(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】ディフューザおよび遠心ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 29/44 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
F04D29/44 D
F04D29/44 E
(21)【出願番号】P 2022178212
(22)【出願日】2022-11-07
【審査請求日】2022-11-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503420833
【氏名又は名称】学校法人常翔学園
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】紺野 真一
(72)【発明者】
【氏名】江尻 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】高尾 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】宮部 正洋
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-075499(JP,U)
【文献】特開2004-132227(JP,A)
【文献】特開2014-152708(JP,A)
【文献】特開2002-081398(JP,A)
【文献】実開昭59-192699(JP,U)
【文献】特開平10-331794(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第114673690(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0106270(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16、
17/00-19/02、
21/00-25/16、
29/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心ポンプの回転軸の軸方向において、インペラと隣接して配置されるディフューザであって、
円筒状の流路形成部と、
前記流路形成部の外周面に配置されて、前記外周面と共に、前記インペラから吐出された取扱液のディフューザ流路を構成する複数のベーンと、
を備えて、
前記流路形成部の径方向視において、複数の前記ベーンそれぞれは、
凹面状の正圧面と、
前記正圧面の反対側の面であり、凸面状の負圧面と、
を備えて、
複数の前記ベーンのうち、少なくとも1の前記ベーンは、
前記インペラから吐出されて前記ディフューザに流入した前記取扱液が流れる少なくとも1の内部流路を備える特定ベーンであり、
前記内部流路は、
前記特定ベーンを貫通して配置されて、
前記特定ベーンにおける前記取扱液の流れの上流側に位置する端部側に配置される流路入口と、
前記負圧面に配置される流路出口と、
を備える、
ディフューザ。
【請求項2】
前記流路入口は、前記特定ベーンにおける前記流れの上流側に位置する端面に配置される、
請求項1に記載のディフューザ。
【請求項3】
前記流路出口は、前記ディフューザ流路へ流れる前記取扱液の前記負圧面からの剥離が発生する領域に接する位置に配置される、
請求項1に記載のディフューザ。
【請求項4】
前記回転軸の軸方向視において、前記負圧面は、
前記負圧面側に隣り合って配置される他の前記ベーンの前記正圧面と対向する対向領域と、
他の前記ベーンの前記正圧面と対向しない非対向領域と、
を備えて、
前記軸方向視において、前記流路出口は、前記非対向領域における、前記対向領域側の端部に配置される、
請求項3に記載のディフューザ。
【請求項5】
複数の前記ベーンの全ては、前記特定ベーンである、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のディフューザ。
【請求項6】
前記特定ベーンは、複数の前記内部流路を備えて、
前記特定ベーンの長手方向において、複数の前記内部流路それぞれの前記流路出口は、異なる位置に配置される、
請求項1に記載のディフューザ。
【請求項7】
前記特定ベーンは、複数の前記内部流路を備えて、
前記特定ベーンの長手方向において、複数の前記内部流路それぞれの前記流路出口は、同じ位置に並んで配置される、
請求項1に記載のディフューザ。
【請求項8】
モータと、
前記モータにより回転する回転軸と、
前記回転軸に取り付けられるインペラと、
前記回転軸の軸方向において、前記インペラと隣接して配置される請求項1に記載のディフューザと、
を有してなる、
遠心ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディフューザおよび遠心ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
遠心ポンプのインペラの吐出側には、インペラにより取扱液に与えられた速度エネルギーを圧力エネルギーに変換するディフューザが取り付けられる場合がある。ディフューザは、インペラから吐出された取扱液を減速して、増圧するための複数のディフューザ流路を形成する複数のベーンを備える。ベーンの形状(すなわち、ディフューザ流路の形状)は、遠心ポンプの設計点に基づいて、設計されている。そのため、遠心ポンプが設計点よりも少ない流量で運転されると、ディフューザ流路内の取扱液の流れがベーン表面から剥離して、剥離が発生している領域の増大によりディフューザ流路の流れが滞る失速が発生する。失速は、ディフューザが備える全てのディフューザ流路に発生するのではなく、主に1つのディフューザ流路に発生する。その結果、遠心ポンプの中心軸線に対する取扱液の流れの対称性が崩れて、遠心ポンプに対して回転軸の径方向に作用する力が発生する。失速は、時間経過と共に回転軸の周方向に旋回するように、隣接するディフューザ流路へ伝播する。そのため、遠心ポンプに作用する力の向きが変化して、遠心ポンプに振動が発生する。このような現象は、旋回失速と称呼されている。
【0003】
この旋回失速を防止するため、ベーンにスリットを形成して、ベーンの長手方向において、ベーンを2つに分割する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術では、遠心ポンプの吐出流量が減少したとき、ベーンの強制整流力がスリットにより減少して、旋回失速の発生が抑制される。しかしながら、ベーンにスリットが形成されると、ベーンの一部が欠けることになり、ベーンによる増圧の機能が低下して、遠心ポンプの効率が僅かに低下する。近年、環境問題が取り沙汰されている中、遠心ポンプの効率の低下を抑制しつつ、旋回失速の発生を抑制する手法が望まれている。
【0006】
本発明は、遠心ポンプの効率の低下を抑制しつつ、旋回失速の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施態様におけるディフューザは、遠心ポンプの回転軸の軸方向において、インペラと隣接して配置されるディフューザであって、円筒状の流路形成部と、前記流路形成部の外周面に配置されて、前記外周面と共に、前記インペラから吐出された取扱液のディフューザ流路を構成する複数のベーンと、を備えて、前記流路形成部の径方向視において、複数の前記ベーンそれぞれは、凹面状の正圧面と、前記正圧面の反対側の面であり、凸面状の負圧面と、を備えて、複数の前記ベーンのうち、少なくとも1の前記ベーンは、前記インペラから吐出されて前記ディフューザに流入した前記取扱液が流れる少なくとも1の内部流路を備える特定ベーンであり、前記内部流路は、前記特定ベーンを貫通して配置されて、前記特定ベーンにおける前記取扱液の流れの上流側に位置する端部側に配置される流路入口と、前記負圧面に配置される流路出口と、を備える。
【0008】
本発明の一実施態様における遠心ポンプは、モータと、前記モータにより回転する回転軸と、前記回転軸に取り付けられるインペラと、前記回転軸の軸方向において、前記インペラと隣接して配置される前述の実施態様に記載のディフューザと、を有してなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、遠心ポンプの効率の低下が抑制されつつ、旋回失速の発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る遠心ポンプの実施の形態を示す模式断面図である。
【
図2】
図1の遠心ポンプの部分模式拡大断面図である。
【
図3】本発明に係るディフューザの実施の形態を示す斜視図である。
【
図6】
図3のディフューザの部分拡大斜視図である。
【
図7】
図5のディフューザのAA線における部分拡大断面図である。
【
図8】
図3のディフューザにより形成されるディフューザ流路における取扱液の流れを説明する模式図であり、(a)は遠心ポンプが設計点で動作している状態を示す模式図であり、(b)は遠心ポンプが設計点よりも小流量域で動作している状態を示す模式図である。
【
図9】
図1の遠心ポンプの効率の比較結果を示すグラフである。
【
図10】本発明に係るディフューザの変形例を示す模式図であり、(a)は第1変形例を示す模式図であり、(b)は第2変形例を示す模式図であり、(c)は第3変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るディフューザおよび遠心ポンプの実施の形態が、以下に説明される。以下の説明において、各図面は、適宜参照される。各図面において、同一の部材および要素については同一の符号が付されて、重複する説明は省略される。また、各要素の寸法比率は、説明の便宜上、誇張されている場合が有り、各図面に示されている比率に限定されない。
【0012】
以下の説明において、本発明に係る遠心ポンプの一例として、液化ガスが貯蔵されている貯蔵タンクに取り付けられていて、液化ガスを貯蔵タンクから外部へ送液するサブマージドポンプが説明される。すなわち、サブマージドポンプは本発明に係る遠心ポンプの一例であり、液化ガスは本発明における取扱液の一例である。
【0013】
以下の説明において、「下方」は重力方向であり、「上方」は下方の反対方向である。
【0014】
●遠心ポンプ●
●遠心ポンプの構成
図1は、本発明に係る遠心ポンプの実施の形態を示す模式断面図である。
同図は、遠心ポンプ1の一部の断面の図示を省略している。
【0015】
遠心ポンプ1は、貯蔵タンク(不図示。以下同じ。)内に貯蔵されている取扱液をポンプコラムC内へ吐出する。遠心ポンプ1は、貯蔵タンクの天井(不図示)から貯蔵タンク内に延設されているポンプコラムCの下部に収容されていて、取扱液に浸漬されている。遠心ポンプ1の構成は、後述されるディフューザ7の構成を除き、公知のサブマージドポンプの構成と共通している。遠心ポンプ1は、外部筐体2、モータ3、回転軸4、2つの内部筐体5(1つは不図示。以下同じ。)、2つのインペラ6(1つは不図示。以下同じ。)、および2つのディフューザ7(1つは不図示。以下同じ。)を備える。すなわち、遠心ポンプ1は、2つのインペラ6を備える2段遠心ポンプである。つまり、内部筐体5、インペラ6、およびディフューザ7は1段目のポンプ部M1を構成していて、不図示の内部筐体、インペラ、およびディフューザは2段目のポンプ部(不図示。以下同じ。)を構成している。2段目のポンプ部は、1段目のポンプ部M1の上方に配置されている
【0016】
外部筐体2は、モータ3、回転軸4、内部筐体5、インペラ6、およびディフューザ7を収容する。外部筐体2の形状は、上下方向に沿う略円筒状である。外部筐体2は、吸込口21および吐出口(不図示。以下同じ。)を備える。外部筐体2の下端部は、縮径されていて、吸込口21を形成している。
【0017】
以下の説明において、「上流側」は外部筐体2内を流れる取扱液の流れにおける上流側であり、「下流側」は外部筐体2内を流れる取扱液の流れにおける下流側である。
【0018】
モータ3は、所定の駆動電圧・駆動周波数で駆動して、インペラ6を回転させる。モータ3は、ロータ31およびステータ32を備える。モータ3は、回転軸4に取り付けられているロータ31、およびロータ31を回転させるステータ32を備える公知のモータである。
【0019】
回転軸4は、モータ3の回転により回転して、回転動力をインペラ6に伝達する。回転軸4の形状は、上下方向に沿う円柱状である。回転軸4の下部4aは、モータ3から下方の内部筐体5内に向けて延出されている。
【0020】
以下の説明において、「軸方向」は、回転軸4の軸心方向(上下方向)である。
【0021】
【0022】
内部筐体5は、ディフューザ7を保持していて、ディフューザ7と共にインペラ6から吐出された取扱液が流れる流路を区画している。内部筐体5の形状は、上下方向に沿う円筒の上端が内側に折り返された略二重筒状である。すなわち、内部筐体5は、円筒状の外筒部51、外筒部51の内側に配置されている円筒状の内筒部52、および外筒部51の上端と内筒部52の上端とに連結されているリング状の連結部53を備える。内部筐体5は、外部筐体2に収容されていて、外部筐体2に取り付けられている。
【0023】
インペラ6は、回転軸4の下部4aに取り付けられていて、下方から吸い込んだ取扱液に速度エネルギーを与えて、取扱液を径方向の外方へ吐出する。インペラ6は、外部筐体2に収容されていて、軸方向において、吸込口21の上方に隣接して配置されている。
【0024】
●ディフューザの構成
図3は、本発明に係るディフューザ(ディフューザ7)の実施の形態を示す斜視図である。
図4は、ディフューザ7の底面図である。
図5は、ディフューザ7の側面図である。
【0025】
ディフューザ7は、インペラ6から吐出された取扱液を減速して、増圧することにより、インペラ6により取扱液に与えられた速度エネルギーを圧力エネルギーに変換する。ディフューザ7は、内部筐体5に取り付けられていて、軸方向において、インペラ6の上方に隣接して配置されている。すなわち、ディフューザ7は、いわゆるアキシャル型のディフューザである。ディフューザ7は、例えば、アルミニウム合金などの金属製である。ディフューザ7は、本体部8およびベーン部9を備える。
【0026】
本体部8の形状は、有底円筒状である。本体部8は、底部81、挿通孔82、複数(例えば、4つ)の整流板83(
図2参照。以下同じ。)、および円筒部84を備える。
【0027】
以下の説明において、「径方向」は本体部8の直径(半径)に沿う方向であり、「周方向」は本体部8の円周に沿う方向である。
【0028】
図2に示されるとおり、底部81の形状は、略円板状である。底部81の中央部は上方に向けて山状に突出していて、その中央には挿通孔82が配置されている。底部81の一部は上方に向けて板状に延出されていて、整流板83を形成している。
【0029】
底部81の外縁部は、上方に向けて円筒状に延出されていて、円筒部84を形成している。円筒部84は、本発明における流路形成部の一例である。
【0030】
ベーン9部は、8つのベーン91,92,93,94,95,96,97,98を備える。各ベーン91~98の構成は共通しているため、以下の説明において、各ベーン91~98が特に区別されないとき、各ベーン91~98および各ベーン91~98が備える各要素には、符号「91~98」に代えて符号「90」が付されている。
【0031】
周方向において、各ベーン91~98は、等角度間隔で円筒部84の外周面84aに配置されている。各ベーン91~98は、外周面84aから径方向に向けて突出している。底面視において、ベーン91~98は、符号順に反時計回りに並んで配置されている。
【0032】
図6は、ディフューザ7の部分拡大斜視図である。
図7は、ディフューザ7の
図5のAA線における部分拡大断面図である。
以下の説明において、
図3~
図5は、適宜参照される。
【0033】
ベーン90は、正圧面90a、負圧面90b、第1端面90c、および3つの内部流路90f,90g,90hを備える。ベーン90の構成は、ベーン90が内部流路90f~90hを備えている点を除き、公知のディフューザが備えるベーンの構成と共通している。ベーン90、すなわち、各ベーン91~98は、本発明における特定ベーンの一例である。
【0034】
径方向視において、ベーン90の形状は、円筒部84の下端部から後端部まで延びている略円弧状の板状である。正圧面90aはベーン90の上面であり、負圧面90bはベーン90の下面である。径方向視において、正圧面90aの形状は、凹面状である。負圧面90bは正圧面90aの反対側の面であり、径方向視において、負圧面90bの形状は正圧面90aに略沿う凸面状である。軸方向視(底面視)において、負圧面90bは、負圧面90b側に隣り合うベーン90の正圧面90aと対向している対向領域90d、および同正圧面90aと対向していない非対向領域90eを備える。第1端面90cは、ベーン90における、上流側に位置する端面である。第1端面90cは、径方向に平行な曲面である。第1端面90cは、本発明における「上流側に位置する端部」の一例である。
【0035】
内部流路90f~90hは、ベーン90に向けて流れている取扱液の一部を、負圧面90b側のディフューザ流路DLに向けて流入させる流路である。径方向に沿う断面(横断面)視において、内部流路90f~90hの断面形状は、円形状である。内部流路90f~90hは、ベーン90の長手方向に沿うように、第1端面90cから負圧面90bに向けてベーン90を貫通して配置されている。すなわち、軸方向視において、内部流路90f~90hの形状は、周方向に沿う円弧状である。径方向視において、内部流路90f~90hの形状は、ベーン90の形状に沿う略直線状である。径方向において、内部流路90f~90hは、内側から外側に向けて、内部流路90f、内部流路90g、内部流路90hの順に、等間隔に並んで配置されている。内部流路90gは内部流路90fよりも長く、内部流路90hは内部流路90gよりも長い。内部流路90f~90hは、入口90i~90kおよび出口90m~90pを備える。
【0036】
径方向において、内部流路90fの入口90i、内部流路90gの入口90j、および内部流路90hの入口90kは、第1端面90cに等間隔で並んで配置されている。すなわち、入口90i~kは、ベーン90における上流側に位置する端部側に配置されている。ベーン90の長手方向(弧長方向)において、入口90i~90kは、出口90m~90pよりも上流側(第1端部90c側)に配置されている。入口90i~90kは、本発明における流路入口の一例である。
【0037】
ここで、「上流側に位置する端部側」は、第1端面90c、および正圧面90aのうち、ベーン90の長手方向における中央部との対比において上流側の端部(すなわち、第1端面90c)により近い側を意味している。好ましくは、「上流側に位置する端部側」は、第1端面90c、および正圧面90aのうち、ベーン90の長手方向における非対向領域90eの中央部よりも上流側の端部に近い側を意味している。
【0038】
径方向において、内部流路90fの出口90m、内部流路90gの出口90n、および内部流路90hの出口90pは、負圧面90bに等間隔で並んで配置されている。ベーン90の長手方向(弧長方向)において、出口90m~90pは僅かにずれて配置されていて、出口90nは出口90mよりも僅かに下流側に配置されていて、出口90pは出口90nよりも僅かに下流側に配置されている。すなわち、ベーン90の長手方向において、各出口90m~90pは、異なる位置(略同じ位置)に配置されている。軸方向視(底面視)において、各出口90m~90pは、非対向領域90eにおける、対向領域90d側の端部に配置されている。換言すれば、軸方向視(底面視)において、各出口90m~90pは、非対向領域90eにおける、負圧面90b側に隣り合うベーン90の第1端面90c側に配置されている。すなわち、例えば、ベーン91において、各出口91m~91pは、非対向領域91eにおける、負圧面91b側に隣り合うベーン92の第1端面92c側に配置されている。出口90m~90pは、本発明における流路出口の一例である。
【0039】
なお、本発明において、内部流路90f~90hの数は、「3」に限定されない。すなわち、例えば、ベーン90は、1つの内部流路のみを備えていてもよい。この場合、内部流路の大きさ(体積)は、各内部流路90f~90hよりも大きく設定される。
【0040】
また、本発明において、内部流路90f~90hの断面形状は、円形状に限定されない。すなわち、例えば、内部流路90f~90hの断面形状は、矩形状でもよい。
【0041】
さらに、本発明において、内部流路90f~90hそれぞれの断面形状は、同じでなくてもよい。
【0042】
さらにまた、本発明において、軸方向視における内部流路90f~90hの形状は、周方向に沿う円弧状に限定されない。すなわち、例えば、軸方向視における内部流路90f~90hの形状は、直線状でもよい。この場合、内部流路90fの一部は、円筒部84に配置されていてもよい。
【0043】
本体部8は、挿通孔82に回転軸4の下部4aが挿通された状態で、内部筐体5に取り付けられている。このとき、内部筐体5の外筒部51は、円筒部84の外周面84aに対向するように、円筒部84に対して径方向の外方に配置されている。すなわち、周方向において、隣り合うベーン90,90の間の空間は、外筒部51により覆われている。その結果、隣り合うベーン90,90それぞれの対向する正圧面90aおよび負圧面90b(対向領域90d)、外周面84a、および外筒部51は、インペラ6から吐出された取扱液を減速して、増圧するディフューザ流路DLを形成している。換言すれば、ベーン90は、内部筐体5および円筒部84の外周面84aと共に、ディフューザ流路DLを構成している。ベーン90の長手方向において、ディフューザ流路DLの入口DL1は、非対向領域90eの下流端(対向領域90d側の端部)に位置している。ディフューザ流路DL内の取扱液の流れる方向に垂直な横断面積は、入口DL1において最も小さくて、下流側に向かうにつれて大きくなっている。
【0044】
また、内部筐体5の連結部53はベーン90および円筒部84の上方に配置されていて、径方向において、内部筐体5の内筒部52は円筒部84の内方に配置されている。その結果、内筒部52、連結部53、および円筒部84は、ディフューザ流路DLから流出した取扱液を円筒部84の内側に導く流路を形成している。また、底部81、整流板83、および内筒部52は、円筒部84の内側に導かれた取扱液を2段目のポンプ部に導く流路を形成している。
【0045】
2段目のポンプ部の構成は、1段目のポンプ部M1の構成と共通している。そのため、2段目のポンプ部を構成している不図示の内部筐体、インペラ、およびディフューザの説明は、省略される。
【0046】
●遠心ポンプの動作
次に、遠心ポンプ1の動作が、以下に説明される。以下の説明において、
図1~
図7は、適宜参照される。
【0047】
図8は、ディフューザ流路DLにおける取扱液の流れを説明する模式図であり、(a)は遠心ポンプ1が設計点で動作している状態を示す模式図であり、(b)は遠心ポンプ1が設計点よりも小流量域で動作している状態を示す模式図である。
同図は、ディフューザ7を周方向に沿って展開した状態を模式的に示している。
【0048】
インペラ6に吸い込まれた取扱液は、インペラ6から径方向の外方に向けて吐出される。インペラ6から吐出された取扱液は、外部筐体2により上方へと流れの向きを変えられて、周方向に旋回しながらディフューザ流路DLへ流入する。
【0049】
遠心ポンプ1が設計点で動作しているとき、
図8(a)に示されるとおり、ディフューザ流路DLへ流入する取扱液の流入角度「α」は、ベーン90の入口角度「β」に対して、設計上の適切な角度(例えば、α≒β:迎え角が数度となる範囲)に近くなるように調整されている。また、取扱液の一部(黒矢印)は、入口90i~90kから内部流路90f~90hにも流入して、出口90m~90pから負圧面90b側のディフューザ流路DLの入口DL1付近(直前)で、同ディフューザ流路DLに流入する取扱液(白抜き矢印)に合流する。取扱液は、ディフューザ流路DLを通過することにより減速されて、増圧される。
図2に示されるとおり、ディフューザ流路DLを通過した取扱液は、内筒部52、連結部53、底部81、および円筒部84により構成されている各流路に導かれて、2段目のポンプ部に導入される。2段目のポンプ部から吐出された取扱液は、吐出口からポンプコラムC内に吐出されて、ポンプコラムC内を上方へ向けて流れる。
【0050】
前述のとおり、内部流路90f~90hの入口90i~90kは、第1端面90cに配置されている。そのため、取扱液の一部は、第1端面90cに衝突して、正圧面90a側と負圧面90b側とに分けられると共に、内部流路90f~90hに直接流入する。換言すれば、第1端面90cに衝突する取扱液の一部は、流れの向きを大きく変えられることなく、内部流路90f~90hに流入する。
【0051】
また、入口90i~90kはディフューザ流路DLに開口していないため、ディフューザ流路DLに流入した取扱液は他のディフューザ流路DLに流れることなくディフューザ流路DLを通過する。そのため、内部流路90f~90hは、ベーン90による増圧の機能に影響を与えない。したがって、遠心ポンプ1のポンプ効率は、内部流路またはスリットが形成されていない従来のベーンを備える遠心ポンプ(以下「従来ポンプA」という。)と略同等となり、ベーンにスリットが形成されている遠心ポンプ(以下「従来ポンプB」という)よりも向上する。
【0052】
図9は、遠心ポンプ1の効率の比較結果を示すグラフである。
同図は、設計点で動作しているときの遠心ポンプ1の効率を示していて、比較対象として、従来ポンプA,Bの効率も示している。同図の縦軸は、従来ポンプAの効率に対する比率を示している。同図に示されるとおり、遠心ポンプ1の効率は、従来ポンプAと略同等であり、従来ポンプBよりも向上している。
【0053】
図8(b)に戻る。
次に、遠心ポンプ1が設計点よりも小流量域で動作しているとき、ディフューザ流路DLへ流入する取扱液の流入角度「α」は小さくなり、流入角度「α」とベーン90の入口角度「β」との間の差異が大きくなる(迎え角が大きくなる)。その結果、ベーン90の負圧面90bに接している領域では、負圧面90bにおける上流側の端部を起点として、取扱液の剥離が発生する。一般的に、迎え角が大きくなり、剥離が発生すると、剥離が発生している領域(以下「剥離領域PA」という。)は時間経過と共に増大する。このとき、剥離が発生しているディフューザ流路DLにおける下流側では、剥離が発生しているディフューザ流路DLに対して負圧面90b側のディフューザ流路DLからの取扱液が逆流したかのような現象(灰色破線矢印)も発生している。その結果、最終的にはディフューザ流路DLは、剥離領域PAで塞がれて、ディフューザ流路DLの流れが滞る失速が発生する。本実施の形態では、出口90m~90pは、負圧面90bのうち、ディフューザ流路DLの入口DL1直前で剥離領域PAに接する位置に配置されている。そのため、内部流路90f~90hを通過した取扱液は、入口DL1直前で剥離領域PA内に流入して、剥離領域PA内で発生している取扱液の渦を整流して、剥離領域PA内の取扱液を負圧面90bに沿って案内するように流れる。また、内部流路90f~90hを通過した取扱液は、逆流を押し戻すように流れて、逆流の上流側への拡大を抑制する。その結果、剥離領域PAの増大が抑制されて、剥離領域PAの大きさは失速を発生させない程度(ディフューザ流路DLを塞がない程度)の大きさに抑え込まれる。したがって、ディフューザ流路DLは剥離領域PAに塞がれず、旋回失速の発生は抑制される。特に、本実施の形態では、出口90m~90pは、ディフューザ流路DLにおいて最も狭い入口DL1付近に開口している。そのため、入口DL1付近で剥離領域PA内の渦が整流されて、入口DL1は剥離領域PAに塞がれない。
【0054】
●まとめ
以上説明した実施の形態によれば、ディフューザ7のベーン90は、内部流路90f~90hを備える。内部流路90f~90hは、ベーン90の長手方向に沿うようにベーン90を貫通して配置されている。内部流路90f~90hは、ベーン90における上流側に位置する第1端面90cに配置されている入口90i~90k、および負圧面90bに配置されている出口90m~90pを備える。
【0055】
この構成によれば、内部流路90f~90hを通過した取扱液は、負圧面90b側に配置されているディフューザ流路DLに負圧面90bから流入する。そのため、負圧面90bで剥離が発生したとき、内部流路90f~90hを通過した取扱液は剥離領域PA内に流入して、剥離領域PA内で発生している取扱液の渦を整流する。その結果、剥離領域PAの増大が抑制されて、剥離領域PAの大きさは失速を発生させない程度の大きさに抑え込まれる。したがって、旋回失速の発生は、抑制される。
【0056】
また、ディフューザ流路DLに流入した取扱液は、他のディフューザ流路DLに流れることなくディフューザ流路DLを通過する。したがって、内部流路90f~90hは、ベーン90の増圧の機能に影響を与えない。その結果、遠心ポンプ1の効率は、従来ポンプAと略同等となり、従来ポンプBよりも向上する。
【0057】
このように、遠心ポンプ1では、効率の低下が抑制されつつ、旋回失速の発生が抑制されている。
【0058】
また、以上説明した実施の形態によれば、入口90i~90kは、ベーン90における上流側の端面である第1端面90cに配置されている。この構成によれば、第1端面90cに衝突する取扱液の一部は、流れの向きを大きく変えられることなく、内部流路90f~90hに流入する。また、取扱液は、他のディフューザ流路DLではなく、ディフューザ7の上流側から直接、内部流路90f~90hに流入する。そのため、ディフューザ流路DLに流入した取扱液は、内部流路90f~90hを介して他のディフューザ流路DLに流れることなくディフューザ流路DLを通過する。したがって、内部流路90f~90hは、ディフューザ流路DL内に流入した取扱液の流れに影響を与えず、ディフューザ流路DLの増圧の機能に影響を与えない。その結果、遠心ポンプ1の効率は従来ポンプAと略同等となり、従来ポンプBよりも向上する
【0059】
さらに、以上説明した実施の形態によれば、出口90m~90pは、負圧面90bのうち、取扱液の負圧面90bからの剥離が発生している領域(剥離領域PA)に接している位置に配置されている。この構成によれば、内部流路90f~90hを通過した取扱液は、確実に剥離領域PA内に流入する。
【0060】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、負圧面90bは、対向領域90dおよび非対向領域90eを備えている。軸方向視において、出口90m~90pは、非対向領域90eにおける、対向領域90d側の端部に配置されている。この構成によれば、出口90m~90pは、負圧面90b側のディフューザ流路DLの入口DL1付近に開口している。そのため、入口DL1付近で剥離領域PA内の渦が整流されて、入口DL1は剥離領域PAに塞がれない。
【0061】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、ベーン部9が備える各ベーン91~98の全ては、内部流路90f~90hを備える特定ベーンである。この構成によれば、複数のディフューザ流路DLのうち、どのディフューザ流路DLにおいて剥離が発生しても、剥離領域PAは拡大されず、旋回失速の発生は抑制される。
【0062】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、ベーン90の長手方向において、3つの内部流路90f~90hそれぞれの出口90m~90pは、異なる位置(略同じ位置)に並んで配置されている。この構成によれば、ベーン90の高さ方向(径方向)において、出口90m~90pが並んで配置されている。そのため、取扱液は、剥離領域PAの下流側への拡大を遮断するかのように、剥離領域PA内へ流入する。したがって、出口90m~90p付近において、剥離領域PAの下流側への拡大は、強く抑制される。
【0063】
●変形例●
次に、ディフューザ7の変形例が、先に説明した実施の形態(以下「第1実施形態」という。)と異なる点を中心に、以下に説明される。以下の変形例の説明において、説明の便宜上、第1実施形態と同じ部材、および共通している機能を有する部材には、第1実施形態と同じ符号が付されている。以下の変形例において、
図1~
図8は、適宜参照される。
【0064】
図10は、ディフューザ7の変形例を示す模式図であり、(a)は第1変形例を示す模式図であり、(b)は第2変形例を示す模式図であり、(c)は第3変形例を示す模式図である。
同図(a)は、視認を容易にするため、内部流路90f~90hそれぞれを1本の破線で示している。同図(c)は、内部流路90f~90hを破線で示している。
【0065】
●第1変形例
図10(a)に示されるとおり、第1変形例では、内部流路90f~90hの出口90m~90pの位置が第1実施形態と異なる。内部流路90f~90hの出口90m~90pは、ベーン90の長手方向において、異なる位置(離れた位置)に配置されている。すなわち、例えば、ベーン90の長手方向において、出口90mは非対向領域90eの略中央部に配置され、出口90nは非対向領域90eの対向領域90d側の端部に配置され、出口90pは対向領域90dの略中央部に配置されている。第1実施形態では、ベーン90の長手方向において、3つの出口90m~90pが略同じ位置に配置されているため、出口90m~90pが配置されている位置では3つの内部流路90f~90hを通過した取扱液がまとめて流入する。一方、第1変形例では、出口90mが配置されている位置では1つの内部流路90fを通過した取扱液のみが流入して、出口90nが配置されている位置では1つの内部流路90gを通過した取扱液のみが流入して、出口90pが配置されている位置では1つの内部流路90hを通過した取扱液のみが流入する。したがって、第1実施形態と比較して、出口90m~90pが配置される位置ごとの取扱液の流入量は減少するが、ベーン90の長手方向における3か所で、剥離領域PAの渦が整流されて、剥離領域PAの下流側への拡大が抑制される。
【0066】
●第2変形例
図10(b)に示されるとおり、第2変形例では、内部流路90f~90hの出口90m~90pの位置が第1実施形態と異なる。内部流路90f~90hの出口90m~90pは、ベーン90の長手方向において、同じ位置に配置されている。換言すれば、径方向において、出口90m~90pは、同じ半径の仮想延長線上に配置されている。この構成では、第1実施形態と同様に、取扱液は、剥離領域PAの下流側への拡大を遮断するかのように、剥離領域PA内へ流入する。したがって、出口90m~90p付近において、剥離領域PAの下流側への拡大は、強く抑制される。
【0067】
●第3変形例
図10(c)に示されるとおり、第3変形例では、内部流路90f~90hの入口90i~90kの位置が第1実施形態と異なる。入口90i~90kは、正圧面90aにおける、上流側の端部であって、第1端面90cに隣接する位置に配置されている。この構成では、ディフューザ流路DLに流入した取扱液の極一部が内部流路90f~90hに流入するため、遠心ポンプ1の効率は本実施の形態よりも僅かに低下し得るが、従来ポンプBよりは向上する。
【0068】
なお、第3変形例において、入口90i~90kは、正圧面90aのうち、上流側の端部側に配置されて入ればよく、第1端面90cに隣接していなくてもよい。具体的には、入口90i~90kは、例えば、側方視において、内部流路90f~90hと本体部8の底部81との間の負圧面側の角度「β」が0°となるまでの範囲で、正圧面90aにおける第1端面90cよりも上流側に配置されていてもよい。
【0069】
●その他の実施形態●
なお、本発明において、遠心ポンプ1は、2段目のポンプ部を備えていなくてもよく、あるいは、3段目以上のポンプ部を備えていてもよい。
【0070】
また、本発明において、内部流路90f~90hの出口90m~90pの位置は、剥離が発生しているとき、剥離領域PAに接している位置であればよく、本実施の形態に限定されない。すなわち、例えば、出口90m~90pは、非対向領域90eにおける対向領域90d側の端部よりも上流側に配置されていてもよい。この場合、出口90m~90pは、非対向領域90eの中央よりも下流側に配置されているとよい。また、例えば、出口90m~90pは、対向領域90dに配置されていてもよい。この場合、出口90m~90pは、対向領域90dの中央よりも上流側に配置されているとよい。
【0071】
さらに、本発明において、内部流路90f~90hの出口90m~90pは、ベーン90の長手方向において、異なる位置(離れた位置)に配置されていてもよい。すなわち、例えば、第1変形例に示されるとおり、ベーン90の長手方向において、出口90mは非対向領域90eの略中央部に配置されていて、出口90nは非対向領域90eの対向領域90d側の端部に配置されていて、出口90pは対向領域90dの略中央部に配置されていてもよい。
【0072】
さらにまた、本発明において、第2変形例に示されるとおり、内部流路90f~90hの出口90m~90pは、ベーン90の長手方向において、同じ位置に配置されていてもよい。
【0073】
さらにまた、本発明において、内部流路90f~90hの入口90i~90kの位置は、ベーン90における上流側の端部であればよく、第1端面90cに限定されない。すなわち、例えば、入口90i~90kは、第3変形例に示されるとおり、正圧面90aにおける上流側の端部に配置されていてもよい。また、例えば、入口90i~90kは、同端部および第1端面90cに亘って配置されていてもよい。
【0074】
さらにまた、本発明において、内部流路90f~90hそれぞれの大きさは、内部流路90f~90hから流入した取扱液が剥離領域PAの拡大を抑制可能な大きさであればよく、本実施の形態に限定されない。
【0075】
さらにまた、本発明において、ディフューザ7は、内部流路90f~90hを備えていないベーンを備えていてもよい。内部流路90f~90hを備えていないベーンは、本発明における非特定ベーンの一例である。この場合、例えば、周方向において、特定ベーンおよび非特定ベーンは、交互に配置されていてもよい。また、例えば、ディフューザ7は、特定ベーンを1つ備えていてもよい。この構成では、旋回失速は発生し得るが、旋回失速が特定ベーンの負圧面90b側のディフューザ流路DLに到達した時点で、旋回失速は消失する。
【0076】
さらにまた、本発明において、ディフューザ流路DLは、下流側において、正圧面90a側および負圧面90b側の2つに分割されていてもよい。
【0077】
さらにまた、本発明において、ディフューザ流路DLは、下流側において、隣接するディフューザ流路DLと合流していてもよい。
【0078】
さらにまた、本発明において、非特定ベーンは、正圧面90aから負圧面90bまで非特定ベーンを横断するように配置されていて、周方向に沿うスリットまたは溝を備えていてもよい。
【0079】
●本発明の実施態様●
次に、以上説明した各実施形態から把握される本発明の実施態様について、各実施形態において記載された用語と符号とを援用しつつ、以下に記載する。
【0080】
本発明の第1の実施態様は、遠心ポンプ(例えば、遠心ポンプ1)の回転軸(例えば、回転軸4)の軸方向において、インペラ(例えば、インペラ6)と隣接して配置されるディフューザ(例えば、ディフューザ7)であって、円筒状の流路形成部(例えば、円筒部84)と、前記流路形成部の外周面(例えば、外周面84a)に配置されて、前記外周面と共に、前記インペラから吐出された取扱液のディフューザ流路(例えば、ディフューザ流路DL)を構成する複数のベーン(例えば、ベーン91~98)と、を備えて、前記流路形成部の径方向視において、複数の前記ベーンそれぞれは、凹面状の正圧面(例えば、正圧面90a)と、前記正圧面の反対側の面であり、凸面状の負圧面(例えば、負圧面90b)と、を備えて、複数の前記ベーンのうち、少なくとも1の前記ベーンは、前記取扱液が流れる少なくとも1の内部流路(例えば、内部流路90f~90h)を備える特定ベーンであり、前記内部流路は、前記特定ベーンを貫通して配置されて、前記特定ベーンにおける前記取扱液の流れの上流側に位置する端部側(例えば、第1端面90c)に配置される流路入口(例えば、入口90i~90k)と、前記負圧面に配置される流路出口(例えば、出口90m~90p)と、を備える、ディフューザである。
この構成によれば、遠心ポンプにおいて、効率の低下が抑制されつつ、旋回失速の発生が抑制される。
【0081】
本発明の第2の実施態様は、第1の実施態様において、前記流路入口は、前記特定ベーンにおける前記流れの上流側に位置する端面(例えば、第1端面90c)に配置されるディフューザである。
この構成によれば、内部流路は、ディフューザ流路内に流入した取扱液の流れに影響を与えず、ディフューザ流路の増圧の機能に影響を与えない。
【0082】
本発明の第3の実施態様は、第1の実施態様において、前記流路出口は、前記ディフューザ流路へ流れる前記取扱液の前記負圧面からの剥離が発生する領域に接する位置に配置されるディフューザである。
この構成によれば、内部流路を通過した取扱液は、確実に剥離領域内に流入する。
【0083】
本発明の第4の実施態様は、第3の実施態様において、前記回転軸の軸方向視において、前記負圧面は、前記負圧面側に隣り合って配置される他の前記ベーンの前記正圧面と対向する対向領域(例えば、対向領域90d)と、他の前記ベーンの前記正圧面と対向しない非対向領域(例えば、非対向領域90e)と、を備えて、前記軸方向視において、前記流路出口は、前記非対向領域における、前記対向領域側の端部に配置されるディフューザである。
この構成によれば、ディフューザ流路の入口付近で剥離領域内の渦が整流されて、入口は剥離領域に塞がれない。
【0084】
本発明の第5の実施態様は、第1乃至第4のいずれか1の実施態様において、複数の前記ベーンの全ては、前記特定ベーンであるディフューザである。
この構成によれば、どのディフューザ流路において剥離が発生しても、剥離領域は拡大されず、旋回失速の発生は抑制される。
【0085】
本発明の第6の実施態様は、第1の実施態様において、前記特定ベーンは、複数の前記内部流路を備えて、前記特定ベーンの長手方向において、複数の前記内部流路それぞれの前記流路出口は、異なる位置に配置されるディフューザである。
この構成によれば、ベーンの長手方向における複数か所で、剥離領域の下流側への拡大が抑制される。
【0086】
本発明の第7の実施態様は、第1の実施態様において、前記特定ベーンは、複数の前記内部流路を備えて、前記特定ベーンの長手方向において、複数の前記内部流路それぞれの前記流路出口は、同じ位置に並んで配置されるディフューザである。
この構成によれば、内部流路の出口付近において、剥離領域の下流側への拡大は、強く抑制される。
【0087】
本発明の第8の実施態様は、モータ(例えば、モータ3)と、前記モータにより回転する回転軸(例えば、回転軸4)と、前記回転軸に取り付けられるインペラ(例えば、インペラ6)と、前記回転軸の軸方向において、前記インペラと隣接して配置される第1の実施態様のディフューザ(例えば、ディフューザ7)と、を有してなる、遠心ポンプ(例えば、遠心ポンプ1)である。
この構成によれば、遠心ポンプにおいて、効率の低下が抑制されつつ、旋回失速の発生が抑制される。
【符号の説明】
【0088】
1 遠心ポンプ
3 モータ
4 回転軸
6 インペラ
7 ディフューザ
84 円筒部
90 ベーン
90a 正圧面
90b 負圧面
90c 第1端面(端部)
90d 対向領域
90e 非対向領域
90f 内部流路
90g 内部流路
90h 内部流路
90i 入口(流路入口)
90j 入口(流路入口)
90k 入口(流路入口)
90m 出口(流路出口)
90n 出口(流路出口)
90p 出口(流路出口)
91 ベーン
92 ベーン
93 ベーン
94 ベーン
95 ベーン
96 ベーン
97 ベーン
98 ベーン
DL ディフューザ流路
PA 剥離領域
【要約】
【課題】遠心ポンプの効率の低下を抑制しつつ、旋回失速の発生を抑制する。
【解決手段】本発明に係るディフューザ7は、遠心ポンプ1の回転軸4の軸方向において、インペラ6と隣接して配置されるディフューザである。ディフューザは、流路形成部84と、流路形成部の外周面84aに配置されて外周面と共にインペラから吐出された取扱液のディフューザ流路DLを構成する複数のベーン91~98と、を備える。流路形成部の径方向視において、複数のベーンそれぞれは、正圧面90aと負圧面90bとを備える。複数のベーンのうち、少なくとも1のベーンは、取扱液が流れる少なくとも1の内部流路90f~90hを備える特定ベーンである。内部流路は、特定ベーンを貫通して配置されて、特定ベーンにおける上流側に位置する端部側に配置される流路入口90i~90kと、負圧面に配置される流路出口90m~90pと、を備える。
【選択図】
図6