IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱瓦斯化学株式会社の特許一覧

特許7401032脱酸素剤組成物、脱酸素剤包装体及び脱酸素剤包装体の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】脱酸素剤組成物、脱酸素剤包装体及び脱酸素剤包装体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20231212BHJP
   B01J 20/02 20060101ALI20231212BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20231212BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20231212BHJP
   B65D 81/26 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B01D53/14 311
B01J20/02 A
B01J20/28 Z
B01J20/30
B65D81/26 R
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023541873
(86)(22)【出願日】2023-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2023010253
【審査請求日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2022045663
(32)【優先日】2022-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 貴司
(72)【発明者】
【氏名】染谷 昌男
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 慧介
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-192485(JP,A)
【文献】国際公開第2022/004740(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/169015(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14
B01J 20/02
B01J 20/28
B01J 20/30
B65D 81/26
A23L 3/3436
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄、金属塩及び水を含み、
鉄の表面に存在する水の、鉄の単位表面積当たりの含有量[鉄の表面に存在する水の含有量(g)/{鉄の含有量(g)×鉄の比表面積(m/g)}]が0.60g/m以上2.00g/m以下であり、前記金属塩の少なくとも一部が、前記鉄の表面に存在する、脱酸素剤組成物。
【請求項2】
前記鉄の表面に存在する金属塩が、前記鉄の表面を被覆してなる、請求項に記載の脱酸素剤組成物。
【請求項3】
前記鉄の表面に存在する金属塩が、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、臭化カルシウム及び臭化ナトリウムからなる群から選択される1種以上である、請求項に記載の脱酸素剤組成物。
【請求項4】
前記鉄の表面に存在する金属塩の含有量が、鉄100質量部に対して0.1質量部以上5.0質量部以下である、請求項に記載の脱酸素剤組成物。
【請求項5】
前記鉄の比表面積が、0.03m/g以上0.20m/g以下である、請求項に記載の脱酸素剤組成物。
【請求項6】
前記鉄の平均粒子径(D50)が、1μm以上1000μm以下である、請求項に記載の脱酸素剤組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の脱酸素剤組成物と、該脱酸素剤組成物を収容した通気性包装容器とを備える、脱酸素剤包装体。
【請求項8】
下記工程(I)~(III)を含む、脱酸素剤包装体の製造方法。
工程(I):金属塩及び鉄を含む脱酸素剤組成物(a)を得る工程
工程(II):前記脱酸素剤組成物(a)に水を供給して、鉄、金属塩及び水を含み、鉄の表面に存在する水の、鉄の単位表面積当たりの含有量[鉄の表面に存在する水の含有量(g)/{鉄の含有量(g)×鉄の比表面積(m/g)}]が0.60g/m以上2.00g/m以下であり、前記金属塩の少なくとも一部が、前記鉄の表面に存在する脱酸素剤組成物(A)を得る工程
工程(III):前記脱酸素剤組成物(a)及び前記脱酸素剤組成物(A)の少なくとも一方を通気性包装容器(b1)に収容する工程
【請求項9】
前記工程(I)に次いで、下記工程(III-1)及び工程(II-1)を順に有する、請求項に記載の脱酸素剤包装体の製造方法。
工程(III-1):前記脱酸素剤組成物(a)を前記通気性包装容器(b1)に収容する工程
工程(II-1):前記通気性包装容器(b1)を通して、前記脱酸素剤組成物(a)に水を供給して、前記脱酸素剤組成物(A)を得る工程
【請求項10】
更に、下記工程(IV-1)を有する、請求項に記載の脱酸素剤包装体の製造方法。
工程(IV-1):前記脱酸素剤組成物(A)を収容した前記通気性包装容器(b1)を、更にガスバリア性容器(b2)に収容する工程
【請求項11】
前記工程(I)に次いで、下記工程(III-2)、工程(IV-2)及び工程(II-2)を順に有する、請求項に記載の脱酸素剤包装体の製造方法。
工程(III-2):前記脱酸素剤組成物(a)及び水分供与剤を前記通気性包装容器(b1)に収容する工程
工程(IV-2):前記脱酸素剤組成物(a)及び前記水分供与剤を収容した通気性包装容器(b1)を、更にガスバリア性容器(b2)に収容する工程
工程(II-2):前記水分供与剤から、前記脱酸素剤組成物(a)に水を供給して、前記脱酸素剤組成物(A)を得る工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱酸素剤組成物、脱酸素剤包装体及び脱酸素剤包装体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や医薬品等の保存技術として、脱酸素剤を用いる方法が知られている。この方法では、ガスバリア性の密封容器内に被保存物品と脱酸素剤とを封入して密封することで、密封容器内の酸素を脱酸素剤に吸収させ、密封容器内の雰囲気を実質的に無酸素状態に保つことができる。脱酸素剤の機能として、小型であり、かつ、多くの酸素を吸収することが必要とされる。言い換えれば、単位体積当たりの酸素吸収量が高い脱酸素剤組成物が必要とされる。
【0003】
代表的な脱酸素剤としては、鉄(鉄粉)を主剤とする鉄系脱酸素剤、アスコルビン酸やグリセリン等を主剤とする非鉄系脱酸素剤が挙げられる。脱酸素剤は用途に応じて適宜選択されるが、酸素吸収性能の観点からは鉄系脱酸素剤が広く使用されている。
このような状況において、鉄系脱酸素剤の小型化、酸素吸収量を改善する試みがなされている。
【0004】
例えば特許文献1には、酸素吸収物質、水及び膨潤剤を含み、加圧成形により固形化することで粉粒体間の隙間を消失させ、体積を縮小しコンパクト化を図った脱酸素剤組成物が開示されている。
また、特許文献2には、酸素吸収量が優れた脱酸素剤組成物を提供することを目的として、保水剤、膨潤剤、金属塩及び水を含むα層と、鉄を含むβ層と、多孔性担体を含むγ層と、を有する粉粒体を含み、前記粉粒体は、該粉粒体の内側から外側に向かって、前記α層、前記β層、前記γ層の順に層構造を形成している脱酸素剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2007/046449号
【文献】国際公開第2017/169015号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、脱酸素剤の使用においては、密封容器内の被保存物品の酸化を効果的に防ぐ観点から、できるだけ速やかに密封容器内の雰囲気を無酸素状態に近づけることが望まれる。そのため、反応初期の酸素吸収速度が速く、高い酸素吸収性能を発揮し得る鉄系脱酸素剤に用いられる脱酸素剤組成物が求められている。
そこで本発明は、反応初期の酸素吸収速度が速く、高い酸素吸収性能を発揮し得る脱酸素剤組成物、脱酸素剤包装体及び脱酸素剤包装体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
[1] 鉄、金属塩及び水を含み、
鉄の表面に存在する水の、鉄の単位表面積当たりの含有量[鉄の表面に存在する水の含有量(g)/{鉄の含有量(g)×鉄の比表面積(m/g)}]が0.60g/m以上2.00g/m以下である、脱酸素剤組成物。
[2] 前記金属塩の少なくとも一部が、前記鉄の表面に存在する、上記[1]に記載の脱酸素剤組成物。
[3] 前記鉄の表面に存在する金属塩が、前記鉄の表面を被覆してなる、上記[2]に記載の脱酸素剤組成物。
[4] 前記鉄の表面に存在する金属塩が、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、臭化カルシウム及び臭化ナトリウムからなる群から選択される1種以上である、上記[2]又は[3]に記載の脱酸素剤組成物。
[5] 前記鉄の表面に存在する金属塩の含有量が、鉄100質量部に対して0.1質量部以上5.0質量部以下である、上記[2]~[4]のいずれか一項に記載の脱酸素剤組成物。
[6] 前記鉄の比表面積が、0.03m/g以上0.20m/g以下である、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の脱酸素剤組成物。
[7] 前記鉄の平均粒子径(D50)が、1μm以上1000μm以下である、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の脱酸素剤組成物。
[8] 上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の脱酸素剤組成物と、該脱酸素剤組成物を収容した通気性包装容器とを備える、脱酸素剤包装体。
[9] 下記工程(I)~(III)を含む、脱酸素剤包装体の製造方法。
工程(I):金属塩及び鉄を含む脱酸素剤組成物(a)を得る工程
工程(II):前記脱酸素剤組成物(a)に水を供給して、鉄、金属塩及び水を含み、鉄の表面に存在する水の、鉄の単位表面積当たりの含有量[鉄の表面に存在する水の含有量(g)/{鉄の含有量(g)×鉄の比表面積(m/g)}]が0.60g/m以上2.00g/m以下である脱酸素剤組成物(A)を得る工程
工程(III):前記脱酸素剤組成物(a)及び前記脱酸素剤組成物(A)の少なくとも一方を通気性包装容器(b1)に収容する工程
[10] 前記工程(I)に次いで、下記工程(III-1)及び工程(II-1)を順に有する、上記[9]に記載の脱酸素剤包装体の製造方法。
工程(III-1):前記脱酸素剤組成物(a)を前記通気性包装容器(b1)に収容する工程
工程(II-1):前記通気性包装容器(b1)を通して、前記脱酸素剤組成物(a)に水を供給して、前記脱酸素剤組成物(A)を得る工程
[11] 更に、下記工程(IV-1)を有する、上記[10]に記載の脱酸素剤包装体の製造方法。
工程(IV-1):前記脱酸素剤組成物(A)を収容した前記通気性包装容器(b1)を、更にガスバリア性容器(b2)に収容する工程
[12] 前記工程(I)に次いで、下記工程(III-2)、工程(IV-2)及び工程(II-2)を順に有する、上記[9]に記載の脱酸素剤包装体の製造方法。
工程(III-2):前記脱酸素剤組成物(a)及び水分供与剤を前記通気性包装容器(b1)に収容する工程
工程(IV-2):前記脱酸素剤組成物(a)及び前記水分供与剤を収容した通気性包装容器(b1)を、更にガスバリア性容器(b2)に収容する工程
工程(II-2):前記水分供与剤から、前記脱酸素剤組成物(a)に水を供給して、前記脱酸素剤組成物(A)を得る工程
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、反応初期の酸素吸収速度が速く、高い酸素吸収性能を発揮し得る脱酸素剤組成物、脱酸素剤包装体及び脱酸素剤包装体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に従う脱酸素剤組成物、脱酸素剤包装体及び脱酸素剤包装体の製造方法の実施形態について、以下で詳細に説明する。
なお、本明細書において、数値の記載に関する「A~B」という用語は、「A以上B以下」(A<Bの場合)又は「A以下B以上」(A>Bの場合)を意味する。また、本発明において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0010】
[脱酸素剤組成物]
本発明の脱酸素剤組成物は、鉄、金属塩及び水を含み、鉄の表面に存在する水の、鉄の単位表面積当たりの含有量[鉄の表面に存在する水の含有量(g)/{鉄の含有量(g)×鉄の比表面積(m/g)}]が0.60g/m以上2.00g/m以下である。
なお、本明細書において、「鉄の表面に存在する水の、鉄の単位表面積当たりの含有量」は、「鉄の表面に形成される水膜の厚さ」の指標であり、「鉄の表面に存在する水の、鉄の単位表面積当たりの含有量」が上記所定の範囲内であれば、鉄の表面に所定の厚さを有する水膜が形成されていることを意味する。
【0011】
本発明の脱酸素剤組成物は、上記構成であることにより、反応初期の酸素吸収速度を高めることができ、高い酸素吸収性能を発揮することができる。
本発明の脱酸素剤組成物が上記効果を奏する理由については定かではないが、以下のように推察する。
まず、鉄系脱酸素剤では、鉄が、水及び酸素と反応することで、速い脱酸素反応が起こる。
水は、脱酸素環境中の水蒸気(被保存物等から蒸散した水分等)を用いる場合(水分依存型)と、予め脱酸素剤包装体内に含水担体(水分供与剤等)を同包する場合(自力反応型)とがある。いずれの場合も、鉄が酸素を吸収するためには、鉄の表面に水分を呼び込む必要があるが、それには金属塩の潮解現象が利用される。
また、本発明者等が、鉄の酸素吸収について更に反応解析を行ったところ、上記反応は、鉄と、気体状態の水(水蒸気)や酸素が直接反応するのではなく、まず、金属塩の潮解現象により、鉄の表面に水膜が形成され、該水膜中の水及び溶存酸素が、鉄と反応する機構であることが推察された。
更に、上記機構において、水膜の厚さが薄い場合は、鉄の表面における水不足のために酸素吸収量が少なく、また水分が消費され極少量になると反応速度も遅くなってくると考えられる。一方、水膜が厚すぎる場合は、水膜中の溶存酸素濃度が低くなる拡散律速のために、脱酸素反応の反応速度は遅くなると考えられる。
本発明の脱酸素剤組成物においては、予め鉄の表面に所定の厚さを有する水膜を形成することにより、脱酸素反応の初期段階から、鉄の表面に適度な水分と酸素(溶存酸素)を供給でき、脱酸素反応の反応速度及び酸素吸収量を高めることができ、高い酸素吸収性能を発揮し得ると考えられる。
【0012】
以下、各成分等について説明する。
【0013】
(鉄)
本発明の脱酸素剤組成物に含まれる鉄の形状は特に限定されないが、酸素吸収性能、入手容易性及び取扱い容易性の観点から、好ましくは鉄粉である。鉄粉は、鉄(0価の金属鉄)の表面が露出したものが好ましいが、本発明の効果を妨げない範囲で、通常の金属表面のように極薄い酸化被膜を有するものであってもよい。具体的には、還元鉄粉、電解鉄粉、噴霧鉄粉(アトマイズ鉄粉)等を好適に用いることができる。また、鋳鉄等の粉砕物、切削品を用いることもできる。
鉄粉は、1種を単独で用いることができ、必要に応じて2種以上を併用して用いることもできる。また、これらの鉄粉は、市販品を容易に入手でき、用いることもできる。
【0014】
鉄粉の平均粒子径(D50)は、酸素との接触を良好にする観点から、好ましくは3000μm以下、より好ましくは1000μm以下、更に好ましくは300μm以下であり、そして、粉塵の発生を抑制する観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは20μm以上である。そして、より具体的には、鉄粉の平均粒子径(D50)は、好ましくは1μm以上3000μm以下、より好ましくは1μm以上1000μm以下、更に好ましくは10μm以上1000μm以下、より更に好ましくは20μm以上300μm以下である。
なお、平均粒子径が上記範囲にある鉄粉は、市販の鉄粉を適宜選択し入手することができる。また、例えば所望の平均粒子径に応じた篩を用いて分級して得ることもできる。
また、平均粒子径は、例えば市販のレーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製LA-960)等により体積基準粒度分布における累積頻度50%の平均粒子径(D50)として測定することができる。
【0015】
また、鉄粉の比表面積は、酸素吸収性能の観点から、好ましくは0.03m/g以上、より好ましくは0.05m/g以上であり、そして、粉塵の発生を抑制する観点から、好ましくは0.20m/g以下、より好ましくは0.10m/g以下、更に好ましくは0.09m/g以下である。そして、より具体的には、鉄粉の比表面積は、好ましくは0.03m/g以上0.20m/g以下、より好ましくは0.03m/g以上0.10m/g以下、更に好ましくは0.05m/g以上0.09m/g以下である。
なお、鉄粉の比表面積は、BET多点法にて測定することができる。具体的には、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0016】
本発明の脱酸素剤組成物は、主剤として鉄を含む。脱酸素剤組成物中の鉄の含有量は特に限定されないが、好ましくは40質量%以上98質量%以下、より好ましくは60質量%以上98質量%以下、更に好ましくは80質量%以上98質量%以下、より更に好ましくは85質量%以上96質量%以下、より更に好ましくは85質量%以上94質量%以下である。
【0017】
(金属塩)
本発明の脱酸素剤組成物に含まれる金属塩は、鉄の酸化反応に触媒的に作用し、鉄の活性を向上させる物質である。また、金属塩は、脱酸素剤組成物に含まれる水が蒸散して脱酸素剤組成物から失われるのを防止する役割を果たす。
また、本発明の脱酸素剤組成物は、予め鉄の表面に所定の厚さの水膜を形成しておく必要があるが、鉄の表面に水分を呼び込むには、金属塩の潮解現象が利用される。そのため、金属塩は、好ましくは少なくとも一部が、より好ましくは主に、鉄の表面に存在することが好ましい。
ここで、「金属塩の少なくとも一部が鉄の表面に存在する」とは、脱酸素剤組成物中に含まれる金属塩のうち、一部又は全部が、鉄の表面に存在することを意味する。本発明の脱酸素剤組成物は、後述するように、水分供与剤を含んでもよく、水分供与剤には金属塩が含まれる場合があるが、該金属塩は水分供与剤の担体に担持されているため、鉄の表面に存在する金属塩とは区別される。したがって、脱酸素剤組成物が水分供与剤を含む場合には、金属塩は、一部が鉄の表面に存在していればよく、その他は水分供与剤の担体に担持されていてもよい。
また、「金属塩が主に鉄の表面に存在する」とは、例えば水分供与剤等の金属塩を含む成分を脱酸素剤組成物に配合しない場合等が挙げられ、実質的に、金属塩の全部が鉄の表面に存在する場合を意味する。
また、鉄の表面に存在する金属塩は、鉄の表面を被覆してなることがより好ましい。なお、金属塩が、鉄の表面を被覆する方法は特に限定されないが、例えば、後述のように、鉄粉と金属塩を含む水溶液とを混合した後、乾燥して水分を除去し、鉄粉の表面に金属塩を付着させることによって行うことができる。
【0018】
金属塩は特に限定されないが、潮解性を有する金属塩であることが好ましい。中でも、ハロゲン化金属が好ましい。ハロゲン化金属としては、一般に知られているものなら特に制限なく使用することができる。
ハロゲン化金属における金属としては特に限定されないが、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、銅、亜鉛、アルミニウム、スズ、鉄、コバルト及びニッケルからなる群から選択される1種以上が挙げられる。中でも、リチウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム及び鉄からなる群から選択される1種以上がより好ましく、ナトリウム及びカルシウムからなる群から選択される1種以上が更に好ましい。
また、ハロゲン化金属におけるハロゲン化物としては特に限定されないが、例えば、塩化物、臭化物、及びヨウ化物が挙げられ、好ましくは塩化物及び臭化物からなる群から選択される1種以上である。
【0019】
ハロゲン化金属は、取り扱い性、安全性等の点から、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、臭化カルシウム、臭化ナトリウム、ヨウ化カルシウム及びヨウ化ナトリウムからなる群から選択される1種以上であることが好ましく、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、臭化カルシウム及び臭化ナトリウムからなる群から選択される1種以上であることがより好ましい。
特に、鉄の表面に存在する金属塩としては、好ましくは塩化カルシウム、塩化ナトリウム、臭化カルシウム及び臭化ナトリウムからなる群から選択される1種以上である。
金属塩は、1種を単独で用いることができ、必要に応じて2種以上を併用して用いることもできる。また、これらの金属塩は、市販品を容易に入手でき、用いることもできる。
【0020】
金属塩の含有量は特に限定されないが、脱酸素剤組成物中、好ましくは0.09質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.09質量%以上5.0質量%以下、更に好ましくは0.10質量%以上2.0質量%以下である。また、金属塩の含有量は、水分供与剤を除く脱酸素剤組成物中、好ましくは0.09質量%以上5.0質量%以下、より好ましくは0.10質量%以上2.0質量%以下、より更に好ましくは0.10質量%以上1.0質量%以下である。また、金属塩の含有量は、鉄100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上5.0質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上2.0質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以上1.0質量部以下、より更に好ましくは0.2質量部以上1.0質量部以下である。
【0021】
また、鉄の表面に存在する金属塩の含有量は、鉄100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上5.0質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上2.0質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以上1.0質量部以下、より更に好ましくは0.1質量部以上0.5質量部以下である。
【0022】
(水)
本発明の脱酸素剤組成物に含まれる水は、脱酸素反応を進行させるために必要な成分である。
また、本発明の脱酸素剤組成物は、予め鉄の表面に所定の厚さの水膜を形成しておく必要があるが、このとき水は、金属塩の潮解現象により、鉄の表面に存在する金属塩にとりこまれると考えられる。そのため、水は、好ましくは少なくとも一部が、より好ましくは主に、金属塩と共に、鉄の表面に存在することが好ましい。
ここで、「水の少なくとも一部が鉄の表面に存在する」とは、脱酸素剤組成物中に含まれる水のうち、一部又は全部が、鉄の表面に存在することを意味する。本発明の脱酸素剤組成物は、後述するように、水分供与剤を含んでもよく、水分供与剤には水が含まれるが、該水は水分供与剤の担体に担持されているため、鉄の表面に存在する水とは区別される。したがって、脱酸素剤組成物が水分供与剤を含む場合には、水は、一部が鉄の表面に存在していればよく、その他は水分供与剤の担体に担持されていてもよい。
また、「水が主に鉄の表面に存在する」とは、例えば水分供与剤等の水を含む成分を脱酸素剤組成物に配合しない場合等が挙げられ、実質的に、水の全部が鉄の表面に存在する場合を意味する。
また、鉄の表面に存在する水は、金属塩と共に、鉄の表面を被覆してなることがより好ましい。
【0023】
本発明の脱酸素剤組成物では、鉄の表面に形成される水膜の厚さを所定の厚さに制御することにより、反応初期の酸素吸収速度を速くでき、高い酸素吸収性能を発揮し得る。なお、水膜の厚さは、鉄の表面に存在する水の、鉄の単位表面積当たりの含有量を指標とすることができる。
鉄の表面に存在する水の、鉄の単位表面積当たりの含有量[鉄の表面に存在する水の含有量(g)/{鉄の含有量(g)×鉄の比表面積(m/g)}]は、0.60g/m以上2.00g/m以下である。鉄の表面に存在する水の、鉄の単位表面積当たりの含有量が0.60g/m未満であると、水不足のために酸素吸収量が減ると考えられる。また、鉄の表面に存在する水の、鉄の単位表面積当たりの含有量が2.00g/m超であると、水膜が厚すぎるため、水膜中の溶存酸素濃度の低下(拡散律速)により、反応初期の酸素吸収速度が遅くなると考えられる。鉄の表面に存在する水の、鉄の単位表面積当たりの含有量は、好ましくは0.70g/m以上2.00g/m以下、より好ましくは1.10g/m以上2.00g/m以下、更に好ましくは1.10g/m以上1.98g/m以下、より更に好ましくは1.50g/m以上1.90g/m以下である。
【0024】
上記鉄の表面に存在する水の、鉄の単位表面積当たりの含有量[鉄の表面に存在する水の含有量(g)/{鉄の含有量(g)×鉄の比表面積(m/g)}]を所定の範囲に制御する方法は、特に限定されないが、例えば、(1)鉄の表面への水の供給方法やその条件(雰囲気湿度や水分供与剤の湿度)を適宜選択したり、(2)鉄の表面に存在する金属塩の種類や含有量を適宜選択、調整したりすることによって、所望の厚さに制御することができる。特に、鉄の表面に水分を呼び込む際には、金属塩の潮解現象が利用されるため、例えば湿度条件で制御する場合、湿度が高いほど、鉄の表面に存在する水の、鉄の単位表面積当たりの含有量[鉄の表面に存在する水の含有量(g)/{鉄の含有量(g)×鉄の比表面積(m/g)}]を高めることができると考えられる。また、上記(2)の方法で制御する場合、鉄の表面に存在する金属塩の含有量を増やすほど、鉄の表面に存在する水の、鉄の単位表面積当たりの含有量[鉄の表面に存在する水の含有量(g)/{鉄の含有量(g)×鉄の比表面積(m/g)}]を高めることができると考えられる。一般的に湿度条件は任意に調整できないことが多いため、上記(2)の方法で制御することがより好ましい。
【0025】
なお、脱酸素剤組成物中の水の含有量は、特に限定されないが、好ましくは2.0質量%以上30質量%以下、より好ましくは3.0質量%以上20質量%以下、更に好ましくは4.0質量%以上15質量%以下、より更に好ましくは7.0質量%以上14質量%以下である。また、水の含有量は、水分供与剤を除く脱酸素剤組成物中、好ましくは3.0質量%以上20質量%以下、より好ましくは4.0質量%以上15質量%以下、更に好ましくは7.0質量%以上14質量%以下である。
また、水の含有量は、酸素吸収性能の観点から、鉄100質量部に対して、好ましくは2.0質量部以上30質量部以下、より好ましくは3.0質量部以上20質量部以下、更に好ましくは4.0質量部以上19質量部以下、より更に好ましくは7.0質量部以上17質量部以下である。
【0026】
また、鉄の表面に存在する水の含有量は、鉄100質量部に対して、好ましくは3.0質量部以上20質量部以下、より好ましくは4.0質量部以上19質量部以下、更に好ましくは7.0質量部以上17質量部以下、より更に好ましくは8.0質量部以上16質量部以下である。
【0027】
(水分供与剤)
本発明の脱酸素剤組成物は、更に水分供与剤を含むことができる。水分供与剤は、水分を、担体に含浸させたもの(含水担体)であり、鉄に水を供給するものである。
水分供与剤は、担体と、金属塩と、水とを含むことが好ましい。
担体としては、担持した水分を鉄に供給できるものであればよく、一般的にはゼオライト、焼成珪藻土、シリカゲル、パーライト、バーミキュライト、活性アルミナ、活性白土、活性炭、ベントナイト等の粒状物が好適に使用され、中でもゼオライト、焼成珪藻土、活性炭が好ましい。
金属塩としては、前述の成分を用いることができるが、好ましくは塩化ナトリウムである。
【0028】
本発明の脱酸素剤組成物が水分供与剤を含む場合、水分供与剤の含有量は特に限定されず、必要水分量を供与できる量であればよく、例えば脱酸素剤組成物中、好ましくは15質量%以上60質量%以下、より好ましくは30質量%以上50質量%以下である。また、水分供与剤の含有量は、鉄100質量部に対して、好ましくは25質量部以上100質量部以下、より好ましくは40質量部以上60質量部以下である。
【0029】
また、本発明の脱酸素剤組成物が水分供与剤を含む場合、担体の含有量は、脱酸素剤組成物中、好ましくは15質量%以上60質量%以下、より好ましくは30質量%以上50質量%以下である。また、担体の含有量は、鉄100質量部に対して、好ましくは20質量部以上150質量部以下、より好ましくは25質量部以上100質量部以下、更に好ましくは40質量部以上60質量部以下である。
【0030】
なお、本発明の脱酸素剤組成物は、水膜の厚さ制御の容易さの観点、及び脱酸素剤包装体の小型化の観点から、水分は外部からの吸湿で供給することが好ましく、その場合、該脱酸素剤組成物は水分供与剤を実質的に含まなくてもよい。
【0031】
(他の成分)
本発明の脱酸素剤組成物は、上記成分の他に、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、アルカリ性物質、膨潤剤、流動性改善剤、触媒、臭気吸着剤、熱分散剤等が挙げられる。
【0032】
<脱酸素剤組成物の形状>
本発明の脱酸素剤組成物の形状は、特に限定されないが、例えば、球形、略球形、楕円形、及び円柱が挙げられ、充填性により優れ、嵩密度がより高くなる傾向にあることから、球形及び略球形が好ましく、球形がより好ましい。
【0033】
[脱酸素剤組成物の製造方法]
本発明の脱酸素剤組成物を製造する方法は特に限定されないが、例えば下記工程(i)及び(ii)を順に有することが好ましい。
工程(i):鉄及び金属塩を含む脱酸素剤組成物(a)を得る工程
工程(ii):前記脱酸素剤組成物(a)に水を供給して、鉄、金属塩及び水を含み、鉄の表面に存在する水の、鉄の単位表面積当たりの含有量[鉄の表面に存在する水の含有量(g)/{鉄の含有量(g)×鉄の比表面積(m/g)}]が0.60g/m以上2.00g/m以下である脱酸素剤組成物(A)を得る工程
【0034】
<工程(i)>
工程(i)は、鉄及び金属塩を含む脱酸素剤組成物(a)を得る工程である。
鉄及び金属塩については、上記のとおりである。
【0035】
得られる脱酸素剤組成物(a)において、金属塩は、鉄の表面に存在していることが好ましく、鉄の表面を被覆してなることがより好ましい。このような脱酸素剤組成物(a)を得る方法は特に限定されないが、例えば鉄粉に、金属塩の水溶液を混合し、乾燥させることによって、金属塩が付着した鉄粉を得てもよい。
【0036】
金属塩を水溶液として原料とする場合におけるその塩の濃度は、好ましくは1質量%以上20質量%以下、より好ましくは2質量%以上10質量%以下である。上記範囲内であることにより、鉄粉と金属塩水溶液を均一に混合することが可能になり、鉄粉表面に均一に金属塩を被覆することができる。
【0037】
<工程(ii)>
工程(ii)は、上記脱酸素剤組成物(a)に水を供給して、鉄、金属塩及び水を含み、鉄の表面に存在する水の、鉄の単位表面積当たりの含有量[鉄の表面に存在する水の含有量(g)/{鉄の含有量(g)×鉄の比表面積(m/g)}]が0.60g/m以上2.00g/m以下である脱酸素剤組成物(A)を得る工程である。
本工程により、所望の厚さを有する水膜を鉄の表面に形成することができ、反応初期の酸素吸収速度が速く、高い酸素吸収性能を発揮し得る脱酸素剤組成物が得られる。
【0038】
脱酸素剤組成物(a)に水を供給する方法は、特に限定されないが、例えば以下のような方法が挙げられる。
まず、(1)水を外部からの吸湿で供給する場合は、脱酸素剤組成物(a)を所定の湿度に調整した雰囲気に一定時間放置し、水分を吸収させる方法や、脱酸素剤組成物(a)に含水体(例えば、濡らせた脱脂綿等)を接触させ、含水体から脱酸素剤組成物(a)に水を供給する方法等が挙げられる。これらの方法によれば、湿度及び放置時間、並びに含水体の水分量及び接触時間等を適宜調整することにより、所望の厚さを有する水膜を鉄の表面に形成することができる。
【0039】
また、(2)脱酸素剤組成物(a)に、更に含水担体(水分供与剤等)を配合し、該含水担体から脱酸素剤組成物(a)に水分を供給する方法も挙げられる。本方法によれば、含水担体の量や、含水担体の含水量等を調整することにより、所望の厚さを有する水膜を鉄の表面に形成することができる。なお、本方法により得られる脱酸素剤組成物(A)は、鉄、金属塩及び水の他に、実質的に担体を更に含む。
【0040】
なお、上記いずれの方法の場合も、脱酸素剤組成物(a)に水分が供給され始めると、鉄の脱酸素反応が進行してしまうので、工程(ii)は不活性雰囲気中で行うことが好ましく、更に得られた脱酸素剤組成物(A)は、脱酸素剤として使用されるまでは、不活性雰囲気中に保存されることが好ましい。
【0041】
上記各成分を混合する混合装置は、特に限定されないが、具体例として、リボンミキサー(大野化学機械株式会社製)、ナウターミキサー(ホソカワミクロン株式会社製)、コニカルミキサー(大野化学機械株式会社製)、バーチカルグラニュレータ(株式会社パウレック製)、SPグラニュレーター(株式会社ダルトン製)、ハイスピードミキサ(株式会社アーステクニカ製)及び造粒機(アキラ機工株式会社製)を使用することができる。
【0042】
[脱酸素剤包装体]
本発明の脱酸素剤包装体は、上述した脱酸素剤組成物と、該脱酸素剤組成物を収容した通気性包装容器とを備える。
【0043】
(通気性包装容器)
通気性包装容器は、脱酸素剤用途に用いられる包装材料からなる容器であれば特に制限されないが、脱酸素剤包装体が十分な酸素吸収性能を発揮する観点から、少なくとも通気性包装材を含み、例えば2枚の通気性包装材を貼り合わせて袋状としたものや、1枚の通気性包装材と1枚の非通気性包装材とを貼り合わせて袋状としたもの、1枚の通気性包装材を折り曲げ、折り曲げ部を除く縁部同士をシールして袋状としたものが挙げられる。他にも、非通気性の剛性容器の開口面に通気性包装材を貼り付けた容器等も挙げられる。
【0044】
ここで、通気性包装材及び非通気性包装材が四角形状である場合には、通気性包装容器は、2枚の通気性包装材を重ね合わせ、4辺をヒートシールして袋状としたものや、1枚の通気性包装材と1枚の非通気性包装材とを重ね合わせ、4辺をヒートシールして袋状としたもの、1枚の通気性包装材を折り曲げ、折り曲げ部を除く3辺をヒートシールして袋状としたものが挙げられる。また包装材は、通気性包装材を筒状にしてその筒状体の両端部および胴部をヒートシールして袋状としたものであってもよい。
【0045】
(通気性包装材)
通気性包装材としては、酸素と水蒸気を透過する包装材が選択される。なかでも、ガーレ式試験機法による透気抵抗度が600秒以下、より好ましくは90秒以下、更に好ましくは30秒以下のものが好適に用いられる。ここで、透気抵抗度とは、JIS P8117:2009の方法により測定された値を言うものとする。より具体的には、ガーレ式デンソメーター(株式会社東洋精機製作所製)を使用して100mLの空気が通気性包装材を透過するのに要した時間を言う。
【0046】
上記通気性包装材としては、紙や不織布の他、プラスチックフィルムに通気性を付与したものが用いられる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリカーボネート等のフィルムと、シール層としてポリエチレン、アイオノマー、ポリブタジエン、エチレンアクリル酸コポリマー、エチレンメタクリル酸コポリマーまたはエチレン酢酸ビニルコポリマー等のフィルムとを積層接着した積層フィルム等が使用できる。また、これらの積層物も通気性包装材として使用することができる。
【0047】
通気性を付与する方法としては、冷針、熱針による穿孔加工の他、種々の方法が採用可能である。穿孔加工により通気性を付与する場合、通気性は、穿孔する孔の径、数、材質等により自由に調整することができる。
【0048】
また、積層フィルムの厚さは、50~300μmであることが好ましく、60~250μmであることが特に好ましい。この場合、厚さが上記範囲を外れる場合に比べて、強度を保持しヒートシール性や包装適性に優れた包装材とすることができる。
【0049】
(非通気性包装材)
非通気性包装材としては、脱酸素剤用途に用いられる包装材料を用いることができ、被保存物品の水分やアルコール、油分や固体成分を遮断でき、またシール性のある包装材が好適である。具体的には、ポリエチレンテレフタレートやナイロン系の共押出し多層シートやフィルムのような、酸素透過度0.05~20mL/m・24hr・atm(25℃、50%RH)の積層体等が挙げられる。
【0050】
(ガスバリア性容器)
本発明の脱酸素剤包装体は、上述した脱酸素剤組成物を収容した通気性包装容器を更に収容するガスバリア性容器を備えてもよい。上述した脱酸素剤組成物を収容した通気性包装容器を、ガスバリア性容器に収容することにより、外部との通気を遮断することができ、特に、ガスバリア性容器内への酸素の流入及び水蒸気の流出を防止でき、脱酸素剤としての使用時まで酸素吸収性能を良好に維持することができる。
【0051】
ガスバリア性容器は、密封可能で実質的にガスバリア性を有しているものであれば特に限定されないが、外部の通気を遮断する観点から、上記非通気性材料で構成されることが好ましい。
具体的には、ポリエチレンテレフタレート/アルミニウム蒸着/ポリエチレン、延伸ポリプロピレン/ポリビニルアルコール/ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデンコート延伸ナイロン/ポリエチレン等の積層構造を有する多層シートやフィルム、ナイロン系の共押出し多層シートやフィルムのような、酸素透過度0.05~20mL/m・24hr・atm(25℃、50%RH)の積層体から成る、袋や包装容器を簡便に使用することができる。
また、上記の他にも、ガスバリア性容器としては、金属缶、ガラス瓶、プラスティック容器等を用いることもできる。
【0052】
[脱酸素剤包装体の製造方法]
脱酸素剤包装体の製造方法は、特に限定されないが、例えば下記工程(I)~(III)を含むことが好ましい。このような方法によれば、反応初期の酸素吸収速度が速く、高い酸素吸収性能を発揮し得る脱酸素剤包装体を得ることができる。なお、下記工程(II)及び(III)の順序は問わない。
工程(I):鉄及び金属塩を含む脱酸素剤組成物(a)を得る工程
工程(II):前記脱酸素剤組成物(a)に水を供給して、鉄、金属塩及び水を含み、鉄の表面に存在する水の、鉄の単位表面積当たりの含有量[鉄の表面に存在する水の含有量(g)/{鉄の含有量(g)×鉄の比表面積(m/g)}]が0.60g/m以上2.00g/m以下である脱酸素剤組成物(A)を得る工程
工程(III):前記脱酸素剤組成物(a)及び前記脱酸素剤組成物(A)の少なくとも一方を通気性包装容器(b1)に収容する工程
【0053】
<工程(I)及び(II)>
工程(I)及び(II)は、上記脱酸素剤組成物を製造する方法における工程(i)及び(ii)と同じである。
【0054】
<工程(III)>
工程(III)は、脱酸素剤組成物(a)及び脱酸素剤組成物(A)の少なくとも一方を通気性包装容器(b1)に収容する工程である。
本工程を有することにより、脱酸素剤組成物(a)及び脱酸素剤組成物(A)を通気性包装容器内に収容することができ、反応初期の酸素吸収速度が速く、高い酸素吸収性能を発揮し得る脱酸素剤包装体を得ることができる。
なお、通気性包装容器(b1)については、上述のものを使用することができる。
【0055】
上記製造方法は、更に下記工程(IV)を有していることが好ましい。
工程(IV):脱酸素剤組成物(a)及び脱酸素剤組成物(A)の少なくとも一方を収容した前記通気性包装容器(b1)を、更にガスバリア性容器(b2)に収容する工程
【0056】
上記工程(IV)を有することにより、脱酸素剤組成物(a)及び脱酸素剤組成物(A)の少なくとも一方を収容した前記通気性包装容器(b1)を、更にガスバリア性容器(b2)に収容することができ、ガスバリア性容器の内部への酸素や水蒸気の流入を遮断できる。そのため、鉄の酸化を抑制できると共に、鉄の表面における水分量を適切に管理できる。
特に、本工程は、通気性包装容器(b1)が脱酸素剤組成物(A)を収容している場合に、好適である。脱酸素剤組成物(A)は、既に水膜が形成されているため、酸素の存在下では徐々に脱酸素反応が進行する。そのため、脱酸素剤としての使用時まで酸素吸収性能を良好に維持する観点から、本工程は有効である。
なお、脱酸素剤組成物(a)及び脱酸素剤組成物(A)の少なくとも一方を収容した前記通気性包装容器(b1)を、更にガスバリア性容器(b2)に収容する場合は、実質的にガスバリア性容器(b2)の内部は密閉系となることが好ましく、系内を酸素のない還元性雰囲気にすることがより好ましい。
【0057】
上記製造方法の具体例としては、例えば以下の方法1及び2が挙げられる。
<方法1>
方法1としては、上記工程(I)に次いで、下記工程(III-1)及び工程(II-1)を順に有するものであることが好ましい。
工程(III-1):前記脱酸素剤組成物(a)を前記通気性包装容器(b1)に収容する工程
工程(II-1):前記通気性包装容器(b1)を通して、前記脱酸素剤組成物(a)に水を供給して、前記脱酸素剤組成物(A)を得る工程
【0058】
工程(III-1)は、上記工程(III)に対応し、脱酸素剤組成物(a)を通気性包装容器(b1)に収容する工程である。
【0059】
工程(II-1)は、上記工程(II)に対応し、前記通気性包装容器(b1)を通して、前記脱酸素剤組成物(a)に水を供給して、前記脱酸素剤組成物(A)を得る工程である。
ここで、通気性包装容器(b1)を通して、前記脱酸素剤組成物(a)に水を供給する方法は、特に限定されないが、例えば脱酸素剤組成物(a)を収容した通気性包装容器(b1)の外側から含水体(例えば、濡らせた脱脂綿等)を接触させることにより、含水体に含まれる水を、通気性包装容器(b1)を通して(通過させて)、脱酸素剤組成物(a)に供給する方法が挙げられる。本工程を有することにより、得られる脱酸素剤組成物(A)において、所望の厚さを有する水膜の形成が容易になる。
【0060】
このような方法1は、更に下記工程(IV-1)を有していることが好ましい。
工程(IV-1):前記脱酸素剤組成物(A)を収容した前記通気性包装容器(b1)を、更にガスバリア性容器(b2)に収容する工程
工程(IV-1)は、前記脱酸素剤組成物(A)を収容した前記通気性包装容器(b1)を、更にガスバリア性容器(b2)に収容する工程である。脱酸素剤組成物(A)は、酸素吸収性能に優れるため、脱酸素剤として使用するまではガスバリア性容器に収容されていることが好ましい。
【0061】
<方法2>
方法2としては、上記工程(I)に次いで、下記工程(III-2)、工程(IV-2)及び工程(II-2)を順に有するものであることが好ましい。
工程(III-2):前記脱酸素剤組成物(a)及び水分供与剤を前記通気性包装容器(b1)に収容する工程、
工程(IV-2):前記脱酸素剤組成物(a)及び前記水分供与剤を収容した通気性包装容器(b1)を、更にガスバリア性容器(b2)に収容する工程
工程(II-2):前記水分供与剤から、前記脱酸素剤組成物(a)に水を供給して、前記脱酸素剤組成物(A)を得る工程
【0062】
工程(III-2)は、上記工程(III)に対応し、脱酸素剤組成物(a)を通気性包装容器(b1)に収容する工程であるが、その際、水分供与剤を脱酸素剤組成物(a)と共に通気性包装容器(b1)に収容する工程である。本工程により、自力反応型の脱酸素剤が得られる。
なお、水分供与剤は、上述のものを使用することができる。
【0063】
工程(IV-2)は、前記脱酸素剤組成物(a)及び前記水分供与剤を収容した通気性包装容器(b1)を、更にガスバリア性容器(b2)に収容する工程である。前記脱酸素剤組成物(a)及び前記水分供与剤を収容した通気性包装容器(b1)を、更にガスバリア性容器(b2)に収容することにより、外部との通気を遮断することができる。その結果、水分供与剤から、脱酸素剤組成物(a)に効果的に水を供給することができ、所望の厚さを有する水膜が形成された脱酸素剤組成物(A)を得ることができる(工程(II-2)に対応)。また、上述のように、鉄に水分が供給されると、徐々に脱酸素反応が進行するが、ガスバリア性容器により外部との通気が遮断されていることにより、脱酸素剤としての使用時まで酸素吸収性能を良好に維持することができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例
【0065】
以下、実施例及び比較例を用いて本実施形態を詳しく説明するが、本実施形態は本発明の作用効果を奏する限りにおいて適宜変更することができる。また、実施例及び比較例における各種測定は以下のように行った。
【0066】
[平均粒子径]
平均粒子径は、以下のいずれかの方法で測定した。
・レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置にて測定されたD50径
レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA-960」)を用いて、体積基準粒度分布における累積頻度50%の平均粒子径(D50)を測定した。
・分級により粒度分布を測定して求めたD50径
ISO 3310-1:2000(JIS Z8801-1:2006相当)に準拠する標準篩を用いて、5分間振動させた後の篩目のサイズによる重量分率から、累積頻度50%の平均粒子径(D50)を測定した。
【0067】
[比表面積]
比表面積の測定は、定容量法の比表面積測定装置(マイクロトラック・ベル社製、「BELSORP mini II」)を用い、以下の条件で窒素吸着量測定を行い、BET法により比表面積を算出した。
測定温度:-196℃
前処理:300℃、3時間、窒素流通
【0068】
[透気抵抗度]
透気抵抗度は、デジタル型王研式透気度試験機(旭精工株式会社製「EG02」)を用いて3回測定した。得られた結果の算術平均値を測定結果とした。
【0069】
(実施例1)
(1)塩化ナトリウム(NaCl)0.25gを水6gに溶解し、この水溶液(NaCl濃度:4質量%)を還元鉄粉(ヘガネス社製、平均粒子径80μm(レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置にて測定されたD50径)、比表面積0.085m/g)100gに混合し、乾燥させ、鉄粉の表面に塩化ナトリウムを付着させることによって、塩化ナトリウムで表面を被覆した鉄粉(脱酸素剤組成物(a))を得た。
(2)上記(1)で得られた脱酸素剤組成物(a)1.00gを、通気性積層フィルム(構成:ポリエチレン製不織布(ユニチカ株式会社製、「エルベス」)/耐油合成紙(阿波製紙株式会社製、「アルト」)、透気抵抗度:10秒、厚さ:200μm)を用いた40mm×40mmの袋(通気性包装容器(b1))に充填し、三方シールして、脱酸素剤包装体(x1)を得た。
(3)上記(2)で得られた脱酸素剤包装体(x1)と、吸水した脱脂綿(脱脂綿3.5g、水5.0g)とを、アルミ三方袋(株式会社サンエー化研製「700アルミ袋」を180mm×250mmに切断して作製、ガスバリア性容器(b2))の中に導入し、袋内の酸素濃度が0.1体積%以下となるように袋内を窒素ガスで置換し、袋の口をヒートシールして封止し、脱酸素剤包装体(y1)を得た。
(4)上記(3)で得られた脱酸素剤包装体(y1)を、25℃にて4日間保存し、上記吸水した脱脂綿(含水体)から脱酸素剤組成物(a)に水を供給して、鉄、金属塩及び水を含む脱酸素剤組成物(A)並びにこれを通気性包装容器(b1)に収容する脱酸素剤包装体(x2)を得た。そして、上記保存期間後に、アルミ三方袋内で、脱脂綿と、脱酸素剤包装体(x2)とを分離して、脱酸素剤包装体(x2)部分をアルミ三方袋ごと切り離し、切り口を再度ヒートシールして封止して、脱酸素剤包装体(x2)をアルミ三方袋(ガスバリア性容器(b2))内に収容する脱酸素剤包装体(y2)を得た。
得られた脱酸素剤包装体(y2)に対して、下記脱酸素実験を行い、酸素吸収性能を評価した。
(5)なお、脱酸素剤組成物(A)における、鉄の表面に存在する水の、鉄の単位表面積当たりの含有量[鉄の表面に存在する水の含有量(g)/{鉄の含有量(g)×鉄の比表面積(m/g)}]は以下の方法で求めた。
まず、作製直後(吸水前)の脱酸素剤包装体(x1)の重量Wを予め測定しておいた。
次に、脱酸素剤包装体(x1)に水を供給して得た脱酸素剤包装体(x2)をアルミ三方袋(ガスバリア性容器(b2))内に収容する脱酸素剤包装体(y2)の重量Wを測定した。
更に、後述する脱酸素実験において脱酸素剤包装体(y2)から脱酸素剤包装体(x2)を取り出した際に残った、アルミ三方袋(ガスバリア性容器(b2))の重量Wを測定した。
なお、上記各重量の測定は、精密天秤を用いて行った。
また、アルミ三方袋から脱酸素剤包装体(x2)を取り出した際の、包装材の外部や内部に結露水はなかったことを確認していることから、下記式(1)で算出される水分量は全て、吸水した脱脂綿から、脱酸素剤組成物(a)の鉄の表面に供給された水の量、すなわち脱酸素剤組成物(A)における、鉄の表面に存在する水の含有量と推定できる。
したがって、下記式(1)で算出される水分量と、脱酸素剤組成物(A)における鉄の含有量及び比表面積とから、鉄の表面に存在する水の、鉄の単位表面積当たりの含有量[鉄の表面に存在する水の含有量(g)/{鉄の含有量(g)×鉄の比表面積(m/g)}]を算出した。結果を表1に示す。
水分量(g)=W-W-W ・・・(1)
【0070】
(実施例2~12及び比較例1~4)
実施例2~12及び比較例1~4は、鉄粉、金属塩及び保存日数を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法で、脱酸素剤組成物(A)及び脱酸素剤包装体(y2)を作製した。
得られた脱酸素剤包装体(y2)に対して、実施例1と同様の測定及び下記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0071】
<評価>
実施例1~12及び比較例1~4で作製した脱酸素剤包装体(y2)を用いて以下の評価を行った。結果を表1に示す。
(脱酸素実験)
まず、ガスバリア袋であるPTS袋(セラミック蒸着プラスチックフィルム袋、三菱ガス化学株式会社製、「PB600700P」、600mm×700mm、厚さ0.11mm)を300mm×350mmの大きさに切断して作製したPTS袋の一面に、サンプリング用ゴムシート(25mm×25mm、厚さ2mm)を接着し、測定用PTS袋を得た。
次に、よりガスバリア性の高いガスバリア袋であるアルミ袋(アルミニウム箔ラミネートプラスチックフィルム袋、株式会社サンエー化研製、「700アルミ袋」、700mm×800mm、厚さ0.12mm)を350mm×400mmの大きさに切断して作製したアルミ袋の一面であり、測定用PTS袋のサンプリング用ゴムシートに対応する位置に、サンプリング用ゴムシート(25mm×25mm、厚さ2mm)を接着し、測定用アルミ袋を得た。
【0072】
上記測定用PTS袋に、空気3000mLと、脱酸素剤包装体(y2)とを収容し、開口部をヒートシールして封止した。また、この時のPTS袋内の酸素濃度(初期酸素濃度)を測定した。
次に、PTS袋中で、脱酸素剤包装体(y2)を開封し、中から脱酸素剤包装体(x2)を取り出し、PTS袋ごと上記測定用アルミ袋に収容し、開口部をヒートシールして封止した。この時、PTS袋のサンプリング用ゴムシートとアルミ袋のサンプリング用ゴムシートが重なるように配置し、ゴムシートの位置がずれないようにPTS袋とアルミ袋を両面テープで接着した。
アルミ袋ごと速やかに25℃の恒温槽に入れ、7日間保持した。このとき、保持時間2時間及び7日のそれぞれの経過時点において、PTS袋内の酸素濃度を測定した。
【0073】
なお、酸素濃度は、ガス分析計(MOCON社製、「Check Mate 3」)を使用して測定した。測定は、ガス分析計に付随しているサンプリング用シリコンチューブの先端にある中空針を、PTS袋及びアルミ袋に予め貼り付けておいたサンプリング用ゴムシートからPTS袋内部に挿入して、酸素濃度を計測することにより行った。
上記酸素濃度の測定結果から、PTS袋内の鉄粉重量当たりの酸素吸収量(mL/g)を算出した。
本実施例では、2時間後の鉄粉重量当たりの酸素吸収量が15mL/g以上である場合、7日後の鉄粉重量当たりの酸素吸収量が50mL/g以上である場合をそれぞれ、酸素吸収性能が良好であると判定した。なお、2時間後の鉄粉重量当たりの酸素吸収量が多い程、初期の酸素吸収速度がより速いことを意味する。また、7日後の鉄粉重量当たりの酸素吸収量が多い程、トータルの酸素吸収量がより高く、高い酸素吸収性能を発揮し得ることを意味する。
【0074】
【表1】
【0075】
表1中の成分を以下に示す。
・還元鉄粉:ヘガネス社製、平均粒子径80μm(レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置にて測定されたD50径)、比表面積0.085m/g
・アトマイズ鉄粉1:アトマイズ鉄粉(株式会社神戸製鋼所製、平均粒子径75μm(分級により粒度分布を測定して求めたD50径))を目開き45μmの篩にかけた通過分、比表面積0.073m/g
・アトマイズ鉄粉2:アトマイズ鉄粉(同上)を目開き180μmの篩にかけ、通過分を目開き150μmの篩にかけた残留分、比表面積0.035m/g
・NaCl:塩化ナトリウム
・NaBr:臭化ナトリウム
・CaCl:塩化カルシウム
・CaBr:臭化カルシウム
【0076】
表1に示すように、鉄の表面に存在する水の、鉄の単位表面積当たりの含有量[鉄の表面に存在する水の含有量(g)/{鉄の含有量(g)×鉄の比表面積(m/g)}]が0.60g/m以上2.00g/m以下の範囲内にある脱酸素剤組成物は、反応初期の酸素吸収速度が速く、高い酸素吸収性能を発揮することが確認された(実施例1~12)。
【0077】
一方、鉄の表面に存在する水の、鉄の単位表面積当たりの含有量が2.00g/mを超える脱酸素剤組成物は、反応初期の酸素吸収速度が遅いことが確認された(比較例1、3及び4)。また、鉄の表面に存在する水の、鉄の単位表面積当たりの含有量が0.60g/m未満である脱酸素剤組成物は、反応初期の酸素吸収速度は比較的早いものの、水分不足のために酸素吸収量が減り、十分な酸素吸収性能が発揮されないことが確認された(比較例2)。
【要約】
鉄、金属塩及び水を含み、鉄の表面に存在する水の、鉄の単位表面積当たりの含有量[鉄の表面に存在する水の含有量(g)/{鉄の含有量(g)×鉄の比表面積(m/g)}]が0.60g/m以上2.00g/m以下である、脱酸素剤組成物。