の温度Tの変化によって当該乗りかご1内の利用者が受け得る不快感を低減することができる。
【0079】
また、乗りかご1が1つ目の対象階Fz(1)に到着したときには、当該乗りかご1内の温度Tを、2つ目以降の対象階Fz(n)(n=2、・・・)の乗場2の温度Tz(n)を考慮して(具体的には、乗りかご1が2つ目以降の対象階Fz(n)へ移動するときに、当該乗りかご1内の温度Tを、その変化率を大きくすることなく、2つ目以降の各対象階Fz(n)の乗場2の温度Tに近似させることができるように)、1つ目の対象階Fz(1)の乗場2の温度Tz(1)に近似させることができる。よって、停止予定階Fsごとに乗りかご1内の温度Tを乗場2の温度Tに一致させる場合に比べて、乗りかご1内の温度Tの変化を小さくすることができ、その結果として、当該乗りかご1内の利用者が受け得る不快感を低減することができる。
【0080】
更に、利用者が降車することになる上記の対象階Fz(n)(当該利用者が登録した行先階Fd)に乗りかご1が到着したときには、乗りかご1内の温度Tは、当該対象階Fz(n)の乗場2の温度Tz(n)に近似することになる。よって、乗りかご1から降車する利用者は、対象階Fz(n)の乗場2との温度差に起因した暑さや寒さといった不快感を受けることなく、当該対象階Fz(n)へ降車することができる。
【0081】
尚、複数の座標(Pz(n)、Tz(n))を用いた回帰分析によって近似線(回帰線)を求める場合、各座標(Pz(n)、Tz(n))に対して、当該座標が示す温度Tz(n)の大きさに応じた重み付けを行ってもよい。また、温度目標値Tm(P)の設定方法として、回帰分析によって求めた近似線を用いる方法に限らず、P-T座標上でのグラフが、複数の座標(Pz(n)、Tz(n))を平均して求めた座標を通るように、温度目標値Tm(P)を設定してもよい。この場合も、各座標(Pz(n)、Tz(n))に対して、当該座標が示す温度Tz(n)の大きさに応じた重み付けを行ってもよい。
【0082】
更には、既述のとおり、空調装置11で乗りかご1内の冷暖房を行った場合には、乗りかご1内の温度Tが空調装置11の設定温度Tkに到達するまでには時間を要することがある。そこで、条件(3)が満たされた場合においても、そのような温度変化のタイムラグ(設定温度Tkを設定した時点から、乗りかご1内の温度Tが設定温度Tkに到達するまでのタイムラグ)を利用して、乗りかご1内の温度Tを緩やかに変化させつつ、対象階Fz(n)への乗りかご1の到着時には、乗りかご1内の温度Tを、当該対象階Fz(n)の乗場2の温度Tz(n)に近似させることができる。
【0083】
具体例として、温度目標値Tm(P)は、P-T座標上において全ての座標(Pz(n)、Tz(n))に対する近似線となるように設定されたものであれば、現時点tc3での座標(Pc3、Tc3)を通るものに限らず、図4(B)に示されるように、位置Pに対して、全ての温度Tz(n)についての近似値として求められた温度Twで一定となるように設定されたものに適宜変更されてもよい。一例として、温度Twは、全ての温度Tz(n)の平均値である。他の例として、温度Twは、季節に応じたモード(夏場モードや冬場モードなど)ごとに、全ての温度Tz(n)の平均値に所定温度を加算又は減算して得られたものであってもよい。
【0084】
この場合、温度目標値Tm(P)は、Tm(P)=Twとなって位置Pに依存しなくなるため、温度設定処理では、制御部32は、温度目標値Tm(P)として、位置Pとは関係なく単に1つの温度Twを設定するだけで、P-T座標上でのグラフが温度T=Twで一定となるように温度目標値Tm(P)を設定したのと同じことを行ったことになる。そして、温度制御処理では、空調装置11の設定温度Tkを一定の温度Twに設定することにより、上述した温度変化のタイムラグを利用して、乗りかご1内の温度Tを緩やかに変化させつつ、対象階Fz(n)への乗りかご1の到着時には、乗りかご1内の温度Tを、当該対象階Fz(n)の乗場2の温度Tz(n)に近似させることができる。
【0085】
更に、温度目標値Tm(P)として許容できる温度Tの範囲(上述した所定範囲)を予め設定しておき、上記の温度Twが上記の所定範囲から外れている場合には、温度目標値Tm(P)は、当該所定範囲の上限値又は下限値で一定となるように設定されてもよい。このような構成によれば、温度目標値Tm(P)を、常に、利用者に不快感を与えることがない範囲内に設定することが可能になる。
【0086】
[2]変形例
上述したエレベータ制御装置3は、温度設定処理において以下のような処理を実行するものに適宜変更されてもよい。
【0087】
[2-1]第1変形例
図5(A)及び図5(B)は、第1変形例において条件(3)が満たされた場合に設定される温度目標値Tm(P)の一例をグラフで示した概念図である。条件(3)が満たされた場合、制御部32は、P-T座標上でのグラフが、現時点tc3の座標(Pc3、Tc3)を通るグラフであって、更にそのグラフが、次のような近似線となるように、温度目標値Tm(P)を設定してもよい。具体的には、その近似線は、複数の停止予定階Fs(ここでは、乗りかご1内で登録された複数の行先階Fd)のうちの乗りかご1が次に停止する階及びその次に停止する階を対象階Fza(n)(nは、2つの対象階Fzaを区別するためのパラメータ。n=1、2)として、それらの対象階Fza(n)に停止したときの乗りかご1の位置Pza(n)と当該対象階Fza(n)の乗場2の温度Tza(n)(T=Tza(n))とで決まる2つの座標(Pza(n)、Tza(n))に対する近似線である。
【0088】
図5(A)の例では、乗りかご1に対応付けられた3つの停止予定階Fs(1)~Fs(3)(この例では、停止予定階Fsを区別する1~3の番号は、乗りかご1が停止する順を表しているものとする)のうちの最初の2つの停止予定階Fs(1)及びFs(2)が対象階Fza(1)及びFza(2)とされている。そして、P-T座標上でのグラフが、現時点tc3の座標(Pc3、Tc3)と、対象階Fza(1)及びFza(2)についての2つの座標(Pza(n)、Tza(n))の中点と、を通る線形的なグラフとなるように、温度目標値Tm(P)が設定されている。尚、図5(A)の例では、2つの座標(Pza(n)、Tza(n))の中点が、小さい黒丸で示されている(図5(B)も同様)。
【0089】
そして、乗りかご1が対象階Fza(1)に到着した場合、制御部32は、当該対象階Fza(1)に対応する停止予定階Fs(ここでは停止予定階Fs(1))を乗りかご1への対応付けから消去した上で、その階から当該乗りかご1が出発する時点又はその直前の時点(例えば、戸閉が完了した時点)になったときに、再び、乗りかご1に対応付けられている停止予定階Fs(ここでは停止予定階Fs(2)及びFs(3))を用いて条件判断を行う。
【0090】
そして、制御部32は、条件判断の結果として条件(3)が「満たされている」と判断できた場合、そのときの時点を新たな現時点tc3として、温度目標値Tm(P)を、上述した方法と同じ方法を用いて設定し直すことができる(図5(B)参照)。具体的には、制御部32は、次に停止する停止予定階Fs(2)とその次に停止する停止予定階Fs(3)とを対象階Fza(1)及びFza(2)として、上述した方法と同じ方法を用いて設定し直すことができる。
【0091】
このような温度目標値Tm(P)の設定によれば、当該温度目標値Tm(P)に基づいて温度制御処理を行うことにより、乗りかご1が1つ目の対象階Fza(1)(次に停止する階)に到着したときに、当該乗りかご1内の温度Tを、2つ目の対象階Fza(2)(その次に停止する階)の乗場2の温度Tza(2)を考慮して(具体的には、乗りかご1が2つ目の対象階Fza(2)へ移動するときに、当該乗りかご1内の温度Tを、その変化率を大きくすることなく温度Tza(2)に近似させることができるように)、1つ目の対象階Fza(1)の乗場2の温度Tza(1)に近似させることができる。よって、停止予定階Fsごとに乗りかご1内の温度Tを乗場2の温度Tに一致させる場合に比べて、乗りかご1内の温度Tの変化を小さくすることができ、その結果として、当該乗りかご1内の利用者が受け得る不快感を低減することができる。
【0092】
尚、本変形例において、複数の停止予定階Fsのうちの乗りかご1が次に停止する階とその次に停止する階とを対象階Fza(n)(n=1、2)として用いる場合に限らず、当該複数の停止予定階Fsを乗りかご1が停止する順に並べたときに、3番目までの3つの階など、M番目(Mは、2以上の整数)までのM個の階を対象階Fza(n)(n=1、2、・・・、M)として用いてもよい。この場合、制御部32は、P-T座標上でのグラフが、それらの対象階Fza(n)に停止したときの乗りかご1の位置Pza(n)と当該対象階Fza(n)の乗場2の温度Tza(n)(T=Tza(n))とで決まるM個の座標(Pza(n)、Tza(n))に対する近似線となるように、温度目標値Tm(P)を設定することができる。一例として、制御部32は、M個の座標(Pza(n)、Tza(n))を平均して求めた座標を通るように、温度目標値Tm(P)を設定することができる。
【0093】
このように、制御部32は、P-T座標上でのグラフが、複数の停止予定階Fsのうちの少なくとも2つの停止予定階Fsを対象階Fza(n)として、それらの対象階Fza(n)に停止したときの乗りかご1の位置Pza(n)と当該対象階Fza(n)の乗場2の温度Tza(n)とで決まる全ての座標(Pza(n)、Tza(n))に対する近似線となるように、温度目標値Tm(P)を設定することができる。
【0094】
また、本変形例においても、実施形態で説明した温度変化のタイムラグ(設定温度Tkを設定した時点から、乗りかご1内の温度Tが設定温度Tkに到達するまでのタイムラグ)を利用することができる。具体的には、温度目標値Tm(P)は、P-T座標上においてM個の座標(Pza(n)、Tza(n))に対する近似線となるように設定されたものであれば、現時点tc3での座標(Pc3、Tc3)を通るものに限らず、図6(A)及び図6(B)に示されるように、位置Pに対して、M個の温度Tza(n)についての近似値として求められた温度Twaで一定となるように設定されたものに適宜変更されてもよい。一例として、温度Twaは、M個の温度Tza(n)の平均値である。他の例として、温度Twaは、季節に応じたモード(夏場モードや冬場モードなど)ごとに、M個の温度Tza(n)の平均値に所定温度を加算又は減算して得られたものであってもよい。
【0095】
更に、温度目標値Tm(P)として許容できる温度Tの範囲(上述した所定範囲)を予め設定しておき、上記の温度Twaが上記の所定範囲から外れている場合には、温度目標値Tm(P)は、当該所定範囲の上限値又は下限値で一定となるように設定されてもよい。
【0096】
[2-2]第2変形例
上述した実施形態において、条件(2)又は(3)が満たされた場合に実行される温度設定処理を、登録された行先階Fdだけなく、乗場呼びが行われた階(乗車階Fe)をも考慮して温度目標値Tm(P)を設定するものに適宜変更することができる。この場合、条件(2)及び(3)を、次のような条件(2H)及び(3H)に変更することができる。
【0097】
<条件>
(2H)停止予定階Fsとして行先階Fdだけが1つ対応付けられている状態、或いは、停止予定階Fsとして、当該1つの行先階Fdだけでなく、乗場呼びが行われた階(乗車階Fe)も含めて複数対応付けられている状態、
(3H)停止予定階Fsとして行先階Fdだけが複数対応付けられている状態、或いは、停止予定階Fsとして、当該複数の行先階Fdだけでなく、乗場呼びが行われた階(乗車階Fe)も含めて複数対応付けられている状態。
【0098】
<条件(2H)又は(3H)が満たされた場合>
図7(A)は、第2変形例において条件(2H)が満たされた場合に設定される温度目標値Tm(P)の一例をグラフで示した概念図である。また、図7(B)は、第2変形例において条件(3H)が満たされた場合に設定される温度目標値Tm(P)の一例をグラフで示した概念図である。条件(2H)又は(3H)が満たされた場合、制御部32は、P-T座標上でのグラフが、現時点tc3の座標(Pc3、Tc3)を通り、且つ、その乗りかご1の位置Pの変化に対して当該乗りかご1内の温度Tを単調に増加又は減少させるグラフであって、更にそのグラフが、次のような近似線となるように、温度目標値Tm(P)を設定することができる。具体的には、その近似線は、複数の停止予定階Fs(ここでは、登録された行先階Fd又は乗場呼びが行われた階(乗車階Fe))を対象階Fzh(n)(nは、対象階Fzhを区別するためのパラメータ。n=1、2、・・・)として、それらの対象階Fzh(n)に停止したときの乗りかご1の位置Pzh(n)と当該対象階Fzh(n)の乗場2の温度Tzh(n)(T=Tzh(n))とで決まる全ての座標(Pzh(n)、Tzh(n))に対する近似線である。また、この近似線は、上述した実施形態と同様、全ての座標(Pzh(n)、Tzh(n))を用いた回帰分析により求めることができる。
【0099】
本変形例のような温度目標値Tm(P)の設定によれば、利用者が降車することになる階(当該利用者が登録した行先階Fd)に乗りかご1が到着したときだけでなく、利用者が乗車することになる階(当該利用者が乗場呼びを行った階(乗車階Fe))に乗りかご1が到着したときにも、乗りかご1内の温度Tが、当該乗りかご1が到着した階の乗場2の温度Tzh(n)に近似することになる。よって、乗場2から乗車する利用者は、乗りかご1内との温度差に起因した暑さや寒さといった不快感を受けることなく、当該乗りかご1に乗車することができる。
【0100】
尚、本変形例においても、実施形態で説明した温度変化のタイムラグ(設定温度Tkを設定した時点から、乗りかご1内の温度Tが設定温度Tkに到達するまでのタイムラグ)を利用することができる。具体的には、温度目標値Tm(P)は、P-T座標上において全ての座標(Pzh(n)、Tzh(n))に対する近似線となるように設定されたものであれば、現時点tc3での座標(Pc3、Tc3)を通るものに限らず、図8(A)及び図8(B)に示されるように、位置Pに対して、全ての温度Tzh(n)についての近似値として求められた温度Twhで一定となるように設定されたものに適宜変更されてもよい。一例として、温度Twhは、全ての温度Tzh(n)の平均値である。他の例として、温度Twhは、季節に応じたモード(夏場モードや冬場モードなど)ごとに、全ての温度Tzh(n)の平均値に所定温度を加算又は減算して得られたものであってもよい。
【0101】
更に、温度目標値Tm(P)として許容できる温度Tの範囲(上述した所定範囲)を予め設定しておき、上記の温度Twhが所定範囲から外れている場合には、温度目標値Tm(P)は、当該所定範囲の上限値又は下限値で一定となるように設定されてもよい。
【0102】
<温度目標値の再設定(その1)>
本変形例においては、上述の方法で温度目標値Tm(P)が設定された後、乗りかご1の停止中又は移動中に停止予定階Fsが更に対応付けられた場合(乗りかご1の停止中又は移動中に、当該乗りかご1内で利用者が行先階Fdを登録した場合、又は、当該乗りかご1が移動する方向にある何れかの階で乗場呼びが行われた場合)、その時点を新たな現時点tc3として、温度目標値Tm(P)を、上述した方法と同じ方法を用いて設定し直すことができる。
【0103】
図9(A)及び図9(B)は、第2変形例の方法を用いた再設定の一例を説明するための概念図であり、これらの図には、再設定の前後における温度目標値Tm(P)がグラフで示されている。
【0104】
先ず、図9(A)の例には、何れかの階(現時点tc3の座標(Pc3、Tc3)に対応した階)で2人の利用者が乗りかご1に乗車し、当該利用者がそれぞれ、階数の異なる2つの行先階Fdを登録したという状況において、そのときに設定された温度目標値Tm(P)が示されている。具体的には、登録された2つの行先階Fdが停止予定階Fs(1)及びFs(2)として乗りかご1に対応付けれ、それらの停止予定階Fs(1)及びFs(2)を対象階Fzh(1)及びFzh(2)として、上述した第2変形例の方法(「条件(3H)が満たされた場合」の方法)で設定された温度目標値Tm(P)が示されている。
【0105】
次に、図9(B)の例には、1つ目の対象階Fzh(1)に乗りかご1が到着したときに、利用者の1人が乗りかご1から降車する一方で、別の利用者が乗りかご1に乗車し、当該別の利用者が新たな行先階Fd(停止予定階Fs)を登録したという状況において、そのときに再設定された温度目標値Tm(P)が示されている。
【0106】
具体的には、乗りかご1が対象階Fzh(1)に到着した場合、制御部32は、当該対象階Fzh(1)(ここでは停止予定階Fs(1))を乗りかご1への対応付けから消去した上で、その階から当該乗りかご1が出発する時点又はその直前の時点(例えば、戸閉が完了した時点)になったときに、再び条件判断を行う。図9(B)の例では、別の利用者が新たな行先階Fd(停止予定階Fs(3))を登録した状況が想定されており、制御部32が条件判断を行う際には、乗りかご1には2つの停止予定階Fs(2)及びFs(3)が対応付けられていることになる。従って、制御部32は、条件判断の結果として条件(3H)が「満たされている」と判断することができる。
【0107】
そして、制御部32は、条件判断の結果として条件(3H)が「満たされている」と判断できた場合、そのときの時点を新たな現時点tc3とし、且つ、乗りかご1に乗車中の利用者についての2つの行先階Fd(停止予定階Fs(2)及びFs(3))を新たな対象階Fzh(1)及びFzh(2)として、上述した第2変形例の方法(「条件(3H)が満たされた場合」の方法)を用いて温度目標値Tm(P)を設定し直すことができる(図9(B)参照)。
【0108】
このような温度目標値Tm(P)の再設定によれば、途中で対応付けられた新たな停止予定階Fsをも考慮して温度目標値Tm(P)を設定し直すことができるため、当該新たな停止予定階Fsに乗りかご1が到着したときに乗降する利用者に生じ得る不快感(乗りかご1内と乗場2との温度差に起因した暑さや寒さといった不快感)をも低減することができる。
【0109】
[2-3]第3変形例
<温度目標値の再設定(その2)>
上述した実施形態において条件(2)が満たされた場合(図3(A)及び図3(B)参照)であって、行先階Fdへの乗りかご1の移動中に、当該行先階Fdまでの途中の階において、乗りかご1がその階に停止できるようなタイミングで乗場呼びが行われた場合にも、その時点を現時点tc3として、温度目標値Tm(P)を、上述した第2変形例の方法(「条件(3H)が満たされた場合」の方法)を用いて設定し直すことができる。
【0110】
図10は、第3変形例において再設定された温度目標値Tm(P)の一例を示した概念図である。図10の例では、上述した条件(2)が満たされて温度目標値Tm(P)が設定された場合(図3(A)参照)であって、対象階Fy(停止予定階Fs(X1))への乗りかご1の移動中に、当該対象階Fyまでの途中の階において、乗りかご1がその階に停止できるようなタイミングで乗場呼びが行われた場合が想定されている。この場合、乗りかご1には、停止予定階Fs(X1)に加えて、そのようなタイミングで乗場呼びが行われた階が停止予定階Fs(X2)として乗りかご1に対応付けられることになる。
【0111】
上記のようなタイミングで乗場呼びが行われた場合、制御部32は、その時点で再び条件判断を行うことができる。図10の例では、2つの停止予定階Fs(X1)及びFs(X2)が乗りかご1に対応付けられることになるため、制御部32は、条件判断の結果として条件(3H)が「満たされている」と判断することができる。
【0112】
そして、制御部32は、条件判断の結果として条件(3H)が「満たされている」と判断できた場合、そのときの時点を新たな現時点tc3とし、且つ、乗場呼びが行われた階(停止予定階Fs(X2))と乗りかご1に乗車中の利用者の行先階Fd(停止予定階Fs(X1))とを対象階Fzh(1)及びFzh(2)として、上述した第2変形例の方法(「条件(3H)が満たされた場合」の方法)を用いて温度目標値Tm(P)を設定し直すことができる。
【0113】
このような温度目標値Tm(P)の再設定によれば、途中で対応付けられた新たな停止予定階Fsをも考慮して温度目標値Tm(P)を設定し直すことができるため、当該新たな停止予定階Fsに乗りかご1が到着したときに乗降する利用者に生じ得る不快感(乗りかご1内と乗場2との温度差に起因した暑さや寒さといった不快感)をも低減することができる。
【0114】
[2-4]第4変形例
乗りかご1が、最後の利用者が降車することになる停止予定階Fsに到着することにより、停止予定階Fsが1つも対応付けられていない状態(待機状態)になった場合には、温度設定処理において、制御部32は、乗りかご1への停止予定階Fsの対応付けがなくなった時点(即ち、乗りかご1が最後の停止予定階Fsに到着した時点)での温度目標値Tm(P)の値を用いて、その値で一定となるように温度目標値Tm(P)を設定し直してもよい。この場合、その温度目標値Tm(P)に基づいて温度制御処理を行うことにより、新たな停止予定階Fsが乗りかご1に対応付けられるまでの間、当該乗りかご1内の温度Tを、その乗りかご1が最後の停止予定階Fsに到着したときの温度で維持することができる。
【0115】
また、乗りかご1が待機状態になった場合には、温度設定処理において、制御部32は、過去に乗場呼びが行われた頻度が高い階の乗場2の温度Tに基づいて温度目標値Tm(P)を設定し直してもよい。一例として、制御部32は、過去に乗場呼びが行われた頻度が最も高い階の乗場2の温度Tで一定となるように温度目標値Tm(P)を設定することができる。他の例として、制御部32は、過去に乗場呼びが行われた頻度が高い幾つかの階を対象として、それらの階の乗場2の温度Tの平均値で一定となるように温度目標値Tm(P)を設定することができる。これらの場合、その温度目標値Tm(P)に基づいて温度制御処理を行うことにより、新たな停止予定階Fsが乗りかご1に対応付けられるまでの間、当該乗りかご1内の温度Tを、当該新たな停止予定階Fsになる可能性が高い階の乗場2の温度T又はそれに近似した温度で維持することができる。
【0116】
このような温度目標値Tm(P)の設定によれば、待機状態の乗りかご1に新たな停止予定階Fsが対応付けられたときに、空調装置11を再起動して乗りかご1内を暖め又は冷やし直す必要がなく、その結果として省エネルギを実現することが可能になる。
【0117】
尚、乗りかご1が待機状態になった場合において、上述の方法で温度目標値Tm(P)として設定しようとした温度が、省エネルギの実現に適さない温度であった場合には、制御部32は、省エネルギの実現に適した温度で一定となるように温度目標値Tm(P)を設定してもよい。
【0118】
更に、制御部32は、温度目標値Tm(P)を設定して空調装置11による冷暖房を維持するか、或いは、温度目標値Tm(P)を設定せずに空調装置11を停止させるかを、乗りかご1が待機状態になったときの時間帯に応じて選択してもよい。これにより、利用者が著しく少なくなる時間帯(夜間など)において、空調装置11による冷暖房を維持することによって生じ得るエネルギの無駄な消費を防ぐことが可能になる。
【0119】
[2-5]第5変形例
上述した実施形態及び変形例において、乗りかご1の位置Pを、当該乗りかご1の走行時間t(例えば、停止時間を除いた累積走行時間)に置き換えて考えてもよい。そして、温度目標値Tm(P)に代えて、乗りかご1の走行時間tに応じた当該乗りかご1内の温度目標値Tm(t)を設定してもよい。このような温度目標値Tm(t)の設定によれば、走行時間tを用いることで乗りかご1の加減速の影響などを考慮して温度目標値Tm(t)を設定することができるため、乗りかご1内での温度Tの時間的なムラを低減することができる。
【0120】
上述の実施形態及び変形例の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態や変形例ではなく、特許請求の範囲によって示される。更に、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0121】
また、上述の実施形態や変形例からは、発明の対象として、エレベータの制御装置に限らず、その制御装置を構成する各部が部分的に抽出されてもよい。更に、当該制御装置で実行される制御処理やプログラムなどが個々に抽出されてもよいし、それらの一部が部分的に抽出されてもよい。
【符号の説明】
【0122】
1 乗りかご
2 乗場
3 エレベータ制御装置
P 位置
T 温度
t 走行時間
Tk 設定温度
Tm 温度目標値
11 空調装置
12 行先階ボタン
21 乗場呼びボタン
22 温度センサ
31 記憶部
32 制御部
320 搬送処理部
321 温度設定処理部
322 温度制御処理部
Fd 行先階
Fe 乗車階
Fs 停止予定階
Fx、Fy、Fz、Fza、Fzh 対象階
Px、Py、Pz、Pza、Pzh 位置
Tx、Ty、Tz、Tza、Tzh 温度
Tw、Twa、Twh 温度
Pc1、Pc2、Pc3 位置
Tc1、Tc2、Tc3 温度
tc1、tc2、tc3 現時点
【要約】
【課題】エレベータにおいて利用者が受け得る不快感を低減することが可能な制御技術を提供する。
【解決手段】制御装置は、乗りかご内の温度を調整することが可能なエレベータに適用可能な制御装置であり、乗りかご内の温度目標値を設定する温度設定処理部と、当該温度目標値に基づいて乗りかご内の温度を制御する温度制御処理部と、を備える。そして、乗りかごに対して停止予定階が複数対応付けられている場合、温度設定処理部は、位置と温度とを2つの座標軸とする2次元座標上にて温度目標値をグラフで表すことを考えたときに、そのグラフが、乗りかごに対応付けられている複数の停止予定階のうちの少なくとも2つの停止予定階を対象階として、それらの対象階に停止したときの乗りかごの位置と当該対象階の乗場の温度とで決まる全ての座標に対する近似線となるように、温度目標値を設定する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10