(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】多層フィルム、包装材及び包装体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20231212BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2023547648
(86)(22)【出願日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2023016504
【審査請求日】2023-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2022078125
(32)【優先日】2022-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022134774
(32)【優先日】2022-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【氏名又は名称】財部 俊正
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮
(72)【発明者】
【氏名】勝目 智也
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-49898(JP,A)
【文献】特開2006-212785(JP,A)
【文献】特開2007-44930(JP,A)
【文献】国際公開第2021/251195(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシール層と、該ヒートシール層上に設けられた隠蔽層と、を備え、
前記ヒートシール層が、プロピレン単独重合体(A)、及び/又は、プロピレン系共重合樹脂(B)を含み、
前記隠蔽層が、プロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)と、エチレン-プロピレン共重合エラストマー(D)と、酸化チタン(E)と、を含み、
前記隠蔽層における前記酸化チタン(E)の含有量が、前記隠蔽層の全質量を基準として、0.10~30.00質量%である、多層フィルム。
【請求項2】
前記ヒートシール層が、プロピレン系共重合樹脂(B)を含み、
前記プロピレン系共重合樹脂(B)の融点が、132~150℃である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
前記ヒートシール層が、プロピレン系共重合樹脂(B)を含み、
前記プロピレン系共重合樹脂(B)中のエチレン含有量が、前記プロピレン系共重合樹脂(B)の全質量を基準として、3.0~6.0質量%である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項4】
前記ヒートシール層における前記プロピレン単独重合体(A)の含有量が、前記ヒートシール層の全質量を基準として、10~70質量%であり、
前記ヒートシール層における前記プロピレン系共重合樹脂(B)の含有量が、前記ヒートシール層の全質量を基準として、30~90質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項5】
前記ヒートシール層における前記プロピレン単独重合体(A)の含有量に対する前記プロピレン系共重合樹脂(B)の含有量の質量比が、0.10~9.00である、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項6】
前記隠蔽層における前記プロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)の含有量が、前記隠蔽層の全質量を基準として、35~90質量%であり、
前記隠蔽層における前記エチレン-プロピレン共重合エラストマー(D)の含有量が、前記隠蔽層の全質量を基準として、10~50質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項7】
前記隠蔽層における前記プロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)の含有量に対する前記エチレン-プロピレン共重合エラストマー(D)の含有量の質量比が、0.10~1.00である、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項8】
プロピレン含有量が、多層フィルムの全質量を基準として、70質量%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項9】
前記ヒートシール層の厚さが、前記多層フィルムの厚さを基準として、8~30%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項10】
前記隠蔽層の厚さが20μm以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項11】
前記ヒートシール層と、前記隠蔽層と、ラミネート層と、をこの順で備え、
前記ラミネート層が、プロピレン単独重合体(A)、及び/又は、プロピレン系共重合樹脂(B)を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項12】
前記ヒートシール層と前記ラミネート層の総厚が、前記多層フィルムの厚さを基準として、16~42%である、請求項11に記載の多層フィルム。
【請求項13】
請求項1~3のいずれか一項に記載の多層フィルムを備える包装材。
【請求項14】
前記多層フィルムの前記隠蔽層からみて、前記ヒートシール層側とは反対側に二軸延伸ポリプロピレンフィルムを更に備える、請求項13に記載の包装材。
【請求項15】
請求項14に記載の包装材から製袋された包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多層フィルム、包装材及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系フィルムは、剛性及び耐熱性に優れ、かつ安価であることから、食品包装等の種々の包装用材料における、シーラントフィルムとして使用されることがある。
【0003】
特許文献1では、3層から構成されるポリプロピレン系複合フィルムであって、中間層がプロピレン-エチレンブロック共重合樹脂からなり、両表面層がプロピレン系ランダム共重合体からなることを特徴とするポリプロピレン系複合フィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シーラントフィルムに使用されるポリプロピレン系フィルムには、ヒートシール性に加えて、低温保管時でも破袋しない耐寒衝撃性が求められる。また、従来包装材に隠蔽性を付与するためにアルミ基材等のシーラントフィルム以外の材料が使用されているが、シーラントフィルムに隠蔽機能を付与することができれば、包装材の多様化が促進される。
【0006】
フィルムに隠蔽機能を付与するためには、酸化チタン等の顔料を配合することが考えられる。しかしながら、顔料の添加は耐寒衝撃性の低下の要因となり得るため、隠蔽性と耐寒衝撃性とを両立することは容易ではない。
【0007】
そこで、本開示の一側面は、シーラントフィルムとして使用可能であり、十分な隠蔽性を有しながら優れた耐寒衝撃性を有する多層フィルムを提供することを目的とする。また、本開示の他のいくつかの側面は、上記多層フィルムを備える包装材、及び、該包装材から製袋された包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のいくつかの側面は、下記[1]~[15]を提供する。
【0009】
[1]
ヒートシール層と、該ヒートシール層上に設けられた隠蔽層と、を備え、
前記ヒートシール層が、プロピレン単独重合体(A)、及び/又は、プロピレン系共重合樹脂(B)を含み、
前記隠蔽層が、プロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)と、エチレン-プロピレン共重合エラストマー(D)と、酸化チタン(E)と、を含み、
前記隠蔽層における前記酸化チタン(E)の含有量が、前記隠蔽層の全質量を基準として、0.10~30.00質量%である、多層フィルム。
【0010】
[2]
前記ヒートシール層が、プロピレン系共重合樹脂(B)を含み、
前記プロピレン系共重合樹脂(B)の融点が、132~150℃である、[1]に記載の多層フィルム。
【0011】
[3]
前記ヒートシール層が、プロピレン系共重合樹脂(B)を含み、
前記プロピレン系共重合樹脂(B)中のエチレン含有量が、前記プロピレン系共重合樹脂(B)の全質量を基準として、3.0~6.0質量%である、[1]又は[2]に記載の多層フィルム。
【0012】
[4]
前記ヒートシール層における前記プロピレン単独重合体(A)の含有量が、前記ヒートシール層の全質量を基準として、10~70質量%であり、
前記ヒートシール層における前記プロピレン系共重合樹脂(B)の含有量が、前記ヒートシール層の全質量を基準として、30~90質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載の多層フィルム。
【0013】
[5]
前記ヒートシール層における前記プロピレン単独重合体(A)の含有量に対する前記プロピレン系共重合樹脂(B)の含有量の質量比が、0.10~9.00である、[1]~[4]のいずれかに記載の多層フィルム。
【0014】
[6]
前記隠蔽層における前記プロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)の含有量が、前記隠蔽層の全質量を基準として、35~90質量%であり、
前記隠蔽層における前記エチレン-プロピレン共重合エラストマー(D)の含有量が、前記隠蔽層の全質量を基準として、10~50質量%である、[1]~[5]のいずれかに記載の多層フィルム。
【0015】
[7]
前記隠蔽層における前記プロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)の含有量に対する前記エチレン-プロピレン共重合エラストマー(D)の含有量の質量比が、0.10~1.00である、[1]~[6]のいずれかに記載の多層フィルム。
【0016】
[8]
プロピレン含有量が、多層フィルムの全質量を基準として、70質量%以上である、[1]~[7]のいずれかに記載の多層フィルム。
【0017】
[9]
前記ヒートシール層の厚さが、前記多層フィルムの厚さを基準として、8~30%である、[1]~[8]のいずれかに記載の多層フィルム。
【0018】
[10]
前記隠蔽層の厚さが、20μm以上である、[1]~[9]のいずれかに記載の多層フィルム。
【0019】
[11]
前記ヒートシール層と、前記隠蔽層と、ラミネート層と、をこの順で備え、
前記ラミネート層が、プロピレン単独重合体(A)、及び/又は、プロピレン系共重合樹脂(B)を含む、[1]~[10]のいずれかに記載の多層フィルム。
【0020】
[12]
前記ヒートシール層と前記ラミネート層の総厚が、前記多層フィルムの厚さを基準として、16~42%である、[11]に記載の多層フィルム。
【0021】
[13]
[1]~[12]のいずれかに記載の多層フィルムを備える包装材。
【0022】
[14]
前記多層フィルムの前記隠蔽層からみて、前記ヒートシール層側とは反対側に二軸延伸ポリプロピレンフィルムを更に備える、[13]に記載の包装材。
【0023】
[15]
[13]又は[14]に記載の包装材から製袋された包装体。
【発明の効果】
【0024】
本開示の一側面によれば、シーラントフィルムとして使用可能であり、十分な隠蔽性を有しながら優れた耐寒衝撃性を有する多層フィルムを提供することができる。また、本開示の他のいくつかの側面によれば、上記多層フィルムを備える包装材、及び、該包装材から製袋された包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本開示の多層フィルムの一実施形態を示す模式断面図である。
【
図2】
図2は、本開示の多層フィルムの他の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図3】
図3は、本開示の包装材の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図4】
図4は、本開示の包装材の他の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、具体的に明示する場合を除き、「~」の前後に記載される数値の単位は同じである。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。また、本明細書中の樹脂(プロピレン単独重合体(A)、プロピレン系共重合樹脂(B)、プロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)及びエチレン-プロピレン共重合エラストマー(D))の重合原料の入手経路は特に限定されず、従来の石油から精製される成分、化学リサイクル法により生成される成分、植物由来成分等、いかなる原料に由来するものでも使用することができる。
【0027】
<多層フィルム>
図1は、本開示の一実施形態に係る多層フィルムの断面図である。多層フィルム10は、ヒートシール層1と、該ヒートシール層1上に設けられた隠蔽層2と、を備える。ヒートシール層は、プロピレン単独重合体(A)、及び/又は、プロピレン系共重合樹脂(B)を含み、隠蔽層2は、プロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)と、エチレン-プロピレン共重合エラストマー(D)と、酸化チタン(E)と、を含む。隠蔽層2における酸化チタン(E)の含有量は、隠蔽層2の全質量を基準として、0.10~30.00質量%である。
【0028】
図2は、本開示の他の一実施形態に係る多層フィルムの断面図である。多層フィルム11は、ヒートシール層1と、隠蔽層2と、ラミネート層3と、をこの順に備える。ヒートシール層1及び隠蔽層2は、多層フィルム10におけるヒートシール層1及び隠蔽層2と同じである。ラミネート層3は、プロピレン単独重合体(A)、及び/又は、プロピレン系共重合樹脂(B)を含む。
【0029】
上記多層フィルム(10,11)は、シーラントフィルム(例えば、ポリプロピレン系無延伸シーラントフィルム)として使用可能であり、十分な隠蔽性を有しながら優れた耐寒衝撃性を有する。したがって、多層フィルム(10,11)は、包装材(例えば、包装用シーラントフィルム、又は、包装用シーラントフィルムと基材とを備える包装フィルム)に好適に用いられる。多層フィルム(10,11)は、単体フィルムとして用いてもよく、基材と積層して用いてもよい。多層フィルム(10,11)を包装材として使用する場合、その包装材としての使用方法は特に制限されるものではない。
【0030】
多層フィルム(10,11)の耐寒衝撃性は、フィルムの低温保管時の衝撃強さにより評価できる。具体的には、フィルムインパクトテスターを用いて、温度-5℃、秤量1.5J、弾頭サイズ1/2インチの条件でフィルムの衝撃強さを測定する。上記条件で測定されるフィルムの衝撃強さは、例えば、6.00J/mm以上(例えば6.00~12.00J/mm)であり、各層の組成及び厚さを調整することで、7.00J/mm以上、8.00J/mm以上、9.00J/mm以上、10.00J/mm以上又は11.00J/mm以上とすることもできる。
【0031】
多層フィルム(10,11)の隠蔽性は、透過濃度によって評価できる。透過濃度は、透過率の逆数の常用対数値であり、透過濃度計(例えばX-RITE社製のポータブル透過濃度計)を用いて測定することができる。多層フィルム(10,11)の透過濃度は、例えば、0.20以上(例えば0.20~0.80)であり、各層の組成及び厚さを調整することで、0.30以上、0.40以上、0.50以上、0.60以上又は0.70以上とすることもできる。
【0032】
ところで、食品等の包装材の分野では、包装材を単一素材で構成する「モノマテリアル化」の取り組みが進められている。上記多層フィルムは、従来包装材に隠蔽性を付与するために使用されるアルミ基材等の非ポリプロピレン系材料を含有せずとも十分な隠蔽性を有することから、隠蔽性が求められるモノマテリアルの包装材に特に好適に用いられる。
【0033】
モノマテリアル化の取り組みにおいては、シーラントフィルムと基材とが同一素材で構成されることから、必然的にシーラントフィルムの融点と基材の融点とが近くなり、ヒートシール工程でシーラントフィルムとともに基材が溶融しやすくなる。そのため、モノマテリアルの包装材に使用されるシーラントフィルムには、低温でのヒートシール性(以下、「低温シール性」ともいう。)に優れることが求められることもある。この点、上記多層フィルムは、ヒートシール層の材料として低融点の材料(例えば、融点が150℃以下プロピレン系共重合樹脂(B))を使用することで、低温シール性にも優れるものとなる。
【0034】
以下では、上記多層フィルム(10,11)の各層について詳細に説明する。なお、以下の説明において符号は省略する。
【0035】
(ヒートシール層)
ヒートシール層は、例えば、プロピレン単独重合体(A)、及び/又は、プロピレン系共重合樹脂(B)を含む。
【0036】
[プロピレン単独重合体(A))
プロピレン単独重合体(A)は、例えばチーグラー・ナッタ型触媒、メタロセン触媒、又はハーフメタロセン触媒を用いて、プロピレンを単独重合する方法により得ることができる、プロピレンの単独重合体である。ヒートシール層がプロピレン単独重合体(A)を含む場合、多層フィルムが、120~135℃の高温で加圧処理を行って殺菌及び滅菌を行うレトルト処理等に耐えられる耐熱性(以下、単に「耐熱性」ともいう。)にも優れるものとなる。したがって、プロピレン単独重合体(A)を含むヒートシール層を備える多層フィルムは、沸水処理やレトルト処理等の過酷な処理が施される包装材用途に好適に使用できるといえる。
【0037】
プロピレン単独重合体(A)としては、例えば、融解開始温度が150℃以上であり、融点(融解ピーク温度)が155℃以上であるものを用いてよい。融解開始温度及び融点が共にこの範囲内であるものは、より優れた耐熱性を有し、例えば高温でのレトルト処理を行った後に、包装袋の内面で融着が発生し難い。さらに優れた耐熱性が得られる観点では、プロピレン単独重合体(A)の融解開始温度は、151℃以上又は152℃以上であってもよく、プロピレン単独重合体(A)の融点は、156℃以上又は158℃以上であってもよい。プロピレン単独重合体(A)の融解開始温度は、例えば160℃以下であり、より優れた低温シール性が得られる観点では、155℃以下又は153℃以下であってよい。プロピレン単独重合体(A)の融点は、例えば170℃以下であり、より優れた低温シール性が得られる観点では、165℃以下又は160℃以下であってよい。上記観点から、プロピレン単独重合体(A)の融解開始温度は、例えば、150~160℃であってよく、プロピレン単独重合体(A)の融点は、例えば、155~170℃であってよい。なお、本明細書中、融解開始温度及び融点は、JIS K 7121に準拠して示差走査熱量測定を行うことにより求められる値である。
【0038】
プロピレン単独重合体(A)としては、メルトフローレート(MFR)が2.0~7.0g/10分の範囲であるものを用いてよい。メルトフローレートが上記下限値以上であることで、成形加工時の押出機負荷が小さくなり、加工速度が低下し難く優れた生産性を維持し易い。また、メルトフローレートが上記上限値以下であることで、ヒートシール層がより優れた耐寒衝撃性を有し易い。これらの観点から、プロピレン単独重合体(A)のメルトフローレートは、2.5~6.0g/10分又は3.0~5.0g/10分であってもよい。なお、本明細書中、メルトフローレートは、ISO 1133に準拠して温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される値である。
【0039】
[プロピレン系共重合樹脂(B)]
プロピレン系共重合樹脂(B)は、プロピレンと、他の共重合モノマー(コモノマー)と、の共重合により得られる樹脂である。
【0040】
プロピレン系共重合樹脂(B)はプロピレン単独重合体(A)よりも低い融点を有していてよい。プロピレン系共重合樹脂(B)の融点は150℃以下であることが好ましい。ヒートシール層がこのような融点を有するプロピレン系樹脂を含む場合、多層フィルムが低温シール性にも優れるものとなる。このような多層フィルムは、モノマテリアルの包装材用のシーラントフィルムとしてより好適に用いられる。プロピレン系共重合樹脂(B)の融点は、耐熱性及び耐寒衝撃性により優れる観点から、132℃以上、135℃以上、140℃以上又は145℃以上であってもよい。上記観点から、プロピレン系共重合樹脂(B)の融点は、例えば、132~150℃、135~150℃、140~150℃又は145~150℃であってよい。プロピレン系共重合樹脂(B)の融解開始温度は、耐熱性と低温シール性をよりバランスよく両立する観点では、120~145℃、125~145℃又は135~145℃であってよい。ヒートシール層形成後のプロピレン系共重合樹脂(B)の融点は、例えばグラファイト炭素を吸着材として用いる高温LC法により、ヒートシール層を分離し、それぞれの融点を測定することにより求めることができる。
【0041】
プロピレン系共重合樹脂(B)は、プロピレンとエチレンを含む共重合モノマーとの共重合により得られる樹脂(プロピレンとエチレンとの共重合体を含む樹脂)であってよい。プロピレン系共重合樹脂(B)は、多層フィルムが低温シール性により優れる観点では、プロピレン-エチレンランダム共重合体を含んでいてよい。プロピレン-エチレンランダム共重合体は、例えばチーグラー・ナッタ型触媒、メタロセン触媒、又はハーフメタロセン触媒を用いて、プロピレンからなる主モノマー中にコモノマーとしてエチレンを加えてこれらを共重合させることにより得られる。プロピレン系共重合樹脂(B)を構成する共重合体は、1種であっても複数種であってもよい。プロピレン系共重合樹脂(B)が複数種の共重合体の混合物である場合、該混合物の融点をプロピレン系共重合樹脂(B)の融点とする。
【0042】
プロピレン系共重合樹脂(B)中のエチレン含有量は、プロピレン系共重合樹脂(B)の全質量を基準として、6.0質量%以下であってよい。エチレン含有量が6.0質量%以下であることで、低温シール性を維持しつつも耐熱性が過度に低下せず、レトルト処理後に包装袋の内面における融着を抑制することができる。この効果がより顕著に得られる観点から、当該エチレン含有量は5.5質量%以下又は4.5質量%以下であってもよい。エチレン含有量の下限は特に限定されないが、低温シール性の観点から、3.0質量%とすることができる。これらの観点から、プロピレン系共重合樹脂(B)中のエチレン含有量は、プロピレン系共重合樹脂(B)の全質量を基準として、3.0~6.0質量%であってよく、3.0~5.5質量%又は3.0~4.5質量%であってもよい。
【0043】
プロピレン系共重合樹脂(B)のエチレン含有量は、社団法人日本分析学会 高分子分析懇談会編集 高分子分析ハンドブック(2013年5月10日,第3刷)の412~413ページに記載の、エチレン含有量の定量方法(IR法)に従い測定することができる。
【0044】
プロピレン系共重合樹脂(B)のメルトフローレート(MFR:ISO 1133)(温度230℃、荷重2.16kg)は、1.0~10.0g/10分であってよい。メルトフローレートが上記下限値以上であることで、成形加工時の押出機負荷が小さくなり、加工速度が低下し難く優れた生産性を維持し易い。メルトフローレートが上記上限値以下であることで、ヒートシール層が優れた耐寒衝撃性を有し易い。これらの観点から、プロピレン系共重合樹脂(B)のメルトフローレートは、2.0~9.0g/10分又は3.0~8.0g/10分であってもよい。
【0045】
以上、ヒートシール層に含まれる各成分について説明したが、ヒートシール層は、プロピレン単独重合体(A)及びプロピレン系共重合樹脂(B)以外の成分を含んでいてもよい。ただし、ポリプロピレン系の同一素材で構成されるモノマテリアルの包装材に使用する観点では、ヒートシール層中のプロピレン含有量は、70質量%以上とすることが好ましい。なお、ヒートシール層中のプロピレン含有量は、ラマン分光法に従って測定することができる。
【0046】
ヒートシール層は、優れた耐熱性と優れた低温シール性を両立する観点から、プロピレン単独重合体(A)とプロピレン系共重合樹脂(B)の両方を含むことが好ましく、プロピレン単独重合体(A)と、融点が132~150℃であるプロピレン系共重合樹脂(B)とを含むことがより好ましい。ヒートシール層が、プロピレン単独重合体(A)とプロピレン系共重合樹脂(B)の両方を含む場合、耐熱性と低温シール性をよりバランスよく両立する観点から、ヒートシール層におけるプロピレン単独重合体(A)の含有量を、ヒートシール層の全質量を基準として、10~70質量%とし、ヒートシール層におけるプロピレン系共重合樹脂(B)(好ましくは融点が132~150℃であるプロピレン系共重合樹脂(B))の含有量を、ヒートシール層の全質量を基準として、30~90質量%とすることが好ましい。
【0047】
ヒートシール層におけるプロピレン単独重合体(A)の含有量は、耐熱性により優れる観点から、ヒートシール層の全質量を基準として、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上又は50質量%以上であってよい。ヒートシール層におけるプロピレン単独重合体(A)の含有量は、低温シール性及び耐寒衝撃性により優れる観点から、ヒートシール層の全質量を基準として、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下又は50質量%以下であってよい。これらの観点から、ヒートシール層におけるプロピレン単独重合体(A)の含有量は、ヒートシール層の全質量を基準として、10~70質量%であってよく、15~65質量%、20~60質量%、30~55質量%、40~55質量%、10~50質量%又は50~70質量%であってもよい。ヒートシール層におけるプロピレン単独重合体(A)の含有量は、低温シール性により優れる観点から、ヒートシール層の全質量を基準として、75~100質量%であってもよい。
【0048】
ヒートシール層におけるプロピレン系共重合樹脂(B)の含有量は、低温シール性及び耐寒衝撃性により優れる観点から、ヒートシール層の全質量を基準として、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上又は50質量%以上であってよい。ヒートシール層におけるプロピレン系共重合樹脂(B)の含有量は、耐熱性により優れる観点から、ヒートシール層の全質量を基準として、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下又は50質量%以下であってよい。これらの観点から、ヒートシール層におけるプロピレン系共重合樹脂(B)の含有量は、ヒートシール層の全質量を基準として、30~90質量%であってよく、35~85質量%、40~80質量%、45~70質量%、45~60質量%、50~90質量%又は35~50質量%であってもよい。ヒートシール層におけるプロピレン単独重合体(B)の含有量は、低温シール性により優れる観点から、ヒートシール層の全質量を基準として、0~25質量%であってもよい。
【0049】
ヒートシール層におけるプロピレン単独重合体(A)の含有量に対するプロピレン系共重合樹脂(B)の含有量の質量比[(B)/(A)]は、耐熱性及び耐寒衝撃性により優れる観点から、0.10~9.00であってよい。質量比[(B)/(A)]は、耐熱性及び耐寒衝撃性により一層優れる観点から、0.20以上、0.40以上又は0.80以上であってもよく、5.00以下、2.50以下又は1.50以下であってもよい。
【0050】
(隠蔽層)
隠蔽層は、プロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)と、エチレン-プロピレン共重合エラストマー(D)と、酸化チタン(E)と、を含む。隠蔽層が0.10質量%以上の酸化チタン(E)を含むため、多層フィルムが隠蔽性を有する。また、隠蔽層がプロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)とエチレン-プロピレン共重合エラストマー(D)とを含みつつ、酸化チタン(E)の含有量が30.00質量%以下に抑えられることで、酸化チタン(E)による隠蔽性と優れた耐寒衝撃性とを両立することができる。
【0051】
[プロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)]
プロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)は、プロピレンとエチレンとのブロック共重合により得られる樹脂である。
【0052】
プロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)は、例えば、プロピレン単独重合体成分(c1)と、エチレンとプロピレンの共重合体(例えばランダム共重合体)であるエチレン-プロピレン共重合体成分(c2)とを含む。このようなプロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)は、例えば、第一工程でプロピレン単独重合体成分(c1)を製造し、次いで、第二工程でプロピレン単独重合体成分(c1)存在下での気相重合によりエチレン-プロピレン共重合体成分(c2)を製造することで得ることができる。重合には、例えばチーグラー・ナッタ型触媒、メタロセン触媒、ハーフメタロセン触媒等を用いることができる。なお、この方法で得られるプロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)は、プロピレン単独重合体末端とエチレン-プロピレン共重合体末端が結合されてなるブロック共重合体(プロピレン単独重合体成分(c1)からなるブロックとエチレン-プロピレン共重合体成分(c2)からなるブロックの繰り返しにより構成されるブロック共重合体)ではなく、プロピレン単独重合体成分(c1)とエチレン-プロピレン共重合体成分(c2)との混合物であるとする考え方が一般的である。
【0053】
プロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)は、プロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)の全質量を基準として、60.0~90.0質量%の上記プロピレン単独重合体成分(c1)と、10.0~40.0質量%の上記エチレン-プロピレン共重合体成分(c2)とを含んでよい。各成分の含有量が上記範囲であることにより、より優れた耐寒衝撃性が得られ易い。上記観点から、プロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)におけるプロピレン単独重合体成分(c1)の含有量は、プロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)の全質量を基準として、65.0~87.5質量%であってもよく、70.0~85.0質量%であってもよい。同様に、プロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)におけるエチレン-プロピレン共重合体成分(c2)の含有量は、プロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)の全質量を基準として、12.5~35.0質量%であってもよく、15.0~30.0質量%であってもよい。
【0054】
エチレン-プロピレン共重合体成分(c2)中のエチレン含有量は、エチレン-プロピレン共重合体成分(c2)の全質量を基準として、20.0~40.0質量%であってよい。エチレン含有量が上記上限値以下であることで、生成物のタック性を抑制することができ、製造時に生成物のタックによる汚染がし難く優れた生産性を維持し易い。エチレン含有量が上記下限値以上であることで、より優れた耐寒衝撃性が得られ易い。
【0055】
エチレン-プロピレン共重合体成分(c2)のエチレン含有量は、社団法人日本分析学会 高分子分析懇談会編集 高分子分析ハンドブック(2013年5月10日,第3刷)の412~413ページに記載の、エチレン含有量の定量方法(IR法)に従い測定することができる。
【0056】
プロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)としては、メルトフローレート(MFR:ISO 1133)(温度230℃、荷重2.16kg)が0.5~2.5g/10分の範囲であるものを用いることができる。メルトフローレートが上記下限値以上であることで、成形加工時の押出機負荷が小さくなり、加工速度が低下し難く優れた生産性を維持し易い。メルトフローレートが上記上限値以下であることで、隠蔽層が優れた耐寒衝撃性を有し易い。これらの観点から、プロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)のメルトフローレートは、1.0~2.2g/10分又は1.5~2.0g/10分であってもよい。
【0057】
[エチレン-プロピレン共重合エラストマー(D)]
エチレン-プロピレン共重合エラストマー(D)は、プロピレンとエチレンとのブロック共重合により得られるエラストマーである。
【0058】
エチレン-プロピレン共重合エラストマー(D)は、例えばヘキサン、ヘプタン、灯油等の不活性炭化水素、又はプロピレン等の液化α-オレフィン溶媒の存在下で行うスラリー重合法、無溶媒下の気相重合法などにより得ることができる。具体的には、エチレン-プロピレン共重合エラストマー(D)は、公知の多段重合法を用いて得られる。すなわち、第1段の反応器でプロピレン及び/又はプロピレン-α-オレフィン重合体を重合した後、第2段の反応器でプロピレンとα-オレフィンとの共重合により得ることができる、重合型高ゴム含有ポリプロピレン系樹脂であってよい。重合には、例えばチーグラー・ナッタ型触媒、メタロセン触媒、ハーフメタロセン触媒等を用いることができる。
【0059】
エチレン-プロピレン共重合エラストマー(D)のメルトフローレート(MFR:ISO 1133)(温度230℃、荷重2.16kg)は、0.5~3.5g/10分であってよい。メルトフローレートが上記下限値以上であることで、成形加工時の押出機負荷が小さくなり、加工速度が低下し難く優れた生産性を維持し易い。メルトフローレートが上記上限値以下であることで、プロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)とエチレン-プロピレン共重合エラストマー(D)との相容性が良好となり、より優れた耐寒衝撃性が得られ易い。
【0060】
エチレン-プロピレン共重合エラストマー(D)における、エチレン含有量に対するプロピレン含有量の質量比[プロピレン含有量/エチレン含有量]は、さらに優れた耐寒衝撃性が得られ易い観点から、1.5~4.0であってよく、2.0~3.5又は2.5~3.0であってもよい。
【0061】
エチレン-プロピレン共重合エラストマー(D)のプロピレン含有量は、ラマン分光法に従い測定することができる。また、エチレン-プロピレン共重合エラストマー(D)のエチレン含有量は、社団法人日本分析学会 高分子分析懇談会編集 高分子分析ハンドブック(2013年5月10日,第3刷)の412~413ページに記載の、エチレン含有量の定量方法(IR法)に従い測定することができる。
【0062】
[酸化チタン(E)]
酸化チタン(E)は、例えば粒子状であり、ヒートシール層中に分散されている。酸化チタンの平均粒子径は、0.10~0.50μmであってよく、0.15~0.40μm又は0.20~0.30μmであってもよい。酸化チタンの平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定される値である。
【0063】
以上、隠蔽層に含まれる各成分について説明したが、隠蔽層は、プロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)、エチレン-プロピレン共重合エラストマー(D)及び酸化チタン(E)以外の成分を含んでいてもよい。ただし、ポリプロピレン系の同一素材で構成されるモノマテリアルの包装材に使用する観点では、隠蔽層中のプロピレン含有量は、70質量%以上とすることが好ましい。なお、隠蔽層中のプロピレン含有量は、ラマン分光法に従って測定することができる。
【0064】
隠蔽層におけるプロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)の含有量は、耐熱性により優れる観点から、隠蔽層の全質量を基準として、35質量%以上、50質量%以上又は60質量%以上であってよい。隠蔽層におけるプロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)の含有量は、耐寒衝撃性により優れる観点から、隠蔽層の全質量を基準として、90質量%以下、80質量%以下又は70質量%以下であってよい。これらの観点から、隠蔽層におけるプロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)の含有量は、隠蔽層の全質量を基準として、35~90質量%であってよく、50~80質量%、50~70質量%又は60~80質量%であってもよい。
【0065】
隠蔽層におけるエチレン-プロピレン共重合エラストマー(D)の含有量は、耐寒衝撃性により優れる観点から、隠蔽層の全質量を基準として、10質量%以上、15質量%以上又は20質量%以上であってよい。隠蔽層におけるエチレン-プロピレン共重合エラストマー(D)の含有量は、耐熱性により優れる観点から、隠蔽層の全質量を基準として、50質量%以下、40質量%以下又は30質量%以下であってよい。これらの観点から、隠蔽層におけるエチレン-プロピレン共重合エラストマー(D)の含有量は、隠蔽層の全質量を基準として、10~50質量%であってよく、10~40質量%、15~40質量%又は20~30質量%であってもよい。
【0066】
隠蔽層におけるプロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)の含有量に対するエチレン-プロピレン共重合エラストマー(D)の含有量の質量比[(D)/(C)]は、耐熱性及び耐寒衝撃性により優れる観点から、好ましくは0.10~1.00である。質量比[(D)/(C)]は、耐寒衝撃性により一層優れる観点から、0.20以上、0.30以上又は0.40以上であってもよい。質量比[(D)/(C)]は、耐熱性により一層優れる観点から、0.80以下、0.60以下又は0.40以下であってもよい。
【0067】
隠蔽層における酸化チタン(E)の含有量は、0.10~30.00質量%である。隠蔽層における酸化チタン(E)の含有量は、隠蔽性により優れる観点から、隠蔽層の全質量を基準として、1.00質量%以上、5.00質量%以上、7.00質量%以上又は10.00質量%以上であってもよい。隠蔽層における酸化チタン(E)の含有量は、耐寒衝撃性により優れる観点から、隠蔽層の全質量を基準として、23.00質量%以下、20.00質量%以下、15.00質量%以下、12.00質量%以下、8.00質量%以下であってもよい。
【0068】
(ラミネート層)
ラミネート層は、基材等に対するラミネート性を有する層である。ラミネート層は、ヒートシール層にて述べた、プロピレン単独重合体(A)、及び/又は、プロピレン系共重合樹脂(B)を含む。ラミネート層を設けることで、多層フィルムの歪みやカールを抑制し易くなる。
【0069】
ラミネート層におけるプロピレン単独重合体(A)とプロピレン系共重合樹脂(B)の配合比率に特に制限はないが、フィルム成形後のフィルムカール抑制の観点からヒートシール層と同様の配合比率であることが好ましい。すなわち、ラミネート層におけるプロピレン単独重合体(A)の含有量が、ラミネート層の全質量を基準として、10~70質量%であり、ラミネート層におけるプロピレン系共重合樹脂(B)の含有量が、ラミネート層の全質量を基準として、30~90質量%であることが好ましい。ラミネート層におけるその他の特徴も上述したヒートシール層の特徴と同じであってよい。例えば、ラミネート層に含まれるプロピレン系共重合樹脂(B)の融点は、132~150℃であってよい。また、例えば、ラミネート層中のプロピレン含有量は、70質量%以上であってよい。なお、ラミネート層中のプロピレン含有量は、ラマン分光法に従って測定することができる。
【0070】
(層の厚さ)
多層フィルムの厚さは、例えば包装材料用のフィルムとして使用可能な範囲であれば特に制限されることはないが、フィルムが厚すぎる場合にはコストデメリットとなる。このため、多層フィルムの厚さは100μm以下(例えば50~100μm)であってよく、70μm以下(例えば50~70μm)であってよい。
【0071】
ヒートシール層の厚さは、多層フィルムの厚さを基準として、8~30%であってよい。ヒートシール層の厚さの割合が上記下限値以上であることで、より優れた耐寒衝撃性が得られ易い。また、ヒートシール層の厚さの割合が上記上限値以下であることで、より優れた低温シール性が得られ易い。これらの観点から、ヒートシール層の厚さは、多層フィルムの厚さを基準として、8~25%、10~25%、8~21%又は10~21%であってもよい。ヒートシール層の厚さは、例えば、5~20μmであってよい。
【0072】
隠蔽層の厚さは、隠蔽性と耐寒衝撃性とをよりバランスよく両立する観点から、20μm以上であってよい。この観点から、隠蔽層の厚さは、25μm以上、30μm以上、35μm以上又は40μm以上であってもよい。隠蔽層の厚さの上限値は、特に限定されないが、コストデメリットとなるため、60μm以下又は50μm以下とすることができる。
【0073】
隠蔽層の厚さは、隠蔽性と耐寒衝撃性とをよりバランスよく両立する観点から、多層フィルムの厚さを基準として、50~92%であってよい。隠蔽層の厚さは、多層フィルムの厚さを基準として、58%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上又は79%以上であってもよく、90%以下、84%以下、80%以下又は85%以下であってもよい。
【0074】
ラミネート層を設ける際のヒートシール層とラミネート層の総厚は、多層フィルムの厚さを基準として、16%以上、20%以上又は25%以上であってよく、42%以下、40%以下又は35%以下であってよい。ヒートシール層とラミネート層の総厚の割合が上記下限値以上であることで、より優れた耐寒衝撃性が得られ易い。また、ヒートシール層とラミネート層の総厚の割合が上記上限値以下であることで、より優れた低温シール性が得られ易い。これらの観点から、ヒートシール層とラミネート層の総厚は、多層フィルムの厚さを基準として、16~42%、20~40%又は25~35%であってよい。ヒートシール層とラミネート層の総厚は、例えば、10~40μmであってよい。
【0075】
上記多層フィルムを製造する方法は特に制限されるものではなく、公知の方法を使用することが可能である。例えば、熱成形加工の方法としては、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解又は分散混合後、溶剤を加熱除去する方法等が挙げられる。作業性を考慮した場合、単軸スクリュー押出機又は2軸スクリュー押出機を使用することができる。単軸押出機を用いる場合、スクリューとしては、フルフライトスクリュー、ミキシングエレメントを持つスクリュー、バリアフライトスクリュー、フルーテッドスクリュー等が挙げられ、これらを特に制限なく使用することができる。2軸混練装置としては、同方向回転2軸スクリュー押出機、異方向回転2軸スクリュー押出機等を用いることができ、またスクリュー形状としてはフルフライトスクリュー、ニーディングディスクタイプ等特に限定なく用いることができる。
【0076】
上記方法において、多層フィルムを単軸押出機又は2軸押出機等により溶融したのち、フィードブロック又はマルチマニホールドを介しTダイで製膜する方法を用いることが可能である。
【0077】
得られた多層フィルムは、必要に応じて適宜後工程適性を向上する表面改質処理を施されてよい。例えば、単体フィルム使用時の印刷適性向上や、積層使用時のラミネート適性向上のために、印刷面や基材と接触する面に対して表面改質処理を行ってよい。表面改質処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理等のフィルム表面を酸化させることにより官能基を生じさせる処理や、コーティングにより易接着層を形成するウェットプロセスによる改質処理が挙げられる。
【0078】
以上、本開示の多層フィルムについて説明したが、本開示の多層フィルムは上記実施形態に限定されない。例えば、多層フィルムが、ヒートシール層、隠蔽層及びラミネート層以外の他の層を備えていてもよい。ただし、多層フィルムをポリプロピレン系の同一素材で構成されるモノマテリアルの包装材に使用する観点及びより優れた低温シール性が得られる観点から、多層フィルム中のプロピレン含有量(多層フィルムの全質量基準)は、70質量%以上とすることが好ましい。なお、多層フィルム中のプロピレン含有量は、ラマン分光法に従って測定することができる。
【0079】
<包装材>
本開示の他の一実施形態は、多層フィルムを備える包装材に関する。包装材に使用される多層フィルムは、ヒートシール層と、該ヒートシール層上に設けられた隠蔽層と、を備え、ヒートシール層が、プロピレン単独重合体(A)、及び/又は、プロピレン系共重合樹脂(B)を含み、隠蔽層が、プロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)と、エチレン-プロピレン共重合エラストマー(D)と、酸化チタン(E)と、を含み、隠蔽層における酸化チタン(E)の含有量が、隠蔽層の全質量を基準として、0.10~30.00質量%である、ことを特徴とする。この多層フィルムは、上記実施形態の多層フィルムであってよい。包装材は、多層フィルムのみからなっていてよく、多層フィルムと基材とを備えていてもよい。
【0080】
多層フィルムと基材とを備える包装材は、例えば、多層フィルムに、二軸延伸ポリアミドフィルム(ONy)、二軸延伸ポリエステルフィルム(PET)、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)、印刷紙、金属箔(AL箔)、透明蒸着フィルム等の基材を少なくとも1層積層し、積層体を形成することで得ることができる。基材は、多層フィルムの隠蔽層からみて前記ヒートシール層側とは反対側に配置されてよい。包装材をモノマテリアルの包装材(単一素材包装材)とする観点では、基材として二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)を用いることが好ましい。換言すれば、包装材は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムと、多層フィルムとを備える、単一素材包装材であってよい。従来、包装材に隠蔽性を付与する場合はアルミ基材等が用いられるが、本実施形態の包装材は、上記多層フィルムを備えることから、アルミ基材等の隠蔽性を有する基材を使用せずとも、十分な隠蔽性を有する。
【0081】
包装材が積層体である場合、その層構成は特に限定されず、包装体の要求特性、例えば包装する食品の品質保持期間を満たすバリア性、内容物の重量に対応できるサイズ・耐衝撃性、内容物の視認性等に応じて適宜調整することができる。包装材は、例えば、
図3に示す積層体であってよい。同図に示す包装材100は、多層フィルム10、接着層4、透明蒸着フィルム5、接着層6、及び基材(基材フィルム)7をこの順に備える。多層フィルム10は、包装材100の外層側から、ヒートシール層1と、隠蔽層2と、をこの順に備える。すなわち、隠蔽層2がヒートシール層1よりも内層側に位置する。包装材は、例えば、
図4に示す積層体であってもよい。同図に示す包装材101は、多層フィルム11、接着層4、透明蒸着フィルム5、接着層6、及び基材(基材フィルム)7をこの順に備える。多層フィルム11は、包装材101の外層側から、ヒートシール層1と、隠蔽層2と、ラミネート層3と、をこの順に備える。すなわち、隠蔽層2及びラミネート層3がヒートシール層1よりも内層側に位置する。これらの包装材(100,101)は、多層フィルム(10,11)側が内容物側となるように用いられる。
【0082】
包装材(100,101)の製造方法は、該包装材(100,101)を構成するフィルムに接着剤を用いて貼合せる通常のドライラミネート法が好適に採用できるが、必要に応じて多層フィルムを基材上に直接押出ラミネートする方法も採用することができる。
【0083】
<包装体>
本開示の他の一実施形態は、包装材から製袋された包装体に関する。包装体に使用される包装材は、多層フィルムとして、ヒートシール層と、該ヒートシール層上に設けられた隠蔽層と、を備え、ヒートシール層が、プロピレン単独重合体(A)、及び/又は、プロピレン系共重合樹脂(B)を含み、隠蔽層が、プロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)と、エチレン-プロピレン共重合エラストマー(D)と、酸化チタン(E)と、を含み、隠蔽層における酸化チタン(E)の含有量が、隠蔽層の全質量を基準として、0.10~30.00質量%であることを特徴とする多層フィルムを備える。この包装材は上記実施の包装材であってよい。
【0084】
包装体の製袋様式に特に制限はない。包装体は、例えば、包装材の上記多層フィルムをシール材とする、平袋、三方袋、合掌袋、ガゼット袋、スタンディングパウチ、スパウト付きパウチ、ビーク付きパウチ等であってよい。
【実施例】
【0085】
以下、本開示の内容を実施例及び比較例を用いてより詳細に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0086】
<材料の準備>
以下に示すプロピレン単独重合体(A)、プロピレン系共重合樹脂(B)、プロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)、エチレン-プロピレン共重合エラストマー(D)を準備した。なお、以下に示す材料の融解開始温度及び融点は、JIS K 7121に準拠して示差走査熱量測定を行うことにより求められる値である。また、メルトフローレートは、ISO 1133に準拠して温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される値である。また、エチレン含有量の測定は、社団法人日本分析学会 高分子分析懇談会編集 高分子分析ハンドブック(2013年5月10日,第3刷)の412~413ページに記載の、エチレン含有量の定量方法(IR法)に従い行った。また、以下に示す材料のプロピレン含有量の測定は、ラマン分光法に従い行った。
【0087】
(プロピレン単独重合体(A))
・樹脂(A):融解開始温度が153℃であり、融点(融解ピーク温度)が159℃であり、メルトフローレートが3.0g/10分であるプロピレン単独重合体。
【0088】
(プロピレン系共重合樹脂(B))
・樹脂(B1):融解開始温度が142℃であり、融点(融解ピーク温度)が147℃であり、メルトフローレートが7.5g/10分であり、エチレン含有量が3.4質量%であるプロピレン-エチレンランダム共重合体。
・樹脂(B2):融解開始温度が122℃であり、融点(融解ピーク温度)が133℃であり、メルトフローレートが7.0g/10分であり、エチレン含有量が5.8質量%であるプロピレン-エチレンランダム共重合体。
・樹脂(B3):融解開始温度が120℃であり、融点(融解ピーク温度)が131℃であり、メルトフローレートが6.5g/10分であり、エチレン含有量が23.7質量%であるプロピレン-エチレンランダム共重合体。
【0089】
(プロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C))
・樹脂(C):メルトフローレートが1.8g/10分であり、プロピレン単独重合体成分(c1)81.5質量%とエチレン-プロピレン共重合体成分(c2)18.5質量%とを含有し、エチレン-プロピレン共重合体成分(c2)に含まれるエチレン含有量が36.2質量%であるプロピレン-エチレンブロック共重合樹脂。
【0090】
(エチレン-プロピレン共重合エラストマー(D))
・エラストマー(D):メルトフローレートが0.6g/10分であり、エチレン含有量に対するプロピレン含有量の質量比[プロピレン含有量/エチレン含有量]が2.7であるエチレン-プロピレン共重合エラストマー。
【0091】
(酸化チタン(E))
DIC株式会社製の酸化チタン PEONY HP WHITEシリーズ 型番:L-11232-MPT
【0092】
<実施例1>
(積層フィルムの作製)
ヒートシール層形成用に、プロピレン単独重合体(A)である樹脂(A)50質量%とプロピレン系共重合樹脂(B)である樹脂(B1)50質量%とをペレット状態で混合して混合体(I)を準備した。また、隠蔽層形成用に、プロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)である樹脂(C)とエチレン-プロピレン共重合エラストマー(D)であるエラストマー(D)を、樹脂(C)に対するエラストマー(D)の質量比(比[エラストマー(D)/樹脂(C)])が0.20となるようにペレット状態で混合して混合体(II)を準備し、該混合体(II)と酸化チタン(E)とを、全体に占める酸化チタン(E)の含有量が11.25質量%となるように混合して、混合体(III)を準備した。
【0093】
上記混合体(I)及び混合体(III)を250℃に温調した押出機に供給し、溶融状態にて混練して、フィードブロックを持つTダイ押出機にてヒートシール層の厚さが15μm、隠蔽層の厚さが45μmとなるように積層し、実施例1のフィルムを作製した。得られたフィルムにおけるヒートシール層中のプロピレン含有量及び隠蔽層中のプロピレン含有量はいずれも70質量%以上である。
【0094】
<実施例2~4>
混合体(I)における樹脂(A)と樹脂(B1)の混合割合を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2~4のフィルムをそれぞれ作製した。得られたフィルムにおけるヒートシール層中のプロピレン含有量及び隠蔽層中のプロピレン含有量はいずれも70質量%以上である。
【0095】
<実施例5>
混合体(II)における樹脂(C)とエラストマー(D)の混合割合(比[エラストマー(D)/樹脂(C)])を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5のフィルムを作製した。得られたフィルムにおけるヒートシール層中のプロピレン含有量及び隠蔽層中のプロピレン含有量はいずれも70質量%以上である。
【0096】
<実施例6及び7>
混合体(III)における酸化チタン(E)の混合割合を表1に示すように変更したこと以外は、実施例5と同様にして、実施例6及び7のフィルムをそれぞれ作製した。得られたフィルムにおけるヒートシール層中のプロピレン含有量及び隠蔽層中のプロピレン含有量はいずれも70質量%以上である。
【0097】
<実施例8>
樹脂(B1)に代えて、樹脂(B2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例8のフィルムを作製した。得られたフィルムにおけるヒートシール層中のプロピレン含有量及び隠蔽層中のプロピレン含有量はいずれも70質量%以上である。
【0098】
<実施例9及び10>
混合体(I)における樹脂(A)と樹脂(B2)の混合割合を表2に示すように変更したこと以外は、実施例8と同様にして、実施例9及び10のフィルムをそれぞれ作製した。得られたフィルムにおけるヒートシール層中のプロピレン含有量及び隠蔽層中のプロピレン含有量はいずれも70質量%以上である。
【0099】
<実施例11>
混合体(I)に代えて樹脂(A)を単独で用いてヒートシール層を形成した(すなわち、樹脂(B1)を使用しなかった)こと以外は、実施例1と同様にして実施例11のフィルムを作製した。得られたフィルムにおけるヒートシール層中のプロピレン含有量及び隠蔽層中のプロピレン含有量はいずれも70質量%以上である。
【0100】
<実施例12>
混合体(I)に代えて樹脂(B1)を単独で用いてヒートシール層を形成した(すなわち、樹脂(A)を使用しなかった)こと以外は、実施例1と同様にして、実施例12のフィルムを作製した。得られたフィルムにおけるヒートシール層中のプロピレン含有量及び隠蔽層中のプロピレン含有量はいずれも70質量%以上である。
【0101】
<実施例13>
樹脂(B1)に代えて、樹脂(B3)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして実施例13のフィルムを作製した。得られたフィルムにおけるヒートシール層中のプロピレン含有量及び隠蔽層中のプロピレン含有量はいずれも70質量%以上である。
【0102】
<実施例14>
ヒートシール層と隠蔽層の層厚を表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例14のフィルムを作製した。得られたフィルムにおけるヒートシール層中のプロピレン含有量及び隠蔽層中のプロピレン含有量はいずれも70質量%以上である。
【0103】
<比較例1>
混合体(II)に代えて樹脂(C)を用いて混合体(III)を準備した(すなわち、エラストマー(D)を使用しなかった)こと以外は、実施例1と同様にして、比較例1のフィルムを作製した。
【0104】
<比較例2>
混合体(III)に代えて混合体(II)を用いて隠蔽層を形成した(すなわち、酸化チタン(E)を使用しなかった)こと以外は、実施例1と同様にして、比較例2のフィルムを作製した。
【0105】
<実施例15>
実施例1と同様にして、ヒートシール層形成用に混合体(I)を準備し、隠蔽層形成用に混合体(III)を準備した。また、ラミネート層形成用にヒートシール層形成用の混合体(I)と同じ組成の混合体(IV)を準備した。
【0106】
上記混合体(I)、混合体(III)及び混合体(IV)を250℃に温調した押出機に供給し、溶融状態にて混練して、フィードブロックを持つTダイ押出機にてヒートシール層とラミネート層の厚さがそれぞれ10μm、隠蔽層の厚さが40μmとなるように積層し、実施例15のフィルムを作製した。得られたフィルムにおけるヒートシール層中のプロピレン含有量、隠蔽層中のプロピレン含有量及びラミネート層中のプロピレン含有量はいずれも70質量%以上である。
【0107】
<実施例16、17、23及び24>
混合体(I)及び混合体(IV)における樹脂(A)と樹脂(B1)の混合割合を、表3に示すように変更したこと以外は、実施例15と同様にして、実施例16、17、23及び24のフィルムをそれぞれ作製した。得られたフィルムにおけるヒートシール層中のプロピレン含有量、隠蔽層中のプロピレン含有量及びラミネート層中のプロピレン含有量はいずれも70質量%以上である。
【0108】
<実施例18>
混合体(II)における樹脂(C)とエラストマー(D)の混合割合(比[エラストマー(D)/樹脂(C)])を表3に示すように変更したこと以外は、実施例15と同様にして、実施例18のフィルムを作製した。得られたフィルムにおけるヒートシール層中のプロピレン含有量、隠蔽層中のプロピレン含有量及びラミネート層中のプロピレン含有量はいずれも70質量%以上である。
【0109】
<実施例19~22及び比較例3>
混合体(III)における酸化チタン(E)の混合割合を表3に示すように変更したこと以外は、実施例18と同様にして、実施例19~22及び比較例3のフィルムをそれぞれ作製した。得られたフィルムにおけるヒートシール層中のプロピレン含有量、隠蔽層中のプロピレン含有量及びラミネート層中のプロピレン含有量はいずれも70質量%以上である。
【0110】
<各種評価>
各例で得られたフィルムに対し以下の評価を行った。結果を表1~表3に示す。
【0111】
[耐寒衝撃性評価]
株式会社東洋精機製のフィルムインパクトテスターを用いて、温度-5℃、秤量1.5J、弾頭サイズ1/2インチの条件で、各例で得られたフィルムの低温保管時の衝撃強さを測定した。衝撃強さ(フィルムインパクト)が6.00J/mm以上である場合に、耐寒衝撃性に優れると判断した。
【0112】
[隠蔽性]
X-RITE社製ポータブル透過濃度計(型番341C)を用いて、各例で得られたフィルムの隠蔽性を評価した。測定された透過濃度が0.20以上である場合に、十分な隠蔽性が得られていると判断した。
【0113】
[低温シール性評価]
厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(PET)、厚さ9μmのAL箔、厚さ15μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(ONy)、及び各例で得られたフィルム(ポリプロピレン系フィルム)を、ウレタン系接着剤を用いて通常のドライラミネート法で貼り合せ、次の構成の積層体を作製した。
積層体構成:PET/接着剤/AL箔/接着剤/ONy/接着剤/ポリプロピレン系フィルム
なお、各例のフィルムは、ヒートシール層が外層側(積層体の最外層)になるようにしてONyと接着させた。
【0114】
上記で得られた積層体を2枚用意し、これらの積層体のポリプロピレン系フィルム同士を、テスター産業株式会社製ヒートシーラーを用いて、シール圧0.2MPa、シール時間1秒間、シール幅5mmの条件にて、シール温度140℃~160℃の間で5℃刻みにヒートシールした。各温度でのヒートシール後、シール部分を15mm幅×80mmに切出し、島津製作所株式会社製の引張試験機を用いて、引張速度300mm/minの条件にてヒートシール強度を測定した。ヒートシール強度が40N/15mm以上に達する温度(シール温度)が低いほど、低温シール性が良好であると判断した。なお、表1~3に示すシール温度は、ヒートシール強度が40N/15mm以上に達したときの温度である。
【0115】
[耐熱性評価]
各例で得られたフィルムを用いて130mm×180mmの袋を作製し、内容物を入れずに袋の内面同士を密着させ、135℃で40分間レトルト処理を行った。その後、3辺のシール部をカットし、手でフィルムの剥離を行い、レトルト後融着評価を実施した。フィルム剥離が容易であるものをA、タック感を感じるものをB、剥離時にフィルムが変形するものをCと評価した。
【0116】
【0117】
【0118】
【符号の説明】
【0119】
1…ヒートシール層、2…隠蔽層、3…ラミネート層、4…接着層、5…透明蒸着フィルム、6…接着層、7…基材フィルム、10,11…多層フィルム、100,101…包装材。
【要約】
ヒートシール層と、該ヒートシール層上に設けられた隠蔽層と、を備え、ヒートシール層が、プロピレン単独重合体(A)、及び/又は、プロピレン系共重合樹脂(B)を含み、隠蔽層が、プロピレン-エチレンブロック共重合樹脂(C)と、エチレン-プロピレン共重合エラストマー(D)と、酸化チタン(E)と、を含み、隠蔽層における酸化チタン(E)の含有量が、隠蔽層の全質量を基準として、0.10~30.00質量%である、多層フィルム。