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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂成形材料および成形品
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20231212BHJP
   B29B 11/16 20060101ALI20231212BHJP
   B29B 9/06 20060101ALI20231212BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20231212BHJP
   C08K 7/04 20060101ALI20231212BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20231212BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20231212BHJP
   C08K 9/08 20060101ALI20231212BHJP
   B29K 105/12 20060101ALN20231212BHJP
【FI】
C08J5/04 CFG
C08J5/04 CFD
B29B11/16
B29B9/06
B29C45/00
C08K7/04
C08L101/00
C08K7/06
C08K9/08
B29K105:12
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023538133
(86)(22)【出願日】2023-06-20
(86)【国際出願番号】 JP2023022694
【審査請求日】2023-10-02
(31)【優先権主張番号】P 2022105339
(32)【優先日】2022-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 俊光
(74)【代理人】
【識別番号】100125760
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】平田 慎
(72)【発明者】
【氏名】吉弘 一貴
(72)【発明者】
【氏名】濱口 美都繁
(72)【発明者】
【氏名】小林 誠
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/235299(WO,A1)
【文献】特開2017-2125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/04
B29B 11/16
B29B 9/06
B29C 45/00
C08K 7/04
C08L 101/00
C08K 7/06
C08K 9/08
B29K 105/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維(A)と熱可塑性樹脂(B)を含む繊維強化樹脂成形材料であって、
該繊維強化樹脂成形材料が、(A)および(B)の合計100重量部に対して、強化繊維(A)を1~30重量部含み、かつ熱可塑性樹脂(B)を70~99重量部含み、
前記強化繊維(A)は、強化繊維(A-1)と束状強化繊維(A-2)を含み、
前記強化繊維(A-1)は長さ3~15mmであり、かつ成形材料の長手方向に揃っており、強化繊維(A-1)の長さは成形材料の長手方向の長さと同じであり、
前記束状強化繊維(A-2)は、長さ0.5~2.9mmの10本以上の単糸から構成されている、繊維強化樹脂成形材料。
【請求項2】
前記繊維強化樹脂成形材料は、繊維強化樹脂成形材料(X)と繊維強化樹脂成形材料(Y)を含み、
繊維強化樹脂成形材料(X)は強化繊維(A-1)と熱可塑性樹脂(B-1)を含み、
強化繊維(A-1)は繊維強化樹脂成形材料(X)の長手方向に揃っており、
繊維強化樹脂成形材料(Y)は束状強化繊維(A-2)と熱可塑性樹脂(B-2)を含む、請求項1に記載の繊維強化樹脂成形材料。
【請求項3】
前記繊維強化樹脂成形材料が芯鞘構造を有してなり、
前記芯鞘構造の芯構造は強化繊維(A-1)を含み、かつ、強化繊維(A-1)が成形材料の長手方向に揃っており、
前記芯鞘構造の鞘構造は束状強化繊維(A-2)および熱可塑性樹脂(B)を含む繊維強化樹脂組成物(C)であり、
前記鞘構造は前記芯構造を被覆している、請求項1に記載の繊維強化樹脂成形材料。
【請求項4】
前記強化繊維(A-1)および束状強化繊維(A-2)がいずれも炭素繊維である、請求項1に記載の繊維強化樹脂成形材料。
【請求項5】
前記強化繊維(A-1)および束状強化繊維(A-2)の含有量が、強化繊維(A)100重量部に対して、強化繊維(A-1)50~99重量部、束状強化繊維(A-2)1~50重量部である、請求項2に記載の繊維強化樹脂成形材料。
【請求項6】
前記束状強化繊維(A-2)の繊維束表面に樹脂成分(D)が付着している、請求項1~5のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形材料。
【請求項7】
前記樹脂成分(D)が、熱硬化性樹脂であり、束状強化繊維(A-2)100重量部に対して7重量部以上含まれる、請求項6に記載の繊維強化樹脂成形材料。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂(B)がポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂およびポリプロピレン樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の繊維強化樹脂成形材料。
【請求項9】
強化繊維(A’)と熱可塑性樹脂(B)を含む繊維強化樹脂成形品であって、
該繊維強化樹脂成形品が、(A’)および(B)の合計100重量部に対して、強化繊維(A’)を1~30重量部含み、かつ熱可塑性樹脂(B)を70~99重量部含み、
強化繊維(A’)の重量平均繊維長Lw(A’)が0.1~2.9mmであり、
強化繊維(A’)が長さ0.5~2.9mmの10本以上の単糸から構成される束状強化繊維(A-2’)を含む、繊維強化樹脂成形品。
【請求項10】
前記強化繊維(A’)における、0.3~1.0mmの繊維長を有する強化繊維の割合が40%以上である、請求項9に記載の繊維強化樹脂成形品。
【請求項11】
前記束状強化繊維(A-2’)が、強化繊維(A’)100重量部に対して、1~50重量部含まれる、請求項10に記載の繊維強化樹脂成形品。
【請求項12】
前記強化繊維(A’)が炭素繊維である、請求項9に記載の繊維強化樹脂成形品。
【請求項13】
前記束状強化繊維(A-2’)の繊維束表面に樹脂成分(D)が付着している、請求項9~12のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形品。
【請求項14】
前記樹脂成分(D)が、熱硬化性樹脂であり、束状強化繊維(A-2’)100重量部に対して7重量部以上含まれる、請求項13に記載の繊維強化樹脂成形品。
【請求項15】
前記熱可塑性樹脂(B)がポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂およびポリプロピレン樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項9~12のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化繊維と熱可塑性樹脂を含む成形材料および強化繊維と熱可塑性樹脂を含む成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
連続した強化繊維と熱可塑性樹脂をマトリックスとする成形材料として、熱可塑性のプリプレグ、ヤーン、ガラスマット(GMT)など多種多様な形態が公知である。このような成形材料は、熱可塑性樹脂の特性を活かして、成形が容易であり、熱硬化性樹脂のような貯蔵の負荷を必要とせず、また得られる成形品の靭性が高いといった特徴がある。とりわけ、ペレット状に加工した成形材料は、射出成形やスタンピング成形などの経済性、生産性に優れた成形法に適用でき、工業材料として有用である。
【0003】
特許文献1には、強化繊維と熱可塑性樹脂からなる成形材料と射出成形品を粉砕して得られた繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を組み合わせた成形材料を射出成形することにより力学特性と流動性に優れる成形品が得られることが開示されている。また特許文献2、3には、長い繊維長を有する強化繊維と短い繊維長を有する2種類の強化繊維を熱可塑性樹脂と組み合わせ射出成形することで力学特性と外観品位に優れる成形品が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-181776号公報
【文献】特開2012-116917号公報
【文献】特開平4-175108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、近年になり、成形品の小型化、薄肉化、複雑化が進み、成形材料にはより高精度の成形性が要求されるようになり、小型、薄肉、複雑成形品に対応できる優れた流動性と力学特性および成形品の寸法精度が高度なバランスで両立することが要求されるようになってきた。従来、強化繊維を含む熱可塑性樹脂成形材料は、強化繊維の長さが長くなることで流動性が劣る問題があった。一方で強化繊維の長さが短い場合、流動性に優れるが、強化繊維が射出成形時に折損することで、力学特性や成形品の寸法精度が低下する問題があり、これらの両立は困難であった。そのため、小型、薄肉、複雑成形品が求められる用途においては、力学特性に優れる長い強化繊維を含み、かつ優れた流動性を有する必要がある。
【0006】
そこで本発明の課題は、上記問題および必要性に鑑み、優れた流動性と力学特性および寸法精度を両立可能な繊維強化樹脂成形材料と繊維強化樹脂成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。
(1)強化繊維(A)と熱可塑性樹脂(B)を含む繊維強化樹脂成形材料であって、
該繊維強化樹脂成形材料が、(A)および(B)の合計100重量部に対して、強化繊維(A)を1~30重量部含み、かつ熱可塑性樹脂(B)を70~99重量部含み、
前記強化繊維(A)は、強化繊維(A-1)と束状強化繊維(A-2)を含み、
前記強化繊維(A-1)は長さ3~15mmであり、かつ成形材料の長手方向に揃っており、強化繊維(A-1)の長さは成形材料の長手方向の長さと同じであり、
前記束状強化繊維(A-2)は、長さ0.5~2.9mmの10本以上の単糸から構成されている、繊維強化樹脂成形材料。
(2)前記繊維強化樹脂成形材料は、繊維強化樹脂成形材料(X)と繊維強化樹脂成形材料(Y)を含み、
繊維強化樹脂成形材料(X)は強化繊維(A-1)と熱可塑性樹脂(B-1)を含み、
強化繊維(A-1)は繊維強化樹脂成形材料(X)の長手方向に揃っており、
繊維強化樹脂成形材料(Y)は束状強化繊維(A-2)と熱可塑性樹脂(B-2)を含む、(1)に記載の繊維強化樹脂成形材料。
(3)前記繊維強化樹脂成形材料が芯鞘構造を有してなり、
前記芯鞘構造の芯構造は強化繊維(A-1)を含み、かつ、強化繊維(A-1)が成形材料の長手方向に揃っており、
前記芯鞘構造の鞘構造は束状強化繊維(A-2)および熱可塑性樹脂(B)を含む繊維強化樹脂組成物(C)であり、
前記鞘構造は前記芯構造を被覆している、(1)または(2)に記載の繊維強化樹脂成形材料。
(4)前記強化繊維(A-1)および束状強化繊維(A-2)がいずれも炭素繊維である、(1)~(3)のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形材料。
(5)前記強化繊維(A-1)および束状強化繊維(A-2)の含有量が、強化繊維(A)100重量部に対して、強化繊維(A-1)50~99重量部、束状強化繊維(A-2)1~50重量部である、(1)~(4)のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形材料。
(6)前記束状強化繊維(A-2)の繊維束表面に樹脂成分(D)が付着している、(1)~(5)のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形材料。
(7)前記樹脂成分(D)が、熱硬化性樹脂であり、束状強化繊維(A-2)100重量部に対して7重量部以上含まれる、(6)に記載の繊維強化樹脂成形材料。
(8)前記熱可塑性樹脂(B)がポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂およびポリプロピレン樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む、(1)~(7)のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形材料。
(9)強化繊維(A’)と熱可塑性樹脂(B)を含む繊維強化樹脂成形品であって、
該繊維強化樹脂成形品が、(A’)および(B)の合計100重量部に対して、強化繊維(A’)を1~30重量部含み、かつ熱可塑性樹脂(B)を70~99重量部含み、
強化繊維(A’)の重量平均繊維長Lw(A’)が0.1~2.9mmであり、
強化繊維(A’)が長さ0.5~2.9mmの10本以上の単糸から構成される束状強化繊維(A-2’)を含む、繊維強化樹脂成形品。
(10)前記強化繊維(A’)における、0.3~1.0mmの繊維長を有する強化繊維の割合が40%以上である、(9)に記載の繊維強化樹脂成形品。
(11)前記束状強化繊維(A-2’)が、強化繊維(A’)100重量部に対して、1~50重量部含まれる、(9)または(10)に記載の繊維強化樹脂成形品。
(12)前記強化繊維(A’)が炭素繊維である、(9)~(11)のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形品。
(13)前記束状強化繊維(A-2’)の繊維束表面に樹脂成分(D)が付着している、(9)~(12)のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形品。
(14)前記樹脂成分(D)が、熱硬化性樹脂であり、束状強化繊維(A-2’)100重量部に対して7重量部以上含まれる、(13)に記載の繊維強化樹脂成形品。
(15)前記熱可塑性樹脂(B)がポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂およびポリプロピレン樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む、(9)~(14)のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた流動性と力学特性および寸法精度を両立する成形材料を得ることができる。本発明の成形材料は、成形加工時の流動性に優れており、力学特性および寸法精度に優れた成形品を容易に製造することができるため、射出成形、トランスファー成形、ブロー成形、インサート成形などの成形方法に限らず、プランジャー成形、プレス成形、スタンピング成形など幅広い成形方法にも応用することができる。
【0009】
本発明の成形材料を成形して得られる成形品としては、スラストワッシャー、オイルフィルター、シール、ベアリング、ギア、シリンダーヘッドカバー、ベアリングリテーナ、インテークマニホールド、ペダル等の自動車部品、シリコンウエハーキャリアー、ICチップトレイ、電解コンデンサートレイ、絶縁フィルム等の半導体・液晶製造装置部品、ポンプ、バルブ、シール等のコンプレッサー部品や航空機のキャビン内装部品といった産業機械部品、滅菌器具、カラム、配管等の医療器具部品や食品・飲料製造設備部品が挙げられる。また、本発明の成形材料を使用すれば、0.5~2mmといった薄肉の成形品を比較的容易に得ることができる。このような薄肉成形が要求されるものとしては、例えばパーソナルコンピューターの内部でキーボードを支持する部材であるキーボード支持体等の電気・電子機器用部材が挙げられる。このような電気・電子機器用部材では、強化繊維に導電性を有する炭素繊維を使用した場合に、電磁波シールド性が付与されるために好適である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施態様に係る成形材料の軸心方向断面の形状の一例を示す概略図である。
図2】本発明の別の実施態様に係る成形材料の軸心方向断面の形状の一例を示す概略図である。
図3】本発明のさらに別の実施態様に係る成形材料の軸心に対し直交方向断面の形状の一例を示す概略図である。
図4】本発明のさらに別の実施態様に係る成形材料の軸心に対し直交方向断面の形状の一例を示す概略図である。
図5】本発明のさらに別の実施態様に係る成形材料の軸心に対し直交方向断面の形状の一例を示す概略図である。
図6】本発明のさらに別の実施態様に係る成形材料の形状の一例を示す概略透視斜視図である。
図7】本発明のさらに別の実施態様に係る成形材料の形状の一例を示す概略透視斜視図である。
図8】本発明のさらに別の実施態様に係る成形材料の形状の一例を示す概略透視斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明について実施の形態とともに詳細に説明する。
【0012】
<成形材料>
本発明の成形材料は強化繊維(A)と熱可塑性樹脂(B)を含む。強化繊維(A)を含むことによって、強化繊維の繊維長を長く保つことができ、優れた力学特性を発現することができる。
【0013】
[強化繊維(A)]
本発明における強化繊維(A)について説明する。
本発明における強化繊維(A)の種類については、特に制限されず、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、金属繊維、天然繊維、鉱物繊維などが使用でき、これらは1種または2種以上を併用してもよい。中でも、軽量かつ高強度、高弾性率の成形品を得る観点から、PAN(ポリアクリルニトリル)系、ピッチ系、レーヨン系などの炭素繊維が好ましく用いられる。特に、高強度の観点からは、引張強度が4000MPa以上の強化繊維が好ましく、より好ましくは、5000MPa以上である。高弾性率の観点からは、引張弾性率が200GPa以上の強化繊維が好ましく、より好ましくは、400GPa以上である。特に、繊維長を長く保つことが難しい弾性率が400GPa以上の強化繊維は、後述する本発明の成形材料の効果をより発現できるため好ましい。
【0014】
また、得られる成形品の経済性を高める観点から、ガラス繊維が好ましく用いることができ、とりわけ機械特性と経済性のバランスから炭素繊維とガラス繊維を併用することが好ましい。さらに、得られる成形品の衝撃吸収性や賦形性を高める観点から、アラミド繊維が好ましく用いることができ、とりわけ機械特性と衝撃吸収性のバランスから炭素繊維とアラミド繊維を併用することが好ましい。また、得られる成形品の導電性を高める観点から、ニッケルや銅やイッテルビウムなどの金属を被覆した強化繊維やピッチ系の炭素繊維を用いることもできる。
【0015】
強化繊維(A)には集束剤が付着されていることが好ましい。これは強化繊維(A)に集束剤を付着させることで、強化繊維の移送時の取扱性や、成形材料を製造する過程でのプロセス性を高めることができる。集束剤の種類には特に限定はないが、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂や種々の熱可塑性樹脂などの集束剤を1種または2種以上併用することができる。
【0016】
成形材料100重量部に対して、強化繊維(A)は1~30重量部であることが好ましい。より好ましくは、2~25重量部、さらに好ましくは5~20重量部である。強化繊維(A)が1重量部未満では、得られる成形品の力学特性および寸法精度が不十分となる場合があり、30重量部を超えると流動性が低下する場合がある。
【0017】
本発明における強化繊維(A)には、強化繊維(A-1)と束状強化繊維(A-2)が含まれる。強化繊維(A-1)の長さは3~15mmが好ましく、より好ましくは5~10mmである。強化繊維(A-1)は、単繊維が一方向に配列された状態であることが好ましい。好ましい形態として、一方向性繊維束、二方向性繊維束、多方向性繊維束などが例示できるが、成形材料を製造する過程での生産性の観点から、一方向性繊維束がより好ましく使用できる。強化繊維(A)は、強化繊維の単糸数が多いほど経済性には有利であることから、成形材料を例えばペレット状に形成する場合に1ペレット内の単繊維は10,000本以上が好ましい。他方、強化繊維の単糸数が多いほどマトリックス樹脂の含浸性には不利となる傾向があるため、経済性と含浸性の両立を図る観点から、15,000本以上100,000本以下がより好ましく、20,000本以上50,000本以下がとりわけ好ましく使用できる。
【0018】
また、強化繊維(A-1)は、成形材料において、強化繊維(A-1)が成形材料の長手方向に揃っており、かつ強化繊維(A-1)の長さが成形材料の長さと実質的に同じであることが好ましい。ここで、成形材料の長手方向に揃っているとは、強化繊維(A-1)の長軸の軸線と、成形材料の長軸の軸線とが、同方向を指向している状態を指し、軸線同士の角度のずれは、好ましくは20°以下であり、より好ましくは10°以下であり、さらに好ましくは5°以下である。また、実質的に同じ長さとは、例えばペレット状の成形材料において、ペレット内部の途中で強化繊維(A-1)が切断されていたり、ペレット全長よりも有意に短い強化繊維(A-1)が実質的に含まれたりしないことである。なお、ペレット全長とはペレット中の強化繊維(A-1)配向方向の長さである。強化繊維(A-1)が成形材料と実質的に同じの長さを有することで、成形品中の強化繊維長を長くすることができ、優れた力学特性および寸法精度を得ることができる。
【0019】
束状強化繊維(A-2)の長さは、0.5~2.9mmが好ましく、より好ましくは0.6~2.7mmであり、さらに好ましくは0.7~2.5mmである。束状強化繊維(A-2)の長さが0.5mm未満の場合、成形品の力学特性および寸法精度が劣るため好ましくない。一方で、束状強化繊維(A-2)の長さが2.9mmよりも長い場合、流動性が劣るため好ましくない。また、束状強化繊維(A-2)は、10本以上の強化繊維単糸から構成されたものである。束状強化繊維(A-2)を構成する強化繊維単糸は、10本以上が好ましく、より好ましくは15本以上であり、更に好ましくは20本以上である。束状強化繊維(A-2)の単糸本数が10本未満であると射出成形時に繊維折損が起きるため、成形品の力学特性および寸法精度が劣り好ましくない。単糸本数の上限は特に規定されないが、好ましくは100,000本以下が好ましく、80,000本以下がより好ましい。単糸本数が、100,000本を超えると成形品表面の外観品位が劣るため好ましくない。
【0020】
溶融混練時に使用する束状強化繊維(A-2)の形態としては、溶融混練装置に添加できる形態であれば制限はなく、予め裁断されているチョップドストランドや破砕繊維、連続長繊維等が挙げられ、生産性の観点からチョップドストランドが好ましく利用できる。チョップドストランドとしては、繊維強化樹脂成形物を粉砕し、マトリックス樹脂を熱分解して得られるリサイクルチョップドストランドであってもよい。リサイクルチョップドストランドを得る方法としては、公知の製法により得ることができる。例えば、繊維強化樹脂成形物を破砕および分級を施した廃片を、金属バット上に均一に広げ、電気マッフル炉に入れて、炉内に窒素ガスを導入しながら、処理温度を所定温度に保って熱処理を行う。その後同様に、炉内に空気を導入しながら、処理温度を所定温度に保って、熱処理を行うことで、リサイクルチョップドストランドを得ることができる。
【0021】
またさらに、熱処理工程における空気雰囲気下での熱処理温度は300℃~700℃ が好ましい。空気雰囲気下熱処理温度が700℃を超えると、後述する樹脂成分(D)が完全になくなり、強化繊維のみの状態になり、強化繊維束(束状強化繊維(A-2))の収束性がなくなり、束状強化繊維として残存できなくなるため、繊維折損が増加し、力学特性や寸法精度が劣るため好ましくない。逆に熱処理温度が300℃未満になると、樹脂成分(D)が多くなり、マトリックス樹脂としての靭性低下を招いてしまい、力学特性が劣るため好ましくない。
【0022】
また、最終回の熱処理を空気雰囲気中にて実施することが好ましい。初回に窒素ガス雰囲気下700℃で2時間熱処理すると、樹脂成分(D)が7重量部以上となる。不活性な窒素ガス雰囲気下では、2時間を超えて、熱処理しても、樹脂成分(D)は変化しない。最終の熱処理を活性な空気雰囲気下で行うことで、所望の樹脂成分(D)を持ったリサイクルチョップドストランドを得ることができる。
【0023】
本発明においては、繊維強化樹脂成形物を破砕したものを用いることができるが、破砕する場合は、その後の加工性を考慮すると、粉砕後の最大長は20mm以下に破砕するのが好ましい。このような繊維強化樹脂成形物の破砕機としては、せん断式破砕機、衝撃式破砕機、切断式破砕機、圧縮式破砕機が適用できる。どの破砕機を使用しても問題なく、組み合わせることも可能である。また、破砕品の分級機としては、振動ふるい機、ジャイロ式ふるい機、遠心式ふるい機が適用できる。破砕機の破砕能力および破砕物の形態に合わせて使用するのが好ましい。
【0024】
本発明で用いられる強化繊維(A-1)および束状強化繊維(A-2)の種類は、特に限定されるものでないが、繊維状の形状を有するいずれの充填材も使用することができる。具体的には、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、ワラステナイト、アルミナシリケートなどの繊維状、ウィスカー状充填材、金属(ニッケル、銅、コバルト、銀、アルミニウム、鉄及びこれらの合金等)で被覆された非金属繊維(ガラス繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、炭素繊維等)等が挙げられる。前記短繊維状充填材中、PAN系やピッチ系の炭素繊維が好ましい例として挙げられ、特に好ましい例はPAN系炭素繊維である。
【0025】
本発明の強化繊維(A-1)と束状強化繊維(A-2)の含有量は、強化繊維(A)100重量部に対して、強化繊維(A-1)を50~99重量部、束状強化繊維(A-2)を1~50重量部含むことが好ましい。前記強化繊維(A-1)の含有量が50重量部未満であると成形品の力学特性および寸法安定性が劣るため好ましくない。また、強化繊維(A-1)の含有量が99重量部を超えると射出成形時の流動性が劣るため好ましくない。強化繊維(A-1)の含有量は60~95重量部がより好ましく、70~90重量部がさらに好ましい。前記束状強化繊維(A-2)の含有量が1重量部未満であると成形品の力学特性および寸法精度が劣るため好ましくない。前記束状強化繊維(A-2)の含有量が50重量部を超えると力学特性が劣るため好ましくない。
【0026】
[熱可塑性樹脂(B)]
本発明の成形材料は、熱可塑性樹脂(B)を強化繊維(A)および熱可塑性樹脂(B)の合計100重量部に対して、70~99重量部含有する。
【0027】
本発明において熱可塑性樹脂(B)は、成形温度(溶融温度)が200~450℃であるものが好ましく、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ハロゲン化ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリールスルホン樹脂、ポリアリールケトン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアリールエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイドスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられ、これらはいずれも、電気絶縁体に相当する。これらを2種以上用いることもできる。
【0028】
前記熱可塑性樹脂(B)の中でも、軽量、かつ、力学特性や成形性のバランスに優れるポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂およびポリアリーレンスルフィド樹脂がより好ましい。
【0029】
ここで言うポリオレフィン樹脂とは、無変性のものも、変性されたものも含まれる。例えば、無変性のポリプロピレン樹脂は、具体的には、プロピレンの単独重合体またはプロピレンと少なくとも1種のα-オレフィン、共役ジエン、非共役ジエンなどとの共重合体である。α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4ジメチル-1-ヘキセン、1-ノネン、1-オクテン、1-ヘプテン、1-ヘキセン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン等のプロピレンを除く炭素数2~12のα-オレフィンなどが挙げられる。共役ジエン、非共役ジエンとしては、例えば、ブタジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,5-ヘキサジエン等が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。無変性ポリプロピレン樹脂の骨格構造としては、プロピレンの単独重合体、プロピレンと前記その他の単量体のランダムあるいはブロック共重合体、またはプロピレンと他の熱可塑性単量体とのランダムあるいはブロック共重合体等を挙げることができる。例えば、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体などが好適なものとして挙げられる。プロピレンの単独重合体は成形品の剛性をより向上させる観点から好ましく、プロピレンと前記その他の単量体のランダムあるいはブロック共重合体は成形品の衝撃強度をより向上させる観点から好ましい。
【0030】
また、変性ポリプロピレン樹脂としては、酸変性ポリプロピレン樹脂が好ましく、重合体鎖に結合したカルボン酸および/またはその塩の基を有するポリプロピレン樹脂がより好ましい。上記酸変性ポリプロピレン樹脂は種々の方法で得ることができ、例えば、ポリプロピレン樹脂に、中和されているか、中和されていないカルボン酸基を有する単量体、および/または、ケン化されているか、ケン化されていないカルボン酸エステルを有する単量体を、グラフト重合することにより得ることができる。
【0031】
ここで、中和されているか、中和されていないカルボン酸基を有する単量体、または、ケン化されているか、ケン化されていないカルボン酸エステル基を有する単量体としては、例えば、エチレン系不飽和カルボン酸、その無水物、これらのエステル化物などが挙げられる。さらに、オレフィン以外の不飽和ビニル基を有する化合物なども挙げられる。
【0032】
エチレン系不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸などが例示され、その無水物としては、ナジック酸TM(エンドシス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸)、無水マレイン酸、無水シトラコン酸などが例示できる。
【0033】
エチレン系不飽和カルボン酸のエステル化物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウロイル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類などが挙げられる。
【0034】
オレフィン以外の不飽和ビニル基を有する単量体としては、ビニルイソシアナート、イソプロペニルイソシアナート等のイソシアナート基含有ビニル類、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン等の芳香族ビニル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド等のアミド基含有ビニル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ソーダ、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、モノ(2-メタクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2-アクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート等の不飽和リン酸類等が挙げられる。
【0035】
これらを2種以上用いることもできる。また、これらの中でも、エチレン系不飽和カルボン酸無水物類が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
【0036】
ここで、成形品の曲げ強度および引張強度を向上させるため、無変性ポリプロピレン樹脂と変性ポリプロピレン樹脂を共に用いることが好ましく、特に難燃性や力学特性のバランスの観点から、無変性ポリプロピレン樹脂と変性ポリプロピレン樹脂の重量比が95/5~75/25となるように用いることが好ましい。より好ましくは95/5~80/20、さらに好ましくは90/10~80/20である。
【0037】
また、ポリアミド樹脂は、アミノ酸、ラクタム、あるいはジアミンとジカルボン酸を主たる原料とする樹脂である。その主要原料の代表例としては、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε-カプロラクタム、ω-ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂環族ジアミン、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0038】
本発明においては、耐熱性や強度に優れるという点から、200℃以上の融点を有するポリアミド樹脂が特に有用である。その具体的な例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリデカメチレンデカミド(ナイロン1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン1012)、ポリドデカメチレンドデカミド(ナイロン1212)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン6T/6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(2-メチルペンタメチレン)テレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)およびこれらの共重合体などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12およびナイロン9Tがより好ましい。
【0039】
これらポリアミド樹脂の重合度には特に制限がなく、98%濃硫酸25mlにポリアミド樹脂0.25gを溶解した溶液の25℃で測定した相対粘度が1.5~5.0の範囲が好ましく、特に2.0~3.5の範囲のポリアミド樹脂がより好ましい。
【0040】
また、ポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。2種以上の二価フェノールまたは2種以上のカーボネート前駆体を用いて得られる共重合体であってもよい。反応方法の一例として、界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。かかるポリカーボネート樹脂はそれ自体公知であり、例えば、特開2002-129027号公報に記載のポリカーボネート樹脂を使用できる。
【0041】
二価フェノールとしては、例えば、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)アルカン(ビスフェノールAなど)、2,2-ビス{(4-ヒドロキシ-3-メチル)フェニル}プロパン、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、ビスフェノールAが好ましく、耐衝撃特性により優れたポリカーボネート樹脂を得ることができる。一方、ビスフェノールAと他の二価フェノールを用いて得られる共重合体は、高耐熱性または低吸水率の点で優れている。
【0042】
カーボネート前駆体としては、例えば、カルボニルハライド、炭酸ジエステルまたはハロホルメートなどが使用され、具体的には、ホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメートなどが挙げられる。
【0043】
上記二価フェノールとカーボネート前駆体からポリカーボネート樹脂を製造するにあたっては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化を防止する酸化防止剤などを使用してもよい。
【0044】
また、本発明におけるポリカーボネート樹脂には、三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂、芳香族または脂肪族(脂環族を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂、二官能性アルコール(脂環族を含む)を共重合した共重合ポリカーボネート樹脂、並びにかかる二官能性カルボン酸および二官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネート樹脂を含む。これらのポリカーボネート樹脂も公知である。また、これらのポリカーボネート樹脂を2種以上用いてもよい。
【0045】
ポリカーボネート樹脂の分子量は特定されないが、粘度平均分子量が10,000~50,000のものが好ましい。粘度平均分子量が10,000以上であれば、成形品の強度をより向上させることができる。15,000以上がより好ましく、18,000以上がさらに好ましい。一方、粘度平均分子量が50,000以下であれば、成形加工性が向上する。40,000以下がより好ましく、30,000以下がさらに好ましい。ポリカーボネート樹脂を2種以上用いる場合、少なくとも1種の粘度平均分子量が上記範囲にあることが好ましい。この場合、他のポリカーボネート樹脂として、粘度平均分子量が50,000を超える、好ましくは80,000を超えるポリカーボネート樹脂を用いることが好ましい。かかるポリカーボネート樹脂は、エントロピー弾性が高く、ガスアシスト成形等を併用する場合に有利となる他、高いエントロピー弾性に由来する特性(ドリップ防止特性、ドローダウン特性、およびジェッティング改良などの溶融特性を改良する特性)を発揮する。
【0046】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は、塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液から20℃で求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-40.83
c=0.7
【0047】
本発明において、ポリアリーレンスルフィド樹脂としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリフェニレンスルフィドスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィドケトン樹脂、これらのランダムまたはブロック共重合体などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。中でもポリフェニレンスルフィド樹脂が特に好ましく使用される。
【0048】
ポリアリーレンスルフィド樹脂は、例えば、特公昭45-3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法、特公昭52-12240号公報や特開昭61-7332号公報に記載される比較的分子量の大きな重合体を得る方法など、任意の方法によって製造することができる。
【0049】
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂を、空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水、酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化などの種々の処理を施してもよい。
【0050】
ポリアリーレンスルフィド樹脂の溶融粘度は、310℃、剪断速度1000/秒の条件下で80Pa・s以下であることが好ましく、20Pa・s以下であることがより好ましい。下限については特に制限はないが、5Pa・s以上であることが好ましい。溶融粘度の異なる2種以上のポリアリーレンスルフィド樹脂を併用してもよい。なお、溶融粘度は、キャピログラフ(東洋精機(株)社製)装置を用い、ダイス長10mm、ダイス孔直径0.5~1.0mmの条件により測定することができる。
【0051】
ポリアリーレンスルフィド樹脂として、東レ(株)製“トレリナ”(登録商標)、DIC(株)製“DIC.PPS”(登録商標)、ポリプラスチックス(株)製“ジュラファイド”(登録商標)などとして上市されているポリフェニレンスルフィド樹脂を用いることもできる。
【0052】
本発明の成形材料は、例えば、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(X)と繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(Y)を含む。繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(X)は、前記強化繊維(A-1)と熱可塑性樹脂(B-1)から構成されており、強化繊維(A―1)は、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(X)の長手方向に揃っていることが好ましい。なお、前記熱可塑性樹脂(B-1)は、前記熱可塑性樹脂(B)と同種であってもよい。また、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(X)の長さは取扱性の観点から、成形材料は3~15mmが好ましく、より好ましくは5~10mmである。かかる長さの長繊維ペレットとすることで汎用性の高い射出成形用のペレットとすることができ、射出成形時の流動性、取扱性の向上および成形品中の強化繊維長さを長くできることによって成形品の力学特性を十分に高めることができる。
【0053】
また、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(X)に含まれる強化繊維(A-1)は、熱可塑性樹脂(B)とは異なる化合物が付着した状態の複合体となっていてもよい。前記複合体は、強化繊維(A-1)の各単繊維間に樹脂が満たされている状態の複合体を指し、すなわち、化合物の海に、強化繊維(A-1)が島のように分散している状態の複合体である。強化繊維(A-1)は化合物によって完全に含浸されていることが望ましいが、強化繊維(A-1)と化合物からなる複合体にはある程度のボイドが存在してもよい。かかる複合体におけるボイド率は0~40%の範囲が好ましい。より好ましくは、0~20%以下である。ボイド率がかかる範囲であると、含浸・繊維分散促進の効果に優れる。ボイド率は、複合体の部分をASTM D2734(1997)試験法により測定する。また、被覆の形態には、特に制限はないが、例えば、ストランド状の複合体の周囲の一部あるいは全てを熱可塑性樹脂(B)が被覆する形態が挙げられる。かかる形態の場合、ストランド状の複合体の周囲の50%以上が被覆される形態が好ましく、さらに好ましくは、ストランド状の複合体の周囲の80%以上が被覆される形態であり、最も好ましくは、ストランド状の複合体の周囲の全てが熱可塑性樹脂(B)で被覆される形態である。熱可塑性樹脂(B)が複合体を被覆することによって、成形材料の取扱性が向上する。複合体と熱可塑性樹脂(B)が接着していれば、複合体と熱可塑性樹脂(B)の境界の状態には、特に制限はないが、複合体と熱可塑性樹脂(B)の境界付近で部分的に熱可塑性樹脂(B)が複合体の一部に入り込み、複合体中の化合物と相溶しているような状態、あるいは強化繊維(A-1)に含浸しているような状態となることが好ましい。かかる状態であれば、被覆した熱可塑性樹脂(B)が複合体から剥離しにくくなり、取扱性の良い成形材料を得ることができ、成形時のフィードが安定し均一な可塑化を達成することができ、優れた流動性が発現することができる。
【0054】
図1~2は、本発明の成形材料の軸心方向断面の形状を模式的に表したものであり、図3~5は、本発明の成形材料の直交方向断面の形状を模式的に表したものである。
【0055】
成形材料の断面の形状は、図に示されたものに限定されないが、好ましくは軸心方向断面である図1に示されるように、強化繊維(A-1)1が芯材となり熱可塑性樹脂(B)2で層状に挟まれて配置されている構成が好ましい。
【0056】
また透視斜視図として示した図6、8に示されるように、強化繊維(A-1)1は芯構造となり、熱可塑性樹脂(B)2は鞘構造となる。成形材料は、前記熱可塑性樹脂(B)が、強化繊維(A-1)の周囲を被覆した芯鞘構造である構成が好ましい。このような構造の成形材料とすることで成形材料を成形したときに成形品中に強化繊維束を長く残存させることができ、本発明の効果である力学特性を高めることができる。さらに複数の強化繊維(A-1)を熱可塑性樹脂(B)が被覆するように配置された多芯鞘構造であってもよく、この場合、強化繊維(A)の数は2本以上、6本以下が好ましい。
【0057】
成形材料の取扱性の点から、複合体と熱可塑性樹脂(B)は成形が行われるまでは分離せず、熱可塑性樹脂(B)が複合体を被覆した形態を保っていることが重要である。化合物は低分子量であることから、比較的脆く破砕しやすい固体である場合が多い。このため、熱可塑性樹脂(B)を、複合体を保護するように配置し、成形までの材料の運搬、取り扱い時の衝撃、擦過などにより、化合物が破砕されて飛散したりしないようにすることが望ましい。
【0058】
繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(Y)は、束状強化繊維(A-2)と熱可塑性樹脂(B-2)から構成されている。繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(Y)は、溶融混練によってペレット化されていてもよい(例えば図7図8に示すような束状強化繊維(A-2)3を含む形態)。なお、前記熱可塑性樹脂(B-1)は、前記熱可塑性樹脂(B)と同種であってもよい。
【0059】
前記繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(X)と(Y)は、ドライブレンドして、成形材料混合物としてもよい。この場合、成形品中における強化繊維(A)の含有量を容易に調整することができる。ここで、ドライブレンドとは、溶融混練とは異なり、複数の材料を樹脂成分が溶融しない温度で撹拌・混合し、実質的に均一な状態とすることを指し、主に射出成形や押出成形など、ペレット形状の成形材料を用いる場合に好ましく用いられる。
【0060】
本発明の成形材料は、強化繊維(A-1)と束状強化繊維(A-2)および熱可塑性樹脂(B)を含む芯鞘構造であることが好ましい。具体的には、前記芯鞘構造の芯構造が強化繊維(A-1)を含み、かつ強化繊維(A-1)が成形材料の長手方向に揃っており、また前記芯鞘構造の鞘構造が、束状強化繊維(A-2)と熱可塑性樹脂(B)を含む繊維強化樹脂組成物(C)であることが好ましい。さらに前記強化繊維(A-1)は、前記繊維強化熱可塑性樹脂組成物(C)が被覆された形態であることが好ましい(例えば図8)。
【0061】
本発明の成形材料においては、強化繊維(A-1)の各単繊維間に化合物(E)が満たされている状態とすることで、成形材料を成形する際、強化繊維の分散性を向上させることができる。
【0062】
上記化合物(E)は熱可塑性樹脂(B)よりも溶融粘度が低いことが好ましい。化合物(E)の溶融粘度が熱可塑性樹脂(B)よりも低いことにより、成形材料を成形する際、化合物(E)の流動性が高く、強化繊維(A-1)の熱可塑性樹脂(B)内への分散効果をより向上させることができる。また、化合物(E)は、熱可塑性樹脂(B)との親和性が高いものが好ましい。熱可塑性樹脂(B)と親和性が高い含浸樹脂を選択することにより、成形材料の製造時や成形時に、熱可塑性樹脂(B)と効率良く相溶するため、強化繊維の分散性をさらに向上させることができる。
【0063】
上記化合物(E)としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、テルペン樹脂および環状ポリフェニレンスルフィドからなる群より選択される樹脂であることが好ましい。化合物(E)を強化繊維(A-1)に予め含浸させることで、成形材料の成形の際、強化繊維の分散性を向上させることができるので好ましく用いられる。
【0064】
化合物(E)の数平均分子量は、200~5000が好ましい。数平均分子量が200以上であれば、成形品の曲げ強度および引張強度をより向上させることができる。数平均分子量は1000以上がより好ましい。また、数平均分子量が5,000以下であれば、化合物の粘度が適度に低いことから、強化繊維(A)への含浸性に優れ、成形品中における強化繊維の分散性をより向上させることができる。数平均分子量は3,000以下がより好ましい。なお、かかる化合物の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
【0065】
成形材料100重量部に対し、化合物(E)は0.1~20重量部であることが好ましく、より好ましくは、3~10重量部である。かかる範囲とすることで、成形性と取扱性に優れた成形材料が得られる。
【0066】
[樹脂成分(D)]
本発明の束状強化繊維(A-2)は、繊維束表面に樹脂成分(D)が付着していることが好ましい。
【0067】
樹脂成分(D)は、束状強化繊維(A-2)100重量部に対して、7重量部以上含まれていることが好ましい。前記樹脂成分(D)が7重量部未満の場合、束状強化繊維(A-2)の収束性が低下し、例えば射出成形時に繊維折損が増加する原因となり力学特性の低下するため好ましくない。8重量部以上がより好ましく、9重量部がさらに好ましい。上限については制限がないが、20重量部以下が好ましく、17重量部以下がより好ましく、15重量部以下がさらに好ましい。
【0068】
前記樹脂成分(D)は、熱硬化性樹脂であることが好ましい。樹脂成分(D)を熱硬化樹脂にすることで、マトリックス樹脂である熱可塑性樹脂(B)や(B-2)と溶融混練などを行うときに樹脂成分(D)が溶融して収束性が低下することを抑制できるため好ましい。
【0069】
<成形品>
本発明の繊維強化樹脂成形品は、強化繊維(A’)と熱可塑性樹脂(B)を含む成形品であって、前記(A’)および(B)の合計100重量部に対して、強化繊維(A’)を1~30重量部、熱可塑性樹脂(B)を70~99重量部含む成形品である。
【0070】
[成形品に含まれる強化繊維]
成形品に含まれる強化繊維(A’)の重量平均繊維長Lw(A’)は0.1~2.9mmである。より好ましくは、0.3~2.5mmである。さらに好ましくは0.5~2.0mmである。強化繊維(A’)の重量平均繊維長を0.1mm以上とすることで、成形品の力学特性を十分に発現することができる。一方、強化繊維の重量平均繊維長を2.9mm以下とすることで、成形時の流動性を向上させることができ、成形品の外観不良を抑制できる。
【0071】
ここで、本発明における「重量平均繊維長」とは、重量平均分子量の算出方法を繊維長の算出に適用し、単純に数平均を取るのではなく、繊維長の寄与を考慮した下記の式から算出される重量平均繊維長を指す。ただし、下記の式は、強化繊維(A’)の繊維径および密度が一定の場合に適用される。
重量平均繊維長=Σ(Mi×Ni)/Σ(Mi×Ni)
Mi:繊維長(mm)
Ni:繊維長Miの強化繊維の個数
【0072】
上記重量平均繊維長の測定は、次の方法により行うことができる。ホットステージ付き光学顕微鏡を用い、成形品から適宜試験片を切り出し、用いた熱可塑性樹脂(B)の溶融温度に合わせ、150~350℃で適宜設定したホットステージの上にガラス板間に挟んだ状態で加熱し、フィルム状にして均一分散させ、熱可塑性樹脂(B)が溶融した状態で、光学顕微鏡(50~200倍)にて観察する。無作為に選んだ1000本の強化繊維(A’)の繊維長を計測して、上記式から重量平均繊維長Lw(A’)を算出する。または、成形品から切り出した試験片を熱可塑性樹脂(B)が溶解する溶剤中へ投入し、適宜加熱処理を加え、強化繊維(A’)が均一に分散した溶液を作製する。その後、その溶液を濾過して濾紙上に分散した強化繊維(A’)を光学顕微鏡(50~200倍)にて観察する。無作為に選んだ1000本の強化繊維(A’)の繊維長を計測して、上記式から重量平均繊維長(LwA’)を算出する。また、このとき用いる濾紙としては、アドバンテック社製の定量濾紙(型番:No.5C)などが挙げられる。
【0073】
強化繊維(A’)の種類については、特に制限されず、成形材料の強化繊維(A)の説明で述べた強化繊維を例示することができる。また、好ましい強化繊維の種類や組合せも同様であり、その好ましい理由も同様である。
【0074】
前記強化繊維(A’)は、前記(A)および(B)の100重量部に対して、1~30重量部であることが好ましい。より好ましくは、5~25重量部である。強化繊維が1重量部未満では、得られる成形品の力学特性が不十分となる場合があり、30重量部を超えると成形品の外観が不良となる場合がある。
【0075】
また、強化繊維(A’)は、0.5~2.9mmの長さをもつ単糸10本以上から構成される束状強化繊維(A-2’)を含んでいることが好ましい。束状強化繊維(A-2’)を含むことの効果は、成形材料の束状強化繊維(A-2)の説明で述べた理由と同様である。
【0076】
束状強化繊維(A-2’)の重量平均繊維長を0.5mm以上とすることで、成形品の力学特性を十分に発現することができる。一方、束状強化繊維(A-2’)の重量平均繊維長を2.9mm以下とすることで、成形時の流動性を向上させることができ、成形品の外観不良を抑制できる。より好ましくは、0.3~2.5mmである。さらに好ましくは0.5~2.0mmである。
【0077】
本発明における前記強化繊維(A’)は、0.3~1.0mmの繊維長を有する強化繊維の割合が40%以上であることが好ましい。強化繊維(A‘)の繊維長割合は、成形品から取り出した強化繊維(A’)の本数を400本計測することした分布から算出することができる。0.3~1.0mmの繊維長を有する強化繊維の割合が40%以上とすることで、成形品中に含まれる強化繊維(A’)の繊維長を長くすることができるため成形品の力学特性および寸法安定性が優れる。
【0078】
本発明の成形品は、束状強化繊維(A-2’)が、強化繊維(A’)100重量部に対して、1~50重量部含まれることが好ましい。前記束状強化繊維(A-2’)の含有量が1重量部未満であると成形品の力学特性および寸法精度が劣るため好ましくない。前記束状強化繊維(A-2’)の含有量が50重量部を超えると力学特性が劣るため好ましくない。
【0079】
本発明の成形品は、力学特性および寸法精度に優れる繊維強化熱可塑性樹脂成形品であり、本発明の成形材料からなる成形品の用途としては、電気・電子機器、家電機器や自動車の部品およびスポーツ用途における部品などに極めて有用である。電気・電子機器部品としては、テレビ、ビデオプレーヤー、DVDプレーヤー、カメラ、オーディオ等の筐体、コネクター、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、コンピューター関連部品等に代表される電子部品用途に適している。家電機器としては、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ、レーザーディスク(登録商標)、コンパクトディスク、DVD等の音声映像機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品等が挙げられる。また、光学機器、精密機械関連部品としては、オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、双眼鏡、カメラ、時計等が挙げられる。自動車用部品、車両関連部品等としては、ドアパッド、ピラー、コンソールボックス、各種モーターハウジング、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアパネル、ルーフパネル、フードパネル、トランクリッド、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプベゼル、ドアハンドル、ドアモール、リアフィニッシャー、ワイパー等が挙げられる。また、本発明の組成物は、スポーツ用品としても好適であり、ゴルフクラブやシャフト、グリップ、ゴルフボール等のゴルフ関連用品、テニスラケットやテニスボール、バトミントンラケットやそのガットおよびバドミントンシャトル等のラケットスポーツ関連用品、アメリカンフットボールや野球、ソフトボール等のマスク、ヘルメット、胸当て、肘当て、膝当て等のスポーツ用身体保護用品、スポーツシューズの底材等のシューズ関連用品、釣り竿、リール、ルアー等の釣り具関連用品、サーフィン等のサマースポーツ関連用品、スキー、スノーボード等のウィンタースポーツ関連用品、その他インドアおよびアウトドアスポーツ関連用品等に好適に使用される
【実施例
【0080】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。まず、本実施例で用いる各種特性の評価方法について説明する。
【0081】
(1)重量平均繊維長
成形品から切り出した試験片を各実施例、比較例で用いた熱可塑性樹脂(B)が溶解する溶剤中に投入し、適宜加熱処理を加え、強化繊維(A)が均一に分散した溶液を得た。その後、アドバンテック社製の定量濾紙(No.5C)を用いて、溶液を濾過して濾紙上に分散した強化繊維(A)を光学顕微鏡(50~200倍)にて観察した。無作為に選んだ1000本の強化繊維(A)の繊維長を計測して、下記式から重量平均繊維長(Lw)を算出した。
平均繊維長=Σ(Mi×Ni)/Σ(Mi×Ni)
Mi:繊維長(mm)
Ni:繊維長Miの繊維の個数
【0082】
(2)成形品のシャルピー衝撃強度測定
各実施例および比較例により得られたISO型ダンベル試験片の平行部を切り出し、株式会社東京試験機製C1-4-01型試験機を用い、ISO179に準拠してVノッチ付きシャルピー衝撃試験を実施し、衝撃強度(kJ/cm)を算出した。
【0083】
(3)成形品の曲げ弾性率の測定
成形材料を射出成形し得られたISO型ダンベル試験片について、ISO178(1993)に従い曲げ特性を測定した。3点曲げ試験冶具(圧子半径5mm)を用いて支点距離を64mmに設定し、試験速度2mm/分の試験条件にて曲げ弾性率を測定した。試験機として、“インストロン(登録商標)”万能試験機5566型(インストロン社製)を用いた。
【0084】
(4)成形品の寸法評価(ソリ量の評価)
各実施例および比較例により得られた、80mm×80mm×1mm厚の試験片について、該試験片側面からみた時の該試験片中央部の高さ(t1)と側面から見た端部の高さ(t2)の差(t2-t1)を評価した。試験片1枚につき測定は3回行い、その平均値を各実施例および比較例の評価に使用した。以下の基準で判定を行い、A、Bを合格とした。
A:(t2-t1)=3mm未満
B:(t2-t1)=5mm未満
C:(t2-t1)=5mm以上
【0085】
(5)流動性の評価(スパイラルフロー長)
成形材料を射出成形機にて、幅10mm、2mmtの金型を用い、実施例に示す温度条件、射出速度100mm/sec、射出圧力80MPaで成形した際の流動長を測定した。流動長は20ショットの平均の値とする。その平均値を各実施例および比較例の評価に使用した。以下の基準で判定を行い、A、Bを合格とした。
A:100mm以上
B:50mm以上
C:50mm未満
【0086】
参考例1
強化繊維(A-1)(炭素繊維(A-1))の作製
ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体から紡糸、焼成処理、表面酸化処理を行い、総単糸数24,000本、単繊維径7μm、単位長さ当たりの質量1.6g/m、比重1.8g/cm、表面酸素濃度比[O/C]0.2の連続炭素繊維を得た。この連続炭素繊維のストランド引張強度は4,880MPa、ストランド引張弾性率は225GPaであった。続いて、多官能性化合物としてグリセロールポリグリシジルエーテルを2重量%になるように水に溶解させたサイジング剤母液を調製し、浸漬法により炭素繊維にサイジング剤を付与し、230℃で乾燥を行った。こうして得られた炭素繊維のサイジング剤付着量は1.0重量%であった。
【0087】
参考例2
束状強化繊維(A-2)-(1)の作製
破砕および分級を施した廃CFRP(CFRP:炭素繊維強化プラスチック)片200gを、金属バット上に均一に広げ、内容積5 9リットルの、電気マッフル炉に入れて、炉内に窒素ガスを導入しながら、処理温度を所定温度(400℃)に保って、処理時間1時間で熱処理を行った。その後同様に、炉内に空気を導入しながら、処理度を所定温度(300℃)に保って、処理時間1時間で熱処理を行うことで、リサイクル炭素繊維チョップド糸を得た。得られた樹脂成分(D)を測定したところ熱硬化性樹脂が10重量部付着していた。
【0088】
参考例3
束状強化繊維(A-2)-(2)の作製
破砕および分級を施した廃CFRP片200gを、金属バット上に均一に広げ、内容積5 9リットルの、電気マッフル炉に入れて、炉内に窒素ガスを導入しながら、処理温度を所定温度(500℃)に保って、処理時間2時間で熱処理を行った。その後同様に、炉内に空気を導入しながら、処理温度を所定温度(300℃)に保って、処理時間2時間で熱処理を行うことで、リサイクル炭素繊維チョップド糸を得た。得られた樹脂成分(D)を測定したところ熱硬化性樹脂が5重量部付着していた。
【0089】
参考例4
ポリフェニレンスルフィド(B-2)の作製
撹拌機付きの20リットルオートクレーブに、47質量%の水硫化ナトリウム水溶液2383g(20.0モル)、水酸化ナトリウム(純度96質量%)848g(20.4モル)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)3271g(33モル)、酢酸ナトリウム541g(6.6モル)、及びイオン交換水3000gを仕込み、常圧で窒素を通じながら225℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水4200gおよびNMP80gを留出したのち、反応容器を150℃に冷却した。仕込み水流化ナトリウム1モル当たりの硫化水素の飛散量は0.018モルであった。次に、p-ジクロロベンゼン(p-DCB)2940g(20モル)、NMP2620g(26.2モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、400rpmで撹拌しながら、227℃まで0.8℃/分の速度で昇温し、その後270℃まで0.6℃/分の速度で昇温し270℃で170分保持した。その後180℃まで0.4℃/分の速度で冷却し、その後室温近傍まで急冷した。内容物を取り出し、10リットルのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を20リットルの温水で数回洗浄、濾別し、ポリフェニレンスルフィド(B-1)を得た。これを、80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。
【0090】
<束状強化繊維(A-2)>
(炭素繊維(A-2)-(3))
炭素繊維“トレカ”カットファイバーTV14-006(東レ株式会社製)を使用した。
【0091】
<熱可塑性樹脂(B)>
(B-1)
ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製、「“パンライト”(登録商標)L-1225L」)を用いた。
(B-2)
参考例4で作製したポリフェニレンスルフィド樹脂を用いた。
(B-3)
ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J137)とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”(登録商標)QE840)を重量比85/15でペレットブレンドしたものを用いた。
(B-4)
ポリアミド610樹脂(ナイロン610樹脂「“アミラン”(登録商標)CM2001」)を用いた。
【0092】
<化合物(E)>
(E-1)
エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)社製、“jER”828)を用いた。
(E-2)
テルペン系樹脂(ヤスハラケミカル(株)社製、“クリアロンM105”)を用いた
(E-3)
テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル(株)社製、“YSポリスターN125”)を用いた。
【0093】
(実施例1)
(株)日本製鋼所製TEX-30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に電線樹脂被覆法用のコーティングダイを設置した 長繊維強化樹脂ペレット製造装置を使用し、押出機シリンダー温度を230℃に設定し、上記に示したポリカーボネート樹脂(B-1)をメインホッパーから供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練した。250℃にて加熱溶融させた化合物(E-1)を、(A)、(B)の合計100質量部に対し、6質量部となるように吐出量を調整した。その後、(F-1)を吐出し、炭素繊維(A-1)からなる繊維束に含浸付与した後、溶融したポリカーボネート樹脂(B-1)を吐出するダイス口(直径3mm)に化合物(E-1)が付与された炭素繊維(A-1)の繊維束を供給して、炭素繊維(A-1)の周囲をポリカーボネート樹脂(B-1)が被覆するように連続的に配置した 。この時の繊維束内部断面は、炭素繊維(A-1)の少なくとも一部が、ポリカーボネート樹脂(B-1)に接していた。得られたストランドを冷却後、カッターでペレット長7mmに切断し、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(X)とした。この時、(A-1)、(B-1)の合計100質量部に対し、炭素繊維(A-1)が30質量部となるように、引取速度を調整した。得られた繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(X)の炭素繊維(A-1)の長さと、ペレット長さは実質的に同じであり、かつ炭素繊維束が成形材料の軸心方向に平行に並列されていた。
【0094】
次に、別の2軸押出機(日本製鋼所製TEX30α)主ホッパーに熱可塑性樹脂(B-1)を供給後、束状強化繊維(A-2)-(1)をサイドフィーダーから溶融樹脂中に供給し、スクリュー回転数を200rpmに設定した。ダイから吐出されたストランドを水中にて冷却、ストランドカッターにより長さ3.0mm長にカットしてペレット化を実施し、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(Y-1)ペレットを得た。この時、(A-2)、(B-1)の合計100質量部に対し、束状強化繊維(A-2)-(1)が30質量部となるように、束状強化繊維(A-2)-(2)投入量を調整した。同様にして、(A-2)、(B-1)の合計100質量部に対し、束状強化繊維(A-2)-(1)が10質量部となる繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(Y-2)ペレットおよび(A-2)、(B-1)の合計100質量部に対し、束状強化繊維(A-2)-(1)が5質量部となる繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(Y-3)ペレットを得た。
【0095】
こうして得られた繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(X)および(Y-1)を表1に示した割合でドライブレンドし、中間原料となる混合体とし、射出成形機((株)日本製鋼所製J110AD)を用いて、射出時間:2秒、背圧力5MPa、保圧力:40MPa、保圧時間:10秒、シリンダー温度:260℃、金型温度:80℃の条件で射出成形することにより、成形品としてのISO型ダンベル試験片、80mm×80mm×1mm厚のソリ量評価の試験片作製およびスパイラルフロー長を測定した。表1の(A-1)、(A-2)(B)および化合物(E)の組成比は、ドライブレンドの割合で調整した。ここで、シリンダー温度とは、射出成形機の成形材料を加熱溶融する部分の温度を示し、金型温度とは、所定の形状にするための樹脂を注入する金型の温度を示す。得られた試験片(成形品)を、温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間静置後に特性評価に供した。前述の方法により評価した評価結果をまとめて表1に示した。
【0096】
(実施例2~5、11および12、比較例1~4)
表1、表2記載の各成分の比率とした以外は、上記実施例1と同様にして成形材料および成形品片を得た。
【0097】
(実施例6)
繊維強化熱可塑性樹脂成形材料(Y)を作製する際の2軸押出機スクリュー回転数を500rpmに設定した以外は、上記実施例1と同様にして成形材料および試験片を得た。評価結果はまとめて表1に記した。
【0098】
(実施例7)
組成比または用いる樹脂種、化合物種を表1に記載のように変更し、シリンダー温度を320℃、金型温度を130℃に設定した以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表1に記した。
【0099】
(実施例8)
組成比または用いる樹脂種、化合物種を表1に記載のように変更し、シリンダー温度を220℃、金型温度を60℃に設定した以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表1に記した。
【0100】
(実施例9)
組成比または用いる樹脂種、化合物種を表1に記載のように変更し、シリンダー温度を270℃、金型温度を60℃に設定した以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表1に記した。
【0101】
(実施例10)
(株)日本製鋼所製TEX-30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線樹脂被覆法用 のコーティングダイを設置した 長繊維強化樹脂ペレット製造装置を使用し、押出機シリンダー温度を230℃に設定し、上記に示した束状強化繊維(A-2)-(1)とポリカーボネート樹脂(B-1)をあわせてメインホッパーから供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練し繊維強化樹脂組成物(C-1)とした。250℃にて加熱溶融させた化合物(E-1)を、(A)、(B)の合計100質量部に対し、6質量部となるように吐出量を調整した。その後、(E-1)を吐出し、炭素繊維(A-1)からなる繊維束に含浸付与した後、溶融した繊維強化樹脂組成物(C-1)を吐出するダイス口(直径3mm)に化合物(E-1)が付与された炭素繊維(A-1)の繊維束を供給して、炭素繊維(A-1)の周囲を繊維強化樹脂組成物(C-1)が被覆するように連続的に配置した 。この時の繊維束内部断面は、炭素繊維(A-1)の少なくとも一部が、繊維強化樹脂組成物(C-1)に接していた。得られたストランドを冷却後、カッターでペレット長7mmに切断し、複合型長繊維ペレットとした。この時、(A-1)、(B-1)の合計100質量部に対し、炭素繊維(A-1)が20質量部、(A-2)が10重量部となるように、束状強化繊維(A-2)-(1)の投入量および引取速度を調整した。得られた複合型長繊維ペレットの炭素繊維(A-1)の長さと、ペレット長さは実質的に同じであり、かつ炭素繊維束が成形材料の軸心方向に平行に並列されていた。それ以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表1に記した。
【0102】
実施例1~6、11および12は、力学特性、寸法精度および流動性に優れる結果であった。実施例7~9は、樹脂種、化合物種を変えた場合でも同様に力学特性、寸法精度および流動性に優れる結果であった。実施例10は、複合型長繊維ペレットとした場合であっても同様に力学特性、寸法精度および流動性に優れる結果であった。
【0103】
一方で、比較例1は、束状強化繊維(A-2)が含まれなかったため、流動性に劣る結果であった。比較例2は、強化繊維束(A-1)が含まれなかったため、成形品の衝撃強度が劣る結果であった。比較例3は、束状強化繊維束(A-2)に付着した樹脂成分(D)の量が少なかったため、成形品中で束状にならず、成形品の力学特性、寸法精度に劣る結果であり、さらに単糸で分散していたため、射出成形時の繊維接触が多くなり、樹脂流動を阻害したため、流動性も劣る結果であった。比較例4は、一般的なチョップド糸を使用したため、成形品中で束状にならず、成形品の力学特性、寸法精度に劣る結果であり、さらに単糸で分散していたため、射出成形時の繊維接触が多くなり、樹脂流動を阻害したため、流動性も劣る結果であった。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【符号の説明】
【0106】
1 強化繊維(A-1)
2 熱可塑性樹脂(B)
3 束状強化繊維(A-2)
【要約】
強化繊維(A)と熱可塑性樹脂(B)を含む繊維強化樹脂成形材料であって、該繊維強化樹脂成形材料が、(A)および(B)の合計100重量部に対して、強化繊維(A)を1~30重量部、熱可塑性樹脂(B)を70~99重量部含み、強化繊維(A)は、強化繊維(A-1)と束状強化繊維(A-2)を含み、強化繊維(A-1)は長さ3~15mmであり、かつ成形材料の長手方向に揃っており、強化繊維(A-1)の長さは成形材料の長手方向の長さと同じであり、束状強化繊維(A-2)は、長さ0.5~2.9mmの10本以上の単糸から構成されている、繊維強化樹脂成形材料。優れた流動性と力学特性および寸法精度を実現可能な繊維強化樹脂成形材料と繊維強化樹脂成形品を提供できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8