(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】層状ケイ酸塩の製造方法、及びシリカナノシートの製造等におけるその応用
(51)【国際特許分類】
C01B 33/38 20060101AFI20231212BHJP
C01B 33/113 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C01B33/38
C01B33/113 Z
(21)【出願番号】P 2023539070
(86)(22)【出願日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 JP2023005176
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2022053848
(32)【優先日】2022-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 佳昊
(72)【発明者】
【氏名】北川 裕丈
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/188934(WO,A1)
【文献】特開平07-196313(JP,A)
【文献】特開2013-040066(JP,A)
【文献】特開2000-334881(JP,A)
【文献】特表2017-512132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20-39/54
C01B 33/00-33/193
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)、及び(b)工程を含む層状ケイ酸塩の製造方法
であって:
(a)下記式(1)で表わされるアニオン成分と下記式(2)で表わされるカチオン成分を含み、且つ、該アニオン成分のSiO
2換算のモル数に対する水のモル数の比(H
2O/SiO
2)が0.7~30である、かご型ケイ酸塩を提供する工程;
【化1】
【化2】
(式(2)中、Rは炭素原子数2~9のアルキル基を示す。)
(b)前記(a)工程により得られたかご型ケイ酸塩をオートクレーブ処理する工程
;
前記(a)工程において提供されるかご型ケイ酸塩中の、前記アニオン成分のSiO
2
換算のモル数に対する、式(2)で表わされるカチオン成分の第4級アンモニウム換算のモル数の比(第4級アンモニウム/SiO
2
)が0.7~1.5であり、
前記(b)工程におけるオートクレーブ処理が、耐圧容器内で80℃以上300℃未満の温度で行われる、
上記層状ケイ酸塩の製造方法。
【請求項2】
前記(a)工程において提供されるかご型ケイ酸塩中の、前記アニオン成分のSiO
2換算のモル数に対する水のモル数の比(H
2O/SiO
2)が1.5~15.0である、請求項1に記載の層状ケイ酸塩の製造方法。
【請求項3】
前記(a)工程において、前記かご型ケイ酸塩を真空下又は減圧下にて20℃以上80℃未満の温度で30分以上10時間以下保持し、水分を除去する、請求項1又は請求項2に記載の層状ケイ酸塩の製造方法。
【請求項4】
前記(a)工程の前に、下記(c)工程を含む請求項1又は請求項2に記載の層状ケイ酸塩の製造方法:
(c)活性ケイ酸と第4級アンモニウムとを混合し、
10℃以下の温度において混合溶液からかご型ケイ酸塩を晶析させる工程。
【請求項5】
前記活性ケイ酸が、無水ケイ酸アルカリを溶解して得られたケイ酸アルカリ溶液から陽イオンを除去することにより得られたものである請求項
4に記載の層状ケイ酸塩の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の製造方法で得られた層状ケイ酸塩
と水性媒体とを接触させる工程を含む、シリカナノシートの製造方法。
【請求項7】
水性媒体100質量部に対して層状ケイ酸を0.1質量部~15質量部の割合で接触させる請求項
6に記載のシリカナノシートの製造方法。
【請求項8】
前
記水性媒体が、水、有機溶媒又はこれら混合物である請求項
6に記載のシリカナノシートの製造方法
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層状ケイ酸塩の製造方法、及び当該製造方法により得られた層状ケイ酸塩の用途に関し、より具体的には従来技術よりも簡便に短時間で層状ケイ酸塩を得ることができる製造方法、及び得られた層状ケイ酸塩のシリカナノシートの製造等への応用等に関する。
【背景技術】
【0002】
層状ケイ酸塩は、シリカ層間にカチオンイオンが介在した規則的な構造を有する化合物であることから、触媒や吸着材、ゼオライトの前駆体などとして注目されている。
例えば特許文献1には、熱分解シリカとジメチルジプロピルアンモニウムヒドロキシドとを混合し、そこにケイ酸塩の種晶となるゼオライトを添加し、オートクレーブ容器において150℃で84~252時間保持することで、RUB-39構造の層状ケイ酸塩を得る方法が開示されている。
また、特許文献2には、NH4F水溶液をテトラエトキシシランのエタノール溶液に滴下し、500℃で5日間加熱することで含水ゲルを合成し、これをジエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド溶液に添加してオートクレーブ容器において140℃で48時間保持することでRUB-56構造の層状ケイ酸塩を得る方法が開示されている。
更に、例えば非特許文献1には、テトラエトキシシランとテトラメチルアンモニウムヒドロキシドとを混合し、得られた結晶をオートクレーブ容器において150℃で7日間保持することによりRUB-15構造の層状ケイ酸塩を得る方法が開示されている。
また、非特許文献2には、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシドに水酸化アルミニウムを溶解し、1,4-ビスメチルピロリジニウムブタンジブロミドとコロイダルシリカを添加し、さらに水酸化リチウムを添加して100℃で5~7か月間保持することでULS-1構造の層状ケイ酸塩を得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2009-511409号公報
【文献】特表2021-514342号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】Takahiko Moteki et al.,Chemistry of materials,2011,vol.23,p.3564-3570
【文献】Mark A.Miller et al.,Microporous and Mesoporous Materials,2015,vol.202,p.250-258
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来技術による層状ケイ酸塩の製造方法では、層状に成長させるためにゼオライト等の種結晶を使用しても層状ケイ酸塩の合成に長期間を要することや、含水ゲルといった特殊な原料を使用する場合には、その合成にも長時間を要する、等の制約があった。
また、Si源にコロイダルシリカを用いた場合も層状ケイ酸塩を合成するために長時間を要していた。
本発明は、上記従来技術の制約や問題点に鑑みてなされたものであり、簡便に短時間で層状ケイ酸塩を製造できる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、かご型ケイ酸塩を原料に用い、該かご型ケイ酸塩の水分量を所定範囲内とすることで、簡便に短時間のオートクレーブ工程で層状ケイ酸塩が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1]
下記(a)、及び(b)工程を含む層状ケイ酸塩の製造方法である。
(a)下記式(1)で表わされるアニオン成分と下記式(2)で表わされるカチオン成分を含み、且つ、該アニオン成分のSiO
2換算のモル数に対する水のモル数の比(H
2O/SiO
2)が0.7~30である、かご型ケイ酸塩を提供する工程
【化1】
【化2】
(b)前記(a)工程により得られたかご型ケイ酸塩をオートクレーブ処理する工程
【0007】
以下、[2]から[11]は、いずれも本発明の一態様又は好ましい一実施形態である。
[2]
前記(a)工程において提供されるかご型ケイ酸塩中の、前記アニオン成分のSiO2換算のモル数に対する水のモル数の比(H2O/SiO2)が1.5~15.0である、[1]に記載の層状ケイ酸塩の製造方法。
[3]
前記(a)工程において、前記かご型ケイ酸塩を真空下又は減圧下にて20℃以上80℃未満の温度で30分以上10時間以下保持し、水分を除去する、[1]又は[2]に記載の層状ケイ酸塩の製造方法。
[4]
前記(a)工程において提供されるかご型ケイ酸塩中の、前記アニオン成分のSiO2換算のモル数に対する、式(2)で表わされるカチオン成分の第4級アンモニウム換算のモル数の比(第4級アンモニウム/SiO2)が0.7~1.5である、[1]乃至[3]のいずれか一項に記載の層状ケイ酸塩の製造方法。
[5]
前記(b)工程におけるオートクレーブ処理が、耐圧容器内で80℃以上300℃未満の温度で行われる、[1]乃至[4]のいずれか1項に記載の層状ケイ酸塩の製造方法。
[6]
前記(a)工程の前に、下記(c)工程を含む[1]乃至[5]のいずれか一項に記載の層状ケイ酸塩の製造方法:
(c)活性ケイ酸と第4級アンモニウムとを混合し、混合溶液からかご型ケイ酸塩を晶析させる工程。
[7]
前記活性ケイ酸が、無水ケイ酸アルカリを溶解して得られたケイ酸アルカリ溶液から陽イオンを除去することにより得られたものである[6]に記載の層状ケイ酸塩の製造方法。
[8]
[1]乃至[7]のいずれか一項に記載の製造方法で得られた層状ケイ酸塩と水性媒体とを接触させる工程を含む、シリカナノシートの製造方法。
[9]
水性媒体100質量部に対して層状ケイ酸を0.1質量部~15質量部の割合で接触させる[8]に記載のシリカナノシートの製造方法。
[10]
前記水性媒体が、水、有機溶媒又はこれら混合物である[8]又は[9]に記載のシリカナノシートの製造方法。
[11]
[1]乃至[7]のいずれか一項に記載の製造方法で得られた層状ケイ酸と水性媒体とを接触させる工程を含む、シリカナノシート分散液の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の層状ケイ酸塩の製造方法によれば、かご型ケイ酸塩を原料に、上記従来技術の制約や問題点を解消し、簡便に短時間で層状ケイ酸塩を製造することができるという、実用的に高い価値を有する顕著な技術的効果を実現することができる。
また、本発明の一形態の製造方法により得られた層状ケイ酸塩は、水性媒体と接触することでシリカナノシートを得ることができるので、触媒や吸着材等の、層状ケイ酸塩としての各種用途に加えて、シリカナノシートの原料等の用途においても、高い技術的価値を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1-1】それぞれ、本発明の一実施例の層状ケイ酸塩の走査型電子顕微鏡画像である。
【
図1-2】それぞれ、本発明の一実施例の層状ケイ酸塩の走査型電子顕微鏡画像である。
【
図2】それぞれ、本発明の一実施例の層状ケイ酸塩又は一比較例の粉末X線回折パターンである。
【
図3-1】それぞれ、本発明の一実施例の層状ケイ酸塩から得られたシリカナノシートの透過型電子顕微鏡画像である。
【
図3-2】それぞれ、本発明の一実施例の層状ケイ酸塩から得られたシリカナノシートの透過型電子顕微鏡画像である。
【
図4-1】本発明の一実施例の層状ケイ酸塩から得られたシリカナノシートの原子間力顕微鏡(AFM)画像及びプロファイルである。
【
図4-2】本発明の一実施例の層状ケイ酸塩から得られたシリカナノシートの原子間力顕微鏡(AFM)画像及びプロファイルである。
【
図4-3】本発明の一実施例の層状ケイ酸塩から得られたシリカナノシートの原子間力顕微鏡(AFM)画像及びプロファイルである。
【
図4-4】本発明の一実施例の層状ケイ酸塩から得られたシリカナノシートの原子間力顕微鏡(AFM)画像及びプロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、下記(a)、及び(b)工程を含む層状ケイ酸塩の製造方法である。
(a)下記式(1)で表わされるアニオン成分と下記式(2)で表わされるカチオン成分を含み、且つ、該アニオン成分のSiO
2換算のモル数に対する水のモル数の比(H
2O/SiO
2)が0.7~30である、かご型ケイ酸塩を提供する工程
【化3】
【化4】
(b)前記(a)工程により得られたかご型ケイ酸塩をオートクレーブ処理する工程
【0011】
上述の様に本発明の層状ケイ酸塩の製造方法は、特定のかご型ケイ酸塩を提供する(a)工程と、上記(a)工程により得られたかご型ケイ酸塩をオートクレーブ処理する(b)工程とを含む。したがって本発明の層状ケイ酸塩の製造方法は、上記(a)工程及び(b)工程のみで構成されていてもよく、上記(a)工程及び(b)工程に加えてそれ以外の工程、例えば後述の(c)活性ケイ酸と第4級アンモニウムとを混合し、混合溶液からかご型ケイ酸塩を晶析させる工程、を有していてもよい。
上記(a)工程及び(b)工程以外の工程は、上記(a)工程及び(b)工程の前に行われるものであってもよいし、上記(a)工程及び(b)工程の後に行われるものであってもよいし、上記(a)工程と(b)工程との間に行われるものであってもよい。例えば、上述の(c)活性ケイ酸と第4級アンモニウムとを混合し、混合溶液からかご型ケイ酸塩を晶析させる工程は、上記(a)工程及び(b)工程の前に行われる。
【0012】
<(a)工程>
前記(a)工程で提供されるかご型ケイ酸塩は、下記式(1)で表わされるアニオン成分と、下記(2)で表わされるカチオン成分を含み、且つ、該アニオン成分のSiO
2換算のモル数に対する水のモル数の比(H
2O/SiO
2)が0.7~30である、かご型ケイ酸塩である。
【化5】
【化6】
【0013】
前記式(1)で表わされるアニオン成分は、シロキサン(Si-O-Si)結合を基本骨格としたかご型ケイ酸イオンである。
前記式(2)で表わされるカチオン成分は第4級アンモニウムイオンであり、例えば、エチルトリメチルアンモニウムイオン、プロピルトリメチルアンモニウムイオン、ブチルトリメチルアンモニウムイオン、ペンチルトリメチルアンモニウムイオン、へキシルトリメチルアンモニウムイオン、ヘプチルトリメチルアンモニウムイオン、オクチルトリメチルアンモニウムイオン、ノニルトリメチルアンモニウムイオン等が挙げられる。特に、エチルトリメチルアンモニウムイオン、プロピルトリメチルアンモニウムイオン、ブチルトリメチルアンモニウムイオン、ペンチルトリメチルアンモニウムイオン、へキシルトリメチルアンモニウムイオン、ヘプチルトリメチルアンモニウムイオン、及びオクチルトリメチルアンモニウムイオンが好ましい。
また、ケイ酸塩化合物がかご型であることの同定は、固体
29Si-NMR測定により行うことができる。具体的には、固体
29Si-NMR測定にてCross Polarization Magic Angle Spinning(CP-MAS)法によりSiの結合状態を評価することで構造を同定することができる。かご型ケイ酸塩を構成するSi原子は、上記式(1)及び下記式(3)に示すように、一つのOH基、及び3つのO原子と結合しているQ3構造を取っている。CP-MAS法による固体
29Si-NMR測定では、Q3構造を示すピークが-92ppm~-100ppm付近に現れることから、得られるピークが全て-92ppm~-100ppm付近のQ3構造に由来するものであれば、生成物はかご型構造を有していると同定することができる。
【化7】
【0014】
前記かご型ケイ酸塩中の前記アニオン成分のSiO2換算のモル数に対する水のモル数の比(H2O/SiO2)は、該かご型ケイ酸塩に含まれる水分(吸着水あるいは水和水)及びSiO2濃度を測定することで算出することができる。
前記水分(質量)は、前記かご型ケイ酸塩に含まれる第4級アンモニウム量、及び二酸化ケイ素量、を定量し、かご型ケイ酸塩の質量からそれぞれの質量を差し引いたものを水の質量とすることで算出でき、これから水のモル数を計算する。
前記第4級アンモニウム量は、元素分析装置を用いて窒素量を定量し、その定量値に基づき第4級アンモニウム量に換算することで求めることができる。
前記二酸化ケイ素量は、焼成法により求めることができる。
より具体的には例えば本願実施例に記載の方法により測定することができる。
【0015】
(a)工程においては、含有される前記アニオン成分のSiO2換算のモル数に対する水のモル数の比(H2O/SiO2)が0.7~30のかご型ケイ酸塩が提供される。
(a)工程において提供されるかご型ケイ酸塩の(H2O/SiO2)比が0.7~30であることにより、後述の(b)工程の寄与も併せて、簡便に短時間で層状ケイ酸塩を製造することができ、コスト削減できる等の、顕著な技術的効果を実現することができる。
(a)工程において提供されるかご型ケイ酸塩の(H2O/SiO2)比は、1.5から15.0であることが好ましく、1.5から12.0であることが特に好ましい。
【0016】
(H2O/SiO2)比が0.7~30のかご型ケイ酸塩を提供する手段には特に制限は無く、(H2O/SiO2)が0.7~30のかご型ケイ酸塩を合成又は入手して、そのまま使用してもよく、合成、入手等したかご型ケイ酸塩の水分量を調整して、その(H2O/SiO2)を0.7~30の範囲内としてもよい。工業的に安定して(a)工程を実施する等の観点からは、かご型ケイ酸塩の水分量を調整して、その(H2O/SiO2)を0.7~30の範囲内とすることが好ましい。
かご型ケイ酸塩は公知の方法により合成することができる。例えば、テトラエトキシシランを第4級アンモニウム存在下で加水分解することで合成することができる。また後述の様に、(c)活性ケイ酸と第4級アンモニウムとを混合し、混合溶液からかご型ケイ酸塩を晶析させる工程により、かご型ケイ酸塩を合成してもよい。
かご型ケイ酸塩の水分量を調整する方法にも特に制限は無いが、例えば合成、入手等したかご型ケイ酸塩から水分を除去することで、かご型ケイ酸塩の水分量を調整することができる。
【0017】
かご型ケイ酸塩からの水分の除去は、真空下又は減圧下にて20℃以上80℃未満の温度で行なうことができる。例えば、真空度(5.0×10-2Pa~500Pa)の真空乾燥機にて、所定の温度で保持することで水分の除去を行なうことができる。特に、効率的に水分除去を行うためには、5.0×10-2Pa~100Paにて行なうことが好ましい。保持温度は、20℃以上80℃未満で行なうことができ、特に40℃以上70℃未満で行なうことが好ましい。一定の温度で保持しても良く、2段階、あるいは3段階で温度を変更して保持しても良い。
保持時間は、30分以上10時間以下で行なうことができる。特に、1時間以上6時間以下が好ましい。30分以上の乾燥で適切に水分を除去することができるので、30分以上の保持時間が好ましい。10時間を越えて保持することもできるが、水分量が一定となりそれ以上保持した際の除去効果が低くなるので、10時間以下の保持時間が効率的である。
【0018】
前記(a)工程において提供されるかご型ケイ酸塩中の、SiO2換算の該アニオン成分のモル数に対する、式(2)で表わされるカチオン成分の第4級アンモニウム換算のモル数の比(第4級アンモニウム/SiO2)は、0.7~1.5であることが好ましい。
(第4級アンモニウム/SiO2)比が、0.7~1.5であるかご型ケイ酸塩は、製造が比較的容易であり、特に後述のアルコールの生成を抑制できる製造方を適用する際に有利である等の点で、好ましい。また、層状ケイ酸塩の製造にあたって層状形状が成長し易くなるので、この点からも(第4級アンモニウム/SiO2)比が、0.7~1.5であることが好ましい。
【0019】
かご型ケイ酸塩中の該アニオン成分のSiO2換算のモル数に対する第4級アンモニウム換算の式(2)で表わされるカチオン成分のモル数の比(第4級アンモニウム/SiO2)は、該かご型ケイ酸塩に含まれる第4級アンモニウム量及びSiO2濃度を測定することで算出することができる。
第4級アンモニウム量の測定方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、ガスクロマトグラフ法、イオンクロマトグラフ法、元素分析法などが挙げられる。より具体的には、例えば本願実施例に記載の方法によって測定することができる。
SiO2濃度の測定方法は、(H2O/SiO2)比の測定方法に関連して上記にて説明したとおりである。
かご型ケイ酸塩中の該アニオン成分のSiO2換算のモル数に対する第4級アンモニウム換算の式(2)で表わされるカチオン成分のモル数の比(第4級アンモニウム/SiO2)は、上述の様に0.7~1.5であることが好ましいが、特に0.8~1.3のものを用いることが好ましい。
【0020】
前記(a)工程においてかご型ケイ酸塩の水分を除去等することで、かご型ケイ酸塩中の該アニオン成分のSiO
2換算のモル数に対する水のモル数の比(H
2O/SiO
2)を一層詳細に調整するにより、(b)工程を経て異なる結晶構造を有する層状ケイ酸塩を得ることができる。
特に、かご型ケイ酸塩中の該アニオン成分のSiO
2換算のモル数に対する水のモル数の比(H
2O/SiO
2)が3.6以上7.0未満になるように水分を除去等することで、(b)工程を経てULS-1構造を有する層状ケイ酸塩を得ることができる。ULS-1構造を有する層状ケイ酸塩を得る観点からは、(H
2O/SiO
2)比は、3.6以上5.0未満であることが特に好ましい。
また、かご型ケイ酸塩中の該アニオン成分のSiO
2換算のモル数に対する水のモル数の比(H
2O/SiO
2)が1.5以上3.6未満もしくは5.0以上12.0未満になるように水分を除去等することで新規な結晶構造を有する層状ケイ酸塩を得ることができる。新規な結晶構造を有する層状ケイ酸塩を得る観点からは、(H
2O/SiO
2)比は、3.0以上3.6未満、もしくは8.5以上11.0未満であることが特に好ましい。
モル比(H
2O/SiO
2)が1.5以上3.6未満、もしくは5.0以上12.0未満であるときに得られる新規な結晶構造の層状ケイ酸塩(以下、「層状ケイ酸塩A」ともいう。)は、2θ=6.0°、7.7°、及び/又は8.7°、並びに18.0°付近に主たる回折ピークを有する粉末X線回折パターン(CuKα線)により特徴づけられ、より典型的には、
図2(a)、(b)及び(f)に表す粉末X線回折パターンを示す。
ここで、2θ=7.7°付近の回折ピーク、及び8.7°付近の回折ピークは、両方が観測される場合もそのいずれか一方のみが観測される場合もある。したがって、層状ケイ酸塩Aは、2θ=6.0°、7.7°、8.7°、及び18.0°付近に主たる回折ピークを有する粉末X線回折パターン(例えば
図2(a)及び(b)に表す粉末X線回折パターン)、2θ=6.0°、7.7°、及び18.0°付近に主たる回折ピークを有する粉末X線回折パターン、又は2θ=6.0°、8.7°、及び18.0°付近に主たる回折ピークを有する粉末X線回折パターン(例えば
図2(f)に表す粉末X線回折パターン)のいずれかによって特徴づけられる。
層状ケイ酸塩AのX線回折パターン(CuKα線)は、より一般的には下表記載の回折パターンによって特徴づけられる。
【表1】
【0021】
<(b)工程>
本発明の製造方法を構成する(b)工程においては、前記(a)工程により得られたかご型ケイ酸塩をオートクレーブ処理する。
前記(a)工程で得られたかご型ケイ酸塩をオートクレーブ処理する工程は、耐圧容器内の加圧加熱処理であればよく、その具体的な条件や操作に特に制限は無いが、例えば耐圧容器に該かご型ケイ酸塩を充填し、80℃以上300℃未満の温度で行なうことができる。また例えば、テフロン(登録商標)製のオートクレーブ容器にて、所定の温度で保持することができる。
一定の温度で保持してもよく、2段階、あるいは3段階で温度を変更して保持してもよい。本(b)工程を行うことにより、かご型ケイ酸塩を層状化合物へ成長させることができる。
【0022】
(b)工程における保持時間にも特に制限は無いが、例えば7日以上30日以下で行なうことができる。特に、10日以上21日以下が好ましい。10日以上であれば十分に成長した層状ケイ酸塩を得ることができるので、好ましい。また、30日を越えて保持することもできるが、21日以下とすることが効率的である。
【0023】
本発明の層状ケイ酸塩は、層間のカチオンイオンを介して単層のシリカ層が2層以上積層した層状構造を有するものである。該シリカ層は実質的にSiO2のみからなる層であり、後述するように本発明の一実施形態において製造されるシリカナノシートを指す。
前記層状ケイ酸塩の粒子形状は、通常薄片状(層状、平板状、板状、円盤状と呼ぶこともある)であり、走査型電子顕微鏡により観察することで、確認することができる。走査型電子顕微鏡での観察において、該層状ケイ酸塩は、単独の薄片状粒子として、及び/又は複数の薄片状粒子が集合した集合体として確認することできる。集合体の形状としては、例えば、花弁状として観察することができる。
また、前記層状ケイ酸塩の粒子径は、平均長径、及び最大長径に直行する幅を走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡により観察することで、確認することができる。平均長径は通常100nm~10μmであり、最大長径に直行する幅は通常平均50nm~10μmである。また、前記層状ケイ酸塩の厚さは原子間力顕微鏡で測定することができる。平均厚さは通常3nm~5μmである。
【0024】
層状ケイ酸塩の形成、及びその結晶構造は、上記(b)工程の生成物の粉末X線回折パターン(回折ピーク位置)から特定することができる。より具体的には、非特許文献2や本願実施例に記載の測定条件、解析方法を適用することができる。
層状構造であれば、粉末XRD測定により得られる回折パターンにおいて、底面間隔に由来するピークが2θ=6°付近に現れるので、この場合に層状構造であると確認することができる。
以上の様に、本発明において層状ケイ酸塩が形成されていることは、SEM又はTEMにて形状や粒子径を観察すること、粉末XRD測定により上記の回折パターンを有していることを確認すること、又はその結晶構造が上述のものであることを確認すること、により確認することができる。
【0025】
上述の様に、(a)工程で提供されるかご型ケイ酸塩中の該アニオン成分のSiO2換算のモル数に対する水のモル数の比(H2O/SiO2)を3.6以上7.0未満とすることで、(b)工程を経てULS-1構造を有する層状ケイ酸を得ることができる。ULS-1構造を有する層状ケイ酸の粉末X線パターンは、非特許文献2のFig.1等に記載のとおりである。特に、3.6以上5.0未満とすることで、ULS-1単相の層状ケイ酸塩を得ることができる。
同じく上述の様に、(a)工程で提供されるかご型ケイ酸塩中の該アニオン成分のSiO2換算のモル数に対する水のモル数の比(H2O/SiO2)を1.5以上3.6未満もしくは5.0以上12.0未満とすることで、水性媒体と接触させるだけで、後述するナノシートを生成可能な層状ケイ酸塩(層状ケイ酸塩A)を得ることができる。より収率を上げて得るためには8.5以上12.0未満が好ましい。
【0026】
(b)工程において形成された層状ケイ酸塩をオートクレーブから回収して使用するにあたっては、適宜、洗浄、乾燥、か焼、焼成等を行ってもよい。
一実施形態によれば、層状ケイ酸塩は、オートクレーブから回収した層状ケイ酸塩を含む懸濁液から少なくとも1工程で好適な方法により分離される。この分離は、例えば、ろ過、限外ろ過、ダイアフィルトレーション又は遠心分離法、又は、例えば噴霧乾燥及び噴霧造粒法によって達成することができる。噴霧乾燥又はろ過による分離が好ましい。オートクレーブから回収した懸濁液それ自体、該懸濁液を濃縮することにより得られた懸濁液を、例えば、噴霧法による分離にかけることができる。濃縮は、例えば、蒸発、例えば減圧下での蒸発、又はクロスフローろ過により実現することができる。同様に、オートクレーブから回収した懸濁液を2つの画分に分離し、2つの画分の1つに含まれる固体を、ろ過、限外ろ過、ダイアフィルトレーション、又は遠心分離法により分離し、任意の洗浄工程及び/又は乾燥工程の後に、懸濁液の他の画分において懸濁することによって濃縮することができる。分離及び乾燥法としての噴霧乾燥又は噴霧造粒乾燥、例えば、流動床噴霧造粒乾燥によって得られた噴霧材料は、固体及び/又は中空球を含むことができ、それぞれ実質的に球からなり得、例えば、5~500μm、又は5~300μmの範囲の直径を有する。スプレーノズルとしての噴霧の間、単一成分又は複数成分のノズルを用いることができる。ロータリーアトマイザーの使用も考えられる。用いたキャリアーガスの可能な吸気口の温度は、例えば、200~600℃の範囲、好ましくは225~550℃の範囲、更に好ましくは300~500℃の範囲である。キャリアーガスの排気口の温度は、例えば50~200℃の範囲である。キャリアーガスとして、空気、薄い空気、又は酸素含有量が10容量%以下、好ましくは5容量%以下、更に好ましくは5容量%未満、例えば2容量%以下の酸素-窒素混合ガスが挙げられる。噴霧法は、向流又は並流において実施することができる。
【0027】
分離に続いて、少なくとも1回の洗浄工程及び/又は少なくとも1回の乾燥工程があってもよく、少なくとも2回の洗浄工程がある場合、同一又は異なる洗浄剤又は洗浄剤の混合物を用いることが可能であり、少なくとも2回の乾燥工程がある場合、同一又は異なる乾燥温度を用いることが可能である。
ここで、乾燥温度は、好ましくは室温から150℃の範囲であり、更に好ましくは60~140℃、更に好ましくは80~130℃、更に好ましくは100~120℃の範囲である。
乾燥の時間は好ましくは、6~48時間、更に好ましくは、12~36時間の範囲である。
【0028】
(b)工程において形成された層状ケイ酸塩を水、有機溶媒、又はこれらの混合物等の洗浄剤で洗浄し、及び/又は、例えば室温から150℃の範囲の温度で、乾燥してもよい。
用いられる洗浄剤には特に制限はなく、層状ケイ酸塩の膨潤性を考慮して選択することができる。例えば、水、アルコール、ケトン例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール又はアセトン、又はそれらの2種以上の混合物であってもよい。例えば、2種以上のアルコール、例えばメタノール及びエタノール、又はメタノール及びプロパノール、又はエタノール及びプロパノール、又はメタノール及びエタノール及びプロパノール、又は水と、少なくとも1種のアルコールとの混合物、例えば、水及びメタノール、又は水及びエタノール、又は水及びプロパノール、又は水及びメタノール及びエタノール、又は水及びメタノール及びプロパノール、又は水及びエタノール及びプロパノール、又は水及びメタノール及びエタノール及びプロパノールが混合物として挙げられる。
層状ケイ酸塩A等の膨潤性のある層状ケイ酸塩の場合は、水で洗浄するとナノシートが生成する場合が有るので、アセトン等を用いることが好ましい。
ULS-1等の膨潤性のない層状ケイ酸塩の場合は水、アセトンをはじめとする各種洗浄剤をいずれも好ましく使用することができる。
【0029】
本発明の製造方法により得られた層状ケイ酸塩は、従来より層状ケイ酸塩が使用されている各種用途、例えば吸着剤、脱臭剤等の収着材料、イオン交換体、軟化剤、触媒等の担体、顔料、被覆材料、樹脂等の充填剤、化粧品添加剤、日用品添加剤、殺菌剤等において使用することができる。更に、層状ケイ酸塩を、シリカ等の酸化物によるインターカレーションや、層表面のシラノール基の修飾により、その層構造を変化させて被吸着物質に対する選択性等を制御したり耐熱性を向上させたりして、吸着材料、カラム材等の分離用材、撥水材料、撥油材料、排ガス浄化用等の触媒担体、充填材等にも使用することができる。
更に、本発明の製造方法により得られた層状ケイ酸塩は、シリカナノシートの原料としても好適である。本発明の製造方法の中でも、(a)工程おいて、SiO2換算の該アニオン成分のモル数に対する水のモル数の比(H2O/SiO2)が1.5以上3.6未満、若しくは5.0以上12.0未満であるかご型ケイ酸塩が提供される実施形態の製造方法により得られた層状ケイ酸塩は、シリカナノシートの原料として特に好適に使用することができる。
【0030】
<層状ケイ酸塩の膨潤力>
さらに、本発明の一実施形態で得られる上記の新規な層状ケイ酸塩は高い膨潤力を有する。
膨潤力(mL/g)は、透明で円筒状のガラス容器に所定量の層状ケイ酸塩の粉末、純水を添加し、室温にて24時間放置し、放置後に粉末が膨潤した見かけの体積を、仕込みの粉末の質量で割ることで評価することができる。膨潤力が10mL/g以上、特に20mL/g以上であれば高い膨潤力を有するものと評価できる。
上記の新規な層状ケイ酸塩は、通常20mL/g以上の膨潤力を有する。膨潤力が20mL/g以上であることにより、新規な層状ケイ酸塩は水のみで膨潤、剥離することが可能であり、後述のシリカナノシートの形成が容易である等の技術的効果を有する。
【0031】
<(c)工程>
また、本発明の製造方法は前記(a)工程の前に、(c)活性ケイ酸と第4級アンモニウムとを混合して混合溶液からかご型ケイ酸塩を晶析させる工程を含むことが好ましい。(c)工程により得たかご型ケイ酸塩を使用することで、(a)工程及び(b)工程を経て一層効率的に(短時間で)層状ケイ酸塩を製造することができる。
活性ケイ酸 は、ケイ酸イオン及び/又はケイ酸イオンモノマーを含有し、好ましくは主成分とするものである。テトラエトキシシランなどの加水分解性シラン化合物の加水分解により得られたもの、あるいは無水ケイ酸アルカリを溶解して得られたケイ酸アルカリ溶液の陽イオンの除去により得られたものも、本実施形態における活性ケイ酸に含まれる。
中でも、無水ケイ酸アルカリを溶解して得られたケイ酸アルカリ溶液の陽イオンを除去することにより得られた活性ケイ酸を使用することが、(c)工程におけるかご型ケイ酸塩の製造効率の向上やコストの改善を通じて、(c)工程から(a)工程を経て(b)工程に至る、層状ケイ酸塩の製造の全工程にわたる製造効率等を向上することができるので、特に好ましい。
【0032】
ケイ酸アルカリ溶液は、ケイ酸イオン及び/又はケイ酸イオンモノマーと、アルカリ金属イオンを含む水溶液である。具体的には、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムなどの水溶液が挙げられる。ケイ酸ナトリウムなどは公知の方法により得ることができる。例えばケイ酸ナトリウムは、二酸化ケイ素と炭酸ナトリウム又は水酸化ナトリウムを高温で融解することで得られ、得られたケイ酸ナトリウムを水とともにオートクレーブ処理すると粘性の高いケイ酸ナトリウム水溶液を得ることができる。この水溶液は水ガラスとも呼ばれる。
ケイ酸アルカリ溶液は市販品を用いることができ、例えば、株式会社トクヤマ、愛知珪曹工業株式会社、オリエンタルシリカコーポレーションなどより入手することができる。
【0033】
一般的に、ケイ酸アルカリ溶液はSiO2濃度として30~50質量%で市販されることがあるが、このまま(c)工程に用いても良いし、市販のケイ酸アルカリ溶液を水で希釈してSiO2濃度0.5質量%~10質量%の水溶液としてから使用することもできる。また、ケイ酸アルカリ溶液中のSiO2に対するM2O(Mはナトリウム、カリウム、リチウムなどを示す)のモル比(SiO2/M2O)には特に制限はない。
【0034】
ケイ酸アルカリ溶液を原料とした活性ケイ酸は前記ケイ酸アルカリ溶液に含まれる陽イオンを除去することで得られる。陽イオンを除去する方法には特に制限は無く、例えば公知の方法を使用することができる。例えば、ケイ酸ナトリウム水溶液とH型陽イオン交換樹脂とを接触させ、ナトリウムイオンを除去することができる。接触はバッチ式やカラム式で行うことができ、工業的にはイオン交換塔に陽イオン交換樹脂を充填し、ケイ酸アルカリ溶液を通液する方法を用いることができる。通液速度は空間速度(L/hr)で1~30とすることができ、温度は10~80℃にて行うことができる。陽イオン交換樹脂の例としては、スルホン酸型のH型強酸性陽イオン交換樹脂、又はカルボン酸型のH型弱酸性陽イオン交換樹脂が挙げられ、特に、スルホン酸型強酸性陽イオン交換樹脂をH型に調整して用いることが好ましい。
【0035】
スルホン酸型の強酸性陽イオン交換樹脂は、例えばオルガノ株式会社製、商品名アンバーライト(登録商標)IR-120Bが挙げられる。
また、通液時のケイ酸アルカリ溶液のSiO2濃度は0.5質量%~15質量%で行なうことができ、特に1質量%~10質量%で行なうことが好ましい。
【0036】
得られる活性ケイ酸の不純物を低減させることを目的に、ケイ酸アルカリ溶液の陽イオンを除去する前、あるいは除去後に、陰イオンを除去する工程を行ってもよい。また、ケイ酸アルカリ溶液の陽イオンを除去する前、あるいは除去後に限外ろ過装置を用いた洗浄工程を行っても良い。あるいは、ケイ酸アルカリ溶液の陽イオンを除去する前、あるいは除去後に、キレート剤、又はキレート樹脂を使用し、金属イオンを除去する工程を行ってもよい。
【0037】
第4級アンモニウムとしては、下記式(4)で表わされる化合物を用いることができる。
【化8】
【0038】
前記式(3)で表わされる第4級アンモニウムは、例えば、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、プロピルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ペンチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、へキシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ヘプチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、オクチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ノニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、などの水酸化物が挙げられる。
また、エチルトリメチルアンモニウムカーボネート、プロピルトリメチルアンモニウムカーボネート、ブチルトリメチルアンモニウムカーボネート、ペンチルトリメチルアンモニウムカーボネート、へキシルトリメチルアンモニウムカーボネート、ヘプチルトリメチルアンモニウムカーボネート、オクチルトリメチルアンモニウムカーボネート、ノニルトリメチルアンモニウムカーボネート、などの炭酸塩が挙げられる。
また、エチルトリメチルアンモニウムクロリド、プロピルトリメチルアンモニウムクロリド、ブチルトリメチルアンモニウムクロリド、ペンチルトリメチルアンモニウムクロリド、へキシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘプチルトリメチルアンモニウムクロリド、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、ノニルトリメチルアンモニウムクロリドなどの塩化物が挙げられる。
また、エチルトリメチルアンモニウムブロミド、プロピルトリメチルアンモニウムブロミド、ブチルトリメチルアンモニウムブロミド、ペンチルトリメチルアンモニウムブロミド、へキシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘプチルトリメチルアンモニウムブロミド、オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、ノニルトリメチルアンモニウムブロミドなどの臭化物が挙げられる。
特に、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、プロピルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ペンチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、へキシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ヘプチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、オクチルトリメチルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。
【0039】
(c)工程において混合される、活性ケイ酸のSiO2換算のモル数に対する第4級アンモニウムのモル数の比(第4級アンモニウム/SiO2)には特に制限は無いが、0.7~1.5となるように活性ケイ酸と、第4級アンモニウムとを混合することが好ましく、1.0~1.5となるように混合することが特に好ましい。
【0040】
また、前記(c)工程における混合溶液のSiO2換算濃度にも特に制限は無いが、0.01質量%~10質量%にすることが好ましく、1.0質量%~10質量%とすることが特に好ましい。
【0041】
前記(c)工程においては、10℃~80℃で30分~30時間、活性ケイ酸と第4級アンモニウムとの混合液を攪拌してもよい。特に、温度は15℃~40℃とすることが特に好ましい。前記攪拌時間は活性ケイ酸と第4級アンモニウムとの混合液が十分に攪拌されればよい。
【0042】
前記攪拌時間は好ましくは10時間以下、特に好ましくは5時間以下である。前記攪拌時間を30時間以下とすることで効率的にかご型ケイ酸塩を得ることができる。後述する晶析の前に混合液の濃縮することで前記活性ケイ酸のSiO2濃度を高める場合、前記攪拌時間を短縮することができる。
【0043】
上述の混合溶液からかご型ケイ酸塩を晶析させる。具体的には、例えば混合溶液を冷却し、かご型ケイ酸塩を晶析させることができる。晶析にあたっては、かご型ケイ酸塩の水性溶媒への溶解度の温度依存性を利用し、冷却によりかご型ケイ酸塩を結晶化させ、溶液から分離することができる。
【0044】
また、かご型ケイ酸塩を晶析させる前に、混合溶液を濃縮する工程を含んでもよい。前記濃縮は公知の方法にて行うことができる。例えば、エバポレーターを用い、減圧下にて溶媒を除去しながら混合溶液のSiO2濃度を高めることができる。前記濃縮後の混合液のSiO2濃度は1質量%~30質量%にすることができる。特にSiO2濃度は5質量%~20質量%にすることが好ましい。前記濃縮後の混合液のSiO2濃度を30質量%以下にすることで、かご型ケイ酸塩の晶析を促進することができる。また、混合溶液のSiO2濃度を高めることで前記攪拌時間を短縮することができる。
【0045】
また、かご型ケイ酸塩の晶析を促進させるために、既存のかご型ケイ酸塩などの種結晶を混合液に添加してもよい。前記種結晶は、混合液の冷却時、又は前記濃縮工程時に添加してもよい。
【0046】
晶析は、混合を行う温度より低い温度で、且つ、水性媒体が凍らない温度で保持することを含んでよい。前記温度は、例えば、水を媒体とした場合、0℃~10℃であってよい。特に0℃~5℃が好ましい。前記温度が0℃以上であることで、水性溶媒が凍ることを防ぐことができる。前記温度が10℃以下であることで、かご型ケイ酸塩の晶析を促進することができる。保持時間は、30分~24時間であってよい。保持時間は、好ましくは3時間~24時間である。保持時間が30分以上であることで、かご型ケイ酸塩を十分に晶析させることができる。保持時間が24時間以下であることで製造時間を短縮し効率的にかご型ケイ酸塩を得ることができる。
【0047】
かご型ケイ酸塩が晶析した後、かご型ケイ酸塩を含む混合溶液をろ過することにより、かご型ケイ酸塩を分離・回収することができる。ろ過は公知の方法にて行うことができる。ろ過の方法としては、例えば、1μmの保持粒子径を有する定量ろ紙に、該混合溶液を通液させ、かご型ケイ酸塩を分離・回収することが挙げられる。
【0048】
(c)工程で得られるかご型ケイ酸塩は、ケイ酸のSiO2換算のモル数に対する式(2)で表されるカチオン成分の第4級アンモニウム換算のモル数の比(第4級アンモニウム/SiO2)が0.7~1.5であることが好ましい。また、該アニオン成分のSiO2換算のモル数に対する水のモル数の比(H2O/SiO2)が0.7~30であることが好ましい。これらの好ましい条件、特に後者の条件を満たすことで、(c)工程で得られたかご型ケイ酸塩を、そのまま以後の工程で使用することができる。
【0049】
<シリカナノシート>
また、本発明の一実施形態では、前記(a)工程おいて、(水分の除去等により、)前記かご型ケイ酸塩中のSiO2換算の該アニオン成分のモル数に対する水のモル数の比(H2O/SiO2)を1.5以上3.6未満、若しくは5.0以上12.0未満とし、前記(b)工程においてオートクレーブ処理することで得られた層状ケイ酸塩と水性媒体とを接触させる工程を含むシリカナノシートの製造方法が提供される。
シリカナノシート とは、SiO2のみからなる単層の薄片状(層状、平板状、板状、円盤状と呼ぶこともある)の粒子のことであり、最大径が0.1μm~5μm、厚さが1nm~50nm、1nm~10nm、又は1nm~3nmのサイズを有する。該シリカナノシートの最大径の長さは透過型電子顕微鏡、あるいは走査型電子顕微鏡で観察し測定することができる。該シリカナノシートの厚さは原子間力顕微鏡で測定することができる。
【0050】
上記接触工程を行うことで、層状ケイ酸塩の一層乃至数層分のシリカ層が剥離し、シリカナノシートとなる。
従来技術によるシリカナノシートの製造においては一般的には剥離剤を必要とするが、本実施形態においては上記の特定の層状ケイ酸塩を用いることにより、このような剥離剤を要せず、シリカナノシートを得ることができる。
上記の特定の層状ケイ酸塩を用いることにより、剥離剤を要さずに、水性媒体と層状ケイ酸塩とを接触させるだけでシリカナノシートを得ることができるメカニズムは必ずしも明らかではないが、上記特定の層状ケイ酸塩((a)工程において提供されるかご型ケイ酸塩中のSiO2換算の該アニオン成分のモル数に対する水のモル数の比(H2O/SiO2)が1.5以上3.6未満、若しくは5.0以上12.0未満である製造方法によって製造された層状ケイ酸塩)が、上述の様に高い膨潤力を示す新規な結晶構造を有する層状ケイ酸塩であるところ、この高い膨潤力がシリカ層の間の剥離を生じ易くし得ることと何らかの関係が有ることが推定される。
【0051】
本実施形態における水性媒体と層状ケイ酸塩との接触割合には特に制限は無いが、水性媒体100質量部に対して、層状ケイ酸塩を0.1質量部~15質量部の割合で接触させることが好ましく、1質量部~10質量部の割合で接触させることが特に好ましい。
上記接触工程は、例えば、容器に所定量の水性媒体、及び層状ケイ酸塩を添加し、室温にて保持することで行うことができる。シリカナノシート生成の効率化を目的に、水性媒体の沸点以下の範囲で加熱してもよく、撹拌や、超音波等によるキャビテーション効果を利用してもよい。
水性媒体にも特に制限は無いが、水、有機溶媒又はこれらの混合物を好ましく用いることができる。有機溶媒としては、親水性有機溶媒が挙げられ、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコールを特に好ましく用いることができる。
【0052】
さらに、上記接触工程により得られたシリカナノシートは、水性媒体に対して良好は分散性を有しているため、シリカナノシート分散液として得ることができる。水性媒体に水を選択した場合には水分散液、有機溶媒を選択した場合には有機溶媒分散液としてシリカナノシート分散液を得ることができる。
【0053】
本実施形態の製造方法により得られたシリカナノシートは、従来よりシリカナノシートが使用されている各種用途、例えば、無機フィラー、コーティング材料、分離膜、ガスバリア膜等において、好ましく使用することができる。
【実施例】
【0054】
以下の実施例/比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はいかなる意味においてもこれらの実施例/比較例によって限定されるものではない。
【0055】
下記実施例/比較例においては、以下の方法にしたがって各種特性の測定、評価を行った。
(1)活性ケイ酸、及びかご型ケイ酸塩のSiO2濃度の定量
活性ケイ酸、及びかご型ケイ酸塩を1000℃で焼成し、得られた焼成残分の質量からSiO2濃度を算出した。
(2)かご型ケイ酸塩の構造の同定(CP-MAS法)
得られたケイ酸塩の粉末を、固体29Si-NMR装置AVANCE3500(Bruker製)にて、CP-MAS法にて測定した。かご型ケイ酸塩の同定は、Q3構造のSiに由来するシグナルが-92ppm~-100ppm付近のみに現れることを確認することにより行った。
(3)かご型ケイ酸塩の水分量の測定
得られたかご型ケイ酸塩に含まれる第4級アンモニウム量、及び二酸化ケイ素量(上記(1)のSiO2濃度)を定量し、かご型ケイ酸塩の質量からそれらを差し引いたものをかご型ケイ酸塩の水分量とした。
この水分量と、上記(1)で測定したかご型ケイ酸塩のSiO2濃度から、かご型ケイ酸塩中の該アニオン成分のSiO2換算のモル数に対する水のモル数の比(H2O/SiO2)を算出した。
(4)かご型ケイ酸塩の第4級アンモニウム量の測定
得られたかご型ケイ酸塩の粉末を、元素分析装置Perkin Elmer 2400 Series2 CHNS/O Analyzer((株式会社パーキンエルマージャパン社製)にて窒素量を定量し、その窒素量をもとに第4級アンモニウム量に換算した。
(5)層状ケイ酸塩の観察
走査型電子顕微鏡S-4300(株式会社日立ハイテク製)を用いて観察した。
(6)層状ケイ酸塩の層状構造の有無の確認、及び結晶構造の測定
粉末X線回折装置PINT-Ultima(株式会社リガク製)を用いてX線回折パターン(CuKα線)を測定し、これから結晶構造を同定した。また、2θ=6°付近にピークが認められる場合に層状構造を有するものと判断した。
(7)シリカナノシートの観察
透過型電子顕微鏡 JEM-1400Flash(日本電子株式会社製)を用いて観察した。シート状の粒子が認められたとき、シリカナノシートが生成していると判断した。
(8)シリカナノシートの厚さの測定
原子間力顕微鏡(AFM) Cypher VRS(Asylum research社製)を用いて観察した。プローブにはRTESPA-150を用いた。1cm角のSiウェハ(GlobalWafers Co., Ltd.社製)をJEOL製iON CLEANER(JIC-410)を用いて、グロー放電を3分間施すことにより親水化処理した。純水10mlに層状ケイ酸塩粉末を10mg添加して部分膨潤分散させ、12時間静置し、上澄みをAFM測定用シリカナノシート分散液とした。このシリカナノシートの分散液をSiウェハに滴下した後、ホットプレートで100℃にて乾燥後、マウンティングワックス(日本電子株式会社製、無水フタル酸:60~90質量%、エチレングリコール:10~40質量%)で台座に固定した。AFMにてばね定数は約6N/m、共振周波数は約120kHz、走査速度は1.5HzとしてSiウェハ上に塗布したシリカナノシートの厚さを観察した。
【0056】
[合成例1]かご型ケイ酸塩の合成
4号水ガラス(日本化学工業株式会社製、SiO2:Na2O:H2Oモル比は3.9:1:39.0、SiO2濃度は23.44質量%、Na2O濃度は6.3質量%)450.00gを3.6%に純水で希釈し、陽イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、アンバーライト120B)にて陽イオン交換することで活性ケイ酸3004.95g(SiO2収率:98%)を得た。得られた活性ケイ酸(SiO2濃度:3.4%)1764.71g(1.01mol)及びエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(セイケムジャパン合同会社製、濃度:20wt%)水溶液525.00g(1.00mol)を3Lナスフラスコに加え、室温で24hrプロペラ翼にて撹拌した。混合溶液をエバポレーターで全体質量の20%まで減圧濃縮した後、5℃で12hr静置することで、結晶を析出させた。結晶を含む混合溶液を、定量ろ紙5B(ADVANTEC製)を用いて吸引ろ過し、固液分離することで、かご型ケイ酸塩297.4g(SiO2濃度:16.20wt%、SiO2:ETMA+:H2Oモル比は1.0:0.9 :12.8)を回収した。また、生成物がかご型ケイ酸塩であることを固体29Si-NMR装置を用いたCP-MS法により確認した。
【0057】
[合成例2]かご型ケイ酸塩の合成
合成例1と同様の手順で得られた活性ケイ酸(SiO2濃度:3.4%)88.2g(0.05mol)及びセチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(東京化成工業株式会社製、濃度:10wt%)水溶液150.8g(0.05mol)を3Lナスフラスコに加え、室温で24hrプロペラ翼にて攪拌した。5℃で12hr静置することで、結晶を析出させた。結晶を含む混合溶液を、定量ろ紙5Bを用いて吸引ろ過し、固液分離することで、かご型ケイ酸塩14.2g(SiO2濃度:9.1wt%、SiO2:CTMA+:H2Oモル比は1.0:0.6:4.4)を回収した。また、生成物がかご型ケイ酸塩であることを溶液29Si-NMR装置を用いて確認した。
【0058】
(実施例1)
合成例1で得られたかご型ケイ酸塩40.0gを耐熱容器に入れ、真空乾燥機にて真空度(6.7×10
-2Pa)、60℃にて1時間乾燥することで、かご型ケイ酸塩の水分を除去し、前駆体1を作製した。また、この時のSiO
2:ETMA
+:H
2Oモル比は1.0:0.9:10.7であった。得られた前駆体1の2.0gをステンレス鋼(SUS304)製密閉容器に封入し、150℃で13日間静置加熱してオートクレーブ処理することで白色固体を得た。得られた白色固体をアセトンで洗浄し、吸引濾過にて余剰のアセトンを除去した後、真空乾燥機にて60℃にて真空乾燥し、白色粉体を得た。得られた白色粉体の粉末X線回折測定を行ったところ、層状化合物特有なピークが観測された(
図2(a))。また、走査型電子顕微鏡により観察したところ、複数の円盤状粒子の集合体が認められ、層状ケイ酸塩が生成したことが確認された(
図1-1(a))。
【0059】
(実施例2)
合成例1で得られたかご型ケイ酸塩の真空乾燥時間を2時間に変更したこと以外は、実施例1と同様の手順を行い、層状ケイ酸塩を作製した。また、このときの前駆体のSiO
2:ETMA
+:H
2Oモル比は1.0:0.9:8.8であった。
さらに、得られた白色粉体を、粉末X線回折測定を行ったところ、層状化合物特有なピークが観測された(
図2(b))。また、走査型電子顕微鏡により観察したところ、複数の円盤状粒子の集合体が認められ、層状ケイ酸塩が生成したことが確認された(
図1-1(b)) 。
【0060】
(実施例3)
合成例1で得られたかご型ケイ酸塩の真空乾燥時間を3時間に変更したこと以外は、実施例1と同様の手順を行い、層状ケイ酸塩を作製した。また、このときの前駆体のSiO
2:ETMA
+:H
2Oモル比は1.0:0.9:5.9であった。さらに、得られた白色粉体の粉末X線回折測定を行ったところ、層状化合物特有なピーク、及びUSL―1構造が観測された(
図2(c))。また、走査型電子顕微鏡により観察したところ、複数の円盤状粒子の集合体が認められ、層状ケイ酸塩が生成したことが確認された(
図1-1(c))。
【0061】
(実施例4)
合成例1で得られたかご型ケイ酸塩の真空乾燥時間を4時間に変更したこと以外は、実施例1と同様の手順を行い、層状ケイ酸塩を作製した。また、このときの前駆体のSiO
2:ETMA
+:H
2Oモル比は1.0:0.9:4.5であった。さらに、得られた白色粉体を、粉末X線回折測定を行ったところ、ULS-1構造をすることが分かった(
図2(d))。また、走査型電子顕微鏡により観察したところ、複数の円盤状粒子の集合体が認められ、層状ケイ酸塩が生成したことが確認された(
図1-2(d))。
【0062】
(実施例5)
合成例1で得られたかご型ケイ酸塩の真空乾燥時間を5時間に変更したこと以外は、実施例1と同様の手順を行い、層状ケイ酸塩を作製した。また、このときの前駆体のSiO
2:ETMA
+:H
2Oモル比は1.0:0.9:3.7であった。さらに、得られた白色粉体を、粉末X線回折測定を行ったところ、ULS-1構造をすることが分かった(
図2(e))。また、走査型電子顕微鏡により観察したところ、複数の円盤状粒子の集合体が認められ、層状ケイ酸塩が生成したことが確認された(
図1-2(e))。
【0063】
(実施例6)
合成例1で得られたかご型ケイ酸塩の真空乾燥時間を6時間に変更したこと以外は、実施例1と同様の手順を行い、層状ケイ酸塩を作製した。また、このときの前駆体のSiO
2:ETMA
+:H
2Oモル比は1.0:0.9:3.5であった。また得られた白色粉体の粉末X線回折測定を行ったところ、層状化合物特有なピークが観測された(
図2(f))。また、走査型電子顕微鏡により観察したところ、複数の円盤状粒子の集合体が認められ、層状ケイ酸塩が生成したことが確認された(
図1-2(f))。
【0064】
(層状ケイ酸塩の膨潤力の評価)
10mLのサンプル瓶に、実施例1乃至実施例6の層状ケイ酸塩の粉末0.1g、及び純水10mLを入れ、室温にて24時間放置した。放置後の層状ケイ酸塩の膨潤した見かけの体積を読み取り、見かけの体積を粉末の質量で割ったものを膨潤力(mL/g)とした。結果を表1に示す。
【0065】
(比較例1)
合成例1で得られたかご型ケイ酸塩に代えて合成例2で得られたかご型ケイ酸塩を使用したこと、及び真空乾燥を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、層状ケイ酸塩の作製を試みた。
得られた白色粉体の粉末X線回折測定を行ったところ、層状化合物特有なピークが観測できず、層状ケイ酸塩は生成しなかったと推定される(
図2(g))。
【0066】
(実施例7)
10mLのサンプル瓶に、実施例1で得られた層状ケイ酸塩0.1g、及び純水10g添加し、室温にて24時間放置した。このとき、純水100質量部に対して層状ケイ酸塩は1質量部であった。放置後の上澄み液の一部を採取し、透過型電子顕微鏡にて観察したところ、シリカナノシートが生成していることを確認した(
図3-1(a))。また、「シリカナノシートの厚さの測定」に記載した手順にて観察したところ、シリカナノシートの最大径は2.24μm、厚さは2.7nmであった(
図4-1)。
【0067】
(実施例8)
10mLのサンプル瓶に、実施例2で得られた層状ケイ酸塩0.1g、及び純水10g添加し、室温にて24時間放置した。このとき、純水100質量部に対して層状ケイ酸塩は1質量部であった。放置後の上澄み液の一部を採取し、透過型電子顕微鏡にて観察したところ、シリカナノシートが生成していることを確認した(
図3-1(b))。また、「シリカナノシートの厚さの測定」に記載した手順にて観察したところ、シリカナノシートの最大径は1.71μm、厚さは4.5nmであった(
図4-2)。
【0068】
(実施例9)
10mLのサンプル瓶に、実施例3で得られた層状ケイ酸塩0.1g、及び純水10g添加し、室温にて24時間放置した。このとき、純水100質量部に対して層状ケイ酸塩は1質量部であった。放置後の上澄み液の一部を採取し、透過型電子顕微鏡にて観察したところ、シリカナノシートが生成していることを確認した(
図3-2(c))。また、「シリカナノシートの厚さの測定」に記載した手順にて観察したところ、シリカナノシートの最大径は1.00μm、厚さは8.1nmであった(
図4-3)。
【0069】
(参考例1)
10mLのサンプル瓶に、実施例4で得られた層状ケイ酸塩0.1g、及び純水10g添加し、室温にて24時間放置した。このとき、純水100質量部に対して層状ケイ酸塩は1質量部であった。放置後の上澄み液の一部を採取し、透過型電子顕微鏡にて観察したところ、シリカナノシートは生成していなかった。
【0070】
(参考例2)
10mLのサンプル瓶に、実施例5で得られた層状ケイ酸塩0.1g、及び純水10g添加し、室温にて24時間放置した。このとき、純水100質量部に対して層状ケイ酸塩は1質量部であった。放置後の上澄み液の一部を採取し、透過型電子顕微鏡にて観察したところ、シリカナノシートは生成していなかった。
【0071】
(実施例10)
10mLのサンプル瓶に、実施例6で得られた層状ケイ酸塩0.1g、及び純水10g添加し、室温にて24時間放置した。このとき、純水100質量部に対して層状ケイ酸塩は1質量部であった。放置後の上澄み液の一部を採取し、透過型電子顕微鏡にて観察したところ、シリカナノシートが生成していることが推定された(
図3-2(d))。また、「シリカナノシートの厚さの測定」に記載した手順にて観察したところ、シリカナノシートの最大径は2.16μm、厚さは6.1nmであった(
図4-4)。
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の層状ケイ酸塩の製造方法は、簡便に短時間で層状ケイ酸塩を製造することができるという、実用的に高い価値を有する顕著な技術的効果を実現し、また当該方法で製造された層状ケイ酸塩はシリカナノシートの原料等としても高い価値を有する。したがって、本発明は、層状ケイ酸塩やシリカナノシートを製造、利用等する、化学産業、日用品産業、化粧品産業、をはじめとする各種製造業等の産業の各分野において高い利用可能性を有する。
【要約】
簡便に短時間で層状ケイ酸塩を製造できる方法を提供する。該課題は、下記(a)、及び(b)工程を含む層状ケイ酸塩の製造方法によって解決される:
(a)下記式(1)で表わされるアニオン成分と下記式(2)で表わされるカチオン成分を含み、且つ、該アニオン成分のSiO
2換算のモル数に対する水のモル数の比(H
2O/SiO
2)が0.7~30である、かご型ケイ酸塩を提供する工程;
【化1】
【化2】
(式(2)中、Rは炭素原子数2~9のアルキル基を示す。)
(b)前記(a)工程により得られたかご型ケイ酸塩をオートクレーブ処理する工程。