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特許7401061セルフモニタリングシステム、方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】セルフモニタリングシステム、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/70 20180101AFI20231212BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALN20231212BHJP
【FI】
G16H20/70
G06Q50/10
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019129915
(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公開番号】P2021015466
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
(73)【特許権者】
【識別番号】519255414
【氏名又は名称】ライフツービッツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117514
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敦朗
(72)【発明者】
【氏名】永光 信一郎
(72)【発明者】
【氏名】松岡 美智子
(72)【発明者】
【氏名】片山 崇
【審査官】森田 充功
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-153413(JP,A)
【文献】特開2005-004398(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0041965(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
G06Q 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライエントが自己観察記録を行うためのセルフモニタリングシステムであって、
連続する複数の連載コンテンツ又は、ワークシートの入力を進行させるイベント処理を記述したシナリオに従って、前記連載コンテンツ及び前記ワークシートの提供を順次進行させるシナリオ制御部と、
前記シナリオ制御部による制御に従って、前記連載コンテンツの一つとして精神療法又は心理療法に関するレッスンを進行させるレッスンモードを前記イベント処理として実行するレッスンモード実行部と、
外的要因の発生記録情報と、発生した外的要因に対する前記クライエントの行動に関する行動的情報と、当該外的要因に対する前記クライエントの認知に関する認知的情報とを、当該クライエントの操作に基づいて前記ワークシートとして記録するワークモードを前記イベント処理の一つとして実行するワークモード実行部と、
前記外的要因とその外的要因に対するクライエントの行動及び認知との相関を分析し、分析された相関を特徴付ける特徴キーワードを抽出する相関特徴分析部と、
前記発生記録情報、前記行動的情報、前記認知的情報及び前記特徴キーワードとを関連付けて蓄積する観察データ蓄積部と
を備え、
前記シナリオ制御部は、前記シナリオの進行、前記クライエントのレッスン進行レベル、前記クライエントの分類、現在位置、現在時刻のいずれかに基づいて発生し得る前記イベント処理を予測し、発生させるべき前記イベント処理が前記レッスンモードか前記ワークモードかを選択し、前記ワークモードが所定回数実行されるごとに、前記レッスンモードを順次進行させる
ことを特徴とするセルフモニタリングシステム。
【請求項2】
所定のキーワードを監視キーワードとして集約した監視用リストを保持し、前記相関特徴分析部が抽出した前記特徴キーワードについて前記監視用リストを参照する参照部と、
前記参照部による参照結果に基づいて、設定された通知先にアラートを発信するアラート発信部と
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のセルフモニタリングシステム。
【請求項3】
現在時刻及び現在位置に関する情報を現在情報として取得する現在情報取得部と、
前記現在情報取得部が取得した現在情報に基づいて、前記発生した外的要因を予測する外的要因予測部と、
前記外的要因予測部が予測した外的要因に関連する前記行動的情報、前記認知的情報及び前記特徴キーワードに基づく誘導コメントを生成するコメント生成部と、
前記クライエントの操作による前記発生記録情報、前記行動的情報及び前記認知的情報の入力を受け付ける際に、前記誘導コメントを提示するアドバイス提示部と
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のセルフモニタリングシステム。
【請求項4】
前記観察データ蓄積部に蓄積された前記発生記録情報、前記行動的情報、前記認知的情報及び前記特徴キーワードに基づいて、前記クライエントの反応パターンを分類する反応分類部をさらに備え、
前記アドバイス提示部は、前記反応分類部が分類した反応パターンに従って、前記誘導コメントを選択して提示する
ことを特徴とする請求項3に記載のセルフモニタリングシステム。
【請求項5】
前記アドバイス提示部によって前記誘導コメントを提示するタイミングを指示するトリガー生成部をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載のセルフモニタリングシステム。
【請求項6】
クライエントが自己観察記録を行うためのセルフモニタリングプログラムであって、コンピューターを、
連続する複数の連載コンテンツ又は、ワークシートの入力を進行させるイベント処理を記述したシナリオに従って、前記連載コンテンツ及び前記ワークシートの提供を順次進行させるシナリオ制御部と、
前記シナリオ制御部による制御に従って、前記連載コンテンツの一つとして精神療法又は心理療法に関するレッスンを進行させるレッスンモードを前記イベント処理として実行するレッスンモード実行部と、
外的要因の発生記録情報と、発生した外的要因に対する前記クライエントの行動に関する行動的情報と、当該外的要因に対する前記クライエントの認知に関する認知的情報とを、当該クライエントの操作に基づいて前記ワークシートとして記録するワークモードを前記イベント処理の一つとして実行するワークモード実行部と、
前記外的要因とその外的要因に対するクライエントの行動及び認知との相関を分析し、分析された相関を特徴付ける特徴キーワードを抽出する相関特徴分析部と、
前記発生記録情報、前記行動的情報、前記認知的情報及び前記特徴キーワードとを関連付けて蓄積する観察データ蓄積部
として機能させ、
前記シナリオ制御部は、前記シナリオの進行、前記クライエントのレッスン進行レベル、前記クライエントの分類、現在位置、現在時刻のいずれかに基づいて発生し得る前記イベント処理を予測し、発生させるべき前記イベント処理が前記レッスンモードか前記ワークモードかを選択し、前記ワークモードが所定回数実行されるごとに、前記レッスンモードを順次進行させる
ことを特徴とするセルフモニタリングプログラム。
【請求項7】
前記コンピューターを、
所定のキーワードを監視キーワードとして集約した監視用リストを保持し、前記相関特徴分析部が抽出した前記特徴キーワードについて前記監視用リストを参照する参照部と、
前記参照部による参照結果に基づいて、設定された通知先にアラートを発信するアラート発信部
としてさらに機能させることを特徴とする請求項6に記載のセルフモニタリングプログラム。
【請求項8】
前記コンピューターを、
現在時刻及び現在位置に関する情報を現在情報として取得する現在情報取得部と、
前記現在情報取得部が取得した現在情報に基づいて、前記発生した外的要因を予測する外的要因予測部と、
前記外的要因予測部が予測した外的要因に関連する前記行動的情報、前記認知的情報及び前記特徴キーワードに基づく誘導コメントを生成するコメント生成部と、
前記クライエントの操作による前記発生記録情報、前記行動的情報及び前記認知的情報の入力を受け付ける際に、前記誘導コメントを提示するアドバイス提示部
としてさらに機能させることを特徴とする請求項6に記載のセルフモニタリングプログラム。
【請求項9】
前記コンピューターを、
前記観察データ蓄積部に蓄積された前記発生記録情報、前記行動的情報、前記認知的情報及び前記特徴キーワードに基づいて、前記クライエントの反応パターンを分類する反応分類部
としてさらに機能させ、
前記アドバイス提示部は、前記反応分類部が分類した反応パターンに従って、前記誘導コメントを選択して提示する
ことを特徴とする請求項8に記載のセルフモニタリングプログラム。
【請求項10】
前記コンピューターを、前記アドバイス提示部によって前記誘導コメントを提示するタイミングを指示するトリガー生成部としてさらに機能させことを特徴とする請求項8に記載のセルフモニタリングプログラム。
【請求項11】
クライエントが自己観察記録を行うためのセルフモニタリング方法であって、
シナリオ制御部が、連続する複数の連載コンテンツ又は、ワークシートの入力を進行させるイベント処理を記述したシナリオに従って、前記連載コンテンツ及び前記ワークシートの提供を順次進行させるシナリオ制御ステップと、
前記シナリオ制御ステップでのシナリオ制御部による制御に従って、レッスンモード実行部が前記連載コンテンツの一つとして精神療法又は心理療法に関するレッスンを進行させるレッスンモードを前記イベント処理として実行するレッスンモード実行ステップと、
ワークモード実行部が、外的要因の発生記録情報と、発生した外的要因に対する前記クライエントの行動に関する行動的情報と、当該外的要因に対する前記クライエントの認知に関する認知的情報とを、当該クライエントの操作に基づいて前記ワークシートとして記録するワークモードを前記イベント処理の一つとして実行するワークモード実行ステップと、
相関特徴分析部が、前記外的要因とその外的要因に対するクライエントの行動及び認知との相関を分析し、分析された相関を特徴付ける特徴キーワードを抽出する相関特徴分析ステップと、
観察データ蓄積部が、前記発生記録情報、前記行動的情報、前記認知的情報及び前記特徴キーワードとを関連付けて蓄積する観察データ蓄積ステップと
を含み、
前記シナリオ制御ステップにおいて前記シナリオ制御部は、前記シナリオの進行、前記クライエントのレッスン進行レベル、前記クライエントの分類、現在位置、現在時刻のいずれかに基づいて発生し得る前記イベント処理を予測し、発生させるべき前記イベント処理が前記レッスンモードか前記ワークモードかを選択し、前記ワークモードが所定回数実行されるごとに、前記レッスンモードを順次進行させる
ことを特徴とするセルフモニタリング方法。
【請求項12】
参照部が、所定のキーワードを監視キーワードとして集約した監視用リストを保持し、前記相関特徴分析部が抽出した前記特徴キーワードについて前記監視用リストを参照する参照ステップと、
アラート発信部が、前記参照ステップにおける前記参照部による参照結果に基づいて、設定された通知先にアラートを発信するアラート発信ステップと
をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載のセルフモニタリング方法。
【請求項13】
現在情報取得部が、現在時刻及び現在位置に関する情報を現在情報として取得する現在情報取得ステップと、
外的要因予測部が、前記現在情報取得部が取得した現在情報に基づいて、前記発生した外的要因を予測する外的要因予測ステップと、
コメント生成部が、前記外的要因予測部が予測した外的要因に関連する前記行動的情報、前記認知的情報及び前記特徴キーワードに基づく誘導コメントを生成するコメント生成ステップと、
アドバイス提示部が、前記クライエントの操作による前記発生記録情報、前記行動的情報及び前記認知的情報の入力を受け付ける際に、前記誘導コメントを提示するアドバイス提示ステップと
をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載のセルフモニタリング方法。
【請求項14】
反応分類部が、前記観察データ蓄積部に蓄積された前記発生記録情報、前記行動的情報、前記認知的情報及び前記特徴キーワードに基づいて、前記クライエントの反応パターンを分類する反応分類ステップをさらに含み、
前記アドバイス提示ステップにおいて前記アドバイス提示部は、前記反応分類部が分類した反応パターンに従って、前記誘導コメントを選択して提示する
ことを特徴とする請求項13に記載のセルフモニタリング方法。
【請求項15】
トリガー生成部が、前記アドバイス提示部によって前記誘導コメントを提示するタイミングを指示するトリガー生成ステップをさらに含むことを特徴とする請求項13に記載のセルフモニタリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認知行動療法や行動療法等の精神療法又は心理療法において、クライエントが自己観察記録を行うためのセルフモニタリングシステム、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、認知行動療法や行動療法等の精神療法又は心理療法で用いられるマネジメント技法としてセルフモニタリングが提唱されている。このセルフモニタリングによれば自分の行動や活動を記録することで目的の行動を強化したり、自身のやる気を上げる等の効果が期待できる。
【0003】
ここで認知行動療法(CBT:Cognitive Behavioral Therapy)とは、学習理論に基づく行動療法的な技法と、認知療法或いは論理療法を基にする認知的アプローチとを用いて系統的に問題行動や症状を改善する科学的な治療法である。認知行動療法の治療では、問題や症状をクライエント自身がセルフケアできるようになることを目指し、治療者とクライエントが問題を共有し、お互いに共同で治療的な目標設定を行い問題を解決してゆく。
【0004】
また、認知行動療法におけるセルフモニタリングでは、認知的側面のアセスメントとして、「どのような場面でどのような考えがよく浮かぶか」、「その場で必要とされる行動に対する自信はどの程度か」、「行動の結果をどのようにとらえているか」、そして、「今後の見通しについてどのように考えているか」など、クライエントが困難な状況の経過に沿ってどのような認知が見られるか把握するために、自己観察記録をホームワークとして与え,実際の場面でどのような考え方が浮かんだかを記録させる。そして、この記録に基づいて「多くの場面で共通してみられる考え方はどのようなものか」、「行動や気分に強い影響を及ぼしている認知は何か」などを分析していく。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】鈴木伸一,熊野宏昭,坂野雄二著「認知行動療法」1999、http://hikumano.umin.ac.jp/cbt_text.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記セルフモニタリングでは、自己観察によって実際の場面で浮かんだ考え方などを記録するホームワークを継続的に行わなければならず、そのモチベーションを維持するのが難しいという問題があった。特に、中高生などでは自分自身を客観的に観察して記録することが難しく、ホームワーク自体がストレスになる可能性もある。
【0007】
この発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、認知行動療法におけるセルフモニタリングにおいて、自己観察を継続させるモチベーションを高めることのできるセルフモニタリングシステム、方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、クライエントが自己観察記録を行うためのセルフモニタリングシステムであって、連続する複数の連載コンテンツと、ワークシートの入力とを進行させるイベント処理を記述したシナリオに従って、連載コンテンツ及び前記ワークシートの提供を順次進行させるシナリオ制御部と、シナリオ制御部による制御に従って、連載コンテンツの一つとして精神療法又は心理療法に関するレッスンを進行させるレッスンモードをイベント処理として実行するレッスン実行部と、外的要因の発生記録情報と、発生した外的要因に対するクライエントの行動に関する行動的情報と、当該外的要因に対するクライエントの認知に関する認知的情報とを、当該クライエントの操作に基づいて前記ワークシートとして記録するワークモードをイベント処理の一つとして実行するワークモード実行部と、外的要因とその外的要因に対するクライエントの行動及び認知との相関を分析し、分析された相関を特徴付ける特徴キーワードを抽出する相関特徴分析部と、発生記録情報、行動的情報、認知的情報及び特徴キーワードとを関連付けて蓄積する観察データ蓄積部とを備え、シナリオ制御部は、シナリオの進行、クライエントのレッスン進行レベル、ユーザーの分類、現在位置、現在時刻のいずれかに基づいて発生し得るイベント処理を予測し、発生させるべきイベント処理がレッスンモードかワークモードかを選択し、ワークモードが所定回数実行されるごとに、前記レッスンモードを順次進行させることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、クライエントが自己観察記録を行うためのセルフモニタリング方法であって、
(1)シナリオ制御部が、連続する複数の連載コンテンツと、ワークシートの入力とを進行させるイベント処理を記述したシナリオに従って、前記連載コンテンツ及び前記ワークシートの提供を順次進行させるシナリオ制御ステップと、
(2)シナリオ制御ステップでのシナリオ制御部による制御に従って、レッスン実行部が連載コンテンツの一つとして精神療法又は心理療法に関するレッスンを進行させるレッスンモードをイベント処理として実行するレッスン実行ステップと、
(3)ワークモード実行部が、外的要因の発生記録情報と、発生した外的要因に対する前記クライエントの行動に関する行動的情報と、当該外的要因に対する前記クライエントの認知に関する認知的情報とを、当該クライエントの操作に基づいて前記ワークシートとして記録するワークモードを前記イベント処理の一つとして実行するワークモード実行ステップと、
(4)相関特徴分析部が、外的要因とその外的要因に対するクライエントの行動及び認知との相関を分析し、分析された相関を特徴付ける特徴キーワードを抽出する相関特徴分析ステップと、
(5)観察データ蓄積部が、発生記録情報、行動的情報、認知的情報及び特徴キーワードを関連付けて蓄積する観察データ蓄積ステップと
を含み、
上記シナリオ制御ステップにおいてシナリオ制御部は、シナリオの進行、クライエントのレッスン進行レベル、ユーザーの分類、現在位置、現在時刻のいずれかに基づいて発生し得るイベント処理を予測し、発生させるべきイベント処理がレッスンモードかワークモードかを選択し、前記ワークモードが所定回数実行されるごとに、前記レッスンモードを順次進行させる。
【0010】
上記発明では、所定のキーワードを監視キーワードとして集約した監視用リストを保持し、前記相関特徴分析部が抽出した前記特徴キーワードについて前記監視用リストを参照する参照部と、前記参照部による参照結果に基づいて、設定された通知先にアラートを発信するアラート発信部とをさらに備えることが好ましい。
【0011】
また、上記発明では、現在時刻及び現在位置に関する情報を現在情報として取得する現在情報取得部と、前記現在情報取得部が取得した現在情報に基づいて、前記発生した外的要因を予測する外的要因予測部と、前記外的要因予測部が予測した外的要因に関連する前記行動的情報、前記認知的情報及び前記特徴キーワードに基づく誘導コメントを生成するコメント生成部と、前記クライエントの操作による前記発生記録情報、前記行動的情報及び前記認知的情報の入力を受け付ける際に、前記誘導コメントを提示するアドバイス提示部とをさらに備えることが好ましい。
【0012】
さらに、上記発明では、前記観察データ蓄積部に蓄積された前記発生記録情報、前記行動的情報、前記認知的情報及び前記特徴キーワードに基づいて、前記クライエントの反応パターンを分類する反応分類部をさらに備え、前記アドバイス提示部は、前記反応分類部が分類した反応パターンに従って、前記誘導コメントを選択して提示することが好ましい。また、上記発明では、前記アドバイス提示部によって前記誘導コメントを提示するタイミングを指示するトリガー生成部をさらに備えることが好ましい。
【0013】
なお、上述した本発明に係るシステムや方法は、所定の言語で記述された本発明のプログラムをコンピューター上で実行することにより実現することができる。すなわち、本発明のプログラムを、携帯端末装置やスマートフォン、ウェアラブル端末、モバイルPCその他の情報処理端末、パーソナルコンピューターやサーバーコンピューター等の汎用コンピューターのICチップ、メモリ装置にインストールし、CPU上で実行することにより、上述した各機能を有するシステムを構築したり、本発明に係る方法を実施したりすることができる。
【0014】
また、本発明のプログラムは、例えば、通信回線を通じて配布することが可能であり、また、コンピューターで読み取り可能な記録媒体に記録することにより、スタンドアローンの計算機上で動作するパッケージアプリケーションとして譲渡することができる。この記録媒体として、具体的には、フレキシブルディスクやカセットテープ等の磁気記録媒体、若しくはCD-ROMやDVD-ROM等の光ディスクの他、RAMカードなど、種々の記録媒体に記録することができる。そして、このプログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体によれば、汎用のコンピューターや専用コンピューターを用いて、上述したシステム及び方法を簡便に実施することが可能となるとともに、プログラムの保存、運搬及びインストールを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
以上述べたように、これらの発明によれば、認知行動療法におけるセルフモニタリングに際し、レッスンモードとワークモードが並行して進展されるため、キャラクターとの対話や物語を楽しく読み進めるといった娯楽的要素を盛り込むことができ、自己観察記録を継続させるモチベーションの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係るセルフモニタリングシステムSの全体構成を示す機能ブロック図である。
図2】実施の形態に係るコンテンツサーバー3の内部構成を示すブロック図である。
図3】実施形態に係るクライエント用のスマートフォン1aの内部構成を示すブロック図である。
図4】実施形態に係るセルフモニタリングシステムの全体動作を示すフロー図である。
図5】実施形態に係るセルフモニタリングシステムのアドバイス出力時及びワークシート入力時における動作を示すフロー図である。
図6】実施形態に係るセルフモニタリングシステムのワークシート分析時における動作を示すフロー図である。
図7】実施形態に係るセルフモニタリングシステムにおけるレッスンモードの画面構成を示す説明図である。
図8】実施形態に係るセルフモニタリングシステムにおけるワークモードの画面構成を示す説明図である。
図9】実施形態に係るセルフモニタリングシステムにおけるクライエントの反応パターンとクライエントの属性(タイプ)の関係を示すテーブルデータを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るセルフモニタリングシステム及びセルフモニタリングプログラムの実施形態を詳細に説明する。なお、本発明は、上記した各実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0018】
(セルフモニタリングシステムの全体構成)
図1は、本実施形態に係るセルフモニタリングシステムの全体構成を示す概念図である。本実施形態に係るセルフモニタリングシステムは、中高生等のクライエントCLが自己観察記録を行うためのシステムであり、図1に示すように、各クライエントCLや保護者GUが使用するスマートフォン1(1a及び1b)と、インターネット2上に設置されたコンテンツサーバー3とから概略構成される。なお、本実施形態ではスマートフォン1を情報処理端末装置の一例として説明するが、情報処理端末装置であれば、パーソナルコンピューターやタブレットPCなどを用いることができる。
【0019】
コンテンツサーバー3は、本実施形態では、セルフモニタリングの進行処理を行うサーバーであり、単一のサーバー装置、又は複数のサーバー装置群により実現することができ、ソフトウエアを実行することで複数の機能モジュールをCPU上に仮想的に構築し、それぞれの機能モジュールが協動して処理を実行する。また、このコンテンツサーバー3は、通信機能によりインターネット2を通じて、データ送受信を行うことができるとともに、Webサーバー機能によりブラウザソフトを通じてWebページの提示などを行うことができる。
【0020】
スマートフォン1(1a,1b)は、無線通信を利用した携帯可能な情報処理端末装置であり、無線基地局22等の中継点と携帯電話機が無線で通信し、通話やデータ通信等の通信サービスを移動しつつ受けることができる。この携帯電話機の通信方式としては、例えば、3G(3rd. Generation)方式、LTE(Long Term Evolution)方式、4G方式、FDMA方式、TDMA方式、CDMA方式、W-CDMAの他、PHS(Personal Handyphone System)方式等が挙げられる。また、このスマートフォン1は、通信機能の他、デジタルカメラ機能、アプリケーションソフトの実行機能、GPS(Global Positioning System)などによる位置情報取得機能等、種々の機能が搭載され、タブレットPC等のモバイルコンピューターも含まれる。
【0021】
また、このスマートフォン1は、情報を表示する表示部としての液晶ディスプレイを備えるとともに、ユーザーが入力操作を行うための操作ボタン等の操作デバイスを備え、この操作デバイスとしては、液晶ディスプレイに重畳されて配置され、液晶ディスプレイ上の座標位置を指定するタッチ操作などによる操作信号を取得する入力部としてのタッチパネルが含まれる。具体的にこのタッチパネルは、ユーザーの指先やペンなどを用いたタッチ操作による圧力や静電検知その他によって操作信号を入力する入力デバイスであり、グラフィックを表示する液晶ディスプレイと、この液晶ディスプレイに表示されたグラフィックの座標位置に対応した操作信号を受け付けるタッチセンサとが重畳されて構成されている。
【0022】
そして、本実施形態では、クライエントCLがスマートフォン1aを使用し、保護者や医師、教育者、治療者などアラートを受信する者がスマートフォン1bを使用する。クライエントCL側のスマートフォン1aはクライエント用のアプリケーションがインストールされてクライエント専用端末として機能するようになっている。一方、保護者等GU側のスマートフォン1bは、クライエント用アプリケーションからのアラートを受信してその内容を閲覧できる機能が備えられていればよく、例えば、アラートを受信し閲覧するための専用アプリケーションのほか、電子メールアプリケーションや、ブラウザアプリケーション、メッセージアプリケーションなどの通信用のアプリケーションが備えられていればよい。
【0023】
(各装置の内部構造)
次いで、上述したセルフモニタリングシステムを構成する各装置の内部構造について説明する。図2は、本実施形態に係るコンテンツサーバー3の内部構成を示すブロック図であり、図3は、本実施形態に係るスマートフォン1の内部構成を示すブロック図である。なお、説明中で用いられる「モジュール」とは、装置や機器等のハードウェア、或いはその機能を持ったソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成され、所定の動作を達成するための機能単位を示す。
【0024】
(1)コンテンツサーバー
先ず、コンテンツサーバー3の内部構成について説明する。コンテンツサーバー3は、インターネット2上に配置されたサーバー装置であり、インターネット2を通じて、各スマートフォン1とデータの送受信を行えるようになっている。
【0025】
コンテンツサーバー3は、インターネット2を通じてデータ通信を行う通信インターフェース31と、利用者や利用者端末の権限を認証する認証部33と、各利用者端末からのアクセスを管理するアクセス管理部32と、セルフモニタリング全体の進行処理、及び各ユーザーのセルフモニタリング進行処理を実行するモニタリング進行処理部36と、各クライエントに関するアラート発生を監視するアラート監視部37と、各クライエントCLに対してコンテンツデータを配信するコンテンツデータ配信部34と、種々のデータベース群35(35a~35c)を備えている。
【0026】
データベース群35としては、ワークモード中に実行されるワークシートや、レッスンモードで配信される連載コンテンツ、レッスン進行処理に関するシナリオデータ等を蓄積するコンテンツ蓄積部35aと、クライエントやその保護者等の利用者に関する情報を蓄積するユーザーデータベース35bと、各クライエントごとのモニタリングに関するデータを蓄積する観察データ蓄積部35cとが含まれる。これらの各データベースとしては、単一のデータベースとしてもよく、複数のデータベースに分割し、相互にリレーションを設定することで各データ同士を紐付けたリレーショナルデータベースとすることができる。
【0027】
コンテンツ蓄積部35aは、レッスンモードで使用される精神療法又は心理療法に関する教材や動画など連続する複数の連載コンテンツを蓄積する記憶装置である。また、このコンテンツ蓄積部35aには、シナリオデータやワークシートなどのデータが記憶されている。
【0028】
ユーザーデータベース35bに蓄積される情報としては、クライエントや保護者等を識別する識別情報、或いはクライエントが使用している携帯端末装置を特定する識別子(ユーザーID、端末ID)と、パスワード等とを紐付けた認証情報が含まれ、ユーザーIDに紐付けられた利用者の個人情報や、端末装置の機種なども含まれる。また、ユーザーデータベース35bには、利用者ごと或いは利用者端末ごとの認証履歴(アクセス履歴)や、観察データ蓄積部35cとのリレーションによりクライエントごとのレッスン・ワーク進行に関する観察結果、ステイタス、ポイント、利用履歴等の他、決済情報等も蓄積される。
【0029】
観察データ蓄積部35cに蓄積される情報は、ワークシートを通じて、多数のクライエントから収集した自己観察記録であり、各クライエントごとに発生記録情報、行動的情報、認知的情報及び特徴キーワード等が相互に関連付けられて蓄積されている。
【0030】
認証部33は、通信インターフェース31を通じて、各スマートフォン1と通信セッションを確立させ、その確立された通信セッションごとに認証処理を行うモジュールである。この認証処理としては、アクセス者であるクライエントやその保護者のスマートフォン1(1a若しくは1b)から認証情報を取得し、ユーザーデータベース35bを参照して、アクセス者を特定し、それらの権限を認証する。この認証部33による認証結果(ユーザーID、認証時刻、セッションID等)は、モニタリング進行処理部36に送出されるとともに、アクセス管理部32を通じてユーザーデータベース35bに認証履歴として蓄積される。
【0031】
モニタリング進行処理部36は、シナリオデータに従ってワークモード及びレッスンモードを展開させるべく種々のイベント処理を発生させてセルフモニタリングを進行させるモジュールであり、一定のルール・ロジック・アルゴリズムを含むスクリプトを実行し、レッスン、ワークの他、ミニゲーム、ムービーの再生等のイベント処理を発生させる。モニタリング進行処理部36は、アラート監視部37と、ワーク分析部39とを備えている。
【0032】
なお、コンテンツサーバー3側のモニタリング進行処理部36は、本実施形態では、スマートフォン1側のコンテンツ制御部141と協働するようになっており、モニタリング進行処理やワーク分析処理の一部をコンテンツサーバー3側で行い、グラフィック処理やイベント処理の一部をスマートフォン1側のコンテンツ制御部141で実行するようにしている。例えば、コンテンツサーバー3側で、シナリオの進行、クライエントのレッスン進行レベルの他、ユーザーの分類や現在位置、現在時刻などに基づいて、発生し得るイベント処理を予測し、その発生条件をコンテンツサーバー3側で発生させ、その条件をスマートフォン1側に送信し、コンテンツサーバー3から受信した発生条件に基づいて、実際のイベント処理の発生やそのためのグラフィック処理は、スマートフォン1側で実行するようにしている。
【0033】
アラート監視部37は、スマートフォン1側のアラート発信部18から発信されるアラート信号を常時監視し、アラート信号が検出されたときには、登録された連絡先(電話番号、電子メール等)にアラートメッセージを送信する。
【0034】
ワーク分析部39は、モニタリング進行処理部36によるレッスン・ワークの進行に従って、クライエントが入力したワークを収集し、そのワークに記入されたセルフモニタリングに応じてユーザーに対する評価を更新するモジュールである。このクライエントの分析は、コンテンツサーバー3側で実行する場合と、スマートフォン1側で実行する場合と、コンテンツサーバー3とスマートフォン1の両者が協働して実行する場合とがあり、ワーク分析部39は、コンテンツサーバー3側で実行、或いは蓄積された分析結果と、スマートフォン1側で実行、蓄積された分析結果とを管理し、両者の分析結果を比較し、必要に応じて分析結果の全部又は一部をスマートフォン1側に配信して、両者の同期を図る。
【0035】
コンテンツデータ配信部34は、クライエントのレッスン進捗に基づき、モニタリング進行処理部36による制御に従って、ワーク分析部39が実行した分析結果を同期させるべく、通信インターフェース31を通じて,これらのファイルを各スマートフォン1に配信するモジュールである。
【0036】
(2)スマートフォン1(1a,1b)
次いで、クライエント用のスマートフォン1の内部構成について説明する。本実施形態では、クライエントCLがスマートフォン1aを使用し、保護者や医師、教育者、治療者などアラートを受信する者がスマートフォン1bを使用する。これらスマートフォン1a及び1bのハードウェア構成は基本的には共通し、クライエントCL側のスマートフォン1aにはクライエント用のアプリケーションがインストールされることによりクライエント専用端末として機能するようになっている。一方、保護者等GU側のスマートフォン1bは、クライエント用アプリケーションからのアラートを受信してその内容を閲覧できる機能が備えられていればよく、例えば、アラートを受信し閲覧するための専用アプリケーションのほか、電子メールアプリケーションや、ブラウザアプリケーション、メッセージアプリケーションなどの通信用のアプリケーションが備えられていればよい。
【0037】
ここでは、クライエント用のスマートフォン1aを中心に説明する。図3に示すように、クライエントCLのスマートフォン1aは、通信インターフェース11と、入力インターフェース12と、出力インターフェース13と、アプリケーション実行部14と、メモリ15とを備えている。なお、これらのハードウェア構成については、保護者等GU用のスマートフォン1bも同様である。
【0038】
通信インターフェース11は、データ通信を行うための通信インターフェースであり、無線等による非接触通信や、ケーブル、アダプタ手段等により接触(有線)通信をする機能を備えている。入力インターフェース12は、マウス、キーボード、操作ボタンやタッチパネル12aなどユーザー操作を入力するデバイスである。また、出力インターフェース13は、ディスプレイやスピーカーなど、映像や音響を出力するデバイスである。特に、この出力インターフェース13には、液晶ディスプレイなどのディスプレイ13aが含まれ、この表示部は、入力インターフェースであるタッチパネル12aに重畳されている。
【0039】
メモリ15は、OS(Operating System)やファームウェア、各種のアプリケーション用のプログラム、その他のデータ等などを記憶する記憶装置であり、このメモリ15内には、ユーザー或いは端末を識別するユーザーID或いは端末IDの他、コンテンツサーバー3からダウンロードしたレッスンデータやワークシートを蓄積するとともに、アプリケーション実行部14で処理された入力データ等が蓄積される。特に、本実施形態では、メモリ15には、コンテンツサーバー3から取得した、シナリオデータや、レッスンモードで用いられるムービーデータ、アラート発信時に参照される監視用リスト等が格納されている。
【0040】
アプリケーション実行部14は、一般のOSやゲームアプリケーション、ブラウザソフトなどのアプリケーションを実行するモジュールであり、通常はCPU等の演算処理装置により実現される。
【0041】
特に、クライエント用のスマートフォン1aでは、このアプリケーション実行部14で本発明に係るセルフモニタリングプログラムが実行され、コンテンツ制御部141、シナリオ制御部142、イベント制御部143、アドバイス提示部144、表示制御部145、表示データ生成部146、相関特徴分析部147、及び反応分類部148が仮想的に構築される。
【0042】
コンテンツ制御部141は、シナリオ制御部142による制御に従って、レッスンモードやワークモードをイベント処理の一つとして実行させるモジュールである。本実施形態においてコンテンツ制御部141は、シナリオに記述されているセルフモニタリングに関するルール、ロジック、アルゴリズムにより、ストーリーモードとゲームモードを順次展開させて、イベント制御部143に種々のイベント処理を発生させてセルフモニタリングを進行させる機能を有しており、シナリオ制御部142を通じて、コンテンツサーバー3側のモニタリング進行処理部36と同期しつつ、シナリオ進行、ユーザーのレッスン進捗、時刻、現在位置に応じて、レッスンムービーの再生、ワークシートの入力等のイベント処理を発生させる。
【0043】
また、コンテンツ制御部141は、本実施形態では、コンテンツサーバー3側のモニタリング進行処理部36と協働するようになっており、セルフモニタリング進行処理の一部をコンテンツサーバー3側で行い、グラフィック処理やイベント処理の一部をスマートフォン1側のコンテンツ制御部141で処理するようにしている。例えば、イベント発生の条件などをコンテンツサーバー3側で発生させ、その条件をスマートフォン1側に送信し、実際のイベント処理の発生(トリガー生成)処理やそのためのグラフィック処理をスマートフォン1側で処理する。
【0044】
このコンテンツ制御部141は、シナリオ制御部142と、イベント制御部143と、相関特徴分析部147と、反応分類部148とを備えている。また、イベント制御部143は、ワークモード実行部143aと、レッスンモード実行部143bを備えている。
【0045】
相関特徴分析部147は、外的要因とその外的要因に対するクライエントの行動及び認知との相関を分析し、分析された相関を特徴付ける特徴キーワードを抽出するモジュールであり、ここで抽出された特徴キーワードは、発生記録情報、行動的情報、認知的情報と関連付けられて観察データ蓄積部であるメモリ15及びコンテンツサーバー3上の観察データ蓄積部35cに蓄積される。
【0046】
反応分類部148は、メモリ15若しくは観察データ蓄積部35cに蓄積された発生記録情報、行動的情報、認知的情報及び特徴キーワードに基づいて、クライエントの反応パターンを分類するモジュールであり、アドバイス提示部144は、反応分類部148が分類した反応パターンに従って誘導コメントを選択して提示する。なお、反応分類部148ではクライエントの反応パターンを、「直進タイプ」、「停止タイプ」及び「逃げタイプ」の3種類に分類するとともに、図9に示すように、外的要因ごとの反応パターンの組み合わせ応じて、クライエントの属性を7種類に分類している。このクライエント属性の分類に応じてアドバイス提示部144は、誘導コメントを選択して提示したり、クライエント自身を示すアバターCr3を設定・変更したりして、クライエントが共感を得られる世にしている。
【0047】
レッスンモード実行部143bは、シナリオ制御部142による制御に従って、連載コンテンツの一つとして精神療法又は心理療法に関するセルフモニタリングのレッスンを進行させるレッスンモードとして、連載コンテンツ「レッスンパート」をイベント処理の一つとして実行するモジュールである。この「レッスンパート」は、動物のキャラクターが画面上に登場し、物語を楽しく読み進めながらセルフモニタリングについて学んでいく連載コンテンツであり、連続する複数のレッスンで構成されている。
【0048】
レッスンの内容としては、図7に示すように、心的な変容が生じクライエント自身が「心が動いた」と認知したときに、キーワード「キッカケカンカンカコウ」にならってセルフモニタリングする方法をレッスンで学ぶ。このキーワード「キッカケカンカンカコウ」は、
・キッカケ …感情が動く要因となった出来事
・カンガエ …その出来事に対する考え
・カンジョウ…キッカケから湧いた感情
・カラダ …身体におきた変化
・コウドウ …どんな行動をしたか?
といった要素を意味しており、外的要因として「きっかけ」を入力し、認知的情報としての「考え」を入力し、情緒的・生理的情報としての「感情」、「身体」の変容を入力し、最終的な行動的情報としての「行動」を入力することで、自己観察を要素ごとに分解して自分自身を客観視しやすくしている。
【0049】
また、このような「レッスンパート」を通じて、感情が動いたときに取る行動には大きく3つのタイプがあることを知り、自分のパターン(癖)を知ることができるようなっている。
【0050】
例えば、「レッスンパート」では
・直進タイプ…自分にも他人にも厳しいため、やりすぎて問題を起こすことがある
・停止タイプ…がまん強いが言いたいことが言えず、ストレスをためる。問題が解決しない
・逃げタイプ…問題に向き合わない。楽しむのが上手ともいえるが無責任にみえる
といったような外的要因に対する反応パターンについての知識が得られるように物語が構成されている。これらの反応パターンは、ワークモードでのワークシート「KATモニター」においても、クライエントを分類する属性に含まれている。
【0051】
また、本実施形態においてこの「レッスンパート」は、全10話を1週間~2週間かけて読み進める設計となっており、翌日にならないと読めない話が設定されていたり、レッスンの合間に「KATモニター」を実践しないと次のレッスンには進めないようになっており、クライエントに大量の情報を詰め込みすぎないことによって続きが気になるように仕向け、次回に対する期待感を高めるようになっている。
【0052】
他方、ワークモード実行部143aは、クライエントの操作に基づいて入力された自己観察記録(行動記録、認知記録等のセルフモニタリング)を記録し、記録された自己観察記録の分析を行うワークモードとして、ワークシート「KATモニター」を実行するモジュールである。この「KATモニター」はセルフモニタリングを実践して身につけていくワークシートのようなコンテンツであり、ワークシートでは、外的要因の発生記録情報と、発生した外的要因に対する前記クライエントの行動に関する行動的情報と、当該外的要因に対する前記クライエントの認知に関する認知的情報とを、当該クライエントの操作に基づいて記録する。
【0053】
本実施形態において例えば、「KATモニター」は、Kokoro(こころ)、Akaruku(明るく)及びTamotsu(保つ)をテーマとして、所定のフォーマットに従って、外的要因として「きっかけ」を入力し、認知的情報としての「考え」を入力し、情緒的・生理的情報としての「感情」、「身体」の変容を入力し、最終的な行動的情報としての「行動」を入力することで、入力内容が、図8に示すようなKATモニターに図示され、キャラクターとの対話形式によって自己観察を要素ごとに分解して自分自身が客観視しやすくなり、セルフモニタリングが容易にできるようになっている。
【0054】
シナリオ制御部142は、連続する複数の連載コンテンツを進行させるイベント処理を記述したシナリオに従って、前記連載コンテンツの提供を順次進行させるモジュールであり、本実施形態では各クライエントのレッスン進捗やワークシートの作成回数に基づいてシナリオを進行させる。シナリオデータとは、レッスンモード及びワークモードの展開を記述したスクリプトデータである。
【0055】
また、このシナリオ制御部142は、このシナリオデータに従って、スマートフォン1側でのセルフモニタリング進行処理と、コンテンツサーバー3側でのセルフモニタリング進行処理とを同期させる機能を有している。具体的には、コンテンツサーバー3側で、シナリオデータにおけるレッスンの進捗程度などに基づいて発生し得るイベント処理を予測し、その発生条件をコンテンツサーバー3側で発生させ、その条件をスマートフォン1a側に送信する。コンテンツ制御部141は、このサーバー側から送信された発生条件をシナリオ制御部142で解析し、実際のイベント処理の発生やそのためのグラフィック処理を、コンテンツサーバー3から受信した発生条件に基づいてスマートフォン1側で実行する。
【0056】
このスマートフォン1側のコンテンツ制御部141で実行されたイベント処理の結果(レッスンの進行、ワークシート入力、セルフモニタリングの分析結果等)は、シナリオ制御部142を通じてコンテンツサーバー3側のモニタリング進行処理部36に通知され、その後のモニタリング進行処理に反映される。
【0057】
上記アドバイス提示部144は、クライエントの操作による発生記録情報、行動的情報及び認知的情報の入力を受け付ける際に誘導コメントを提示するモジュールであり、誘導コメントの候補を複数作制して反応分類部148が分類した反応パターンに従って誘導コメントを選択して提示する機能を有している。具体的に、アドバイス提示部144は、コメント生成部144aと、外的要因予測部144bとを有している。
【0058】
コメント生成部144aは、外的要因予測部144bが予測した外的要因に関連する行動的情報、認知的情報及び特徴キーワードに基づく誘導コメントを生成するモジュールであり、ここで生成された誘導コメントは他のアドバイスとともに表示制御部145に送出され、キャラクターCr1等のセリフとして標示される。
【0059】
外的要因予測部144bは、現在情報取得部16が現在情報に含まれる現在時刻及び現在位置に関する情報に基づいて、発生した外的要因を予測するモジュールであり、コメント生成部144aは、外的要因予測部144bが予測した外的要因に関連する行動的情報、前記認知的情報及び前記特徴キーワードに基づく誘導コメントを生成する。
【0060】
具体的にこの外的要因予測部144bによる予測としては、外的要因の発生が予想される時期、時刻、場所、移動速度、加速度を外的要因ごとにリストアップしたテーブルデータを参照し、現在情報取得部16が取得した現在時刻、現在位置や移動速度、加速度、方向などに基づいて、クライエントCLが現在いる場所や状況から、その時刻に発生しそうな外的要因を予測する。例えば、通勤・通学の時間帯に一定の速度以上で移動している場合には、クライエントが電車の車内にいる可能性が高く、通勤・通学時の電車内で発生し得るトラブルや「考え」、「感情」、「身体」の変容などについてテーブルデータを参照して、発生し得る外的要因の候補を抽出する。コメント生成部144aは、この外的要因予測部144bが予測した外的要因に関連するキーワードを用いて誘導コメントを生成し、キャラクターC1から質問形式で予測した外的要因に関するKATモニターへの入力を促すようにする。
【0061】
表示データ生成部146は、ディスプレイ13aに表示させるための表示データを生成するモジュールである。表示データは、グラフィックデータの他、画像データや、文字データ、動画データ、音声その他のデータを組み合わせて生成される。
【0062】
さらにアプリケーション実行部14は、アプリケーションを実行することによって、現在情報取得部16と、参照部17と、アラート発信部18とが仮想的に構築される。
現在情報取得部16は、現在時刻及び現在位置に関する情報を現在情報として取得するモジュールであり、本実施形態ではGPS等の位置情報取得部16aから現在位置情報が入力され計時部16bから現在時刻情報が入力される。位置情報取得部16aは、自機の位置を示す位置情報を取得し、記録する機能であり、この位置情報取得機能としては、例えば、GPSのように、衛星からの信号によって自機の位置を検出する方法や、1に示すように、携帯電話の無線基地局22や、Wifi通信のアクセスポイントからの電波強度などによって位置を検出する方法が含まれる。
【0063】
また、現在情報取得部16はアドバイス提示部144によって誘導コメントを提示するタイミングを指示するトリガー生成部16cを備えている。トリガー生成部16cは、誘導コメントの提示として、本アプリケーションを自動的に起動したり、アプリケーションからの通知を出力したり、アプリケーション内でキャラクターが自動的に話し始めたりといったイベント処理の発生タイミングを指示するモジュールであり、例えば、前回のレッスン修了時から一定の時間が経過したときに次回のレッスンの受講を促す誘導コメントを出力する。
【0064】
さらに、外的要因予測部144bで外的要因の発生が予測された場合に、その外的要因が発生してから一定時間が経過したときに、誘導コメントの出力を指示したりすることもできる。これにより、トラブルなどの外的要因が発生した直後の行動的情報や認知的情報の他、外的要因の発生からしばらく経って落ち着いてからの行動的情報や認知的情報の入力を促す誘導コメントを出力することができ、反応パターンの解析の精度を高めることができる。この現在情報及びトリガー情報は、アドバイス提示部144に入力され、外的要因予測部144bは、現在情報取得部16が取得した現在情報に基づいて発生した外的要因を予測する。
【0065】
なお、本実施形態では、現在情報取得部16には、位置情報取得部16aからの現在位置や移動速度、計時部16bからの現在時刻や経過時間が入力される場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、入力インターフェース12に接続されたカメラや体温計、心拍計、マイクなどの検出デバイスによる検出データに基づいて、外的要因を予測したり、トリガーデータを生成するようにしてもよい。これらの検出デバイスは、無線通信で接続されたウェアラブル端末に備えられたものとすることができる。
【0066】
参照部17は、所定のキーワードを監視キーワードとして集約した監視用リスト15aを保持し、相関特徴分析部147が抽出した特徴キーワードについて監視用リスト15aを参照するモジュールであり、アラート発信部18は参照部による参照結果に基づいて、設定された通知先にアラートを発信するモジュールである。この監視用リスト15aは、例えば、「自殺念慮」や「希死念慮」といった自らの死を願う気持ちなど危険な思考が表現或いは示唆されているような監視キーワードが、クライエントの反応タイプ(直進タイプ、停止タイプ或いは逃げタイプ)ごとに分類されたテーブルデータであり、その反応タイプごとにキーワードが意味する思いの強弱がランク付けされており、関連する情報として間接的言動も記述されている。
【0067】
アラート発信部18によって、クライエントが入力したワークシート内から監視用リスト15aに列記されたキーワードや間接的言動が検出された場合には、そのクライエントの反応タイプに応じて、その該当キーワード及び間接的言動の出現頻度を解析し、アラートの要否、危険レベル、緊急性を判断し、一定以上のレベルの場合にアラートを発信する。
【0068】
このアラートの内容としては、プライバシーの観点からKATモニターに入力されたテキストデータそのものは掲載しないようにし、監視キーワードの有無、危険レベル、その危険な状態が強いか弱いか、いつからあるのか、どのような状況で出現するのかなどの状況説明のみを記載するように、アラート発信部18にはデータにフィルタリングを施す機能が設けられている。このアラート発信部18によるアラートは、保護者GUのスマートフォン1bに直接送信してもよく、コンテンツサーバー3のアラート監視部37に通知し、コンテンツサーバー3側のアラート送信部38を通じてアラートを送信するようにしてもよい。
【0069】
(セルフモニタリングシステムの動作)
以上説明したセルフモニタリングシステムを動作させることによって、本発明のセルフモニタリング方法を実施することができる。図4図6は、セルフモニタリングシステムの動作を示すフロー図である。なお、以下で説明する処理手順は一例に過ぎず、各処理は可能な限り変更されてもよい。また、以下で説明する処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換及び追加が可能である。
【0070】
(1)全体動作
図4に示すように、先ず、スマートフォン1上でゲームアプリケーションを起動して、セルフモニタリングを開始する(S101)。このとき、アプリケーション上ではシナリオデータが参照され、ユーザーの現在のレッスンの進捗度合いが読み出され、前回の終了時点からの続きから開始する。セルフモニタリングが開始されると、レッスンの進行に伴ってシナリオデータが参照され、イベントの発生条件が監視され(S102)、イベントの発生条件が満たされるまで待機状態となる(S103における「N」)。
【0071】
このとき、クライエントがイベントの発生を待たずに積極的にレッスンを受けたり、ワークシートの入力を希望するときには、イベント発生条件が満たされたとして(ステップS103における「Y」)、セルフモニタリングが進行される。
【0072】
イベント発生条件が満たされると(S103における「Y」)、シナリオデータを参照して、発生させるべきイベント処理がレッスンモードかワークモードかを選択する(S104)。これらのモードは、シナリオデータに基づいて判断され、本実施形態では、KATモニター(ワークモード)が所定回数実行されるごとにレッスンが進捗するようになっている。
【0073】
具体的に、KATモニター(ワークモード)が選択された場合(S104における「KATモニター(ワークモード)」)には、KATモニターが実行され(S105)、図8(a)及び(b)に示すような、KATモニターリスト画面W3に切り替わる。このKATモニターリスト画面W3において、「追加ボタン」をクリックすることによって新規のワークシート画面W4に遷移する。これらのKATモニターリスト画面W3やワークシート画面W4では、次に取るべき操作の説明のほか、心理療法における面談で行われるようなカウンセリング的なアドバイスが出力され、このアドバイスに促されて、暗い援護は所定のワークシートの入力を行う(S106)。
【0074】
また、ワークシート画面W4では、クライエントCL本人の分身であるアバターCr3が表示されており、所定のテキストを入力したり、選択肢を選んだりして、自己観察記録であるKATモニターを作成する。このワークシート画面W4では自己観察記録の入力をしやすくするために、外的要因として「きっかけ」を入力する欄Bu3を起点として、認知的情報としての「考え」を入力する欄Bu4、情緒的・生理的情報としての「感情」、「身体」の変容を入力する欄Bu5,欄Bu6を辿って順次入力できるようになっており、最終的な行動的情報としての「行動」を入力する欄Bu7が設けられている。
【0075】
そして、ワークシート画面W4におけるKATモニターの作成が完了した後、入力された自己観察記録に基づいて分析が行われ(S107)、その分析結果が結果画面W5のコメント欄Bu8に表示される(S108)。
一方、ステップS104において、レッスンモードが選択された場合(S104における「レッスンモード」)には、レッスンモード実行部143bによってレッスンモードが実行され(S112)、レッスン進捗状況が参照され(S113)、各クライエントの進捗状況に応じた連載コンテンツが再生される(S114)。例えば、図7(a)に示すような、インデックス画面W1が、アドバイザーとしてのキャラクターCr1とともに表示され、任意のレッスンを選択して学習できるようになっている。このとき、段階を経てステップアップできるように順番にレッスンを受けるようにするため、各クライエントのレッスン進捗に合わせてインデックス上の選択可能な項目が制限されている。
【0076】
そして、任意のレッスンが選択されると、その選択されたレッスンに係るコンテンツが再生される。本実施形態では、同図(b)に示すように、アドバイザーとしてのキャラクターCr1と、生徒であるキャラクターCr2とがチャット形式で対話しながらストーリーを進めていく形式を取っている。クライエントは普段使用しているメッセージアプリケーションのように、タップやクリックすることによりキャラクターたちの次のセリフを順次読み進めることができる。その後、各レッスンの最後には復習のためのまとめページBu2が表示され、セルフモニタリングのスキルアップを確認しつつ、次のレッスンに進めるようになっている。
【0077】
そして、ワークモード及びレッスンモードの進行に応じて、それらの結果である観察データを蓄積し(S109)、シナリオが進行される(S110)。上述した各処理S102~210は、アプリケーションが終了(S111における「Y」)するまで繰り返される(S111における「N」)。
【0078】
(2)アドバイス出力及びワークシート入力
上述したステップS106におけるアドバイス出力及びワークシート入力に係る処理について詳述する。図5に示すように、先ず、現在時刻及び現在位置等の現在情報を取得し(S201)、外的要因を予測する(S202)。具体的には、外的要因予測部144bが、外的要因の発生が予想される時期、時刻、場所、移動速度、加速度を外的要因ごとにリストアップしたテーブルデータを参照し、現在情報取得部16が取得した現在時刻、現在位置や移動速度、加速度、方向などに基づいて、クライエントCLが現在いる場所や状況から、その時刻に発生しそうな外的要因を予測する。
【0079】
次いで、既に発動され常駐されているトリガーデータがあるか否かについて判断する(S203)。このトリガーデータは、誘導コメントの提示として、本アプリケーションを自動的に起動したり、アプリケーションからの通知を出力したり、アプリケーション内でキャラクターが自動的に話し始めたりといったイベント処理の発生タイミングを指示するデータであり、既にトリガーが発動され常駐されているときには、そのトリガーデータで設定された条件が満たされた際にそのイベント処理を発生させる。既に発動されたトリガーがある場合には(ステップS203における「Y」)、トリガーに応じた誘導コメントを生成する(S206)。例えば、前回のレッスン修了時から一定の時間が経過したときに次回のレッスンの受講を促す誘導コメントを出力するようなトリガーが既に発動され、その条件が満たされた場合には、そのトリガーに応じた誘導コメントが生成される。
【0080】
一方、トリガーがない場合には(ステップS203における「N」)、予測される外的要因があるか否かを判断し(S204)、予測される外的要因があるときには(ステップS204における「Y」)その予測される外的要因に関連する誘導コメントを生成し(S205)、予測される外的要因がないときには(ステップS204における「N」)、通常の誘導コメントを生成する(S207)。これらのステップS205~S206における誘導コメントの生成にあたっては、各種反応パターンに対応させて複数の候補を生成する。
【0081】
その後、クライエントの反応パターンを参照し、ステップS205~S206で生成した誘導コメントの複数候補の中から当該クライエントの反応パターンに合った誘導コメントを選択し(S208)、選択されたコメントの提示を含むアドバイスの出力を実行して(S209)、クライエントによるワークシートへの入力を促す。この誘導コメントに従ってクライエントはワークシートの各項目への入力を行う(S210)。これらステップS208~S210は、全ての項目について入力されるまで(S211における「Y」)繰り返される(S211における「N」)。
【0082】
(3)ワークシート分析
上述したステップS207におけるワークシート分析に係る処理について詳述する。図6に示すように、クライエントによるワークシートの作成が完了した後、作成されたワークシートに基づいて外的要因、行動及び認知についての相関を分析する(S301)。具体的には、相関特徴分析部147が、外的要因とその外的要因に対するクライエントの行動及び認知との相関を分析し、分析された相関を特徴付ける特徴キーワードを抽出する。ここで抽出された特徴キーワードは、発生記録情報、行動的情報、認知的情報と関連付けられて観察データ蓄積部であるメモリ15及びコンテンツサーバー3上の観察データ蓄積部35cに蓄積される。
【0083】
そして、特徴キーワードの抽出を行って監視用リストを参照し(S302)、該当する特徴キーワードが含まれているか否かについて判断する(S303)。この監視用リスト15aは、例えば、「自殺念慮」や「希死念慮」といった自らの死を願う気持ちなど危険な思考が表現或いは示唆されているような監視キーワードが、クライエントの反応タイプ(直進タイプ、停止タイプ或いは逃げタイプ)ごとに分類されたテーブルデータであり、参照部17は、クライエントが入力したワークシート内から監視用リスト15aに列記されたキーワードや間接的言動が含まれていないかを照合する。
【0084】
該当する特徴キーワードが含まれていたときには(S303における「Y」)、アラートを発信する(S304)。このアラートの内容としては、プライバシーの観点からKATモニターに入力されたテキストデータそのものは掲載しないようにし、監視キーワードの有無、危険レベル、その危険な状態が強いか弱いか、いつからあるのか、どのような状況で出現するのかなどの状況説明のみを記載する。このアラート発信部18によるアラートは、保護者GUのスマートフォン1bに直接送信してもよく、コンテンツサーバー3のアラート監視部37に通知し、コンテンツサーバー3側のアラート送信部38を通じてアラートを送信するようにしてもよい。
【0085】
該当する特徴キーワードがない場合(S303における「N」)若しくはアラートを発信した場合には(S304)、反応パターンの分類を行い(S305)、分析結果を記録する(S306)。この反応パターンの分類では、反応分類部148が、メモリ15若しくは観察データ蓄積部35cに蓄積された発生記録情報、行動的情報、認知的情報及び特徴キーワードに基づいて、クライエントの反応パターンを分類する。上述したステップS205~S207における誘導コメントの生成や、ステップS208における誘導コメントの選択では、反応分類部148が分類した反応パターンに従って、アドバイス提示部144が誘導コメントを選択して提示する。
【0086】
(作用・効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、認知行動療法におけるセルフモニタリングに際し、レッスンモードとワークモードが並行して進展されるため、キャラクターとの対話や物語を楽しく読み進めるといった娯楽的要素を盛り込むことができ、自己観察記録を継続させるモチベーションの向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0087】
CL…クライエント
Gu…保護者
S…セルフモニタリングシステム
1(1a,1b)…スマートフォン
2…インターネット
3…コンテンツサーバー
11…通信インターフェース
12…入力インターフェース
12a…タッチパネル
13…出力インターフェース
13a…ディスプレイ
14…アプリケーション実行部
15…メモリ
15a…監視用リスト
16…現在情報取得部
16a…位置情報取得部
16b…計時部
16c…トリガー生成部
17…参照部
18…アラート発信部
22…無線基地局
31…通信インターフェース
32…アクセス管理部
33…認証部
34…コンテンツデータ配信部
35…データベース群
35a…コンテンツ蓄積部
35b…ユーザーデータベース
35c…観察データ蓄積部
36…モニタリング進行処理部
37…アラート監視部
38…アラート送信部
39…ワーク分析部
141…コンテンツ制御部
142…シナリオ制御部
143…イベント制御部
143a…ワークモード実行部
143b…レッスンモード実行部
144…アドバイス提示部
144a…コメント生成部
144b…外的要因予測部
145…表示制御部
146…表示データ生成部
147…相関特徴分析部
148…反応分類部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9