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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】搬送台車
(51)【国際特許分類】
   B62B 3/10 20060101AFI20231212BHJP
   B62B 5/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B62B3/10 B
B62B5/00 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019235129
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021102415
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(73)【特許権者】
【識別番号】305017815
【氏名又は名称】十一屋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平松 剛
(72)【発明者】
【氏名】森 貴久
(72)【発明者】
【氏名】田原 健一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一道
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-256280(JP,A)
【文献】特開2016-159739(JP,A)
【文献】特開2011-011673(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0126964(US,A1)
【文献】特開2015-016779(JP,A)
【文献】特開平11-333592(JP,A)
【文献】特開2011-089262(JP,A)
【文献】特開2003-292159(JP,A)
【文献】特開2017-030537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 3/10
B62B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接を行うロボットアームと、前記ロボットアームの動作を制御する制御装置と、前記ロボットアームに溶接用電流を供給する溶接機と、前記ロボットアームに溶接用芯線を供給する供給装置と、を少なくとも備えた溶接ロボットシステムを搬送する搬送台車であって、
前記搬送台車は、前記溶接ロボットシステムを載置する載置板と、前記載置板を支持する支持枠体と、前記支持枠体の下部に取り付けられた複数の走行用車輪と、を備えており、
前記載置板は、前記制御装置と前記溶接機とを固定するための固定部と、前記ロボットアームと前記供給装置とを着脱自在に仮固定するための仮固定部と、を備えており、
前記仮固定部は、前記ロボットアームと前記供給装置とが、前記載置板の縁部側に配置されるような位置に設けられており、
前記搬送台車は、前記載置板を上方で覆うように前記支持枠体に取り付けられた天板と、前記天板の周縁を囲うように前記周縁から立ち上った側壁板とにより、上方が開放した箱状の収納部を備え、
前記天板は、分割された複数の分割板で構成され、各前記分割板は、前記支持枠体から着脱自在に取り付けられていることを特徴とする搬送台車。
【請求項2】
前記天板は、隣接する前記分割板の境界部が、前記天板の下方において、前記載置板に固定された前記制御装置と前記溶接機との間の位置に形成されるように、分割されていることを特徴とする請求項に記載の搬送台車。
【請求項3】
前記収納部は、前記制御装置および前記溶接機の少なくとも一方に接続された配線を収納するものであり、
前記天板には、前記制御装置および前記溶接機の少なくとも一方に接続された状態の配線を挿通する通し孔が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の搬送台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設現場で鋼製の部材等を溶接する溶接ロボットシステムを搬送する搬送台車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の搬送台車として、たとえば、特許文献1には、搬送物品を載置する載置板と、載置板を支持する支持枠体と、支持枠体の下部に取り付けられた複数の走行用車輪とを備えた搬送台車が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-16779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、特許文献1に示す搬送台車で、溶接ロボットシステムを搬送する際、溶接ロボットシステムを構成する機器一式を建設現場に搬送する。建設現場で、ロボットアームにより溶接作業を行う際には、溶接ロボットシステムを構成するロボットアームおよび供給装置を、溶接される建設部材の近くに移動させ、その他の制御装置および溶接機等は、搬送台車に載置した状態で使用することが想定される。
【0005】
しかしながら、ロボットアームおよび供給装置等の機器や装置を搬送台車から取り出す際に、載置板に載置された多数の機器や装置等を避けて、これらを取り出すことは難しい場合がある。特に、搬送台車に固定された各種の機器や装置が適切に配置されていないと、取り出し作業が煩雑となり、取り外し時に機器や装置が転倒するおそれが想定される。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、溶接を行う際にロボットアームと供給装置とを搬送台車から容易に取り出すことができるとともに、溶接作業を実施する地点まで、各種の機器や装置を安定して搬送することができる搬送台車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題に鑑みて、本発明に係る搬送台車は、溶接を行うロボットアームと、前記ロボットアームの動作を制御する制御装置と、前記ロボットアームに溶接用電流を供給する溶接機と、前記ロボットアームに溶接用芯線を供給する供給装置と、を少なくとも備えた溶接ロボットシステムを搬送する搬送台車である。前記搬送台車は、前記溶接ロボットシステムを載置する載置板と、前記載置板を支持する支持枠体と、前記支持枠体の下部に取り付けられた複数の走行用車輪と、を備えている。前記載置板は、前記制御装置と前記溶接機とを固定するための固定部と、前記ロボットアームと前記供給装置とを着脱自在に仮固定するための仮固定部と、を備えている。前記仮固定部は、前記ロボットアームと前記供給装置とが、前記載置板の縁部側に配置されるような位置に設けられている。
【0008】
前記のごとく構成された本発明の搬送台車によれば、搬送台車で、溶接ロボットシステムを搬送することができる。ここで、ロボットアームと供給装置は、載置板の縁部側において、載置板に着脱自在に仮固定されているため、溶接を行う際には、搬送台車からロボットアームと供給装置を取り外し、溶接を行う地点に簡単に配置することができる。さらに異なる地点にロボットアームと供給装置を直接移動させて配置する際には、搬送台車の固定部に固定された制御装置と溶接機とを搬送台車とともに移動することができる。これにより、各種機器に配線を接続した状態で、溶接ロボットシステムを移動することも可能となる。
【0009】
本発明に係る搬送台車の好ましい具体的な態様としては、前記搬送台車は、前記載置板を上方で覆うように前記支持枠体に取り付けられた天板と、前記天板の周縁を囲うように前記周縁から立ち上った側壁板とにより、上方が開放した箱状の収納部を備える。
【0010】
この態様によれば、載置板に固定された制御装置および溶接機の上方には、天板が配置されるため、天板が制御装置および溶接機の水除けとなって、上方から飛散する雨水などの水が、制御装置および溶接機に直接的に降りかかることを防止することができる。さらに天板と側壁板とにより、箱状の収納部が形成されるので、この収納部に、溶接機等に接続される配線を収納することができる。
【0011】
また、前記した好ましい具体的な態様において、前記天板は、分割された複数の分割板で構成され、各分割板は、前記支持枠体から着脱自在に取り付けられている。この態様によれば、天板が複数の分割板で構成されているため、天板を搬送台車から容易に取り外すことができる。これにより、天板を取り外した搬送台車の上方から、制御装置または溶接機を、例えばクレーンにより持ち上げて、容易に取り外すことができる。
【0012】
さらに、本発明に係る搬送台車の好ましい具体的な他の態様としては、前記天板は、隣接する前記分割板の境界部が、前記天板の下方において、前記載置板に固定された前記制御装置と前記溶接機との間の位置に形成されるように、分割されている。
【0013】
この態様によれば、隣接する分割板の境界部が、天板の下方において、載置板に固定された制御装置と溶接機との間の位置に形成されるので、収納部に水が溜まり、境界部から水が漏れたとしても、この水が、制御装置または溶接機に直接降り注がれることを抑えることができる。特に、分割板の境界部に沿って、水が天板の下面を伝って流れるのを防止する水切り等の手段を適切に配置することで、この効果を一層発現することができる。
【0014】
さらに他の態様としては、前記収納部は、前記制御装置および前記溶接機の少なくとも一方に接続された配線を収納するものであり、前記天板には、前記制御装置および前記溶接機の少なくとも一方に接続された状態の配線を挿通する通し孔が形成されている。
【0015】
この態様によれば、制御装置および溶接機の少なくとも一方に接続された状態の配線を、通し孔に挿通した状態で、配線を収納部に収納することができる。このため、搬送台車内の配線のレイアウトの変更を行うことなく、一端が制御装置および溶接機の少なくとも一方に接続された配線の他端を、電源等の他の機器に接続する際に、配線の引き回しが容易となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の搬送台車によれば、溶接を行う際にロボットアームと供給装置とを搬送台車から容易に取り出すことができるとともに、溶接時であっても制御装置および溶接機を安定して搬送することができる。また、制御装置および溶接機が、冷却用のファンを備える場合に、たとえば、ファンの空気が流れ易いように、隣接する装置との間隔をあけたり、ファンの設置面を載置板の縁部側にしたりすることで、制御装置および溶接機等の作動を安定化することができる。さらに、制御装置および溶接機に開閉扉等を有する場合には、載置板の縁部側に開閉扉を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る搬送台車の一実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図2図1(b)のA-A線断面図である。
図3図1(b)の右側面図である。
図4図1から図3に示す搬送台車の支持枠体の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る搬送台車の一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。図1(a)と(b)は、本実施形態に係る搬送台車の平面図と正面図、図2は、図1のA-A線断面図、図3は、図1(b)の右側面図、図4は搬送台車の支持枠体の概略斜視図である。
【0019】
図1~4において、搬送台車10は、被搬送物を搬送する台車であり、溶接ロボットシステム1を搬送するのに適した搬送台車である。溶接ロボットシステム1は、例えば建物の柱材を溶接で連結するためのシステムである。溶接ロボットシステム1は、溶接を行うロボットアーム2と、ロボットアームの動作を制御する制御装置3と、ロボットアーム2に溶接用電流を供給する溶接機4と、ロボットアーム2に溶接用芯線(溶接ワイヤ)を供給する供給装置5と、を少なくとも備えている。
【0020】
そして、本実施形態では、溶接ロボットシステム1は、前記の機器や装置のほかに、制御ボックス6と、制御ユニット7と、を備えている。制御ボックス6および制御ユニット7は、溶接をサポートする機能を有している。また、溶接ロボットシステム1は、制御装置3および溶接機4からロボットアーム2および供給装置5に接続される配線8Aと、制御装置3および溶接機4と電源とを接続する配線(電源ケーブル)8Bと、を備えている。図1(a)では、配線8Bとして、1つの配線を描いているが、制御装置3および溶接機4を接続する2つの配線が存在する。
【0021】
本実施形態の搬送台車10は、上記した溶接ロボットシステム1を構成する上述した複数の機器や装置、それらを接続する配線類等をまとめて搬送するもので、溶接ロボットシステム1とともに搬送台車10を、建設現場の階上に移動させることが可能な台車である。搬送台車10は、溶接ロボットシステム1を載置するための水平な長方形状の載置板11を備えている。載置板11は、重量物を載置できるように、鋼製の角パイプまたは溝形鋼からなるフレーム材を直方体状に溶接した支持枠体15に支持されている。
【0022】
具体的には、図4に示すように、支持枠体15は、ベース部16を有している。ベース部16は、載置板11の長方形の4辺の下方に位置する4本の溝形鋼からなる下部フレーム材16a~16dを溶接し、対向する下部フレーム材16a、16bに補強フレーム材16eを溶接したものである。ベース部16の四隅には、上方に立ち上った4本の角パイプからなる側部フレーム材17a~17dが溶接されている。4本の側部フレーム材17a~17dの上端を連結するように水平方向に延在した4本の上部フレーム材18a~18dが溶接されている。載置板11は、支持枠体15のベース部16に、溶接またはビス止め等で固定されている。
【0023】
載置板11は、ロボットアーム2、制御装置3、溶接機4、供給装置5、制御ボックス6、および制御ユニット7を載置するスペースを有している。載置板11は、制御装置3、溶接機4、制御ボックス6、および制御ユニット7を固定するための固定部20と、ロボットアーム2および供給装置5を着脱自在に仮固定するための仮固定部21とを備えている。
【0024】
固定部20は、載置板11の一部を構成しており、制御装置3、溶接機4、制御ボックス6、および制御ユニット7に形成されたベースをボルトナット等で強固に固定する部分である。仮固定部21は、載置板11の一部を構成しており、ロボットアーム2および供給装置5に形成されたベースをボルトナット等で着脱自在に固定する(仮固定する)部分である。仮固定部21は、たとえば蝶ナットや、クランプで仮固定するようにしてもよく、あるいは載置板11に固定された取り付け用のアイナット等に、ロープ等で仮固定するものでもよい。
【0025】
たとえば、供給装置5の仮固定部21には、2つのアイボルト(バンド係止部材)24が設けられている。供給装置5を仮固定する際には、2つのアイボルト24を繋ぐように、供給装置5にバンド24aを渡し、その両端をアイボルト24に係止する。本実施形態では、バンド24aを用いたが、例えばロープまたはワイヤを用いてもよい。ロボットアーム2を仮固定する際には、仮固定部21に形成されたネジ孔に、六角穴付きボルトまたは蝶ネジなどを螺着する。
【0026】
載置板11の固定部20に固定される制御装置3および溶接機4等は、通常の溶接作業では取り外すことはない。一方、仮固定部21に仮固定される供給装置5およびロボットアーム2は、通常の溶接作業時に載置板11から取り外されて溶接される地点まで移動される。このため、供給装置5およびロボットアーム2は、溶接台車10から取り外しが容易なように、載置板11の縁部側に配置されている。
【0027】
本実施形態では、その一例として、ロボットアーム2を仮固定する仮固定部21は、図2において、載置板11の短辺側の縁部(図では右側縁部)に設けられている。一方、供給装置5を仮固定する仮固定部21は、図2において、載置板11の長辺側の縁部(図では左下縁部)に設けられている。このように、ロボットアーム2と供給装置5とが、載置板11の縁部側に配置されるような位置に、仮固定部21は設けられているので、これらを搬送台車10から容易に取り外すことができる。
【0028】
支持枠体15のベース部16の下部には複数の走行用車輪22が取り付けられている。本実施形態では、ベース部16の四隅の位置には、旋回可能の4個の車輪(キャスタ)22Aが取り付けられ、載置板11の長手方向の中央部に旋回不能の2個の車輪22Bが取り付けられ、合計6輪が取り付けられている。車輪を6輪にすることにより、1つ車輪が溝にはまったとしても、溝から車輪を抜け出し易い。特に、中央部の車輪22Bの直径を、隅部の車輪22Aの直径よりも大きくすることにより、デッキ等の段差を乗り越え易くなり、安定走行が可能となるとともに、搬送台車の旋回が容易となる。
【0029】
支持枠体15の溶接された上部フレーム材18a~18dの隅部には、吊り上げ用の4本のアイボルト23が螺着されている。4本の柱材である側部フレーム材17a~17dの高さは、載置板11の上に溶接ロボットシステム1を載置し、さらに上部に配線8A、8Bを収納できるような高さに設定されている。
【0030】
支持枠体15には、載置板11を上方で覆うように、天板26が取り付けられている。具体的には、4本の側部フレーム材17a~17dには、水平方向に延在するアングル材27が溶接等で架設され、天板26はアングル材27にビスなどにより取り外し可能に固定されている。アングル材27の架設高さは、載置板11の上方に、溶接ロボットシステム1を構成する機器で、最も高さの大きい機器、具体的には溶接機4が余裕を持って配置できる高さに設定されている。
【0031】
さらに、支持枠体15には、矩形状の天板26の周縁を囲うように、天板26の周縁から立ち上った4枚の側壁板28が固定されている。具体的には、各側壁板28は、支持枠体15の側部を形成する開口のうち、アングル材27により区画された上側の開口を塞ぐように、支持枠体15に固定されている。
【0032】
天板26と、天板26の周縁を囲うようにその周縁から立ち上った側壁板28とにより、支持枠体15には、上方が開放した箱状の収納部25が形成されている。これにより、収納部25の上方から、収納部25に配線8A、8Bを収納することができる。
【0033】
さらに、本実施形態では、長手方向の対向するアングル材27、27には、収納部25の内部に位置するように、複数のアイボルト(バンド係止部材)29が間隔を空けて固定されている。これにより、収納部25に収納された配線8A、8Bを、アイボルト29に架け渡したバンド29aで、収納部25に固定することができる。
【0034】
天板26は、1枚の板から構成されていてもよいが、本実施形態では、天板26は、分割された複数の分割板26A、26Bで構成されている。各分割板26A、26Bは、支持枠体15から着脱自在にビスなどにより取り付けられている。分割板26A、26Bは隣接して配置されており、隣接する分割板26A、26Bの境界部26dは、載置板11に固定された制御装置3と溶接機4と間の位置に形成されている。
【0035】
分割板26A、26Bの境界部には、長手方向の2本のアングル材27、27を連結する連結材27Aが溶接等で固定されている。これにより各分割板26A、26Bの周縁が支持され、収納部25に収納された配線等の重さで、分割板26A、26Bが撓むことを防止することができる。
【0036】
さらに、天板26には、制御装置3および溶接機4の少なくとも一方に接続された状態の配線8Bを挿通する通し孔26cが形成されている。本実施形態では、通し孔26cは、制御装置3および溶接機4から外れた位置の角部上方に設けられている。通し孔26cの周縁は上方に突出している。これにより、収納部25に雨水が溜まったとしても、通し孔26cから水が漏れ出し、この水が制御装置3または溶接機4に直接降り注がれることを抑えることができる。その他、収容部25に水抜き穴を設け、水抜き穴から流れる水を、別途配置した樋などから外部に排出してもよい。
【0037】
本実施形態では、通し孔26cは分割板26Aに形成されているが、制御装置3および溶接機4に接続された配線8Bを引き回し、通し孔を介して、収納部25に配線8Bを収納することができるのであれば、通し孔26cの位置は特に限定されるものではない。
【0038】
搬送台車10を構成する支持枠体15には、搬送台車を移動させるための取っ手30が固定されている。取っ手30は、平面視において、短辺方向のアングル材27と並設する位置にあって、側面視において、アングル材27の下方近傍の位置に配置されている。これにより、搬送台車10を、その長辺方向に沿った方向に搬送することができるとともに、ロボットアーム2の取り出し時に、ロボットアーム2が取っ手30に機械的に干渉することを回避することができる。
【0039】
支持枠体15のベース部16の側面には、補強板31が溶接で固定されている。この部位を補強することで、搬送台車10をフォークリフトで持ち上げる際に、フォークを走行用車輪22の間に差し込むときに支持枠体15の変形を防止できる。本実施形態では、補強板31は、搬送台車10を構成する支持枠体15の短辺側の端面に固定されているが、長辺側にも固定するようにしてもよい。長辺側にも補強板を設けることで、搬送台車10の強度を高めることができる。
【0040】
前記の如く構成された本実施形態の搬送台車10の作用について以下に説明する。搬送台車10を構成する支持枠体15の下部に固定された載置板11に、溶接ロボットシステム1を構成する複数の機器および装置等を固定する。
【0041】
まず、固定部20による固定の際には、天板26を取り外す。天板26が複数の分割板26A、26Bで構成されているため、天板26を搬送台車10から容易に取り外すことができる。次に、クレーン等を利用して、支持枠体15の上方から、制御装置3、溶接機4等の機器または装置を挿入し、載置板11に載置し、これらを固定部20に固定する。
【0042】
具体的には、図2の断面図において、長辺方向の中央部に溶接機4とアークセンサユニット7を固定用のボルトで固定部20に固定する。同様に、図2において、固定された溶接機4の一方側(図中左側)に、固定用のボルトで制御装置3を固定部20に固定し、溶接機4の他方側に、固定用のボルトで制御ボックス6を固定部20に固定する。固定部20による固定の完了後、天板26を取り付ける。
【0043】
次に、ロボットアーム2と供給装置5を、水平方向から支持枠体15の内部に挿入し、載置板11に載置し、これらを仮固定部21に固定する。具体的には、図2の断面図において、載置板11の短辺の縁部側にロボットアーム2が、ボルト等で仮固定部21に仮固定され、載置板11の長辺の縁部側に供給装置5が、バンド24aで仮固定部21に仮固定される。なお、ロボットアーム2と供給装置5の載置板11への仮固定について、水平方向から支持枠体11の内部に挿入する例を説明したが、天板26を外して、上部から支持枠体11の内部に挿入して仮固定してもよいことは勿論である。
【0044】
このあと、支持枠体15の上部に形成された上方が開放された収納部25に配線8A、8B等の備品を収納し、6本のアイボルト29にバンド29a等を掛け回して配線8A、8Bや他の備品(図示せず)を固定する。なお、電源に接続される配線8Bは、その一端を制御装置3と溶接機4に接続した状態で収納部25に収納する。この際、配線8Bは、天板26の通し孔26cを通して収納できるため、制御装置3と溶接機4を接続した状態で、搬送作業および溶接作業が可能であり、これらの作業に伴い、配線8Bのレイアウトの変更を行わなくてもよい。
【0045】
このように、溶接ロボットシステム1の制御装置3、溶接機4、制御ボックス6、制御ユニット7を固定し、ロボットアーム2および供給装置5を仮固定し、収納部25に配線8A、8B等を固定した状態で、搬送台車10を建設現場の溶接地点まで搬送することができる。この状態で、支持枠体15の上部に固定したアイボルト23にワイヤロープを通し、搬送台車10をクレーン等で吊り上げて、たとえば建設現場の上階に溶接ロボットシステム1を吊り上げて作業することができる。
【0046】
また、この状態で降雨等に遭遇したときも、載置板11に固定または仮固定された機器類は、上部を天板26で覆われているため、雨水の影響を最低限とすることができる。さらに、分割板26A、26Bの境界部が制御装置3と溶接機4の間の位置に形成されているため収納部25に雨水が溜まり、分割板26A、26Bの境界部から水が漏れたとしても、この水が制御装置3または溶接機4に直接降り注がれることを抑えることができる。
【0047】
さらに、載置板11に固定されたロボットアーム2、制御装置3、溶接機4、供給装置5、制御ボックス6、制御ユニット7は天板26で上部を覆われているが、分割板26A、26Bを外せば、上部からクレーン等で容易にこれらの機器および装置を吊り上げて搬送台車10から容易に取り外すことができる。
【0048】
載置板11の縁部に仮固定されたロボットアーム2は、載置板11の縁部側に仮固定されているため、溶接時には、ロボットアーム2の仮固定状態を容易に解除することができ、載置板11から容易に取り外すことができる。また、同様に、載置板11の縁部側に仮固定された供給装置5も、載置板11の縁部に仮固定されているため、溶接時には、仮固定状態を容易に解除することができ、載置板11から容易に取り外すことができる。
【0049】
溶接時には、搬送台車10から取り外したロボットアーム2、供給装置5だけを、溶接地点に移動して所定位置にある柱などの建設部材を溶接することができる。さらに周辺の建設部材を溶接する際には、ロボットアーム2および供給装置5を隣接する異なる地点に移動し、必要に応じて、残りの機器および装置を搬送台車10とともに移動することができる。このようにして、各種機器に配線8A、8Bを接続した状態で、溶接ロボットシステム1を移動することも可能となり、溶接作業を効率よく実施できる。
【0050】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0051】
1:溶接ロボットシステム、2:ロボットアーム、3:制御装置、4:溶接機、5:供給装置、8A、8B:配線、10:搬送台車、11:載置板、15:支持枠体、20:固定部、21:仮固定部、22:走行用車輪、23:アイボルト、25:収納部、26:天板、26A,26B:分割板、26c:通し孔、27:アングル材、28:側壁板、29:アイボルト、29a:バンド、30:取っ手
図1
図2
図3
図4