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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】合わせガラス及び液晶装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20231212BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1333
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023552552
(86)(22)【出願日】2022-10-31
(86)【国際出願番号】 JP2022040615
(87)【国際公開番号】W WO2023090133
(87)【国際公開日】2023-05-25
【審査請求日】2023-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2021188367
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】白石 勇
(72)【発明者】
【氏名】池澤 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】玉木 敦
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-058747(JP,A)
【文献】国際公開第2019/026849(WO,A1)
【文献】特開2007-326763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1333
G02F 1/13
C03C 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1透明基板と、
前記第1透明基板と対向して配置される第2透明基板と、
前記第1透明基板と前記第2透明基板との間に設けられる液晶セルと、
前記第1透明基板と前記液晶セルとの間に設けられる、OCRからなる第1中間層と、
前記第2透明基板と前記液晶セルとの間に設けられる、OCAからなる第2中間層と、
前記液晶セルと前記第1透明基板との間に設けられる被覆部材と、
を備え、
前記液晶セルは、平面視において、前記被覆部材と重なる領域と、前記被覆部材と重ならない領域と、を有し、
前記被覆部材は、透明であって、平面視において、前記第1中間層と重なっている合わせガラス。
【請求項2】
第1透明基板と、
前記第1透明基板と対向して配置される第2透明基板と、
前記第1透明基板と前記第2透明基板との間に設けられ、光の透過率が制御されるアクティブエリア及び光の透過率の制御に用いられない非アクティブエリアを有する液晶セルと、
前記第1透明基板と前記液晶セルとの間に設けられる第1中間層と、
前記第2透明基板と前記液晶セルとの間に設けられる第2中間層と、
前記液晶セルと前記第1透明基板との間に設けられる被覆部材と、
を備え、
前記被覆部材は、透明であって、平面視において、前記液晶セルの前記アクティブエリアと重複せず、前記第1中間層と少なくとも一部が重なって配置されており、
前記第2中間層は、平面視において、前記アクティブエリアの全面と重複している合わせガラス。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の合わせガラスにおいて、
前記被覆部材は、厚みが第1中間層の厚みの40%以上90%以下である合わせガラス。
【請求項4】
請求項2に記載の合わせガラスにおいて、
前記第1中間層は、OCRであり、
前記第2中間層は、OCAである合わせガラス。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の合わせガラスにおいて、
前記被覆部材は、フィルム材と接合層により構成される合わせガラス。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の合わせガラスにおいて、
前記被覆部材は、前記液晶セルの前記第1透明基板側の表面上に設けられる合わせガラス。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の合わせガラスにおいて、
前記被覆部材は、前記第1透明基板の前記液晶セル側の表面上に設けられる合わせガラス。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載の合わせガラスにおいて、
前記被覆部材の厚みは、前記第1中間層の厚みの25%以上75%以下である合わせガラス。
【請求項9】
請求項1又は請求項2に記載の合わせガラスにおいて、
隣接する前記被覆部材の間に隙間が設けられる合わせガラス。
【請求項10】
請求項1又は請求項2に記載の合わせガラスと、
前記合わせガラスの外周部を保持する枠部材と、
を備える液晶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラス及びこれを備えた液晶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、窓等に用いられ、光の透過率を制御する電子ブラインドに利用可能な調光部材、この調光部材を用いた調光装置が提案されている。例えば、調光部材として液晶セル(調光セル)を用い、この液晶セルを一対のガラスで挟み込んで合わせガラスとすることが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-187810号公報
【文献】国際公開第2019/198748号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶セルを挟み込んだ合わせガラスを高温の環境下に晒した場合、液晶セルの基材や液晶層が膨張する。その結果、液晶セルに封入された液晶が局所的に偏在する現象(以下、「液晶溜まり」ともいう)が不規則な形状で発生する。この液晶溜まりは、外観不良と認識される場合があるため、これを抑制することが望まれている。
【0005】
本発明の目的は、液晶セルの外観不良を抑制することができる合わせガラス及び液晶装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。また、符号を付して説明した構成は、適宜に改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。本開示の実施形態は、以下の[1]~[10]に関する。
【0007】
[1] 第1の発明は、第1透明基板(41)と、前記第1透明基板と対向して配置される第2透明基板(42)と、前記第1透明基板と前記第2透明基板との間に設けられる液晶セル(20)と、前記第1透明基板と前記液晶セルとの間に設けられる、OCRからなる第1中間層(31)と、前記第2透明基板と前記液晶セルとの間に設けられる、OCAからなる第2中間層(32)と、前記液晶セルと前記第1透明基板との間に設けられる被覆部材(50)と、を備え、前記液晶セルは、平面視において、前記被覆部材と重なる領域と、前記被覆部材と重ならない領域と、を有する合わせガラス(10)。
【0008】
[2] 第2の発明は、第1透明基板(41)と、前記第1透明基板と対向して配置される第2透明基板(42)と、前記第1透明基板と前記第2透明基板との間に設けられ、光の透過率が制御されるアクティブエリア(A1)及び光の透過率の制御に用いられない非アクティブエリア(A2)を有する液晶セル(20)と、前記第1透明基板と前記液晶セルとの間に設けられる第1中間層(31)と、前記第2透明基板と前記液晶セルとの間に設けられる第2中間層(32)と、前記液晶セルと前記第1透明基板との間に設けられる被覆部材(50)と、を備え、前記被覆部材は、平面視において、前記液晶セルの前記アクティブエリアと重複しない合わせガラス(10)。
【0009】
[3] [2]に記載の合わせガラスにおいて、前記第1中間層は、OCRであり、前記第2中間層は、OCAであってもよい。
【0010】
[4] [1]から[3]までのいずれかに記載の合わせガラスにおいて、前記被覆部材がフィルム材(51)と接合層(52)により構成されていてもよい。
【0011】
[5] [1]から[4]までのいずれかに記載の合わせガラスにおいて、前記被覆部材が前記液晶セルの前記第1透明基板側の表面上に設けられていてもよい。
【0012】
[6] [1]から[4]までのいずれかに記載の合わせガラスにおいて、前記被覆部材が前記第1透明基板の前記液晶セル側の表面上に設けられていてもよい。
【0013】
[7] [1]から[6]までのいずれかに記載の合わせガラスにおいて、前記被覆部材の厚みが前記第1中間層の厚みの25%以上75%以下であってもよい。
【0014】
[8] [1]から[7]までのいずれかに記載の合わせガラスにおいて、隣接する前記被覆部材の間に隙間が設けられていてもよい。
【0015】
[9] [1]から[8]までのいずれかに記載の合わせガラスにおいて、前記被覆部材は、透明であってもよい。
【0016】
[10] [1]から[9]までのいずれかに記載の合わせガラスと、前記合わせガラスの外周部を保持する枠部材(11)と、を備える液晶装置(1)。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る合わせガラス及び液晶装置によれば、液晶セルの外観不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る調光装置1の平面図である。
図2図1のs1-s1断面を示す断面図である。
図3】合わせガラス10の構成を示す分解斜視図である。
図4】調光セル20と被覆部材50の配置を示す平面図である。
図5】被覆部材50の構成を示す分解斜視図である。
図6】(A)~(D)は、調光セル20に設けられる被覆部材50の各種形態を示す平面図である。
図7】(E)~(H)は、調光セル20に設けられる被覆部材50の各種形態を示す平面図である。
図8】(A)~(E)は、第1実施形態の調光セル20を備えた合わせガラス10の製造工程を説明する図である。
図9】第2実施形態に係る調光装置1Aの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書に添付した図面は、いずれも模式図であり、理解しやすさ等を考慮して、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を、実物から変更又は誇張している。また、図面においては、部材の断面を示すハッチングを適宜に省略する。
【0020】
本明細書等において、形状、幾何学的条件、これらの程度を特定する用語、例えば、「平行」、「直交」、「方向」等の用語については、その用語の厳密な意味に加えて、ほぼ平行、ほぼ直交等とみなせる程度の範囲、概ねその方向とみなせる範囲を含む。
本明細書等においては、板、シート、フィルム等の用語を使用しているが、これら部材は、一般的な厚さの区分に限定されず、適宜に置き換え可能とする。例えば、「OCAシート」は、「OCAフィルム」と置き換えてもよい。
【0021】
また、図面には、必要に応じてX-Y-Zの互いに直交する座標系を記載した。この座標系の基準となる図1(後述)は、合わせガラス10を板面に対して垂直な方向(法線方向)から見た図である。図1に示すX軸、Y軸は、それぞれ合わせガラス10の板面に平行な軸である。本実施形態に示す合わせガラス10は、長方形であり、その一辺に平行な線がX軸である。このX軸に沿うX方向のうち、一方の方向をX1方向とし、このX1方向と反対の方向をX2方向とする。また、X軸と直交する辺に平行な線がY軸である。このY軸に沿うY方向のうち、一方の方向をY1方向とし、このY1方向と反対の方向をY2方向とする。更に、X-Y軸と直交する線がZ軸である。このZ軸に沿うZ方向のうち、一方の方向をZ1方向とし、このZ1方向と反対の方向をZ2方向とする。以下の説明においては、「~方向」を「~側」ともいう。
なお、本明細書中に記載する数値、形状、材料等は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜に選択して使用してもよい。
【0022】
以下に説明する各実施形態の調光装置は、光の透過率の制御が求められる様々な技術分野に適用可能であり、その適用範囲は特に限定されない。調光装置は、例えば、建築物の窓ガラス、ショーケース、屋内の透明パーテーション、車両のウインドウ(例えば、フロント、サイド、リア、ルーフ等のウインドウ)、車両内部のパーテーションボード等の調光を図る部位に設置することができる。これにより、建築物や車両等の内側への入射光の光量を制御したり、建築物や車両等の内部における所定区域への入射光の光量を制御したりすることができる。
【0023】
また、各実施形態の調光装置は、表面形状が曲面形状を有する3次元形状により構成されていてもよい。例えば、調光装置は、一方の面側に凸となる形状を有していてもよい。また、調光装置は、これに限らず、例えば、表面形状が平面形状(例えば、平板状)であってもよい。各実施形態では、調光装置の表面形状が平面形状(2次元形状)により構成されるものとして説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る調光装置1の平面図である。図2は、図1のs1-s1断面を示す断面図である。図3は、合わせガラス10の構成を示す分解斜視図である。図4は、調光セル20と被覆部材50の配置を示す平面図である。図5は、被覆部材50の構成を示す分解斜視図である。
【0025】
図1及び図2に示すように、第1実施形態の調光装置1は、合わせガラス10と、枠部材11と、を備えている。調光装置1は、本実施形態及び第2実施形態において液晶装置であり、例えば、電圧の印加により光透過率を制御可能な装置である。
枠部材11は、合わせガラス10の外周部を枠形に覆う部材である。枠部材11には、開口部11aが設けられている。図2に示すように、開口部11aは、調光装置1の表面側(Z1側)と裏面側(Z2側)の両方に設けられている。後述する調光セル20の法線方向(Z方向)において、開口部11aの位置、形状及び大きさは、調光セル20のアクティブエリアA1(後述)と一致している。枠部材11は、合わせガラス10の外周部を保護する機能と、合わせガラス10を、調光を図る部位に取り付け可能とする機能と、を備えている。例えば、合わせガラス10を建築物の窓ガラスに適用した場合、枠部材11は、窓枠として機能する。なお、枠部材11は、合わせガラス10の外周部を枠形に覆う形状に限らず、合わせガラス10を部分的に覆う形状であってもよい。また、調光装置において、合わせガラスに枠部材を設けない構成としてもよい。
【0026】
(合わせガラス)
合わせガラス10は、電圧の印加により光の透過率を制御可能な調光セル20(後述)を含む積層体である。図2及び図3に示すように、合わせガラス10は、第1ガラス板(第1透明基板)41、第2ガラス板(第2透明基板)42、第1中間層31、第2中間層32、調光セル20及び被覆部材50を備えている。なお、図1では、被覆部材50の図示を省略している。
【0027】
第1ガラス板41及び第2ガラス板42は、それぞれ合わせガラス10の表裏面に、対向して配置される部材である。例えば、第1ガラス板41が合わせガラス10の表面側(Z1側)に配置されるとすると、第2ガラス板42は、合わせガラス10の裏面側(Z2側)に配置される。第1ガラス板41及び第2ガラス板42としては、例えば、ソーダライムガラス(青板ガラス)、硼珪酸ガラス(白板ガラス)、石英ガラス、ソーダガラス、カリガラス等の透光性の高い板ガラスを用いることができる。
【0028】
また、第1ガラス板41及び第2ガラス板42として、樹脂ガラスを用いることができる。樹脂ガラスとしては、例えば、ポリカーボネート、アクリル等からなるものを用いることができる。特に、ポリカーボネートは、耐熱性、強度の面で好ましい。更に、ガラス板には、耐擦傷性等の要求特性に応じて、ハードコート等の表面処理がなされてもよい。ガラス板の材料としては、無機ガラスより樹脂ガラスの方が軽量化の面で好ましい。他方、無機ガラスの方が樹脂ガラスよりコスト、耐熱性、耐傷性等の面で好ましい。
【0029】
第1中間層31は、第1ガラス板41と調光セル20との間に設けられ、第1ガラス板41と調光セル20とを互いに接合させる層である。第1実施形態において、第1中間層31は、OCR(Optical Clear Resin)により構成されている。OCRは、重合性化合物を含む液状の硬化性接着層用組成物を硬化した硬化物である。具体的には、OCRは、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂又はウレタン系樹脂等のベース樹脂と添加剤とを混合した液状の樹脂を対象物に塗布した後、例えば紫外線(UV)等を用いて硬化したものである。OCRからなる第1中間層31は、光学透明性を有しており、更に少なくとも120℃程度までの耐熱性、耐湿熱性、耐候性を有することが好ましい。
【0030】
第2中間層32は、第2ガラス板42と調光セル20との間に設けられ、第2ガラス板42と調光セル20とを互いに接合させる層である。第1実施形態において、第2中間層32は、OCA(Optical Clear Adhesive)により構成されている。OCAは、例えば、以下のようにして作製された層である。まず、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の離型フィルム上に、重合性化合物を含む液状の硬化性接着層用組成物を塗布し、これを例えば紫外線(UV)等を用いて硬化させて、OCAシートを得る。上記硬化性接着層用組成物は、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂又はウレタン系樹脂等の光学用粘着剤であってもよい。このOCAシートを対象物に貼合した後、離型フィルムを剥離することにより、上記OCAからなる層が得られる。OCAからなる第2中間層32は、光学透明性を有しており、更に少なくとも120℃程度までの耐熱性、耐湿熱性、耐候性を有することが好ましい。
【0031】
(調光セル)
調光セル20は、本実施形態において液晶セルであり、例えば、電圧の印加により光の透過率を制御可能なフィルムである。調光セル20は、第1ガラス板41と第2ガラス板42との間に中間層(31、32)を介して挟持されている。調光セル20は、液晶層23(後述)として、二色性色素を使用したゲストホスト型の液晶組成物を備えている。図2に示すように、調光セル20は、第1積層体21、第2積層体22及び第1積層体21と第2積層体22との間に配置された液晶層23を備えている。調光セル20の厚みは、例えば、200~1000μm程度である。
【0032】
図1及び図2に示すように、調光セル20は、光の透過率が制御されるアクティブエリアA1と、アクティブエリアA1に隣接する非アクティブエリアA2と、を備えている。非アクティブエリアA2は、光の透過率の制御に用いられない領域となる。本実施形態においては、図2に示すように、調光セル20の法線方向(Z方向)において、枠部材11と重なる領域が非アクティブエリアA2となる。一方、調光セル20の法線方向(Z方向)において、枠部材11と重ならない領域、言い換えると、枠部材11の開口部11aと重なる領域がアクティブエリアA1となる。なお、本実施形態の非アクティブエリアA2は、調光セル20のアクティブエリアA1に隣接する外周部において、光の透過率を制御する機能を備えていない領域又は光の透過率を制御する機能を備えているが、設計上、アクティブエリアA1として用いられない領域に相当する。
【0033】
図2に示すように、調光セル20において、第1積層体21は、第1基材24A、第1透明電極25A及び第1配向層26Aを備えている。第1積層体21において、上記各部は、表面側(Z1側)から裏面側(Z2側)に向けて、第1基材24A、第1透明電極25A、第1配向層26Aの順に積層されている。また、第2積層体22は、第2基材24B、第2透明電極25B及び第2配向層26Bを備えている。第2積層体22において、上記各部は、裏面側(Z2側)から表面側(Z1側)に向けて、第2基材24B、第2透明電極25B及び第2配向層26Bの順に積層されている。
【0034】
第1積層体21と第2積層体22との間には、複数のビーズスペーサー27が配置されている。液晶層23は、第1積層体21と第2積層体22との間において、複数のビーズスペーサー27の間に液晶が充填されることにより、形成されている。複数のビーズスペーサー27は、それぞれ不規則的に配置されていてもよいし、規則的に配置されていてもよい。
調光セル20は、第1積層体21及び第2積層体22にそれぞれ設けられた第1透明電極25A及び第2透明電極25Bに印加する電圧を変化させることにより、液晶層23のゲストホスト液晶組成物による液晶材料の配向が変化し、これにより光の透過率が制御される。
【0035】
第1基材24A及び第2基材24Bは、透明な樹脂製であって、可撓性を有するフィルムを適用することができる。第1基材24A及び第2基材24Bとしては、光学異方性が小さく、可視域の波長(380nm以上800nm以下)における透過率が80%以上である透明樹脂フィルムを適用することが望ましい。透明樹脂フィルムの材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、EVA等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、(メタ)アクロニトリル、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー等の樹脂を挙げることができる。
【0036】
透明樹脂フィルムの材料としては、特に、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂が好ましい。また、第1基材24A及び第2基材24Bとして用いられる透明樹脂フィルムの厚みは、その材料にもよるが、その透明樹脂フィルムが可撓性を有する範囲内で適宜選択することができる。第1基材24A及び第2基材24Bの厚みは、それぞれ50μm以上200μm以下としてもよい。本実施形態では、第1基材24A及び第2基材24Bの一例として、厚み125μmのポリエチレンテレフタレートフィルムが適用される。
【0037】
第1透明電極25A及び第2透明電極25Bは、それぞれ第1基材24A及び第2基材24B(透明樹脂フィルム)に積層される透明導電膜から構成されている。透明導電膜としては、この種の透明樹脂フィルムに適用される各種の透明電極材料を適用することができ、酸化物系の全光透過率が50%以上の透明な金属薄膜を挙げることができる。例えば、酸化錫系、酸化インジウム系、酸化亜鉛系が挙げられる。
【0038】
酸化錫(SnO)系としてはネサ(酸化錫SnO)、ATO(Antimony Tin Oxide:アンチモンドープ酸化錫)、FTO(フッ素ドープ酸化錫)が挙げられる。酸化インジウム(In)系としては、酸化インジウム、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)、IZO(Indium Zinc Oxide)が挙げられる。酸化亜鉛(ZnO)系としては、酸化亜鉛、AZO(アルミドープ酸化亜鉛)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)が挙げられる。第1実施形態において、第1透明電極25A及び第2透明電極25Bを構成する透明導電膜は、ITOにより形成されている。
【0039】
ビーズスペーサー27は、液晶層23の厚み(セルギャップ)を規定する部材である。本実施形態では、ビーズスペーサー27として、球形状のビーズスペーサーを用いている。ビーズスペーサー27の直径は、1μm以上20μm以下、好ましくは3μm以上15μm以下の範囲としてもよい。ビーズスペーサー27は、シリカ等による無機材料による構成、有機材料による構成、これらを組み合わせたコアシェル構造の構成等を広く適用することができる。また、ビーズスペーサー27は、球形状による構成の他、円柱形状、楕円柱形状、多角柱形状等のロッド形状により構成してもよい。また、ビーズスペーサー27は、透明部材により製造されるが、必要に応じて着色した材料を適用して色味を調整するようにしてもよい。
【0040】
なお、本実施形態において、ビーズスペーサー27は、第2積層体22に設けられるが、これに限定されるものでなく、第1積層体21及び第2積層体22の両方又は第1積層体21にのみ設けられるようにしてもよい。また、ビーズスペーサー27は、必ずしも設けられていなくてもよい。また、ビーズスペーサー27に代えて、又は、ビーズスペーサー27とともに、柱状のスペーサーを用いてもよい。
【0041】
第1配向層26A及び第2配向層26Bは、液晶層23に含まれる液晶分子群を所望の方向に配向させるための部材である。第1配向層26A及び第2配向層26Bは、光配向層により形成される。光配向層に適用可能な光配向材料としては、光配向の手法を適用可能な各種の材料を広く適用することができる。例えば、光分解型、光二量化型、光異性化型等を挙げることができる。第1実施形態では、光二量化型の材料を使用する。光二量化型の材料としては、例えば、シンナメート、クマリン、ベンジリデンフタルイミジン、ベンジリデンアセトフェノン、ジフェニルアセチレン、スチルバゾール、ウラシル、キノリノン、マレインイミド、シンナミリデン酢酸誘導体を有するポリマー等を挙げることができる。中でも、配向規制力が良好である点で、シンナメート、クマリンの一方又は両方を有するポリマーが好ましく用いられる。
【0042】
なお、光配向層に代えて、ラビング配向層を用いてもよい。ラビング配向層に関しては、ラビング処理を行わないものとしてもよいし、ラビング処理を行い、微細なライン状凹凸形状を賦型処理して配向層を作製してもよい。なお、本実施形態において、調光セル20は、第1配向層26A及び第2配向層26Bを備えているが、これに限らず、第1配向層26A及び第2配向層26Bを備えない形態としてもよい。
【0043】
液晶層23には、ゲストホスト液晶組成物、二色性色素組成物を広く適用することができる。ゲストホスト液晶組成物にはカイラル剤を含有させるようにして、液晶材料を水平配向させた場合に液晶層23の厚み方向に螺旋形状に配向させるようにしてもよい。また、第1積層体21と第2積層体22との間において、液晶層23を取り囲むように、平面視で環状又は枠状のシール材28が配置されている。このシール材28により、第1積層体21と第2積層体22とが一体に保持され、液晶材料の漏出が防止される。シール材28は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂等を適用することができる。
【0044】
液晶層23には、重合性官能基を有していない液晶化合物として、ネマチック液晶化合物、スメクチック液晶化合物及びコレステリック液晶化合物を適用することができる。
ネマチック液晶化合物としては、例えば、ビフェニル系化合物、ターフェニル系化合物、フェニルシクロヘキシル系化合物、ビフェニルシクロヘキシル系化合物、フェニルビシクロヘキシル系化合物、トリフルオロ系化合物、安息香酸フェニル系化合物、シクロヘキシル安息香酸フェニル系化合物、フェニル安息香酸フェニル系化合物、ビシクロヘキシルカルボン酸フェニル系化合物、アゾメチン系化合物、アゾ系化合物、及びアゾオキシ系化合物、スチルベン系化合物、トラン系化合物、エステル系化合物、ビシクロヘキシル系化合物、フェニルピリミジン系化合物、ビフェニルピリミジン系化合物、ピリミジン系化合物、及びビフェニルエチン系化合物等を挙げることができる。
【0045】
スメクチック液晶化合物としては、例えば、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、ポリクロロアクリレート系、ポリオキシラン系、ポリシロキサン系、ポリエステル系等の強誘電性高分子液晶化合物を挙げることができる。
コレステリック液晶化合物としては、例えば、コレステリルリノレート、コレステリルオレエート、セルロース、セルロース誘導体、ポリペプチド等を挙げることができる。
【0046】
ゲストホスト方式に用いられる二色性色素としては、液晶に対して溶解性があり、二色性の高い色素、例えば、アゾ系、アントラキノン系、キノフタロン系、ペリレン系、インジゴ系、チオインジゴ系、メロシアニン系、スチリル系、アゾメチン系、テトラジン系等の二色性色素が挙げられる。
【0047】
調光セル20は、遮光時におけるゲストホスト液晶組成物の配向が無電界時に形成されるように、第1配向層26A及び第2配向層26Bを一定の方向にプレチルトに係る配向規制力を設定した水平配向層に構成し、これによりノーマリーダークにより構成される。なお、調光セル20の遮光時の設定を電界印加時としてノーマリークリアとして構成してもよい。ここで、ノーマリーダークとは、液晶に電圧がかかっていない時に光の透過率が最小となり、黒い画面になる構造である。ノーマリークリアとは、液晶に電圧がかかっていない時に光の透過率が最大となり、透明となる構造である。
【0048】
また、透光時において調光セル20を通して見える景色等が明瞭に見えることが望ましいので、透光時のヘイズ値は低いことが望ましい。具体的には、調光セル20の透光時のヘイズ値は、30%以下であることが望ましく、15%以下であることがより望ましい。このような低いヘイズ値を実現するためには、液晶混合物中に重合性化合物が入っていないことが望ましい。
【0049】
第1実施形態の調光セル20は、ゲストホスト型の液晶層23を備える例を示したが、これに限られるものではない。調光セル20は、二色性色素組成物を用いないTN(Twisted Nematic)方式、VA(Vertical Alignment)方式、IPS(In-Plane-Switching)方式等の液晶層23を備える構成としてもよい。このような液晶層23を備える場合、第1基材24A及び第2基材24Bの表面にそれぞれ直線偏光層をさらに設けることで、調光フィルムとして機能させることができる。
【0050】
第1透明電極25A及び第2透明電極25Bと外部との電気的接続を行うために、フレキシブルプリント配線基板29(図3参照)が設けられている。フレキシブルプリント配線基板29は、例えば、第1透明電極25A及び第2透明電極25Bが液晶層23を挟んでいない領域において、第1透明電極25A及び第2透明電極25Bに挟まれることにより接続されている。なお、フレキシブルプリント配線基板29は、例えば、第1透明電極25A及び第2透明電極25Bに挟まれていない形態であってもよい。
【0051】
(被覆部材)
被覆部材50は、調光セル20の外周部と第1ガラス板41との間に介在する第1中間層31の厚さを調節するための部材である。本実施形態において、調光セル20の外周部とは、非アクティブエリアA2又は非アクティブエリアA2の一部を含む領域をいう。図2に示すように、第1実施形態の被覆部材50は、調光セル20の表面上(Z1側)に配置されている。図3及び図4に示すように、被覆部材50は、細長い矩形状に形成されている。本実施形態において、被覆部材50は、調光セル20の各辺において、それぞれ2箇所ずつ設けられている。また、隣接する被覆部材50の間には、図4に示すように、隙間部(隙間)Sが設けられている。隣接する被覆部材50の間に隙間部Sを設けることにより、第1ガラス板41と調光セル20との間に第1中間層31(OCR)を形成する際に、隙間部Sから余分な空気を排出することができる。被覆部材50が上述のように構成されていることにより、調光セル20は、被覆部材50と重なる領域と、被覆部材50と重ならない領域とを有している。
【0052】
なお、被覆部材50は、図4に示すように設けられていなくてもよく、後述するように、調光セル20の1辺に沿って連続している形態であってもよい。また、図4において、被覆部材50の外側の縁は、調光セル20の外周縁20aよりも外側にはみ出しているが、外側の縁が調光セル20の外周縁20aと一致するように配置されていてもよい。
【0053】
被覆部材50は、図5に示すように、フィルム材51と、接合層52と、を備えている。フィルム材51は、被覆部材50において、第1ガラス板41の側に配置される部材である。フィルム材51としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)の他、前述した第1基材24A及び第2基材24Bと同じ材料を用いることができる。被覆部材50は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。しかし、被覆部材50を透明とすることにより、以下のような効果を得ることができるので、被覆部材50は、透明とすることがより望ましい。被覆部材50を透明とすることによる効果としては、製作途中での調光セルに不具合が生じる可能性のあるセル周辺部に対し、被覆部材50が透明であれば、その不具合を見落とす確率を極力小さくできることが挙げられる。このような効果を得るためには、被覆部材50が透明である度合い、すなわち光の透過率は50%以上であることが望ましく、80%以上であることがさらに望ましい。上記透過率は可視光領域(400nm~800nm)の範囲における値であり、分光光度計により測定される。被覆部材50の厚みは、第1中間層31の厚みの25%以上95%以下とすることが望ましく、40%以上90%以下とすることがさらに望ましい。フィルム材51の厚みとしては、例えば、50~250μmであることが望ましく、100~250μmであることがさらに望ましい。
【0054】
接合層52は、フィルム材51と調光セル20とを接合する層である。接合層52は、被覆部材50において、調光セル20の側に配置される。接合層52としては、例えば、OCA、OCR等を用いることができる。接合層52の厚みとしては、例えば、15~250μmが挙げられる。なお、被覆部材50において、接合層52を省略した構成としてもよい。
図2に示すように、被覆部材50は、平面視において、調光セル20のアクティブエリアA1と重複しない領域に設けられる。本実施形態の被覆部材50は、隙間部Sを除いて、調光セル20の非アクティブエリアA2のほぼ全域を覆うように設けられている。なお、被覆部材50が1箇所に設けられる場合には、その1箇所の被覆部材50の面積に対して適用されていればよい。
【0055】
次に、被覆部材50の他の配置例について説明する。図6(A)~(D)及び図7(E)~(H)は、調光セル20に設けられる被覆部材50の各種形態を示す平面図である。
図6(A)は、額縁状に形成した被覆部材50を調光セル20の外周部に設けた形態を示している。
図6(B)は、調光セル20の4辺を覆うように被覆部材50を設けた形態を示している。
図6(C)は、調光セル20の1辺を覆うように被覆部材50を設けた形態を示している。図6(C)では、被覆部材50を調光セル20のY1側の1辺に設けた形態を示しているが、被覆部材50をY2側、X1側又はX2側の1辺に設けた形態としてもよい。
図6(D)は、調光セル20の3辺を覆うように被覆部材50を設けた形態を示している。図6(D)では、被覆部材50を調光セル20のY2側を除いた3辺に設けた形態を示しているが、被覆部材50をY1側、X1側又はX2側を除いた3辺に設けた形態としてもよい。
【0056】
図7(E)は、調光セル20の対向する2辺を覆うように被覆部材50を設けた形態を示している。図7(E)では、被覆部材50を調光セル20のX1側及びX2側の2辺に設けた形態を示しているが、被覆部材50を調光セル20のY1側及びY2側の2辺に設けた形態としてもよい。
【0057】
図7(F)は、調光セル20の隣接する2辺を覆うように被覆部材50を設けた形態を示している。図7(F)では、被覆部材50を調光セル20のX1側とY1側の2辺に設けた形態を示しているが、被覆部材50は、調光セル20の隣接する2辺であれば、どの位置に設けてもよい。例えば、被覆部材50を調光セル20のX2側とY2側の2辺に設けた形態としてもよい。
【0058】
図7(G)は、調光セル20の隣接する2辺において、調光セル20の1辺よりも長さの短い被覆部材50を設けた形態を示している。図7(G)では、被覆部材50を調光セル20のX1側とY1側の2辺に設けた形態を示しているが、被覆部材50は、調光セル20の隣接する2辺であれば、どの位置に設けてもよい。例えば、被覆部材50を調光セル20のX2側とY2側の2辺に設けた形態としてもよい。また、各位置に設ける被覆部材50の長さは、図7(G)と異なっていてもよい。
【0059】
図7(H)は、調光セル20の1辺において、X方向の長さが調光セル20の1辺よりも長さが短く且つY方向に幅広の被覆部材50を設けた形態を示している。図7(H)では、被覆部材50を調光セル20のY1側且つX1側に設けた形態を示しているが、被覆部材50は、調光セル20の1辺において、調光セル20の1辺よりも長さが短く且つ幅広であれば、どの位置に設けてもよい。例えば、図7(H)と同じ形状の被覆部材50を、調光セル20のY1側且つX2側に設けた形態としてもよい。
【0060】
上記各形態において、調光セル20(調光装置1)を縦置きにした場合、例えば、調光セル20のY方向を鉛直方向として、Y2側が上側となるように設置した場合、調光セル20において、アクティブエリアA1の下側(Y1側)に液晶溜まりが発生しやすくなる。そのため、調光セル20を上記の方向で縦置きにする場合は、調光セル20の下側(Y1側)に被覆部材50を配置することにより、アクティブエリアA1のY1側に発生する液晶溜まりを目立ちにくくすることができる。調光セル20を上記の方向で縦置きにした場合は、被覆部材50を、例えば、図6(C)、(D)、図7(F)~(H)等の配置とすることが好ましい形態となる。
【0061】
(合わせガラスの製造方法)
次に、第1実施形態の調光セル20を備えた合わせガラス10の製造方法を、図8を参照して説明する。図8(A)~(E)は、第1実施形態の調光セル20を備えた合わせガラス10の製造工程を説明する図である。
【0062】
まず、図8(A)に示すように、第2ガラス板42を作業台(不図示)の上に載置し、その第2ガラス板42の上に、OCAからなる第2中間層32を積層する。
次に、図8(B)に示すように、第2中間層32の上に調光セル20を積層する。
次に、図8(C)に示すように、調光セル20の外周部に、被覆部材50を配置する(例えば、図3の形態)。被覆部材50は、接合層52が調光セル20の側となり、フィルム材51が調光セル20と反対側となるように積層される。
次に、図8(D)に示すように、図8(C)で得られた積層体の上に、第1中間層31となる未硬化のOCRを塗布する。OCRは、例えば、ディスペンサー、スリットコーター等の塗布ノズル(不図示)により塗布される。
【0063】
次に、図8(E)に示すように、第1中間層31の上に第1ガラス板41を貼り合せる。第1中間層31は、非圧着性の接着成分を含有するOCRであるため、第1ガラス板41を加圧することなしに、大気貼り合せ又は真空貼り合せにより貼り合せることができる。この後、積層体に対して紫外線(UV)を照射することにより、OCRを硬化させることができる。OCRが硬化することにより、第2ガラス板42、第2中間層32、調光セル20、被覆部材50、第1中間層31及び第1ガラス板41が、この順番で積層された合わせガラス10が完成する。完成した合わせガラス10の外周に枠部材11を取り付けることにより、調光装置1を得ることができる(図1図2参照)。
【0064】
次に、調光セル20に設けた被覆部材50の作用及び効果について説明する。
先に説明したように、一般的な液晶セルを用いた合わせガラスを高温の環境下に晒した場合、液晶セルの基材や液晶層が膨張して液晶溜まりが発生しやすくなる。一方、本実施形態の調光セル20は、被覆部材50と重なる領域と、被覆部材50と重ならない領域とを有する。そのため、調光セル20を挟持した合わせガラス10において、被覆部材50が配置された領域の第1中間層31の厚みは、被覆部材50が配置されていない領域よりも薄くなる。これにより、合わせガラス10の製造時において、被覆部材50と重ならない領域で調光セル20と接するOCRは、被覆部材50と重なる領域で調光セル20と接するOCRよりも大きく膨張する。その膨張により、被覆部材50と重ならない領域で調光セル20と接するOCRは、被覆部材50と重なる領域で調光セル20と接するOCRよりも、調光セル20をより強く押圧する。これにより、被覆部材50と重ならない領域に存在する液晶の一部は、被覆部材50と重なる領域、すなわち、OCRの膨張が小さい領域に移動する。そのため、調光セル20において、液晶を移動させたい領域に被覆部材50を配置することにより、その領域に、セルに充填された液晶の一部を選択的に集めることができる。このように、本実施形態の合わせガラス10においては、調光セル20において液晶を選択的に集めたい領域に被覆部材50を配置することにより、液晶溜まりの発生する領域を制御することができる。したがって、調光セル20において、液晶溜まりを発生させたくない領域に隣接した領域に被覆部材50を配置することにより、該当領域における調光セル20の外観不良を抑制することができる。
【0065】
本実施形態の合わせガラス10において、調光セル20は、図4に示すように、外周部に沿って被覆部材50が配置されているため、被覆部材50が配置された領域では、第1中間層31の厚みが他の領域(例えば、アクティブエリアA1)よりも薄くなる。そのため、合わせガラス10の製造時において、第1中間層31となるOCRを硬化させた際に、調光セル20の外周部におけるOCRの膨張は、中央部のOCRに生じる膨張よりも相対的に小さくなる。これにより、OCRの硬化時において、調光セル20の中央部に接するOCRは、外周部よりも膨張して調光セル20の中央部をより強く押圧する。そのため、調光セル20の中央部に存在する液晶の一部は、OCRの膨張が小さい外周部の側に移動する。すなわち、調光セル20(合わせガラス10)の中央部に存在する液晶の一部は、製造時において、被覆部材50の配置された非アクティブエリアA2の領域内に集められることになる。これにより、製造された調光セル20(合わせガラス10)が高温の環境下に晒された場合に、基材や液晶層に膨張が生じても、調光セル20の中央部では液晶溜まりが生じにくくなるため、主にアクティブエリアA1内における外観不良や調光性能の低下を抑制することができる。
【0066】
第1実施形態の合わせガラス10において、被覆部材50は、調光セル20の側に設けられる。そのため、図8(C)に示す工程において、調光セル20の外周部に被覆部材50を配置する作業を容易に行うことができる。
第1実施形態の合わせガラス10において、被覆部材50は、フィルム材51と接合層52により構成される(図5参照)。そのため、図8(D)に示す工程において、調光セル20の上にOCRを塗布した際に、調光セル20の外周部に配置した被覆部材50の位置をずれにくくすることができる。
【0067】
第1実施形態の合わせガラス10において、被覆部材50は、図4に示すように、調光セル20の各辺において、それぞれ2箇所ずつ設けられ、隣接する被覆部材50との間に隙間部Sが設けられている。そのため、図8(E)に示す工程において、第1ガラス板41と調光セル20の間に未硬化のOCRを挟み込み、第1中間層31を形成する際に、隙間部Sから余分な空気を排出することができる。
【0068】
(第2実施形態)
第2実施形態の調光装置1Aは、被覆部材50の配置される位置が第1実施形態と相違する。第2実施形態の調光装置1Aにおいて、その他の構成は、第1実施形態と同じである。そのため、第2実施形態の説明では、調光装置1Aの断面図のみを図示し、その他の図を省略する。また、第2実施形態の説明及び図面において、第1実施形態と同等の部材等には、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0069】
図9は、第2実施形態に係る調光装置1Aの断面図である。図9は、第1実施形態の調光装置1の断面図(図2)に相当する。
図9に示すように、第2実施形態の調光装置1Aにおいて、被覆部材50は、第1ガラス板41の表面上(Z2側)に配置されている。第2実施形態の被覆部材50において、フィルム材51(図5参照)は、調光セル20の側に配置される。また、接合層52(図5参照)は、第1ガラス板41の側に配置される。第2実施形態において、被覆部材50の配置される領域は、第1実施形態と同じである。すなわち、被覆部材50は、平面視において、調光セル20のアクティブエリアA1と重複しない領域に設けられている。第2実施形態の調光装置1Aにおいて、被覆部材50の配置としては、例えば、第1実施形態の図4図6(A)~(D)及び図7(E)~(H)の形態を適用することができる。
【0070】
第2実施形態の調光装置1Aにおいても、調光セル20の外周部に沿って配置された被覆部材50により、製造時に、調光セル20の中央部に存在する液晶の一部を、非アクティブエリアA2の領域内に集めることができる。そのため、第2実施形態の調光装置1Aによれば、調光セル20(合わせガラス10)が高温の環境下に晒された場合において、アクティブエリアA1内における外観不良や調光性能の低下を抑制することができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、後述する変形形態のように種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内に含まれる。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、実施形態に記載したものに限定されない。なお、上述の実施形態及び後述する変形形態は、適宜に組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【0072】
(変形形態)
実施形態では、被覆部材50を細長い矩形状とした例について説明したが、これに限定されない。被覆部材50の形状は、例えば、平面視において正方形、長方形であってもよいし、平行四辺形や台形、円形、楕円形等であってもよい。すなわち、被覆部材50の平面視における形状は、適宜に変更可能である。
【0073】
実施形態では、調光セル20が平面視において長方形である例について説明したが、これに限定されない。調光セル20の形状は、例えば、平面視において正方形であってもよいし、平行四辺形や台形等であってもよい。すなわち、調光セル20の平面視における形状は、適宜に変更可能である。調光セル20を含む合わせガラス10についても同様であり、平面視における形状は、長方形に限定されず、適宜に変更可能である。
【0074】
実施形態では、被覆部材50を調光セル20の側に設ける構成(第1実施形態)と、第1ガラス板41の側に設ける構成(第2実施形態)についてそれぞれ説明したが、これに限定されない。第1中間層31(OCR)を間に挟んで、調光セル20の側と第1ガラス板41の側にそれぞれ被覆部材50を設ける構成としてもよい。本構成において、調光セル20の側に設けた被覆部材50と第1ガラス板41の側に設けた被覆部材50は、形状や配置が同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0075】
実施形態では、合わせガラス10の第1中間層31と第2中間層32との間に調光セル20のみを積層する構成について説明したが、これに限定されない。調光セル20の片面又は両面に、例えば、UVカットフィルム等の機能性フィルムを積層してもよい。
実施形態では、合わせガラス10の第1中間層31をOCRにより構成し、第2中間層32をOCAにより構成した例について説明したが、これに限定されない。第1中間層31と第2中間層32を、それぞれOCRで構成してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1,1A 調光装置
10 合わせガラス
11 枠部材
20 調光セル
31 第1中間層
32 第2中間層
41 第1ガラス板
42 第2ガラス板
50 被覆部材
51 フィルム材
52 接合層
S 隙間部
A1 アクティブエリア
A2 非アクティブエリア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9