(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】エレベータ制御設備
(51)【国際特許分類】
B66B 1/34 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
B66B1/34 C
(21)【出願番号】P 2023509844
(86)(22)【出願日】2021-06-09
(86)【国際出願番号】 JP2021021844
(87)【国際公開番号】W WO2022259397
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-02-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100153176
【氏名又は名称】松井 重明
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【氏名又は名称】伊達 研郎
(72)【発明者】
【氏名】入山 英樹
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-144978(JP,A)
【文献】特開2001-171922(JP,A)
【文献】特開2015-229563(JP,A)
【文献】特開2013-220858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの運行を制御する電気機器を収容し、昇降路内の、最下階に停止した乗りかごの上面よりも上方の位置に設置され、且つ、前記昇降路内に設けられたガイドレールに連結部材を介して固定され、その点検作業は前記乗りかごの上面に乗った作業員により行われる制御盤と、
前記制御盤の上面、正面、背面、及び左右の側面を覆う防滴カバーと
を備えたエレベータ制御設備であって、
前記防滴カバーは、前記左右の側面のうちの少なくとも1つの側面に点検用扉を有し、
前記防滴カバーの前記点検用扉によって開閉される開口部から、前記制御盤をスライドさせて前記防滴カバーの外部に引き出すスライド機構を備え
、
前記スライド機構は、複数段引きのスライドレールであって、
前記複数段引きのスライドレールのうち少なくとも1つのスライドレールは、前記制御盤に固定され、前記制御盤が前記防滴カバーの外部に引き出されたとき、前記複数段引きのスライドレールが前記制御盤を支持し、前記制御盤が前記防滴カバーに覆われたとき、前記複数段引きのスライドレールが前記防滴カバーに覆われるエレベータ制御設備。
【請求項2】
前記スライド機構による前記制御盤のスライドを規制するロック状態と当該規制を解除するアンロック状態とを切り替えるロック機構を更に備える請求項1
に記載のエレベータ制御設備。
【請求項3】
前記制御盤には、前記開口部側に取手が設けられている請求項1又は2に記載のエレベータ制御設備。
【請求項4】
前記防滴カバーは、前記制御盤から取り外された搬送用の保護板が取り付けられる保護板取付部を有する請求項1から3のいずれか一項に記載のエレベータ制御設備。
【請求項5】
前記制御盤は、前記点検用扉の開閉を検知し、前記点検用扉の開放が検知された場合にその開放を示す信号を出力する検知手段を更に備えた請求項1から4のいずれか一項に記載のエレベータ制御設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、昇降路内に設置されるエレベータ制御設備に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、機械室のない昇降路内に制御盤を設置するときに、防滴性を確保するため、制御盤をカバーに収容することが開示されている。そして、そのカバーとして、制御盤の略上半分を覆う上カバーと、略下半分を覆う下カバーとを組み合わせることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示の設備では、制御盤の保守点検を実施する作業員が、上カバーを制御盤の上方へスライドして外し、且つ、下カバーを制御盤の下方へスライドして外す必要があり、その煩雑な作業によって保守点検の作業性が低下してしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本開示の目的は、昇降路内に制御盤を設置するときに、防滴性を確保するとともに、作業員が保守点検をより容易に実施できるエレベータ制御設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエレベータ制御設備は、エレベータの運行を制御する電気機器を収容し、昇降路内の、最下階に停止した乗りかごの上面よりも上方の位置に設置され、且つ、昇降路内に設けられたガイドレールに連結部材を介して固定され、その点検作業は前記乗りかごの上面に乗った作業員により行われる制御盤と、制御盤の上面、正面、背面、及び左右の側面を覆う防滴カバーとを備えたエレベータ制御設備であって、防滴カバーは、左右の側面のうちの少なくとも1つの側面に開閉可能な点検用扉を有し、防滴カバーの点検用扉によって開閉される開口部から、制御盤をスライドさせて防滴カバーの外部に引き出すスライド機構を備え、スライド機構は、複数段引きのスライドレールであって、複数段引きのスライドレールのうち少なくとも1つのスライドレールは、制御盤に固定され、制御盤が防滴カバーの外部に引き出されたとき、複数段引きのスライドレールが制御盤を支持し、制御盤が防滴カバーに覆われたとき、複数段引きのスライドレールが防滴カバーに覆われるものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係るエレベータ制御設備によれば、昇降路内に制御盤を設置するときに、防滴性を確保するとともに、作業員が保守点検をより容易に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係るエレベータ制御設備の昇降路内に設置された状態を示す概略構成図である。
【
図2】実施の形態に係るエレベータ制御設備の制御盤の斜視図である。
【
図3】実施の形態に係るエレベータ制御設備の防滴カバーの斜視図である。
【
図4】実施の形態に係るエレベータ制御設備に連結部材が取り付けられた状態を示す斜視図である。
【
図6】制御盤が防滴カバーの外部へ引き出される前の状態を示す斜視図である。
【
図7】制御盤が防滴カバーの外部へ引き出された状態を示す斜視図である。
【
図9】実施の形態に係るエレベータ制御設備の変形例を示すB-B線に沿った拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について説明する。
図1は、実施の形態に係るエレベータ制御設備1が昇降路H内に設置された状態を示す図である。
図1に示すように、エレベータ制御設備1は、制御盤10と、制御盤10の周囲を覆うように設けられた防滴カバー20を備えている。制御盤10には、エレベータの運行を制御する電気機器が収容されている。その電気機器の保守点検を行う作業員Wは、防滴カバー20の側面に設けられた開口部から、制御盤10を防滴カバー20の外部に引き出すことによって電気機器を露出させ、保守点検の作業を行う。制御盤10の上下には、制御盤10をスライドさせて防滴カバー20の外部に引き出すためのスライド機構30が設けられている。
【0010】
エレベータ制御設備1は、最下階に停止した乗りかごBの上面よりも上方の位置に設置され、保守点検の作業員Wは乗りかごBの上で点検作業を行う。エレベータ制御設備1は、昇降路H内に設けられたガイドレールRに上下1対の連結部材40を介して固定されている。
【0011】
図2は、制御盤10の斜視図である。
図2に示すように、制御盤10は、正面が開放された枠体11に電気機器12が配置された構成を有する。制御盤10の上面及び下面には、スライド機構30が固定されている。各スライド機構30の、制御盤10側とは反対側には、そのスライド機構30を連結部材40に固定するための固定金32が取り付けられている。また、スライド機構30には、そのスライド機構30による制御盤10のスライドを規制するロック状態と、その規制を解除するアンロック状態とを切り替えるロック機構31が設けられている。ロック機構31は、たとえばラッチ錠である。また、制御盤10の左側の側面には作業員W用の第1の取手15が設けられている。この第1の取手15が本開示の取手に相当する。
【0012】
なお、本開示では、保守点検の際にエレベータ制御設備1と向き合う作業員Wからみて手前側を「前方」とし、奥側を「後方」とし、上側を「上方」とし、下側を「下方」とし、右側を「右側」とし、左側を「左側」とする。
【0013】
図3は、防滴カバー20の斜視図である。
図3に示すように、防滴カバー20は、防滴構造を有する箱体であって、制御盤10の上面、正面、背面、及び左右の側面を非密着的に覆うように設置され、降雨等に対し制御盤10を保護する。防滴カバー20は、水に対する保護の等級を規定したIEC(International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議)規格であるIP(Ingress Protection:進入に対する保護)規格で規定された、垂直より左右60°以内からの降雨によって有害な影響を受けないことを保護内容とする等級以上の防滴性能を確保可能な構造を有する。防滴カバー20は、金属板、アクリル板等の防水性を有する材料で構成されている。防滴カバー20の正面には、換気用に複数の鎧窓26が設けられている。また、防滴カバー20は、左側の側面に点検用扉23を有する。点検用扉23にはその開閉に使用される第2の取手24が設けられている。
【0014】
図4は、エレベータ制御設備1に連結部材40が取り付けられた状態を示す斜視図である。
図4に示すように、制御盤10を覆うように設置された防滴カバー20の上方及び下方には、左右方向に延びる1対の連結部材40が配置される。1対の連結部材40には、防滴カバー20の左右側方に位置して上下方向に延びる1対の縦柱41が取り付けられる。そして、1対の縦柱41は防滴カバー20の左右側面の後方寄りの位置に固定される。
【0015】
図5は、
図4のB-B線に沿った拡大断面図である。
図5に示すように、スライド機構30を介して制御盤10に取り付けられている固定金32は、図中矢印Dで示す位置において連結部材40に固定されている。スライド機構30は、アウターレール30a、中間レール30b、インナーレール30cを有する3段引スライドレールである。アウターレール30aは固定金32に固定され、インナーレール30cは制御盤10に固定されている。
【0016】
次に、
図6及び
図7を参照して、エレベータ制御設備1に対する保守点検の作業について説明する。
図6は、制御盤10が防滴カバー20の外部へ引き出される前の状態を示す斜視図である。
図7は、制御盤10が防滴カバー20の外部へ引き出された状態を示す斜視図である。まず、作業員Wが、防滴カバー20の点検用扉23を開ける。これにより、
図6に示すような制御盤10の左側部分が見える状態となる。その後、作業員Wが、ロック機構31をロック状態からアンロック状態に切り換える。そして、第1の取手15を左側(点検用扉23によって開閉される開口部側)に引いて、スライド機構30により制御盤10をスライドさせて防滴カバー20の外部へ引き出す。これにより、点検用扉23によって開閉される開口部から制御盤10が防滴カバー20の外部へ引き出され、
図7に示すような電気機器12へのアクセスが容易な状態となる。その後、作業員Wは、ロック機構31をアンロック状態からロック状態に切り換えたうえで、電気機器12に対する保守点検作業を行う。保守点検の作業が完了したら、作業員Wは、ロック機構31をアンロック状態に切り換えて制御盤10を防滴カバー20の内部に戻し、防滴カバー20をロック状態に切り換え、点検用扉23を閉じる。
【0017】
図8は、
図6のC-C線に沿った拡大断面図である。
図8に示すように、制御盤10には、点検用扉23の開閉を検知し、点検用扉23の開放が検知された場合にその開放を示す信号を出力する検知手段17が設けられている。検知手段17は、たとえば接触センサであり、点検用扉23が閉成状態の場合に、そのセンサ部が点検用扉23に付着された突出部材17aと接触するように配置され、突出部材17aとの接触の有無を認識して点検用扉23の開閉を検知する。この点検用扉23の開放を示す信号は、不図示のエレベータ制御部へ出力され、エレベータ制御部がその信号に基づいてかごBの移動を制限し、乗りかごBの上で点検作業を行う作業員Wが安全に作業を行えるようにすることができる。
【0018】
以上説明したように、実施の形態に係るエレベータ制御設備1は、エレベータの運行を制御する電気機器12を収容し、昇降路H内に設置される制御盤10と、制御盤10の上面、正面、背面、及び左右の側面を覆う防滴カバーとを備えている。防滴カバー20は、左右の側面のうちの少なくとも1つの側面に開閉可能な点検用扉23を有する。また、エレベータ制御設備1は、防滴カバー20の点検用扉23によって開閉される開口部から、制御盤10をスライドさせて防滴カバー20の外部に引き出すスライド機構30を備えている。このため、昇降路H内に制御盤10を設置するときに、防滴カバー20により防滴性を確保することができる。また、電気機器12の保守点検を行う作業員は、点検用扉23を開け、制御盤10をスライドさせることによって電気機器12に容易にアクセスすることができ、保守点検の作業を容易に実施できる。
【0019】
なお、上記実施の形態では、エレベータ制御設備1が、ガイドレールRに固定して設置される場合について説明したが、これに代えてたとえば昇降路内の壁面に固定して設置されるようにしてもよい。
【0020】
また、上記実施の形態では、防滴カバー20の左側の側面に点検用扉23を設け、制御盤10の左側の側面に第1の取手15を設ける場合について説明したが、点検用扉23と第1の取手15は、防滴カバー20の右側の側面に設けるようにしてもよい。すなわち、点検用扉23と第1の取手15は、防滴カバー20の外部に制御盤10を引き出すスペースを確保可能な左右いずれかの側面に設けるようにしてもよい。
【0021】
また、制御盤10を工場等から昇降路H内へ搬入する際には、制御盤の正面に保護板19を取り付けて搬送を行い、昇降路H内への搬入後にその保護板19を取り外す場合がある。そこで、
図9の変形例に示すように、防滴カバー20には、制御盤10から取り外された搬送用の保護板19が取り付けられる保護板取付部29を設けるようにしてもよい。保護板取付部29は防滴カバー20の正面の内側に設けられ、保護板19は防滴カバー20と制御盤10の間の空間に取り付けられる。これにより、制御盤10の正面側に配置されるカバー板を2重にでき、制御盤10の正面側からの降雨等に対する保護を強化できる。
【符号の説明】
【0022】
1 エレベータ制御設備
10 制御盤
11 枠体
12 電気機器
15 第1の取手
17 検知手段
19 保護板
20 防滴カバー
23 点検用扉
24 第2の取手
26 鎧窓
29 保護板取付部
30 スライド機構
31 ロック機構
40 連結部材
41 縦柱
17a 突出部材
30a アウターレール
30b 中間レール
30c インナーレール